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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】挟み具
(51)【国際特許分類】
   A45D 26/00 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
A45D26/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020002625
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2020110593
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2019003085
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519011706
【氏名又は名称】山崎 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 淳司
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第01701995(US,A)
【文献】特開2011-000211(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2013-0005377(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
B25B 9/02
A61B 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アームおよび第2アームが開閉動作可能に設けられた持ち手部と、
前記第1アームの先端側に設けられ、前記第2アーム側に凸となる曲面を有する第1先端部と、
前記第2アームの先端側に設けられ、前記第1アームおよび前記第2アームを閉じた際に前記曲面と接触する輪になった環状部分を有する第2先端部と、
を備えた挟み具。
【請求項2】
前記環状部分は、前記第1アームおよび前記第2アームの開閉方向にみて、前記曲面と先端側に凸となる曲線状に接触する、請求項1記載の挟み具。
【請求項3】
前記第1先端部はボール形状を有し、
前記環状部分は、前記第1アームおよび前記第2アームの開閉方向にみて、前記第1先端部のボール形状の外径よりも小さい内径を有する、請求項1記載の挟み具。
【請求項4】
前記第1先端部は球形、楕円球形、先端が丸みを帯びた円柱形および先端が丸みを帯びた円錐形のいずれかを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の挟み具。
【請求項5】
前記環状部分は、前記第1アームおよび前記第2アームを閉じていくほど前記曲面との接触領域が増加するように設けられた、請求項1から4のいずれか1項に記載の挟み具。
【請求項6】
前記第1アームの前記第2アームとは反対側に略部分円柱状に設けられた第1丸形部と、
前記第2アームの前記第1アームとは反対側に略部分円柱状に設けられた第2丸形部と、をさらに備えた、請求項1から5のいずれか1項に記載の挟み具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟み具に関し、より詳しくは、特に毛抜きに好適な挟み具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピンセットや毛抜きなどの挟み具は、指では掴みにくい細くて小さなものを的確に摘まむことができる便利な道具である。従来、挟み具として、特許文献1には、毛抜き部を二面の挟み付け型にし、また、毛抜き部を支持部に対して、有効な曲げ角度をもたせることにより、毛抜きを容易に、安全に使い易くした毛抜きの用具が開示される。
【0003】
また、特許文献2には、先端部を丸めて皮膚を傷つけるのを防止するとともに、毛を確実に挟むことのできる毛抜きが開示される。この毛抜きでは、両挟持面の先端部を、その幅方向に沿って、先端側に突出するように曲線状に形成するとともに、両挟持面のそれぞれに、閉時に互いに嵌合して毛を挟み込む段差部が設けられる。
【0004】
特許文献3には、薄型軽量でかつ強靱性を備え手軽かつ安全に体毛を処理できると共に量産性に優れた体毛処理具の製造方法が開示される。この製造方法では、先端部に設けられた体毛処理部と、体毛処理部の後方に連続して設けられた手持ち部とを備えた二枚の板状本体部が後端側で一体化された金属製体毛処理具の製造方法であり、板状本体部を、冷間鍛造工程を経て成形している。
【0005】
特許文献4には、挟持対象物の挟持が確実になされ、先端での切断が生ずる虞を無くし、更に先端で肌など傷付けない挟持面部を簡単な構造で実現した挟み具が開示される。この挟み具では、挟持面部を膨出湾曲面に形成すると共に、操作板部を閉口して挟持面部を当接した際に、挟持個所となる当接位置の先端に近接し、且つその当接位置から先端側が僅かに開口する形状になっている。
【0006】
特許文献5には、対象物を正確に捉える毛抜き、骨抜などの挟み具が開示される。この挟み具では、支持部の一端に一対の対峙する作用部を有し、作用部の先端付近を帯状に残して貫通穴、または、切り欠き部を設け、作用帯部を形成している。
【0007】
特許文献6には、無駄毛やトゲ等の毛抜き対象物を見え易くすることで毛抜き対象物を挟み易くすることが可能な毛抜きが開示される。この毛抜きは、先端側が互いに離れていると共に基端側が一体にされている帯板状の一対の操作部と、一対の操作部の先端側に形成されており、一対の操作部の先端側を互いに接近させると最初に当接する当接部と、当接部の一部を貫通するように一対の操作部を夫々貫通している貫通孔と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-276035号公報
【文献】特開2007-082923号公報
【文献】特開2012-200344号公報
【文献】特開2015-150307号公報
【文献】実用新案登録第3178053号公報
【文献】実用新案登録第3184448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような挟み具を使用して挟む必要のある対象物は、毛のように細くて小さなものが多く、目視することが困難である。このため、挟み具を用いる場合、目視しなくても対象物を確実に挟めることが望まれる。また、人や動物に用いる場合、対象物を挟む作業で皮膚への刺激や痛さを感じさせないことが好ましい。
【0010】
本発明は、細くて小さな対象物であっても目視せずに確実に挟むことができ、使い心地のよい挟み具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、第1アームおよび第2アームが開閉動作可能に設けられた持ち手部と、第1アームの先端側に設けられ、第2アーム側に凸となる曲面を有する第1先端部と、第2アームの先端側に設けられ、第1アームおよび第2アームを閉じた際に前記曲面と接触する環状部分を有する第2先端部と、を備えた挟み具である。
【0012】
このような構成によれば、第1アームおよび第2アームを閉じた際に第1先端部の曲面と、第2先端部の環状部分とが接触して、対象物を挟み込むことができる。この際、曲面と環状部分との接触によって両者の接触領域が曲線状になるため、広い範囲で対象物を挟むことができるようになる。また、対象物を挟む領域が曲線状になるため、対象物の周辺への刺激を少なくすることができる。
【0013】
上記挟み具において、環状部分は、第1アームおよび第2アームの開閉方向にみて、前記曲面と先端側に凸となる曲線状に接触するように設けられていることが好ましい。これにより、第1先端部の曲面と、第2先端部の環状部分との接触によって構成される接触領域が先端側に凸となる曲線状になって、先端から両側面にかけて対象物を挟む領域を構成することができる。
【0014】
上記挟み具において、第1先端部はボール形状を有し、環状部分は、第1アームおよび第2アームの開閉方向にみて、第1先端部のボール形状の外径よりも小さい内径を有していてもよい。これにより、第1アームおよび第2アームを閉じた際、環状部分の輪の内側に第1先端部の凸となる曲面が嵌まるようになり、リング状の接触領域が構成される。
【0015】
上記挟み具において、第1先端部は球形、楕円球形、先端が丸みを帯びた円柱形および先端が丸みを帯びた円錐形のいずれかを有していることが好ましい。これにより、先端部分の当たりを柔らかくすることができる。
【0016】
上記挟み具において、環状部分は、第1アームおよび第2アームを閉じていくほど曲面との接触領域が増加するように設けられていてもよい。これにより、第1アームおよび第2アームの閉じ具合によって対象物を挟み込む領域の範囲を調整することができる。
【0017】
上記挟み具において、第1アームの第2アームとは反対側に略部分円柱状に設けられた第1丸形部と、第2アームの第1アームとは反対側に略部分円柱状に設けられた第2丸形部と、をさらに備えていてもよい。これにより、第1丸形部と第2丸形部とを摘まんだ指の間で持ち手部を転がすように軸回転させることができ、第1先端部および第2先端部の角度を変えやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、細く小さな対象物であっても目視せずに確実に挟むことができ、使い心地のよい挟み具を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)~(e)は、本実施形態に係る挟み具の構成を例示する模式図である。
図2】(a)および(b)は、本実施形態に係る挟み具の動作を例示する模式側面図である。
図3】(a)および(b)は、本実施形態に係る挟み具の使用例を示す模式図である。
図4】(a)~(c)は、先端部分の他の形状の例を示す模式図である。
図5】(a)および(b)は、先端部分の他の開閉の例を示す模式図である。
図6】(a)および(b)は、ストッパを有する挟み具について例示する模式側面図である。
図7】(a)~(c)は、丸形部を有する挟み具について例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0021】
(挟み具の構成)
図1(a)~(e)は、本実施形態に係る挟み具の構成を例示する模式図である。
図1(a)には斜視図が示され、図1(b)には側面図が示され、図1(c)には上面図が示され、図1(d)には正面図が示され、図1(e)には先端部分の断面図が示される。
図2(a)および(b)は、本実施形態に係る挟み具の動作を例示する模式側面図である。
図2(a)には第1アーム11および第2アーム12を開いた状態が示され、図2(b)には第1アーム11および第2アーム12を閉じた状態が示される。
【0022】
本実施形態に係る挟み具1は、毛のような細くて小さな対象物を目視しなくても確実に挟むことができる器具である。すなわち、挟み具1は、第1アーム11および第2アーム12が開閉動作可能に設けられた持ち手部10と、第1アーム11の先端に設けられ、第2アーム12側に凸となる曲面111aを有する第1先端部111と、第2アーム12の先端に設けられ、第1アーム11および第2アーム12を閉じた(閉じる方向に動作した)際に曲面111aと接触する環状部分121aを有する第2先端部121と、を備える。
【0023】
持ち手部10は、一対の第1アーム11および第2アーム12を指(例えば、親指と人差し指)で摘まむように把持することができる。第1アーム11および第2アーム12は、例えば金属や樹脂など弾性を有する材料によって形成される。
【0024】
第1アーム11および第2アーム12の一方側(先端側)が可動側、他方側(後端側)が固定側となっており、材料の弾性を利用して可動側を開閉できるようになっている。第1アーム11および第2アーム12の先端側は、後端側の支持部15を支点として材料などの弾性力により通常状態で開いており、指で第1アーム11および第2アーム12を摘まむ力で閉じることができる。
【0025】
第1アーム11および第2アーム12は一体に設けられていてもよいし(例えば、U字型に成形)、別体に設けられ、後端側で両者を接合するようになっていてもよい。
【0026】
第1アーム11の先端側に設けられた第1先端部111は、例えばボール形状を有している。図1に示す例では第1先端部111は楕円球形に設けられ、第1アーム11の先端側に取り付けられている。第1先端部111の表面には曲面111aが設けられる。曲面111aは、第1先端部111の第2アーム12側に凸となる面である。なお、第1アーム11および第1先端部111は別体で設けられていてもよいし、一体に設けられていてもよい。
【0027】
第2アーム12の先端側に設けられた第2先端部121は、環状部分121aを有する。環状部分121aは、第1アーム11および第2アーム12を閉じた際に第1先端部111の曲面111aと接触する形状および大きさに設けられる。例えば、第1アーム11および第2アーム12を閉じた際、環状部分121aの輪の内側に、第1先端部111の凸となる曲面111aが嵌まるように設けられる。
【0028】
具体的な例として、環状部分121aの内径は、第1アーム11および第2アーム12の開閉方向(以下、単に「開閉方向」と言う。)にみて、第1先端部111のボール形状の外径よりも小さくなっている。これにより、第1アーム11および第2アーム12を閉じた際、環状部分121aの輪の内側に、第1先端部111の凸となる曲面111aが嵌まるようになり、リング状の接触領域CAが構成される。
【0029】
挟み具1では、この曲面111aと環状部分121aとが接触する領域である接触領域CAにおいて対象物を挟むようになる。なお、対象物を挟んでいる状態では、接触領域CAにおいて曲面111aと環状部分121aとの間に対象物が介在するため、曲面111aと環状部分121aとの厳密な接触はないが、説明の便宜上、挟み具1で対象物を挟む領域を接触領域CAと言うことにする。
【0030】
(挟み具の動作)
次に、本実施形態に係る挟み具1の動作について説明する。
図2(a)に示すように、持ち手部10の第1アーム11および第2アーム12に力を加えていない通常状態では、例えば材料の弾性力によって第1アーム11および第2アーム12の先端側が開いた状態となる。
【0031】
図2(b)に示すように、持ち手部10の第1アーム11および第2アーム12に、例えば材料の弾性力に打ち勝つ力を加えることで、第1アーム11および第2アーム12の先端側が閉じる状態となる。これにより、第1先端部111の曲面111aと、第2先端部121の環状部分121aとが接触する状態となり、この接触領域CAにおいて対象物を挟み込むことができる。この際、曲面111aと環状部分121aとの接触によって両者の接触領域CAが曲線状になるため、直線状に比べて広い範囲で対象物を挟むことができるようになる。
【0032】
また、第1先端部111の曲面111aが環状部分121aの輪の内側に嵌まると、開閉方向にみて、曲面111aと先端側に凸となる曲線状に接触することになる。これにより、接触領域CAが先端側に凸となる曲線状になって、先端を中心とした両側にかけて対象物を挟む領域を構成することができる。すなわち、通常のピンセットでは先端の直線状に挟む領域が構成される。一方、本実施形態に係る挟み具1では、先端のみならず、先端から両側にかけて曲線状に挟む領域が構成され、先端からその両側にかけた広い範囲で対象物を挟むことができるようになる。
【0033】
また、環状部分121aの内径が、開閉方向にみて、第1先端部111のボール形状の外径よりも小さくなっていることで、第1アーム11および第2アーム12を閉じた際、環状部分121aは第1先端部111のボール形状の開閉方向の中央(高さの中央)よりも上側に嵌まることになる。このため、環状部分121aと曲面111aとの接触領域CAは、開閉方向にみて、第1先端部111の外形よりも内側に構成される。つまり、接触領域CAが第1先端部111の外形よりも内側に位置するため、挟み具1の最端位置で対象物を摘まむことはなく、最端位置よりも僅かに内側で摘まむよう構成される。したがって、対象物の周辺(皮膚など)を誤って挟んでしまうことを抑制できる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る挟み具1では、環状部分121aの断面形状が略円形になっている(図1(e)参照)。これにより、環状部分121aと曲面111aとが線接触する状態となる。このため、挟み具1における挟み部分が器具の最端にはなり得ない。したがって、対象物の周辺を誤って挟んでしまうことを抑制できる。例えば挟み具1を毛抜きに利用する場合、皮膚から少し離れた位置で毛を挟むことができ、挟み具1の先端が皮膚に当たったとしても皮膚を挟みにくくなる。
【0035】
また、対象物を挟む領域が曲線状になるため、刺激を少なくすることができる。すなわち、例えばピンセットのように先端が直線的に閉じる器具の場合、閉じる領域の端部が尖ることから、皮膚などへの当たりが強く、刺激を受けやすい。本実施形態に係る挟み具1では、曲面111aと環状部分121aとの接触によって丸みを帯びた接触領域が構成され、ピンセットのような尖った接触領域にはならない。このため、皮膚などへの当たりが優しく、肌触りの不快感が少ない。
【0036】
(使用例)
次に、本実施形態に係る挟み具1の使用例について説明する。
図3(a)および(b)は、本実施形態に係る挟み具の使用例を示す模式図である。
図3(a)には耳の毛65を抜く際の使用状態が示され、図3(b)には毛65を挟んだ状態の拡大図が示される。
挟み具1を耳の毛65を抜く毛抜きとして利用する場合、持ち手部10の第1アーム11および第2アーム12の長さは、約5cmから7cm程度、第1先端部111および第2先端部121の長さは1cm程度、太さは5mmから10mm程度が好ましい。
【0037】
図3(a)に示すように、先ず、利用者は挟み具1の持ち手部10を指Fで摘まむようにして持ち、挟み具1の先端側を毛抜きをしたい位置(例えば、外耳道50)に入れる。挟み具1の第1先端部111は丸みを帯びたボール形状のため、外耳道50に挿入する際の当たりが優しく、皮膚60への刺激は非常に少ない。
【0038】
挟み具1を外耳道50に入れた後、第1アーム11および第2アーム12を指Fで押圧して先端側を閉じるようにする。図3(b)に示すように、第1アーム11および第2アーム12の先端側が閉じると、第2先端部121の環状部分121aの輪の内側に第1先端部111の曲面111aが嵌まるように閉じる。この際、皮膚60から生える毛65が環状部分121aと曲面111aとの接触領域CAに挟まれ、毛65を摘まむことができる。なお、毛65は環状部分121aの輪の内側から接触領域CAに挟まれる場合もあるし、環状部分121aの輪の外側から接触領域CAに挟まれる場合もある。利用者は、毛65を摘まんだ状態で挟み具1を引き出すことで、摘まんだ毛65を皮膚60から抜くことができる。
【0039】
本実施形態に係る挟み具1では、環状部分121aと曲面111aとの接触領域CAが曲線状になるため、先端の中央から周辺にわたる広い範囲で毛65を挟むことができるようになる。また、毛65を挟む構成の一方が環状部分121aのような輪になっているため、輪を通して上下(内外)いずれの方向からも毛65を挟むことができ、広範囲かつ高確率で毛65を挟むことが可能となる。
【0040】
このため、利用者は外耳道50の毛65を見て確認することなく、挟み具1の先端を適宜に外耳道50に入れて第1アーム11および第2アーム12を摘まむことで、自然に毛65を摘まんで抜くことができる。毛65を挟持できなかった場合には、挟み具1の先端を入れ直したり、前後させたり、先端の深さや向きを変えて入れ直したりすることで、毛65を引っ掛けることができる。
【0041】
ここで、第1先端部111のボール形状の大きさ(先端側からみた直径)を、平均的な外耳道50の大きさより僅かに小さい例えば5mm以上10mm以下程度にしておくことが好ましい。これにより、挟み具1の先端を外耳道50に入れる際、第1先端部111が外耳道50の皮膚60に近く、場合によって皮膚60に擦れながら入っていく。そして、曲面111aと環状部分121aとの隙間に毛65が自然に入り込むようになる。この状態で第1アーム11および第2アーム12を閉じるように指で摘まむと、接触領域CAで毛65を容易かつ確実に挟持できるようになる。
【0042】
(他の例)
次に、他の例について説明する。
図4(a)~(c)は、先端部分の他の形状の例を示す模式図である。
図4(a)に示す例では、第1先端部111が球形になっている。また、この第1先端部111の形状に対応して、第2先端部121の環状部分121aの形状が円形になっている。このように、第1先端部111が球形で、環状部分121aが円形の環状になっていると、製造が容易となる。
【0043】
図4(b)に示す例では、第1先端部111の形状として先端が丸みを帯びた円柱形になっている。また、この第1先端部111の形状に対応して、第2先端部121の環状部分121aの形状が長円形の環状になっている。このように、第1先端部111の形状が先端方向に細長く設けられることで、細長い穴に差し込みやすくなる。
【0044】
図4(c)に示す例では、第1先端部111の形状として先端が丸みを帯びた円錐形になっている。また、この第1先端部111の形状に対応して、第2先端部121の環状部分121aの形状が三角形の環状になっている。このように、第1先端部111の形状が先端方向に細くなる円錐形に設けられることで、挟み具1を小さな穴に差し込みやすくなる。
【0045】
なお、第1先端部111の先端側からみた形状は円形に限定されない。例えば、楕円形、長円形、半円形などの形状にしてもよいし、例えば一般的な外耳道50の孔形状に対応した形状にしてもよい。
【0046】
図5(a)および(b)は、先端部分の他の開閉の例を示す模式図である。
図5に示す挟み具1では、第2先端部121の環状部分121aが、第1アーム11および第2アーム12を閉じていくほど曲面111aとの接触領域CAが増加するように設けられている。具体的には、図5(a)に示すように、環状部分121aが先端側に下がる(先端側に第1先端部111と近づく)よう傾斜して設けられる。これにより、第1アーム11および第2アーム12が開いている状態では、環状部分121aの先端側が第1先端部111の曲面111aに近く(または接触)、後端側が曲面111aから離れている。
【0047】
図5(b)に示すように、第1アーム11および第2アーム12を閉じていくと、環状部分121aと第2アーム12との間の部分の弾性変形によって環状部分121aの傾斜が徐々に無くなり、接触領域CAが先端側から後端側へと徐々に増加していく。これにより、第1アーム11および第2アーム12の閉じ具合によって対象物を挟み込む領域(接触領域CA)の範囲を調整することができる。
【0048】
なお、第1アーム11および第2アーム12への押圧を止めることで、第1アーム11および第2アーム12は開く方向に戻るとともに、環状部分121aの傾斜も弾性力によって元に戻ることになる。
【0049】
このような挟み具1では、環状部分121aが予め先端側に下がるように傾斜しているため、挟み具1の先端側を外耳道50などの穴に挿入しやすくなる。また、この挟み具1では、環状部分121aと曲面111aとの先端側の部分を予め接触させておくとよい。これにより、毛抜きとして使用する場合、挟み具1を外耳道50に挿入するだけで(第1アーム11および第2アーム12を閉じる前に)、接触領域CAの先端側の部分に毛65が挟まりやすくなり、毛65を引っ掛ける確率が高まる。
【0050】
図6(a)および(b)は、ストッパを有する挟み具について例示する模式側面図である。
図6(a)には第1アーム11および第2アーム12を開いた状態が示され、図6(b)には第1アーム11および第2アーム12を閉じた状態が示される。
【0051】
図6に示す挟み具1は、第1アーム11と第2アーム12との間にストッパ20を備えている。図6(a)に示す例では、ストッパ20は第1アーム11に設けられているが、第2アーム12に設けられていてもよいし、第1アーム11および第2アーム12の両方に設けられていてもよい。
【0052】
図6(b)に示すように、ストッパ20は、第1アーム11および第2アーム12を閉じる際に、必要以上に閉じ過ぎないようにする役目を果たす。ストッパ20の材料には、耐久性のウレタンゴムが好適である。ストッパ20が設けられていることで、第1アーム11および第2アーム12を強く摘まみ過ぎた場合や、繰り返し使用による第1アーム11および第2アームの変形、環状部分121aの変形を抑制することが可能となる。
【0053】
図7(a)~(c)は、丸形部を有する挟み具について例示する模式図である。
図7(a)には挟み具1の斜視図が示され、図7(b)には図7(a)のA-A線端面図が示され、図7(c)には挟み具1の使用例を示される。
【0054】
図7に示す挟み具1は、第1アーム11の第2アーム12とは反対側に略部分円柱状に設けられた第1丸形部11aと、第2アーム12の第1アーム11とは反対側に略部分円柱状に設けられた第2丸形部12aと、を備える。第1丸形部11aおよび第2丸形部12aのそれぞれは略半円柱状に設けられ、互いに外側に凸となるように第1アーム11および第2アーム12に設けられる。第1丸形部11aおよび第2丸形部12aは開閉方向にみて互いに重なる位置に配置される。第1丸形部11aは第1アーム11とは別体で設けられていてもよいし、一体に設けられていてもよい。また、第2丸形部12aは第2アーム12とは別体で設けられていてもよいし、一体に設けられていてもよい。
【0055】
図7(b)に示すように、第1丸形部11aおよび第2丸形部12aを正面からみると、これらを合わせることで略円形の外形が構成される。すなわち、第1丸形部11aで略円形の上半分が構成され、第2丸形部12aで略円形の下半分が構成される。
【0056】
図7(c)に示すように、利用者は挟み具1の第1丸形部11aおよび第2丸形部12aを指Fで摘まむようにして持つ。第1丸形部11aおよび第2丸形部12aを介して第1アーム11および第2アーム12を指Fで押圧して先端側を閉じるようにすることで、第2先端部121の環状部分121aの輪の内側に第1先端部111の曲面111aが嵌まるように閉じ、接触領域CAで対象物を挟むことができる。
【0057】
また、第1丸形部11aおよび第2丸形部12aを指Fで摘まんだ状態で、指Fの間で持ち手部10を転がすように軸回転させると、第1先端部111および第2先端部121の角度を変えやすくなる。すなわち、第1丸形部11aおよび第2丸形部12aによって、例えば親指と人差し指との間で円柱を転がすようにすると、持ち手部10が軸回転して第1先端部111および第2先端部121の角度が変わり(矢印R参照)、接触領域CAの角度を容易に変更できるようになる。
【0058】
挟み具1を使用して対象物を摘まむ場合、対象物の位置や伸びる向きによってはうまく摘まめない場合もある。第1丸形部11aおよび第2丸形部12aが設けられていると、指Fで転がすようにして接触領域CAの角度を好みの位置に合わせ、対象物の位置や伸びる向きに対応させて摘まみやすくすることができる。
【0059】
なお、第1丸形部11aおよび第2丸形部12aの略部分円柱状の形状は半円柱形に限定されず、指Fで摘まんだ際に指Fの間で容易に転がせることができるような丸みを帯びた形状であればよい。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る挟み具1によれば、細く小さな対象物であっても、対象物を目視することなく確実に挟むことができるようになる。また、先端部分の丸みによって、使い心地のよい挟み具1を提供することが可能となる。
【0061】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、環状部分121aとして閉じた輪になる形状の例を示したが、輪の途中に僅かな切れ目があっても実質的に環状になっていればよい。また、環状部分121aは、円形、楕円形、長円形に限定されず、半円形、半楕円形、U字形など、先端側に凸となる曲線部分が設けられた形状であれば他の形状であってもよい。また、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る挟み具1は、毛抜きのほか、魚の骨抜きなど小さく細い対象物を摘まむ用途や、目視できない部分の対象物を摘まむ用途に好適に利用可能である。また、挟み具1は、草取り、枝、ツルを挟む場合など片手で持って挟む作業を行う程度の大きさでもよいし、さらに大きな工具、工事用機器の挟持ユニットとしても適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…挟み具
10…持ち手部
11…第1アーム
11a…第1丸形部
12…第2アーム
12a…第2丸形部
15…支持部
20…ストッパ
50…外耳道
60…皮膚
65…毛
111…第1先端部
111a…曲面
121…第2先端部
121a…環状部分
CA…接触領域
F…指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7