(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】距離測定方法及び光コム距離計並びに光学的三次元形状測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20231116BHJP
G01B 9/02002 20220101ALI20231116BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01B9/02002
G01C3/06 120Q
(21)【出願番号】P 2020014230
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503249810
【氏名又は名称】株式会社XTIA
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】興梠 元伸
(72)【発明者】
【氏名】今井 一宏
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014549(JP,A)
【文献】特開平07-167606(JP,A)
【文献】特開2015-148488(JP,A)
【文献】特開2012-002619(JP,A)
【文献】特開2017-211502(JP,A)
【文献】特開2008-145187(JP,A)
【文献】特開2020-012641(JP,A)
【文献】国際公開第2019/016887(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108120378(CN,A)
【文献】特開2010-112768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
9/00-9/10
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調周波数が互いに異なる第1の波長帯域の第1の光コム参照光と第1の光コム測定光を第1の光コム光源から出射するとともに、上記変調周波数よりも低く変調周波数が互いに異なる第2の波長帯域の第2の光コム参照光と第2の光コム測定光を第2の光コム光源から出射し、
上記第1の光コム参照光と上記第2の光コム参照光を合波した参照光と、上記第1の光コム測定光と上記第2の光コム測定光を合波した測定光を光コム干渉計に入射させ、
上記光コム干渉計を介して、上記参照光と測定光を基準光路長の参照光路と光路長が未知の測定対象の測定光路に入射させ、
上記光コム干渉計により得られる参照用干渉光と測定用干渉光を検出することにより得られる上記第1の波長帯域の参照用干渉信号
と測定用干渉信号の時間差と上記第2の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号の
時間差から、
測定対象物までの距離を算出することを特徴とする距離測定方法。
【請求項2】
上記光コム干渉計により、入射された参照光と測定光とを合波して参照用干渉光を生成
するとともに、上記参照光路を通過させた参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを
合波して測定用干渉光を生成することを特徴とする請求項1に記載の距離測定方法。
【請求項3】
上記光コム干渉計により、入射された参照光と上記参照光路を通過させた測定光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成することを特徴とする請求項1に記載の距離測定方法。
【請求項4】
上記光コム干渉計により、入射された測定光と上記参照光路を通過させた参照光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された測定光と上記測定光路を通過させた参照光とを合波して測定用干渉光を生成することを特徴とする請求項1に記載の距離測定方法。
【請求項5】
上記光コム干渉計により、入射された測定光と上記参照光路を通過させた参照光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成することを特徴とする請求項1に記載の距離測定方法。
【請求項6】
変調周波数が互いに異なる第1の波長帯域の第1の光コム参照光と第1の光コム測定光を出射する第1の光コム光源と、
上記変調周波数よりも低く変調周波数が互いに異なる第2の波長帯域の第2の光コム参照光と第2の光コム測定光を出射する第2の光コム光源と、
上記第1の光コム参照光と上記第2の光コム参照光を合波した参照光と、上記第1の光コム測定光と上記第2の光コム測定光を合波した測定光を生成する合波部と、
上記合波部により生成された参照光と測定光が入射され、入射された参照光と測定光を基準光路長の参照光路と光路長が未知の測定対象の測定光路に入射させる光コム干渉計と、
上記光コム干渉計により生成された参照用干渉光を検出する参照光検出器と、
上記光コム干渉計により生成された測定用干渉光を検出する測定光検出器と、
上記参照光検出器により得られる参照用干渉信号に含まれる上記第1の波長帯域の参照用干渉光による第1の参照用干渉信号と上記測定光検出器により得られる測定用干渉信号に含まれる上記第1の波長帯域の測定用干渉光による第1の測定用干渉信号の時間差と、上記参照光検出器により得られる参照用干渉信号に含まれる上記第2の波長帯域の参照用干渉光による第2の参照用干渉信号と上記測定光検出器により得られる測定用干渉信号に含まれる上記第2の波長帯域の測定用干渉光による第2の測定用干渉信号の時間差とから、
測定対象物までの距離を算出する信号処理部と
を備えることを特徴とする光コム距離計。
【請求項7】
上記光コム干渉計は、入射された参照光と測定光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光を上記参照光路に入射させるとともに入射された測定光を上記測定光路に入射させ、上記参照光路を通過させた参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成することを特徴とする請求項6に記載の光コム距離計。
【請求項8】
上記光コム干渉計は、入射された測定光を上記参照光路と上記測定光路に入射させ、入射された参照光と上記参照光路を通過させた測定光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成することを特徴とする請求項6に記載の光コム距離計。
【請求項9】
上記光コム干渉計は、入射された参照光を上記参照光路と上記測定光路に入射させ、入射された測定光と上記参照光路を通過させた参照光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された測定光と上記測定光路を通過させた参照光とを合波して測定用干渉光を生成することを特徴とする請求項6に記載の光コム距離計。
【請求項10】
上記光コム干渉計は、入射された参照光を上記参照光路に入射させるともに、入射された測定光を上記測定光路に入射させ、入射された測定光と上記参照光路を通過させた参照光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成することを特徴とする請求項6に記載の光コム距離計。
【請求項11】
上記合波部は、上記第1の光コム光源から出射された第1の光コム参照光と上記第2の光コム光源から出射された第2の光コム参照光を合波して参照光として上記光コム干渉計に入射させる第1の波長多重カップラと、上記第1の光コム光源から出射された第1の光コム測定光と上記第2の光コム光源から出射された第2の光コム測定光を合波して測定光として上記光コム干渉計に入射させる第2の波長多重カップラと、上記光コム干渉計から出射される参照用干渉光を上記第1の波長帯域の参照用干渉光と上記第2の波長帯域の参照用干渉光に分離する第3の波長多重カップラと、上記光コム干渉計から出射される測定用干渉光を上記第1の波長帯域の測定用干渉光と上記第2の波長帯域の測定用干渉光に分離する第4の波長多重カップラとを備え、
上記参照光検出器は、上記第3の波長多重カップラにより分離された上記第1の波長帯域の参照用干渉光を検出する第1の参照光検出器と上記第2の波長帯域の参照用干渉光を検出する第2の参照光検出器とを備え、
上記測定光検出器は、上記第4の波長多重カップラにより分離された上記第1の波長帯域の測定用干渉光を検出する第1の測定光検出器と上記第2の波長帯域の測定用干渉光を検出する第2の測定光検出器とを備え、
上記信号処理部は、上記第1の参照光検出器と第1の測定光検出器により得られる2つの干渉信号の時間差と、上記第2の参照光検出器と第2の測定光検出器により得られる2つの干渉信号の時間差とから、上記測定対象物までの距離を算出する
ことを特徴とする請求項6乃至請求項10の何れか1項に記載の光コム距離計。
【請求項12】
上記合波部は、上記第1の光コム光源から出射された第1の光コム測定光と上記第2の光コム光源から出射された第2の光コム測定光を時分割合成して測定光として光コム干渉計に入射させる第1の光スイッチと、上記第1の光コム光源から出射された第1の光コム参照光と上記第2の光コム光源から出射された第2の光コム参照光を時分割合成して参照光として光コム干渉計に入射させる第2の光スイッチとからなり、
上記信号処理部は、上記参照光検出器により得られる参照用干渉信号に時分割で含まれる上記第1の波長帯域の参照用干渉光による第1の参照用干渉信号と上記測定光検出器により得られる測定用干渉信号に時分割で含まれる上記第1の波長帯域の測定用干渉光による第1の測定用干渉信号の時間差と、上記参照光検出器により得られる参照用干渉信号に時分割で含まれる上記第2の波長帯域の参照用干渉光による第2の参照用干渉信号と上記測定光検出器により得られる測定用干渉信号に時分割で含まれる上記第2の波長帯域の測定用干渉光による第2の測定用干渉信号の時間差とから、上記測定対象物までの距離を算出する
ことを特徴とする請求項6乃至請求項10の何れか1項に記載の光コム距離計。
【請求項13】
上記第1の光コム光源は、第1の周波数ν1を中心にfm1の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第1の光コム測定光と、周波数ν1+fa1を中心にfm1+Δfm1の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第1の光コム参照光とを出射し、
上記第2の光コム光源は、第2の周波数ν2を中心にfm2の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第2の光コム測定光と、周波数ν2+fa2を中心にfm2+Δfm2の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第2の光コム参照光とを出射することを特徴とする
請求項6乃至請求項10の何れか1項に記載の光コム距離計。
【請求項14】
上記第1の光コム光源は、マイクロ波帯域又はミリ波帯域の第1の光コム測定光と第1の光コム参照光とを出射し、
上記第2の光コム光源は、超短波帯域又は極超短波帯域の第2の光コム測定光と第2の光コム参照光とを出射することを特徴とする請求項13に記載の光コム距離計。
【請求項15】
請求項6乃至請求項14の何れか1項に記載の光コム距離計と、
上記光コム距離計から出射された測定光により測定対象物を走査し、上記測定対象物により反射された上記測定光を上記光コム距離計に戻す光学スキャン装置と、
上記光学スキャン装置を制御してレーザービームを走査すると同時に上記距離計が計測する距離情報を取得して、ビーム照射位置とその場所までの距離を複数の点について蓄積することにより非接触で物体の三次元形状を測定する信号処理装置と
を備える光学式三次元形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照光の干渉信号と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する距離測定方法及び光コム距離計並びに光学的三次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、精密なポイントの距離計測が可能なアクティブ式距離計測方法として、レーザ光を利用する光学原理による距離計測が知られている。レーザ光を用いて測定対象物までの距離を測定するレーザ距離計ではレーザ光の発射時刻と、測定対象に当たり反射してきたレーザ光を受光素子にて検出した時刻との差に基づいて、測定対象物までの距離が算出される(たとえば特許文献1参照)。また、例えば、半導体レーザの駆動電流に三角波等の変調をかけ、測定対象物での反射光を半導体レーザ素子の中に埋め込まれたフォトダイオードを使用して受光し、フォトダイオード出力電流に現れた鋸歯状波の主波数から距離情報を得ている。
【0003】
ある点から測定点までの絶対距離を高精度で測定する装置としてレーザ距離計が知られている。たとえば、特許文献1には、参照光の干渉信号と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する距離計が記載されている。
【0004】
従来の絶対距離計では、長い距離を高精度で測れる実用的な絶対距離計を実現することが難しく、高い分解能を得るためにはレーザ変位計のように原点復帰が必要なため絶対距離測定に適さない方法しか手段がなかった。
【0005】
本件発明者等は、基準面に照射される参照光と測定面に照射される測定光との干渉光を参照光検出器により検出するとともに、上記基準面により反射された参照光と上記測定面により反射された測定光との干渉光を測定光検出器により検出して、上記参照光検出器と測定光検出器により得られる2つ干渉信号の時間差から、上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めることにより、高精度で、しかも短時間に行うことの可能な距離計及び距離測定方法並びに光学的三次元形状測定装置を先に提案している(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-343234号公報
【文献】特許第5231883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、測定光と参照光が入射される光コム干渉計により、基準光路長の参照光路を通過させた上記測定光と上記参照光とを合波して得られる参照用干渉光と測定対象の測定光路を通過させた上記測定光と上記参照光とを合波して得られる測定用干渉光を生成し、上記第1の干渉光と上記第2の干渉光との位相差から、測定対象物までの距離を算出する光コム距離計では、一定の周波数間隔で並んだ周波数間隔が僅かに異なる参照用光コムとの干渉を利用して測定対象物までの距離を高精度で、しかも短時間に行うことができるのであるが、計測結果は光コムの間隔に一致する周波数の半波長を周期として同じ値を繰り返すため、半波長の整数倍の距離の判別が困難となる。
【0008】
光コム距離計を絶対距離計として使用する場合には、反射体(測定対象物)を固定した状態で光コム発生器の変調周波数を切り替えて、干渉信号の位相の変化から半波長の整数倍の距離を算出することにより、半波長の整数倍の距離の曖昧さを解消するようにしているが、切り替え領域の近傍において曖昧さを十分に解消することができないという問題点があった。
【0009】
また、光コム距離計を用いて形状測定を行う場合、測定の高速化を図るために光学スキャナにより計測用光コムのビームを走査して測定対象物の表面形状の測定結果を得るようにしているが、光コム発生器の変調周波数を切り替えて複数回高さ測定を行う測定精度を高めることが実用上困難であることが多い。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、高精度な測距を行うための測定光の波長の半波長の測定範囲の制限を超えて、広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に測定対象物までの距離を測定することが可能な距離測定方法及び光コム距離計並びに光学的三次元形状測定装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、第1の光コム測定光と2の光コム測定光を合波した光コム測定光を測定対象物に照射することにより取得される第1の光コム測定光による第1の波長帯域における測距結果と第2の光コム測定光による第2の波長帯域における測距結果に基づいて、広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に測定対象物までの距離を測定する。
【0013】
すなわち、本発明は、距離測定方法であって、変調周波数が互いに異なる第1の波長帯域の第1の光コム参照光と第1の光コム測定光を第1の光コム光源から出射するとともに、上記変調周波数よりも低く変調周波数が互いに異なる第2の波長帯域の第2の光コム参照光と第2の光コム測定光を第2の光コム光源から出射し、上記第1の光コム参照光と上記第2の光コム参照光を合波した参照光と、上記第1の光コム測定光と上記第2の光コム測定光を合波した測定光を光コム干渉計に入射させ、上記光コム干渉計を介して、上記参照光と測定光を基準光路長の参照光路と光路長が未知の測定対象の測定光路に入射させ、上記光コム干渉計により得られる参照用干渉光と測定用干渉光を検出することにより得られる上記第1の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号の時間差と上記第2の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号の時間差から、測定対象物までの距離を算出することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る距離測定方法では、上記光コム干渉計により、入射された参照光と測定光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、上記参照光路を通過させた参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成するものとすることができる。
【0015】
また、本発明に係る距離測定方法では、上記光コム干渉計により、入射された参照光と上記参照光路を通過させた測定光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成するものとすることができる。
【0016】
また、本発明に係る距離測定方法では、上記光コム干渉計により、入射された測定光と上記参照光路を通過させた参照光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された測定光と上記測定光路を通過させた参照光とを合波して測定用干渉光を生成するものとすることができる。
【0017】
さらに、本発明に係る距離測定方法では、上記光コム干渉計により、入射された測定光と上記参照光路を通過させた参照光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成するものとすることができる。
【0018】
また、本発明は、光コム距離計であって、変調周波数が互いに異なる第1の波長帯域の第1の光コム参照光と第1の光コム測定光を出射する第1の光コム光源と、上記変調周波数よりも低く変調周波数互いに異なる第2の波長帯域の第2の光コム参照光と第2の光コム測定光を出射する第2の光コム光源と、上記第1の光コム参照光と上記第2の光コム参照光を合波した参照光と、上記第1の光コム測定光と上記第2の光コム測定光を合波した測定光を生成する合波部と、上記合波部により生成された参照光と測定光が入射され、入射された参照光と測定光を基準光路長の参照光路と光路長が未知の測定対象の測定光路に入射させる光コム干渉計と、上記光コム干渉計により生成された参照用干渉光を検出する参照光検出器と、上記光コム干渉計により生成された測定用干渉光を検出する測定光検出器と、上記参照光検出器により得られる参照用干渉信号に含まれる上記第1の波長帯域の参照用干渉光による第1の参照用干渉信号と上記測定光検出器により得られる測定用干渉信号に含まれる上記第1の波長帯域の測定用干渉光による第1の測定用干渉信号の時間差と、上記参照光検出器により得られる参照用干渉信号に含まれる上記第2の波長帯域の参照用干渉光による第2の参照用干渉信号と上記測定光検出器により得られる測定用干渉信号に含まれる上記第2の波長帯域の測定用干渉光による第2の測定用干渉信号の時間差とから、測定対象物までの距離を算出する信号処理部とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る光コム距離計において、上記光コム干渉計は、入射された参照光と測定光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光を上記参照光路に入射させるとともに入射された測定光を上記測定光路に入射させ、上記参照光路を通過させた参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成するものとすることができる。
【0020】
本発明に係る光コム距離計において、上記光コム干渉計は、入射された測定光を上記参照光路と上記測定光路に入射させ、入射された参照光と上記参照光路を通過させた測定光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成するものとすることができる。
【0021】
本発明に係る光コム距離計において、上記光コム干渉計は、入射された参照光を上記参照光路と上記測定光路に入射させ、入射された測定光と上記参照光路を通過させた参照光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された測定光と上記測定光路を通過させた参照光とを合波して測定用干渉光を生成するものとすることができる。
【0022】
本発明に係る光コム距離計において、上記光コム干渉計は、入射された参照光を上記参照光路に入射させるともに、入射された測定光を上記測定光路に入射させ、入射された測定光と上記参照光路を通過させた参照光とを合波して参照用干渉光を生成するとともに、入射された参照光と上記測定光路を通過させた測定光とを合波して測定用干渉光を生成するものとすることができる。
【0023】
本発明に係る光コム距離計において、上記合波部は、上記第1の光コム光源から出射された第1の光コム参照光と上記第2の光コム光源から出射された第2の光コム参照光を合波して参照光として上記光コム干渉計に入射させる第1の波長多重カップラと、上記第1の光コム光源から出射された第1の光コム測定光と上記第2の光コム光源から出射された第2の光コム測定光を合波して測定光として上記光コム干渉計に入射させる第2の波長多重カップラと、上記光コム干渉計から出射される参照用干渉光を上記第1の波長帯域の参照用干渉光と上記第2の波長帯域の参照用干渉光に分離する第3の波長多重カップラと、上記光コム干渉計から出射される測定用干渉光を上記第1の波長帯域の測定用干渉光と上記第2の波長帯域の測定用干渉光に分離する第4の波長多重カップラとを備え、上記参照光検出器は、上記第3の波長多重カップラにより分離された上記第1の波長帯域の参照用干渉光を検出する第1の参照光検出器と上記第2の波長帯域の参照用干渉光を検出する第2の参照光検出器とを備え、上記測定光検出器は、上記第4の波長多重カップラにより分離された上記第1の波長帯域の測定用干渉光を検出する第1の測定光検出器と上記第2の波長帯域の測定用干渉光を検出する第2の測定光検出器とを備え、上記信号処理部は、上記第1の参照光検出器と第1の測定光検出器により得られる2つの干渉信号の時間差と、上記第2の参照光検出器と第2の測定光検出器により得られる2つの干渉信号の時間差とから、上記測定対象物までの距離を算出するものとすることができる。
【0024】
また、本発明に係る光コム距離計において、上記合波部は、上記第1の光コム光源から出射された第1の光コム測定光と上記第2の光コム光源から出射された第2の光コム測定光を時分割合成して測定光として光コム干渉計に入射させる第1の光スイッチと、上記第1の光コム光源から出射された第1の光コム参照光と上記第2の光コム光源から出射された第2の光コム参照光を時分割合成して参照光として光コム干渉計に入射させる第2の光スイッチとからなり、上記信号処理部は、上記参照光検出器により得られる参照用干渉信号に時分割で含まれる上記第1の波長帯域の参照用干渉光による第1の参照用干渉信号と上記測定光検出器により得られる測定用干渉信号に時分割で含まれる上記第1の波長帯域の測定用干渉光による第1の測定用干渉信号の時間差と、上記参照光検出器により得られる参照用干渉信号に時分割で含まれる上記第2の波長帯域の参照用干渉光による第2の参照用干渉信号と上記測定光検出器により得られる測定用干渉信号に時分割で含まれる上記第2の波長帯域の測定用干渉光による第2の測定用干渉信号の時間差とから、上記測定対象物までの距離を算出するものとすることができる。
【0025】
また、本発明に係る光コム距離計において、上記第1の光コム光源は、第1の周波数ν1を中心にfm1の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第1の光コム測定光と、周波数ν1+fa1を中心にfm1+Δfm1の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第1の光コム参照光とを出射し、上記第2の光コム光源は、第2の周波数ν2を中心にfm2の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第2の光コム測定光と、周波数ν2+fa2を中心にfm2+Δfm2の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第2の光コム参照光とを出射するものとすることができる。
【0026】
また、本発明に係る光コム距離計において、上記第1の光コム光源は、マイクロ波帯域又はミリ波帯域の第1の光コム測定光と第1の光コム参照光とを出射し、上記第2の光コム光源は、超短波帯域又は極超短波帯域の第2の光コム測定光と第2の光コム参照光とを出射するものとすることができる。
【0027】
さらに、本発明は、光学式三次元形状測定装置であって、上述の如き構成の本発明に係る光コム距離計と、上記光コム距離計から出射された測定光により測定対象物を走査し、上記測定対象物により反射された上記測定光を上記光コム距離計に戻す光学スキャン装置と、上記光学スキャン装置を制御してレーザービームを走査すると同時に上記距離計が計測する距離情報を取得して、ビーム照射位置とその場所までの距離を複数の点について蓄積することにより非接触で物体の三次元形状を測定する信号処理装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、第1の光コム測定光と2の光コム測定光を合波した光コム測定光を測定対象物に照射することにより取得される第1の光コム測定光による第1の波長帯域における測距結果と第2の光コム測定光による第2の波長帯域における測距結果に基づいて、広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に測定対象物までの距離を測定することができ、高精度な測距を行うための測定光の波長の半波長の測定範囲の制限を超えて、広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に測定対象物までの距離を測定することが可能な距離測定方法及び光コム距離計並びに光学式三次元形状測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明を適用した光学式三次元形状測定装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【
図2】上記光学式三次元形状測定装置に備えられた光コム距離計の構成を示すブロック図である。
【
図3】上記光コム距離計に備えられた光コム干渉計の構成例を示すブロック図である。
【
図4】測定距離に比例する参照光パルスと測定光パルスの時間の測定を、互いに変調周期の異なる干渉性のある2台のパルス光源の干渉によって行う場合の模式図であり、(A)は参照光検出器が受光する光パルス列を示し、(B)は測定光検出器が受光するパルス列を示している。
【
図5】光スペクトル及び干渉信号スペクトルの模式図であり、(A)は光スペクトルを示し、(B)は干渉信号スペクトルを示している。
【
図6】上記光学式三次元形状測定装置に備えられる光コム距離計の他の構成例を示すブロック図である。
【
図7】上記光コム距離計に備えられる光コム干渉計の他の構成例を示すブロック図である。
【
図8】上記光コム距離計に備えられる光コム干渉計の他の構成例を示すブロック図である。
【
図9】上記光コム距離計に備えられる光コム干渉計の他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0031】
図1は、本発明を適用した光学式三次元形状測定装置100の基本的な構成を示すブロック図である。
【0032】
この光学式三次元形状測定装置100は、光コム距離計10と、光コム距離計10から出射される測定光S2で測定対象物50を走査する光学スキャン装置30と、光コム距離計10の出力に基づいて、測定対象物50の複数の点までの絶対距離を計測して立体像を得る信号処理装置40を備える。
【0033】
光学スキャン装置30は、走査光学系31とテレセントリック光学系32からなるスキャン光学系33により、光コム距離計10から出射された測定光S2で測定対象物50の表面を走査して、測定対象物50により反射された測定光S2の反射光S2’を光コム距離計10に戻すようになっている。
【0034】
図2は、この光学式三次元形状測定装置100に備えられた光コム距離計の構成を示すブロック図である。
【0035】
光コム距離計10は、光周波数コム干渉計を用いて距離を測定するものであって、例えば
図2のブロック図に示すような構成となっている。
【0036】
すなわち、この光学式三次元形状測定装置100における光コム距離計10は、変調周波数が互いに異なる第1の波長帯域の第1の光コム参照光A_COMB1と第1の光コム測定光A_COMB2を出射する第1の光コム光源11Aと、上記変調周波数よりも低く変調周波数の中心周波数が互いに異なる第2の波長帯域の第2の光コム参照光B_COMB1と第2の光コム測定光B_COMB2を出射する第2の光コム光源11Bを備え、上記第1の光コム光源11Aから出射された第1の光コム参照光A_COMB1と第1の光コム測定光A_COMB2、上記第2の光コム光源11Bから出射された第2の光コム参照光B_COMB1と第2の光コム測定光B_COMB2が、合波部12を介して参照光S1と測定光S2として、干渉計ヘッド13に入射されるようになっている。
【0037】
上記第1の光コム光源11Aは、マイクロ波帯域又はミリ波帯域の第1の周波数ν1(例えば、25GHz)を中心に変調周波数fm1の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第1の光コム測定光A_COMB2と、周波数ν1+fa1を中心に変調周波数fm1+Δfm1の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第1の光コム参照光A_COMB1とを出射する。
【0038】
また、上記第2の光コム光源11Bは、超短波帯域又は極超短波帯域の第2の周波数ν2(例えば、1GHz)を中心に変調周波数fm2の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第2の光コム測定光B_COMB2と、周波数ν2+fa2を中心に変調周波数fm2+Δfm2の周波数間隔でコム状のモードが並ぶ第2の光コム参照光B_COMB1とを出射する。
【0039】
ここで、第1の光コム光源11Aから出射する光コムの中心周波数25GHzと第2の光コム光源11Bから出射す光コムの中心周波数1GHzとは一例であり、第1の光コム光源11Aは光コム干渉で第2の光コム光源11Bより高精度を提供できる第1の波長帯域の高精度測定用光源であれば良く、第2の光コム光源11Bは光コム干渉で第1の光コム光源11Aより広い測定範囲を提供できる第2の波長帯域の広範囲測定用光源であれば良い。
【0040】
合波部12は、第1の光コム参照光A_COMB1と第2の光コム参照光B_COMB1が入射される第1の波長多重カップラ12A、第1の光コム測定光A_COMB2と第2の光コム測定光B_COMB2が入射される第2の波長多重カップラ12B、干渉計ヘッド13から出射される参照用干渉光S3が入射される第3の波長多重カップラ12C、干渉計ヘッド13から出射される測定用干渉光S4が入射される第4の波長多重カップラ12Dからなる。
【0041】
第1の波長多重カップラ12Aは、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aから出射された第1の波長帯域の光コム参照光A_COMB1と広範囲測定用光源すなわち第2の光コム光源11Bから出射された第2の波長帯域の光コム参照光B_COMB1を合波して参照光S1として干渉計ヘッド13に入射させる。
【0042】
第2の波長多重カップラ12Bは、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aから出射された第1の波長帯域の光コム測定光A_COMB2と広範囲測定用光源すなわち第2の光コム光源11Bから出射された第2の波長帯域の光コム測定光B_COMB2を合波して測定光S2として干渉計ヘッド13に入射させる。
【0043】
第3の波長多重カップラ12Cは、干渉計ヘッド13から出射される参照用干渉光S3を第1の波長帯域の参照用干渉光S3Aと第2の波長帯域の参照用干渉光S3Bに分離して干渉光検出部15に入射させる。
【0044】
第4の波長多重カップラ12Dは、干渉計ヘッド13から出射される測定用干渉光S4を第1の波長帯域の測定用干渉光S4Aと第2の波長帯域の測定用干渉光S4Bに分離する。
【0045】
図3は、上記光コム距離計10の干渉計ヘッド13に備えられた光コム干渉計13Aの構成を示すブロック図である。
【0046】
すなわち、干渉計ヘッド13は、
図3に示すように、入射された参照光S1と測定光S2とを合波する第1のハーフミラー13aと、合波された参照光S1と測定光S2が入射される参照光S1と測定光S2と、第2のハーフミラー13bを通過した参照光S1と測定光S2が入射される第3のハーフミラー13cからなる光コム干渉計13Aを備える。
【0047】
この光コム干渉計13Aでは、第1のハーフミラー13aにより合波された参照光S1と測定光S2が第2のハーフミラー13bにより反射されて参照用干渉光S3として参照光S1と測定光S2の干渉光が出射される。また、第2のハーフミラー13bを通過した参照光S1と測定光S2が第3のハーフミラー13cにより分離される。参照光S1は、第3のハーフミラー13cにより反射されて、基準光路長L1の参照光路21に出射され、測定光S2は、第3のハーフミラー13cを通過して、光路長L2が未知の測定光路51に出射される。
【0048】
参照光路21に出射された参照光S1は、参照光路21の先端で基準反射面20により反射されることにより参照光路21を往復して、反射光S1’が第3のハーフミラー13cに戻される。参照光路21には、往復光路または光ファイバーループを用いることができる。
【0049】
また、測定光路51に出射された測定光S2は、測定光路51の先端で測定対象物50により反射されることにより測定光路51を往復して、反射光S2’が第3のハーフミラー13cに戻される。
【0050】
第3のハーフミラー13cに戻された参照光S1の反射光S1’と測定光S2の反射光S2’は、第3のハーフミラー13cにより合波される。
【0051】
そして、この光コム干渉計では、第3のハーフミラー13cにより合波された参照光S1の反射光S1’と測定光S2の反射光S2’が第2のハーフミラー13bにより反射されて測定用干渉光S4として参照光S1の反射光S1’と測定光S2の反射光S2’の干渉光が出射される。
【0052】
すなわち、干渉計ヘッド13では、入射された参照光S1と測定光S2とを合波することにより得られる参照用干渉光S3と基準光路長L1の参照光路21を通過させた参照光S1’と測定対象の測定光路51を通過させた測定光S2’とを合波することにより得られる測定用干渉光S4を生成する。
【0053】
そして、この光学式三次元形状測定装置100における光コム距離計10は、上記干渉計ヘッド13により生成された参照用干渉光S3と測定用干渉光S4を検出する干渉光検出部15と、この干渉光検出部15による検出出力に基づいて、上記測定対象物50までの距離L2を算出する信号処理部17を備える。
【0054】
信号処理部17は、干渉光検出部15の各光検出器の出力信号が同時刻に波形をサンプリングしてデジタル信号として入力され、FPGAのロジックによるハードウエア処理で距離計算を実行する。信号処理部17は、デジタル化した波形データをPC処理で距離計算してもよい
【0055】
この光コム距離計10における干渉光検出部15は、第3の波長多重カップラ12Cにより分離された第1の波長帯域の参照用干渉光S3Aと第2の波長帯域の参照用干渉光S3Bが入射される第1の参照用干渉光検出器15Aと第2の参照用干渉光検出器15B、及び、第4の波長多重カップラ12Dにより分離された第1の波長帯域の測定用干渉光S4Aと第2の波長帯域の測定用干渉光S4Bが入射される第1の測定用干渉光検出器16Aと第2の測定用干渉光検出器16Bを備える。
【0056】
第1の参照用干渉光検出器15Aは、第1の波長帯域の参照用干渉光S3Aを検出することにより得られる第1の波長帯域の参照用干渉信号を信号処理部17に供給する。
【0057】
第2の参照用干渉光検出器15Bは、第2の波長帯域の参照用干渉光S3Bを検出することにより得られる第2の波長帯域の参照用干渉信号を信号処理部17に供給する。
【0058】
第1の測定用干渉光検出器16Aは、第1の波長帯域の測定用干渉光S4Aを検出することにより得られる第1の波長帯域の測定用干渉信号を信号処理部17に供給する。
【0059】
第2の測定用干渉光検出器16Bは、第2の波長帯域の測定用干渉光S4Bを検出することにより得られる第2の波長帯域の測定用干渉信号を信号処理部17に供給する。
【0060】
信号処理部17では、上記干渉計ヘッド13により得られる参照用干渉光S3に含まれる第1の波長帯域の参照用干渉光S3Aを検出する第1の参照用干渉光検出器15Aにより得られる第1の波長帯域の参照用干渉信号と、上記干渉計ヘッド13により得られる測定用干渉光S4に含まれる第1の波長帯域の測定用干渉光S4Aを検出する第1の測定用干渉光検出器16Aにより得られる第1の波長帯域の測定用干渉信号との時間差と、上記干渉計ヘッド13により得られる参照用干渉光S3に含まれる第2の波長帯域の参照用干渉光S3Bを検出する第2の参照用干渉光検出器15Bにより得られる第2の波長帯域の参照用干渉信号と、上記干渉計ヘッド13により得られる測定用干渉光S4に含まれる第2の波長帯域の測定用干渉光S4Bを検出する第2の測定用干渉光検出器16Bにより得られる第2の波長帯域の測定用干渉信号との時間差とに基づいて、光速と測定波長における屈折率から上記参照光路21の光路長L1と上記測定光路51の光路長L2の光路長差の絶対値(L2-L1)を求める処理を行う。
【0061】
この信号処理部17において、各波長における測定光路51の群屈折率を求め、距離の補正を行う。信号処理部17では、1データごとに、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aによる高精度測定結果として得られる距離情報が位相回転により折り畳まれている場所について、広範囲測定用光源すなわち第2の光コム光源11Bによる広範囲測定結果として得られる距離情報を参照して正しい距離情報を回復する処理を行う。
【0062】
この信号処理部17では、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aによる高精度測定と、広範囲測定用光源すなわち第2の光コム光源11Bによる広範囲測定を同時に行い、第1の光コム光源11Aによる高精度測定結果として得られる第1の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号との時間差に基づく高精度距離情報(L2-L1)Aと第2の光コム光源11Bによる広範囲測定結果として得られる第2の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号との時間差に基づく広範囲距離情報(L2-L1)Bを求めることにより、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aによる測定光A_COMB2の第1の波長帯域の半波長の測定範囲の制限を超えて、広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に測定対象物50までの距離L2を上記参照光路21の光路長L1と上記測定光路51の光路長L2の光路長差の絶対値(L2-L1)として得ることができる。
【0063】
ここで、この光コム距離計10における距離測定の原理について説明する。
【0064】
距離測定の原理は、光パルスの時間遅延から距離を求める距離計に準ずる。すなわち、距離(L2-L1)を往復する際の時間遅延ΔT=2×ng×(L2-L1)/cを計測して、光路の群屈折率ng、真空中の光速cから(L2-L1)を計算する。
【0065】
包絡線波形f(t)、キャリア周波数ω0=2πf0の光パルスは、次のように表わすことができる。
【0066】
【0067】
この光パルスを参照パルスとすると、参照パルスのフーリエ変換は、包絡線パルスf(t)のフーリエ変換F(ω)を用いて、次の(1)式で表わされる。
【0068】
【0069】
フーリエ変換の演算をFFT[ ]で表した。そして、参照パルスが、測定距離の伝搬による遅延の影響を受けたとすると、遅延パルスの波形とそのフーリエ変換は、次の(2)式の形で表わされる。
【0070】
【0071】
ここで、時間ΔTは遅延時間である。絶対距離を測るためには時間軸の包絡線の時間波形f(t-ΔT)からΔTを求めるか、(2)式の右辺のB項で示される周波数軸の位相特性e-jBを求めればよい。ωは角周波数でありfを周波数としてω=2πfの関係がある。(2)式の左辺のjA項は、キャリア成分の位相シフトを表す。この項は、光の半波長の距離で2πラジアン変化する感度の高い成分であり、変位測定に用いられる。
【0072】
距離測定の分解能を1μmより高めるためには、包絡線の時間波形f(t-ΔT)又は周波数軸の位相特性e-jBから遅延時間ΔTを求めるための時間分解能をフェムト秒のオーダーに高めなければならない。電気回路の周波数帯域の上限が数十GHzであることを考えると困難である。そこで、光コム距離計10による距離測定では、互いに変調周期が異なる干渉性のある参照光S1と測定光S2を発生する2つの光源を用意して干渉させ、電気的に処理が可能な周波数に落として遅延時間ΔTを計測する。
【0073】
測定距離(L2-L1)に比例する参照光パルスP1と測定光パルスP2の時間ΔTの測定を、互いに変調周期の異なる干渉性のある2台のパルス光源の干渉によって行う場合の模式図を
図4の(A),(B)に示す。
【0074】
図4の(A)は参照光検出器が受光する光パルス列を示している。S11,S2は、それぞれ参照光パルスと測定光パルスの包絡線の時間波形である。繰り返し周波数は参照光パルスS1がfm+Δfm、測定光パルスS2がfmであると仮定する。繰り返し周期はS1がT’=1/(fm+Δfm)、S2がT=1/fmである。重なったパルスを基準に計測した時刻をそれぞれの繰り返し周期で規格化した値をNとすると、S1とS2のパルスはそれぞれのNが整数の時刻にN番目のパルスが検出器に到着することになる。S1とS2のN番目のパルスの到着時刻を比較すると、パルス列の周期の違い(T-T’)のN倍の時間だけ参照光パルスS1が先に到着する。パルス到着時間のずれはNに比例して大きくなり、あるN番目のパルスでは、(T-T’)N=Tとなり、N番目の参照光パルスS1がN-1番目の測定光パルスS2に追い付いて同じ時刻に到着する。
【0075】
S1、S2のタイミングが一致するまでのパルスの個数Nは、次の(3)式により求められる。
【0076】
【0077】
S1とS2の干渉信号は、互いのパルスが重なり合うタイミングで発生する。したがって、干渉信号の周期Tbは、次の(4)式で表され、2つのパルス列の繰り返し周波数差Δfmの逆数に等しい。
【0078】
【0079】
また、S1,S2はそれぞれ一定の繰り返し周波数を持つパルス列であるから、干渉信号も一定の周期Tbで同じ波形を繰り返す。繰り返し周波数差Δfmが大きすぎると光パルスが重なり合う時間が短くなるため干渉信号がとりにくくなる。それを避けるためΔfm<<fmのように繰り返し周波数差を設定する。
【0080】
また、
図4の(B)は、測定光検出器が受光するパルス列を示している。
図4の(A)に示すパルスと比較して、測定光パルスS2が光路長(L2-L1)を往復したことによる時間ΔTだけ遅れて到着している。この場合、S1とS2のパルスが重なる番号N’は、N’に比例して大きくなる周期のずれとΔTの和が測定光パルスの周期Tに一致した瞬間であり、次の(5)式で表わすことができる。
【0081】
【0082】
したがって、N’は、次の(6)式で与えられる。
【0083】
【0084】
ただし、δ=ΔTfmである。ΔTが0から測定光パルスの繰り返し周期Tまで変化する間にδは0~1まで直線的に変化する。
【0085】
測定光検出器の受光パルスS1,S2が重なる時間を参照光検出器が受光するパルスが重なるN=0の時刻を参照に計測するとその時刻は次の(7)式で示されるN’T’で与えられる。
【0086】
【0087】
δが測定光パルスの1周期の間で0から1まで変化するとN’T’はTb~0まで直線的に変化する。遅延時間ΔTがあっても、0~Tbまでの間に必ず1か所S1パルスがS2パルスを追い越していく時刻が存在するため、0~Tbの間で必ず干渉信号が得られる。N=0の時刻で発生する参照光検出器の干渉信号と遅延時間ΔTのために遅れて発生する測定光検出器の干渉信号の時刻を比較することによって遅延時間ΔTが求められる。
【0088】
例えば、参照光パルスの繰り返し周波数を25GHz+100kHz、測定光パルスの繰り返し周波数を25GHzとすると、ΔTが0~40psの範囲で変化すると、干渉信号の発生時刻は10μs~0の間で変化する。40psの時間内で起こる変化を10μsの時間幅に引き伸ばして計測できる。1フェムト秒の時間差であっても250psとして観測できるため、直接フェムト秒の分解能で時間計測を行うよりもはるかに低い周波数帯域の電気回路で取り扱うことができる。
【0089】
測定光パルスに与えられる時間遅延の符号と干渉信号の時間遅延の符号の関係は、S1とS2の繰り返し周波数とキャリア周波数の大小関係に依存する。
【0090】
図5の(A)は、光スペクトルの模式図である。S1は参照光のスペクトル、S2は測定光のスペクトルを表す。S1、S2は光パルスの繰り返し周波数に一致したコム状のモードを持っており、モード間隔はそれぞれS1がf
m+Δf
m、S2がf
mである。
図5の(A)では、スペクトル中央のモードを中心にモード番号を付け、N=0のモード間の干渉信号の周波数をfaと仮定している。S1とS2の干渉波形にはさまざまなモード間の差周波数が含まれるが、同じモード番号間の差周波数が最も低い周波数帯に現れるため、適当な周波数帯域の光検出器を使用すると高い差周波数成分は検出信号から除外される。この場合、同じモード番号の干渉波形だけが干渉信号として光検出器から取り出される。
【0091】
また、
図5の(B)は、干渉信号スペクトルの模式図である。周波数faを中心にΔfm間隔のコム状の電気信号スペクトルが得られる。干渉信号の時間波形は各周波数成分を重ね合わせたものである。周波数軸の位相特性e
-jBを求めるためには、参照光検出器の出力干渉信号のスペクトルから基準となる位相特性を求め、同時に測定光検出器の出力干渉信号スペクトルから求められる位相特性を求め、それらを比較する。光分離素子までの光路差に依存する干渉信号スペクトルの位相特性は共通なので、比較によって得られる位相特性の違いは測定距離(L2-L1)の伝搬によるものである。測定光スペクトルと参照光スペクトルの各モードの位相差情報が、干渉信号スペクトルの各モード番号の位相に反映される。干渉信号スペクトルのモード番号と位相の関係を測定光スペクトルのモード番号と位相差の関係に置き換えて光周波数と位相差の関係ωΔTを求め、その直線をωで微分して得られる係数からΔTを求める。
【0092】
光コム干渉による距離測定を干渉信号の周波数解析により行うと、光スペクトルが持つ広い帯域をΔfm/fmに圧縮して電気的に解析できるため、光パルスの往復時間を計測する距離計でありながら高い分解能を得ることができる。
【0093】
計測に必要な時間は、干渉信号の1周期TbであるΔfを100kHzとすると周期Tbは10μsであり、短時間に距離を測定することができる。
【0094】
ここで、上記光コム距離計10における第1及び第2の光源11A,11Bとしては、それぞれ、例えば、モード周波数間隔が異なる2台の光周波数コム発生器、あるいは、それぞれ周期的に強度又は位相が変調されかつキャリア周波数が安定化された2台の光源などを用いることができる。
【0095】
上記光コム距離計10の性能は、参照光S1と測定光S2を出射する上記第1及び第2の光源11A,11Bの性能でほぼ決定される。距離測定の分解能は光スペクトル幅または光パルス幅に依存しており、光スペクトルの幅が広い、または光パルスの幅が狭いほど距離測定の分解能を高くすることができる。また、絶対距離測定の確度は光コムモードの周波数間隔または光パルスの繰り返し周波数の確度に依存している。マイクロ波の絶対周波数確度が高いほど絶対距離測定の確度を高めることができる。さらに測定値のばらつきは変調周波数fmや変調周波数fm+Δfmの安定度に依存する。
【0096】
また、上記光コム距離計10では、2台の光源11A,11Bから出射される光の干渉を使って距離の測定を行うので、上記第1及び第2の光源11A,11Bは、光コムモード間隔または光パルス繰り返し周波数または変調周期が異なりかつ干渉性の良いものでなければならない。
【0097】
独立に発振するパルスレーザは、通常レーザ発振の中心周波数や繰り返し周波数がばらばらであり、その変動に相関がない。したがって2台の独立したパルスレーザを使用して距離計測を行う場合、精度を高めるためには、発振波長や光位相、パルスの繰り返し周波数を相対的に固定することが重要である。したがって、各光源11A,11Bの光源の発振器と信号処理部17のクロック信号は、共通の基準発振器に位相同期させておく(例えば光源11Aを基準発振器とする。)。
【0098】
そして、この光学式三次元形状測定装置100における光コム距離計10では、信号処理部17において、第1の波長帯域(25GHz帯)の高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aによる高精度測定と、第2の波長帯域(1GHz帯)広範囲測定用光源すなわち第2の光コム光源11Bによる広範囲測定を同時に行い、第1の光コム光源11Aによる高精度測定結果として得られる第1の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号との時間差に基づいて上記参照光路21の光路長L1と上記測定対象物50までの距離L2の距離差の絶対値(L2-L1)を求めるとともに、第2の光コム光源11Bによる広範囲測定結果として得られる第2の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号との時間差から上記参照光路21の光路長L1と上記測定対象物50までの距離L2の距離差の絶対値(L2-L1)を求めることにより、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aによる測定光A_COMB2の第1の波長帯域の半波長の測定範囲の制限を超えて、広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に測定対象物50までの距離L2を得ることができる。
【0099】
すなわち、この光学式三次元形状測定装置100では、光コム距離計10からの測定光S2が光学スキャン装置30から測定対象物50に向けて照射され、測定対象物50からの反射光が光コム距離計10に戻り、物体表面までの絶対距離が信号処理装置40により計測される。信号処理装置40は、光学スキャン装置30を制御してレーザービームを走査すると同時に光コム距離計10が計測する測定対象物50の表面までの絶対距離情報を取得して、ビーム照射位置とその場所まで絶対距離を複数の点について蓄積することにより非接触で物体の三次元形状を測定する。
【0100】
ここで、上記光学式三次元形状測定装置100における光コム距離計10では、第1の光コム参照光A_COMB1と第2の光コム参照光B_COMB1が入射される第1の波長多重カップラ12A、第1の光コム測定光A_COMB2と第2の光コム測定光B_COMB2が入射される第2の波長多重カップラ12B、干渉計ヘッド13から出射される参照用干渉光S3が入射される第3の波長多重カップラ12C、干渉計ヘッド13から出射される測定用干渉光S4が入射される第4の波長多重カップラ12Dからなる合波部12を備えるものとしたが、
図6のブロック図に示す光コム距離計10’における合波部12’のように、第1の光コム参照光A_COMB1と第2の光コム参照光B_COMB1が入射される第1の光スイッチ14Aと、第1の光コム測定光A_COMB2と第2の光コム測定光B_COMB2が入射される第2の光スイッチ14Bを備えるものとすることもできる。
【0101】
この光コム距離計10’では、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aから出射された第1の波長帯域の第1の光コム参照光A_COMB1と広範囲測定用光源すなわち第2の光コム光源11Bから出射された第2の波長帯域の第2の光コム参照光B_COMB1が第1の光スイッチ14Aにより時分割合成され、参照光S1として干渉計ヘッド13に入射される。また、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aから出射された第1の波長帯域の第1の光コム測定光A_COMB2と広範囲測定用光源すなわち第2の光コム光源11Bから出射された第2の波長帯域第2の光コム測定光B_COMB2が第2の光スイッチ14Bにより時分割合成され、測定光S2として干渉計ヘッド13に入射される。
【0102】
干渉計ヘッド13では、第1の波長帯域の第1の光コム参照光A_COMB1と第2の波長帯域第2の光コム参照光B_COMB1が時分割合成された参照光S1と、第1の波長帯域の第1の光コム測定光A_COMB2と第2の波長帯域の第2の光コム測定光B_COMB2が時分割合成された測定光S2を合波することにより参照用干渉光S3’が生成されるとともに、基準光路長L1の参照光路21を通過させた参照光S1と測定対象の測定光路51を通過させた測定光S2とを合波することにより測定用干渉光S4’が生成される。
【0103】
この干渉計ヘッド13において生成された参照用干渉光S3と測定用干渉光S4’は、干渉光検出部15’に入射される。
【0104】
干渉光検出部15’では、参照用干渉光S3’を参照用光検出器15Cで検出して、得られる参照用干渉信号を信号処理部17に供給するとともに、測定用干渉光S4’を測定用光検出器16Cで検出して、得られる測定用干渉信号を信号処理部17’に供給する。
【0105】
そして、信号処理部17’では、干渉光検出部15’において参照用光検出器15Cにより得られる参照用干渉信号に時分割で含まれる上記第1の波長帯域の参照用干渉光A_COMB1による第1の参照用干渉信号と上記第2の波長帯域の参照用干渉光B_COMB1による第2の参照用干渉信号を時分割で処理するとともに、干渉光検出部15’において測定用光検出器16Cにより得られる測定用干渉信号に時分割で含まれる上記第1の波長帯域の測定用干渉光A_COMB2による第1の測定用干渉信号と上記第2の波長帯域の測定用干渉光B_COMB2による第2の測定用干渉信号を時分割処理して、上記第1の波長帯域の参照用干渉光A_COMB1による第1の参照用干渉信号と上記第1の波長帯域の測定用干渉光A_COMB2による第1の測定用干渉信号の時間差と、上記第2の波長帯域の参照用干渉光A_COMB2による第2の参照用干渉信号と上記第2の波長帯域の測定用干渉光B_COMB2による第2の測定用干渉信号の時間差に基づいて、測定対象物50までの距離L2を上記参照光路21の光路長L1と上記測定光路51の光路長L2の光路長差の絶対値(L2-L1)として求める処理を行う。
【0106】
この信号処理部17’においても、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aによる高精度測定と、広範囲測定用光源すなわち第2の光コム光源11Bによる広範囲測定を同時に行い、第1の光コム光源11Aによる高精度測定結果として得られる第1の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号との時間差に基づく高精度距離情報(L2-L1)Aと第2の光コム光源11Bによる広範囲測定結果として得られる第2の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号との時間差に基づく広範囲距離情報(L2-L1)Bを求めることにより、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aによる測定光A_COMB2の第1の波長帯域の半波長の測定範囲の制限を超えて、広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に測定対象物50までの距離L2を上記参照光路21の光路長L1と上記測定光路51の光路長L2の光路長差の絶対値(L2-L1)として得ることができる。
【0107】
上述の如き構成の光コム距離計10,10’では、変調周波数が互いに異なる第1の波長帯域の第1の光コム参照光A_COMB1と第1の光コム測定光A_COMB2を第1の光コム光源11Aから出射するとともに、上記変調周波数よりも低く変調周波数が互いに異なる第2の波長帯域の第2の光コム参照光B_COMB1と第2の光コム測定光B_COMB2を第2の光コム光源11Bから出射し、合波部12、12’により、上記第1の光コム参照光A_COMB1と上記第2の光コム参照光B_COMB1を合波して参照光S1を生成するとともに、上記第1の光コム測定光A_COMB2と上記第2の光コム測定光B_COMB2を合波して測定光S2を生成して、参照光S1と測定光S2を光コム干渉計13に入射させ、上記光コム干渉計13により入射された参照光S1と測定光S2とを合波して参照用干渉光S3を生成し、 上記光コム干渉計13を介して、基準光路長L1の参照光路21に参照光S1を入射させるとともに、光路長L2が未知の測定光路51に測定光S2を入射させ、上記参照光路21を通過させた参照光S1’と上記測定光路51を通過させた測定光S2’とを合波して測定用干渉光をS4を生成し、上記光コム干渉計13により生成された参照用干渉光S3と測定用干渉光S4を干渉光検出部15、15’で検出することにより得られる上記第1の波長帯域の参照用干渉信号の時間差と測定用干渉光信号及び上記第2の波長帯域の参照用干渉信号と測定用干渉信号の位相差から、信号処理部17により上記測定対象物50までの距離L2を算出する。
【0108】
ここで、光学式三次元形状測定装置100では、光コム距離計10,10’において、光コム干渉計13Aにより、入射された参照光S1と測定光S2とを合波して参照用干渉光S3を生成するとともに、参照光路21を通過させた参照光S1と測定光路51を通過させた測定光S2とを合波して測定用干渉光S4を生成し、干渉光検出部15、15’により参照用干渉光S3と測定用干渉光S4を検出することにより得られる参照用干渉信号と測定用干渉信号の位相差から、信号処理部17により測定光路51の光路長L
2として測定対象物50までの距離L
2を算出しているが、光コム干渉計13の構成は、これに限定されることなく、例えば、
図7に示すような構成の光コム干渉計13B、
図8に示すような構成の光コム干渉計13C、
図9に示すような構成の光コム干渉計13D等の構成を採用しても良い。
【0109】
図7は、光コム距離計10,10’の干渉計ヘッド13に備えられる光コム干渉計13Bの構成を示すブロック図である。
【0110】
この
図7に示す光コム干渉計13Bは、4個のハーフミラー13d、13e13f、13gを備え、入射された参照光S1を第1のハーフミラー13dにより第1の参照光S1aと第2の参照光S1bに分離するとともに、入射された測定光S2を第2のハーフミラー13eにより第1の測定光S2aと第2の測定光S2bに分離して、基準光路長L1の参照光路21に第3のハーフミラー13fを介して上記第1の測定光S2aを入射させるとともに、光路長L2が未知の測定光路51に第4のハーフミラー13gを介して上記第2の測定光S2aを入射させる。
【0111】
そして、この光コム干渉計13Bでは、上記第1の参照光S1aと上記参照光路21を通過させた第1の測定光S2a’とを上記第3のハーフミラー13fにより合波して参照用干渉光S3を生成するとともに、上記第2の参照光S1bと上記測定光路51を通過させた第2の測定光S2b’とを上記第3のハーフミラー13gにより合波して測定用干渉光S4を生成する。
【0112】
すなわち、この光コム干渉計13Bでは、基準光路長L1の参照光路21を通過させた第1の測定光S2a’が第1の参照光S1aと合波された参照用干渉光S3を生成するとともに、光路長L2が未知の測定光路51を通過させた第2の測定光Sb’が第2の参照光S1bと合波された測定用干渉光S4を生成する。
【0113】
そして、信号処理部17では、この光コム干渉計13Bにより生成された参照用干渉光S3と測定用干渉光S4を干渉光検出部15で検出することにより得られる参照用干渉信号と測定用干渉信号に基づいて、上記測定対象物50までの距離L2を算出する。
【0114】
干渉光検出部15で検出することにより得られる参照用干渉信号には、第1の測定光S2a’が参照光路21を通過することにより、参照光路21の光路長L1 に対応する位相情報がそれぞれ付与された第1の波長帯域の第1の光コム測定光A_COMB2による第1の波長帯域の光コム参照信号と、第2の波長帯域の第2の光コム測定光B_COMB2による第2の波長帯域の光コム参照信号が含まれている。
【0115】
また、干渉光検出部15で検出することにより得られる測定用干渉信号には、第2の測定光S2b’が測定光路51を通過することにより、測定光路51の光路長L2に対応する位相情報がそれぞれ付与された第1の波長帯域の第1の光コム測定光A_COMB2による第1の波長帯域の光コム測定信号と、第2の波長帯域の第2の光コム測定光B_COMB2による第2の波長帯域の光コム測定信号が上記測定用干渉信号に含まれている。
【0116】
信号処理部17では、参照用干渉信号と測定用干渉信号に含まれる第1の波長帯域の第1の光コム参照光A_COMB1による第1の波長帯域の光コム参照信号と、第1の光コム測定光A_COMB2による第1の波長帯域の光コム測定信号と、及び第2の波長帯域の第2の光コム参照光B_COMB1による第2の波長帯域の光コム参照信号と、第2の光コム測定光B_COMB2による第2の波長帯域の光コム測定信号の位相情報を解析することにより、高精度測定用光源すなわち第1の光コム光源11Aによる測定光A_COMB2の第1の波長帯域の半波長の測定範囲の制限を超えて、広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に、上記参照光路21の光路長L1と上記測定光路51の光路長L2の光路長差の絶対値(L2-L1)として測定対象物50までの距離L2を得ることができる。
【0117】
図8は、光コム距離計10,10’の干渉計ヘッド13に備えられる光コム干渉計13Cの構成を示すブロック図である。
【0118】
この
図8に示す光コム干渉計13Cでは、入射された参照光S1を第1のハーフミラー13dにより第1の参照光S1aと第2の参照光S1bに分離するとともに、入射された測定光S2を第2のハーフミラー13eにより第1の測定光S2aと第2の測定光S2bに分離して、基準光路長L1の参照光路21に第3のハーフミラー13fを介して上記第1の参照光S1aを入射させるとともに、光路長L2が未知の測定光路52に第4のハーフミラー13gを介して上記第2の第2の参照光S1bを入射させる。
【0119】
そして、上記第1の測定光S2aと上記参照光路21を通過させた第1の参照光S1a’とを上記第3のハーフミラー13fにより合波して参照用干渉光S3を生成するとともに、上記第2の測定光S2bと上記測定光路51を通過させた第2の参照光S1b’とを上記第3のハーフミラー13gにより合波して測定用干渉光S4を生成する。
【0120】
この光コム干渉計13Cにより生成される参照用干渉光S3には、参照光路21を通過した第1の参照光S1a’により参照光路21の光路長L1に応じた位相情報が付与され、また、測定用干渉光S4には、測定光路51を通過した第2の参照光S1b’により測定光路51の光路長L2に応じた位相情報が付与される。
【0121】
図9は、光コム距離計10,10’の干渉計ヘッド13に備えられる光コム干渉計13Dの構成を示すブロック図である。
【0122】
この
図9に示す光コム干渉計13Dでは、入射された参照光S1を第1のハーフミラー13dにより第1の参照光S1aと第2の参照光S1bに分離するとともに、入射された測定光S2を第2のハーフミラー13eにより第1の測定光S2aと第2の測定光S2bに分離して、基準光路長L1の参照光路21に第3のハーフミラー13fを介して上記第1の参照光S1aを入射させるとともに、光路長L2が未知の測定光路52に第4のハーフミラー13gを介して上記第2の第2の測定光S2bを入射させる。
【0123】
そして、上記第1の測定光S2aと上記参照光路21を通過させた第1の参照光S1a’とを上記第3のハーフミラー13fにより合波して参照用干渉光S3を生成するとともに、上記第2の参照光S1bと上記測定光路51を通過させた第2の測定光S2b’とを上記第3のハーフミラー13gにより合波して測定用干渉光S4を生成する。
【0124】
この光コム干渉計13Dにより生成される参照用干渉光S3には、参照光路21を通過した第1の参照光S1a’により参照光路21の光路長L1に応じた位相情報が付与されており、また、測定用干渉光S4には、測定光路51を通過した第2の測定光S2b’により測定光路51の光路長L2に応じた位相情報が付与される。
【0125】
信号処理部17では、光コム干渉計13C、13Dにより生成される参照用干渉光S3と測定用干渉光S4を干渉光検出部15で検出することにより得られる参照用干渉信号と測定用干渉信号に含まれる位相情報を解析することにより、上記参照光路21の光路長L1と上記測定光路51の光路長L2の光路長差の絶対値(L2-L1)として測定対象物50までの距離L2を広い測定範囲に亘って連続的に且つ高精度に得ることができる。
【符号の説明】
【0126】
10,10’ 光コム距離計、11A 第1の光コム光源、11B 第2の光コム光源、12、12’ 合波部、12A、12B、12C、12D、12E 波長多重カップラ、13、13’ 干渉計ヘッド、13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g ハーフミラー、13A、13B、1C、13D 光コム干渉計、14A、14B 光スイッチ、15、15’ 干渉光検出部、15A、15B、15C 参照用干渉光検器、16A、16B、16C 測定用干渉光検器、17 信号処理部、20 基準反射面、21 参照光路、30 光学スキャン装置、31 走査光学系、32 テレセントリック光学系、33 スキャン光学系、40 信号処理装置、50 測定対象物、51 測定光路、100 光学式三次元形状測定装置