(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】扁平断面ガラス繊維、及び、ガラス再生材料を含むガラス原料からの扁平断面ガラス繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/022 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
C03B37/022
(21)【出願番号】P 2022572531
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2022031232
【審査請求日】2022-11-25
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】貫井 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】原島 俊介
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 誠香
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-001111(JP,A)
【文献】特開2010-150127(JP,A)
【文献】特開2009-263211(JP,A)
【文献】特開2000-103635(JP,A)
【文献】特開2019-052323(JP,A)
【文献】国際公開第2020/040033(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の範囲の長さの長径と所定の範囲の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有する扁平断面ガラスフィラメントを複数本含む扁平断面ガラス繊維であって、
短径の長さAが、3.5~10.5μmの範囲にあり、前記短径の長さに対する長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)Bが1.5~9.0の範囲にあり、
前記短径の長さの変動係数Cが8.0~26.1%の範囲にあり、
前記A、B、及び、Cが、次式(a)を満たすことを特徴とする、扁平断面ガラス繊維。
5.5 ≦ C
2/(A×A×B)
1/2 ≦ 53.6 ・・・(a)
【請求項2】
請求項1記載の扁平断面ガラス繊維において、前記短径の変動係数が12.6~18.5%の範囲にあることを特徴とする、扁平断面ガラス繊維。
【請求項3】
請求項1記載の扁平断面ガラス繊維において、前記A、B、及び、Cが、次式(1)を満たすことを特徴とする、扁平断面ガラス繊維。
11.7 ≦ C
2/(A×A×B)
1/2 ≦ 33.4 ・・・(1)
【請求項4】
請求項3記載の扁平断面ガラス繊維において、前記A、B、及び、Cが、次式(2)を満たすことを特徴とする、扁平断面ガラス繊維。
14.0 ≦ C
2/(A×A×B)
1/2 ≦ 26.3 ・・・(2)
【請求項5】
全量に対し、1.0~50.0質量%の範囲のガラス再生材料を含むガラス原料を用いて、
所定の範囲の長さの長径と所定の範囲の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有し、
短径の長さAが、3.5~10.5μmの範囲にあり、前記短径の長さに対する長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)Bが1.5~9.0の範囲にあり、前記短径の長さの変動係数Cが8.0~26.1%の範囲にあ
り、
前記A、B、及び、Cが、次式(a)を満たす、複数本の扁平断面ガラスフィラメントを得て、前記複数本の扁平断面ガラスフィラメントを集束させることを特徴とする、ガラス再生材料を含むガラス原料からの扁平断面ガラス繊維の製造方法。
5.5 ≦ C
2
/(A×A×B)
1/2
≦ 53.6 ・・・(a)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平断面ガラス繊維、及び、ガラス再生材料を含むガラス原料からの扁平断面ガラス繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維は、樹脂成形品の性能を向上させるために種々の用途で広く用いられている。近年、ガラス繊維の中でも、所定の範囲の長さの長径と所定の範囲の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有する複数本のガラスフィラメントを含むガラス繊維(以下、扁平断面ガラス繊維ということがある)は、ガラス繊維強化樹脂成形品の反りを低減し、曲げ強度を向上させるといった、優れた樹脂成形品強化性を備えることから、その需要が拡大している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、前記扁平な断面形状を有するガラスフィラメント(以下、扁平断面ガラスフィラメントということがある)を複数本含む扁平断面ガラス繊維を製造する際に、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面における長径をX、短径をYとした場合に、断面形状の扁平比(すなわち、前記扁平断面ガラスフィラメントの扁平な断面における、短径の長さに対する長径の長さの比であり、(長径の長さ/短径の長さ)により算出される。異形比ということもある。)X/Yを1.5~20、好ましくは3~10の範囲内とし、扁平比のばらつきσを扁平比の平均値で割った値を百分率で表した値を、15%以下、好ましくは10%以下の範囲とすることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2によれば、前記扁平断面ガラスフィラメントは、その断面形状の扁平比及び、扁平比のばらつきσを扁平比の平均値で割った値を百分率で表した値を前記範囲とすることにより、複数本の前記扁平断面ガラスフィラメントを含むガラス繊維を3mm長に切断してチョップドストランドとしたときに、電子制御デバイスの筐体等の寸法精度の要求の厳しい部品を得るために必要な複合材の強化材として好適な性質を有し、射出成形後の筐体の歪みを低減したり、強度を向上したりする効果を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7063424号公報
【文献】特開2021-1111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、環境に対する意識の高まりから製造工程で発生するガラス繊維廃棄物の付着物を除去し、粉砕したもの(ガラス再生材料)をガラス原料として再利用することが行われている。
【0006】
しかしながら、前記ガラス再生材料は、鉱物からなる純粋なガラス原料と比較して、微細な異物、例えば白金やレンガ破砕物等が含まれ、この異物が扁平断面ガラス繊維の生産性に影響を与えるため、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面形状の扁平比(異形比)を制御するのみでは、前記扁平断面ガラス繊維の樹脂成形品強化性を維持しつつ、扁平断面ガラス繊維の連続生産性及び大量生産適性を高めることができないという不都合がある。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、連続生産性及び大量生産適性に優れ、かつ、優れた樹脂成形品強化性を得ることができる扁平断面ガラス繊維、及び、ガラス再生材料を含むガラス原料からの扁平断面ガラス繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の扁平断面ガラス繊維は、所定の範囲の長さの長径と所定の範囲の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有するガラスフィラメントを複数本含み、短径の長さAが、3.5~10.5μmの範囲にあり、前記短径の長さに対する長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)Bが1.5~9.0の範囲にあり、前記短径の長さの変動係数Cが8.0~26.1%の範囲にあり、前記A、B、及び、Cが、次式(a)を満たすことを特徴とする。
5.5 ≦ C
2
/(A×A×B)
1/2
≦ 53.6 ・・・(a)
【0009】
前記短径の長さの変動係数Cは、短径の長さAの標準偏差を、短径の長さAの平均値で除した値を百分率で示したものである。
【0010】
本発明の扁平断面ガラス繊維によれば、前記短径の長さの変動係数Cが前記範囲にあり、前記A、B、及び、Cが、前記式(a)を満たすことにより、優れた連続生産性及び、優れた大量生産適性を得ることができ、かつ、優れた樹脂成形品強化性を得ることができる。
【0011】
ここで、優れた連続生産性とは、前記扁平断面ガラス繊維を8時間製造する場合において、前記扁平断面ガラス繊維の切断回数が2.0回/時間以下であることを意味し、優れた大量生産適性とは、前記扁平断面ガラス繊維を製造する場合において、ノズル1個当たりを通過する溶融ガラスの流量が0.20g/分以上であることを意味する。また、優れた樹脂成形品強化性とは、前記扁平断面ガラス繊維のチョップドストランドを30質量%含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂射出成形品において、JIS K 7171:2016に準拠した曲げ強度が200MPa以上であり、縦80mm×横60mm×厚さ1mmの前記ガラス繊維強化ポリアミド樹脂成形品の平板において、反りが10mm以下であることを意味する。
【0012】
また、本発明の扁平断面ガラス繊維は、前記短径の長さの変動係数Cが12.6~18.5%の範囲にあることが好ましく、特に優れた連続生産性及び、特に優れた大量生産適性を得ることができ、かつ、特に優れた樹脂成形品強化性を得ることができる。
【0013】
ここで、特に優れた連続生産性とは、前記扁平断面ガラス繊維を8時間製造する場合において、前記扁平断面ガラス繊維の切断回数が1.0回/時間以下であることを意味し、特に優れた大量生産適性とは、前記扁平断面ガラス繊維を製造する場合において、ノズル1個当たりを通過する溶融ガラスの流量が0.30g/分以上であることを意味する。また、特に優れた樹脂成形品強化性とは、前記扁平断面ガラス繊維のチョップドストランドを30質量%含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂射出成形品において、JIS K 7171:2016に準拠した曲げ強度が250MPa以上であり、縦80mm×横60mm×厚さ1mmの前記ガラス繊維強化ポリアミド樹脂成形品の平板において、反りが10mm以下であることを意味する。
【0014】
また、本発明の扁平断面ガラス繊維は、前記A、B、及び、Cが、次式(1)を満たすことが好ましく、次式(2)を満たすことがさらに好ましい。
11.7 ≦ C2/(A×A×B)1/2 ≦ 33.4 ・・・(1)
14.0 ≦ C2/(A×A×B)1/2 ≦ 26.3 ・・・(2)
【0015】
本発明の扁平断面ガラス繊維は、前記A、B、及び、Cが、前記式(1)を満たすことにより、特に優れた連続生産性及び、特に優れた大量生産適性を得ることができ、かつ、特に優れた樹脂成形品強化性を得ることができる。
【0016】
また、本発明の扁平断面ガラス繊維は、前記A、B、及び、Cが、前記式(2)を満たすことにより、特に優れた連続生産性及び、特に優れた大量生産適性を得ることができ、かつ、特に優れた樹脂成形品強化性を得ることができ、さらに、異形比の変動係数が、20.0%未満となる。
【0017】
前記異形比の変動係数は、異形比の標準偏差を、異形比の平均値で除した値を百分率で示したものである。
【0018】
本発明のガラス再生材料を含むガラス原料からの扁平断面ガラス繊維の製造方法は、全量に対し、1.0~50.0質量%の範囲のガラス再生材料を含むガラス原料を用いて、短径の長さAが、3.5~10.5μmの範囲にあり、前記短径の長さに対する長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)Bが1.5~9.0の範囲にあり、前記短径の長さの変動係数Cが8.0~26.1%の範囲にあり、前記A、B、及び、Cが、次式(a)を満たす、複数本の扁平断面ガラスフィラメントを得て、前記複数本の扁平断面ガラスフィラメントを集束させることを特徴とする。
5.5 ≦ C
2
/(A×A×B)
1/2
≦ 53.6 ・・・(a)
【0019】
前記ガラス再生材料としては、ガラス繊維の製造過程で切断、品質不良、規格不適合等の理由で発生する廃棄ガラス繊維、又は、ガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたガラス繊維であって、その表面に付着した有機成分を焼却等によって除去した後に粉砕したものを挙げることができる。前記ガラス再生材料以外のガラス原料としては、鉱物材料を挙げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0021】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、所定の範囲の長さの長径と所定の範囲の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有する扁平断面ガラスフィラメントを複数本含む扁平断面ガラス繊維であって、短径の長さAが、3.5~10.5μmの範囲にあり、前記短径の長さに対する長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)Bが1.5~9.0の範囲にあり、前記短径の長さの変動係数Cが8.0~26.1%の範囲にあり、前記A、B、及び、Cが、次式(a)を満たす。
5.5 ≦ C
2
/(A×A×B)
1/2
≦ 53.6 ・・・(a)
【0022】
前記扁平な断面形状とは、好ましくは楕円形状又は長円形状であり、より好ましくは長円形状である。ここで、長円形状とは、長方形の両端に半円状の形状を付けたもの、あるいはそれに類似した形状である。なお、ここで、断面は、ガラスフィラメントの長さ方向に垂直な断面を意味する。
【0023】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、当該扁平断面ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数は、例えば、10~30000本であり、好ましくは、20~20000本であり、より好ましくは、50~10000本であり、さらに好ましくは、1000~8000本である。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、当該扁平断面ガラス繊維を構成するガラスフィラメントのうち50%超が前記扁平断面ガラスフィラメントであり、好ましくは、80%以上が前記扁平断面ガラスフィラメントであり、より好ましくは、90%以上が前記扁平断面ガラスフィラメントであり、さらに好ましくは、100%が前記扁平断面ガラスフィラメントである。
【0024】
前記短径の長さの変動係数Cは、次のようにして求めることができる。例えば、前記扁平断面ガラス繊維が、ガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれない場合には、該扁平断面ガラス繊維をエポキシ樹脂等の樹脂に埋めて該樹脂を硬化させ、硬化した樹脂を切断してその断面を研磨し、次いで、電子顕微鏡を用いて硬化した樹脂の断面を観察する。そして、前記硬化した樹脂の断面に露出する、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメンの全て又は200本以上につき、該扁平断面ガラスフィラメントの略中心を通る最長の辺(なお、この最長の辺を長径とする)と該扁平断面ガラスフィラメントの略中心で直交する辺を短径として、その長さを測定する。次いで、測定された短径の長さAから短径の長さの平均値及び標準偏差を算出し、算出された標準偏差を算出された平均値で除し、百分率で表示することで、短径の長さの変動係数Cを求めることができる。
【0025】
また、前記扁平断面ガラス繊維が、ガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれる場合には、ガラス繊維強化樹脂成形品の断面を研磨し、次いで、電子顕微鏡を用いて、硬化した樹脂の断面を観察する。そして、前記硬化した樹脂の断面に露出する、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメント200本以上につき、該扁平断面ガラスフィラメントの略中心を通る最長の辺と該扁平断面ガラスフィラメントの略中心で直交する辺を短径として、その長さを測定する。次いで、測定された短径の長さAから短径の長さの平均値及び標準偏差を算出し、算出された標準偏差を算出された平均値で除し、百分率で表示することで、短径の長さの変動係数Cを求めることができる。
【0026】
ここで、前記扁平断面ガラス繊維が、ガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれない場合と、ガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれる場合とのいずれの場合においても、短径の長さの変動係数Cは、電子顕微鏡から得た画像を自動解析装置で画像処理することで測定することもできる。
【0027】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維によれば、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメントの前記短径の長さの変動係数Cが8.0~26.1%の範囲にあることにより、優れた連続生産性及び、優れた大量生産適性を得ることができ、かつ、優れた樹脂成形品強化性を得ることができる。また、前記短径の長さの変動係数Cが12.6~18.5%の範囲にあることにより、特に優れた連続生産性及び、特に優れた大量生産適性を得ることができ、かつ、優れた樹脂成形品強化性を得ることができる。
【0028】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメントの前記短径の長さの変動係数は、より好ましくは、15.1~18.5%の範囲にあり、さらに好ましくは、15.5~18.5%の範囲にある。
【0029】
前記長径の長さは、前述の短径の長さAを測定する際に、扁平断面ガラスフィラメントの略中心を通る最長の辺の長さを長径の長さとして測定し、測定された長径の長さから平均値を算出することで求めることができる。
【0030】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメントの前記短径の長さAは、好ましくは、4.0~9.0μmの範囲にあり、より好ましくは、4.1~8.4μmの範囲にあり、さらに好ましくは、4.6~8.0μmの範囲にあり、とりわけ好ましくは、5.1~7.6μmの範囲にあり、特に好ましくは、5.3~7.3μmの範囲にあり、殊に好ましくは、5.5~7.0μmの範囲にあり、最も好ましくは、5.5~6.5μmの範囲にある。
【0031】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメントの長径の長さは、例えば、5.3~94.5μmの範囲にあり、好ましくは、7.0~84.0μmの範囲にあり、より好ましくは、9.0~60.0μmの範囲にあり、さらに好ましくは、11.0~55.0μmの範囲にあり、とりわけ好ましくは、12.0~50.0μmの範囲にあり、特に好ましくは、15.0~45.0μmの範囲にあり、殊に好ましくは、18.0~36.0μmの範囲にあり、最も好ましくは、20.0~33.0μmの範囲にある。
【0032】
また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメントの前記短径の長さに対する長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)Bは、好ましくは、2.0~8.0の範囲にあり、より好ましくは、2.5~7.0の範囲にあり、さらに好ましくは、3.5~6.5の範囲にあり、特に好ましくは、4.0~6.0の範囲にある。
【0033】
また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、前記A、B、及び、Cが、次式(1)を満たすことが好ましく、次式(2)を満たすことがさらに好ましい。
11.7 ≦ C2/(A×A×B)1/2 ≦ 33.4 ・・・(1)
14.0 ≦ C2/(A×A×B)1/2 ≦ 26.3 ・・・(2)
【0034】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、前記A、B、及び、Cが、前記式(1)を満たすことにより、特に優れた連続生産性及び、特に優れた大量生産適性を得ることができ、かつ、特に優れた樹脂成形品強化性を得ることができる。さらに、本実施形態の扁平断面ガラスフィラメントは、前記A、B、及び、Cが、前記式(2)を満たすことにより、特に優れた連続生産性及び、特に優れた大量生産適性を得ることができ、かつ、特に優れた樹脂成形品強化性を得ることができ、さらに、異形比の変動係数が、20.0%未満となる。
【0035】
前記式(a)、式(1)及び式(2)において、「(A×A×B)1/2」は、短径の長さ(=A)と、長径の長さ(=A×B)との相乗平均を示し、扁平断面ガラスフィラメントの断面積の大きさを反映している。前記「(A×A×B)1/2」が大きい程、連続生産性及び大量生産適性が高まる傾向があり、樹脂成形品強化性、とりわけガラス繊維強化樹脂成形品の反りを低減する効果が低下する傾向がある。また、前記式(a)、式(1)及び式(2)において、「B」の値が高い程、連続生産性及び大量生産適性が低下する傾向にあり、樹脂成形品強化性、とりわけガラス繊維強化樹脂成形品の反りを低減する効果が高まる傾向がある。また、前記式(a)、式(1)及び式(2)において、「C」が小さい程、連続生産性が高まる傾向があり、大量生産適性が低下する傾向がある。前記式(a)、式(1)及び式(2)は、これらの傾向の均衡を表現しているものと推定される。
【0036】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメントの異形比の変動係数は、例えば、25.0%以下であり、好ましくは、21.4%以下であり、より好ましくは、20.0%未満であり、さらに好ましくは、15.1~19.9%の範囲にあり、特に好ましくは、15.5%~19.4%の範囲にある。なお、異形比の変動係数は、前述の短径の長さAを測定する際に、短径の長さAと長径の長さとを測定して、これらから1本の扁平断面ガラスフィラメントの異形比を算出する。次いで、短径の長さA及び長径の長さが測定された、それぞれの扁平断面ガラスフィラメントから算出された異形比から平均値及び標準偏差を算出し、算出された標準偏差を算出された平均値で除し、百分率で表示することで、異形比の変動係数を求めることができる。
【0037】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記扁平断面ガラス繊維を構成する前記扁平断面ガラスフィラメントの断面積の変動係数は、例えば、25.0%以下であり、好ましくは、22.5%以下であり、より好ましくは、14.1~21.0%の範囲にあり、さらに好ましくは、14.5~20.0%の範囲にある。なお、断面積の変動係数は、前述の短径の長さを測定する際に、例えば、「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング株式会社製)等の公知の画像解析ソフトを用いて、扁平断面ガラスフィラメントの断面積を測定する。次いで、測定された断面積から平均値及び標準偏差を算出し、算出された標準偏差を算出された平均値で除し、百分率で表示することで、断面積の変動係数を求めることができる。
【0038】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、全量に対し、1.0~50.0質量%の範囲のガラス再生材料を含むガラス原料を用いて、所定の範囲の長さの長径と所定の範囲の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有し、前記短径の長さの変動係数Cが8.0~26.1%の範囲にある複数本の扁平断面ガラスフィラメントを得て、前記複数本の扁平断面ガラスフィラメントを集束させる製造方法により、製造することができる。
【0039】
前記ガラス再生材料としては、ガラス繊維の製造過程で切断、品質不良、規格不適合等の理由で発生する廃棄ガラス繊維、又は、ガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたガラス繊維であって、その表面に付着した有機成分を焼却等によって除去した後に粉砕したものを挙げることができる。
【0040】
前記ガラス再生材料以外のガラス原料としては、珪砂、長石、クレー、石灰石等の鉱物材料、又は、シリカパウダー、ドロマイト、タルク、クレー、アルミナ、ソーダ灰等の鉱物由来精製材料を挙げることができる。
【0041】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維は、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、全量に対し、1.0~50.0質量%の範囲のガラス再生材料を含み、所定のガラス組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1550℃の範囲の温度で溶融し、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングの10~30000個のノズルチップから引き出して、急冷するときに、前記ノズルチップを、非円形形状、例えば、前記扁平断面ガラスフィラメントの断面形状に対応する形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有するものとし、温度条件を制御することにより、複数の扁平断面ガラスフィラメントを得る。次いで、得られた複数本の扁平断面ガラスフィラメントに、塗布装置であるアプリケーターを用いて集束剤又はバインダーを塗布し、集束シューを用いて、扁平断面ガラスフィラメント10~30000本を集束させながら、巻取り機を用いて、チューブに高速で巻取ることで、本実施形態の扁平断面ガラス繊維を製造することができる。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメントは、ノズルチップの長径及び短径や、巻取り速度、及び、温度条件等を調整することで、短径及び長径を調整することができる。例えば、巻取り速度を速くすることで、短径及び長径を小さくすることができ、巻取り速度を遅くすることで、短径及び長径を大きくすることができる。
【0042】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、扁平断面ガラス繊維、及び、当該扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメントを形成するガラスのガラス組成は特に限定されず、例えば、最も汎用的なガラス組成であるEガラス組成とすることができる。前記Eガラス組成は、ガラスフィラメントの全量に対し52.0~56.0質量%の範囲のSiO2と、12.0~16.0質量%の範囲のAl2O3と、合計で20.0~25.0質量%の範囲のMgO及びCaOと、5.0~10.0質量%の範囲のB2O3とを含む組成である。
【0043】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維の製造に用いられる、前記ガラス原料は、全量に対し、1.0~50.0質量%の範囲のガラス再生材料と、前記鉱物材料、又は、前記鉱物由来精製材料とが、混合され、溶融される等して均質化されたものである。前記ガラス原料は、前記ガラス再生材料と、前記鉱物材料、又は、前記鉱物由来精製材料とに含まれる成分と各成分の含有率、及び、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、所望の組成、例えばEガラス組成になるように、前記ガラス再生材料と、前記鉱物材料、又は、前記鉱物由来精製材料との含有比率が決定される。前記ガラス再生材料としては、例えば、Eガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂成形品から回収されたガラス再生材料であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維の形態としては、例えば、ガラスヤーン、ガラスチョップドストランド、ガラスロービング、ガラスパウダー、ガラスフィラメントマットを挙げることができる。また、前記ガラス繊維は、ガラスヤーンから構成されるガラスクロス、ガラスチョップドストランドから構成されるチョップドストランドマットの状態であってもよく、ガラス繊維強化樹脂成形品にガラスフィラメントが分散している状態であってもよい。
【0045】
例えば、本実施形態の扁平断面ガラス繊維がチョップドストランドである場合、前記扁平断面ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数は、例えば、10~20000本であり、好ましくは、50~10000本であり、より好ましくは、1000~8000本である。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維であるチョップドストランドの長さは、例えば、1.0~100.0mm、好ましくは、1.2~51.0mm、より好ましくは、1.5~30.0mm、さらに好ましくは2.0~15.0mm、特に好ましくは2.3~7.8mmである。ここで、前記チョップドストランドは、前述の方法で製造された扁平断面ガラス繊維を、回転式ドラムカッター等の公知の方法で、前記の所定長になるように切断することで得ることができる。
【0046】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維がロービングである場合、前記扁平断面ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数は、例えば、200~30000本である。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維であるロービングは、35~10000tex(g/km)の単位面積当たりの質量を備える。
【0047】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維がガラスパウダー(カットファイバーということもある。)である場合、前記扁平断面ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数は、例えば、10~20000本である。また、本実施形態の扁平断面ガラス繊維であるガラスパウダーの長さは、例えば、0.001~0.900mmである。ここで、前記ガラスパウダーは、前述の方法で製造された扁平断面ガラス繊維を、ボールミル又はヘンシルミキサー等の公知の方法で、前記の所定長になるように粉砕することで得ることができる。
【0048】
本実施形態の扁平断面ガラス繊維において、前記扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメント同士は接していてもよく離間していてもよい。前記扁平断面ガラスフィラメント同士が離間している場合、該扁平断面ガラスフィラメント同士の間には、表面処理剤、又は、ガラス繊維強化樹脂成形品を構成する樹脂組成物が存在していてもよい。
【0049】
前記表面処理剤としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン、特にカルボン酸変性ポリプロピレン、(ポリ)カルボン酸、特にマレイン酸と不飽和単量体との共重合体等の樹脂、又は、シランカップリング剤に加えて、潤滑剤、界面活性剤等を含む組成物を挙げることができる。
【0050】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、カチオニックシランを挙げることができる。前記シランカップリング剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0051】
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0052】
クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0053】
エポキシシランとしては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0054】
メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0055】
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0056】
アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0057】
カチオニックシランとしては、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等を挙げることができる。
【0058】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油及びこの水素添加物、植物油及びこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。前記潤滑剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0059】
動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
【0060】
植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
【0061】
動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
【0062】
植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0063】
鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0064】
高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0065】
脂肪酸アミドとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
【0066】
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0067】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。前記界面活性剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0068】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
【0069】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン酢酸塩、高級アルキルアミン塩酸塩等、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0070】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0071】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型、イミダゾリン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0072】
前記ガラス繊維強化樹脂成形品を構成する樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を挙げることができる。
【0073】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0074】
前記ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等を挙げることができる。
【0075】
前記ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0076】
前記ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
【0077】
前記メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等を挙げることができる。
【0078】
前記ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、又は、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、又は、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0079】
前記ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリキシレンアジパミド(ポリアミドXD6)、ポリキシレンセバカミド(ポリアミドXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ポリアミド4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ポリアミド4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ポリアミドPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の複数成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0080】
前記ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等を挙げることができる。
【0081】
前記ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0082】
前記ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0083】
前記ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸又はその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0084】
前記ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応するホスゲン法により得られる重合体を挙げることができる。
【0085】
前記ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等を挙げることができる。
【0086】
前記変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ等を挙げることができる。
【0087】
前記ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等を挙げることができる。
【0088】
前記液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等を挙げることができる。
【0089】
前記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等を挙げることができる。
【0090】
前記アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィン又はスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等を挙げることができる。
【0091】
前記オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等を挙げることができる。
【0092】
前記環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等を挙げることができる。
【0093】
前記ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、又はその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0094】
前記セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。 また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【実施例】
【0095】
〔実施例1~12及び比較例1~7〕
全量に対して5.0質量%のガラス再生材料を含むガラス原料を溶融し、得られた溶融ガラスを、200個のノズルチップを備えるブッシングから引き出して、複数の扁平断面ガラスフィラメントを得て、これらの扁平断面ガラスフィラメントを集束させて扁平断面ガラス繊維を製造した。前記ノズルチップは、所定の範囲の長さの長径と所定の範囲の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有する孔部と、溶融ガラスを冷却する切り欠きを備えた壁部とを備えている。
【0096】
このとき、前記ノズルの孔部の短径を0.2~2.0mmの範囲の長さで調整し、前記ノズルの孔部の短径の長さに対する長径の長さの比を2.0~8.0の範囲で調整し、前記ノズル1個当たりを通過する溶融ガラスの流量を0.1~3.0g/分の範囲で調整して、実施例1~実施例12及び比較例1~7の扁平断面ガラス繊維を得た。
【0097】
前記扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメントの短径A、長径/短径B、短径の変動係数(短径の長さの変動係数)C、異形比(長径の長さ/短径の長さ)の変動係数、断面積の変動係数、C2/(A×A×B)1/2の値、扁平断面ガラス繊維の連続生産性、扁平断面ガラス繊維の大量生産適性を表1~3に示す。
【0098】
また、前記扁平断面ガラス繊維をチョップドストランドとし、該チョップドストランドを用いて製造されたガラス繊維樹脂成形品の反り、曲げ強度を、表1~3に示す。
【0099】
前記扁平断面ガラス繊維の連続生産性、大量生産適性と、前記ガラス繊維樹脂成形品の反り、曲げ強度は、それぞれ次のようにして評価した。
【0100】
〔連続生産性〕
実施例1~12又は比較例1~7の扁平断面ガラス繊維を8時間生産するにあたり、扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメントに切断が生じる回数が1.0回/時間以下の場合を「A」、1.0回超2.0回以下の場合を「B」、2.0回/時間超の場合を「C」と評価した。
【0101】
〔大量生産適性〕
実施例1~12又は比較例1~7の扁平断面ガラス繊維を生産するにあたり、前記ノズルチップ1個当たりを通過する溶融ガラスの流量が0.30g/分以上の場合を「A」、0.20g/分以上0.30g/分未満の場合を「B」、0.20g/分未満の場合を「C」と評価した。
【0102】
〔ガラス繊維強化樹脂成形品の反り〕
実施例1~12又は比較例1~7の扁平断面ガラス繊維の表面をシランカップリング剤を含む組成物で被覆し、3mmの長さに切断して、チョップドストランドとした。次に、前記チョップドストランドとポリアミド6樹脂(宇部興産株式会社製、商品名:UBE1015B)とを、スクリュー回転数を100rpmとして、二軸混練機(芝浦機械株式会社製、商品名:TEM-26SS)にて270℃の温度で混練し、ガラス繊維含有率が30質量%の樹脂ペレットを作製した。
【0103】
次に、前記樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:NEX80により金型温度80℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、縦80mm×横60mm×厚さ1mmの寸法の平板である反り測定用試験片を成形した。前記反り測定用試験片の一角を平坦面に接地した際に、該平坦面に接地された一角と対角の位置にある一角と平坦面との間に発生する距離をノギスで測定した。前記反り測定用試験片の四角のそれぞれを平坦面に接地した場合について、前記距離を測定し、反りが10mm以下であるものを「A」、10mm以上であるものを「B」と評価した。
【0104】
〔ガラス繊維樹脂成形品の曲げ強度〕
前記反り測定用試験片を成形に用いたものと同一の樹脂ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名:NEX80)により金型温度90℃、射出温度270℃にて射出成形を行い、JIS K 7165:2008に準じたA型ダンベル試験片(厚さ4mm)を作製した。前記A型ダンベル試験片について、試験温度23℃の条件で、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAG-5000B)を用いて、JIS K 7171:2016に準拠した静的引張試験により得られた測定値を、曲げ強度とした。曲げ強度が250MPa以上であるものを「A」、200MPa以上250MPa未満ものを「B」、200MPa未満のものを「C」と評価した。
【0105】
【0106】
【0107】
【表3】
表1、2から、短径の長さの変動係数Cが8.0~26.1%の範囲にある実施例1~12の扁平断面ガラス繊維は、連続生産性及び大量生産適性に優れるか、又は特に優れており、かつ、優れた、又は特に優れた樹脂成形品強化性を得ることができることが明らかである。
【0108】
これに対し、表3から、短径の長さの変動係数Cが8.0%未満である比較例1~5の扁平断面ガラス繊維は、優れた大量生産適性を備えていないか、又は、優れた樹脂成形品強化性を得ることができず、短径の長さの変動係数Cが26.1%超である比較例6~7の扁平断面ガラス繊維は、優れた連続生産性又は大量生産適性を備えていないことが明らかである。
【要約】
連続生産性及び大量生産適性に優れ、かつ、優れた樹脂成形品強化性を得ることができる扁平断面ガラス繊維、及びガラス再生材料を含むガラス原料からの扁平断面ガラス繊維の製造方法を提供する。本発明の扁平断面ガラス繊維は、当該扁平断面ガラス繊維を構成する扁平断面ガラスフィラメントが所定の範囲の長さの長径と所定の範囲の長さの短径とを備える扁平な断面形状を有し、短径の長さの変動係数が8.0~26.1%の範囲にある。