(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせ方法
(51)【国際特許分類】
B21B 39/14 20060101AFI20231116BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20231116BHJP
B21B 38/10 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B21B39/14 E
B21C51/00 N
B21B38/10 Z
(21)【出願番号】P 2019193858
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000182476
【氏名又は名称】寿産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086254
【氏名又は名称】小平 進
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 貞夫
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-007883(JP,A)
【文献】特開昭57-121810(JP,A)
【文献】実開昭63-025203(JP,U)
【文献】特開昭50-118956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 39/00 - 41/12
B21C 51/00
B21B 38/00 - 38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーガイド上に測定装置を取り付けて、この測定装置を利用して圧延ロールに形成してあるロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせをする方法であり、
上記測定装置は、測定器となる
と共に光線を発する測定センサーと、この測定センサーを保持する取り付け手段と、上記測定センサーから発せられる出力
である光線を受ける測定標識
となるゲージとから構成されており、
上記測定センサーを上記取り付け手段を通じて上記ローラーガイド
の上方に取り付け、上記
ゲージを上記ローラーガイド
上に取り付け、ゲージ本体の中心をガイドセンターに対向して設置し、
上記ゲージが測定標識となるようにし、
設置後、
上記測定センサーのセンサー本体から測定のための光線をこのセンサー本体の中心に対応しているセンサーセンター方向に向けて、そしてカリバーセンター方向に向けて、さらにガイドセンター方向に向けてそれぞれ照射し、
照射後に上記測定センサーにより上記測定センサーのセンサーセンターからロールカリバーのカリバーセンターまでの距離である両センターの位置ずれ
mと、上記センサーセンターからガイドセンターまでの距離となる両センターの位置ずれ
nとをそれぞれ測定して、
測定値となる上記位置ずれm,nが上記センサー本体の表示部に表示され、
その後、上記測定センサーにより測定した双方の位置ずれ
m,nの差
eを算出し、
算出後、上記ローラーガイドを上記圧延ロールの幅方向に
上記差eである分だけ移動させて、移動に伴って変化する上記測定センサーの測定寸法が測定センサー
の上記センサー本体の表示部に測定値の目盛りとして表示され、この目盛りが上記差
eに相当する値に至った時点で上記ローラーガイドの移動を停止する
ことを特徴とするロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせ方法。
【請求項2】
取り付け手段には取り付け用スタンドが用いられており、この取り付け用スタンドはローラーガイド上に着脱可能な主スタンド部とこの主スタンド部の上端部に設けられている上保持部とを備え、この上保持部が測定センサーを保持していることを特徴とする請求項1記載のロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせ方法。
【請求項3】
測定標識はゲージからなり、ゲージはゲージ本体とローラーガイド上に取り付けられかつ上記ゲージ本体を支持しているゲージ受け台とを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延ロールに形成されているロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延材を熱間や冷間圧延する際、圧延ロールに加工されているロールカリバー(ロール溝)のカリバーセンターと、圧延材を誘導するために用いられる誘導装置(ローラーガイド)のガイドセンターとを位置合わせする(一致させる)ことが必要である。位置合わせ(一致)精度が悪いと、圧延製品の寸法精度が悪くなり、またガイド部品(ローラー、ローラーピン、ベアリングなど)の摩耗や破損が起きる。
従来は、作業者の目視によりロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターを一致させていたが、一致のための作業に熟練を要し、一致の精度が必ずしも十分なものではなかった。
このため実開昭59-114216号公報に開示されているようにロールカリバーとガイドローラーとの芯ずれ検出装置が提案されている。この検出装置は芯ずれを検出してもこのずれを修正するものではない。
そこで、例えば実開昭62-15806号公報に記載されているようなセンタリング冶具を用いて圧延ロールのカリバーに対して入口ガイドのセンターを合わせる方法が提案されている。この従来例では、丸鋼圧延ロールの下ロールのカリバーと同形でカリバー芯位置の刻み目を有するハンドル付きのカリバーゲージと、後部の座面からカリバーゲージの刻み目をねらう高さに突端を有する一定厚さのカリバーセンタリング器具を用いてカリバーに対して入口ガイドをセンター合わせしてから、入口ガイドを据え付けるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭59-114216号公報
【文献】実開昭62-15806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例である実開昭62-15806号公報に開示されているように、カリバーに対して入口ガイドをセンター合わせする方法にあっては目視と比較して精度良く位置合わせができるものの、カリバーゲージのゲージ板はロールカリバーの多種多様な幅の長さ寸法や深さ寸法に対応するには限界があり、適用範囲を広げるためには多種類のカリバーゲージのゲージ板を準備しておく必要があると思われる。このように、上記従来例に示されている方法にあっては、位置合わせの対象となるロールカリバー及び入口ガイドはどのような機種でも適用可能にならないものと予想される。
本発明の目的は、ロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせを迅速にしかも精度を高く処理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴は、ローラーガイド上に測定装置を取り付けて、この測定装置を利用して圧延ロールに形成してあるロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせをすることにある。
上記測定装置は、測定器となると共に光線を発する測定センサーと、この測定センサーを保持する取り付け手段と、上記測定センサーから発せられる出力である光線を受ける測定標識となるゲージとから構成されている。
上記測定センサーを上記取り付け手段を通じて上記ローラーガイドの上方に取り付け、上記ゲージを上記ローラーガイド上に取り付け、ゲージ本体の中心をガイドセンターに対向して設置し、上記ゲージが測定標識となるようにし、
設置後、上記測定センサーのセンサー本体から測定のための光線をこのセンサー本体の中心に対応しているセンサーセンター方向に向けて、そしてカリバーセンター方向に向けて、さらにガイドセンター方向に向けてそれぞれ照射し、
照射後に上記測定センサーにより上記測定センサーのセンサーセンターからロールカリバーのカリバーセンターまでの距離である両センターの位置ずれmと、上記センサーセンターからガイドセンターまでの距離となる両センターの位置ずれnとをそれぞれ測定して、測定値となる上記位置ずれm,nが上記センサー本体の表示部に表示され、その後、上記測定センサーにより測定した双方の位置ずれm,nの差eを算出し、算出後、上記ローラーガイドを上記圧延ロールの幅方向に上記差eである分だけ移動させて、移動に伴って変化する上記測定センサーの測定寸法が測定センサーの上記センサー本体の表示部に測定値の目盛りとして表示され、この目盛りが上記差eに相当する値に至った時点で上記ローラーガイドの移動を停止することにある。
本発明の第2の特徴は、第1の特徴を前提としており、取り付け手段には取り付け用スタンドが用いられており、この取り付け用スタンドはローラーガイド上に着脱可能な主スタンド部とこの主スタンド部の上端部に設けられている上保持部とを備え、この上保持部が測定センサーを保持していることにある。
本発明の第3の特徴は、第1又は第2の特徴を前提としており、測定標識はゲージからなり、ゲージのゲージ本体はローラーガイド上に取り付けられているゲージ受け台に支持されていることにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせを目視によることなく迅速にしかも高精度で処理することができ、位置合わせに熟練を要さず、圧延製品の寸法精度を改善することができ、ガイドローラーなどのガイド部品の摩耗や破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせ方法の実施形態を示し、上記ロールカリバーに対するローラーガイドの位置合わせ開始時の平面図である。
【
図2】本発明に係るロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせ方法の実施形態を示し、上記ロールカリバーに対するローラーガイドの位置合わせ開始時の正面図である。
【
図3】センサーセンターとカリバーセンターとの位置ずれ、センサーセンターとガイドセンターとの位置ずれを拡大して示す説明図である。
【
図4】
図1の開始状態からローラーガイドを横移動してロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとを位置合わせした状態を示す平面図である。
【
図5】
図1に示す位置合わせ方法を実施する際に使用している状態の測定装置の測定センサー及びこれを保持する取り付け用スタンドを示す図であって、(イ)は拡大正面図、(ロ)は起立状態にある取り付け用スタンドの上部を示す拡大正面図である。
【
図6】
図1に示す位置合わせ方法を実施する際に使用している状態の測定装置の測定センサー及びこれを保持する取り付け用スタンドを示す図であって、(イ)は拡大側面図、(ロ)は取り付け用スタンドの上部の垂直状態を示す拡大側面図である。
【
図7】
図1に示す位置合わせ方法を実施する際に使用している状態の測定装置のゲージを分解した状態を示す図であって、ゲージ本体をゲージ受け台に差し入れる直前の状態を示す拡大側面図である。
【
図8】
図1に示す位置合わせ方法を実施する際に使用している状態の測定装置のゲージにおけるゲージ受け台を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るロールカリバーのカリバーセンターとローラーガイドのガイドセンターとの位置合わせ方法の実施形態を説明する前に、この位置合わせ方法の実施をする際に使用する測定装置1について主に
図5~
図8を参照して説明する。
図5及び
図6に示す測定装置1は測定器2と、この測定器を保持すると共に、ローラーガイドG(
図2)上に取り付けるための取り付け手段となる取り付け用スタンド3と、測定器から発せられる出力を受けるゲージ4とから構成されている。ゲージ4についても、後述するようにローラーガイドG上に取り付けて使用する。
【0009】
測定器2については、
図5に示す例では光線を発する測定センサーが用いられている。測定センサー2のセンサー本体21は、背面側(
図5左側)から溝状のセンサーホルダー22により、その折り曲げ辺を介して抱持され、
図6に示すように四隅をねじ22aによって固定されている。センサーホルダー22には、その背面から取り付け用スタンド3の上保持部32に向けて軸受け部23を突出してある。センサーホルダー22には、
図5(ロ)に示すように軸受け部23を突設してある。センサーホルダー22は、軸受け部23を
図6(ロ)左右方向に貫通してある支点ピン5を中心として所定角度、例えば+/-10°揺動可能に取り付け用スタンド3の上保持部32に取り付けられている。軸受け部23は、上保持部32に差し込まれている状態で押しボルト34とばね圧調整ボルト35とにより挟持されている。ばね圧調整ボルト35にはばね36が巻回されており、ばねの強弱はばね圧調整ボルトの操作により行われる。
【0010】
取り付け用スタンド3は、
図5(イ)及び
図6(イ)に示すように主要部となる主スタンド部31と測定センサー2を軸受けする上保持部32とから構成されている。取り付け用スタンド3は、
図6(イ)に示すように主スタンド部31と上保持部32と接続板37を挟んでクランク状に一体化したものである。
取り付け用スタンド3の主スタンド部31は、ローラーガイドG(
図2)上に着脱可能である。この着脱を可能にするための手段として、
図6(イ)に示す例ではマグネット台6を使用する。マグネット台6は、主スタンド部31の底部に設けてあるマグネットホルダー33内に収納可能であり、使用時に予めねじ34により固定される。
取り付け用スタンド3の上端部に設けてある上保持部32は、
図5(イ)では反時計方向に傾斜されているため、センサー本体21及びセンサーホルダー22も取り付け用スタンドの上部と同じ方向に傾斜されている。取り付け用スタンド3の主スタンド部31及び上保持部32は補強板31a,32aにより補強されている。
【0011】
ゲージ4について主に
図7及び
図8を参照して説明する。
ゲージ4は測定センサー2から発せられる出力、例えば光線を受ける手段であると共に、ローラーガイドGのガイドセンターGLに対応して設置されている測定標識である(
図1及び
図4参照)。
ゲージ4はゲージ本体41とこれを支持するゲージ受け台42とからなる。ゲージ本体41は
図7に示すようにほぼY字形状に形成されており、本体上側が測定センサー2のセンサー本体21(
図2)からの光線を受ける溝形枠41aと、本体下側が上記溝形枠の中央底部から垂下されてゲージ受け台42にされた状態で支持されている支持片41bとからなる。41b1は、支持片41bに開けてある固定用孔である。
ゲージ受け台42の側面(
図8左側面)には、支持片41bを支持する受け溝42aを設けてある。支持片41bは、取り付け用孔42bを貫通する固定ボルト43によりゲージ受け台42に固定されている。支持片41bは、受け溝42aに挿脱可能に差し込まれている。受け溝42aは
図8の例では、ゲージ本体41が差し入れられた状態で右肩上がりに傾斜されるようにその傾斜角度が設定されている。この傾斜角度は、
図2に示すセンサー本体21及びセンサーホルダー22に沿っている。
【0012】
図1~
図3において、圧延機の圧延ロールRに設けてあるロールカリバーRCのカリバーセンターCLとローラーガイドGのガイドセンターGLとを位置合わせする(一致させる)方法について説明する。
まず、
図1及び
図2に示すようにローラーガイドG上に測定装置1を取り付ける。
取り付けの具体例を説明すると、ローラーガイドG上に測定センサー2における取り付け用スタンド3を取り付ける。その際、取り付けや取り外しの容易性を考慮して、主スタンド部31の底部にマグネット台6(
図6)をねじ止めしてこのマグネット台をローラーガイドG上に着磁させる。そして、
図2に示すようにゲージ4をローラーガイドG上に取り付け、このゲージが測定標識となるようにガイドセンターGL上に配置する。すなわち、ゲージ本体41の中心をガイドセンターGL上に対応させて、ゲージ4が測定標識となるようにする。その後、センサーホルダー22に測定センサー2のセンサー本体21を取り付ける。センサー本体21の中心(センサーセンターSL)がガイドセンターGLに対して+-数ミリメートルずれることは許容される。センサー本体21を圧延ロールR(
図2)の中心に向ける。この状態で、
図3に示すように、センサー本体21によりロールカリバーRCのカリバーセンターCLとセンサーセンターSLとの位置ずれmを測定する。また、センサー本体21によってガイドセンターGLとセンサーセンターSLとの位置ずれnを測定する。この時、センサー本体21の表示部(図示せず。)には測定値となる位置ずれm,nが表示される。
表示後には、センサーセンターSLからカリバーセンターCLまでの距離の測定値である位置ずれmと、センサーセンターからガイドセンターGLまでの距離の測定値となる位置ずれnとの差eを算出する。
【0013】
上述したように、
図1及び
図2に示す測定装置1をローラーガイドG上に取り付けてから上記差eを算出した後、ローラーガイドのガイドセンターGLの位置とロールカリバーRCのカリバーセンターCLとの位置とはずれているから、相互の位置が一致するように、ローラーガイドを手動又はモーターなどの自動移動装置により圧延ロールRの幅方向(
図1鎖線矢印方向)に上記差である(m-n)分だけ横移動させる。ローラーガイドGを(m-n)分に相当する距離だけ横移動させることにより、
図4に示すようにガイドセンターGLとカリバーセンターCLとを一致させることができる。ガイドセンターGLとカリバーセンターCLとが一致したことにより、ローラーガイドGの横移動を停止し、両センターの位置合わせ作業を終了する。
測定後は、測定装置1をローラーガイドG上から外す。この場合、マグネット台6はローラーガイドGに対して磁着可能であるから、ローラーガイドに対する測定装置1の取り付けや取り外しが容易となる。
【0014】
上例では測定装置1の測定器として測定センサー2を用いて説明したが、測定器は測定センサーに限定されない。ゲージ4は測定標識となるものであれば、その構成も上例に限定されない。
【符号の説明】
【0015】
RC ロールカリバー
CL カリバーセンター
G ローラーガイド
GL ガイドセンター
m,n 位置ずれ
R 圧延ロール
SL センサーセンター
1 測定装置
2 測定センサー(測定器)
21 センサー本体
22 センサーホルダー
3 取り付け用スタンド
31 主スタンド部
32 上保持部
4 ゲージ
41 ゲージ本体
42 ゲージ受け台