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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】積層成型体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/42 20060101AFI20231116BHJP
   B29C 51/08 20060101ALI20231116BHJP
   B32B 1/00 20060101ALI20231116BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20231116BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231116BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20231116BHJP
   B29C 70/34 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B29C51/42
B29C51/08
B32B1/00 Z
B32B5/26
B32B27/36
D01F8/14 B
B29C70/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019189160
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021062568
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】室谷 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】田代 こゆ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-296165(JP,A)
【文献】特開平10-245759(JP,A)
【文献】特開平11-268159(JP,A)
【文献】特開2000-336581(JP,A)
【文献】特開2005-256268(JP,A)
【文献】特開2007-197890(JP,A)
【文献】特開2009-090548(JP,A)
【文献】特開2017-100422(JP,A)
【文献】特表2018-518382(JP,A)
【文献】特開2019-163582(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190342(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108790746(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 - 51/46
B29C 70/34
B29C 70/40 - 70/52
B32B 1/00
B32B 5/26
B32B 27/36
D01F 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分が高融点ポリエステル系重合体Aよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Bよりなる芯鞘型複合繊維が集積されてなる不織ウェブと、芯成分が高融点ポリエステル系重合体Cよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Dよりなる芯鞘型マルチフィラメント糸で製編されてなり、該芯鞘型マルチフィラメント糸相互間が固着していない伸長性編物とを積層してなる積層体を準備する工程と、
前記積層体を加熱して、前記低融点ポリエステル系重合体B及びDを軟化又は溶融させる予備加熱工程と、
前記予備加熱工程後に、前記低融点ポリエステル系重合体B及びDが固化する前に、冷間立体成型を施すことを特徴とする積層成型体の製造方法。
【請求項2】
芯成分が高融点ポリエステル系重合体Aよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Bよりなる芯鞘型複合繊維が集積されてなる不織ウェブと、芯成分が高融点ポリエステル系重合体Cよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Dよりなる芯鞘型マルチフィラメント糸で製編されてなり、該芯鞘型マルチフィラメント糸相互間が固着していない伸長性編物とを積層してなる積層体を準備する工程と、
前記積層体に立体成型を施すと共に加熱して、前記低融点ポリエステル系重合体B及びDを軟化又は溶融させる加熱加圧工程と、
前記加熱加圧工程後に、前記低融点ポリエステル系重合体B及びDを固化せしめることを特徴とする積層成型体の製造方法。
【請求項3】
低融点ポリエステル系重合体Dは、エチレングリコール、テレフタル酸、1,4-ブタンジオール及びジエチレングリコールを含む共重合体である請求項1又は2記載の積層成型体の製造方法。
【請求項4】
低融点ポリエステル系重合体Dは、エチレングリコール、テレフタル酸、1,4-ブタンジオール、カプロラクトン及びジエチレングリコールを含む共重合体である請求項1又は2記載の積層成型体の製造方法。
【請求項5】
低融点ポリエステル系重合体Bは、エチレングリコール、アジピン酸及びテレフタル酸を含む共重合体である請求項1又は2記載の積層成型体の製造方法。
【請求項6】
低融点ポリエステル系重合体Bは、エチレングリコール、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びジエチレングリコールを含む共重合体である請求項1又は2記載の積層成型体の製造方法。
【請求項7】
不織ウェブが、ニードルパンチにより芯鞘型複合繊維が三次元的に交絡されてなるものである請求項1又は2記載の積層成型体の製造方法。
【請求項8】
伸長性編物が緯編物又は経編物である請求項1又は2記載の積層成型体の製造方法。
【請求項9】
緯編物がワッフル丸編物である請求項8記載の積層成型体の製造方法。
【請求項10】
経編物がラッセル編物である請求項8記載の積層成型体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高剛性で耐衝撃性に優れた積層成型体の製造方法に関し、特に、自動車用のダッシュボードや電気機器用筐体等として好適に使用しうる積層成型体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のダッシュボード等として使用しうる高剛性の積層成型体として、本件出願人は、特許文献1に開示されている積層成型体を提案している。この積層成型体は、不織ウェブと布帛とが積層されてなり、不織ウェブ中の低融点重合体と布帛中の低融点重合体の溶融固化により一体化されてなるものである。
【0003】
【文献】特開2017-100422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1に開示されている積層成型体の製造方法の改良に関し、その課題は、立体成型したとき、表面に編物柄が現れる積層成型体を得る方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、立体成型時に編物を伸長させて編物柄を現出させると共に、積層体を一体化させることにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、芯成分が高融点ポリエステル系重合体Aよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Bよりなる芯鞘型複合繊維が集積されてなる不織ウェブと、芯成分が高融点ポリエステル系重合体Cよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Dよりなる芯鞘型マルチフィラメント糸で製編されてなり、該芯鞘型マルチフィラメント糸相互間が固着していない伸長性編物とを積層してなる積層体を準備する工程と、前記積層体を加熱して、前記低融点ポリエステル系重合体B及びDを軟化又は溶融させる予備加熱工程と、前記予備加熱工程後に、前記低融点ポリエステル系重合体B及びDが固化する前に、冷間立体成型を施すことを特徴とする積層成型体の製造方法に関するものである。また、本発明は、芯成分が高融点ポリエステル系重合体Aよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Bよりなる芯鞘型複合繊維が集積されてなる不織ウェブと、芯成分が高融点ポリエステル系重合体Cよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Dよりなる芯鞘型マルチフィラメント糸で製編されてなり、該芯鞘型マルチフィラメント糸相互間が固着していない伸長性編物とを積層してなる積層体を準備する工程と、前記積層体に立体成型を施すと共に加熱して、前記低融点ポリエステル系重合体B及びDを軟化又は溶融させる加熱加圧工程と、前記加熱加圧工程後に、前記低融点ポリエステル系重合体B及びDを固化せしめることを特徴とする積層成型体の製造方法に関するものである。
【0006】
本発明で準備する積層体は、不織ウェブと伸長性編物とが積層されてなるものである。不織ウェブは、芯成分が高融点ポリエステル系重合体Aよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Bよりなる芯鞘型複合繊維が集積されてなるものである。芯鞘型複合繊維は、短繊維であっても長繊維であってもよい。また、芯鞘型複合繊維以外の単相型繊維を含有させた不織ウェブとしてもよい。芯鞘型複合繊維は単に集積されているだけでも差し支えないが、取り扱いやすくするため、複合繊維相互間を三次元的に交絡させて、ある程度の形態安定性を付与しておくのが好ましい。三次元的に交絡させるには、芯鞘型複合繊維が集積されてなる不織ウェブに、ニードルパンチを施せばよい。パンチ密度は、10本以上/cm2であるのが好ましい。不織ウェブの目付は、500~1000g/m2程度であるのが好ましい。500g/m2未満であると、高剛性で耐衝撃性に優れた積層成型体を得にくくなる傾向が生じる。また、1000g/m2を超えると、均一な成型が行いにくくなる傾向が生じる。
【0007】
芯鞘型複合繊維の繊度は、1~4デシテックス程度である。芯鞘型複合繊維の芯成分である高融点ポリエステル系重合体Aとしては、一般的に、エチレングリコールとテレフタル酸の共重合体であるポリエチレンテレフタレートが用いられる。鞘成分としては、高融点ポリエステル系重合体Aよりも融点の低い低融点ポリエステル系重合体Bであれば、任意のものが用いられる。一般的には、低融点ポリエステル系重合体Bとして、エチレングリコール、アジピン酸及びテレフタル酸を含み、更に任意成分としてイソフタル酸及び/又はジエチレングリコールを含む共重合体を採用するのが好ましい。かかる共重合体よりなる鞘成分であると熱成型性が良好となるからである。すなわち、不織ウェブは比較的厚いものであるため、加熱時に表面と内部で温度差が生じたとしても、表面と内部で熱成型性に差が生じにくいからである。換言すれば、アジピン酸を共重合体成分として含むポリエステル共重合体は、広い範囲の温度で熱成型しうるのである。
【0008】
不織ウェブに積層される伸長性編物は、芯成分が高融点ポリエステル系重合体Cよりなり、鞘成分が低融点ポリエステル系重合体Dよりなる芯鞘型マルチフィラメント糸で製編されてなるものである。伸長性編物は、経方向又は緯方向の少なくともいずれか一方に伸長するものであれば、緯編であっても経編であってもよい。伸長することにより、立体成型が可能となり、編物柄が現出することになる。緯編の具体例としては、ワッフル丸編が好ましい。立体成型した場合、ワッフル組織により編物柄が鮮明に現れるからである。また、経編の具体例としては、ラッセル編が好ましく、特にダブルラッセル編がより好ましい。これも、編物柄が鮮明に現れるからである。
【0009】
芯鞘型マルチフィラメント糸は単糸繊度5~15デシテックス程度で、総繊度が300~1000デシテックス程度のものである。かかる芯鞘型マルチフィラメント糸を緯編機(丸編機を含む。)又は経編機に掛けることにより、伸長性編物を得ることができる。芯鞘型マルチフィラメント糸の高融点ポリエステル系重合体Cとしては、一般的に、エチレングリコールとテレフタル酸の共重合体であるポリエチレンテレフタレートが用いられる。低融点ポリエステル系重合体Dとしては、高融点ポリエステル系重合体Aよりも融点の低いものであれば、任意のものが用いられる。一般的には、低融点ポリエステル系重合体Dとして、エチレングリコール、テレフタル酸、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコールを含み、更に任意成分としてカプロラクトンを含む共重合体を採用するのが好ましい。かかる共重合体を鞘成分である低融点ポリエステル系重合体Dとして用いることにより、熱成型時の接着性が良好となり、毛羽立ちを少なくしうる。
【0010】
芯鞘型複合繊維及び芯鞘型マルチフィラメント糸中において、芯成分と鞘成分の重量割合は、芯成分:鞘成分=0.3~3:1(重量比)程度である。芯成分の重量割合が低すぎると、熱成型時の形態保持性が低下する傾向となる。また、芯成分の重量割合が高すぎると、熱成型時において、積層体が一体化されにくい傾向が生じる。なお、芯成分と鞘成分は、同心に配置されているのが好ましい。偏心して配置されていると、熱成型時に収縮が生じやすくなるため、積層成型体が収縮する傾向が生じる。
【0011】
不織ウェブと伸長性編物とが積層されてなる積層体は、無押圧又は若干の圧力下で加熱される予備加熱工程に導入される。この予備加熱工程で、芯鞘型複合繊維中の低融点ポリエステル系重合体B及び芯鞘型マルチフィラメント糸中の低融点ポリエステル系重合体Dのみを軟化又は溶融させる。すなわち、芯鞘型複合繊維中の高融点ポリエステル系重合体A及び芯鞘型マルチフィラメント糸中の高融点ポリエステル系重合体Cは当初の繊維形態を維持したままで、低融点ポリエステル系重合体B及び低融点ポリエステル系重合体Dを軟化又は溶融させるのである。したがって、予備加熱工程における加熱温度は、高融点ポリエステル系重合体A及びCの融点未満の温度で、低融点ポリエステル系重合体B及びDの融点以上の温度となる。
【0012】
予備加熱工程の後、直ちに、金型により冷間立体成型される。直ちにというのは、低融点ポリエステル系重合体B及びDが、軟化又は溶融している状態を維持している間に、すなわち、低融点ポリエステル系重合体B及びDが固化する前にということである。そして、金型で冷間立体成型されるわけであるが、金型は常温であるのが好ましい。金型が加熱されており、たとえば、低融点ポリエステル系重合体B及びDの融点近傍の温度に加熱されているのは、好ましくない。立体成型時には、積層体の部位によっては高荷重の負荷がかかり、金型の加熱と高荷重の負荷により、高融点ポリエステル系重合体A及びCが当初の繊維形態を維持しにくくなるからである。かかる状態になると、積層成型体の剛性が低下したり、耐衝撃性が低下するので、好ましくない。
【0013】
また、予備加熱工程を経ずに、立体成型と加熱を同時に行ってもよい。すなわち、加熱された金型に積層体を挟むことにより、立体成型と加熱を同時に行ってもよい。この場合は、低融点ポリエステル系重合体B及びDが軟化又は溶融する際に、立体成型が施される。その後、金型から取り外して冷却することにより、低融点ポリエステル系重合体B及びDが固化し、積層成型体を得られるのである。
【0014】
以上の工程を経て得られた積層成型体は、自動車用のダッシュボードや電気機器用筐体等の用途に好適に用いられる。もちろん、かかる用途だけではなく、自動車用の外装材又は内装材、吸音材(異音防止材)、インテリア部材又は各種板材の種々の用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る方法は、特定の不織ウェブと特定の伸長性編物を用い、特定の方法で立体成型するものであるため、表面に織物柄が現出した積層成型体が得られると共に、高剛性で、耐摩耗性及び耐衝撃性に優れた積層成型体が得られるという効果を奏する。
【実施例
【0016】
実施例1
[不織ウェブの準備]
芯成分として、エチレングリコールとテレフタル酸の共重合体(融点250℃)を準備した。鞘成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、アジピン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸の共重合体(融点200℃)を準備した。なお、ジオール成分としてのエチレングリコールは98.8モル%でジエチレングリコールは1.2モル%であり、ジカルボン酸成分としてのアジピン酸は18.8モル%でテレフタル酸は78.0モル%でイソフタル酸は3.2モル%である。上記した芯成分と鞘成分の両者を、複合紡糸孔を持つ紡糸装置に供給して、溶融紡糸を行い、芯鞘型複合長繊維を得た。芯成分と鞘成分の重量割合は、芯成分:鞘成分=7:3であった。芯鞘型複合長繊維を得た後、これを紡糸装置の下方に設けたエアーサッカーに導入し、高速で牽引細化して繊度3.3デシテックスの芯鞘型複合長繊維とした後、公知の開繊装置で開繊させ、移動するスクリーンコンベア上に捕集及び集積させて繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、一対の加熱ロール間に導入し、芯成分を軟化させて芯鞘型複合長繊維相互間を仮接着させた後、ニードルパンチ装置に搬送し、パンチ密度90本/cm2でニードルパンチを施して、重量900g/m2(厚み3mm)の不織ウェブを得た。
【0017】
[伸長性編物の準備]
芯成分として、エチレングリコールとテレフタル酸の共重合体(融点256℃で極限粘度[η]0.75)よりなるポリエチレンテレフタレートを準備した。鞘成分として、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール及びテレフタル酸の四元共重合体(融点183℃で極限粘度[η]0.70)よりなる共重合ポリエステルを準備した。なお、四元共重合体の共重合モル比は、エチレングリコール49.4モル%、1,4-ブタンジオール49.3モル%、ジエチレングリコール1.3モル%及びテレフタル酸100モル%である。なお、極限粘度[η]は、フェノールと四塩化エタンの等重量混合物を溶媒とし、濃度0.5g/dl及び液温20℃で測定したものである。
【0018】
孔径0.9mmで孔数48個の芯鞘型複合紡糸口金を具えた複合溶融紡糸装置に、上記したポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルを供給し、口金温度を285℃とし、ポリエチレンテレフタレート:共重合ポリエステル=2.7:1(重量比)として、複合溶融紡糸を行い、同心状芯鞘型複合接着性フィラメントを得た。得られた芯鞘型複合熱接着性フィラメント48本が集束した糸条に、常法により冷却、延伸及び弛緩処理を施して、560デシテックス/48フィラメントの芯鞘型マルチフィラメント糸を得た。
【0019】
上記した芯鞘型マルチフィラメント糸を釜径38インチで20ゲージの丸編機に掛けて、編機回転数12rpmでワッフル組織で製編し、重量273g/m2の伸長性ワッフル丸編物を得た。
【0020】
[積層成型体の製造]
上記で準備した不織ウェブと伸長性ワッフル丸編物を積層した積層体を、210℃に加熱した一対の金属平板にて、無押圧下で1分間挟んで予備加熱した。予備加熱後、直ちに20℃の雄型と雌型に挟み、雄型と雌型のクリアランスを2mmとして、1分間冷間立体成型を行い、積層成型体を得た。
【0021】
実施例2
伸長性編物として、芯鞘型マルチフィラメント糸の繊度を280デシテックス/48本に変更し、丸編機の釜径を33インチにゲージを22ゲージに変更し、重量133g/m2の伸長性ワッフル丸編物に変更した他は、実施例1と同一の方法にて積層成型体を得た。
【0022】
実施例3
不織ウェブの重量を、600g/m2(厚み2mm)とした他は、実施例2と同一の方法にて積層成型体を得た。
【0023】
比較例1
積層体に代えて、実施例1で準備した不織ウェブのみを用いて、実施例1と同一の方法で予備加熱及び冷間立体成型を行った成型体を得た。
【0024】
実施例1、2及び比較例1で得られた積層成型体から試験片を採取し、以下の方法で、耐摩耗性及び剛性の試験を行った。
【0025】
[耐摩耗性]
JIS L 0849に規定されている学振型摩耗試験機(摩擦試験機II型)の摩擦子の端面に、20mm×20mmの試験片を両面粘着テープで貼り付けた。一方、学振型摩耗試験機(摩擦試験機II型)の台には、30mm×230mmの大きさのサンドペーバー♯100を貼り付けた。そして、摩擦子に200gの荷重が掛けて、ストローク120mmで速度30往復/分の条件で、試験片を100往復摩耗した。摩擦子を100往復して摩耗した後の試験片の重量減少率(%)を測定した。その結果を表1に示した。
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 実施例2 比較例1
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重量減少率(%) 1.13 1.75 6.35
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【0026】
[剛性]
JIS K 7171の記載に準拠して、幅10mmで長さ80mmの試験片を、支点間距離64mm、試験速度10mm/分で曲げ試験を行った。圧子を編物面(A面)から負荷した場合と、不織ウェブ面(B面)から負荷した場合の最大曲げ応力(MPa)を測定した。また、曲げ応力が0.01Nから5N間の曲げ弾性率(MPa)を測定した。これらの結果を表2に示した。
[表2]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最大曲げ応力 曲げ弾性率
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A面 B面 A面 B面
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実施例1 3.98 3.49 180.9 184.3
実施例2 3.18 2.85 186.7 165.5
比較例1 2.12 2.11 171.4 157.8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0027】
実施例3及び比較例1で得られた積層成型体から試験片を採取し、以下の方法で、耐衝撃性の試験を行った。
【0028】
[耐衝撃性]
JIS K 5600-5-3 6.1に記載されたデュポン式衝撃変形試験器を用いて、30mm×30mmの大きさの試験片を、編物面を上にして撃ち台の中央に設置し、編物面に先端半径R=6.35mmの撃ち型を設置した。そして、500gのおもりを40mm、45mm又は50mmの高さに設置し、落下させて、試験片の状態を目視確認した。その結果を表3に示した。
[表3]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
おもりの高さ 実施例3 比較例1 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
40mm 破れなし 破れなし
45mm 破れなし 破れあり
50mm 破れあり 破れあり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0029】
以上の結果から、実施例に係る方法で得られた積層成型体は、比較例に係る方法で得られた成型体に比べて、耐摩耗性、剛性及び耐衝撃性に優れていることが分かる。