(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】液状炭化水素の合成方法及び合成装置
(51)【国際特許分類】
C10G 2/00 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
C10G2/00
(21)【出願番号】P 2023150878
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2023-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518297260
【氏名又は名称】株式会社アイティー技研
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】今中 忠行
(72)【発明者】
【氏名】竹本 正
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-29483(JP,A)
【文献】特開2018-16614(JP,A)
【文献】特開2000-344689(JP,A)
【文献】特開2000-335901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 2/00
C10L 1/32
C07C 1/02
C07C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素及び酸素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、当該水よりも上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面に対し、調整自在の濃度による二酸化炭素を含有する空気と接触させることを特徴とする液状炭化水素の合成方法。
【請求項2】
混合状態にある前記液状炭化水素と前記水とが反応槽に流入していることを特徴とする請求項1記載の液状炭化水素の合成方法。
【請求項3】
二酸化炭素の濃度が9000ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の液状炭化水素の合成方法。
【請求項4】
二酸化炭素の濃度が450ppm~5000ppmであることを特徴とする請求項3記載の液状炭化水素の合成方法。
【請求項5】
溶解している酸素に対し、紫外線の照射のみによって少なくとも一部を活性化していることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の液状炭化水素の合成方法。
【請求項6】
上側界面における湿度を50%以下とすることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の液状炭化水素の合成方法。
【請求項7】
液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する装置であって、当該反応槽内における光触媒手段、及び当該反応槽の上側に二酸化炭素供給装置並びに当該二酸化炭素の噴出口における噴出量調整器具を備えていることを特徴とする液状炭化水素の合成装置。
【請求項8】
前記液状炭化水素と前記水とがピストンポンプ又はプランジャーポンプによって反応槽に流入していることを特徴とする請求項7記載の液状炭化水素の合成装置。
【請求項9】
反応槽内に、溶解している酸素の少なくとも一部を活性化するための紫外線照射装置を備えていることを特徴とする請求項7、8の何れか一項に記載の液状炭化水素の合成装置。
【請求項10】
反応槽における界面の水平方向の面積が当該水平方向と直交する上下方向の断面積に比し、2倍以上であることを特徴とする請求項7、8の何れか一項に記載の液状炭化水素の合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中において光触媒を介して二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって液状炭化水素を合成する方法及び装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
水中において二酸化炭素を還元させて液状炭化水素を合成することは、既に従来技術によって提唱されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、光電気化学セルにおいて、二酸化炭素を含む水中に酸素を供給し、二酸化炭素を還元することによって、液状炭化水素を生成する方法が提唱されている(page 81, lines 4- 21)。
【0004】
即ち、特許文献1における光触媒は、光電気化学セルを前提としており、陰極において液状炭化水素等による燃料を生成していることを前提としている(Claims 2, 77, 79)。
【0005】
従って、特許文献1においては、純然たる光触媒による二酸化炭素及び水の還元が実現している訳ではない。
現に、特許文献1においては、水に対する紫外線の照射による酸素の活性化は実現されていない(この点において、特許文献2の場合と明らかに相違している。)。
【0006】
本願の発明者らは、特許文献2に示すように、二酸化炭素が溶解している水中に酸素を供給し、かつ酸素のナノバブルを発生させ、紫外線の照射によってナノバブルから生成された活性酸素の存在下において、光触媒を介して二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元することを前提とする液状炭化水素の製造方法及び製造装置を提唱している。
【0007】
しかしながら、特許文献2の場合には、酸素のナノバブルの生成、及び紫外線の照射による活性酸素の生成を必要不可欠としている点において、その構成は、必ずしもシンプルではない。
【0008】
特許文献1及び同2において、光触媒を介して液状炭化水素を生成した場合には、液状炭化水素の層が水よりも上側領域にて生成されている。
【0009】
このような場合、二酸化炭素を含有する上側の空気との接触状態が実現するが、その場合には、空気が含有する炭酸ガスの濃度によって、水中の二酸化炭素における還元効率が左右される。
【0010】
然るに、特許文献1、2のような従来技術においては、液状炭化水素が存在する上側界面と接触する空気における炭酸ガスの濃度の調整によって、効率的に液状炭化水素を生成するという基本的発想は全く提唱されていない。
本願の発明者らは、従来技術による炭化水素の合成方法及び合成装置を改良構成として、特願2023-132405出願(以下「先願発明」と称する。)において、下記(1)の炭化水素の合成方法及び下記(2)の炭化水素の合成装置の構成を提唱している。
(1)二酸化炭素及び酸素が溶解している水中における光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応による炭化水素の合成方法であって、当該水よりも上側領域にて生成されている炭化水素の層における上側界面に対し、調整自在の濃度による二酸化炭素を含有する空気と接触させることを特徴とする炭化水素の合成方法。
(2)水中にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した一酸化炭素と水素との化学反応によって、炭化水素を合成する炭化水素の合成装置であって、二酸化炭素及び酸素が溶解している水を収容するための反応槽、当該反応槽内における光触媒手段、及び当該反応槽の上側に二酸化炭素供給装置並びに当該二酸化炭素の噴出口における噴出量調整器具を備えていることを特徴とする炭化水素の合成装置。
しかしながら、先願発明においては、極めて効率的に液状炭化水素を形成し得る合成方法及び合成装置が特定されている訳ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2010/042196 A1
【文献】特許第6440742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、酸素及び二酸化炭素が溶解している水に対する光触媒を介して液状炭化水素を極めて効率的に生成する方法及び装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)二酸化炭素及び酸素が溶解しており、かつ液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する方法であって、当該水よりも上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面に対し、調整自在の濃度による二酸化炭素を含有する空気と接触させることを特徴とする液状炭化水素の合成方法、
(2)液状炭化水素と混合状態にある水を収容している反応槽内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水を一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素を更に合成する装置であって、当該反応槽内における光触媒手段、及び当該反応槽の上側に二酸化炭素供給装置並びに当該二酸化炭素の噴出口における噴出量調整器具を備えていることを特徴とする液状炭化水素の合成装置、
からなる。
【発明の効果】
【0014】
基本構成(1)の方法及び基本構成(2)の装置によって、反応槽において水よりも上側領域にて生成されている液状炭化水素の層における上側界面と接触する空気層における二酸化炭素の濃度を調整し、ひいては適切な濃度を選択することによって、極めて効率的な二酸化炭素の還元、更には液状炭化水素の生成を実現することができる。
【0015】
しかも、基本構成(1)の方法及び(2)の装置は、特許文献1における電極を採用する構成に比し極めてシンプルであって、しかも電圧の印加を要せずに、純然たる光触媒反応によって、燃料となる液状炭化水素を得ることができる。
【0016】
更には、特許文献2の構成に比し、超音波振動装置のような酸素のナノバブルを発生させる機構を不要としている点においてシンプルな構成を実現している。
【0017】
このように、基本構成(1)の方法及び基本構成(2)の装置に立脚している本願発明は、シンプルな構成でありながら、極めて効率的な液状炭化水素の生成を実現することができる。
因みに、特許文献2の構成のうちには、別途調整した液状炭化水素と酸素のナノバブルから形成される活性酸素の存在下において、二酸化炭素を還元させる構成も包摂されているが、このような混合状態を、例えば24時間設置した場合に、液状炭化水素が更に合成される割合は、通常10~15%である(段落[0029])のに対し、基本構成(1)において、液状炭化水素と接触している空気の二酸化炭素の濃度を450ppm~5000ppmの範囲内にて調整した場合には、後述するように、更に合成される液状炭化水素の割合を、20~30%とすることができる。
しかも、先願発明と対比した場合、液状炭化水素と光触媒によって活性化している水との混合状態によって、液状炭化水素の更なる合成の割合を増加し、かつ合成速度を向上することができる。
尚、基本構成(1)及び(2)は、液状炭化水素と混合状態を必須の要件としている点において、先願発明に対する選択発明に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】基本構成(1)の方法を示すブロック図である。
【
図2】基本構成(2)の装置の構成を示す模式図である。但し、下側の反応槽は、断面図によって示し、上側の二酸化炭素供給装置及び噴出量調整器具は、側面図によって示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
基本構成(1)は、
図1のブロック図に示すように、二酸化炭素及び酸素が溶解しており、かつ液状炭化水素HCと混合状態にある水Wを収容している反応槽1内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水Wを一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素HCを更に合成する方法であって、当該水Wよりも上側領域にて生成されている液状炭化水素HCの層における上側界面に対し、調整自在の濃度による二酸化炭素を含有する空気Aと接触させることを特徴とする液状炭化水素HCの合成方法である。
【0020】
基本構成(2)の装置は、
図2の模式図に示すように、液状炭化水素HCと混合状態にある水Wを収容している反応槽1内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水Wを一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素HCを更に合成する装置であって、当該反応槽1内における光触媒手段、及び当該反応槽1の上側に二酸化炭素供給装置2並びに当該二酸化炭素の噴出口における噴出量調整器具21を備えていることを特徴とする液状炭化水素HCの合成装置である。
【0021】
基本構成(1)、(2)のように、液状炭化水素HCが形成されている水Wの上側界面に接触する空気Aに含有されている二酸化炭素によって前記還元反応が促進され、しかも当該二酸化炭素の含有量によって前記還元反応の効率が左右される根拠については、以下のような技術的事項を推定することができる。
【0022】
水中に溶解している二酸化炭素については、水に対する光触媒によって、ラジカル水、即ち化学反応を起こし易い活性化した水の状態を形成した場合には、以下のような当該ラジカル化を原因とする還元反応が順次進行している。
CO2+H2O→CO+H2+O2 ・・・(1)
即ち、前記(1)式においては、順次左側から右側への還元反応を呈しているが、個別の反応に着目した場合、部分的には、一酸化炭素分子が酸化されて二酸化炭素分子に変化する逆反応も存在するが、全体としては、順次二酸化炭素分子が一酸化炭素分子に還元される反応が進行することに帰する。
【0023】
前記(1)式の反応式に引き続き、ラジカル水中において、当該ラジカル化を原因として、以下のような液状炭化水素HCを更に生成する反応式が進行する。
(2n+1)H2+nCO→CnH2n+2+nH2O ・・・(2)
従って、水Wの上側領域に生成されているCnH2n+2による液状炭化水素HCの層は、前記(2)の反応式に由来している。
尚、炭素数nは、予め配合され、かつラジカル水と混合状態にある液状炭化水素HCの炭素数と同一であることから、予め配合される液状炭化水素HCは、鋳形と称されている。
但し、どうして、更に合成される液状炭化水素HCの炭素数nが鋳形である液状炭化水素HCの炭素数と同一であるかの根拠については、完全に解明されている訳ではない。
【0024】
前記反応式(1)及び(2)の場合、液状炭化水素HCの層の上側の空気Aに含有されている二酸化炭素は、液状炭化水素HCと親和性を有するため、液状炭化水素HCの層を透過して下側領域の水Wに移行し、かつ溶解する。
【0025】
前記溶解によって、前記(1)の還元による反応式は、二酸化炭素の供給によって促進され、ひいては、(2)式の反応もまた促進されることに帰する。
但し、前記(1)式及び前記(2)式の反応が行われている水溶液における二酸化炭素の溶解の程度は不確定であるが故に、液状炭化水素HCの層における上側界面において接触すべき適切な二酸化炭素の濃度は確定している訳ではない。
【0026】
前記状況を反映して、基本構成(1)及び(2)においては、上側界面における空気Aが含有する二酸化炭素の濃度を調整自在としている。
【0027】
先願発明に対する選択発明に該当する基本構成(1)、(2)においては、予め配合された液状炭化水素HCとラジカル水とが混合状態にあることを必要不可欠の要件としているが、このような要件によって、前記(2)の反応式は、迅速に進行することに帰する。
基本構成(1)及び(2)の混合状態は、反応槽1内において、液状炭化水素HC及びラジカル水を撹拌することによって実現することができる。
但し、基本構成(1)において、混合状態にある前記液状炭化水素HC及び前記水Wとが反応槽1に流入していることを特徴とする実施形態の場合、基本構成(2)において、前記液状炭化水素HCと前記水Wとがピストンポンプ又はプランジャーポンプによって反応槽1に流入していることを特徴とする実施形態の場合には、何れも撹拌による反応槽1の機械振動を防止し、前記(1)及び(2)の各反応式の進行を円滑に促進することができる。
前記(1)、(2)の各反応式に着目する限り、前記界面の上側において調整自在の液状炭化水素HCの濃度については、高いほど前記(1)式及び前記(2)式の各反応が促進されるが如くである。
【0028】
ところが、発明者らの経験によれば、二酸化炭素の濃度が高いほど前記(1)、及び(2)式の反応が促進される訳ではなく、前記界面の上側における二酸化炭素が所定の濃度を超えた場合には、かえって液状炭化水素HCの生成が減少する場合があることが判明している。
【0029】
具体的には、二酸化炭素の濃度が9000ppmを超えた場合に、液状炭化水素HCの生成効率が減少する場合が多い。
【0030】
二酸化炭素の濃度が所定の数値を超えた場合に、液状炭化水素HCの生成効率が低下する正確な根拠については、現時点では明らかではない。
但し、前記(1)、(2)の反応式における光触媒の機能が、二酸化炭素において所定の濃度を超えた場合には、却って低下することを推定することができる。
【0031】
前記上側界面における二酸化炭素の適切の濃度は、水中に含有される二酸化炭素の含有量によって左右されるが、大抵の場合、450ppm~5000ppmの数値範囲によって適切な二酸化炭素の濃度を設定することができる。
このような数値範囲の選択の場合に、特許文献2の場合に比し、約2倍程度の液状炭化水素HCの更なる合成を実現していることについては、既に効果の項において説明した通りである。
【0032】
酸素のナノバブルを必要不可欠とする特許文献2の構成の場合には、反応槽1における温度としては、室温40℃が好ましく、特に30℃がより好ましいことが想定されていた(段落[0028])。
これに対し、基本構成(1)及び(2)の場合には、後述するように、酸素のナノバブルを生じさせておらず、その結果、水温については自然状態の場合、冷却する場合、加熱する場合の何れをも包摂しているが、水温は、液状炭化水素HCの生成効率にさしたる影響を与えない。
【0033】
その根拠は、前記(1)式の還元反応及び(2)式の液状炭化水素HCの合成反応によって作用する光触媒によって、水中にて局所的に熱振動よりも桁違いに大きな振動数による分子の振動が生じており、水温を左右する熱振動は、前記分子運動に殆ど影響を与えないことにあるものと解される。
【0034】
特許文献2の構成においては、既に説明したように、酸素のナノバブルを生じさせ、紫外線の照射によって、活性酸素を生成している。
【0035】
しかしながら、超音波によってナノバブルを発生させる場合には、必然的に前記(1)の反応式に関与している水Wに振動を加えることに帰し、平穏な状態による前記(1)式の平衡による還元反応の進行に支障が生ずることにならざるを得ない。
但し、活性酸素が前記(1)式の還元反応に有効であることに変わりはない。
【0036】
このような活性酸素の有効性を考慮し、基本構成(1)においては、溶解している酸素に対し紫外線の照射のみによって酸素の少なくとも一部を活性化している実施形態を採用することができ、基本構成(2)においては、反応槽1内に溶解している酸素の少なくとも一部を活性化するための紫外線照射装置を備えている実施形態を採用することができる。
因みに、紫外線の照射によって溶解している酸素の一部を活性化した場合には、活性化しない場合に比し、二酸化炭素の還元効率を大幅に増進することができる。
【0037】
その根拠については、溶解している酸素の活性化によって過酸化水素(H2O2)が形成され、その結果、以下のような化学式によって、効率的な二酸化炭素の還元を想定することができる。
CO2+H2O2→CO+H2+3O2/2 ・・・(3)
以下、実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0038】
実施例1は、基本構成(1)において、界面及びその上側近傍の湿度を50%以下とすることを特徴としている。
【0039】
前記上側界面における湿度が高い場合には、当該界面の近傍における空気Aに含まれる二酸化炭素が空中において水蒸気を形成している水滴と一体化し、かつ漂流することによって界面に落下しないという弊害が増強することにならざるを得ない。
【0040】
このような弊害を考慮し、実施例1においては、界面における湿度を50%以下に設定している。
【0041】
50%以下という湿度の上限値を設定することによって、二酸化炭素の前記漂流を減少することができる。
尚、このような湿度の調整を行うためには、当該界面の上側にて加熱乾燥、又は水平方向への風力を形成することによって、当該界面の下側の水Wからの水蒸気による湿度の向上を抑制する風力乾燥の何れかを採用すると良い。
【実施例2】
【0042】
実施例2は、基本構成(2)において、反応槽1における界面の水平方向の面積を当該水平方向と直交する上下方向の断面積に比し、2倍以上であることを特徴としている。
【0043】
このような特徴によって、基本構成(2)の装置においては、液状炭化水素HCが生成する界面の面積を相対的に広く設定することができ、ひいては、前記(1)式の還元、更には(2)式の液状炭化水素反応を効率的に推進することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
基本構成(1)の方法、基本構成(2)の装置に立脚している本発明においては、液状炭化水素が生成されている界面に、濃度が調整自在である二酸化炭素を含有する空気と接触させるというシンプルな構成によって液状炭化水素を効率的に生成することができるという多大なメリットを有しており、産業上の利用価値は絶大である。
【符号の説明】
【0045】
W 水
A 空気
HC 液状炭化水素(hydrocarbonの略)
1 反応槽
2 二酸化炭素供給装置
21 噴出量調整器具
【要約】
【課題】酸素及び二酸化炭素が溶解している水に対する光触媒を介して液状炭化水素を極めて効率的に生成する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】二酸化炭素及び酸素が溶解しており、かつ液状炭化水素HCと混合状態にある水を収容している反応槽1内にて光触媒を介して、二酸化炭素及び水Wを一酸化炭素及び水素に還元し、更に当該光触媒を介した当該一酸化炭素と当該水素との化学反応によって当該液状炭化水素HCを更に合成するという方法及び装置であって、当該水Wよりも上側領域にて生成されている液状炭化水素HCの層における上側界面に対し、調整自在の濃度による二酸化炭素を含有する空気Aと接触させることによって、前記課題を達成することを特徴とする液状炭化水素HCの合成方法及び合成装置。
【選択図】
図2