(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ロック装置、及びロック制御システム
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E05B49/00 Z
E05B49/00 J
E05B49/00 R
E05B49/00 S
E05B49/00 T
(21)【出願番号】P 2019191637
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000130433
【氏名又は名称】株式会社ゴール
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】水野 翔太
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105159(JP,A)
【文献】特開2016-94723(JP,A)
【文献】特開2017-2492(JP,A)
【文献】特開2017-210856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの動力を用いて扉を施解錠する施解錠動作が可能なロック部と、
前記扉に設けられたハンドルの
開閉操作による操作量を検出する
と共に、前記扉の外側に露出させることなく配置される検出部と、
前記ロック部による前記扉の施解錠動作を制御するロック制御部と、を有し、
前記操作量は、前記ハンドルの操作開始後、前記ハンドルが元の位置に戻るまでの時間として検出されるものであり、
前記ハンドルが所定の操作量以下であることを条件として、ロック制御部による施解錠動作が許容されるものであり、ハンドルが所定の操作量を超えて操作されることを条件として、ハンドルによる通常の開閉操作が許容されるものであることを特徴とするロックシステム。
【請求項2】
外部から所定の情報を取得可能な取得部と、
予め規定された認証マスター情報、及び前記取得部において取得した情報の照合により、施解錠の許可についての認証判定を行う認証部とを有し、
前記認証部により認証可能であるとの認証判定がなされることが、
前記ロック制御部による施解錠動作を許容する許容条件の一つとされることを特徴とする請求項
1に記載のロックシステム。
【請求項3】
外部から所定の情報を取得可能な取得部と、
予め規定された認証マスター情報、及び前記取得部において取得した情報の照合により、施解錠の許可についての認証情報の判定を行う認証部とを有し、
前記検出部により検出された前記操作量が所定範囲を逸脱することを条件として、前記認証部による前記認証情報の判定がなされ、
前記認証部により、前記認証情報が認証可能なものであるとの判定がなされることを条件として、前記ロック制御部による前記施解錠動作が許容されることを特徴とする請求項1
又は2に記載のロックシステム。
【請求項4】
認証情報を含む認証信号を無線通信により受信可能な取得部と、
特定の認証情報を含む認証信号を無線通信により発信可能な発信部と、
予め規定された認証マスター情報、及び前記取得部において受信した認証信号に含まれる認証情報の照合により、施解錠の許可についての認証情報の判定を行う認証部とを有し、
前記発信部が、前記取得部により前記認証信号を受信可能な領域の内外において携帯可能とされていることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載のロックシステム。
【請求項5】
前記発信部が、
前記取得部で取得可能な情報を無線
発信可能な携帯端末によって構成
されていることを特徴とする請求項
4に記載のロックシステム。
【請求項6】
前記扉が、
建物の屋内外を隔てるものであり、
前記扉に少なくとも前記ロック部、前記検出部、及び前記ロック制御部が配置されており、
前記検出部、及び前記ロック制御部が、
前記建物の外側に露出させることなく配置可能であることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載のロックシステム。
【請求項7】
アクチュエータの動力を用いて扉を施解錠する施解錠動作が可能なロック部を制御するロック制御システムであって、
前記扉に設けられたハンドルの
開閉操作による操作量を検出する
と共に、前記扉の外側に露出させることなく配置される検出部と、
前記ロック部による前記扉の施解錠動作を制御するロック制御部と、を有し、
前記操作量は、前記ハンドルの操作開始後、前記ハンドルが元の位置に戻るまでの時間として検出されるものであり、
前記ハンドルが所定の操作量以下であることを条件として、ロック制御部による施解錠動作が許容されるものであり、ハンドルが所定の操作量を超えて操作されることを条件として、ハンドルによる通常の開閉操作が許容されるものであることを特徴とするロック
制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック装置、及びロック制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されている施解錠システムのようなものがある。この施解錠システムは、玄関扉に適用され、住人が所持する携帯機と、携帯機と交信する制御装置と、制御装置に接続される操作部と、扉に設けられる電気錠とを備えたものとされている。この施解錠システムは、タッチスイッチ部を操作することにより認証成立した後、ユーザーが所持している携帯機から発信されるIDコードが認証成立となることを条件として、室外側から解錠することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した施解錠システム等においては、例えば9つのタッチスイッチ部等からなる操作部を、玄関扉の外部に露出するように取り付ける必要がある。このように、上述した施解錠システムのようなものにおいては、扉に対して操作部をなすスイッチ等の部材を別途設けねばならないという問題がある。これにより、例えば、扉の外部に露出する部品点数の増加によるコストアップや、扉の意匠性が損なわれる等の原因になりかねないという問題がある。
【0005】
また、例えば、マンション等の集合住宅等においては、仮に居住スペースが占有部であったとしても、外部に露出する玄関扉の外側は共用部として取り扱われ、他の扉との外観の統一性が求められるケースが多い。上述した施解錠システムのように扉に対して操作部をなすスイッチ等を別途設けねばならないものの場合には、扉の外観の統一性が損なわれることになるため、ユーザーが自由に取り付けられない場合があるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、扉に対してスイッチ等を別途設けなくても使用可能なロック装置、及びロック制御システムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明のロックシステムは、アクチュエータの動力を用いて扉を施解錠する施解錠動作が可能なロック部と、前記扉に設けられたハンドルの操作量を検出する検出部と、前記ロック部による前記扉の施解錠動作を制御するロック制御部と、を有し、前記検出部により検出された前記操作量が所定範囲を逸脱することが、前記ロック制御部による前記施解錠動作を許容する許容条件の一部又は全部とされることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のロックシステムでは、扉に設けられたハンドルの操作量を検出部により検出し、操作量が所定範囲を逸脱することを、ロック制御部による施解錠動作を許容するための許容条件としている。すなわち、本発明のロックシステムでは、扉に設けられているハンドルを所定範囲を逸脱するような操作量で操作するか否かを、施解錠動作を許容するか否かを判定するための条件(許容条件)の一部又は全部として用いることができる。すなわち、本発明のロックシステムでは、ハンドルを本来の目的である扉の開閉操作のために使用可能としつつ、ロック制御部による施解錠動作を行うためのものとしても活用できる。そのため、本発明のロックシステムでは、従来技術のように扉に対してスイッチ等を別途設けなくても良い。従って、本発明のロックシステムによれば、例えば扉の外部に露出する部品点数の抑制を図りつつ、扉の意匠性の変化を最小限に抑制できる。そのため、本発明のロックシステムは、例えば、集合住宅の玄関扉等のように、外観の統一性が求められる扉に対して好適に用いることができる。
【0009】
(2)上述したロックシステムにおいて、前記操作量は、前記ハンドルの操作時間であると良い。
【0010】
かかる構成とした場合、ハンドルの操作時間によりハンドルの操作量を把握し、施解錠動作の許容条件を満たすか否かを判定することができる。
【0011】
(3)上述したロックシステムは、前記操作量が所定範囲を下回ることが、前記許容条件の一部又は全部とされるものであると良い。
【0012】
かかる構成によれば、例えば通常のハンドル操作により見込まれる範囲の操作量を基準として、これを下回るような短時間のうちにハンドル操作を行う特殊な操作が行われることをロック制御部による前記施解錠動作を許容するための許容条件とすることができる。これにより、本発明のロックシステムでは、ハンドルを本来の目的である扉の開閉操作のために使用可能としつつ、ロック制御部による施解錠動作を許容する許容条件を満たすための操作を行うためのものとして活用することができる。
【0013】
(4)上述したロックシステムは、外部から所定の情報を取得可能な取得部と、予め規定された認証マスター情報、及び前記取得部において取得した情報の照合により、施解錠の許可についての認証判定を行う認証部とを有し、前記認証部により認証可能であるとの認証判定がなされることが、前記許容条件の一つとされるものであると良い。
【0014】
かかる構成によれば、ハンドルの操作量を基準とする条件に加え、取得部において外部から取得された所定の情報と認証マスター情報との照合による認証判定により認証可能との判定がなされることを、施解錠動作を許容する許容条件とすることができる。そのため、上述した構成によれば、少なくとも二つの許容条件を満足しなければ施解錠動作が許容されず、セキュリティ特性の高いロックシステムを提供できる。
【0015】
(5)上述したロックシステムは、外部から所定の情報を取得可能な取得部と、予め規定された認証マスター情報、及び前記取得部において取得した情報の照合により、施解錠の許可についての認証情報の判定を行う認証部とを有し、前記検出部により検出された前記操作量が所定範囲を逸脱することを条件として、前記認証部による前記認証情報の判定がなされ、前記認証部により、前記認証情報が認証可能なものであるとの判定がなされることを条件として、前記ロック制御部による前記施解錠動作が許容されるものであると良い。
【0016】
かかる構成によれば、ハンドルの操作量が所定範囲を逸脱することを条件として、認証部による認証情報の判定がなされることになり、ハンドルの操作量が所定範囲である条件下においては必ずしも認証部による認証情報の判定を行う必要がない。そのため、上述した構成によれば、認証部による認証判定の頻度を最小限に抑制できる。これにより、例えば消費電力の抑制等の効果が期待できる。
【0017】
ここで、上述したように取得部を設け、外部から取得した所定の情報の照合判定を行う方法として、例えば指紋、声、網膜、虹彩の特徴などの生体情報(身体情報)を用いた生体認証による方法や、何らかの入力デバイスを介してパスワード等を入力した情報を用いた認証方法等が考えられる。しかしながら、扉にスイッチ等を別途設けない構成とするためには、認証用の情報の取得用のデバイスについても、扉の外部への露出を抑制しつつ、情報を取得可能なものとすることが好ましい。
【0018】
(6)かかる知見に基づけば、上述したロックシステムは、認証情報を含む認証信号を無線通信により受信可能な取得部と、特定の認証情報を含む認証信号を無線通信により発信可能な発信部と、予め規定された認証マスター情報、及び前記取得部において受信した認証信号に含まれる認証情報の照合により、施解錠の許可についての認証情報の判定を行う認証部とを有し、前記発信部が、前記取得部により前記認証信号を受信可能な領域の内外において携帯可能とされているものであると良い。
【0019】
かかる構成によれば、携帯可能とされた発信部と取得部との無線通信により認証信号の送受信を行うことができ、扉の外部に取得部等が露出されるのを抑制できる。そのため、上述した構成によれば、扉の外観の変化を最小限に抑制しつつ取り付け可能なロックシステムを提供できる。
【0020】
(7)上述したロックシステムは、前記発信部が、無線通信可能な携帯端末に構成されているものであると良い。
【0021】
かかる構成によれば、携帯端末を発信部として活用することができ、より一層利便性の高いロックシステムを提供できる。
【0022】
(8)上述したロックシステムは、前記扉が、屋内外を隔てるものであり、前記建物の外側に露出させることなく配置可能なものであると良い。
【0023】
かかる構成によれば、例えば、集合住宅の玄関扉等のように、屋外に露出する扉に対して、扉の意匠性を変化させることなく取り付け可能なロックシステムを提供できる。
【0024】
(9)上述した課題を解決すべく提供される本発明のロック制御システムは、アクチュエータの動力を用いて扉を施解錠する施解錠動作が可能なロック部を制御するものであって、前記扉に設けられたハンドルの操作量を検出する検出部と、前記ロック部による前記扉の施解錠動作を制御するロック制御部と、を有し、前記検出部により検出された前記操作量が所定範囲を逸脱することが、前記ロック制御部による前記施解錠動作を許容する許容条件の一部又は全部とされることを特徴とするものである。
【0025】
本発明のロック制御システムでは、扉に設けられたハンドルの操作量を検出部により検出し、操作量が所定範囲を逸脱することを許容条件の一部又は全部として、ロック制御部による施解錠動作を許容する。このような構成とすることにより、本発明のロック制御システムでは、ハンドルを本来の目的である扉の開閉操作のために使用可能としつつ、ロック制御部による施解錠動作を許容する許容条件を満たすための操作を行うためのものとしても活用できる。そのため、本発明のロック制御システムでは、扉に対してスイッチ等を別途設けなくてもロック部を制御できる。従って、本発明のロック制御システムによれば、例えば扉の外部に露出するようにスイッチ等の部品を設けなくてもロック部の制御が行えるようになる。これにより、例えば、集合住宅の玄関扉等のように、外観の統一性が求められる扉に対しても取り付け可能とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、扉に対してスイッチ等を別途設けなくても使用可能なロック装置、及びロック制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係るロックシステム、及びロック制御システムを扉に設けた構成を例示した説明図である。
【
図2】
図1に示したロックシステム、及びロック制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示したロックシステム、及びロック制御システムによる制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係るロックシステム10、及びロック制御システム30について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
図1や
図2に示すように、ロックシステム10は、扉1に設けられたロック部20と、ロック制御システム30とを備えている。扉1は、例えば、家屋等の建物や各種の機械、器具、装置等に設けられるものである。本実施形態では、扉1は、例えば家屋の玄関等において建物の内外(屋内外)を隔てるように設けられたものとされている。また、扉1は、ハンドル3を備えている。扉1は、ハンドル3を操作することにより開閉可能とされている。具体的には、ハンドル3は、後に詳述するロック部20の動作機構部24に対して動力を入力することにより、ラッチ28を扉1の内側に向けて退入させ、扉1を開閉することができる。
【0030】
ロック部20は、扉1に対して取り付けられている。ロック部20は、アクチュエータ22、動作機構部24、デッドボルト26、及びラッチ28を備えている。ロック部20は、アクチュエータ22において発生した動力を、動作機構部24を介してデッドボルト26に伝達することによりデッドボルト26を作動させることにより、扉1を施解錠する動作(施解錠動作)を行うことができる。
【0031】
アクチュエータ22は、例えばモータや電動シリンダ等によって構成されており、電気的に作動可能なものとされている。動作機構部24は、アクチュエータ22及びデッドボルト26を動力伝達可能に繋ぐ機構を備えている。また、動作機構部24は、ハンドル3から入力された動力をラッチ28に伝達する機構を備えている。
【0032】
デッドボルト26は、動作機構部24を介してアクチュエータ22から動力を受けることにより、扉1の側面から突出、退入可能とされている。ロック部20は、デッドボルト26を扉枠(図示せず)に設けられた受け金具(ストライク)に向けて突出させることにより扉1を施錠状態とし、デッドボルト26を扉1側に退入させることにより、扉1を開錠状態とすることができる。
【0033】
ラッチ28は、ロック部20に設けられたバネ等の付勢部材(図示せず)により、扉1の側面から突出するように付勢されている。ラッチ28は、動作機構部24を介してハンドル3から動力を受けることにより、前述したバネの付勢力に反して扉1の内側に向けて退入可能とされている。ラッチ28は、扉枠(図示せず)に設けられた受け金具(ストライク)に向けて突出することにより、扉1を閉じた状態に維持することができる。また、ハンドル3の操作によりラッチ28を受け金具(ストライク)から退出させることにより、扉1を開閉可能な状態とすることができる。
【0034】
ロック制御システム30は、上述したロック部20による施解錠動作を制御するものである。ロック制御システム30は、検出部32、取得部34、発信部36、認証部38、及びロック制御部40を備えている。
【0035】
検出部32は、扉1に設けられたハンドル3の操作量を検出するものである。検出部32は、操作検出部32aと、時間導出部32bとを備えている。操作検出部32aは、ハンドル3の操作を検出するためのものである。操作検出部32aは、例えば、ハンドル3やロック部20に設けたセンサやスイッチ等によって構成すると良い。具体的には、例えば、ハンドル3が操作された状態と、元の位置に戻った状態(非操作状態)とでオンオフが切り替わるセンサ等によって構成すると良い。
【0036】
また、操作検出部32aは、例えば、ハンドル3が所定量以上動作することを条件として、ハンドル3が操作されたと検出するものであると良い。時間導出部32bは、操作検出部32aの検出結果に基づいてハンドル3の操作量を導出するものである。時間導出部32bは、例えば、操作検出部32aによりハンドル3が操作されたことを検出してから、ハンドル3が元の位置に戻るまでの時間を検出する等して、ハンドル3の操作量を導出するものとすると良い。
【0037】
取得部34は、後に詳述する認証部38における認証判定のために必要な情報を外部から取得するものである。取得部34は、例えば、指紋、声、網膜、虹彩等の生体情報(身体情報)や、パスワード、個人識別番号(PIN)等の情報、スマートカード、チップカード、ICカード、トークン、ワイヤレスキー(スマートキー)等の機器に設定された情報、携帯電話、スマートフォン、PDA、タブレット端末等の携帯型通信端末に設定された情報等を取得可能なものとすると良い。本実施形態では、後述するように認証部38における認証判定のために必要な情報を発信部36から発信可能とされており、取得部34は、発信部36から発信された情報を取得可能なものとされている。取得部34は、常時オン状態とされても良いが、認証部38が起動することを条件としてオン状態になるものであると良い。
【0038】
発信部36は、特定の認証情報を含む認証信号を無線通信により発信可能なものである。発信部36は、例えば、スマートカード、チップカード、ICカード、トークン、ワイヤレスキー(スマートキー)等の機器や、携帯電話、スマートフォン、PDA、タブレット端末等の携帯型通信端末等、認証信号を無線により発信可能な機器等によって構成すると良い。発信部36は、例えば、前述の機器類において認証信号を無線発信可能な物理的な部材によって構成したり、前述の機器類にソフトウェアをインストールすることにより認証信号を無線発信可能なものとしたりすると良い。本実施形態においては、発信部36は、ワイヤレスキー(スマートキー)に組み込まれたものとされている。そのため、発信部36は、取得部34により認証信号を受信可能な領域の内側だけでなく、当該領域の外部においても携帯可能とされている。
【0039】
認証部38は、ロック部20による施解錠の許可についての認証判定を行うものである。認証部38は、予め規定された認証マスター情報と、取得部34において取得した情報とを照合することにより、認証判定を行う。
【0040】
ロック制御部40は、ロック部20による扉1の施解錠動作を制御するものである。ロック制御部40は、所定の許容条件を満足することを条件として、施解錠動作を許容する制御を行う。ここで、許容条件は、一の条件、あるいは複数の条件の組み合わせとすることができる。本実施形態においては、許容条件は、複数の条件の組み合わせとされている。具体的には、ロック制御部40は、(1)検出部32により検出されたハンドル3の操作量が所定範囲を逸脱すること、及び(2)認証部38により認証可能であるとの認証判定がなされること、の二つの条件を許容条件として、ロック部20による施解錠動作を制御する。さらに詳細には、ロック制御部40は、検出部32により検出されたハンドル3の操作量が、通常に扉1を開閉する際に想定される時間の長さを基準時間とし、この基準時間よりも検出部32により検出されたハンドル3の操作量が短い場合に、前述した(1)の認証条件を満足するものと判断する。また、ロック制御部40は、ロックシステム10ごとに紐付けられた特定の認証情報を含む認証信号を取得部34において受信した場合に、前述した(2)の認証条件を満足するものと判断する。
【0041】
ロック制御システム30においては、
図3に示した動作フローに則って施解錠動作を行うように動作制御を行う。以下、
図3の動作フローを参照しつつ、ロック制御システム30において行われる制御について詳細に説明する。
【0042】
(ステップ1)
ステップ1においては、検出部32の操作検出部32aによりハンドル3の操作の検出が行われる。ステップ1において、ハンドル3が所定量以上動作することを条件として、ハンドル3が操作されたことが検出されると、制御フローがステップ2に進む。
【0043】
(ステップ2)
ステップ2では、検出部32の時間導出部32bにより、ハンドル3の操作量(ハンドル操作量)を導出する処理が行われる。具体的には、時間導出部32bは、ハンドル3の操作開始後、ハンドル3が元の位置に戻るまでの時間をハンドル操作量として導出する処理を行う。ハンドル操作量の導出が完了すると、制御フローがステップ3に進む。
【0044】
(ステップ3)
ステップ3において、ロック制御部40は、ハンドル操作量が所定範囲を逸脱しているか否かを判定する処理(操作量判定処理)を行う。具体的には、ロック制御部40は、通常に扉1を開閉する際に想定される時間の長さを基準時間に対し、ステップ2で導出されたハンドル操作時間が短いか否かにより操作量の判定を行う。ここで、ハンドル操作時間が基準時間よりも長い場合は、上記(1)に係るハンドル3の操作量に関する認証条件を満足しない。この場合は、ハンドル3の操作が通常の開閉操作によるものである蓋然性が高いため、以後の制御フローを経ること無く、制御フローがステップ1に戻る。一方、ハンドル操作時間が基準時間以下である場合は、上記(1)に係るハンドル3の操作量に関する認証条件を満足する。この場合は、制御フローがステップ4に進む。
【0045】
(ステップ4)
ステップ4において、取得部34において認証信号を受信しているか否かが確認される。取得部34への認証信号の入力が確認されると、制御フローがステップ5に進む。
【0046】
(ステップ5)
ステップ5においては、認証部34が起動し、ステップ4において受信した認証信号と、予め規定された認証マスター情報とを照合することにより、認証判定を行う。その後、制御フローがステップ6に進む。
【0047】
(ステップ6)
ステップ6においては、ステップ5において認証可能であるとの認証判定(認証OK判定)が行われたか否かが確認される。認証可能との判定(認証OK判定)がなされた場合には、上記(2)に係る認証条件を満足したものとして、制御フローがステップ7に進められる。一方、認証不能との判定(認証NG判定)がなされた場合には、上記(2)に係る認証条件を満足しないため、以後の制御フローを経ること無く、制御フローがステップ1に戻る。
【0048】
(ステップ7)
制御フローがステップ7に移行してきた場合には、上述した(1),(2)に係る双方の認証条件を満足した状態である。そこで、ロック制御部40は、ロック部20による施解錠動作を行わせる。具体的には、ロック制御部40は、ロック部20のアクチュエータ22に対して動作信号を出力し、アクチュエータ22を作動させる。ロック部20が施錠状態である場合、すなわちデッドボルト26が突出した状態である場合には、デッドボルト26が扉1側に退入した状態になるようにアクチュエータ22を作動させる。一方、ロック部20が開錠状態である場合、すなわちデッドボルト26が扉1側に退入した状態である場合には、デッドボルト1が扉枠(図示せず)に設けられた受け金具(ストライク)に向けて突出するようにアクチュエータ22を作動させる。これにより、一連の制御が完了する。
【0049】
上述したように、本実施形態のロックシステム10では、扉1に設けられたハンドル3の操作量を検出部32により検出し、操作量が所定範囲を逸脱することを、ロック制御部40による施解錠動作を許容するための許容条件としている。そのため、ロックシステム10では、ハンドル3を、本来の目的である扉1の開閉操作(ラッチ28の操作)のために使用可能としつつ、ロック制御部40による施解錠動作を行うための構成としても用いることができる。そのため、ロックシステム10では、従来技術のように扉1に対してスイッチ等を別途設けなくても良い。従って、ロックシステム10は、扉1の外部に露出する部品点数の増加を招いたり、扉1の意匠性を変化させたりすることなく取り付けることができる。そのため、例えば、集合住宅の玄関に設けられた扉1等のように、外観の統一性が求められるものに対して好適に用いることができる。
【0050】
上記実施形態で示したロックシステム10では、ハンドル3の操作量を、ハンドル3の操作時間によって把握することとしている。具体的には、検出部32として、ハンドル3の操作が行われた状態と非操作状態とでオンオフが切り替わるセンサを用い、当該センサのオンオフに基づいて時間導出部32bによってハンドル3の操作時間を検出することによって把握可能としている。そのため、ロックシステム10においては、簡単な構成によってハンドル3の操作量を適切に把握することができる。
【0051】
なお、上述した検出部32において、操作検出部32aをなすセンサやスイッチ等は、ハンドル3や、ハンドル3の座となる部分等、ハンドル3そのものやハンドル3の近傍に設けたり、ロック部20の内部等、ハンドル3に連動して動作する部分等に設置したりすると良い。また、上述した検出部32は、ハンドル3の操作量を検出するための構成の一例を示したものに過ぎず、他の構成によってハンドル3の操作量を検出可能としても良い。例えば、ハンドル3の回転角度や回転位置を検出可能なセンサやスイッチ、ラッチ28のようにハンドル3に連動して作動する部材の位置を検出可能なセンサやスイッチ等を用いてハンドル3の操作量を検出するようにすると良い。
【0052】
上述したように、本実施形態のロックシステム10は、操作量が所定範囲を下回ることを、ロック制御部40による施解錠動作を許容するための許容条件としている。これにより、ロックシステム10では、ハンドル3を本来の目的である扉1の開閉操作のために使用可能としつつ、ロック制御部40による施解錠動作を許容する許容条件を満たすための操作を行うためのものとして活用することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、ロックシステム10は、ハンドル3の操作量が所定範囲を下回ることを、ロック制御部40による施解錠動作を許容するための許容条件の一部とし、他の許容条件(本実施形態では認証部38により認証可能であるとの認証判定がなされること)を満足しなければ施解錠動作が許容されないものを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、扉1が玄関に設置されるもののように高いセキュリティ特性を求められる場所ではなく、他の場所に取り付けられるものである等する場合には、ハンドル3の操作量が操作量が所定範囲を下回ることを、ロック制御部40による施解錠動作を許容するための許容条件の全部としても良い。また、ロックシステム10は、(1)ハンドル3の操作量が所定範囲を逸脱すること、及び(2)認証部38により認証可能であるとの認証判定がなされることの2条件に加え、他の許容条件を設け、これらを満足することを条件として施解錠動作を許容するものとしても良い。
【0054】
上述したロックシステム10では、取得部34において外部から取得した情報と、予め規定された認証マスター情報との照合による認証判定を認証部38において行い、認証可能であるとの認証判定(認証OK判定)が行われることをロック制御部40による施解錠動作を許容するための許容条件の一つとしている。このように、ハンドル3の操作量が所定範囲を逸脱することだけでなく、認証部38により認証判定がなされることを許容条件としているため、例えば扉1が玄関に設置されるものである等して高いセキュリティ特性が求められる場所においても、ロックシステム10を好適に用いることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、認証部38において認証可能であるとの認証判定(認証OK判定)が行われることをロック制御部40による施解錠動作を許容するための許容条件の一つとする例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ロックシステム10は、認証部38において認証OK判定が行われることを施解錠動作の許容条件としないものや、認証OK判定が行われることに代えて、あるいは加えて他の許容条件を満足することを条件としてロック制御部40による施解錠動作を許容するもの等であっても良い。
【0056】
上述したロックシステム10では、一つ目の許容条件(上記(1)の条件)であるハンドル3の操作量が所定範囲を逸脱した状態であることが確認された後、二つ目の許容条件(上記(2)の条件)についての判定を行うべく、取得部34による情報の取得や認証部38による認証判定が行われる。そのため、ハンドル3の操作量が所定範囲である状況(上記(1)の条件を満足していない状況)や、ハンドル3の操作が行われていない状況においては、必ずしも認証部38による認証情報の判定を行う必要がない。そのため、ロックシステム10では、認証部38による認証判定の頻度を最小限に抑制できる。これにより、例えば消費電力の抑制等の効果が期待できる。
【0057】
また、上述したロックシステム10においては、発信部36が、ワイヤレスキー(スマートキー)に組み込まれたものとされ、取得部34と発信部36との無線通信により認証信号の送受信可能なものとされている。そのため、ロックシステム10においては、扉1の外部に取得部34等を露出させる必要がない。従って、ロックシステム10は、扉1の外観を変化させることなく取り付け可能であり、例えば、集合住宅の玄関扉等のように、外観の統一性が求められるものに対して好適に取り付け可能である。
【0058】
なお、本実施形態では、取得部34と発信部36との無線通信によって認証信号を送受信することにより認証判定を行えるものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、取得部34として、例えば指紋、声、網膜、虹彩の特徴などの生体情報(身体情報)を取得可能な装置や、パスワード等の入力デバイスを用いるものとしても良い。なお、このような装置を扉1に新たに設けると、扉1の意匠性(外観)が変化することになるため、例えば指紋センサをハンドル3の内側に設けたり、集音用のマイクを扉1の内側に設けたりする等、扉1の意匠性(外観)の変化を最小限に抑制できるようにすることが好ましい。
【0059】
上述したように、発信部36は、携帯電話、スマートフォン、PDA、タブレット端末等の携帯型通信端末等の無線通信可能な携帯端末に構成することができる。このような構成によれば、携帯端末を発信部36として活用することができ、より一層利便性の高いロックシステム10を提供できる。
【0060】
上述実施形態においては、屋内外を隔てる扉1に対してロックシステム10を設ける例を示したが、本発明はこれに限定されない。ロックシステム10が設けられる扉1は、例えば、家屋等の建物の内側(屋内)に設けられるものや、自動車、金庫、産業機器、工作機器等、各種の機械、器具、装置等に設けられるものにも好適に利用可能である。
【0061】
また、上記実施形態においては、ハンドル3として、回転操作を行うレバー式のものを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばプッシュプル式のものや、自動車の扉に設けられるグリップタイプやフラップタイプのようなもの等、適宜の形式のものとすることができる。
【0062】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、アクチュエータの動力を用いて扉を施解錠する施解錠動作が可能なロックシステムや、これを制御するためのロック制御システム全般において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 :扉
3 :ハンドル
10 :ロックシステム
20 :ロック部
22 :アクチュエータ
32 :検出部
34 :取得部
36 :発信部
38 :認証部
40 :ロック制御部