(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】車両用ステップ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B60R3/02
(21)【出願番号】P 2020039944
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】風間 真司
(72)【発明者】
【氏名】野村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 和弘
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-188197(JP,A)
【文献】特公平03-015576(JP,B2)
【文献】特開2018-168592(JP,A)
【文献】特開2015-230041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部の下方に支持される可動ステップと、
車幅方向の変位区間を有して車両前後方向に移動するスライドドアに支持された状態で前記可動ステップに係合することにより前記スライドドアの開閉動作に連動して前記可動ステップを車幅方向に移動させる連結部材と、
前記可動ステップに係合することにより該可動ステップを車幅方向内側の格納位置に保持する係合部材と、を備え、
前記係合部材は、
前記可動ステップを前記格納位置に保持するロック位置と、
前記可動ステップに干渉しないアンロック位置と、を有し、
前記可動ステップが前記格納位置に移動した状態で、前記アンロック位置から前記ロック位置に移動することにより、前記可動ステップに設けられたステップ側係合部に係合するとともに、
前記係合部材が前記ロック位置に移動した状態で前記可動ステップが前記格納位置に移動した場合には、前記可動ステップに押圧されて前記ロック位置から前記アンロック位置に移動するように構成され
ており、
前記係合部材は、支軸周りに回動するレバー部材であって、前記支軸を有したレバー本体と、前記レバー本体から突出して前記支軸周りの回動方向に延びる係合突部とを有し、
前記可動ステップが前記格納位置に移動した状態にある場合に前記回動することにより前記係合突部が前記ステップ側係合部に係脱するとともに、
前記係合部材が前記ロック位置に移動した状態で前記可動ステップが前記格納位置に移動した場合には、前記ステップ側係合部と前記係合突部とが係合することなく、該係合突部の先端部が前記可動ステップに押圧されるように構成される車両用ステップ装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用ステップ装置において、
前記係合部材に係合することにより該係合部材を前記ロック位置に保持する位置保持部材を備え、
前記係合部材は、該係合部材が前記可動ステップに係合する状態で該可動ステップが前記格納位置から車幅方向外側に移動した場合に、前記位置保持部材との係合力に抗して該位置保持部材から脱離することにより、前記ロック位置から前記アンロック位置に移動可能に構成されること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両用ステップ装置において、
前記係合部材は、支軸周りに回動するレバー部材であって、前記支軸の径方向に突出する係合爪を有し、
前記位置保持部材は、前記係合爪に係合することにより前記係合部材が前記ロック位置から前記アンロック位置に移動するアンロック方向の回動を規制すること、
を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の車両用ステップ装置において、
前記位置保持部材は、該位置保持部材に対して前記係合爪が前記アンロック方向とは逆向きのロック方向から係合することにより該ロック方向の回動を規制して前記係合部材を前記アンロック位置に保持すること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項5】
請求項
3又は請求項
4に記載の車両用ステップ装置において、
前記係合爪に対する前記位置保持部材の係合面は、前記係合部材の支軸側に膨出する湾曲面としての構成を有すること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項6】
請求項
3~請求項
5の何れか一項に記載の車両用ステップ装置において、
前記係合部材は、前記支軸を有したレバー本体と、前記レバー本体から突出して前記支軸周りの回動方向に延びる係合突部と、を有し、
前記可動ステップが前記格納位置に移動した状態にある場合に前記回動することにより前記係合突部が前記ステップ側係合部に係脱するとともに、
前記ステップ側係合部は、前記支軸周りに前記係合部材が回動することにより前記係合突部が挿脱される係合凹部であって、
前記係合突部は、該係合突部が前記係合凹部内に挿入された状態で前記可動ステップが車幅方向外側に移動することにより、該可動ステップの押圧力に基づいて、前記係合凹部から抜脱されるように構成されること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の車両用ステップ装置において、
前記係合突部の先端部には、湾曲面を有した面取り部が設けられること、
を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項8】
請求項1~請求項
7の何れか一項に記載の車両用ステップ装置において、
前記係合部材の移動範囲を制限するストッパ部を備えること、
を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項9】
請求項1~請求項
8の何れか一項に記載の車両用ステップ装置において、
前記格納位置に移動した前記可動ステップの下方を覆うカバー部材を備えるとともに、
前記係合部材は、前記カバー部材に設けられること、
を特徴とする車両用ステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドドアの開閉動作に連動してドア開口部の下方に設けられた可動ステップを車幅方向に移動させる車両用のステップ装置がある。例えば、特許文献1に記載のステップ装置において、可動ステップは、その下面に設けられたガイド部材、及びこのガイド部材に案内される摺動部材を有する連結部材を介してスライドドアと連結されている。そして、これにより、車幅方向外側に変位しつつ車両後方に開動作するスライドドアに連動して、その可動ステップを車幅方向外側の展開位置に移動させるとともに、車幅方向内側に変位しつつ車両前方に閉動作するスライドドアに連動して、その可動ステップを車幅方向内側の格納位置に移動させる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、上記のような構成を有するステップ装置において、可動ステップは、例えば、その連結部材の故障、或いはメンテナンス時の整備性等を考慮して、車幅方向内側の格納位置に保持可能であることが望ましい。しかしながら、例えば、誤操作等により、保持機構が可動ステップを格納位置に保持する状態に移行した場合には、この保持機構が、そのスライドドアの開閉動作に連動した可動ステップの移動を妨げるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、可動ステップの円滑な動作を確保することが可能な保持機構を備えた車両用ステップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、ドア開口部の下方に支持される可動ステップと、車幅方向の変位区間を有して車両前後方向に移動するスライドドアに支持された状態で前記可動ステップに係合することにより前記スライドドアの開閉動作に連動して前記可動ステップを車幅方向に移動させる連結部材と、前記可動ステップに係合することにより該可動ステップを車幅方向内側の格納位置に保持する係合部材と、を備え、前記係合部材は、前記可動ステップを前記格納位置に保持するロック位置と、前記可動ステップに干渉しないアンロック位置と、を有し、前記可動ステップが前記格納位置に移動した状態で、前記アンロック位置から前記ロック位置に移動することにより、前記可動ステップに設けられたステップ側係合部に係合するとともに、前記係合部材が前記ロック位置に移動した状態で前記可動ステップが前記格納位置に移動した場合には、前記可動ステップに押圧されて前記ロック位置から前記アンロック位置に移動するように構成される。
【0007】
上記構成によれば、例えば、誤操作等により、その係合部材がロック位置に移動した場合においても、この係合部材が、そのスライドドアの閉動作に連動した可動ステップの移動を妨げないようにすることができる。そして、これにより、その可動ステップの円滑な動作を確保することが可能な保持機構を形成することができる。
【0008】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記係合部材は、支軸周りに回動するレバー部材であって、前記支軸を有したレバー本体と、前記レバー本体から突出して前記支軸周りの回動方向に延びる係合突部とを有し、前記可動ステップが前記格納位置に移動した状態にある場合に前記回動することにより前記係合突部が前記ステップ側係合部に係脱するとともに、前記係合部材が前記ロック位置に移動した状態で前記可動ステップが前記格納位置に移動した場合には、前記ステップ側係合部と前記係合突部とが係合することなく、該係合突部の先端部が前記可動ステップに押圧されるように構成されることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、スライドドアの閉動作に連動して車幅方向内側に移動する可動ステップが係合部材を押圧する力を、効率よく、その支軸周りに係合部材を回動させる力に変換することができる。そして、これにより、円滑に、その係合部材をロック位置からアンロック位置に移動させることができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、前記係合部材に係合することにより該係合部材を前記ロック位置に保持する位置保持部材を備え、前記係合部材は、該係合部材が前記可動ステップに係合する状態で該可動ステップが前記格納位置から車幅方向外側に移動した場合に、前記位置保持部材との係合力に抗して該位置保持部材から脱離することにより、前記ロック位置から前記アンロック位置に移動可能に構成されることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、例えば、誤操作等により、係合部材が可動ステップに係合する状態で、そのスライドドアの開動作に連動して可動ステップが移動した場合においても、この可動ステップの移動を係合部材が妨げないようにすることができる。そして、これにより、その可動ステップの円滑な動作を確保することが可能な保持機構を形成することができる。
【0012】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記係合部材は、支軸周りに回動するレバー部材であって、前記支軸の径方向に突出する係合爪を有し、前記位置保持部材は、前記係合爪に係合することにより前記係合部材が前記ロック位置から前記アンロック位置に移動するアンロック方向の回動を規制することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、その支軸周りの回動によって、円滑且つ安定的に、係合部材と位置保持部材とを係脱させることができる。
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記位置保持部材は、該位置保持部材に対して前記係合爪が前記アンロック方向とは逆向きのロック方向から係合することにより該ロック方向の回動を規制して前記係合部材を前記アンロック位置に保持することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、簡素な構成にて、ロック位置からアンロック位置に移動した係合部材を、そのアンロック位置に保持することができる。
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記係合爪に対する前記位置保持部材の係合面は、前記係合部材の支軸側に膨出する湾曲面としての構成を有することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、より円滑且つ安定的に、その係合部材と位置保持部材とを係脱させることができる。
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、前記係合部材は、前記支軸を有したレバー本体と、前記レバー本体から突出して前記支軸周りの回動方向に延びる係合突部と、を有し、前記可動ステップが前記格納位置に移動した状態にある場合に前記回動することにより前記係合突部が前記ステップ側係合部に係脱するとともに、前記ステップ側係合部は、前記支軸周りに前記係合部材が回動することにより前記係合突部が挿脱される係合凹部であって、前記係合突部は、該係合突部が前記係合凹部内に挿入された状態で前記可動ステップが車幅方向外側に移動することにより、該可動ステップの押圧力に基づいて、前記係合凹部から抜脱されるように構成されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、スライドドアの開動作に連動して車幅方向外側に移動する可動ステップが係合部材を押圧する力を、効率よく、その支軸周りに係合部材を回動させる力に変換することができる。そして、これにより、円滑に、その係合部材をロック位置からアンロック位置に移動させることができる。
【0017】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記係合突部の先端部には、湾曲面を有した面取り部が設けられることが好ましい。
上記構成によれば、その支軸周りの回動によって、円滑に、係合部材の係合突部を可動ステップ側の係合凹部に挿脱させることができる。
【0018】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、前記係合部材の移動範囲を制限するストッパ部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、ロック位置又はアンロック位置に保持された係合部材のガタつきを抑えることができる。
【0019】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、前記格納位置に移動した前記可動ステップの下方を覆うカバー部材を備えるとともに、前記係合部材は、前記カバー部材に設けられることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的に、格納位置に移動した可動ステップの近傍に係合部材を配置することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、可動ステップの円滑な動作を確保することが可能な保持機構を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ドア開口部に設けられたスライドドア及びステップ装置を示す車両の斜視図。
【
図2】ドア開口部に設けられたスライドドア及びステップ装置を示す車両の側面図。
【
図3】(a)(b)は、車幅方向に変位しつつ車両前後方向に移動するスライドドアとその移動経路を示す平面図。
【
図8】可動ステップに設けられたガイドレールに係合する連結部材としてのガイドローラーユニットを示す断面図。
【
図10】(a)(b)は、ガイドローラーユニットの側面図。
【
図12】可動ステップが格納位置にある状態におけるステップ装置の断面図。
【
図14】支持アーム及び支持ブラケットの下方において可動ステップを覆うカバー部材の平面図。
【
図15】可動ステップの保持機構を構成する係合部材の平面図。
【
図16】可動ステップの保持機構を構成する係合部材の平面図。
【
図17】係合部材の係合突部及びステップ側係合部の拡大図。
【
図18】係合部材の係合突部及びステップ側係合部の拡大図。
【
図19】係合部材の係合爪及び位置保持部材を構成する突起部の拡大図。
【
図20】係合部材の係合爪及び位置保持部材を構成する突起部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、車両用ステップ装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向(
図1中、左右方向)に移動することにより車体2の側面に設けられたドア開口部3を開閉可能なスライドドア4を備えている。
【0024】
詳述すると、
図2に示すように、本実施形態の車両1において、車体2の側面には、車両前後方向に延びる複数のガイドレール10が設けられている。具体的には、本実施形態の車両1には、ドア開口部3の下縁部に配置されたロアレール11、ドア開口部3の後方に配置されたセンターレール12、及びドア開口部3の上縁部に配置されたアッパーレール13が設けられている。更に、これらの各ガイドレール10には、それぞれ、当該各ガイドレール10の延伸方向に沿って摺動可能なガイドローラーユニット20が連結されている。そして、本実施形態の車両1においては、これらの各ガイドローラーユニット20を介して車体2にスライドドア4を支持することにより、その車両前後方向に延びる各ガイドレール10に沿ったスライドドア4の開閉動作が可能となっている。
【0025】
また、
図3(a)(b)に示すように、本実施形態の各ガイドレール10は、それぞれ、その車両前方側の長手方向端部10f、即ちスライドドア4が全閉状態となる側の端部に、車両後方側から前方側に向かって車幅方向内側(
図3中、上側)に湾曲した湾曲形状部30を有している。尚、説明の便宜上、
図3(a)には、ロアレール11及びロアローラーユニット21を、
図3(b)には、センターレール12及びセンターローラーユニット22を図示し、アッパーレール13及びアッパーローラーユニット23については、その図示を省略する。そして、本実施形態のスライドドア4は、これらの各ガイドレール10に設けられた湾曲形状部30に案内される状態で、車幅方向の変位を伴いつつ、そのスライドドア4が車両前後方向に開閉動作する構成になっている。
【0026】
即ち、本実施形態のスライドドア4は、全閉位置Pcにある場合、その外表面4aが車体2の側面2aに対して略面一となるように構成されている。また、このような全閉位置Pcから開動作する場合、スライドドア4は、車幅方向外側に変位しつつ、車両後方側に移動する。つまり、このスライドドア4は、その移動経路Rの全閉位置Pc側に当該スライドドア4が車幅方向に変位する幅方向変位区間Rcを有している。尚、
図3中、一点鎖線は、開閉動作するスライドドア4、詳しくは、その前端部分の軌跡を示している。そして、本実施形態の車両1は、これにより、その開閉動作するスライドドア4が車体2に干渉しない構成になっている。
【0027】
尚、
図2に示すように、本実施形態の車両1には、モータ31mを駆動源として、そのスライドドア4を開閉動作させるパワースライドドア装置31が設けられている。そして、本実施形態の車両1は、これにより、乗員による手動操作に限らず、図示しないドアハンドルや車室内に設けられた操作スイッチ、或いは携帯機を操作することにより、そのスライドドア4を開閉動作させることが可能となっている。
【0028】
また、
図1及び
図2に示すように、本実施形態の車両1には、ドア開口部3の下方に踏み台となるステップ部材40を展開して、その車両1に乗降する乗員の利用に供するステップ装置41が設けられている。
【0029】
詳述すると、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)及び
図6に示すように、本実施形態のステップ装置41は、車幅方向に移動可能な状態でドア開口部3の下方に支持される可動ステップ42と、車体2に固定された状態で可動ステップ42とともにドア開口部3の下方に配置されるサブステップ43と、を備えている。尚、
図4及び
図5中においては、各図中、上下方向、
図6中においては、左右方向が、それぞれ、車幅方向となっている。本実施形態のステップ装置41において、サブステップ43は、可動ステップ42よりも上方の位置に設けられている。具体的には、本実施形態のサブステップ43は、車体2の側面2aに固定される基部45と、この基部45に対して回動可能に連結されたステップ部46と、を備えている。そして、本実施形態のサブステップ43は、これにより、その連結軸46x周りの回動により上下方向に変位するステップ部46が、このサブステップ43の下方に配置された可動ステップ42の上面42aに摺接する構成になっている。
【0030】
また、
図5~
図7に示すように、本実施形態のステップ装置41は、車体2に対して回動可能に連結されるとともに可動ステップ42に対して回動可能に連結される複数の支持アーム47を備えている。本実施形態のステップ装置41において、これらの各支持アーム47は、それぞれ、車体2の下面2bに固定される複数の支持ブラケット48を介して車体2に連結されている。更に、これらの各支持アーム47は、各支持ブラケット48が形成する第1回動連結点M1を支点に回動するとともに、可動ステップ42に対する第2回動連結点M2を支点に回動する。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、これら各支持アーム47に支持された可動ステップ42が、略水平な姿勢を維持したまま、そのサブステップ43の下方を車幅方向に移動する構成になっている。
【0031】
具体的には、本実施形態のステップ装置41は、可動ステップ42の支持アーム47として、車両前後方向に離間して配置される二本のメインアーム51,51と、これらの両メインアーム18間に配置されるサブアーム52と、を備えている。本実施形態のステップ装置41において、サブアーム52は、車体2に連結される基端側アーム53と可動ステップ42に連結される先端側アーム54とを回動可能に連結することにより形成されている。即ち、本実施形態のサブアーム52は、折曲可能な関節M3を有している。そして、本実施形態のステップ装置41は、支持ブラケット48として、その前方メインアーム51f及びサブアーム52を車体2に連結する前方ブラケット48fと、後方メインアーム51rを車体2に連結する後方ブラケット48rと、を備えている。
【0032】
また、
図4~
図6に示すように、本実施形態のステップ装置41において、可動ステップ42は、サブステップ43の下方を車幅方向外側に移動することにより、このサブステップ43よりも車幅外側方向に突出した展開位置P2に配置される。更に、本実施形態のサブステップ43は、可動ステップ42が展開位置P2にある場合においても、その上面42aに対してステップ部46が摺接する状態を維持する。そして、本実施形態のサブステップ43は、これにより、そのステップ部46の意匠面46sが、可動ステップ42のステップ面S1と一体のステップ面S2を形成する構成になっている。
【0033】
尚、
図4、
図6及び
図7に示すように、本実施形態の可動ステップ42は、略平板状の外形を有した可動ベース55と、この可動ベース55の上方を覆う樹脂カバー56と、を備えている。更に、サブステップ43の基部45及びステップ部46もまた、それぞれ、略平板状の外形を有したベース部材57に対し、その意匠面45s,46sを構成する樹脂カバー58を積層することにより形成されている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、その可動ステップ42の樹脂カバー56及びサブステップ43のステップ部46を覆う樹脂カバー58が、それぞれ、そのステップ面S1,S2を形成する構成となっている。
【0034】
また、
図4~
図8に示すように、本実施形態のステップ装置41は、車両前後方向に延在する可動ステップ42の長手方向に沿う状態で、その下面42bに設けられたガイドレール60を備えている。
【0035】
図7及び
図8に示すように、本実施形態の可動ステップ42において、このガイドレール60は、車幅方向に対向する一対の側壁部61,62を備えている。更に、本実施形態のガイドレール60は、車幅方向内側に位置する側壁部62の下端部を折り曲げるかたちで車幅方向外側の側壁部61に向かって延びる抜け止めフランジ63を備えている。そして、本実施形態のステップ装置41は、このガイドレール60の両側壁部61,62間に配置されるガイドローラー65を有してスライドドア4に支持される連結部材としてのガイドローラーユニット70を備えている。
【0036】
即ち、本実施形態のステップ装置41において、このガイドローラーユニット70は、スライドドア4の開閉動作に基づいて、そのスライドドア4と一体に移動する。また、これにより、そのガイドレール60内に配置されたガイドローラー65もまた、スライドドア4の動作方向に応じて車両前後方向に移動する。尚、本実施形態のガイドレール60は、側壁部62の下端に設けられた抜け止めフランジ63によって、その両側壁部61,62間に配置されたガイドローラー65の脱離を防止する。そして、本実施形態のガイドローラーユニット70は、このとき、そのガイドローラー65が、車幅方向外側に位置するガイドレール60の側壁部61、又は車幅方向内側に位置するガイドレール60の側壁部62に摺接して押圧することにより、このガイドレール60が設けられた可動ステップ42を車幅方向に移動させる構成になっている。
【0037】
具体的には、本実施形態のガイドローラーユニット70は、そのガイドローラー65が、車幅方向外側に位置するガイドレール60の側壁部61に摺接して、この側壁部61を押圧しつつガイドレール60内をスライドドア4の開動作方向である車両後方側に向かって移動することにより、その可動ステップ42を車幅方向外側に移動させる。また、そのガイドローラー65が、車幅方向内側に位置するガイドレール60の側壁部62に摺接して、この側壁部62を押圧しつつガイドレール60内をスライドドア4の閉動作方向である車両前方側に向かって移動することにより、その可動ステップ42を車幅方向内側に移動させる。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、そのスライドドア4の開動作に連動して、可動ステップ42を格納位置P1から展開位置P2に移動させるとともに、そのスライドドア4の閉動作に連動して、可動ステップ42を展開位置P2から格納位置P1に移動させる構成になっている(
図4及び
図5参照)。
【0038】
尚、
図4、
図5、及び
図7に示すように、本実施形態のガイドレール60は、スライドドア4の各ガイドレール10に設けられた上記湾曲形状部30と同様、車両前方側の長手方向端部60f、即ちスライドドア4が全閉状態となる側の端部に、車両後方側から前方側に向かって車幅方向内側に湾曲した湾曲形状部60cを備えている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、スライドドア4の開閉動作に基づいて、そのガイドレール60内をガイドローラー65が円滑に移動することで、可動ステップ42を穏やかに車幅方向移動させることが可能になっている。
【0039】
さらに詳述すると、
図9~
図11に示すように、本実施形態のガイドローラーユニット70は、上下方向に延在する状態でスライドドア4に固定される固定部材71と、この固定部材71の下端に対して回動可能に連結されたアーム部材72と、を備えている。本実施形態のガイドローラーユニット70において、アーム部材72は、その回動軸となる軸状部材73を介して固定部材71に連結されることにより、その先端側が車幅方向内側に延びている。更に、このアーム部材72の先端には、上下方向に延びる支軸65xが設けられている。そして、本実施形態のガイドローラーユニット70は、この支軸65xによって、そのガイドローラー65を回転自在に軸支する構成になっている。
【0040】
また、本実施形態のガイドローラーユニット70には、その軸状部材73に外挿された状態で固定部材71とアーム部材72との間に介在される捩りコイルバネ75が設けられている。そして、本実施形態のガイドローラーユニット70は、この付勢部材としての捩りコイルバネ75の弾性力に基づいて、その固定部材71がスライドドア4に固定された状態で、そのアーム部材72の先端に支持されたガイドローラー65を上方に持ち上げる方向の付勢力が、このアーム部材72に付与される構成になっている。
【0041】
即ち、本実施形態のガイドローラーユニット70は、可動ステップ42に設けられたガイドレール60に対する連結状態においては、捩りコイルバネ75の付勢力に基づきアーム部材72の先端側を上方に持ち上げるかたちで、そのガイドレール60内にガイドローラー65を支持する構成になっている(
図10(a)参照)。また、ガイドレール60からガイドローラー65が脱離した非連結状態においては、捩りコイルバネ75の付勢力に基づいて、そのガイドローラー65を支持する先端側を固定部材71の上端部分に近づける形で更にアーム部材72が回動する(
図10(b)参照)。そして、本実施形態のステップ装置41においては、これにより、そのガイドローラーユニット70をコンパクトに折り畳むことで、その非連結状態における作業性の向上を図るとともに、併せて、このガイドローラーユニット70が、そのスライドドア4を利用する乗員の邪魔にならない構成になっている。
【0042】
具体的には、
図7及び
図11に示すように、本実施形態のガイドレール60は、その側壁部62の下端に設けられた抜け止めフランジ63の一部が切り欠かれた切欠き部77を有している。具体的には、本実施形態のガイドレール60は、その湾曲形状部60cよりも車両後方側の位置に設けられた複数の切欠き部77を有している。そして、本実施形態のステップ装置41は、この切欠き部77を利用することにより、可動ステップ42の下面42b側に設けられたガイドレール60に対し、そのスライドドア4に支持されたガイドローラーユニット70のガイドローラー65を挿脱することが可能になっている。
【0043】
即ち、
図11に示すように、本実施形態のガイドレール60は、この切欠き部77が設けられた長手方向位置において、その側壁部62の下端に設けられた抜け止めフランジ63を越えるガイドローラー65の上下方向移動を許容する。更に、本実施形態のガイドローラーユニット70は、アーム部材72を下方に押し下げることにより、その捩りコイルバネ75の付勢力に抗してアーム部材72を回動させることができる。そして、本実施形態のガイドローラーユニット70は、この押し下げ力を開放することで、再び、その捩りコイルバネ75の付勢力に基づいてアーム部材72を回動させることができる。
【0044】
つまり、本実施形態のステップ装置41は、ガイドレール60に設けられた切欠き部77を利用することで、その捩りコイルバネ75の付勢力に基づくアーム部材72の回動により、このアーム部材72の先端に設けられたガイドローラー65を、その下方からガイドレール60内に挿入することができる。また、捩りコイルバネ75の付勢力に抗したアーム部材72の回動により、そのガイドレール60内に支持されたガイドローラー65を、このガイドレール60の下方に脱離させることができる。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、容易に、そのガイドローラーユニット70を支持するスライドドア4と、そのガイドレール60が設けられた可動ステップ42との連結、及びその解除を行うことが可能になっている。
【0045】
また、
図12~
図14に示すように、本実施形態のステップ装置41は、車体2の下面2bに固定されることにより上記各支持アーム47の下方を覆うカバー部材80を備えている。
【0046】
詳述すると、本実施形態のカバー部材80は、各支持アーム47の下方に配置される底壁部81と、この底壁部81の縁部に立設されることにより車体2の下面2bに向かって上方に延びる周壁部82と、を備えている。本実施形態のカバー部材80において、底壁部81は、可動ステップ42が格納位置P1にある場合に、その各支持アーム47の下方に覆う大きさに形成されている。更に、周壁部82は、その車両前方側、車幅方向内側、及び後方側に延在するかたちで、その底壁部81の縁部に立設されている。そして、本実施形態のカバー部材80は、これにより、車体2の下面2bよりも下方の位置に、その車幅方向外側に開口する収容空間83を形成する構成になっている。
【0047】
具体的には、本実施形態のカバー部材80は、各支持アーム47の支持ブラケット48とともに車体2の下面2bに共締めされる。また、本実施形態の車両1において、このカバー部材80は、上方に位置する車体2の下面2b及びサブステップ43のステップ部46との間に収容空間83を形成する。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、可動ステップ42が格納位置P1にある場合において、この可動ステップ42が略全体的に、各支持アーム47とともに、そのカバー部材80が形成する収容空間83内に収容される構成になっている。
【0048】
尚、本実施形態の車両1においては、可動ステップ42が格納位置P1にある場合、その車幅方向外側に臨む収容空間83の開口部83xが、スライドドア4の下端に設けられた意匠部材84(
図6参照)により遮蔽される。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、車両1の走行時、その車幅方向外側の開口部分を介した収容空間83内への異物の侵入を防ぐ構成になっている。
【0049】
(可動ステップの保持機構)
次に、本実施形態のステップ装置41に設けられた可動ステップ42の保持機構について説明する。
【0050】
図14~
図16に示すように、本実施形態のステップ装置41は、可動ステップ42に設けられたガイドレール60からガイドローラーユニット70が脱離した状態、即ちスライドドア4との連結が解除された状態において、この可動ステップ42を車幅方向内側の格納位置P1に保持することが可能な保持機構100を備えている。
【0051】
詳述すると、本実施形態のステップ装置41において、この保持機構100は、格納位置P1に移動した可動ステップ42の収容空間83を形成するカバー部材80に設けられている。具体的には、この保持機構100は、カバー部材80の前端部80f近傍に設けられている。また、本実施形態のステップ装置41において、この保持機構100は、そのカバー部材80の底壁部81に略直交する支軸110x周りに回動するレバー部材110としての構成を有した係合部材111を備えている。更に、この係合部材111は、可動ステップ42が格納位置P1に移動した状態で、支軸110x周りに回動することにより、その可動ステップ42に設けられたステップ側係合部120に対して係脱する。そして、本実施形態の保持機構100は、これにより、この係合部材111が、車幅方向に移動する可動ステップ42に干渉しないアンロック位置X0と、その可動ステップ42を格納位置P1に保持するロック位置X1と、を有する構成になっている。
【0052】
さらに詳述すると、本実施形態の係合部材111は、基端部131bに支軸110xを有して車幅方向に延在するレバー本体131と、このレバー本体131の先端部131aから突出して、その支軸110xの回動方向に延びる係合突部132と、を備えている。具体的には、本実施形態の保持機構100は、カバー部材80が形成する可動ステップ42の収容空間83において、その車幅方向内側に位置する周壁部82の近傍に、係合部材111の支軸110xを有している。そして、本実施形態の係合部材111は、これにより、車幅方向外側(各図中、下側)に向かって延びるレバー本体131の先端部131aから、車両後方側(各図中、右側)に向かって、その係合突部132が突出する構成となっている。
【0053】
また、
図17及び
図18に示すように、本実施形態のステップ装置41において、可動ステップ42の前端部42fには、車両前方側に開口する係合凹部135が設けられている。そして、本実施形態の保持機構100は、この係合凹部135をステップ側係合部120として、そのロック位置X1に移動した係合部材111が、可動ステップ42に係合する構成になっている。
【0054】
即ち、
図15及び
図16に示すように、本実施形態の係合部材111は、その支軸110x周りに、各図中、反時計回りに回動することにより、そのアンロック位置X0からロック位置X1に移動する。そして、各図中、時計回りに回動することにより、ロック位置X1からアンロック位置X0に移動する。
【0055】
また、
図15~
図18に示すように、本実施形態の係合部材111は、可動ステップ42が格納位置P1に移動した状態で支軸110x周りに回動することにより、ステップ側係合部120を構成する係合凹部135に対し、そのレバー本体131の先端部131aから突出した係合突部132が挿脱される。そして、本実施形態の係合部材111は、これにより、その可動ステップ42を格納位置P1に保持し、及び、その保持状態を解除することが可能となっている。
【0056】
尚、本実施形態の係合部材111において、係合突部132の先端部には、湾曲面133sを有した面取り部133が形成されている。そして、本実施形態の保持機構100は、これにより、その係合部材111の回動によって、円滑に、この係合部材111の係合突部132を可動ステップ42側の係合凹部135に挿脱することが可能となっている。
【0057】
また、
図19及び
図20に示すように、本実施形態の係合部材111には、そのレバー本体131の基端部131bから支軸110xの径方向に突出する係合爪140が設けられている。具体的には、この係合爪140は、先端側に向かって先細りとなる三角爪形状を有して車幅方向内側に向かって突設されている。更に、この係合爪140に対向するカバー部材80の周壁部82には、その係合部材111の支軸110xと略等しい車両前後方向位置において、車幅方向外側に突出した突起部141が設けられている。そして、本実施形態の係合部材111は、この突起部141に係合爪140が係合することで、そのロック位置X1又はアンロック位置X0に保持される構成になっている。
【0058】
即ち、
図15及び
図19に示すように、本実施形態の突起部141は、その車両前方側(各図中、左側)に係合部材111の係合爪140が位置する状態で当該係合爪140に係合することにより、その係合部材111がロック位置X1からアンロック位置X0に移動するアンロック方向の回動を規制する。そして、本実施形態の保持機構100においては、これにより、その突起部141が、係合部材111をロック位置X1に保持する位置保持部材150として機能する。
【0059】
また、本実施形態の保持機構100において、係合爪140に対する突起部141の係合面141sは、この突起部141が突出する方向に位置する係合部材111の支軸110x側に膨出する断面略円弧状の湾曲面142としての構成を有している。更に、本実施形態の保持機構100は、この係合面141sの湾曲面形状に基づいて、その突起部141と係合爪140との係合力に抗して係合部材111をアンロック方向に回動させることが可能となっている。即ち、本実施形態の係合部材111は、その位置保持部材150を構成する突起部141との係合力を上回るアンロック方向の操作力を加えることにより、その係合爪140が突起部141を乗り越えるかたちで、この突起部141から脱離させることが可能となっている。そして、本実施形態の保持機構100は、これにより、その係合部材111が各図中、時計回り方向に回動することで、そのロック位置X1からアンロック位置X0に移動する構成となっている。
【0060】
また、
図16及び
図20に示すように、本実施形態の保持機構100において、上記突起部141は、その車両後方側(各図中、右側)に係合部材111の係合爪140が位置する状態で、この突起部141に係合爪140が係合することにより、その係合部材111がアンロック位置X0からロック位置X1に移動するロック方向の回動を規制する。更に、本実施形態の係合部材111は、この場合においてもまた、その位置保持部材150を構成する突起部141との係合力を上回るロック方向の操作力を加えることにより、その係合爪140が突起部141を乗り越えるかたちで、この突起部141から脱離させることが可能となっている。そして、本実施形態の保持機構100は、これにより、その係合部材111が各図中、反時計回り方向に回動することで、そのアンロック位置X0からロック位置X1に移動する構成となっている。
【0061】
尚、
図17及び
図18に示すように、本実施形態の係合部材111において、レバー本体131の先端には、セレーション状の凹凸形状153を有した滑り止め部155が形成されている。そして、本実施形態の保持機構100は、その車幅方向外側に臨む収容空間83の開口部83xから利用者が可動ステップ42のロック操作及びアンロック操作を行う際、この係合部材111と位置保持部材150との係合力に抗して、容易に、その係合部材111を回動させることが可能となっている。
【0062】
また、
図19及び
図20に示すように、本実施形態の係合部材111は、そのレバー本体131の長手方向に交差する断面形状が、下側に開口する断面略コ字状となるような外形形状を有している。更に、本実施形態の保持機構100は、カバー部材80に設けられたレバー支持部160から突出するかたちで、その断面略コ字状をなす係合部材111の断面形状が形成する係合凹部161内に配置されるストッパ部162を備えている。そして、本実施形態の保持機構100は、このストッパ部162が、その係合部材111に設けられた係合凹部161の内壁面に係合することにより、その支軸100x周りに回動する係合部材111の移動範囲を制限する構成となっている。
【0063】
さらに詳述すると、
図21に示すように、本実施形態の保持機構100は、係合部材111がロック位置X1に移動した状態で、その可動ステップ42が車幅方向外側から内側に向かって格納位置P1に移動した場合には、この可動ステップ42に押圧されて、そのロック位置X1からアンロック位置X0に移動するように構成されている。
【0064】
即ち、本実施形態の保持機構100において、上記位置保持部材150と係合部材111との係合力は、そのスライドドア4の開閉動作に連動して可動ステップ42を移動させる駆動力よりも小さな値に設定されている。そして、本実施形態の保持機構100は、これにより、格納位置P1に移動する可動ステップ42の押圧力に基づいて、その係合部材111が位置保持部材150から脱離して、アンロック方向に回動する構成になっている。
【0065】
具体的には、本実施形態のステップ装置41は、可動ステップ42が格納位置P1に移動する際、この可動ステップ42が、スライドドア4の閉動作に連動した車両前方側への移動を伴いながら車幅方向外側から内側に向かって移動するように構成されている。また、本実施形態の保持機構100は、このとき、その係合部材111の回動方向、車両後方側に向かって突出する係合突部132が、そのステップ側係合部120を構成する係合凹部135に係合することなく、この係合突部132の先端部132aが可動ステップ42に押圧される構成になっている。そして、本実施形態の保持機構100は、これにより、その可動ステップ42の押圧力が、効率よく、その係合部材111をアンロック方向に回動させる力に変換されるようになっている。
【0066】
また、
図22に示すように、本実施形態の保持機構100は、係合部材111が可動ステップ42に係合する状態で、この可動ステップ42が格納位置P1から車幅方向外側に移動した場合にも、そのスライドドア4の開動作に連動した駆動力に基づいて、上記位置保持部材150との係合力に抗して係合部材111がアンロック方向に回動する。
【0067】
具体的には、本実施形態の保持機構100においては、このとき、ステップ側係合部120を構成する係合凹部135の内壁面135sが、この係合凹部135内に挿入された係合部材111の係合突部132を押圧する状態で、その可動ステップ42が車幅方向外側に移動する。更に、本実施形態の係合突部132は、この係合突部132を係合凹部135の内壁面135sが押圧する角度に基づいて、その係合凹部135から抜脱されるように構成されている。そして、本実施形態の保持機構100は、これにより、車幅方向外側に移動する可動ステップ42が係合部材111を押圧する力を、その支軸110x周りに係合部材111を回動させる力に変換することによって、円滑に、その係合部材111がロック位置X1からアンロック位置X0に移動する構成になっている。
【0068】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の保持機構100は、係合部材111がロック位置X1に移動した状態で、可動ステップ42が車幅方向外側から内側に向かって格納位置P1に移動した場合、その可動ステップ42が係合部材111をアンロック方向に押圧する。また、係合部材111が可動ステップ42に係合する状態で、この可動ステップ42が格納位置P1から車幅方向外側に移動した場合にも、その可動ステップ42が係合部材111をアンロック方向に押圧する。そして、これにより、可動ステップ42がロック位置X1からアンロック位置X0に移動することで、そのスライドドア4の開閉動作に連動した可動ステップ42の円滑な移動が確保される。
【0069】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)ステップ装置41は、ドア開口部3の下方に支持されるとともに、連結部材としてのガイドローラーユニット70を介してスライドドア4に連結されることにより、そのスライドドア4の開閉動作に連動して車幅方向に移動する可動ステップ42を備える。更に、ステップ装置41は、可動ステップ42に係合することにより、この可動ステップ42を車幅方向内側の格納位置P1に保持するロック位置X1と、可動ステップ42に干渉しないアンロック位置X0と、を有して移動可能に設けられた係合部材111を備える。そして、この係合部材111は、当該係合部材111がロック位置X1に移動した状態で可動ステップ42が格納位置P1に移動した場合には、この可動ステップ42に押圧されて、そのロック位置X1からアンロック位置X0に移動するように構成される。
【0070】
上記構成によれば、例えば、誤操作等により、その係合部材111がロック位置X1に移動した場合においても、この係合部材111が、そのスライドドア4の閉動作に連動した可動ステップ42の移動を妨げないようにすることができる。そして、これにより、その可動ステップ42の円滑な動作を確保することが可能な保持機構100を形成することができる。
【0071】
(2)係合部材111は、支軸110x周りに回動するレバー部材110としての構成を有する。また、この係合部材111は、その支軸110xを有したレバー本体131と、このレバー本体131から突出して、その支軸110x周りの回動方向に延びる係合突部132とを有する。更に、この係合部材111は、可動ステップ42が格納位置P1に移動した状態にある場合に、その支軸110x周りに回動することにより、その係合突部132が可動ステップに設けられたステップ側係合部120に係脱する。そして、係合部材111は、この係合部材111がロック位置X1に移動した状態で、可動ステップ42が格納位置P1に移動した場合には、そのステップ側係合部120と係合突部132とが係合することなく、この係合突部132の先端部132aが可動ステップ42に押圧されるように構成される。
【0072】
上記構成によれば、スライドドア4の閉動作に連動して車幅方向内側に移動する可動ステップ42が係合部材111を押圧する力を、効率よく、その支軸110x周りに係合部材111を回動させる力に変換することができる。そして、これにより、円滑に、その係合部材111をロック位置X1からアンロック位置X0に移動させることができる。
【0073】
(3)ステップ装置41は、係合部材111に係合することにより当該係合部材111をロック位置X1に保持する位置保持部材150を備える。そして、係合部材111は、この係合部材111が可動ステップ42に係合する状態で、その可動ステップ42が格納位置P1から車幅方向外側に移動した場合に、位置保持部材150との係合力に抗して当該位置保持部材150から脱離することにより、ロック位置X1からアンロック位置X0に移動可能に構成される。
【0074】
上記構成によれば、例えば、誤操作等により、係合部材111が可動ステップ42に係合する状態で、そのスライドドア4の開動作に連動して可動ステップ42が移動した場合においても、この可動ステップ42の移動を係合部材111が妨げないようにすることができる。そして、これにより、その可動ステップ42の円滑な動作を確保することが可能な保持機構100を形成することができる。
【0075】
(4)係合部材111は、支軸110xの径方向に突出する係合爪140を有する。また、係合部材111は、格納位置P1に移動した可動ステップ42の下方を覆うカバー部材80の底壁部81に設けられるとともに、このカバー部材80の周壁部82には、その係合部材111の支軸110x側に向かって突出する突起部141が設けられる。そして、この突起部141が、その係合爪140に係合することにより、係合部材111がロック位置X1からアンロック位置X0に移動するアンロック方向の回動を規制する位置保持部材150として機能する。
【0076】
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的に、格納位置P1に移動した可動ステップ42の近傍に係合部材111を配置し、及び、その位置保持部材150を形成することができる。そして、係合部材111に係合爪140を設けることにより、その支軸110x周りの回動によって、円滑且つ安定的に、この係合部材111と位置保持部材150とを係脱させることができる。
【0077】
(5)位置保持部材150としての突起部141は、この突起部141に対して係合爪140がアンロック方向とは逆向きのロック方向から係合することにより、そのロック方向の回動を規制して係合部材111をアンロック位置X0に保持する機能を有する。これにより、簡素な構成にて、ロック位置X1からアンロック位置X0に移動した係合部材111を、そのアンロック位置X0に保持することができる。
【0078】
(6)位置保持部材150を構成する突起部141の係合爪140に対する係合面141sは、係合部材111の支軸110x側に膨出する断面略円弧状の湾曲面142としての構成を有する。これにより、より円滑且つ安定的に、その係合部材111と位置保持部材150とを係脱させることができる。
【0079】
(7)ステップ側係合部120は、支軸110x周りに係合部材111が回動することにより、その係合突部132が挿脱される係合凹部135としての構成を有する。そして、係合突部132は、この係合突部132が係合凹部135内に挿入された状態で、その可動ステップ42が車幅方向外側に移動することにより、この可動ステップ42の押圧力に基づいて、その係合凹部135から抜脱されるように構成される。
【0080】
上記構成によれば、スライドドア4の開動作に連動して車幅方向外側に移動する可動ステップ42が係合部材111を押圧する力を、効率よく、その支軸110x周りに係合部材111を回動させる力に変換することができる。そして、これにより、円滑に、その係合部材111をロック位置X1からアンロック位置X0に移動させることができる。
【0081】
(8)係合突部132の先端部132aには、湾曲面133sを有した面取り部133が形成される。これにより、支軸110x周りの回動によって、円滑に、その係合部材111の係合突部132を可動ステップ42側の係合凹部135に挿脱させることができる。
【0082】
(9)ステップ装置41は、係合部材111の移動範囲を制限するストッパ部162を備える。これにより、そのロック位置X1又はアンロック位置X0に保持された係合部材111のガタつきを抑えることができる。
【0083】
(10)レバー本体131の先端には、セレーション状の凹凸形状153を有した滑り止め部155が形成される。
上記構成によれば、利用者が可動ステップ42のロック操作及びアンロック操作を行う際、この係合部材111と位置保持部材150との係合力に抗して、容易に、その係合部材111を回動させることができる。
【0084】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0085】
・上記実施形態では、車両後方側に開動作する後開き型のスライドドア4に連動するステップ装置41に具体化したが、車両前方側に開動作する前開き型のスライドドア4に適用してもよい。
【0086】
・上記実施形態では、スライドドア4は、パワースライドドア装置31に駆動されることにより開閉動作することとしたが、このようなパワースライドドア装置31を有しないスライドドア4に適用してもよい。
【0087】
・また、スライドドア4の開閉動作に連動して可動ステップ42が車幅方向に移動する構成であれば、例えば、レール&スライダ方式等、その支持構造は、任意に変更してもよい。
【0088】
・上記実施形態では、格納位置P1に移動した可動ステップ42の下方を覆うカバー部材80に、その保持機構100を構成する係合部材111及び位置保持部材150が設けられることとしたが、その設置箇所は、任意に変更してもよい。
【0089】
・上記実施形態では、係合部材111は、レバー本体131、係合突部132、及び係合爪140を有して支軸110x周りに回動するレバー部材110としての構成を有することとしたが、その構成は、任意に変更してもよい。例えば、ステップ側係合部120に対する係合部が、上記係合突部132とは異なる形状を有していてもよく、位置保持部材150に対する係合部もまた、上記係合爪140とは異なる形状を有していてもよい。そして、必ずしも、回動レバーに限らず、スライドレバーであってもよい。
【0090】
・更に、ステップ側係合部120の形状や、その形成位置についても任意に変更してもよい。そして、位置保持部材150の形状及び配置についてもまた、上記実施形態における突起部141に限らず、任意に変更してもよい。
【0091】
・また、上記実施形態では、位置保持部材150は、係合部材111をロック位置X1に保持する機能、及び、その係合部材111をアンロック位置X0に保持する機能を有することとしたが、別部材を用いて係合部材111をアンロック位置X0に保持する構成であってもよい。
【0092】
・更に、ストッパ部162の構成も任意に変更してもよい。
例えば、
図23に示すように、位置保持部材150を構成する突起部141を車両前後方向に挟む二位置に一対の突起部164,165を設ける。更に、これらの各突起部164,165は、支軸110x周りに回動する係合部材111の係合爪140が、ロック位置X1を超えてロック方向に回動、又はアンロック位置X0を超えてアンロック方向に回動した場合に、その係合爪140に当接して係合部材111の回動範囲を規制する位置に配置される。そして、これにより、これら各突起部164,165が、そのストッパ部162Bとして機能する構成としてもよい。
【0093】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記位置保持部材は、前記格納位置に移動した前記可動ステップの下方を覆うカバー部材に設けられた突起部であること、を特徴とする車両用ステップ装置。これにより、簡素な構成にて、安定的に、その位置保持部材を形成することができる。
【0094】
(ロ)前記レバー本体の先端には、凹凸形状を有した滑り止め部が形成されること、を特徴とする車両用ステップ装置。
上記構成によれば、利用者が可動ステップのロック操作及びアンロック操作を行う際、係合部材と位置保持部材との係合力に抗して、容易に、その係合部材を回動させることができる。
【0095】
(ハ)ドア開口部の下方に支持される可動ステップと、車幅方向の変位区間を有して車両前後方向に移動するスライドドアに支持された状態で前記可動ステップに係合することにより前記スライドドアの開閉動作に連動して前記可動ステップを車幅方向に移動させる連結部材と、前記可動ステップに係合することにより該可動ステップを車幅方向内側の格納位置に保持するロック位置と前記可動ステップに干渉しないアンロック位置とを有して移動可能に設けられた係合部材と、前記係合部材に係合することにより該係合部材を前記ロック位置に保持する位置保持部材と、を備え、前記係合部材は、前記可動ステップが前記格納位置に移動した状態で、前記アンロック位置から前記ロック位置に移動することにより、前記可動ステップに設けられたステップ側係合部に係合するとともに、前記係合部材が前記可動ステップに係合する状態で該可動ステップが前記格納位置から車幅方向外側に移動した場合に、前記位置保持部材との係合力に抗して該位置保持部材から脱離することにより、前記ロック位置から前記アンロック位置に移動可能に構成されること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【符号の説明】
【0096】
3…ドア開口部
4…スライドドア
41…ステップ装置
42…可動ステップ
70…ガイドローラーユニット
111…係合部材
120…ステップ側係合部
P1…格納位置
X1…ロック位置
X0…アンロック位置
Rc…変位区間