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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ラチェット機構を備えた継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/133 20060101AFI20231116BHJP
   F16B 39/282 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F16L37/133
F16B39/282 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019236977
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105418
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴博
(72)【発明者】
【氏名】湯川 大樹
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-085492(JP,U)
【文献】特開2011-141031(JP,A)
【文献】実開昭60-002006(JP,U)
【文献】登録実用新案第3217688(JP,U)
【文献】特表2016-519979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0036292(US,A1)
【文献】国際公開第2013/020298(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/144072(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110939802(CN,A)
【文献】国際公開第2020/070983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/133
F16B 39/282
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対回転させて接続するよう第1接続部を有する第1部材と、第2接続部を有する第2部材において、
前記第1部材および前記第2部材の何れか一方の部材に設けられ、相対回転の回転軸芯に対して周方向に配置されると共に前記一方の部材から突出する向きに弾性力を有する複数の爪を備えた爪部と、
前記第1部材および前記第2部材の何れか他方の部材に設けられ、前記爪部と係合する複数の歯が等間隔かつ環状に配置された歯部と、を有し、
前記複数の爪のうち、少なくとも一つの爪が前記複数の歯の一つと完全に係合する状態となり、少なくとも他の一つの爪が前記複数の歯の一つと完全に係合する状態とならないように構成されたラチェット機構を備えた継手。
【請求項2】
前記複数の爪および前記複数の歯の夫々が、前記周方向に沿って均等間隔に形成されている請求項1に記載のラチェット機構を備えた継手。
【請求項3】
前記複数の歯が前記周方向に沿って互いに均等間隔に形成されると共に、前記歯の総数Nhが前記爪の総数Ntの整数倍であり、
前記周方向に沿って隣接する前記歯どうしの前記回転軸芯を中心とした角度を歯ピッチPhとし、
前記周方向に沿って隣接する前記爪どうしの前記回転軸芯を中心とした角度を爪ピッチPtとするとき、
少なくとも何れか一つの爪ピッチPtが前記歯ピッチPhの整数倍とならないように構成されている請求項1に記載のラチェット機構を備えた継手。
【請求項4】
前記複数の爪のうち前記歯部に対して異なるタイミングで係合する爪を一つのグループとし、当該グループに属する前記爪の係合順序が、既に係合した前記爪を除き、一つ前に係合した爪に対して最も対角方向に近い位置にある爪が設定される請求項3に記載のラチェット機構を備えた継手。
【請求項5】
前記回転軸芯に沿う方向視において、
前記爪が前記歯に対して係止方向に当接した状態で、前記爪と前記歯との当接部および前記爪の揺動中心を結んで得られる直線を爪中心線とするとき、
前記歯における前記当接部での接線と前記爪中心線とのなす二つの交角のうち前記回転軸芯の側の角度が小さくなるように構成されている請求項1から4の何れか一項に記載のラチェット機構を備えた継手。
【請求項6】
前記爪部が、一部に切欠きを有する略環状の爪部本体と、当該爪部本体の複数個所に設けられた前記爪とを備えている請求項1から5の何れか一項に記載のラチェット機構を備えた継手。
【請求項7】
前記第1部材および前記第2部材に対して、互いに螺合可能な雄ねじ部および雌ねじ部の何れかを各別に形成してある請求項1から6の何れか一項に記載のラチェット機構を備えた継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材を互いに相対回転させて接続する際に逆回転防止効果を発揮する継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような継手に関連する技術としては、例えば以下の特許文献1に示すものがある。
【0003】
この技術は、弁機構を設けたカートリッジが水栓本体に装着される混合水栓において、カートリッジを水栓本体に固定するためのナットが容易に緩まないようにし、カートリッジの水栓本体への固定及び取り出しを容易に行なうものである。
【0004】
具体的には、水栓本体の上にカートリッジを配置し、このカートリッジを覆う筒状のナットを水栓本体のねじ部に螺合させる。その際に、カートリッジの一部に環状の緩み止め具を係合させた状態で配置し、当該緩み止め具の外周面に形成した複数の係止爪をナットの内面に係合させてナットの緩み止めを行う。
【0005】
緩み止め具の外周面には円周方向に沿った一部に連続配置された複数の傾斜爪が設けられている。これに対応するナットの内面には上記傾斜爪が係合可能な係合歯が全周に亘って形成されている。
【0006】
本構成によれば緩み止め具により混合水栓のナットが緩むことがなく、ナットは工具等を使用しなくても容易に螺合させることができるうえ振動等が発生しても緩むことがないとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-232253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術では緩み止め具に形成された傾斜爪およびナットに形成された係合歯はすべて同じ形状かつ同じピッチに形成されている。そのため、ナットを締め込む際には互いに係合する傾斜爪と係合歯とが同じ位相で相対移動し同じタイミングで係合する。
【0009】
このため、ナットの回り止め機能は例えば傾斜爪において隣接する爪どうしのピッチ分が最小単位となり、ナットの逆回転を規制する際に当該最小ピッチ分の緩み代が生じてしまう。よって、仮にナットを水栓本体に対して所定の強さに締め込んだ場合でも、上記一ピッチ分は緩み得るから、ナットにガタ付きが生じたり水栓本体との間に隙間が生じたりする。
【0010】
また、ナットを水栓本体に一杯に締め込んだとき、夫々の傾斜爪が全ての係合歯に対して完全に係合していない状態になっていると、その後、傾斜爪のクリープにより弾性力が損なわれる場合がある。その結果、ナットが緩み方向に回転するとき傾斜爪が機能せずナットが容易に緩む恐れがある。
【0011】
さらに、上記のごとく全ての傾斜爪および係合歯が係合する構成ではナットの締め付け操作に際して抵抗の増減が大きく、締め付け作業の円滑性が損なわれるおそれもある。
【0012】
このように、従来の継手では未だ解決すべき問題があり、緩み止め効果に優れた継手の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(特徴構成)
本発明に係るラチェット機構を備えた継手の特徴構成は、互いに相対回転させて接続するよう第1接続部を有する第1部材と、第2接続部を有する第2部材において、
前記第1部材および前記第2部材の何れか一方の部材に設けられ、相対回転の回転軸芯に対して周方向に配置されると共に前記一方の部材から突出する向きに弾性力を有する複数の爪を備えた爪部と、
前記第1部材および前記第2部材の何れか他方の部材に設けられ、前記爪部と係合する複数の歯が等間隔かつ環状に配置された歯部と、を有し、
前記複数の爪のうち、少なくとも一つの爪が前記複数の歯の一つと完全に係合する状態となり、少なくとも他の一つの爪が前記複数の歯の一つと完全に係合する状態とならないように構成されたラチェット機構を備えた点にある。
【0014】
(効果)
本構成は、等間隔に形成した複数の歯に対して複数の爪のうち少なくとも一つの爪が複数の歯の一つと完全に係合する状態となり、少なくとも他の一つの爪が完全に係合する状態とならないようにするものである。そのために、第1部材と第2部材とを相対回転させて接続する際に、歯に対して夫々異なるタイミングで係合する爪を複数設けておく。
【0015】
その結果、第1部材と第2部材が、例えば歯の1ピッチ分など所定角度に亘って相対回転する際に歯に対する爪の係合回数を増やすことができ、第1部材と第2部材との相対位相を細かいピッチで固定することができる。
【0016】
また、仮に、第1接続部と第2接続部との接合作業が完了したのち各爪の弾性力がクリープ等によって失われた場合でも、少なくとも一つの爪が歯に対して完全に係合しているから両者の接続状態が緩むことが防止される。
【0017】
(特徴構成)
本発明に係るラチェット機構を備えた継手にあっては、前記複数の爪および前記複数の歯の夫々が前記周方向に沿って均等間隔に形成されていると好都合である。
【0018】
(効果)
夫々の爪は径方向に沿って弾性を有するから、各爪は歯に完全に係合しない状態でも対向する歯に対して幾分の押圧力を付与する。よって、複数の爪および複数の歯の夫々が周方向に沿って均等間隔に配置されることで、爪から歯に作用する当接力が回転軸芯を中心としてバランス良く発生する。このため、仮に、第1部材の第1接続部と第2部材の第2接続部との間に遊びが存在する場合や、環状の爪部が第1部材に取り付けられている構成において爪部の回転軸芯と歯部の回転軸芯との間に位置ずれが生じる可能性がある場合でも、爪部の全体は歯部の回転軸芯に対して同軸芯上に位置し易くなる。このため各爪の歯に対する係合が確実に行われることとなる。
【0019】
また、第2部材に対する爪部のガタ付きが大きい場合に、係合した直後の爪の係合状態が安定するか否かが問題となる。しかし、爪が周方向に均等配置されることで、係合している爪以外の他の爪が対応する歯に対して押圧力を作用させ、爪部は当該係合している爪の側に付勢される。この結果、係合している爪の位置において歯部と爪部との間隔が最も狭くなり、結果として当該爪の係合が確実なものとなる。
【0020】
尚、本構成を有する爪部および歯部は、例えば、歯の総数が爪の総数の整数倍でないような場合に構成される。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係るラチェット機構を備えた継手としては、前記複数の歯が前記周方向に沿って互いに均等間隔に形成されると共に、前記歯の総数Nhが前記爪の総数Ntの整数倍であり、
前記周方向に沿って隣接する前記歯どうしの前記回転軸芯を中心とした角度を歯ピッチPhとし、
前記周方向に沿って隣接する前記爪どうしの前記回転軸芯を中心とした角度を爪ピッチPtとするとき、
少なくとも何れか一つの爪ピッチPtが前記歯ピッチPhの整数倍とならないように構成することができる。
【0022】
(効果)
複数の歯が周方向に沿って互いに均等間隔に形成され、歯の総数が爪の総数nの整数倍であれば、全ての爪が何れかの歯に同時に係合する構成とすることが可能である。ただし本構成は少なくとも何れか一つの爪が歯に完全に係合した状態となり、少なくとも何れか他の一つの爪が完全に係合しない状態となるよう歯および爪の構成を特定するものである。
【0023】
本構成の場合、特定の爪とこれに隣接する他の爪との爪ピッチPtが歯ピッチPhの整数倍とならないように留意しつつ爪の数および位置等を任意に設定することができる。よって、特に第1部材の形状決定において自由度が増し、製造の容易さやコストの面で有利な継手を得ることができる。
【0024】
(特徴構成)
本発明に係るラチェット機構を備えた継手にあっては、前記複数の爪のうち前記歯部に対して異なるタイミングで係合する爪を一つのグループとし、当該グループに属する前記爪の係合順序が、既に係合した前記爪を除き、一つ前に係合した爪に対して最も対角方向に近い位置にある爪が設定されるものであれば好都合である。
【0025】
(効果)
第1部材と第2部材とは相対回転しつつ接合されるが、両者が接合される過程にあっては互いの相対位置がある程度変化し、互いの回転軸芯どうしが偏位する可能性がある。このような状態で夫々の爪が順番に係合する場合、歯に作用する爪の弾性力を考慮すると歯に深く係合している爪については歯に作用する弾性力が少なくなる。よって、第1部材と第2部材との間隔は、当該係合している爪の位置で最も狭くなり、これと対角な位置で最も広くなる可能性がある。
【0026】
歯に係合する爪の弾性変形の様子を考慮すると、一つの歯を乗り越える直前の状態で爪は最も大きく弾性変形し、歯に作用させる弾性力が最大となる。このため、爪の係合順序を本構成のように設定することで爪の弾性変形が最大となる位置で第1部材と第2部材の間隔が広くなり爪への負担が軽減される。このため、爪の乗り越え動作がより円滑になり第1部材および第2部材の接続に際する操作力が軽減される。
【0027】
尚、ここで、複数の爪のうち歯部に対して異なるタイミングで係合する爪のグループは一つであってもよいし複数であっても良い。仮に、一つの爪の対角方向に他のグループに属する爪がある場合に必ずしも本構成の効果を奏しない場合があるため、一つのグループにおける爪の係合順序を規定するものである。
【0028】
(特徴構成)
本発明に係るラチェット機構を備えた継手にあっては、前記回転軸芯に沿う方向視において、前記爪が前記歯に対して係止方向に当接した状態で、前記爪と前記歯との当接部および前記爪の揺動中心を結んで得られる直線を爪中心線とするとき、前記歯における前記当接部での接線と前記爪中心線とのなす二つの交角のうち前記回転軸芯の側の角度が小さくなるように構成されていると好都合である。
【0029】
(効果)
本構成の爪は第1部材に対して弾性力を有しつつ変形可能であり、歯に対しては、歯を乗り越える際に第1部材に対して揺動可能である。その際には、第1部材において揺動中心が形成される。第1部材が第2部材と相対回転して、爪が歯に対して乗り越えできない方向つまり係止方向に移動するとき爪は歯の所定の位置に当接する。
【0030】
本構成では、このとき爪が歯に対してより強固に係合するように爪と歯の形状を規定している。つまり、爪が係止方向に動く際に、歯の面に対する爪の当接状態によって、爪が歯に深く係合する方向に移動するか、歯から抜ける方向に移動するかが決定される。よって、爪に形成される爪中心線が歯の当接部における歯の接線に対して垂直ではなく、双方の線のなす二つの交角のうち回転軸芯の側の角度が小さくなるように構成することで、歯に当接した爪は回転軸芯から離れる方向に揺動し爪と歯と係合状態が強固になる。
【0031】
尚、本構成でいうところの揺動中心は、例えば、第1部材に一体成形された爪が弾性的に動く場合に形成されるものと、第1部材に対して軸部等の可動部を介して接続された爪が動く場合に形成されるものとを含む。
【0032】
(特徴構成)
本発明に係るラチェット機構を備えた継手にあっては、前記爪部が、一部に切欠きを有する略環状の爪部本体と、当該爪部本体の複数個所に設けられた前記爪とを備えているように構成することができる。
【0033】
(効果)
爪部本体が例えばE形状やC形状を有することで、第1部材に対する取り付けが容易になる。例えば、第1部材が長尺状の部材であっても爪部を第1部材の長手方向に対して垂直な方向から取り付けることができ、当該ラチェット機構の適用範囲を広げることができる。
【0034】
また、本構成であれば、一つの型の爪部を複数の継手に用いることができ、部品の共通化が可能となる。
【0035】
さらに、第1部材と第2部材との接続を分離することを想定すると、当該爪部を樹脂で構成するなど爪部だけを破損させ得る構成とすることができる。よって、第1部材と第2部材とを分離したのち改めて別の爪部を用いることで両部材の再接合作業が容易となる。
【0036】
(特徴構成)
本発明に係るラチェット機構を備えた継手にあっては、前記第1部材および前記第2部材に対して、互いに螺合可能な雄ねじ部および雌ねじ部の何れかを各別に形成するものであっても良い。
【0037】
(効果)
互いに螺合可能な雄ねじ部および雌ねじ部に本構成のラチェット機構を設けることでねじ部による接続状態を確実に保持することができ、第1部材と第2部材とを強固に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】第1実施形態に係る継手の外観を示す斜視図
図2】第1実施形態に係る継手の爪と歯の係合態様を示す平面図
図3】第1実施形態に係る継手の爪と歯の係合態様を示す説明図
図4】第2・第3実施形態に係る継手の爪と歯の係合態様を示す平面図
図5】第4実施形態に係る継手の外観を示す斜視図
図6】第5実施形態に係る継手の外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔概要〕
本発明の継手Jは、第1接続部S1を有する第1部材J1と第2接続部S2を有する第2部材J2とを相対回転させつつ接続するものであり、その際に、接続状態が維持されるように、第1部材J1と第2部材J2とに振り分けて配置した歯11と爪21が係合する。このうち、第1部材J1には、複数の歯11が等間隔かつ環状に配置され歯部1が形成されている。一方の第2部材J2には、複数の歯11に対向する位置に複数の爪21が設けてある。
【0040】
本実施形態では、互いに係合する部位のうち、数の多い部位を「歯」とし、数が少ない部位を「爪」とする。これら歯及び爪は互いに係合するために何れが姿勢変更するものであっても良い。また、姿勢変更の際には、弾性変形するものや機械的な軸部を介して回転するものなど各種の構成を採ることができる。
【0041】
爪21と歯11との係合方向は、第1部材J1および第2部材J2の回転軸芯Xの方向に沿うものであっても良いし回転軸芯Xに直角な方向であっても良い。本実施形態では、夫々の爪21が回転軸芯Xに直角な径方向に沿って弾性的に突出引退するものとし、回転軸芯Xを中心とした周方向に沿って配置されて爪部2を形成する。以下、これら歯部1および爪部2の各種構成につき図面を参照しながら説明する。
【0042】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る継手Jの構成を図1乃至図3に示す。ここでは、第1部材J1と第2部材J2は夫々水道配管を接続する部材である例を示す。第1部材J1には第1接続部S1として雌ねじ部S1aが形成され、第2部材J2には第2接続部S2として雄ねじ部S2aが形成されている。さらに、第1部材J1にあっては、雌ねじ部S1aに対して第1部材J1の端部側に歯部1が形成されており、第2部材J2にあっては、雄ねじ部S2aを挟んで第2部材J2の端部と反対側に爪部2が形成されている。
【0043】
第1部材J1および第2部材J2は、例えば樹脂成形などによって成形されたものであり、図示は省略するが、他部材である水道管などと接続されている。第1部材J1と水道管の接続および第2部材J2と水道管の接続は、互いに相対回転不能に固接するものであっても良いし、相対回転自在に接続されるものであっても良い。共に水道管などが接続された状態の第1部材J1と第2部材J2とを相対回転させて接続するのであれば、第1部材J1および第2部材J2のうち回転操作する部材に接続する水道管は当該部材と相対回転するのが好ましい。
【0044】
〔第1部材〕
図1(a)および図2に示すように、第1部材J1は、本実施形態では筒状の雌部材である。開口端部の内面には全周に亘ってラチェット機構Rを構成する歯部1が形成してある。その奥には、第1接続部S1としての雌ねじ部S1aが形成してある。さらに雌ねじ部S1aの奥には水道水を流通させる流水路Aが突出形成してある。
【0045】
〔第2部材〕
第2部材J2は、中央に流水路Aを備えた雄部材であり、端部の外面には第2接続部S2としての雄ねじ部S2aが形成してある。その基端側に隣接してラチェット機構Rを構成する爪部2が設けてある。爪部2は、本実施形態では、一部に切欠きを有する略環状の爪部本体22を有し、その周囲に例えば3カ所の爪21が形成されている。
【0046】
爪部本体22は、全体的にはC形状あるいはE形状でありながら、例えば図1(b)に示すように、第2部材J2に対する相対回転を防止するよう周方向に沿って凹凸部3が形成してある。第2部材J2は、この凹凸部3に対応した形状を備えている。爪部本体22は例えば各種の樹脂材料で形成され、弾性を有している。そのため、第2部材J2に対しては、径方向から容易に取り付けることも可能である。尚、第2部材J2に対する爪部本体22の取付方向を間違えないように、爪部本体22の内面には、回転軸芯Xに沿った一方の端部に凸部4aを設け、対する第2部材J2には対応する凹部を設けてある。これにより、爪部本体22の装着方向が逆向きの場合には、凸部4aが第2部材J2の表面に干渉して爪部本体22が所定の姿勢に収まらないように構成してある。
【0047】
〔ラチェット機構〕
爪部2および歯部1はラチェット機構Rを構成し、第1部材J1と第2部材J2とを相対回転させて接合したあと接続状態が緩むのを防止し、第1部材J1と第2部材J2との接続状態を強固に維持する。そのために、本実施形態のラチェット機構Rでは、複数の爪21のうち、少なくとも一つの爪21が複数の歯11の一つと完全に係合する状態となり、少なくとも他の一つの爪21が複数の歯11の一つと完全に係合する状態とならないように構成してある。
【0048】
つまり、第1部材J1と第2部材J2とを相対回転させて接続する際に、歯11に対して夫々異なるタイミングで係合する爪21を複数設けておく。この結果、第1部材J1と第2部材J2が例えば歯の1ピッチ分など所定角度に亘って相対回転する際に、歯11に対する爪21の係合回数を増やすことができ、第1部材J1と第2部材J2との相対位相を細かいピッチで固定することができる。
【0049】
また、仮に、第1部材J1と第2部材J2との接合作業が完了したのち各爪21の弾性力がクリープ等によって失われた場合でも、少なくとも一つの爪21が歯11に対して完全に係合しているから両者の接続状態が緩むことがない。
【0050】
具体的には、複数の爪21および複数の歯11を周方向に沿って互いに均等間隔に形成し、歯11の総数Nhが爪21の総数Ntの整数倍にならないように構成する。
【0051】
これにより、第1部材J1と第2部材J2を相対回転させる際に、夫々の爪21が対応する歯11に対して異なるタイミングで係合する。つまり、一つの爪21が一つの歯11を乗り越え、次の歯11に係合する間に、他の爪21が夫々に対応する歯11に係合する。図2に示すように、歯11のピッチを歯ピッチPhとし、爪21のピッチを爪ピッチPtとすると、歯ピッチPhは、(360度/歯の総数Nh)により求まり、爪ピッチPtは、(360度/爪の総数Nt)により求まる。仮に、歯11に係合する爪21がただ一つとすると、係合していない爪21と当該爪21が次に係合する歯11との間には、(爪ピッチPtを歯ピッチPhで除した余りの角度)を整数倍した角度差があることになる。
【0052】
この構成により、第1部材J1と第2部材J2が歯11の1ピッチ分だけ相対回転する間に、他の爪21が夫々歯11に係合することとなり、第1部材J1と第2部材J2との緩み止め機能がより細かいピッチで発揮される。
【0053】
尚、第1部材J1と第2部材J2を相対回転させて接合する場合、例えば雄ねじ部S2aの先の端面J2fが第1部材J1の底面J1fに当接するまで両者を相対回転させて接合作業を完了する。また、第2部材J2の基端面J2aを第1部材J1の開口端面J1aに当接させて接合作業を完了するものであっても良い。さらには、例えば第1部材J1と第2部材J2との間に弾性シールなどを介して接合する場合には、両部材の締め付けトルクが一定値となった状態で接合作業が完了する。
【0054】
また、夫々の爪21は径方向に沿って弾性を有するから、各爪21は歯11に完全に係合しない状態で対向する歯11に対して幾分の押圧力を付与する。よって、複数の爪21および複数の歯11が周方向に沿って互いに均等間隔に配置されることで、一つの爪21が歯11に係合しようとするとき、他の爪21は未だ係合位置から離れた位置にあり、これら他の爪21は歯11に対して押圧力を作用させる状態にある。
【0055】
この結果、仮に爪部本体22が第2部材J2に対して多少のガタ付きがある場合、例えば、第1接続部S1と第2接続部S2との間に遊びが存在する場合や、環状の爪部2が第1部材J1に取り付けられている構成において爪部2の回転軸芯と歯部1の回転軸芯Xとの間に位置ずれが生じる可能性がある場合でも、爪部本体22の全体は歯部1の回転軸芯Xに対して同軸芯上に位置し易くなる。このため、各爪21の歯11に対する係合が確実に行われることとなる。
【0056】
また、第2部材J2に対する爪部本体22のガタ付きが大きい場合に、係合した直後の爪21の係合状態が安定するか否かが問題となる。しかし、爪21が周方向に均等配置されることで、係合している爪21以外の他の爪21が、対応する歯11に対して押圧力を作用させ、爪部本体22は当該係合している爪21の側に付勢される。この結果、係合している爪21の位置において歯部1と爪部本体22との間隔が最も狭くなり、結果として当該爪21の係合が確実なものとなる。
【0057】
〔爪の形状〕
図3には、一つの爪21が歯11に係合している状態を示す。図3(a)は、歯11に完全に係合した爪21が自然状態にあって歯11に対して外力を作用していない状態である。一方、図3(b)は第1部材J1と第2部材J2とが逆方向に相対回転しようとして歯11に対する爪21の噛み込みが増した状態である。尚、爪21が歯11に完全に係合した状態とは、爪21が一つの歯11を乗り越えて径方向に突出し、爪21の端部が歯11の表面に当接するか否かに拘わらず最大径となる位置にある状態をいう。
【0058】
図3(b)の状態では、爪21がより外側に弾性変形し、爪21の先端が歯11の壁部に当接して爪21の更なる変形が阻止されている。これにより逆回転が規制される。このように逆回転が生じた際に爪21が外方に変形するには、爪21の形状と、爪21と歯11との当接姿勢を適切に設定する必要がある。
【0059】
爪21は爪部本体22から突出した形状であり、爪21は弾性を有する樹脂などで形成されるから、図3(b)に示すC点が揺動中心Cとなって変形する。爪21と歯11との当接部Dおよび揺動中心Cを結んで得られる直線を爪中心線L1とすると、爪部本体22が逆方向に回転しようとするとき、図3(a)に示すように爪21は歯11に対して爪中心線L1に沿って外力F1を作用させる。この外力F1は、歯11の当接部Dに伝達され、当接部Dの接線L2の方向に向く分力F2と、接線L2の方向に垂直な分力F3とに分解される。
【0060】
逆回転時に爪21が外向きに変位するためには、爪21と歯11の当接部Dにおける接線L2の方向と爪中心線L1の方向とのなす角度αが直角ではなく、図3(a)に示すように、接線L2に対して爪21が外広がりに当接する状態にするのが良い。ちなみに図3(a)では、接線L2の方向は第1部材J1の径方向に一致させてある。尚、このような角度αの設定は、爪21が一つの歯11を乗り越えたときに歯11の奥まで十分に拡径し、歯11の壁面によって爪21のさらなる拡径が阻止されるような場合においても同様に行えばよい。
【0061】
この接線L2の方向は適宜設定すればよいが、例えば爪中心線L1に対して直角に近付くほど、爪21が歯11を乗り越えた後に爪21と歯11との隙間が発生し難く、逆回転の許容角度が小さくなる。ただし、逆回転しようとするとき、爪21の自然状態における形状等によっては爪21が径方向内側に変形する可能性が生じ逆回転するおそれも高まる。
【0062】
これに対し、爪中心線L1の方向と接線L2の方向が近付くほど、爪21が歯11を乗り越えた後に爪21と歯11との隙間が広く空き、逆回転の許容角度が大きくなる。ただし、逆回転しようとするとき、爪21は確実に外側に変位して歯11との係合状態を高めるから逆回転の防止効果が高まる。
【0063】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る継手Jの例を図4に示す。ここでは、複数の歯11を周方向に沿って均等間隔に設ける一方、五つの爪21を周方向に沿って不均等に配置した例を示す。具体的には、歯11の総数Nhを爪21の総数Nt(本実施形態では5)の整数倍とし、かつ、少なくとも何れか一つの爪ピッチPtが歯ピッチPhの整数倍とならないように構成する。
【0064】
複数の歯11が周方向に沿って互いに均等間隔に形成され、仮に、歯11の総数Nhが爪21の総数Ntの整数倍であれば、全ての爪21が何れかの歯11に同時に係合することが可能である。ただし本構成は、少なくとも何れか一つの爪21が歯11に完全に係合した状態となり、少なくとも何れか他の一つの爪21が完全に係合しない状態となるよう歯11および爪21の構成を特定するものである。
【0065】
そのために、特定の爪ピッチPtが歯ピッチPhの整数倍とならないようにし、さらに夫々の爪21によって形成される複数の爪ピッチPtどうしの値を異ならせることで、より細かなピッチの逆回転防止機能を発揮させることができる。
【0066】
本構成では、隣接する爪21どうしで形成される夫々の爪ピッチPtの値を決定するのに、歯ピッチPhで除した余りの角度だけに留意すればよく、第1実施形態のように、各爪21を均等に配置する等、全ての爪21の位置関係に拘束されることがない。よって、第1部材J1の形状決定において自由度が増し、製造の容易さやコストの面で有利な継手Jを得ることができる。
【0067】
本実施形態の例としては、例えば、360度を爪21の総数Ntで除し、大よその爪ピッチPt1を算出しておく。次に、歯ピッチPhを爪21の総数Ntで除した(Ph/Nt)値を求めておき、任意の位置に最初の爪21を設定した後、順次隣接する爪21のピッチを(爪ピッチPt1+(Ph/Nt))とする。あるいは、隣接する爪21のピッチを順次(爪ピッチPt1-(Ph/Nt))としてもよい。このように爪21の位置を設定することで、全周に亘って爪21を分散配置しながら、爪21の係合タイミングを順次異ならせることができる。
【0068】
尚、隣接する爪21どうしのピッチは(爪ピッチPt1±n(Ph/Nt))としてもよい。この場合、n(Ph/Nt)の値を爪ピッチPt1の整数倍とは異なるものとし、隣接する夫々の爪21が同時に係合離脱しないようにする。また、nがNtの整数倍とならないようにする。これは、隣接する爪ピッチPt1とPt2との値が異なるものの、その差がPhの整数倍となって結果的に隣接する夫々の爪21が同時に係合離脱することになる不都合を防止するためである。
【0069】
〔第3実施形態〕
本実施形態では、夫々の爪21が歯11に係合する際に、隣接する爪21が順次係合するのではなく、次に係合する爪21の位置を周方向に沿って最も遠い位置に設定する例を示す。
【0070】
具体的には、複数の爪21のうち歯部1に対して異なるタイミングで係合する爪21を一つのグループとする。このグループは全ての爪21で構成されてもよいし、複数のグループに分けるものであっても良い。複数のグループに分かれる場合、夫々のグループの特定の爪21が同時に係合する場合が生じる。そして、これらグループに属する爪21の係合順序が、既に係合した爪21を除き、一つ前に係合した爪21に対して最も対角方向に近い位置にある爪21に設定されるもとする。
【0071】
例えば図4に示すように爪21を五つ形成する場合、全ての爪21を一つのグループとし、各爪21が図中の星形の順序、つまり、爪211から爪215まで順番に係合するようにする。このように係合順序を規定することで例えば以下の効果を得ることができる。
【0072】
第1部材J1と第2部材J2とは相対回転しつつ接合されるが、その際、両者の相対位置が変化し、互いの回転軸芯Xどうしが偏位する可能性がある。このような状態で夫々の爪21が順番に係合する場合、歯11に作用する爪21の弾性力を考慮すると、歯11に深く係合している爪211については歯11に作用する弾性力が少なくなる。よって、図4中に白抜き矢印で示すように、第2部材J2が爪211の方に押され、第1部材J1と第2部材J2との間隔が、当該係合している爪211の位置で最も狭くなり、これと対角な爪213あるいは爪214の位置で最も広くなる可能性がある。
【0073】
歯11に係合する爪21の弾性変形の様子を考慮すると、今、爪211が完全に係合しているとすると、次に歯11を乗り越える直前の状態にある爪212が最も大きく弾性変形した状態にあり、歯11に作用する弾性力が最大となる。このため、爪21の係合順序を本構成のように設定することで、次に歯11に係合する爪212の弾性変形が最大となる位置で第1部材J1と第2部材J2の間隔が広くなり爪212への負担が軽減される。このため、個々の爪21の乗り越え動作がより円滑になり、第1部材J1および第2部材J2の接続に際する操作力が軽減される。
【0074】
〔第4実施形態〕
本発明のラチェット機構Rは、図5に示すように爪部2を第1部材J1の内面に設け、歯部1を第2部材J2の外面に設けるものであっても良い。その際には、爪部2を雌ねじ部S1aの奥側に配置し、歯部1は雄ねじ部S2aに対して端部側に設けることができる。
【0075】
爪部2は、例えば環状の爪部本体22に三箇所の爪21を設けて構成する。爪部本体22は、樹脂材料あるいは金属材料など弾性を有する材料で構成し、三箇所の爪21は、爪部本体22の周壁部を切り欠いて内方に突出形成しておく。爪部本体22の外周箇所には、二箇所の係合溝22aを形成しておき、第1部材J1の内壁に形成した回転規制用の凸部4bに係合させる。尚、爪部本体22の爪21を所定方向に向けるために、二箇所の係合溝22aは径方向に対向する位置から偏位させている。
【0076】
尚、第1部材J1と第2部材J2とを接合する前に、爪部本体22が第1部材J1の内部から脱落しないような止め機構を適宜設けておいても良い。例えば、第1部材J1の奥側に、爪部本体22の外径に合わせた周壁部を設けると共に、この周壁部への入り口部分の内径を爪部本体22の外径よりも僅かに小さくしておくことで、爪部本体22を僅かに変形させつつ押し込み固定することができる。
【0077】
第1部材J1と第2部材J2との接合作業は、第2部材J2の端面J2fが第1部材J1の底面J1fに当接して接合を完了するものであっても良いし、第2部材J2の基端面J2aが第1部材J1の開口端面J1aに当接して完了するものであっても良い。
【0078】
本構成であれば、爪部本体22を完全な環状部材とし、第1部材J1に挿入することができる。よって、爪部本体22に対する各爪21の形成条件が同じとなり、各爪21の弾性特性が同じとなるから、より安定した係合状態を得ることができる。
【0079】
〔第5実施形態〕
本発明のラチェット機構Rは、図6に示すように、爪21が第1部材J1の回転軸芯Xの方向に沿って突出するように構成した環状の爪部2を第1部材J1の底面J1fに設けることもできる。爪部2は、例えば樹脂材料や金属材料で構成する。爪21は、爪部本体22の一部を切り欠いたものを回転軸芯Xの方向に起こしておくと構成が簡単となる。
【0080】
爪部2には、第1部材J1に対して相対回転しないように二箇所の係合溝22aを形成しておく。一方の第1部材J1の底面J1fには、この係合溝22aと係合する二箇所の凸部4bを設けておく。これら係合溝22aと凸部4bの夫々は、第1部材J1の回転軸芯Xの周りに偏って設けてあり、爪部2が表裏逆向きに装着されることを防止する。尚、爪部本体22の外径寸法を第1部材J1の内径寸法より僅かに大きく構成しておけば、爪部本体22を第1部材J1の内部に押し込んだ状態で抜け落ちが防止され好都合である。
【0081】
一方の第2部材J2においては、複数の歯11を有する歯部1を先端部に形成する。歯11および爪21の形状は、第1部材J1と第2部材J2を互いに右回転させる場合にのみ爪21が歯11を乗り越え可能なものとする。
【0082】
第1部材J1と第2部材J2とを互いに右方向に回転させることで、雌ねじ部S1aと雄ねじ部S2aが螺合し、第1部材J1と第2部材J2とが近付く側に螺進する。第2部材J2の歯11が爪21に接近し、互いに当接するようになると歯11に対する爪21の乗り越えが開始され、第1部材J1と第2部材J2との逆回転防止機能が発揮される。
【0083】
尚、本構成では、爪21が圧縮されて潰れないようにするために、歯11と爪21とが所定の距離以上に近付く前に第1部材J1の開口端面J1aと第2部材J2の基端面J2aが当接するように構成してある。図示は省略するが、第1部材J1と第2部材J2との密封性を確保するために適宜の位置にシールリング等を設ける。また、爪21と歯11の係合程度を調整するために各種厚さのスペーサ5を用いると良い。
【0084】
〔材質〕
上記構成のうち、第1部材J1や第2部材J2、爪部本体22は、各種の金属或いは樹脂材料、ゴム材料で構成可能である。樹脂としては、成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の中では、特に成形が容易なPP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、POM(ポリアセタール)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)が好ましい。
【0085】
特に、第1部材J1や第2部材J2は、安価で剛性が得られるABSが好ましい。また、爪部本体22は爪21を編成させる必要から靭性の高いPOMが特に好ましい。さらに、金属材料を用いる場合には、SUS(ばね用ステンレス鋼)を用いるのが好ましい。
【0086】
尚、ゴム材料を用いる場合には剛性が高いものが望ましい。例えば、爪部本体22に用いるものとしては、生産性の理由から、例えばNBR(ニトリロゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、シリコン等が好適である。
【0087】
〔その他の実施形態〕
本構成のラチェット機構Rは、ねじ形式の継手Jに設けるものに限らず、例えばバヨネット構造を有する継手Jやネジそのものなど二つの部材を接続する機構として利用することができる。
【0088】
また、このようなラチェット機構Rは、継手Jと併用するものではなく、逆回転を防止することが望ましい各種の調整リングや表示ダイアルに利用することができる。
【0089】
爪21は、上記構成のように、爪部本体22に一体形成したものでもよいし、爪部本体22とは別体で構成し取付部を支点として揺動する構成のものであっても良い。
【0090】
上記実施形態では、歯11の数に対して爪21の数が少ない例を示したが、逆に、姿勢変化可能な爪21を周方向に沿って多数設け、これに係合する歯11を爪21の数より少なく構成することも可能である。
【0091】
上記実施形態では、歯11を周方向に沿って均等間隔に形成する例を示したが、逆に、爪21を周方向に沿って均等間隔に形成し、歯11を周方向に沿って不均等間隔に形成するものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のラチェット機構Rおよび継手Jは、給水配管に限らず各種の接続部あるいはネジなど二つの部材を相対回転させて接続する部位の緩み止め機構として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 歯部
11 歯
2 爪部
21 爪
C 揺動中心
D 当接部
J 継手
J1 第1部材
J2 第2部材
L1 爪中心線
L2 接線
Nh 歯の総数
Nt 爪の総数
Ph 歯ピッチ
Pt 爪ピッチ
R ラチェット機構
S1 第1接続部
S1a 雌ねじ部
S2 第2接続部
S2a 雄ねじ部
X 回転軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6