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特許7385955把持システム、把持方法、制御装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】把持システム、把持方法、制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022157191
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-03-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和4年3月28日に、ベルサール飯田橋ファーストにて公開(2)令和4年2月24日に、マックスバリュ東海 長泉流通センターにて公開(3)令和4年1月19日に、https://connected-robotics.com/2022/01/19/hcj2022/にて公開 (4)令和4年1月19日に、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000031342.htmlにて公開(5)令和4年2月15日に、国際ホテル・レストラン・ショー2022にて公開(6)令和4年2月15日に、テレビ東京 ワールドビジネスサテライトにて公開(7)令和4年2月28日に、https://robotstart.info/2022/02/28/moriyama_mikata-no146.htmlにて公開(8)令和4年3月15日に、ポテカル(POTATO CULTURE),2022年4月号(No.140)にて公開(9)令和4年3月22日に、https://www.youtube.com/watch?v=n2qFYK0DN4Mにて公開(10)令和4年6月7日に、FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)にて公開(11)令和4年4月25日に、https://www.nb-shinbun.co.jp/challenge/64/にて公開(12)令和4年5月11日に、日本放送協会 おはBizにて公開(13)令和4年5月25日に、日本物流新聞 令和4年5月25日付刊行にて公開(14)令和4年6月8日に、日刊工業新聞 令和4年6月8日付刊行にて公開(15)令和4年6月9日に、https://www.businessinsider.jp/post-255224にて公開(16)令和4年6月11日に、株式会社TBSテレビ 情報7DAYSにて公開(17)令和4年7月4日に、https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/070101076/にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (18)令和4年7月8日に、https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00004/00073/にて公開(19)令和4年7月10日に、日経Robotics 2022年8月号(第85号),第14~20頁,株式会社日経ビーピーにて公開(20)令和4年9月28日に、惣菜・デリカ JAPAN(SDJ)-惣菜製造自動化・設備機器展にて公開(21)令和4年8月29日に、https://connected-robotics.com/2022/08/29/sdi/にて公開(22)令和4年8月29日に、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000031342.htmlにて公開(23)令和4年9月27日に、日刊工業新聞 令和4年9月27日付刊行にて公開(24)令和4年9月7日に、https://www.youtube.com/watch?v=3OHHEAIvr7Iにて公開(25)令和4年6月1日に、https://www.youtube.com/watch?v=c-EPw_mWAbcにて公開(26)令和4年6月10日に、https://www.youtube.com/watch?v=pAC_wIf0VVMにて公開(27)令和4年6月15日に、https://www.youtube.com/watch?v=lVgexqZqO8wにて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】塚本 光一
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キルス
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-179669(JP,A)
【文献】特開2019-126876(JP,A)
【文献】実公平06-001378(JP,Y2)
【文献】特開2021-030407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象となる対象物を把持部材により把持するロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置による制御に従った前記ロボットは、前記把持部材を把持予定位置に接近させる経路において、前記対象物の有する粘性あるいは粘着性が原因となり前記対象物以外の他の物体に付着している前記対象物を、前記把持部材により前記把持予定位置に移動させる移動動作を行う、
ことを特徴とする把持システム。
【請求項2】
把持対象となる対象物を把持部材により把持するロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置による制御に従った前記ロボットは、
前記把持部材を把持予定位置に接近させる経路において、前記対象物以外の他の物体に付着している前記対象物を、前記把持部材により前記把持予定位置に移動させる移動動作と、
前記移動動作の後に、前記経路を介して前記把持部材を前記把持予定位置に接近させ、該把持予定位置において前記対象物を、前記把持部材により把持する把持動作と、
を連続した一連の動作として行う、
ことを特徴とする把持システム。
【請求項3】
前記他の物体は、前記対象物を収容する収容空間を有する容器であり、
前記制御装置による制御に従った前記ロボットは、前記移動動作において、前記収容空間を形成する内壁面に付着している前記対象物を、前記把持部材により前記収容空間内の把持予定位置まで移動させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持システム。
【請求項4】
前記制御装置による制御に従った前記ロボットは、前記把持予定位置が前記収容空間の何れの位置であるかに基づいて、前記移動動作を行うか否かを選択する、
ことを特徴とする請求項に記載の把持システム。
【請求項5】
前記制御装置による制御に従った前記ロボットは、前記移動動作を行った後に、
前記把持予定位置において、前記把持部材を前記対象物の物理量が所定量になると推定される深さまで前記対象物の表面から差し込んで把持する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持システム。
【請求項6】
前記把持部材は、複数の外面を形成しており、
前記制御装置による制御に従った前記ロボットは、前記複数の外面の内の所定の外面を前記他の物体と対向させてから、前記移動動作を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持システム。
【請求項7】
前記所定の外面は、前記他の物体と対向させた場合に、前記複数の外面の内の他の外面を前記他の物体と対向させた場合よりも、前記把持部材を支持する支持部材が前記他の物体から遠方となるよう配置されている外面である、
ことを特徴とする請求項に記載の把持システム。
【請求項8】
把持対象となる対象物を把持部材により把持するロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、前記把持部材を把持予定位置に接近させる経路において、前記対象物の有する粘性あるいは粘着性が原因となり前記対象物以外の他の物体に付着している前記対象物を、前記把持部材により前記把持予定位置に移動させる移動動作を行うよう前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項9】
把持対象となる対象物を把持部材により把持するロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、
前記把持部材を把持予定位置に接近させる経路において、前記対象物以外の他の物体に付着している前記対象物を、前記把持部材により前記把持予定位置に移動させる移動動作と、
前記移動動作の後に、前記経路を介して前記把持部材を前記把持予定位置に接近させ、該把持予定位置において前記対象物を、前記把持部材により把持する把持動作と、
を連続した一連の動作として行うよう前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持システム、把持方法、制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、把持機能を備えたロボットにより、様々な作業が行われている。例えば、弁当の盛り付け作業をロボットが行う場合、バット等の容器に蓄えられた具材をロボットが所定量把持し、弁当容器の定められた領域に移送してリリース(解放)することで盛り付け作業が実現される。
このような盛り付けを行うロボットに関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-30407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットによる作業において、把持の対象となる対象物の性質が原因となり、作業を適切に行えない場合がある。例えば、ポテトサラダのように粘性あるいは粘着性を有するものが対象物の場合である。
この場合、ロボットによる作業の過程において、粘性あるいは粘着性が原因となり、対象物が容器の内壁面に付着してしまう。このように一旦容器に付着した対象物は、それ以後、ロボットによる把持が困難となる。そして、作業の継続に伴い容器に付着した対象物は増加していき、最終的には対象物の取り残しが多量に発生してしまう。
【0005】
このような課題は、対象物が食材である場合に限られるものではなく、例えば、練ったモルタルやコンクリートといった、粘性あるいは粘着性を有する材料からなる様々な対象物を把持する場合、全てにおいて共通するものである。
このように、従来の技術では、ロボットによって対象物を把持する作業を適切に行うために、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は、ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る把持システムは、
把持対象となる対象物を把持部材により把持するロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置による制御に従った前記ロボットは、前記把持部材を把持予定位置に接近させる経路において、前記対象物以外の他の物体に付着している前記対象物を、前記把持部材により前記把持予定位置に移動させる移動動作を行う、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る把持システム1が複数並べられた状態を示す斜視図である。
図2】本発明に係る把持システム1の主要部を拡大した斜視図である。
図3】ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
図4】一対の把持部材31aの開閉について示す図である。
図5】制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
図6】制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
図7】具材収容部10の収容空間10Aを鉛直上方から俯瞰した図である。
図8】収容空間10A内の具材の状態例を示す模式図である。
図9】付着具材移動動作の概念を示す模式図である。
図10】付着具材移動動作時の、収容空間10A、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。
図11】収容空間10A内の具材の状態例を示す模式図である。
図12】レベリング動作の概念を示す模式図である。
図13】スクレイピング動作の概念を示す模式図である。
図14】ハンド31による把持動作の一例を示す模式図である。
図15】把持システム1が実行する具材取り分け処理の流れを示すフローチャートである。
図16】把持システム1が実行する具材取り分け処理の流れを示すフローチャートである。
図17】把持部材31aの変形例である把持部材31bの形状例を示す模式面である。
図18】把持部材31a及び把持部材31bと、把持動作時の収容空間10A及び具材との関係を示す図である。
図19】把持部材31a及び把持部材31bと、把持動作を繰り返した場合の、収容空間10A及び具材の表面の平坦度合との関係を示す図である。
図20】レベリング動作の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[実施形態]
[構成]
図1及び図2は、本発明に係る把持システム1全体の構成を示す模式図であり、図1は、把持システム1が複数並べられた状態を示す斜視図、図2は、把持システム1の主要部を拡大した斜視図である。
本実施形態における把持システム1は、材料を取り分けるシステムに本発明を適用することを想定したものである。以下の説明においては、把持システム1が、材料として弁当に盛り付けられる総菜等の具材を把持し、この具材を弁当の容器に取り分ける場合を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、盛り付けられる具材の量として、重量を例に挙げて説明するが、本発明は、重量以外であっても、体積、かさ、質量等、各種呼称の物理量を対象に適用することが可能である。
【0011】
図1及び図2に示すように、把持システム1は、具材収容部10と、容器供給部20と、多関節ロボット30と、制御装置40と、遮蔽部50と、を備えている。なお、把持システム1に隣接して、弁当の容器を自動的に運搬するベルトコンベア2が設置されている。
【0012】
具材収容部10は、把持システム1において取り分けられる総菜等の具材を収容する収容空間10Aを備えている。この収容空間10Aは、例えば、具材収容部10自体により構成されてもよいし、具材収容部10に設置可能な大型のバットやトレー等の汎用の容器により構成されてもよい。そして、この収容空間10Aには、例えば、ポテトサラダ等の練りサラダのように粘性あるいは粘着性を有する具材を含む総菜が収容される。本実施形態において、具材収容部10には、1種類の具材が複数食分(例えば、数十~数百食分)収容されているものとする。そして、複数の把持システム1がそれぞれ異なる具材を1つの弁当の容器に盛り付けることで、弁当の盛り付け作業を完了させることができる。具材収容部10の収容空間10Aは、作業者が手作業によって、又は、多関節ロボット30が自動的に交換することが可能である。
【0013】
容器供給部20は、把持システム1において、具材が盛り付けられる所定位置(図2中の盛り付け位置P1)に弁当の容器を供給する。容器供給部20には、弁当の容器が複数収容されており、把持システム1が動作を開始すると、容器を1つずつ盛り付け位置P1に供給する。また、盛り付け位置P1には、弁当の容器の重量を計測する重量センサ21が設置されており、盛り付け位置P1において具材が盛り付けられると、盛り付けられた具材の重量(すなわち、盛り付けによって増加した重量)を計測する。このとき計測された重量のデータは、制御装置40に出力される。そして、重量の計測が終了すると、容器供給部20に備えられた押し出し機構によって、弁当の容器がベルトコンベア2に搬出される。
【0014】
多関節ロボット30は、例えば、水平多関節ロボットあるいは垂直多関節ロボット等によって構成され、盛り付けられる具材を把持可能なハンド31と、可動範囲において任意の位置にハンド31を移動させるロボットアーム32と、を備えている。
また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が把持した具材の物理量を取得する手段の一例として、把持した具材の重量を計測する重量センサ30Aが設置されている。また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が具材に接触したことを検出する手段の一例として、接触した具材からの反力(表面に接触されることで得られる力覚を含む)を計測する力センサ30Bが設置されている。重量センサ30Aによって計測された具材の重量(すなわち、把持された具材の重量)のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータは、制御装置40に出力される。
【0015】
さらに、ハンド31を保持する関節は、ロボットアーム32に対してハンド31を捻り方向に回転させる軸を備えている。そのため、ハンド31が具材を把持する際に、ハンド31の向きを変化させることで、ハンド31が開閉する方向を調整することができる。これにより、ハンド31が容器の内壁面近傍に達した際に、収容空間10Aの内壁面と平行な方向にハンド31が開閉するようにハンド31の向きを変更することが可能となり、容器内壁面近傍の具材を把持し易くなる。また、後述する付着具材移動動作(収容空間10Aの内壁面に付着した具材を移動する動作)を実行する場合に、ハンド31の向きを付着具材移動動作に好適な方向に変更することができる。
【0016】
図3は、ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
なお、図3においては、一対で用いられる把持部材31aの一方のみが示されている。
図3に示すように、本実施形態における把持部材31aは、天板部と、主板部と、第1側板部と、第2側板部と、により構成されている。天板部は、長方形状の平面を有している。また、主板部は、天板部の有する平面を水平とした場合に、この平面の長手方向の一端から、この平面の長手方向の他端の鉛直下方の離間した位置に向かって傾斜して延在している。さらに、第1側板部と第2側板部は、天板部を有する平面を水平とした場合に、この平面の短手方向の両端それぞれから鉛直下方に向かって延在している。
【0017】
図4は、一対の把持部材31aの開閉について示す図である。図3に示す把持部材31aは、結合部材(図示を省略する)により、それぞれの主板部の内面が対向するようにハンド31に結合される。そして、把持動作を行うにあたって、図4(a)及び図4(b)に示すように開閉方向(ここでは、一対の把持部材31aそれぞれの主板部の内面が対向する方向)に沿って、開く動作及び閉じる動作を行う。そして、図3に示すような把持部材31aの形状により、ハンド31が一対の把持部材31aを閉じた場合に、把持部材31a同士が当接することで、少なくとも先端及び側板部が閉じた内面が具材を把持するための容器形状となる。
【0018】
このような把持部材31aの形状の場合、練りサラダ等の具材に対して、把持部材31aの先端を表面から垂直に差し込み、所定の深さで一対の把持部材31aを閉じて具材を持ち上げることで、ほぼ一定量の具材を取り出すことが可能となる。
【0019】
また、一対の把持部材31aの側板部同士(第1側板部同士、あるいは第2側板部同士)が結合したことで形成される外面は平面となっている。これにより、把持部材31aは、後述する付着具材移動動作(収容空間10Aの内壁面に付着した具材を移動する動作)に適した形状であると共に、付着具材移動動作を行い易い形態で設置することが可能となっている。さらに、把持部材31aの先端は平坦(先端が直線状の縁部を有する形状)であると共に、この先端は、収容空間10Aの底面と平行となるように設置される。これにより、把持部材31aは、後述するレベリング動作(具材の表面を平坦化する動作)に適した形状であると共に、レベリング動作を行い易い形態で設置することが可能となっている。
なお、以下の説明において、これら一対の把持部材31aのそれぞれを区別することなく説明する際は、単に「把持部材31a」と称する。
【0020】
図1及び図2に戻り、制御装置40は、PC(Personal Computer)又はプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、把持システム1全体を制御する。例えば、制御装置40は、容器供給部20が容器を供給する動作、及び多関節ロボット30が具材収容部10から具材を把持して盛り付ける動作等を制御する。
【0021】
遮蔽部50は、把持システム1において、具材収容部10、容器供給部20及び多関節ロボット30が設置された領域の周囲及び情報を囲う板状部材によって構成されている。遮蔽部50を構成する板状部材は、ガラス又は樹脂等の透明な材料によって構成され、外部から把持システム1の稼動状況を視認することが可能となっている。また、遮蔽部50が構成する側壁の一部には、開閉可能な扉が設置されている。具材収容部10の収容空間10Aの交換、容器供給部20への容器の追加あるいは把持システム1のメンテナンス等が行われる場合、作業者は遮蔽部50の扉を開けて各種作業を行うことができる。
【0022】
[制御装置40のハードウェア構成]
図5は、制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
図5に示すように、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)711と、ROM(Read Only Memory)712と、RAM(Random Access Memory)713と、バス714と、入力部715と、出力部716と、記憶部717と、通信部718と、ドライブ719と、を備えている。
【0023】
CPU711は、ROM712に記録されているプログラム、又は、記憶部717からRAM713にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM713には、CPU711が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0024】
CPU711、ROM712及びRAM713は、バス714を介して相互に接続されている。バス714には、入力部715、出力部716、記憶部717、通信部718及びドライブ719が接続されている。
【0025】
入力部715は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置40に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部715としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部716は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部717は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部718は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0026】
ドライブ719には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア731が適宜装着される。ドライブ719によってリムーバブルメディア731から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部717にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置40の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0027】
[機能的構成]
次に、制御装置40の機能的構成について説明する。
図6は、制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
図6に示すように、把持システム1の動作を制御するためのプログラムを実行することにより、制御装置40のCPU711においては、センサ情報取得部151と、具材状態判定部152と、具材量判定部153と、多関節ロボット制御部154と、容器供給制御部155と、記録制御部156と、が機能する。また、記憶部717には、パラメータ記憶部171と、履歴データベース(履歴DB)172と、が形成される。
【0028】
パラメータ記憶部171には、把持システム1が動作する際に用いられる各種パラメータが記憶されている。例えば、パラメータ記憶部171には、具材収容部10の収容空間10Aの位置、容器供給部20から供給される弁当の容器の位置、弁当の容器内における具材を盛り付ける領域の位置、具材を把持する際のハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係(関数あるいはテーブル形式のデータ等)、多関節ロボット30の動作パターンを定義するパラメータ等が記憶される。本実施形態において、ハンド31の具材への差し込み量は、具材の重量(物理量)を推定する指標となっている。すなわち、ハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係から、把持された具材の実際の重量(目標とする把持重量)は、ハンド31の具材への差し込み量を基に推定される。
【0029】
履歴DB172には、把持システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータ、あるいは把持システム1で取り分けられた具材の重量の計測データが記憶される。また、履歴DB172には、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップも記憶される。
【0030】
図7は、履歴DB172に記憶される具材状態マップについて説明するための図であって、具材収容部10の収容空間10Aを鉛直上方から俯瞰した図である。図7に示すように、本実施形態では、収容空間10Aを、複数の列(ここでは、A列~C列)と、複数の行(ここでは、第1行~第5行)で区分けした複数の領域(ここでは、領域A1~領域C5)として管理している。そして、後述の記録制御部156は、把持システム1が把持動作をした際に取得された具材の重量及び具材の反力の計測データや、後述の具材状態判定部152による判定結果や、把持システム1で取り分けられた具材の重量の計測データに基づいて、各領域の具材の状態を検出し、各領域を管理する番号(ここでは、領域A1~領域C5)に紐づけて記憶することで、具材状態マップを生成する。この場合、具材の状態とは、各領域における具材の残量や、後述の具材状態判定部152が判定した具材の深さや平坦度合である。
【0031】
また、収容空間10A内の具材が取り分けられた後に、収容空間10Aが新たに交換された場合には、予め定められた所定量の具材(例えば、収容空間10Aに対して充分な量の具材)が、所定の状態(例えば、平坦な状態)で収容されているものとして具材状態マップが更新される。
【0032】
なお、詳細は後述するが付着具材移動動作を実行する場合、図7に矢印で示すように、収容空間10Aを形成する内壁面に沿って、時計回りあるいは反時計回りの順に把持動作が行われる。例えば、領域A1、領域B1、領域C1、領域C2、・・・といった順に把持予定位置を変更しながら把持動作が行われる。
【0033】
図6に戻り、センサ情報取得部151は、把持システム1に設置された各種センサによって検出された情報であるセンサ情報を取得する。例えば、センサ情報取得部151は、多関節ロボット30の関節に設置された重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータや、容器供給部20の重量センサ21によって計測された具材の重量のデータを取得する。
【0034】
具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態を認識する。例えば、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータから、収容空間10A内の具材の深さ(収容空間10A内の具材表面から収容空間10A底面までの深さ)、表面の平坦度合(表面がどの程度荒れているか)を認識する。本実施形態では、カメラを用いた画像解析で具材の状態を判定するといった手法ではなく、力センサ30Bを用いた反力に基づいて具材の状態を測定するといった手法を用いる。そのため、例えば、カメラの導入コストや管理コストを削減できると共に、カメラの死角等を考慮する必要がないので、多関節ロボット30と収容空間10Aの位置等の配置をより柔軟に選択することができる。また、具材から生じる湯気や、照明の影響を考慮する必要もない。
【0035】
そして、具材状態判定部152は、具材の深さ及び表面の平坦度合を認識すると、これらが具材を把持するための条件に適合しているか否か(例えば、具材の深さ及び平坦度合が設定された閾値以上であるか否か)を判定する。なお、具材の表面の平坦度合は、例えば、表面が有する凹凸の大きさの絶対値等に基づいて定義することができ、具材の表面が平坦であるほど大きい値となるように定義することができる。また、具材の表面の部分毎に平坦度合を判定することとしてもよい。また、具材状態判定部152は、収容空間10A内の具材の状態が、一度の把持動作で規定量の具材を把持可能であるか否かを判定する。
【0036】
具材量判定部153は、多関節ロボット30の重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータや、容器供給部20の重量センサ21によって計測された具材の重量のデータに基づいて、規定量の具材が把持されたか否か、及び、規定量の具材が弁当の容器に取り分けられたか否かを判定する。
【0037】
多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の動作を制御し、把持システム1において定義されている動作パターンに従って、具材を取り分けるための一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。例えば、多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30のハンド31によって具材を把持する動作(把持動作)、把持した具材を弁当の容器に移送する動作(移送動作)、把持している具材をリリースする動作(リリース動作)、収容空間10Aの内壁面に付着した具材を移動する動作(付着具材移動動作)、収容空間10A内の具材の表面を平坦にする動作(レベリング動作)、収容空間10A内の具材を寄せ集める動作(スクレイピング動作)等を多関節ロボット30に実行させる。
【0038】
図8は、収容空間10A内の具材の状態例を示す模式図である。また、図9は、付着具材移動動作の概念を示す模式図である。
図8に示すように、多関節ロボット30により把持等の動作を行うことに伴い、収容空間10Aの内壁面に具材が付着していってしまう。本実施形態では、このように内壁面に具材が付着することを想定して、図9に示すように、多関節ロボット30が付着具材移動動作を行い、把持部材31aによって内壁面に付着した具材を、把持予定位置まで移動させる。ここで、把持予定位置とは、把持部材31aを閉じることで把持動作を行うことを予定している位置である。また、付着具材移動動作における移動とは、例えば、付着している具材を把持部材31aによって押し当てて下方に押し込むことや、付着している具材を把持部材31aによって剥離させて落下させることにより実現される。
【0039】
図10は、付着具材移動動作時の、収容空間10A、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。図10では、鉛直方向をZ方向と称し、このZ方向と直交する第1の水平方向(紙面と直交する方向)をY方向と称し、これらZ方向及びY方向のそれぞれと直交する第2の水平方向をX方向と称する。すなわち、Z方向、Y方向、及びX方向はそれぞれ互いに直行する方向である。
【0040】
ハンド31は、ロボットアーム32の先端に配置される。また、把持部材31aは、結合部材により、このハンド31に結合されることで、ハンド31に支持される。そして、このハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、多関節ロボット制御部154の制御するロボットアーム32の動作に従って、X方向、Y方向、及びZ方向の各方向における、可動範囲内に移動することが可能である。また、ハンド31は、不図示のアクチュエータによって、一対の把持部材31aをY方向に開閉することで、把持動作を実現する。
また、ハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、Z方向を回転軸として回転することが可能である。
そして、付着具材移動動作では、把持部材31aを把持予定位置に接近させる経路において、収容空間10Aに付着している具材を、把持部材31aにより収容空間10A内の把持予定位置に移動させる。
【0041】
また、本実施形態では、2つの結合部材により脱着機構が実現され、この脱着機構を用いて、把持部材31aが、ロボットアーム32先端のハンド31に連結される。
この脱着機構を実現するために、第1結合部材は、複数のロッドと、ベース部材を備えている。複数のロッドは、所定間隔で並べて設置され、結合時に第2結合部材と対向する方向(図10中の-x方向)にロッド先端部が突出した形状をしている。また、ベース部材は、この複数のロッドを保持すると共にハンド31の先端に配置される。
一方で、第2結合部材は、ベース部材と、磁石とを備えている。ベース部材は、第1結合部材のロッド間隔に合わせて設置された複数の挿通穴を有すると共に、把持部材31aの天板部に配置される。磁石は、挿通穴それぞれの内部における奥側の端部(ロッドが挿入される側とは逆の端部)に固定される。
そして、作業者が第1結合部材の各ロッドを、図中の-X方向(図中「差し込み方向」)に向けて、第2結合部材の各挿通穴に挿通することで、各ロッドの先端が各挿通穴内で磁石に磁力で吸着される。このような構造により、脱着機構は実現される。
【0042】
また、この脱着機構においては、把持部材31aに対して、図10中のY方向(把持方向及び開放方向)及びZ方向(高さ方向)に力が作用する場合、各ロッドと各挿通穴との嵌め合い構造によって保持力が発揮される。また、把持部材31aに対して、図10中のX方向に力が作用する場合、図中の-X方向(図中「差し込み方向」)については、ロッドと磁石との当接力によって保持力が発揮されると共に、+X方向(図中「引抜き方向」)については、ロッドと磁石との磁力による吸着力によって保持力が発揮される。
【0043】
食品の取り分け作業等においては、定期的に把持部材31aを洗浄等するため、把持部材31aを高い頻度で脱着する必要がある。しかし、このような脱着機構であれば、ロッドの挿通穴に対する挿通と、磁石(永久磁石)による吸着作用で、作業で必要となる充分な保持力を実現することができる。また、このような脱着機構により、把持部材31aの脱着が容易なものとなる。
【0044】
ただし把持部材31aが、収容空間10Aの内壁面に衝突したり、内壁面に付着した具材を移動する際の抵抗力が大きかったりした場合に、脱着機構において想定外の力が把持部材31aに作用し、把持部材31aが意図せず外れてしまうおそれがある。
例えば、衝突等が発生した場合に、脱着機構において、把持部材31aに対して、図中の-X方向(図中「差し込み方向」)に力が作用するのであれば、ロッドと磁石との当接力が更に増すことになるので、把持部材31aが外れることはない。一方で、衝突等が発生した場合に、把持部材31aに対して、図中の+X方向(図中「引抜き方向」)に力が作用した場合、その作用する力が、ロッドと磁石との磁力による吸着力による保持力を超えてしまい、把持部材31aが外れてしまうおそれがある。
そこで、付着具材移動動作では、仮に衝突等が発生しても、把持部材31aが外れないように、把持部材31aにおける、図中+X方向(図中「引抜き方向」)側の外面ではなく、図中の-X方向(図中「差し込み方向」)側の外面(図中において第2結合部材が配置されていない側の外面)を用いて、収容空間10Aに付着している具材を、把持予定位置に移動させる。これにより、仮に衝突等が発生しても、脱着機構において、図中+X方向(図中「引抜き方向」)ではなく、図中の-X方向(図中「差し込み方向」)に力が作用することになるので、把持部材31aが外れてしまうような事態を防止することができる。
【0045】
また、付着具材移動動作を行う場合、把持部材31aを閉じた状態で側板部同士により形成される外面(第1側板部同士により形成される外面、あるいは第2側板部同士で形成される外面)の外面が平坦であることを利用する。すなわち、具材が付着している収容空間10Aの平坦な内壁面と、側板部同士により形成される平坦な外面という、平坦な面同士が対向した状態を維持して、付着具材移動動作を行う。これにより、平坦な面同士が対向して、互いに干渉しない状態で、収容空間10Aに付着している具材を、効率よく移動することができる。
【0046】
そして、ハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、その後把持動作を行うために、把持部材31aを開いた状態に切り替えて、具材に接触し、その後把持部材31aを閉じた状態に切り替えて、具材を把持する、という開閉動作を行う。これにより、付着具材移動動作により把持予定位置に移動された具材を適切に把持することができる。
さらに、付着具材移動動作では、内壁面に付着した具材を移動させることで、収容空間10A内の具材の表面を平坦化させたり、具材の深さを均一化させたりすることができる。つまり、付着具材移動動作により、具材の表面を、より理想的な状態にすることが可能となる。特に、付着具材移動動作を周期的に行い、内壁面に付着した具材を頻繁に移動させることで、このような具材の表面の理想的な状態は常に維持される。すなわち、付着具材移動動作によれば、具材の表面の平坦度合いや具材の高さが、多関節ロボット制御部154の制御において意図していないほど大きく変動することを防止できる。そのため、多関節ロボット制御部154の制御による、把持部材31aを具材に差し込む深さに基づいた定量把持の精度を担保することができる。
【0047】
さらに、結合部材による結合は、把持部材31aの天板部の短手方向における中央ではなく、天板部の短手方向における何れかの端側で行われている。すなわち、ハンド31のX方向の中心線(鉛直線)と、把持部材31aを閉じた場合のX方向の中心線(鉛直線)は意図的にずらされている。そして、付着具材移動動作を行う場合、収容空間10Aと対向させる外面(第1側板部同士により形成される外面、あるいは第2側板部同士で形成される外面の何れか)は、収容空間10Aと対向させた場合に、複数の外面の内の他の外面を他の物体と対向させた場合よりも、把持部材31aを支持するハンド31が収容空間10Aから遠方となるよう配置されている外面とする。
これにより、図10に「クリアランス」として示すように、ハンド31と、収容空間10Aとの距離を保ったまま付着具材移動動作を行うことができ、ハンド31に具材が付着するような事態を防止することができる。
【0048】
さらに、図7を参照して上述したが、付着具材移動動作を実行する場合、図7に矢印で示すように、収容空間10Aを形成する内壁面に沿って、時計回りあるいは反時計回りの順に把持動作が行われる。例えば、領域A1、領域B1、領域C1、領域C2、・・・といった順に把持予定位置を変更しながら把持動作が行われる。これにより、内壁面に付着した具材を、付着具材移動動作により漏れなく移動させることができる。また、付着具材移動動作により把持予定位置に移動させた具材を、今回の把持動作、あるいは、次回の把持動作により効率よく把持していくことができる。
また、このように内壁面に沿って、時計回りあるいは反時計回りの順に付着具材移動動作と、把持動作とを繰り返し行うことにより、収容空間10Aの内壁面に沿っていない領域(ここでは、領域B2、領域B3、及び領域B4)に、残りの具材が集まりやすくなる。これを考慮して、付着具材移動動作と把持動作とを、内壁面に沿って時計回りあるいは反時計回りの順に一周(あるいは、複数周)行った後に、残りの具材が集まっている、内壁面に沿っていない領域に対して、付着具材移動動作と把持動作とを行うようにしてもよい。このようにすれば、内壁面に沿っているか否かを問うことなく、収容空間10Aの全ての領域における具材の表面の平坦度合いや具材の深さや均一化することができる。
【0049】
これに対して、収容空間10Aの内壁面に沿っていない領域(ここでは、領域B2、領域B3、及び領域B4)を把持予定位置として把持を行う場合には、付着具材移動動作を実行しない。すなわち、本実施形態では、収容空間10Aの内壁面に沿った位置(すなわち、内壁面近傍の位置)が把持予定位置である場合に付着具材移動動作を行うと共に、内壁面に沿っていない位置(すなわち、内壁面遠隔の位置)が把持予定位置である場合には付着具材移動動作を行わない。これにより、付着具材移動動作のためだけに遠隔の内壁面に移動するような不要な動作を削減することができる。
【0050】
このように、本実施形態による付着具材移動動作は様々な特徴を有している。そして、この付着具材移動動作によれば、収容空間10Aに付着しており把持が困難な状態となった具材を、把持が容易な把持予定位置に移動し、適切に把持を行うことが可能となる。
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行うという課題を解決することができる。
また、この付着具材移動動作は、把持予定位置に接近するという把持動作における一連の動作の過程にて行われ、把持に際して不要な経路を大きく移動するような必要がないので、把持動作を妨げることがない。さらに、この移動動作は、把持部材31aにより行うので、付着した対象物を移動させるための専用の部材や機構等を別途用意する必要もない。
【0051】
図11は、収容空間10A内の具材の状態例を示す模式図である。
また、図12は、レベリング動作の概念を示す模式図、図13は、スクレイピング動作の概念を示す模式図である。
図11に示すように、収容空間10A内の具材の表面の平坦度合が低い(荒れている)場合、図12に示すように、多関節ロボット30がレベリング動作を行い、把持部材31aによって表面を平坦化する。なお、レベリング動作を行う場合、把持部材31aの先端が平坦である(直線状の縁部を有する)ことを利用し、収容空間10Aの底面と把持部材31aの先端とが平行な状態を維持して、把持部材31aを収容空間10Aの底面から同一の高さで移動させることができる。また、レベリング動作において、把持部材31aの外面が平面であることを利用して、具材に把持部材31aの外面を押し付けて平坦化したり、把持部材31aの外面で具材表面をなでることで平坦化したりすることも可能である。
【0052】
また、図11に示すように、収容空間10A内の具材の深さが把持動作を行うために十分でない場合、図13に示すように、多関節ロボット30がスクレイピング動作を行い、把持部材31aによって具材を寄せ集めて、把持動作を行うために十分な深さとする。なお、図11に示すように、具材に把持部材31aの外面を押し当てて移動させることによって、具材を寄せ集めることの他、具材を把持部材31aで把持し、他の部分の具材の上に積み上げることで寄せ集めることとしてもよい。
【0053】
図6に戻り、容器供給制御部155は、容器供給部20を制御し、把持システム1において取り分けられる具材を盛り付けるための弁当の容器を所定のタイミングで盛り付け位置P1に供給させる。また、容器供給制御部155は、容器供給部20を制御し、具材が盛り付けられた弁当の容器をベルトコンベア2に搬出させる。
【0054】
記録制御部156は、把持システム1が把持動作した際に取得された制御に関するパラメータ及び把持システム1で取り分けられた具材の重量の計測データを履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、図7を参照して上述した、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを作成及び更新すると共に、この具材状態マップについても履歴DB172に記憶する。
【0055】
[具材の具体的な把持方法]
本実施形態に係る把持システム1においては、具材及び使用される把持部材31aの種類に応じて、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)と、そのときに把持される具材の重量との関係が、予め把握されている。例えば、把持される具材の密度(単位深さあたりの重量を表すパラメータ)を予め計測しておき、具材の密度と把持部材31aを差し込む深さとの乗算値を要素とする関数によって、把持される重量を算出(推定)することができる。これにより、簡単な演算によって、把持される具材の重量を推定することができる。
【0056】
また、このように算出される重量をテーブル形式のデータとして保持しておくこともできる。さらに、1回の把持動作で平坦度合いが低下する具材の表面の範囲が把握できるため、収容空間10A内の具材の表面において、把持動作毎に把持位置をずらすピッチが設定されている。また、予め設定された把持部材31aを差し込む深さ及びピッチに基づいて、具材の表面のいずれの位置からどのように具材を把持するかの基本的な動作パターンが設定されている。
【0057】
なお、上述したように、収容空間10A内の具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合しない場合、レベリング動作が行われ、具材の表面が平坦化される。また、収容空間10A内の具材の深さが具材を把持するための条件に適合しない場合、スクレイピング動作が行われ、具材が寄せ集められる。また、具材の表面の平坦度合や具材の深さが条件に適合する場合であっても、さらに付着具材移動動作が行われ、内壁面の具材が移動させられると共に、具材の表面が平坦化されたり、具材の深さが均一化されたりする。
そして、具材の表面の平坦度合及び深さが具材を把持するための条件に適合している場合、基本的な動作パターンに従って、以下のように把持動作が行われる。
【0058】
図14は、ハンド31による把持動作の一例を示す模式図である。
図14に示すように、ハンド31が具材を把持する場合、(1)具材にアプローチする、(2)具材の表面を検出する、(3)把持部材31aを具材に差し込む、(4)把持部材31aを閉じる、(5)把持した具材の重量(物理量)を計測する、という手順で具材が把持される。把持した重量が規定量に適合する場合、弁当の容器に具材が移送されてリリースされる。なお、把持した重量が規定量に適合するとは、例えば、目標とする重量に対して、把持した具材の重量が所定誤差以内(±15%以内等)にあることをいう。ただし、把持部材31aに具材が粘着してリリースされないケースを考慮し、把持した重量が規定量よりも多い場合の誤差を少ない場合の誤差よりも大きく設定することとしてもよい。一方、把持した重量が規定量に適合しない場合、さらに、(6)収容空間10Aにおける把持した位置に具材をリリースする(具材を戻す)、(7)把持した具材の重量が超過していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の上限を超えている場合)には、前回よりも把持部材31aを具材に差し込む深さを浅く修正して具材を把持する、(8)把持した具材の重量が不足していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の下限を下回っている場合)には、前回よりも把持部材31aを具材に差し込む深さを深く修正して具材を把持する、という手順で具材が再把持される。
【0059】
手順(2)で具材の表面を検出することは、力センサ30Bにより、多関節ロボット30のハンド31が具材に接触することで受ける反力を計測することで可能である。
また、手順(3)で具材に把持部材31aを差し込む場合、多関節ロボット30の制御パラメータ(関節の回転角度等)から差し込み量を算出したり、手順(2)で具材の表面を検出して差し込みを開始してからの経過時間から差し込み量を算出したりすることが可能である。
また、手順(6)において具材がリリースされる場合、具材の種類に応じて、単純に把持部材31aを開いてリリースしたり、把持部材31aを開いた後に、ハンド31を降下させて急激に停止させることにより、具材を振るい落としてリリースしたりすることができる。また、具材を振るい落とす動作を繰り返すこととしてもよい。
【0060】
また、手順(8)において、前回よりも把持部材31aを具材に深く差し込んだとしても、規定量の具材を把持できない場合(規定量を取るために必要な差し込み深さよりも、把持予定位置における具材の深さが浅い場合)等には、具材表面の複数箇所から具材を把持することにより、複数回で把持した合計の具材の量が規定量となるように制御することも可能である。この場合、例えば、具材の表面における複数箇所に把持部材31aを差し込む深さの合計(差し込み量の合計)が、一度で規定量の具材を把持する場合に把持部材31aを具材に差し込む深さと同一となるように制御することができる。また、例えば、2箇所目以降の把持を行う場合に、把持済みの具材を次の把持予定位置に一旦リリースし、リリースした具材が存在する具材の表面に対して、一度で規定量の具材を把持する場合に差し込む深さまで把持部材31aを具材に差し込み、規定量の具材を改めて一度で把持するように制御することも可能である。
【0061】
なお、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)と、そのときに把持される具材の重量との関係については、具材の密度から算出(推定)することの他、把持部材31aを差し込んだ深さのデータと、そのときに把持された具材の重量を計測したデータとを機械学習し、機械学習によって生成された機械学習モデルを用いて、把持される重量を推定することとしてもよい。また、この機械学習の過程において具材の密度を算出し、算出した密度を用いて、把持部材31aを具材に差し込んだ深さ(差し込み量)から、把持された具材の重量を算出してもよい。
【0062】
[動作]
次に、把持システム1の動作を説明する。
図15及び図16は、把持システム1が実行する具材取り分け処理の流れを示すフローチャートである。
具材取り分け処理が開始されると、図15のステップS1において、多関節ロボット制御部154は、具材を把持するためのデータ(動作パターンのデータ及びハンド31の差し込み量のデータ等)をパラメータ記憶部171から読み込むことで、具材を把持するための準備を行う。
【0063】
ステップS2において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、収容空間10Aへ、ハンド31を移送する。
【0064】
ステップS3において、具材状態判定部152は、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを、履歴DB172から読み込むことで、収容空間10Aにおける具材の状態を認識する。具材状態判定部152は、その後も、センサ情報取得部151が取得した、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態の認識を継続する。
【0065】
ステップS4において、具材状態判定部152は、具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に合致しているか否かの判定を行う。
具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合していない場合、ステップS4においてNOと判定されて、処理はステップS5に移行する。
具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合している場合、ステップS4においてYESと判定されて、処理はステップS6に移行する。
ステップS5において、多関節ロボット制御部154は、具材の表面を平坦化するためのレベリング動作を実行する。
【0066】
ステップS6において、具材状態判定部152は、収容空間10A内の具材の深さが具材を把持するための条件に適合しているか否かの判定を行う。
収容空間10A内の具材の深さが具材を把持するための条件に適合していない場合、ステップS6においてNOと判定されて、処理はステップS7に移行する。
収容空間10A内の具材の深さが具材を把持するための条件に適合している場合、ステップS6においてYESと判定されて、処理はステップS8に移行する。
ステップS7において、多関節ロボット制御部154は、具材を寄せ集めるスクレイピング動作を実行する。
【0067】
ステップS8において、具材状態判定部152は、動作パターンと、収容空間10A内の具材の状態に基づいて、把持予定位置を決定する。例えば、図7に矢印で示すように、収容空間10Aを形成する内壁面に沿って、時計回りあるいは反時計回りの順に把持動作が行われるという動作パターンであれば、前回把持を行った位置の次に把持を行うべき位置を把持予定位置として決定する。ただし、収容空間10A内の具材の状態によっては、例えば、スクレイピング動作を行って具材を寄せ集めた位置を把持予定位置として決定する。あるいは、収容空間10A内の具材の状態によっては、例えば、収容空間10Aの内壁面に沿っていない領域(ここでは、領域B2、領域B3、及び領域B4)を把持予定位置として決定する。
【0068】
ステップS9において、具材状態判定部152は、決定した把持予定位置が付着具材移動動作を行う条件に適合しているか否かの判定を行う。この場合、上述したように、把持予定位置が収容空間10Aの内壁面に沿っている領域であれば付着具材移動動作を行う条件に適合する一方で、把持予定位置が収容空間10Aの内壁面に沿っていない領域であれば付着具材移動動作を行う条件に適合しない。
決定した把持予定位置が付着具材移動動作を行う条件に適合していない場合、ステップS9においてNOと判定されて、処理はステップS11に移行する。
決定した把持予定位置が付着具材移動動作を行う条件に適合している場合、ステップS9においてYESと判定されて、処理はステップS10に移行する。
ステップS10において、多関節ロボット制御部154は、収容空間10Aの内壁面に付着した具材を把持予定位置に移動する付着具材移動動作を実行する。
【0069】
図16に遷移し、ステップS11において、具材状態判定部152は、一度の把持動作で規定量の具材を把持可能であるか否かの判定を行う。
一度の把持動作で規定量の具材を把持可能ではない場合、ステップS11においてNOと判定されて、処理はステップS12に移行する。
一度の把持動作で規定量の具材を把持可能である場合、ステップS11においてYESと判定されて、処理はステップS17に移行する。
【0070】
ステップS12において、多関節ロボット制御部154は、具材に対して設定された深さまで把持部材31aを差し込む。
ステップS13において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。
ステップS14において、多関節ロボット制御部154は、他の位置(具材が平坦な位置)へハンド31を移送する。
【0071】
ステップS15において、多関節ロボット制御部154は、具材に対して追加して把持する分に対応する深さまで把持部材31aを差し込む。
ステップS16において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。
ステップS16の後、処理はステップS19に移行する。
【0072】
ステップS17において、多関節ロボット制御部154は、具材に対して設定された深さまで把持部材31aを差し込む。
ステップS18において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。
【0073】
ステップS19において、具材量判定部153は、把持した具材の重量(物理量)を計測する。この計測は、少なくともステップS24まで継続して行われる。
ステップS20において、具材量判定部153は、規定量の具材が把持されているか否かの判定を行う。
規定量の具材が把持されていない場合、ステップS20においてNOと判定されて、処理はステップS21に移行する。
【0074】
規定量の具材が把持されている場合、ステップS20においてYESと判定されて、処理はステップS24に移行する。
ステップS21において、多関節ロボット制御部154は、直前に把持した位置に具材を戻す。
【0075】
ステップS22において、多関節ロボット制御部154は、修正された深さまで具材に対して把持部材31aを差し込む。
ステップS23において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。
ステップS23の後、処理はステップS20に移行する。
【0076】
ステップS24において、多関節ロボット制御部154は、把持した具材を弁当の容器の位置に移送し、容器内の所定の領域にリリースする。容器内の所定の領域に具材がリリースされると、具材量判定部153によって、取り分けられた具材の量が規定量に適合するか否かが判定される。この判定結果は、弁当の容器と対応付けられて、後段の処理に引き継がれる。
【0077】
ステップS25において、記録制御部156は、具材取り分け処理において取得された制御に関するパラメータ及び取り分けられた具材の重量の計測データ(履歴データ)を履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを更新し、この更新後の具材状態マップも履歴DB172に記憶する。
【0078】
ステップS26において、多関節ロボット制御部154は、具材取り分け処理を終了する条件に適合したか否かの判定を行う。具材取り分け処理を終了する条件としては、予定された数の弁当の容器に具材を盛り付けたこと、あるいは、具材取り分け処理を終了させる操作が行われたこと等を定義することができる。
具材取り分け処理を終了する条件に適合していない場合、ステップS26においてNOと判定されて、図15に遷移し、処理はステップS2に移行する。
具材取り分け処理を終了する条件に適合している場合、ステップS26においてYESと判定されて、具材取り分け処理は終了する。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る把持システム1は、付着具材移動動作により、他の物体に付着しており把持が困難な状態となった対象物を、把持が容易な把持予定位置に移動し、適切に把持を行うことが可能となる。
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行うことができる。
また、この付着具材移動動作は、把持予定位置に接近するという把持動作における一連の動作の過程にて行われ、把持に際して不要な経路を大きく移動するような必要がないので、把持動作を妨げることがない。さらに、この付着具材移動動作は、把持部材31aにより行うので、付着した対象物を移動させるための専用の部材や機構等を別途用意する必要もない。
【0080】
さらに、把持システム1によれば、把持部材31aを具材に差し込む深さを基に、把持される具材の重量(物理量)を算出(推定)することができる。
そのため、多関節ロボット30によって同様の把持動作を行うことで、ばらつきが抑制された正確な量の具材を取り分けることが可能となる。
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって具材を取り分ける作業をより適切に行うことができる。
【0081】
また、把持システム1によれば、把持対象となる具材の表面の平坦度合を認識し、具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合していない場合、具材の表面を平坦にするレベリング動作が実行される。
したがって、把持部材31aをより正確な差し込み量で具材に差し込むことができるため、具材をより適切に取り分けることができる。
【0082】
また、把持システム1によれば、収容空間10A内の具材の量が減少した場合等、具材の深さが具材を把持するための条件に適合しない場合、収容空間10A内の具材を寄せ集めるスクレイピング動作が実行される。
そのため、具材が少ない状態であっても、具材を把持するために必要な深さに調整することができ、具材を有効活用できると共に、具材を供給する頻度を低下させることができる。
したがって、ロボットによって具材を取り分ける作業をより効率的に実行することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態に係る把持システム1によれば、一度で規定量の具材を把持できない場合、複数回の把持動作によって規定量の具材が把持される。
したがって、収容空間10A内の具材の量が減少した場合や一度の把持で規定量の具材を把持し難い具材を取り分ける場合等において、より柔軟な動作によって、必要な重量の具材を把持することが可能となる。
【0084】
[変形例1]
上述の実施形態において、傾斜して延在する主板部を備えた形状の把持部材31a(図3参照)を用いる例について説明したが、これに限られない。
例えば、下述するような目的で、主板部の形状を変更するようにしてもよい。図17は、把持部材31aの変形例である把持部材31bの形状例を示す模式図である。図17に示すように、把持部材31bは、把持部材31aと同様に、天板部と、主板部と、第1側板部と、第2側板部と、により構成されている。天板部は、長方形状の平面を有している。また、主板部は、天板部の有する平面を水平とした場合に、この平面の長手方向の一端から鉛直化下法に向かって延在すると共に、その下部(すなわち、一対の把持部材31bの開閉方向における底部を形成する部分)の形状は、下部に突出して湾曲する形状である。
【0085】
図18は、把持部材31a及び把持部材31bと、把持動作時の収容空間10A及び具材との関係を示す図である。図18に示すように、収容空間10Aの内壁面に沿った領域において把持動作を行った場合、把持部材31a及び把持部材31bの形状に応じて、内壁面との隙間が生まれ、この隙間において具材が取り残される状態となる。この場合に、把持部材31bは、把持部材31aと比較して、主板部において鉛直下方に延在している距離が長いため、この隙間が小さくなる。したがって、把持部材31bのような形状とすることで、具材の取り残しを減少させることができる。
【0086】
図19は、把持部材31a及び把持部材31bと、把持動作を繰り返した場合の、収容空間10A及び具材の表面の平坦度合との関係を示す図である。図19に示すように、隣接した領域で、順次把持動作を繰り返した場合、把持部材31aでは、把持動作後の具材の表面が、把持部材31a底部の直線的に突出した形状に応じて荒れてしまい平坦度合が下がってしまう。一方で、把持部材31bでは、把持動作後の具材の表面が把持部材31b底部の湾曲しながら突出した形状に応じて、比較的荒れることなく、平坦度合が下がりにくい。このため、再度同じ領域において把持動作を行う際に、レベリング動作等を不要とすることが可能となる。
【0087】
このように、図17に示した把持部材31bの形状とすることで、図18及び図19を参照して説明したような効果を得ることができる。一方で、把持部材31a底部の直線的に突出した形状は、把持部材31bの形状と比較して、具材に差し込みやすいという効果があるので、具材の性質等を考慮して、適宜任意の形状を選択するようにすればよい。
【0088】
[変形例2]
上述の実施形態において、具材状態判定部152が具材の表面の状態を認識し、具材の表面の平坦度合が具材を把持するための条件に適合していない場合にレベリング動作が行われるものとしたが、これに限られない。
例えば、把持動作毎に具材の表面における把持位置をずらすピッチが設定されていることから、収容空間10A内の具材の表面全体から具材を把持した後(すなわち、所定回数の把持動作が行われる毎)に、レベリング動作を行うこととしてもよい。
【0089】
この場合、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータ等によって具材の表面の状態を検出することなく、具材の表面を一定の平坦度合を有する状態に調整することができる。
なお、上述の実施形態におけるレベリング動作に対し、所定回数の把持動作が行われる毎のレベリング動作を併せて実行することとしてもよい。
【0090】
[変形例3]
上述の実施形態において、具材状態判定部152が具材の深さを認識し、具材の深さが具材を把持するための条件に適合していない場合にスクレイピング動作が行われるものとしたが、これに限られない。
例えば、把持動作毎に具材の表面から取り出される具材の量(把持部材31aが差し込まれる深さ)が設定されていることから、収容空間10A内の具材の表面全体から具材を把持した後(すなわち、所定回数の把持動作が行われる毎)に、スクレイピング動作を行うこととしてもよい。
【0091】
この場合、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータ等によって具材の深さを検出することなく、具材が一定の深さを有する状態に調整することができる。
なお、上述の実施形態におけるスクレイピング動作に対し、所定回数の把持動作が行われる毎のスクレイピング動作を併せて実行することとしてもよい。
【0092】
[変形例4]
上述の実施形態において、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータに基づいて、具材の状態を判定するものとしたが、これに限られない。
【0093】
カメラの設置コスト等が問題とならない場合には、カメラ(すなわち、撮像装置)によって撮影を行うことにより、具材の状態を判定するようにしてもよい。この場合、把持システム1において、多関節ロボット30のハンド31付近を撮影する撮像装置を設ける。そして、この撮像装置は、具材収容部10から具材を取り出す工程及び取り出した具材を弁当の容器に盛り付ける工程において、ハンド31付近の画像を含む撮影対象箇所の画像を逐次撮影する。このとき撮影された画像のデータは、制御装置40に出力される。なお、撮像装置に代えて、又は、撮像装置に加えて、多関節ロボット30の稼動範囲を撮影可能な撮像装置を把持システム1の所定箇所に備えておき、この撮像装置によって、ハンド31付近を含む撮影対象箇所の画像を撮影することとしてもよい。また、撮像装置等、把持システム1に設置される撮像装置をステレオカメラ等の立体形状を取得可能なものとしてもよい。ただし、2次元画像を撮影する撮像装置の撮像位置を変化させて取得した2つの2次元画像を基に、被写体の3次元形状を算出することも可能である。
【0094】
そして、制御装置40は、撮像装置を制御し、多関節ロボット30のハンド31付近の画像、具材収容部10の具材の画像あるいは弁当の容器の画像等を所定時間間隔で撮影させる。
また、具材状態判定部152は、撮像装置によって撮影された具材の画像に基づいて、具材の状態を判定する。例えば、具材状態判定部152は、撮像装置によって撮影された具材の画像から、収容空間10A内の具材の深さ(収容空間10A内の具材表面から収容空間10A底面までの深さ)、表面の平坦度合(表面がどの程度荒れているか)を認識する。この場合に、具材状態判定部152は、撮像装置によって撮影された具材の画像に加えて、さらに力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータにも基づいて、具材の状態を判定するようにしてもよい。
【0095】
また、例えば、撮像装置として、被写体までの距離(深度)を測定する機能を備えたDepthカメラを用いることも可能である。
この場合、被写体を撮影することで、カラー画像と共に、各部の正確な深度情報を容易に取得することができる。
そのため、各部の深度情報によって、具材表面や収容空間10A等の立体的な形状を把握することが可能となる。
したがって、具材表面の平坦度合を判定し、レベリング動作の要否を決定したり、具材の深さを判定し、スクレイピング動作の要否を決定したりすることが可能となる。
【0096】
[変形例5]
上述の実施形態において、多関節ロボット30が把持した具材の重量あるいは弁当の容器に取り分けられた具材の重量を重量センサ30A,21によって計測するものとしたが、これに限られない。
例えば、撮像装置によって撮像された具材の画像から、具材の体積を推定し、密度と推定された体積を乗算すること等により、具材の重量を算出することも可能である。
この場合、重量センサ30A,21を用いることなく、具材の重量を算出する手段を実装することができる。
【0097】
[変形例6]
上述の実施形態において、レベリング動作を実行する場合、図12に示すように、収容空間10Aの底面と把持部材31aの先端とが平行な状態を維持して、把持部材31aを収容空間10Aの底面から同一の高さで移動させるものとして説明したが、これに限られない。
すなわち、レベリング動作を実行する場合、具材表面を平坦化可能な各種形態の動作を実行することができる。
図20は、レベリング動作の一例を示す模式図である。
図20に示すように、レベリング動作を実行する場合、具材の表面に把持部材31aの先端が接触する状態(図20(a)参照)で、把持部材31aを開閉させる動作(図20(b)参照)を実行し、把持部材31aが開閉動作する範囲の具材表面を平坦化(図20(c)参照)することが可能である。
この場合、一対の把持部材31aの中央に位置する具材の表面が平坦化されるため、次に具材を把持する予定の位置を確実に平坦化することができる。また、ハンド31自体を搬送する動作が必要ないため、レベリング動作に要する時間を短縮することができる。
【0098】
[変形例7]
上述の実施形態において、スクレイピング動作を実行する場合、図13に示すように、具材に把持部材31aの外面を押し当てて移動させることによって、具材を寄せ集める例や、具材を把持部材31aで把持し、他の部分の具材の上に積み上げることで寄せ集める例について説明したが、これに限られない。
すなわち、スクレイピング動作を実行する場合、具材を寄せ集めることが可能な各種形態の動作を実行することができる。
例えば、一対の把持部材31aの少なくとも一方の形状を、具材を寄せ集めるために好適な形状(一例として、平板状等)とすることも可能である。この場合、スクレイピング動作を実行する際には、この把持部材31aをスクレイピング用のブレードとして機能させ、効率的に具材を寄せ集めることができる。
【0099】
[変形例8]
上述の実施形態において、多関節ロボット30のハンド31が、把持部材31aを具材の物理量が所定量になると推定される深さまで具材収容部10の具材に差し込むことにより、目的とする量の具材を把持する例について説明したが、これに限られない。
すなわち、把持部材31aの開き具合を調整して具材に差し込むことで、把持部材31aが把持する具材の量を調整することも可能である。例えば、把持した具材の重量が超過していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の上限を超えている場合)には、把持部材31aを具材に差し込む際の把持部材31aの開き具合を前回よりも狭く修正して具材を把持する、把持した具材の重量が不足していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の下限を下回っている場合)には、把持部材31aを具材に差し込む際の把持部材31aの開き具合を前回よりも広く修正して具材を把持する、といったことが可能である。
これにより、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)を調整できない場合であっても、把持する具材の量を調整することが可能となる。
【0100】
[変形例9]
上述の実施形態において、具材を把持のし易さを反映させて、把持部材31aで具材を把持する際の動作を調整することとしてもよい。
例えば、把持部材31aで具材を把持する際に、具材の一部が把持部材31aから漏れて(逃げて)把持位置の周囲に移動するという現象が起こり得る。
発明者らの検証により、把持部材31aが具材を把持する位置(すなわち、収容空間10Aの内壁面や底面からの距離等)によって、具材の逃げ易さに相違が生じることが判明した。
特に壁際では、把持部材31aの向きが具材の逃げ易さに影響することが判明した。具体的には、把持部材31aから具材が漏れ易い方向に壁が存在する場合、具材は逃げ場所が無いため、逃げ易さが低下(すなわち、把持のし易さが向上)した。
このことを踏まえ、把持位置(すなわち、収容空間10Aの内壁面や底面からの距離)と把持部材31aの向きという2つ要素と、具材の逃げ易さ(又は取り込み易さ)というパラメータの関係性を機械学習によって取得し、その結果に応じて、把持部材31aが具材を把持する把持位置における把持部材31aを差し込む深さ(差し込み量)を調整することができる。例えば、具材が逃げ易い把持位置では、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)をより大きく設定する等の調整を行うことができる。
これにより、多関節ロボット30によって具材を把持する際に、状況に応じて、より適切な把持動作を行うことが可能となる。
【0101】
以上のように、本実施形態における把持システム1は、多関節ロボット30と、制御装置40と、を備える。
多関節ロボット30は、把持対象となる対象物を把持部材31aにより把持する。
制御装置40は、多関節ロボット30の動作を制御する。
制御装置40による制御に従った多関節ロボット30は、把持部材31aを把持予定位置に接近させる経路において、対象物以外の他の物体に付着している対象物を、把持部材31aにより把持予定位置に移動させる移動動作を行う。
これにより、他の物体に付着しており把持が困難な状態となった対象物を、把持が容易な把持予定位置に移動し、適切に把持を行うことが可能となる。
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行うことができる。
また、この移動動作は、把持予定位置に接近するという把持動作における一連の動作の過程にて行われ、把持に際して不要な経路を大きく移動するような必要がないので、把持動作を妨げることがない。さらに、この移動動作は、把持部材31aにより行うので、付着した対象物を移動させるための専用の部材や機構等を別途用意する必要もない。
【0102】
他の物体は、対象物を収容する収容空間10Aを有する容器であり、
制御装置40による制御に従った多関節ロボット30は、移動動作において、収容空間10Aを形成する内壁面に付着している対象物を、把持部材31aにより収容空間10A内の把持予定位置まで移動させる。
これにより、所定の収容空間での把持において付着してしまう対象物を、収容空間内で把持することができる。すなわち、所定の収容空間の中だけで、移動動作を実現することができる。
【0103】
制御装置40による制御に従った多関節ロボット30は、把持予定位置が収容空間10Aの何れの位置であるかに基づいて、移動動作を行うか否かを選択する。
これにより、対象物が付着する他の物体が近傍に存在する把持予定位置では移動動作を行う一方で、他の物体が近傍に存在しない把持予定位置では移動動作を省略する等の処理が実現でき、より効率よく把持動作を行うことができる。
【0104】
制御装置40による制御に従った多関節ロボット30は、移動動作を行った後に、
把持予定位置において、把持部材31aを対象物の物理量が所定量になると推定される深さまで対象物の表面から差し込んで把持する。
これにより、付着している対象物を移動させた理想的な環境下において、多関節ロボット30によって同様の把持動作を行うことで、ばらつきが抑制された正確な量の対象物を把持することができる。
【0105】
把持部材31aは、複数の外面を形成しており、
制御装置40による制御に従った多関節ロボット30は、複数の外面の内の所定の外面を他の物体と対向させてから、移動動作を行う。
これにより、移動動作により適した外面を用いて、移動動作を行うことができる。
【0106】
所定の外面は、他の物体と対向させた場合に、複数の外面の内の他の外面を他の物体と対向させた場合よりも、把持部材31aを支持するハンド31が他の物体から遠方となるよう配置されている外面である。
これにより、ハンド31と、他の物体との距離を保つことができ、ハンド31に対象物が付着するような事態を防止することができる。
【0107】
把持部材31aは、一対の把持部材を開閉させて対象物を把持する機構を有する把持部材31aであり、
一対の把持部材の開閉方向における底部の形状は、下部に突出して湾曲する形状である。
これにより、底部近傍の対象物の取り残しを減少させたり、対象物の表面を平坦にしたりすることができる。
【0108】
把持部材31aは、一対の把持部材を開閉させて対象物を把持する機構を有する把持部材31aであり、
制御装置40による制御に従った多関節ロボット30は、
一対の把持部材を閉じた状態で、移動動作を行い、
その後一対の把持部材を開いた状態に切り替えて、対象物に接触し、
その後一対の把持部材を閉じた状態に切り替えて、対象物を把持する、
という開閉動作を行う。
これにより、一対の把持部材を閉じたことにより形成される移動動作に適した形状の外面により、移動動作を行うことができる。
【0109】
なお、上述の実施形態及び変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態及び変形例において、総菜を取り分ける把持システムに本発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、種々の対象物を把持するシステムに適用することができる。例えば、練ったモルタル、コンクリート、漆喰、粘土等、粘性あるいは粘着性が高い材料を把持するシステムに本発明を適用することができる。本発明は、作業温度又は室温において中粘度以上(5000mPa・s)以上の粘度を有する対象物を把持する際に好適である。
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図6の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が把持システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図6の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0110】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0111】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0112】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0113】
上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることのできる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 把持システム、2 ベルトコンベア、10 具材収容部、10A 収容空間、20 容器供給部、21,30A 重量センサ、30 多関節ロボット、31 ハンド、31a 把持部材、32 ロボットアーム、40 制御装置、50 遮蔽部、151 センサ情報取得部、152 具材状態判定部、153 具材量判定部、154 多関節ロボット制御部、155 容器供給制御部、156 記録制御部、171 パラメータ記憶部、172 履歴データベース(履歴DB)、711 CPU、712 ROM、713 RAM、714 バス、715 入力部、716 出力部、717 記憶部、718 通信部、719 ドライブ、731 リムーバブルメディア
【要約】
【課題】ロボットによって対象物を把持する作業をより適切に行う。
【解決手段】把持システム1は、多関節ロボット30と、制御装置40と、を備える。多関節ロボット30は、把持対象となる対象物を把持部材31aにより把持する。制御装置40は、多関節ロボット30の動作を制御する。制御装置40による制御に従った多関節ロボット30は、把持部材31aを把持予定位置に接近させる経路において、対象物以外の他の物体に付着している対象物を、把持部材31aにより把持予定位置に移動させる移動動作を行う。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20