(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】雨樋支持構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E04D13/072 502T
(21)【出願番号】P 2019239396
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591109061
【氏名又は名称】株式会社野島角清製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】野島 隆志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】水科 義信
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-014223(JP,U)
【文献】特開平10-219945(JP,A)
【文献】実開昭59-142328(JP,U)
【文献】特開2006-183346(JP,A)
【文献】特開2000-145062(JP,A)
【文献】特開2016-211262(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1742559(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に間隔を置い
て並設固定され
た複数の雨樋支持具
により長尺な雨樋
を支持
する雨樋支持構造であって、前記
複数の雨樋支持具は、
夫々、前記建物に固定される固定部材
と、
この固定部材に上下方向にスライド移動自在に設けられ
前記雨樋を支持可能に構成される樋支持部材と、
この樋支持部材のスライド移動を規制して
該樋支持部材の前記固定部材に対す
る高さ位置を
位置決めするスライド規制部材
と、このスライド規制部材により位置決めされた前記樋支持部材を前記固定部材に固定する固定手段とを備え、
前記固定部材には、上下方向に孔長を有する長孔に形成された取付孔が設けられ、また、前記樋支持部材には、前記取付孔に連通させる上下方向に孔長を有する長孔に形成された連通孔が設けられ、また、前記スライド規制部材は、連通状態の前記取付孔と前記連通孔とに挿通装着され、且つ、このスライド規制部材に取付孔の孔縁と連通孔の孔縁とが当接することで前記固定部材に対する前記樋支持部材のスライド移動が規制されるように構成され、さらに、前記スライド規制部材
は、夫々に並設順番を示す表示が設けら
れると共に、この表示の順に異なる長さに設定され、この長さの異なる
前記スライド規制部材
により前記固定部材に対する前記樋支持部材の高さ位置
を異ならせた複数の雨樋支持具が、前記表示が示す並設順番通りに
前記建物に所定間隔を置いて固定されることによ
り、前記雨樋が所定の勾配を有して
配設されるように構成されていることを特徴とする雨樋支持構造。
【請求項2】
請求項1記載の雨樋支持構造において、前記スライド規制部材には、前記固定部材若しくは前記樋支持部材に係止してこのスライド規制部材を固定部材若しくは樋支持部材から外止状態とする係止部が設けられていることを特徴とす
る雨樋支持構造。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の雨樋支持構造において、前記表示
は数字であることを特徴とす
る雨樋支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の雨樋支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨樋は、建物の軒付近に一定間隔をおいて固定された複数の雨樋支持具に支持されることで軒先に設置されている。
【0003】
また、雨樋は、雨水を流すために水勾配を有するようにして設置されている。
【0004】
具体的には、従来の雨樋支持具には、軒付近に固定される固定部に対し雨樋を支持する樋支持部が上下スライド移動調整可能に設けられているものがあり(例えば特許文献1参照)、このような雨樋支持具を使用した場合は、樋支持部の高さを順次異ならせるようにして複数の雨樋支持具を軒付近に固定することで、この複数の雨樋支持具(の樋支持部)に支持した雨樋を傾斜させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような樋支持部の上下スライド移動調整が可能な従来の雨樋支持具を使用する場合、樋支持部の高さ調整作業は、樋支持部の高さを決定した上で樋支持部が動かないようにしっかりと手で押さえながら固定ボルトを締付操作して位置固定するが、締付が完了する前に樋支持部の位置が動いてしまい易く、正確な高さ位置に固定することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来の雨樋支持構造の問題点に注目し、これを解決しようとするもので、複数の雨樋支持具の樋支持部材の高さを、長さの異なる複数のスライド規制部材を装着することによって容易に決定でき、建物の幅方向に間隔を置いて固定される複数の雨樋支持具に適正な勾配を伴って雨樋を容易に支持できる実用性に優れた雨樋支持構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
建物1に間隔を置いて並設固定された複数の雨樋支持具2により長尺な雨樋3を支持する雨樋支持構造であって、前記複数の雨樋支持具2は、夫々、前記建物1に固定される固定部材4と、この固定部材4に上下方向にスライド移動自在に設けられ前記雨樋3を支持可能に構成される樋支持部材5と、この樋支持部材5のスライド移動を規制して該樋支持部材5の前記固定部材4に対する高さ位置を位置決めするスライド規制部材6と、このスライド規制部材6により位置決めされた前記樋支持部材5を前記固定部材4に固定する固定手段9とを備え、前記固定部材4には、上下方向に孔長を有する長孔に形成された取付孔7が設けられ、また、前記樋支持部材5には、前記取付孔7に連通させる上下方向に孔長を有する長孔に形成された連通孔8が設けられ、また、前記スライド規制部材6は、連通状態の前記取付孔7と前記連通孔8とに挿通装着され、且つ、このスライド規制部材6に取付孔7の孔縁と連通孔8の孔縁とが当接することで前記固定部材4に対する前記樋支持部材5のスライド移動が規制されるように構成され、さらに、前記スライド規制部材6は、夫々に並設順番を示す表示Nが設けられると共に、この表示Nの順に異なる長さに設定され、この長さの異なる前記スライド規制部材6により前記固定部材4に対する前記樋支持部材5の高さ位置を異ならせた複数の雨樋支持具2が、前記表示Nが示す並設順番通りに前記建物1に所定間隔を置いて固定されることにより、前記雨樋3が所定の勾配を有して配設されるように構成されていることを特徴とする雨樋支持構造に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の雨樋支持構造において、前記スライド規制部材6には、前記固定部材4若しくは前記樋支持部材5に係止してこのスライド規制部材6を固定部材4若しくは樋支持部材5から外止状態とする係止部10が設けられていることを特徴とする雨樋支持構造に係るものである。
【0011】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の雨樋支持構造において、前記表示Nは数字であることを特徴とする雨樋支持構造に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成したから、固定部材若しくは樋支持部材にスライド規制部材を装着するだけの簡易作業で複数の雨樋支持具の固定部材に対する樋支持部材の高さ位置を正確に定めることができ、しかもスライド規制部材に示されている表示の並設順番通りに複数の雨樋支持具を建物に所定間隔を置いて固定するだけで、複数の雨樋支持具の樋支持部材に雨樋を適正勾配をもって確実に支持できる極めて実用性に優れた雨樋支持構造となる。
【0013】
また、本発明においては、固定部材に対し樋支持部材が上下方向にスライド移動自在に設けられる雨樋支持具の構成、並びにスライド規制部材によって固定部材に対し樋支持部材のスライド移動が規制される雨樋支持具の構成を簡易構成にして容易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成の雨樋支持構造となる。
【0014】
さらに、本発明は、スライド規制部材による樋支持部材のスライド規制状態を固定手段により確固に位置決め固定可能となる。
【0015】
また、請求項2記載の発明においては、固定部材若しくは樋支持部材に対しスライド規制部材が装着保持されて樋支持部材のスライド移動が確実に規制される一層実用性に優れた構成の雨樋支持構造となる。
【0016】
また、請求項3記載の発明においては、雨樋支持具の並設順番を一見して容易に理解できる表示付のスライド規制部材を簡易に設計実現可能となる一層実用性に優れた構成の雨樋支持構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1の使用状態を示す概略説明正面図である。
【
図2】実施例1の使用状態を示す、建物の屋根と雨樋を切欠いた側面図である。
【
図3】実施例1の雨樋支持具を示す説明分解斜視図である。
【
図4】実施例1の雨樋支持具の内側固定体と内側樋支持体とスライド規制部材とを示す分解斜視図である。
【
図5】実施例1の雨樋支持具の外側固定体と外側樋支持体とスライド規制部材とを示す分解斜視図である。
【
図6】実施例1のスライド規制部材を示す説明正面図である。
【
図7】実施例1の、連通状態の取付孔と連通孔とにスライド規制部材を挿通させようとする状態を示す説明部分拡大側断面図である。
【
図8】
図7に続いて、連通状態の取付孔と連通孔とにスライド規制部材を挿通させた状態を示す説明部分拡大側断面図である。
【
図9】
図8に続いて、スライド規制部材の下縁に取付孔の下側孔縁が当接すると共にスライド規制部材の上縁に連通孔の上側孔縁が当接して固定部材に対する前記樋支持部材のスライド移動が規制され(スライド規制部材で樋支持部材の高さ位置が定められ)、この状態が固定手段で固定されている様子を示す説明部分拡大側断面図である。
【
図10】実施例2の施工手順1を示す側面図(a)、並びに内側固定体と内側樋支持体とを省略した正面図(b)である。
【
図11】実施例2の施工手順2(使用状態)を示す側面図(a)、並びに内側固定体と内側樋支持体とを省略した正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
本発明で用いる雨樋支持具2は、建物1に固定される固定部材4に、前記雨樋3を支持可能な樋支持部材5が上下方向にスライド移動自在に設けられ、さらにこの固定部材4若しくは樋支持部材5に装着されることで樋支持部材5のスライド移動を規制して固定部材4に対する樋支持部材5の高さ位置を定めるスライド規制部材6を備えている。
【0020】
また、このスライド規制部材6は、長さの異なるものが複数用意されていると共に、夫々に並設順番を示す表示Nが設けられている。
【0021】
即ち、長さの異なるスライド規制部材6が装着される複数の雨樋支持具2は、固定部材4に対する樋支持部材5の高さ位置が夫々異なるものとなり、この複数の雨樋支持具2が、前記表示Nが示す並設順番通りに建物1に所定間隔を置いて固定されると、この複数の雨樋支持具2の前記樋支持部材5に前記雨樋3が所定の勾配を有して支持されることとなる。
【0022】
従って、本発明の雨樋支持具2は、固定部材4若しくは樋支持部材5にスライド規制部材6を装着するだけで固定部材4に対する樋支持部材5の高さ位置が定まるので、従来の雨樋支持具に比して樋支持部材5の高さ調整作業が著しく容易に行われることとなり、しかもスライド規制部材6に示されている表示Nの並設順番通りに複数の雨樋支持具2を建物1に所定間隔を置いて固定するだけで、複数の雨樋支持具2(の樋支持部材5)に適正勾配をもって雨樋3を支持できる。
【実施例1】
【0023】
本発明の具体的な実施例1について
図1~
図9に基づいて説明する。
【0024】
本実施例の雨樋支持構造は、
図1に示すように、建物1に間隔を置いて雨樋支持具2が複数並設固定されて、この複数の雨樋支持具2で長尺な雨樋3が支持されている。
【0025】
また、本実施例は、折板屋根11を具備する建物1が図示されていて、この折板屋根11の軒側端部に取付可能な雨樋支持具2を用いた雨樋支持構造に適用した場合を示しているが、本発明の雨樋支持具2は折板屋根11取付用に限定されるものではなく、適宜設計変更可能である。
【0026】
本実施例の雨樋支持具2について説明すると、建物1に固定される固定部材4に、前記雨樋3を支持可能な樋支持部材5が上下方向にスライド移動自在に設けられている。
【0027】
具体的には、固定部材4は、前記折板屋根11の山部の下面側に固定されて折板屋根11の山部の下方に配設される内側固定体13と、折板屋根11の山部の上面側に固定されて折板屋根11の軒先に突設される外側固定体14とから構成されている。
【0028】
内側固定体13は、帯状の金属板が
図2~
図4に示すような逆L字状に折曲形成されて構成され、上側の横板部は、前記折板屋根11の下面に面接状態で固定し得るように構成されていると共に、下側の縦板部には、上下方向に孔長を有する取付孔7が貫通形成されていて、後述する樋支持部材5の内側樋支持体21を重合連結し得るように構成されている。
【0029】
外側固定体14は、帯状の金属板が
図2,
図3,
図5に示すような逆L字状に折曲形成されて構成され、上側の横板部は、前記折板屋根11の上面に近接状態で固定し得るように構成されていると共に、下側の縦板部には、上下方向に孔長を有する取付孔7が貫通形成されていて、後述する樋支持部材5の外側樋支持体22を重合連結し得るように構成されている。
【0030】
また、内側固定体13の折板屋根11への固定構造は、
図2,
図3に示すように、内側固定体13の上側横板部にボルト孔15が間隔を置いて複数(図面は二箇所)貫通形成され、このボルト孔15に位置を対応させて折板屋根11の山部にも図示省略の取付穴が複数貫通形成され、例えば下側縦板部を建物1側に向けた内側固定体13の上側横板部を折板屋根11の山部の下面に当接させてボルト孔15を取付穴と位置合せした上で、複数のボルト孔15に夫々下方から座金(山座金)17を介し固定ボルト18を挿通してこの固定ボルト18のボルト杆部を折板屋根11の山部より上方へ突出させ、この上方に突出しているボルト杆部に防水材付座金19を挿通した上で固定ナット20を螺着することにより、内側固定体13が折板屋根11の山部の軒側端部に固定されて折板屋根11の山部の軒側端部の下方に配設されている。
【0031】
また、前記外側固定体14の折板屋根11への固定構造は、外側固定体14の上側板部に、前記ボルト孔15に位置を対応させて複数(図面は二箇所)のボルト通し孔16が貫通形成され、下側縦板部を軒先側に向けた外側固定体14のこのボルト通し孔16に、前記固定ナット20より上方に突出している前記固定ボルト18のボルト杆部を挿通させて、このボルト通し孔16から上方へ突出する固定ボルト18のボルト杆部に固定ナット20を螺着することにより、外側固定体14が折板屋根11の山部の軒側端部に固定されて軒先に突出状態に配設されている。
【0032】
そして、この外側固定体14の下側縦板部と前記内側固定体13の下側縦板部とが、建物1の内外方向に対向状態で垂下配設するようにして固定部材4が折板屋根11に固定されている(
図2参照)。
【0033】
樋支持部材5は、前記内側固定体13の下側縦板部に連結されて折板屋根11の山部の下方に配設される内側樋支持体21と、前記外側固定体14の下側縦板部に連結されて折板屋根11の軒先に配設(突設)される外側樋支持体22とから構成されている。
【0034】
内側樋支持体21は、帯状の金属板が
図2~
図4に示すようなL字状に折曲形成されて構成され、上側の縦板部は、その上部に上下方向に孔長を有する連通孔8が貫通形成されていて、この連通孔8を前記内側固定体13の取付孔7に連通させつつ内側固定体13の下側縦板部に面接重合状態で連結し得るように構成されていると共に、下側横板部が、断面転コ字状の前記雨樋3の底面を載置支持し得るように構成され、この際、上側縦板部の途中から下端に至る部位が雨樋3の(内側に配される)側壁部の外面を支持し得るように構成されている。
【0035】
外側樋支持体22は、
図2,
図3,
図5に示すような上下方向に長さを有する帯状の金属板で構成され、その上部に上下方向に孔長を有する連通孔8が貫通形成されていて、この連通孔8を前記外側固定体14の取付孔7に連通させつつ外側固定体14の下側縦板部に面接重合状態で連結し得るように構成されていると共に、途中から下端に至る部位が前記雨樋3の(外側に配される)側壁部の外面を支持し得るように構成されている。
【0036】
また、内側樋支持体21の下側横板部の先端部は、下方へ垂下折曲されていると共に、この垂下折曲片に内側接続孔25が貫通形成され、この内側接続孔25に連通させる外側接続孔26が外側樋支持体22の下端部に貫通形成されていて、連通させたこの内側接続孔25と外側接続孔26とに接続ボルト23を挿通し接続ナット24を螺着し締付けることで内側樋支持体21と外側樋支持体22とが接続されている。図中符号12は外側樋支持体22下端部(の前記外側接続孔26の周囲)と前記接続ナット24との間に介在させたバネ座金である。
【0037】
即ち、内側樋支持体21と外側樋支持体22とから成る転コ字状の前記樋支持部材5が構成されており、この樋支持部材5と前記固定部材4とで略方形枠状の雨樋支持具2が構成されている。
【0038】
また、樋支持部材5は、内側樋支持体21と外側樋支持体22とが接続ボルト23と接続ナット24によって着脱可能であるので、先に内側樋支持体21だけを固定部材4(内側固定体13)に連結しておき、内側樋支持体21の下側横板部に前記雨樋3を載置してからこの内側樋支持体21に外側樋支持体22を接続して雨樋3を樋支持部材5に支持するような設置の仕方も可能となるように構成されている。
【0039】
固定部材4に対する樋支持部材5の上下方向にスライド移動自在な連結構造について説明すると、前記内側樋支持体21と前記外側樋支持体22の上端部に、この内側樋支持体21と外側樋支持体22の上側部を前記内側固定体13と前記外側固定体14の下側縦板部の対向内側面に面接重合して前記取付孔7と前記連通孔8とを連通させた際に前記取付孔7に挿通配設されるスライド突片27が一体的に設けられている(
図4,
図5参照)。
【0040】
また、内側固定体13と外側固定体14の下側縦板部の下部には、ビス穴28が貫通形成され、このビス孔28に挿通されたビス29を、夫々内側樋支持体21と外側樋支持体22の連通孔8に挿通して挿通先端に蝶ナット30を螺着することで、内側樋支持体21の上側縦板部が内側固定体13の下側縦板部に重合連結されていると共に、外側樋支持体22の上部が外側固定体14の下側縦板部に重合連結されている。
【0041】
そして、スライド突片27が取付孔7に沿ってスライド移動可能且つビス29が連通孔8に沿ってスライド移動可能な範囲で固定部材4(内側固定体13と外側固定体14)に対し樋支持部材5(内側樋支持体21と外側樋支持体22)が上下方向にスライド移動自在に設けられている。
【0042】
本実施例では、固定部材4に対して樋支持部材5が80mm前後の上下スライド移動量を有するように、前記取付孔7及び連通孔8の孔長寸法等が設定構成されている。
【0043】
また、ビス29と蝶ナット30は、スライド移動可能な樋支持部材5(内側樋支持体21と外側樋支持体22)を固定部材4に対して位置決め固定するためのスライド固定手段9としても機能し、前記蝶ナット30を締付操作することで内側固定体13に対し内側樋支持体21を任意の高さ位置で締付固定し得ると共に、外側固定体14に対し外側樋支持体22を任意の高さ位置で締付固定し得るように構成されている。
【0044】
本実施例は、この固定部材4若しくは樋支持部材5に装着されることで樋支持部材5のスライド移動を規制して固定部材4に対する樋支持部材5の高さ位置を定めるスライド規制部材6を備えている。
【0045】
スライド規制部材6は、
図4~
図6に示すように、前記取付孔7及び前記連通孔8より上下幅の小さい金属製の方形縦板材が採用されていると共に、平面視で略L字状をなすように折曲形成されている。
【0046】
そして、このスライド規制部材6の一側板部が、連通させた取付孔7と連通孔8とに挿通させる挿通板部31として構成され、この挿通板部31を、連通状態の取付孔7と連通孔8とに連通孔8側から挿通すると、この挿通板部31と直交配設するスライド規制部材6の他側板部が係止部10(10A)として機能し、この係止部10Aが樋支持部材5(内側樋支持部材21と外側樋支持部材22)の連通孔8近傍の板面に面接係止することで、スライド規制部材6が取付孔7側へは抜止状態となるように構成されている。
【0047】
また、取付孔7と連通孔8とにスライド規制部材6の挿通板部31を挿通させた状態で、固定部材4(内側固定体13及び外側固定体14)に対し樋支持部材5(内側樋支持体21及び外側樋支持体22)を自重により下方へスライド移動させると、スライド規制部材6の下縁に取付孔7の下側孔縁が下方から当接すると共に、スライド規制部材6の上縁に連通孔8の上側孔縁が上方から当接することになり、これによって前記固定部材4(内側固定体13及び外側固定体14)に対する前記樋支持部材5(内側樋支持体21及び外側樋支持体22)のスライド移動が妨げられて(スライド規制されて)、固定部材4に対する樋支持部材5の高さ位置が定まるように構成されている(
図7~
図9参照)。
【0048】
また、このスライド規制部材6は、角部の上下縁部が凹状に切欠形成され、下部の凹状角縁の上縁部が、前記取付孔7の下側孔縁が下方から当接する規制下縁33として構成され、上部の凹状角縁の下縁部が、前記連通孔8の上側孔縁が上方から当接する規制上縁32として構成されて、この規制上縁32に連通孔8の上側孔縁が当接し、規制下縁33に取付孔7の下側孔縁部が当接している樋支持部材5のスライド規制状態では、前記規制上縁32に隣接し且つ前記挿通板部31側に存する凹状角縁の縦縁が係止部10(10B)として機能してこの係止部10Bが連通孔8の上側孔縁近傍に当接係止すると共に、前記規制下縁33に隣接し且つ前記挿通板部31側に存する縦縁が係止部10(10C)として機能してこの係止部10Cが取付孔7の下側孔縁近傍に当接係止して、スライド規制部材6が連通孔8側へも抜止状態となるように構成されている(
図9参照)。
【0049】
従って、樋支持部材5の高さが定められたら、最終的に前記固定手段9で位置決め固定するが、この際に手でスライド規制部材6を抜けないように押さえておかずともスライド規制部材6は外れないのでこの固定作業が容易に行われる。
【0050】
また、このスライド規制部材6は、長さ(上下幅)の異なるものが複数用意されていると共に、夫々に並設順番を示す表示Nが設けられている。
【0051】
この複数のスライド規制部材6の長さの違いは、建物1に固定する複数の雨樋支持具2の固定間隔(ピッチ)と、雨樋3に設定したい水勾配とによって決定する。
【0052】
例えば、建物1に50cm間隔で複数の雨樋支持具2を固定することとし、これらに支持する雨樋3の水勾配を1/300に設定した場合には、隣接する雨樋支持具2に対して約1.6mmの高低差を生じることになるので、複数のスライド規制部材6は、例えば最長のものが70mmであった場合、次に長いものが68.4mm、その次に長いものが66.8mmというように、1.6mmずつ上下幅(長さ)が短くなるものを用意する。
【0053】
また、このスライド規制部材6は、最も長さのあるものには他側板部に前記表示Nとして「1」の数字Nが刻設され、二番目に長いもの(「1」の表示Nがあるスライド規制部材6より約1.6mm短いもの)には「2」の数字Nが刻設され、同様にして長いものから順番に連番で各スライド規制部材6には数字Nが刻設されている。尚、数字Nは、逆に短いものから順番に連番で設けられていても良い。
【0054】
また、この表示Nとしての数字Nは、前記挿通板部31を取付孔7と連通孔8に挿通した際に、他側板部の外側に表出する板面に刻設されていて、この数字Nを作業者が容易に視認できるように構成されている。
【0055】
そして、この長さの異なるスライド規制部材6を装着することによって樋支持部材5の高さ位置が定められて前記固定手段9によって固定された複数の雨樋支持具2を、例えば
図1に示すように、前記表示Nが示す並設順番通りに建物1に左から所定間隔を置いて固定すると、スライド規制部材6の長さが短いものを装着している雨樋支持具2ほど樋支持部材5の高さが下方に位置することとなり、この複数の雨樋支持具2の前記樋支持部材5に前記雨樋3を支持すると、雨樋3が1/300勾配を有して設置されるように構成されている。
【実施例2】
【0056】
本発明の具体的な実施例2について
図10,
図11に基づいて説明する。
【0057】
本実施例は、雨樋支持具2の構成を前記実施例1とは異ならせた場合である。
【0058】
具体的には、前記固定部材4の外側固定体14と、前記樋支持部材5の外側樋支持体22とのスライド連結構造を異ならせて、この外側のスライド連結構造には、スライド規制部材6が装着されない構成(内側のスライド連結構造に装着されるスライド規制部材6だけで、固定部材4に対する樋支持部材5の高さ位置が定められる構成)が採用されている場合である。
【0059】
さらに詳しく説明すると、本実施例の外側固定体14は、下側縦板部の上部に前記取付孔7を有せず、この下側縦板部の下端寄りに、前記実施例1のビス穴28の代りに側方が開放する形状のビス受孔34が貫通形成されている。
【0060】
また、図示した外側固定体14は、上側横板部と下側縦板部の連設部分が傾斜形状となる略逆L字状形態に形成されている場合を示している。
【0061】
本実施例の外側樋支持体22は、上端部に前記スライド突片27を有せず、下端部が前記内側樋支持体21の下側横板部の先端部に軸ピン35を介して回動自在に連結されている。
【0062】
また、この外側樋支持体22の前記連通孔8には、前記ビス29が挿通され、このビス29に前記蝶ナット30が螺着されることにより、ビス29が連通孔8から脱落不能且つ連通孔8に沿って上下スライド移動自在に設けられている。
【0063】
また、この外側樋支持体22は、その上側部が前記外側固定体14の下側縦板部の外側面に面接重合されるように設定構成され、この際に前記ビス29が前記外側固定体14のビス受孔34に挿通装着されて、蝶ナット30の締付操作により外側固定体14に連結固定されるように(ビス29と蝶ナット30とが固定手段9として機能するように)構成されている。
【0064】
次に、本実施例の雨樋支持具2を用いた雨樋3の施工手順の一例を説明する。尚、本発明の施工手順は、以下に限定されるものではない。
【0065】
例えば、内側固定体13と外側固定体14を折板屋根11の山部の軒側端部に固定し、外側樋支持体22は、そのビス29を外側固定体14のビス受孔34に挿通装着せずに、前記軸ピン35を支点に下方へ回動させて垂下させておき、内側固定体13に対する内側樋支持体21の高さ位置を前記スライド規制部材6を用いて定める。尚、予めスライド規制部材6で内側固定体13に対する内側樋支持体21の高さ位置を定めてから、内側固定体13を折板屋根11に固定するようにしても良い。
【0066】
続いて、外側固定体13の下側縦板部の下端と、内側樋支持体21の下側横板部の先端との間の開放部分から雨樋3を入れて内側樋支持体21(の下側横板部)上に載置し(
図10参照)、垂下させておいた外側樋支持体22を、
図11中の矢印に示すように軸ピン35を支点として上方へ回動させることでビス29を前記ビス受孔34にその側方開口部を介して挿通させ、蝶ナット30を締付操作し外側樋支持体22の上端を外側固定体13の下側縦板部の下端に連結固定することで施工完了となる(
図11参照)。
【0067】
このように構成した本実施例の場合、長さの異なる複数のスライド規制部材6が一組分で足りるので、複数のスライド規制部材6が二組分必要になる前記実施例1に比してコスト安に設計実現可能となる。
【0068】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【0069】
尚、本発明は実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【0070】
例えば、実施例1,2は、いずれも内側と外側の二箇所にスライド連結構造を要する構成の雨樋支持具2が採用されている場合を示しているが、一箇所にだけスライド連結部を要する構成の雨樋支持具2が採用されていても良い。
【0071】
また、実施例1,2は、スライド規制部材6が取付孔7と連通孔8とに挿通装着されることで樋支持部材5のスライド移動が規制される構成が採用されている場合を示しているが、取付孔7と連通孔8に挿通されずに固定部材4と樋支持部材5とのいずれか一方若しくは双方に装着されて樋支持部材5のスライド移動が規制される構成のスライド規制部材6が採用されていても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 建物
2 雨樋支持具
3 雨樋
4 固定部材
5 樋支持部材
6 スライド規制部材
7 取付孔
8 連通孔
9 固定手段
10 係止部
N 表示・数字