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特許7385861泡質評価方法、訓練方法、及び泡質評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】泡質評価方法、訓練方法、及び泡質評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/036 20060101AFI20231116BHJP
   A23L 2/00 20060101ALN20231116BHJP
   C12H 1/16 20060101ALN20231116BHJP
   A23F 5/24 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
G01N29/036
A23L2/00 S
C12H1/16
A23F5/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019161898
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021039052
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-10-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】磯江 晃
(72)【発明者】
【氏名】西津 貴久
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 一貴
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152520(JP,A)
【文献】空隙・気泡を含んだ柔らかい食品のテクスチャー測定法の新提案-ビールの泡のテクスチャー評価はどうしたら,岐阜大学産官学連携推進本部産学連携ナビシーズ集(オンライン),日本,国立大学法人岐阜大学,2014年05月21日
【文献】上田裕紀, 外4名,ヘルムホルツ共鳴を用いたビール泡の品質評価に関する研究,公益社団法人日本農芸化学会 大会講演要旨集,2018年03月05日,平成30年度,2B10p04
【文献】西津貴久, 外5名,ヘルツホルム共鳴を利用した液量計測ースピーカインピーダンス法についてー,日本マイクログラビティ応用学会誌,2005年03月25日,第22巻第2号,第121頁~第127頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
A23L 2/00-2/84
A23F 3/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ飲用容器を用いて、飲料の体積および液層と泡層の割合が同じになるように注いだ飲料から生じる泡の泡質を評価する方法であって、
下記工程(1)~(2)を有する、泡質評価方法。
・工程(1):少なくとも共鳴器を備え、動的フォームアナライザーを備えない装置を用いて、飲料を注いだ前記飲用容器の上面を覆うように共鳴器を装着し、前記飲用容器内に生じた泡のポリトロープ指数nを測定する工程。
・工程(2):工程(1)で測定した前記ポリトロープ指数nの値に基づき、当該ポリトロープ指数nの値が小さいほど、泡のきめ細かさが良好であると、前記泡の泡質を評価する工程。
【請求項2】
前記飲料が、ビールテイスト飲料、乳成分含有飲料、農産物微粉砕飲料、炭酸飲料、及び加圧抽出コーヒー飲料から選ばれる起泡性飲料である、請求項1に記載の泡質評価方法。
【請求項3】
前記飲料が、缶もしくはペットボトルに詰められた容器詰め飲料である、請求項1又は2に記載の泡質評価方法。
【請求項4】
前記飲料が起泡性飲料であり、当該起泡性飲料が樽に詰められた樽詰め飲料であって、ディスペンサーを用いて、飲用容器に起泡性飲料を注いだ際に生じる泡の泡質を評価する、請求項1又は2に記載の泡質評価方法。
【請求項5】
工程(2)において、予め定めたポリトロープ指数nの値の基準によって、当該ポリトロープ指数nの値が小さいほど、泡のきめ細かさが良好であると、前記泡の泡質を評価する、請求項1~4のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
【請求項6】
前記飲用容器の容積が、100~1000mLである、請求項1~5のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
【請求項7】
工程(1)において、前記飲料が、飲用容器の空洞部を満たすまで注がれている状態で、泡のポリトロープ指数nを測定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
【請求項8】
前記共鳴器は、アダプターを介して前記飲用容器の上面を覆うように装着される、請求項1~7のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
【請求項9】
前記共鳴器が、スピーカー、当該スピーカーの音波を発する前面側を囲み、空洞部(a)を構成する前面エンクロージャー、当該前面エンクロージャーの空洞部(a)よりも水平断面が小さい空洞部(b)を構成するネックチューブ、及び、両端をそれぞれ前記ネックチューブ及び前記アダプターと接続し、前記飲用容器と連結された前記アダプターと共に前記ネックチューブの空洞部(b)よりも水平断面が大きい空洞部(c)を構成する筒体を少なくとも備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の泡質評価方法をコンピューターが実行し、同じ飲用容器を用いて、飲料の体積および液層と泡層の割合が同じになるように注ぐための飲料の注ぎ方訓練をコンピューターがサポートする、訓練のサポート方法であって、
前記泡質評価方法により測定したポリトロープ指数nを、基準値となるポリトロープ指数nと比較し、当該ポリトロープ指数nの値が小さいほど、泡のきめ細かさが良好であると、泡質を評価する工程を有する、訓練のサポート方法
【請求項11】
同じ飲用容器を用いて、飲料の体積および液層と泡層の割合が同じになるように注いだ飲料から生じる泡のポリトロープ指数nを測定し、
前記ポリトロープ指数nの値に基づいて、当該ポリトロープ指数nの値が小さいほど、泡のきめ細かさが良好であると、前記泡の泡質を評価する、泡質評価装置であって、飲料を注いだ前記飲用容器の上面を覆うように装着する共鳴器を少なくとも備え、動的フォームアナライザーを備えない、泡質評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の飲用容器に注いだ飲料から生じる泡の泡質を評価する泡質評価方法、飲料の注ぎ方を訓練する訓練方法、並びに、泡質評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール等の起泡性飲料を飲用容器に注ぐと、液体上部表面に、多数の微細な泡から構成された泡層が形成される。この泡層を構成する泡が微細である場合、泡がクリーミーであるため、口当たりや喉ごしが良好な飲料となる。また、泡が微細であると、照りや色等の泡層の見た目も良好となり、美味しさを引き出させる要因となる。
そのため、飲用容器に注いだ飲料から生じる泡の細かさは、飲料にとって重要な指標であるため、泡の細かさを、様々な手法で評価されてきた。
例えば、特許文献1~3には、泡の細かさを評価するために、泡粒に可視光を照射し、撮影した画像を解析する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3977375号
【文献】特開2010-223701号公報
【文献】WO2004/025220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3に記載されたような評価方法では、迅速に変化する泡層について撮影範囲が非常に限定され、かつ上部又は容器側面からの器壁を通した測定になるため、泡層全体を評価することは困難である。特に、飲用容器の形状によっては、泡層を満遍なく撮影することが難しい場合もある。
【0005】
そのため、容器の形状によらず、任意の飲用容器に注いだ飲料から生じる泡の泡質を、包括的に、かつ簡便に評価する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明には以下の態様の発明が含まれる。
[1]任意の飲用容器に注いだ飲料から生じる泡の泡質を評価する方法であって、
下記工程(1)~(2)を有する、泡質評価方法。
・工程(1):飲用容器内に生じた泡のポリトロープ指数nを測定する工程。
・工程(2):工程(1)で測定した前記ポリトロープ指数nの値に基づき、前記泡の泡質を評価する工程。
[2]前記飲料が、ビールテイスト飲料、乳成分含有飲料、農産物微粉砕飲料、炭酸飲料、及び加圧抽出コーヒー飲料から選ばれる起泡性飲料である、上記[1]に記載の泡質評価方法。
[3]前記飲料が、缶もしくはペットボトルに詰められた容器詰め飲料である、上記[1]又は[2]に記載の泡質評価方法。
[4]前記飲料が起泡性飲料であり、当該起泡性飲料が樽に詰められた樽詰め飲料であって、ディスペンサーを用いて、飲用容器に起泡性飲料を注いだ際に生じる泡の泡質を評価する、上記[1]又は[2]に記載の泡質評価方法。
[5]工程(2)において、予め定めたポリトロープ指数nの値の基準によって、前記泡の泡質を評価する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
[6]前記飲用容器の容積が、100~1000mLである、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
[7]工程(1)において、前記飲料が、飲用容器の空洞部を満たすまで注がれている状態で、泡のポリトロープ指数nを測定する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
[8]工程(1)において、飲料を注いだ前記飲用容器の上面を覆うように共鳴器を装着し、泡のポリトロープ指数を測定する、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の泡質評価方法。
[9]前記共鳴器は、アダプターを介して前記飲用容器の上面を覆うように装着される、上記[8]に記載の泡質評価方法。
[10]前記共鳴器が、スピーカー、当該スピーカーの音波を発する前面側を囲み、空洞部(a)を構成する前面エンクロージャー、当該前面エンクロージャーの空洞部(a)よりも水平断面が小さい空洞部(b)を構成するネックチューブ、及び、両端をそれぞれ前記ネックチューブと前記アダプターと接続し、前記飲用容器と連結された前記アダプターと共に、前記ネックチューブの空洞部(b)よりも水平断面が大きい空洞部(c)を構成する筒体を少なくとも備える、上記[9]に記載の泡質評価方法。
[11]上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の泡質評価方法によって、飲料の注ぎ方を訓練する、訓練方法。
[12]飲用容器内に注いだ飲料から生じる泡のポリトロープ指数nを測定し、
前記ポリトロープ指数nの値に基づいて前記泡の泡質を評価する、泡質評価装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の泡質評価方法によれば、飲用容器の形状によらず、任意の飲用容器に注いだ飲料から生じる泡の泡質を、包括的に、かつ簡便に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一態様の泡質評価方法で使用し得る、泡質評価装置の一例を示す概略図であり、飲用容器の上面の断面形状が共鳴器の筒体の断面形状よりも大きい場合における連結態様を示した図である。
図2】本発明の一態様の泡質評価方法で使用し得る、泡質評価装置の一例を示す概略図であり、飲用容器の上面の断面形状が共鳴器の筒体の断面形状よりも小さい場合における連結態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔泡質評価方法〕
本発明の泡質評価方法は、任意の飲用容器に注いだ飲料から生じる泡の泡質を評価する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する。
・工程(1):飲用容器内に生じた泡のポリトロープ指数nを測定する工程。
・工程(2):工程(1)で測定した前記ポリトロープ指数nの値に基づき、前記泡の泡質を評価する工程。
【0010】
本発明の泡質評価方法は、任意の飲用容器に注いだ飲料から生じる泡のポリトロープ指数nを測定することで、その測定したポリトロープ指数nの値から、泡の泡質を評価している。このような泡質評価方法によって、泡の泡質を包括的に、かつ簡便に評価することができる。
【0011】
なお、本明細書において、「飲用容器」とは、飲用者が飲料を飲む際に使用する容器であって、飲料を注ぎ、入れておくための容器を指す。具体的には、コップ(紙コップ、プラスチックコップ、金属コップ、陶磁器コップ、ガラスコップ、木製コップ等)、ジョッキ、グラス、タンブラー、湯飲み、茶わん等が挙げられる。
これらの飲用容器は、飲料の種類によって、適当なものを選択することができ、特に制限されるものではない。
【0012】
飲用容器の容積としては、注ぐ飲料の種類によって適宜設定されるが、通常100~1000mLであるが、200mL以上、300mL以上、400mL以上、500mL以上、600mL以上、700mL以上、800mL以上又は900mL以上であってもよく、また、900mL以下、800mL以下、700mL以下、600mL以下、500mL以下、400mL以下、300mL以下、200mL以下であってもよい。
なお、本明細書において、飲用容器の容積とは、飲料を注いで満たすことができる飲用容器内の空洞部の体積を意味する。
【0013】
飲用容器に注ぐ飲料としては、起泡性飲料が挙げられる。
また、本明細書において、「起泡性飲料」とは、飲用容器に注いだ際に、泡が生じ得る飲料を意味し、炭酸ガスや空気等のガスを含む飲料だけでなく、飲用容器に注ぐ際に空気を取り込み易く、飲用容器内で泡が生じさせ得るような飲料であってもよい。
具体的な起泡性飲料としては、例えば、ビールテイスト飲料、ミルクセーキ等の乳成分含有飲料、スムージー等の農産物微粉砕飲料、エスプレッソコーヒー等の加圧抽出コーヒー飲料等が挙げられる。
【0014】
また、本発明の一態様において、飲料に発泡剤を添加して、飲用容器に注いだ飲料から泡を生じさせてもよい。なお、当該態様においては、飲料は、非起泡性飲料であってもよい。
発泡剤としては、一般的に飲料に使用される発泡剤を用いることができ、また、炭酸ガスの含有量が高い氷を発泡剤として用いることもできる。
発泡剤を用いて飲料から泡を生じさせる態様としては、例えば、以下の(1)及び(2)が挙げられる。
(1)空洞部に発泡剤を添加した飲用容器に、飲料を注いだ際にガスが発生し、飲用容器内の飲料から泡を生じさせる態様。
(2)飲用容器に注いだ飲料に、発泡剤を添加してガスを発生させ、飲用容器内の飲料から泡を生じさせる態様。
本発明の一態様の泡質評価方法によれば、このように発泡剤の添加によって生じた泡についても、泡質を評価することができる。
【0015】
なお、本発明の一態様の泡質評価方法において、飲料が、起泡性飲料であることが好ましく、ビールテイスト飲料、乳成分含有飲料、農産物微粉砕飲料、及加圧抽出コーヒー飲料から選ばれる起泡性飲料であることがより好ましい。
そして、特に、起泡性飲料として、ビールテイスト飲料を飲用容器に注いだ際に生じる泡の泡質を評価することに好適である。ビールテイスト飲料を飲用容器内に注いだ際に生じる泡の泡質は、ビールテイスト飲料の口当たりや味わい等への影響が大きく、また、炭酸ガスを飲料中に閉じ込めるという性質もあるため、重要である。特に、実際の飲用する際に使用する飲用容器内の泡の泡質を評価は、ビールテイスト飲料の評価にもつながるものである。
本発明の一態様の泡質評価方法によれば、実際の飲用する際に使用する飲用容器内にビールテイスト飲料を注いだ際に生じる泡の泡質を、包括的に、かつ簡便に評価することができるという利点が高い。
【0016】
なお、本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料を意味する。つまり、「ビールテイスト飲料」は、ビール風味の炭酸飲料を全て包含するものであり、アルコールを含有するビールテイスト飲料、及びノンアルコールビールテイスト飲料のいずれであってもよい。また、麦汁に酵母を添加して発酵させて製造される飲料に限定されず、エステル、高級アルコール等のビール香料が添加された炭酸飲料をも包含する。
【0017】
ここで、本発明の泡質評価方法において指標とする「ポリトロープ指数」は、熱力学的状態を表す物性値であって、飲用容器の形状に依存しない値である。はじめに、ポリトロープ指数について説明する。
【0018】
<ポリトロープ指数>
ポリトロープ指数nは、ヘルムホルツ共鳴原理から、以下のように導き出される物性値である。
一般に、ヘルムホルツ共鳴とは、長さl、断面積Sの中空円柱状のネックチューブの開口した系の一方に、スピーカー等を取り付けた共鳴器を用いて、共鳴器内の空洞部の空気の単振動により、下記の式に従い、共鳴周波数fが生じる現象である。なお、系内に吸音しない物質が存在した場合には、単振動は速くなり、共鳴周波数fは高くなる。
【数1】
(上記式中、Cは音速、lはネックチューブの長さ、Sはネックチューブの断面積、Vは共鳴器内の空洞部の体積である。)
【0019】
ヘルムホルツ共鳴現象が生じる系(以下、「ヘルムホルツ共鳴系」ともいう)は、例えば、ネックチューブ中の空気柱を「質量」、共鳴器内の空洞部の空気を「ばね」とする1自由度のばね-質量系に置き換えることができる。共鳴時、空気柱が空洞部の空気を圧縮・膨張する。圧縮時には空洞部の空気の内部エネルギーが増加して温度が上がり、膨張時には逆に内部エネルギーが減少して温度が下がる。共鳴周波数である数百Hzの圧縮・膨張サイクルは高速であるため、圧縮時に熱が系外に逃げ、膨張時に系外から流入する時間的余裕がなく、この圧縮・膨張変化は熱の出入りがない断熱変化となる。断熱変化ではポアソンの式「PV1.4=一定」(ここで、「1.4」は空気の比熱比κを示す)が成立する。また、ばね-質量系のばね定数は「1.4PS/V」で表され、質量は「ρSl」に相当するため、その時のばね-質量系の共振周波数、つまり共鳴周波数fは、下記の式(1)となる。
【0020】
【数2】
上記式(1)中、Pは空気の圧力、lはネックチューブの長さ、Sはネックチューブの断面積、Vは共鳴器内の空洞部の体積、ρは空気密度である。この式中の「1.4P」は空気の体積弾性率(圧縮率の逆数)に相当する。
【0021】
ここで、ヘルムホルツ共鳴系内に泡が存在すると、泡は多孔質であり吸音性を有するため、エネルギーは散逸する。つまり、音波はその泡を圧縮・膨張させ、そのときの泡の径を変化させるエネルギー分だけ音波のエネルギーは減少することになる。これはヘルムホルツ共鳴系内の空気が圧縮・膨張するときのエネルギーの一部が逃げることに相当し、それによる変化は、ポリトロープ変化で表すことができる。ポリトロープ変化ではPVが一定となり、このときのnをポリトロープ指数という。
泡径が小さいほど内圧が大きく、圧縮・膨張によるエネルギー損失は小さくなる。また、泡数が多いほどエネルギー損失は大きくなる。つまりnは泡の大きさや数の情報を持っているということができる。前述の断熱変化と同様に、ヘルムホルツ共鳴系内に泡から構成された泡層が存在し、ポリトロープ変化が生じた場合における共鳴周波数fbubbleは、下記式(2)のように表される。
【数3】
【0022】
上記式(2)中のP、l、S、V及びρは、上記式(1)と同じであり、nはポリトロープ指数である。つまり、予め得たP、l、S、V及びρの値に加えて、共鳴周波数fbubbleを測定することで、上記式(2)からポリトロープ指数nを算出することができる。
【0023】
なお、上記式(1)及び式(2)を組み合わせることで、下記式(3)が導き出される。
【数4】
つまり、上記式(3)から、ポリトロープ指数nは、ヘルムホルツ共鳴系内の空間の大きさを示す指標に依存していないことがわかる。そのため、ポリトロープ指数nは、飲用容器の形状には、理論的には依存しないことが理解できる。
【0024】
ところで、別途、動的フォームアナライザにより測定した泡の粒径から算出した損失エネルギーと、泡層を含む試料についての共鳴周波数から算出したポリトロープ指数nには、一定の関係性が認められることを確認した。例えば、泡層の体積(飲用容器を正面から観察した際の泡層の高さ)が同じであれば、泡層を構成する泡の粒径が小さくなるほど、ポリトロープ指数nは小さくなり、逆に、泡の粒径が大きくなるほど、ポリトロープ指数nは大きくなるという傾向があることが分かった。
つまり、本発明の一態様において、飲用容器に注いだ飲料から生じる泡の泡質は、飲用容器内に存在する、泡から構成された泡層のポリトロープ指数nを測定することで評価することができる。
【0025】
一方で、飲用容器が同じであっても、当該飲用容器内に注いだ飲料の体積(液層及び泡層の合計体積)や、液層と泡層の割合が異なる場合には、ポリトロープ指数nに差が出てしまうこともある。逆に、例えば、飲料の体積や液層と泡層の割合が一定となるように所定の飲用容器に飲料を注いだ2つの試料を用意すれば、この2つの試料の泡層の共鳴周波数fbubbleから算出されたポリトロープ指数nを比較することで、どちらの試料の方が、より細かい泡が生じているかを評価することができる。
つまり、ポリトロープ指数nは、同じ飲用容器を用いて、飲料の体積や液層と泡層の割合が同じになるように注いだ場合には、泡のきめ細かさを間接的に評価し得る指標とすることができる。
【0026】
本発明の一態様の泡質評価方法の工程(1)及び(2)において、測定及び評価に用いる装置としては、特に制限は無いが、例えば、図1に示す泡質評価装置が挙げられる。
図1に示す泡質評価装置1は、共鳴器10と、測定用アンプ20と、PC(パーソナルコンピュータ)30とを有する。以下、図1を用いて、工程(1)及び(2)について説明する。
【0027】
<工程(1)>
工程(1)は、飲用容器内に生じた泡のポリトロープ指数nを測定する工程である。
なお、本工程において、泡のポリトロープ指数nは、飲用容器内に存在する、泡から構成された泡層を測定対象とし、図1に示された泡質評価装置1を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、まず、図1に示すように、飲料を注いだ任意の飲用容器の上部に、共鳴器10を装着する。ここで、泡の泡質をより正確に評価する観点から、工程(1)において、飲料100は、飲用容器200の空洞部を満たすまで注がれている状態で、泡のポリトロープ指数nを測定することが好ましい。
なお、「飲用容器200の空洞部を満たすまで注がれている状態」とは、図1に示すように、泡層110の体積及び液層120の体積の合計体積が、飲用容器200の容積100体積%に対して、95~100体積%(好ましくは98~100体積%、より好ましくは99~100体積%、更に好ましくは99.9~100体積%)である状態を意味する。
【0028】
また、泡の泡質をより正確に評価する観点から、図1に示すように、飲料を注いだ前記飲用容器の上面を覆うように共鳴器を装着し、泡のポリトロープ指数を測定することが好ましい。
さらに、共鳴器は、アダプターを介して前記飲用容器の上面を覆うように装着されることがより好ましい。飲用容器に装着側の共鳴器の端面の断面形状(断面の直径)が、飲用容器の上面の断面形状(断面の直径)と異なる場合であっても、予めこれらの形状に対応したアダプターを用いることで、共鳴器と飲用容器とをアダプターを介して確実に接続することができる。その結果、より正確に泡のポリトロープ指数を測定することができる。
なお、本工程では、前記飲用容器の全体を覆うように共鳴器を装着してもよいが、より簡便に泡質を評価する観点から、図1のように、上面を含む飲用容器の一部を覆うように共鳴器が装着されていれば十分である。
【0029】
図1に示す共鳴器10は、スピーカー11と、スピーカー11の音波を発する前面側を囲み、空洞部(a)を構成する前面エンクロージャー13と、前面エンクロージャー13の空洞部(a)よりも水平断面が小さい空洞部(b)を構成するネックチューブ14と、両端をそれぞれネックチューブ14及びアダプター16と接続し、飲用容器200と連結されたアダプター16と共に、ネックチューブ14の空洞部(b)よりも水平断面が大きい空洞部(c)を備える筒体15を備えている。
なお、図1に示すように、共鳴器10は、スピーカー11の振動を発する側とは反対の背面側を囲む背面エンクロージャー12を備えていてもよい。
【0030】
図1に示す共鳴器10において、スピーカー11の音波を発する前面側は、前面エンクロージャー13、ネックチューブ14、及び筒体15の順で連結され、さらに筒体15と飲用容器200とがアダプター16を介して連結されている。
そして、共鳴器10内の空洞部は、前面エンクロージャー13内の空洞部(a)、ネックチューブ14内の空洞部(b)、並びに、筒体15及びアダプター16内の空洞を合わせた空洞部(c)から構成されている。スピーカー11から発された音波は、空洞部(a)、空洞部(b)、及び空洞部(c)の順で空気の振動として伝達される。ここで、上述のとおり、ネックチューブ14の空洞部(b)の水平断面は、空洞部(a)の水平断面、及び、空洞部(c)の水平断面よりも小さい構成となっている。
そのような構成のため、図1に示す共鳴器10においては、前面エンクロージャー13内の空洞部(a)と、筒体15及びアダプター16で構成された空洞部(c)が「バネ」とし、ネックチューブ14内の空洞部(b)が「重り」とする「1自由度の振動系」を構成する。そして、その際の共振周波数が、上記式(1)で表される共鳴周波数fや、上記式(2)で表される共鳴周波数fbubbleに相当する。
【0031】
上述のとおり、アダプター16は、共鳴器10の筒体15と飲用容器200とを連結するためのものであり、飲用容器200の上面の断面形状に合わせて適宜選択することができる。
例えば、図1においては、飲用容器200の上面の断面形状が、筒体15の断面形状よりも大きい場合に、アダプター16を介した飲用容器200と筒体15との連結態様を示している。
また、図2においては、飲用容器200の上面の断面形状が、筒体15の断面形状よりも小さい場合に、アダプター16aを介した飲用容器200と筒体15との連結態様を示している。
なお、飲用容器内の泡層110の表面の少なくとも一部が、空洞部(c)内の空気と接触するようにアダプター16、16aは装着されていればよい。
【0032】
ここで、上記式(2)中の共鳴器10内の空気の圧力P、ネックチューブの長さl、ネックチューブの断面積S、共鳴器内の空洞部の体積Vは、空気密度ρは、事前に測定する等によって、予め定めている。そのため、共鳴周波数fbubbleを測定することで、上記式(2)から、ポリトロープ指数nを算出することができる。
【0033】
具体的な手順としては、PC30を操作し、測定用アンプ20を経て、共鳴器10のスピーカー11から音波を発信した後、マイクロフォン等によって得た応答信号の周波数スペクトルから、共鳴周波数fbubbleを決定する。また、動電型スピーカーのコイルインピーダンスの変化から共鳴周波数fbubbleを決定することもできる。
決定した共鳴周波数fbubbleから、PC30によって、上記式(2)に基づきポリトロープ指数nを算出することができる。
【0034】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で測定した前記ポリトロープ指数nの値に基づき、前記泡の泡質を評価する工程である。
上述のとおり、ポリトロープ指数nは、飲用容器の形状には依存しない指標であるが、当該飲用容器内に注いだ飲料の体積や、液層と泡層の割合の違いによって、差が出てしまうこともある。
このようなポリトロープ指数nの特性を考慮すると、比較対象となる飲用容器に飲料を注いだ比較サンプルのポリトロープ指数nを測定し、当該比較サンプルと同じ飲用容器を用いて、飲料の体積、及び液層と泡層の割合を比較サンプルに併せて飲用容器に注いで算出した評価サンプルのポリトロープ指数nとを比べる相対評価にて評価する方法が好ましい。
このように、同じ飲用容器を用いて、飲料の体積や液層と泡層の割合が同じになるように注いだ場合には、ポリトロープ指数nは、複数のサンプルで対比することができ、泡のきめ細かさを間接的に評価し得る指標とすることができる。
【0035】
なお、本工程の評価に際しては、図1のPC30に、比較サンプルのポリトロープ指数nの値を予め設定しておき、それぞれの評価サンプルのポリトロープ指数nを算出すると同時に、ポリトロープ指数nの値を基づく評価を同時に行うように設定しておいてもよい。
本工程の評価の基準に関しては、任意に定めることができる。
【0036】
〔泡質評価方法の活用例〕
本発明の一態様の泡質評価方法の活用例としては、特に制限はないが、例えば、以下に示す活用例が挙げられる。
【0037】
<活用例(1):容器詰め飲料での態様>
本発明の一態様の泡質評価方法において、飲料は、缶もしくはペットボトルに詰められた容器詰め飲料であってもよい。この態様においては、起泡性飲料が缶もしくはペットボトルに詰められた容器詰め飲料であることが好ましい。
近年、起泡性飲料が詰められた容器詰め飲料の缶の注入口に取り付ける、手動式又は電動式の携帯用サーバーが広まりつつある。携帯用サーバーは、缶に振動を与えて、きめ細かな泡を生じさせるものであるが、本発明の一態様の泡質評価方法によって、携帯用サーバーを用いることで、きめ細かな泡が生じていることを確認することができる。
具体的には、缶の注入口に携帯用サーバーを取り付けた容器詰め飲料と、当該携帯用サーバーを有さない容器詰め飲料を用意し、同じ形状の飲用容器に起泡性飲料をそれぞれ注いで、上述の工程(1)でポリトロープ指数nを得て、工程(2)で、両者のポリトロープ指数nを比較することで、携帯用サーバーを用いることの利点を確認することができる。
また、同様にして、開発途中の携帯用サーバーを、簡易的に評価するための手段としても活用することができる。
【0038】
<活用例(2):泡層の泡持ちを評価する態様>
本発明の一態様の泡質評価方法によって、飲用容器に飲料を注いだ際に生じる泡から構成された泡層の泡持ちを評価することもできる。この態様においては、飲料が、起泡性飲料であることが好ましい。
具体的には、飲用容器に注いだ飲料から泡が生じた直後の泡層のポリトロープ指数nを測定し、一定時間経過ごとに、泡層のポリトロープ指数nを再び測定し、ポリトロープ指数nの変化度合いによって、泡層の泡持ちを評価することができる。つまり、ポリトロープ指数nの変化度合いが大きいほど、経時で泡の泡径が変化してしまっていると推測できる。本発明の一態様の泡質評価方法によれば、このような泡層の泡持ちの評価を、簡便に行うことができるため、飲料(特に、起泡性飲料)の開発現場では有用であるといえる。
なお、この態様における飲料としては、起泡性飲料が好ましいが、更にビールテイスト飲料であることがより好ましい。上述のとおり、ビールテイスト飲料を飲用容器内に注いだ際に生じる泡の泡質は、口当たりや味わい等への影響が大きく、また、炭酸ガスを飲料中に閉じ込めるという性質もあるため、重要である。
【0039】
<活用例(3):飲料の注ぎ方を訓練する態様>
本発明の一態様の泡質評価方法は、飲料が起泡性飲料であり、当該起泡性飲料が樽に詰められた樽詰め飲料であって、ディスペンサーを用いて、飲用容器に起泡性飲料を注がれた際に生じた泡の泡質を、当該泡質評価方法によって評価することができる。
なお、樽詰め飲料としては、ビールテイスト飲料が樽に詰められた樽詰め飲料であることが好ましい。ディスペンサーを使用する個人の力量によって、生じる泡の泡質は、非常に異なる場合がある。つまり、習熟者がディスペンサーを用いて、飲用容器に起泡性飲料を注いで生じた泡の泡質は非常にきめ細かくなる一方で、経験が浅い人物がディスペンサーを用いて注いで生じた泡の泡質は粗くなってしまうことが非常に多い。特に、起泡性飲料がビールテイスト飲料である場合に、泡の泡質は、口当たりや味わい等への影響が大きい。
【0040】
そのため、本発明の一態様の泡質評価方法によって、飲料の注ぎ方を訓練することができ、本発明は、例えば、以下に示すような訓練方法も提供することができる。注ぎ方の訓練対象とする飲料は、上述のとおり、起泡性飲料であることが好ましく、ビールテイスト飲料であることがより好ましい。
本発明の一態様の訓練方法によって、起泡性飲料が樽に詰められた樽詰め飲料を、ディスペンサーを用いて、起泡性飲料を注ぐ訓練を行うことが好ましい。
具体的な訓練方法としては、例えば、いわゆる習熟者がディスペンサーを用いて、飲用容器に起泡性飲料を注いだ熟練者サンプルを用意する。そして、その熟練者サンプルの飲料の体積及び液層と泡層の割合を測定すると共に、当該熟練者サンプルのポリトロープ指数nも併せて測定する。
一方で、経験不足の訓練者は、ディスペンサーを用いて、比較サンプルと同じ形状の飲用容器に起泡性飲料を注いで訓練者サンプルを用意し、当該訓練者サンプルの起泡性飲料の体積及び液層と泡層の割合を測定し、同じくポリトロープ指数nも測定する。
ここで、まず、訓練者サンプルの「起泡性飲料の体積」及び「液層と泡層の割合」について、熟練者サンプルの値と比較することで、起泡性飲料の量の調整や、液層と泡層の割合の調整といった項目の評価を行うことができる。なお、このような「起泡性飲料の体積」及び「液層と泡層の割合」は比較的測定がし易い。
【0041】
しかしながら、訓練者が「起泡性飲料の体積」及び「液層と泡層の割合」が熟練者サンプルと同じような訓練者サンプルを用意できたとしても、両サンプルの泡の泡質に大きな違いがある場合が多い。泡質の評価は官能的になる場合が多く、効果的な訓練ができないという問題がある。
この問題に対して、本発明の一態様の泡質評価方法によって、両サンプルのポリトロープ指数nを比較することで、泡質の差異を「数値」として評価することも可能となる。また、身近に熟練者がいない場合であっても、予め熟練者の「起泡性飲料の体積」及び「液層と泡層の割合」と共に、ポリトロープ指数nの値をデータベース化しておくことで、訓練者が用意した訓練者サンプルのポリトロープ指数nを測定し、データベース化された熟練者サンプルのポリトロープ指数nの値と比較することで、泡質を客観的に評価することができる。
【実施例
【0042】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、本実施例において、泡の平均泡粒径は、以下のように測定した。
(平均泡粒径の測定)
動的フォームアナライザ(Kruess社製DFA100)を用いて、泡層に対して、動的フォームアナライザに設置されたCCDカメラによって泡粒径分布を測定し、その泡粒径分布の50%粒径(D50)を平均泡粒径とした。
【0043】
[泡のきめ細やかさの評価]
試験例1~2
缶にビールテイスト飲料が詰められた容器詰め飲料を2つ用意し、開封後に缶の注入口に電動式の携帯用サーバーを取り付けた。そして、容積が430mLの飲用容器A、及び、容積が700mLの飲用容器Bに、電動式の携帯用サーバーを作動させながら、ビールテイスト飲料を、液層/泡層=7/3(体積比)であり、且つ、各飲用容器の容積の100体積%となるように注いだ。そして、注いだ際に生じた泡に対して、図1に示すような泡質評価装置を用いて、ポリトロープ指数nを測定した。また、泡粒径測定のために、別に用意した、飲用容器A及び飲用容器Bについても、上記と同じ条件となるように、ビールテイスト飲料を注ぎ、上述のとおり動的フォームアナライザによって、平均泡粒径も測定した。この測定は5回行い、その平均値を表1には記載している。
【0044】
試験例3~4
電動式の携帯用サーバーを使用しない以外は、試験例1及び2と同様に、容積が430mLの飲用容器A、及び、容積が700mLの飲用容器Bをそれぞれ2つずつ用意し、ビールテイスト飲料を、液層/泡層=7/3(体積比)であり、且つ、各飲用容器の容積の100体積%となるように注いだ。そして、注いだ際に生じた泡に対して、試験例1及び2と同様に、ポリトロープ指数n及び平均泡粒径をそれぞれ測定した。この測定は5回行い、その平均値を表1には記載している。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より、試験例1と試験例2、及び、試験例3と試験例4を比べると、ポリトロープ指数の値は、飲用容器の形状に依らないことが分かる。
また、試験例1と試験例3、及び、試験例2と試験例4を比べると、同じ形状の飲用容器であれば、泡平均粒径の違いによって、ポリトロープ指数に差異が生じていることが分かる。
【0047】
[飲料の注ぎ方の評価]
試験例5~6
ビールテイスト飲料が樽に詰められた樽詰め飲料を用意し、ディスペンサーを用いて、容積が430mLの飲用容器Aに、ビールテイスト飲料を、液層/泡層=7/3(体積比)であり、且つ、各飲用容器の容積の100体積%となるように注いだ。ここで、試験例5では、熟練者がディスペンサーを用いて注ぎ、試験例6では、訓練者がディスペンサーを用いて注いだ。
そして、注いだ際に生じた泡に対して、試験例1及び2と同様に、ポリトロープ指数n及び平均泡粒径も測定した。この測定は5回行い、その平均値を表2には記載している。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から、ポリトロープ指数と泡平均粒径との間には相関関係があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の泡質評価方法によれば、飲料(特に、起泡性飲料)を飲用する環境における重要な品質特性である泡質(泡の細かさ)を評価することができ、より好ましい飲用状況を生み出すことで、飲料の生産量の増加に貢献できる。例えば、習熟者が飲用容器に飲料を注いだ際に生じた泡のポリトロープ指数を基準として、訓練者が注いだ際に生じた泡のポリトロープ指数と対比して、訓練者の飲料の注ぎ方の技能向上を図ることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 泡質評価装置
10 共鳴器
11 スピーカー
12 背面エンクロージャー
13 前面エンクロージャー
14 ネックチューブ
15 筒体
16、16a アダプター
a、b、c 空洞部
20 測定用アンプ
30 PC
100 飲料
110 泡層
120 液層
200 飲用容器
図1
図2