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特許7385983硬化性樹脂組成物及びその硬化物、プリプレグ、並びに繊維強化複合材料
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  • 特許-硬化性樹脂組成物及びその硬化物、プリプレグ、並びに繊維強化複合材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及びその硬化物、プリプレグ、並びに繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20231116BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20231116BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231116BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231116BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/62
C08J5/24 CFC
C08L63/00 A
C08L69/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016198258
(22)【出願日】2016-10-06
(65)【公開番号】P2018059003
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2019-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】▲吉▼澤 英一
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196453(JP,A)
【文献】特表2003-525966(JP,A)
【文献】特表2009-537673(JP,A)
【文献】特表2008-533273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
C08L63/00-63/10
C08J3/00-7/18
CA(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物(A)と、分子内に2.5個以上の水酸基を有するポリカーボネートポリオール(B)とを含み、ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して30~60重量部であり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)が、
水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオールと水酸基数2.5個以上の低分子ポリオールとのエステル交換体、及び
水酸基数2.5個以上の低分子ポリオールと環状カーボネートとの開環重合物
からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
脂環式エポキシ化合物(A)が、下記式(I)で表される化合物を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
(上記式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。)
【請求項3】
さらに、硬化触媒(C)を含む請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
繊維強化複合材料用樹脂組成物である請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸又は塗工したプリプレグ。
【請求項7】
請求項6に記載のプリプレグを硬化させた繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びその硬化物、上記硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸又は塗工して得られるプリプレグ、並びに該プリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ化合物を含む硬化性樹脂組成物(硬化性エポキシ樹脂組成物)は、接着剤、構造材、複合材料(CFRP等)、コーティング剤、封止剤、透明材料、光学材料、電子材料などの多種多様な用途に広く使用されている。近年、上記硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物をさらに炭素繊維等の強化繊維により強化することにより得られる、繊維強化複合材料の開発が精力的に進められている。上記繊維強化複合材料は、その軽量である特性及び強靭である特性等を活かし、例えば、自動車部品、土木建築用品、風力発電のブレード、スポーツ用品、航空機、船舶、ロボット、ケーブル材料など、特に、柔軟性、耐湿熱性等が求められる分野への応用が期待されている。
【0003】
上記硬化性エポキシ樹脂組成物としては、高い耐熱性及び耐光性を有し、黄変しにくい樹脂として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートとε-カプロラクトンの付加物、1,2,8,9-ジエポキシリモネンなどの脂環骨格を有する脂環式エポキシ化合物が広く使用されている。しかし、これらの脂環式エポキシ化合物の硬化物は柔軟性が低く、各種応力下で破壊されやすい脆い硬化物が得られるという問題を有していた。
このような脂環式エポキシ化合物を使用することによる問題に対処するため、脂環式エポキシ化合物にポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の柔軟性を有するポリオールを配合することにより、柔軟性が付与された硬化物を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-169337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリオールとしてポリエステルポリオールを配合した場合には、エステル基が加水分解されやすいため、硬化物の耐湿熱性が低下することが明らかとなった(後掲の比較例1及び3参照)。
また、ポリオールとしてポリカーボネートポリオールを配合した場合には、耐湿熱性は改善されるが、特許文献1記載のポリカーボネートポリオールは分子内に水酸基を2個以下しか有していないポリカーボネートジオールであるため、架橋点が少なく、各種機械特性が不十分な硬化物しか得られないという問題があることが明らかとなった(後掲の比較例2参照)。
従って、本発明の目的は、耐熱性等の各種特性を維持しつつ、優れた耐湿熱性及び機械特性を兼ね備えた硬化物を形成することができ、特に、繊維強化複合材料用途に適した硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、耐熱性等の各種特性を維持しつつ、優れた耐湿熱性及び機械特性を兼ね備えた硬化物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸又は塗工して得られるプリプレグを提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、上記プリプレグを硬化させることにより得られる、耐湿熱性及び機械特性に優れる繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、脂環式エポキシ化合物に、分子内に2.5個以上の水酸基を有するポリカーボネートポリオールを配合した硬化性樹脂組成物とすることにより、耐熱性等の各種特性を維持しつつ、優れた耐湿熱性及び機械特性を兼ね備えた硬化物を形成することができ、特に、繊維強化複合材料用途に好適に使用することができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、脂環式エポキシ化合物(A)と、分子内に2.5個以上の水酸基を有するポリカーボネートポリオール(B)とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
【0008】
前記硬化性樹脂組成物において、ポリカーボネートポリオール(B)の含有量は、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して5~60重量部であってもよい。
前記硬化性樹脂組成物は、さらに、硬化触媒(C)を含んでいてもよい。
前記硬化性樹脂組成物は、繊維強化複合材料用樹脂組成物であってもよい。
【0009】
また、本発明は、前記硬化性樹脂組成物の硬化物を提供する。
さらに、本発明は、前記硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸又は塗工したプリプレグを提供する。
さらに、本発明は、前記プリプレグを硬化させた繊維強化複合材料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記構成を有するため、耐熱性等の各種特性を維持しつつ、優れた耐湿熱性及び機械特性を兼ね備えた硬化物を形成することができる。そのため、本発明の硬化性樹脂組成物は、自動車部品、土木建築用品、風力発電のブレード、スポーツ用品、航空機、船舶、ロボット、ケーブル材料など、特に、柔軟性、耐湿熱性等が求められる分野で使用される繊維強化複合材料の素材として好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた硬化性樹脂組成物の硬化物のプレッシャークッカー試験後の顕微鏡写真(×100)である。
図2】比較例1で得られた硬化性樹脂組成物の硬化物のプレッシャークッカー試験後の顕微鏡写真(×100)である。
図3】比較例2で得られた硬化性樹脂組成物の硬化物のプレッシャークッカー試験後の顕微鏡写真(×100)である。
図4】比較例3で得られた硬化性樹脂組成物の硬化物のプレッシャークッカー試験後の顕微鏡写真(×100)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)と、分子内に2.5個以上の水酸基を有するポリカーボネートポリオール(B)(以下、単に、「ポリカーボネートポリオール(B)」と称する場合がある)とを必須成分として含む硬化性樹脂組成物(硬化性エポキシ樹脂組成物)である。後述のように、本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに、硬化触媒(C)、硬化剤(D)、硬化促進剤(E)、酸化防止剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0013】
<脂環式エポキシ化合物(A)>
本発明の硬化性樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内(一分子中)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基(オキシラニル基)とを少なくとも有する化合物である。脂環式エポキシ化合物(A)としては、具体的には、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物、(ii)脂環に直接単結合で結合しているエポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
【0014】
上述の(i)脂環エポキシ基を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が好ましい。
【0015】
上述の(i)脂環エポキシ基を有する化合物としては、硬化物の透明性、耐熱性の観点で、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物が好ましく、特に、下記式(I)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)が好ましい。
【化1】
【0016】
上記式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。なお、式(I)におけるシクロヘキサン環(シクロヘキセンオキシド基)を構成する炭素原子の1以上には、アルキル基等の置換基が結合していてもよい。
【0017】
上記式(I)中のXが単結合である化合物としては、(3,4,3',4'-ジエポキシ)ビシクロヘキシル等が挙げられる。
【0018】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1~18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1~18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0019】
上記炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2~4のアルケニレン基である。
【0020】
上記連結基Xとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、-CO-、-O-CO-O-、-COO-、-O-、-CONH-、エポキシ化アルケニレン基;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と二価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基等が挙げられる。二価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
【0021】
上記式(I)で表される化合物の代表的な例としては、下記式(I-1)~(I-10)で表される化合物、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン等が挙げられる。なお、下記式(I-5)、(I-7)中のl、mは、それぞれ1~30の整数を表す。下記式(I-5)中のRは炭素数1~8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(I-9)、(I-10)中のn1~n6は、それぞれ1~30の整数を示す。
【化2】
【化3】
【0022】
上述の(ii)脂環に直接単結合で結合しているエポキシ基を有する化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物等が挙げられる。
【化4】
【0023】
式(II)中、R'は、構造式上、p価のアルコールからp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R'(OH)p]としては、例えば、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(炭素数1~15のアルコール等)等が挙げられる。pは1~6が好ましく、nは1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよいし、異なっていてもよい。上記式(II)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
【0024】
本発明の硬化性樹脂組成物において脂環式エポキシ化合物(A)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、脂環式エポキシ化合物(A)は、公知乃至慣用の方法により製造することもできるし、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(以上、(株)ダイセル製)等の市販品を入手することもできる。
【0025】
脂環式エポキシ化合物(A)としては、上記式(I-1)で表される化合物[3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート;例えば、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)等]が特に好ましい。
【0026】
本発明の硬化性樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、55~95重量%が好ましく、より好ましくは60~90重量%、さらに好ましくは60~85重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性がより向上したり、硬化物の耐熱性や機械強度がより向上する傾向がある。
【0027】
脂環式エポキシ化合物(A)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)とポリカーボネートポリオール(B)との総量(100重量%)に対して、60~95重量%が好ましく、より好ましくは65~90重量%、さらに好ましくは65~85重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の使用量が60重量%以上であることより、耐熱性等に優れた硬化物が得られやすくなる。一方、脂環式エポキシ化合物(A)の使用量が95重量%以下であることにより、柔軟性、耐湿熱性、機械特性等に優れた硬化物が得られやすくなる。
【0028】
<ポリカーボネートポリオール(B)>
ポリカーボネートポリオール(B)は、分子内に2.5個以上の水酸基を有するポリカーボネートである。なお、ポリカーボネートポリオール(B)における水酸基は、アルコール性水酸基でもあってもよいし、フェノール性水酸基であってもよい。
【0029】
本発明のポリカーボネートポリオール(B)に含まれる水酸基の数は、2.5個以上であれば特に限定されないが、2.6個以上が好ましく、2.7個以上がより好ましい。
本発明のポリカーボネートポリオール(B)に含まれる水酸基の数の上限は特に限定されないが、5個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。
本発明のポリカーボネートポリオール(B)に含まれる水酸基の数は、ポリカーボネートポリオール(B)の1分子中に含まれる水酸基の個数の平均値であり、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0030】
本発明のポリカーボネートポリオール(B)における「ポリカーボネート」の部分の構造は、特に限定されないが、例えば、低分子ジオールと炭酸とのエステルを含むポリカーボネートが挙げられ、また、2種以上の低分子ジオールと炭酸とのエステルからなる共重合体であってもよい。
【0031】
上記低分子ジオールとしては、炭素数1~20のアルキレンジオール類[例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2,2-ジメチルトリメチレンジオール、2-ブチル-2-メチルトリメチレンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、3-エチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、2-エチル-1,7-ヘプタンジオール、3-エチル-1,7-ヘプタンジオール、4-エチル-1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,8-オクタンジオール、3-エチル-1,8-オクタンジオール、4-エチル-1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,9-ノナンジオール、4-メチル-1,9-ノナンジオール、5-メチル-1,9-ノナンジオール、2-エチル-1,9-ノナンジオール、3-エチル-1,9-ノナンジオール、4-エチル-1,9-ノナンジオール、5-エチル-1,9-ノナンジオール等];環状基を有する低分子ジオール類[例えば、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスフェノールA等のビスフェノール類等]、分子量1,000以下のポリアルキレンエ-テルジオール[ジエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール]等が挙げられる。
【0032】
低分子ジオールとしては、下記式(2)で表されるジオールも好ましい。
【化5】
【0033】
式中、R1、R2、R3、及びR4は同一又は異なって、水素原子、又はアルキル基を示す。R1及びR2、又はR3及びR4は互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。Xは-CR56-(前記R5、及びR6は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示す)、-O-、-S-、又は-NR7-(前記R7は水素原子、アルキル基を示す)を示す。qは、0~3の整数を示す。qが2以上の場合、2個以上のXは、同一でも異なっていてもよい。
【0034】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基等の炭素数1~18(好ましくは、炭素数1~12)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基等を挙げることができる。
【0035】
5、R6におけるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~10程度(好ましくは炭素数1~6、特に好ましくは炭素数1~4)のアルコキシ基等を挙げることができる。
【0036】
1及びR2、又はR3及びR4は互いに結合して、隣接する炭素原子と共に形成される環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数3~10(好ましくは炭素数5~7)のシクロアルカンが挙げられる。
【0037】
上記低分子ジオールは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、なかでも、それぞれ置換基を有していてもよい、エチレングルコール、トリメチレンジオール、テトラメチレンジオール(1,4-ブタンジオール)、ペンタメチレンジオール(1,5-ペンタンジオール)、ジエチレングリコールの低分子ジオールを使用することが好ましく、特に、下記式で表される化合物等が好ましい。
【0038】
【化6】
【0039】
ポリカーボネートポリオール(B)を製造する方法は特に限定されないが、(1)脂肪族トリオール(例えばトリメチロールプロパンなど)等の「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」と脂肪族又は脂環式のジオール等の「水酸基数2.5個未満の低分子ポリオール」と芳香族カーボネートを用いてエステル交換反応を行なう方法(例えば、特公昭57-39650号公報)、(2)ポリカーボネートジオール等の「水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール」とトリオール化合物、テトラオール化合物等の「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」とのエステル交換反応によって得る方法(例えば、特許第3033778号公報)、(3)「分子内に2.5個以上の水酸基を有する低分子ポリオール」を開始剤として上記の低分子ジオールの環状カーボネートを開環重合する方法等が挙げられる。
なお、低分子ポリオールに含まれる水酸基の数は、低分子ポリオールの1分子中に含まれる水酸基の個数の平均値であり、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0040】
以下に、上記(2)及び(3)の方法について説明するが、本発明はこれに限定されず、ポリカーボネートポリオールの分子内に2.5個以上の水酸基を導入できる限り限定されない。
【0041】
本発明のポリカーボネートポリオール(B)の製造方法の1の態様は、上記(2)の製造方法(以下、「本発明の製造方法(2)」と称する場合がある。)、即ち、触媒の存在下又は非存在下、「水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール」と、トリオール化合物、テトラオール化合物等の「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」とのエステル交換反応によって製造することができる。
本発明の製造方法(2)で得られるポリカーボネートポリオール(B)の水酸基の数、及びポリカーボネート鎖の重合度は、「水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール」と「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」との使用割合を調整することにより、容易に調整することができる。
【0042】
(水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール)
本発明の製造方法(2)で使用される「水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール」としては、特に限定されないが、例えば、公知の方法(ホスゲン法、クロロホーメート法、脂肪族及び芳香族カーボネートを使用したエステル交換法)により上記の低分子ジオール等の「水酸基数2.5個未満の低分子ポリオール」から得ることができる。上記「水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール」は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
(水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール)
本発明の製造方法(2)で使用される「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」としては、水酸基を2.5個以上有する有機化合物である限り特に限定されるものではないが、炭素数3~12個、好ましくは炭素数3~6個の炭化水素に2.5個以上の水酸基が置換した化合物が挙げられる。
「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」の具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン(2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール)、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール;ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジグリセリン等のテトラオール;ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリトリメチロールプロパン、トリトリメチロールエタン、トリペンタエリスリトール等の5個以上の水酸基を有するポリオール等が挙げられ、これら低分子ポリオールを開始剤としてε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるもの等も使用可能である。上記「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化後の架橋密度の観点から好ましいものは、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールであり、特に好ましいものはグリセリン、トリメチロールプロパンである。
【0044】
前記「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」の使用量としては、特に限定されないが、前記「水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール」100モルに対して、例えば0.1~100モル、好ましくは0.5~100モル、特に好ましくは1~100モルである。「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」と「水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール」のモル比をコントロールすることにより、得られるポリカーボネートポリオール(B)の水酸基数、及び分子量を調整することが可能である。
【0045】
(触媒)
本発明の製造方法(2)のエステル交換反応は、触媒の非存在下で行うこともできるが、エステル交換反応を促進させるために触媒の存在下で行ってもよい。
本発明の製造方法(2)に使用される触媒としては、エステル交換反応を促進させることが可能である限り、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルピジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ヒ素およびセリウムのような金属ならびにこれらのアルコキシドが挙げられる。別の好適な触媒の例としては、アルカリおよびアルカリ土類金属の炭酸塩、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、ケイ酸鉛、ヒ酸鉛、炭酸鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、三酸化セリウム、およびアルミニウムイソプロポキシド等も挙げられる。上記触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
特に有用で好ましい触媒としては、有機酸のマグネシウム、カルシウム、セリウム、バリウム、亜鉛、スズ、チタンなどの金属塩のような有機金属化合物が挙げられる。
【0046】
本発明の製造方法(2)における触媒の使用量としては、特に限定されないが、出発原料の総重量の0.0001~1.0重量%が好ましく、より好ましくは0.001~0.2重量%である。触媒を上記範囲で使用すると、優れた触媒活性を発揮することができ、分子量分布の狭いポリカーボネートポリオール(B)を効率よく製造することができる。触媒の使用量が上記範囲を上回ると、得られるポリカーボネートポリオール(B)の色相が悪化する傾向がある。一方、触媒の使用量が上記範囲を下回ると、十分な触媒活性が得られ難くなる傾向がある。また、得られるポリカーボネートポリオール(B)の色相が悪化したり、低分子量のポリカーボネートポリオール(B)の混入割合が増加し、分子量分布が広くなる傾向がある。
【0047】
本発明の製造方法(2)における反応温度は、特に限定されないが、例えば、150℃~240℃の範囲から適宜選択することができる。反応温度が150℃未満であるとエステル交換に長時間かかり不効率であり、また、240℃を超えると副反応物(エーテル化合物等)が生成物中に生じ好ましくない。
また、本発明の製造方法(2)における反応時間は、特に限定されないが、例えば、5~15時間の範囲から適宜選択することができ、反応温度が高い場合は短めに、反応温度が低い場合は長めに調整することが好ましい。更に、反応圧力は例えば0.7~1.3気圧、好ましくは0.8~1.2気圧、特に好ましくは0.9~1.1気圧であり、常圧下(1気圧下)で行うことが最も好ましい。
【0048】
また、本発明の製造方法(2)における反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0049】
本発明の製造方法(2)では、エステル交換反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法で行うこともできる。反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィー等の分離精製手段やこれらを組み合わせた手段により分離精製できる。
【0050】
本発明の製造方法(2)で製造されるポリカーボネートポリオール(B)の分子量は、原料の「水酸基数2.5個未満のポリカーボネートポリオール」と、「水酸基数2.5個以上の低分子ポリオール」との反応モル比で調節することができる。
【0051】
本発明のポリカーボネートポリオール(B)の製造方法の他の1の態様は、上記(3)の製造方法(以下、「本発明の製造方法(3)」と称する場合がある。)、即ち、触媒の存在下又は非存在下、「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」を開始剤として、環状カーボネートを開環重合することによって製造することができる。
本発明の製造方法(3)により製造される本発明のポリカーボネートポリオール(B)は、「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」の各水酸基にポリカーボネート鎖を伸長させたオリゴマー構造を有しており、ポリカーボネートポリオール(B)の水酸基の数やポリカーボネート鎖の重合度を調整することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物の機械特性などの各種機能を調整することができるという利点がある。
なお、本発明の製造方法(3)により製造されるポリカーボネートポリオール(B)の水酸基の数は、開始剤としての低分子ポリオールの水酸基の数と同じになる。また、ポリカーボネート鎖の重合度は、環状カーボネートと、開始剤としての低分子ポリオールとの使用割合を調整することにより、容易に調整することができる。
【0052】
(環状カーボネート)
本発明の製造方法(3)における環状カーボネートとしては、上記の低分子ジオールの2つの水酸基が分子内でカーボネート結合した環状化合物である限り、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0053】
【化7】
【0054】
式中、R1、R2、R3、R4、X及びqは、上記式(2)における各記号と同義である。
上記環状カーボネートは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、なかでも、それぞれ置換基を有していてもよい、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ペンタメチレンカーボネート、ジエチレングリコールの環状カーボネートを使用することが好ましく、特に、下記式で表される化合物等が好ましい。
【0055】
【化8】
【0056】
本発明の製造方法(3)では、上記環状カーボネートと共に、環状カーボネートと共重合可能な他の重合性モノマー(例えば、ラクチド、グリコリド、ε-カプロラクトン等の環状エステル等)を開環重合に付してもよい。その場合は、環状カーボネート由来の構成単位と他のモノマー由来の構成単位を有する共重合体が得られる。尚、開環重合に付す全重合性モノマーにおける環状カーボネートの割合は、例えば50重量%以上である。
【0057】
本発明の製造方法(3)に使用される環状カーボネートが不斉炭素を有する場合、光学活性体であっても、ラセミ体であってもよく、また、光学活性体の任意の割合の混合物であってもよい。また、不斉炭素が2以上存在する場合は、光学活性体であっても、ジアステレオマーの混合物であってもよい。
【0058】
(開始剤)
本発明の製造方法(3)では、開始剤として、「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」が使用される。「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」を開始剤として使用することにより、ポリカーボネートポリオール(B)の分子内に2.5個以上の水酸基を導入できると同時に、開環重合反応が緩和な条件で進行し、さらに重合反応が制御され、分子量分布の狭いポリカーボネートポリオール(B)が得られる。
【0059】
本発明の製造方法(3)で使用される「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」としては、水酸基を2.5個以上有する有機化合物である限り特に限定されるものではないが、炭素数3~12個、好ましくは炭素数3~6個の炭化水素に2.5個以上の水酸基が置換した化合物が挙げられる。
「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」の具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン(2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール)、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール;ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジグリセリン等のテトラオール;ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリトリメチロールプロパン、トリトリメチロールエタン、トリペンタエリスリトール等の5個以上の水酸基を有するポリオール等が挙げられ、これら低分子ポリオールを開始剤としてε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるもの等も使用可能である。上記「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化後の架橋密度の観点から好ましいものは、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールであり、特に好ましいものはグリセリン、トリメチロールプロパンである。
【0060】
本発明の製造方法(3)において、前記「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」の使用量としては、特に限定されないが、環状カーボネート100モルに対して、例えば0.1~100モル、好ましくは0.5~100モル、特に好ましくは1~100モルである。環状カーボネートと「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」のモル比をコントロールすることにより得られるポリカーボネートポリオール(B)の分子量を調整することが可能である。
【0061】
(触媒)
本発明の製造方法(3)は、触媒の非存在下で行うこともできるが、環状カーボネートの開環重合を促進させるために触媒の存在下で行ってもよい。本発明の製造方法に使用される触媒は、環状カーボネートの開環重合を促進させることが可能である限り、特に限定されないが、例えば、硫酸、p-トルエンスルホン酸等の強酸、メチルトリフラート、フルオロホウ酸トリエチルオキソニウム、ハロゲン化スズ、塩化ブチルスズ(BuSnCl3、Bu2SnCl2、Bu3SnCl等)、ナトリウムエトキシド、2-エチルヘキサン酸スズ、酢酸亜鉛、リパーゼ、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等の有機塩基などを使用可能である。上記触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
特に、温和な条件下で効率よく開環重合が進行し、副反応が抑制され、低分子量成分の混入割合が低く、分子量分布が狭いポリカーボネートポリオール(B)が得られやすいため、触媒の非存在下で重合を行うことができる。
【0062】
本発明の製造方法(3)における触媒としての有機塩基としては、分子内に活性水素を有しない第3級アミン化合物が好ましい。
【0063】
上記分子内に活性水素を有しない第3級アミン化合物としては、具体的には、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、フォスファゼン塩基、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられ、これらのうち、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)が好ましい。
【0064】
本発明の製造方法(3)において、触媒の使用量としては、特に限定されないが、触媒として有機塩基を使用する場合は、環状カーボネートと「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」の合計量100モルに対して、例えば0.001~0.10モル、好ましくは0.002~0.050モル、特に好ましくは0.002~0.020モル、最も好ましくは0.005~0.015モルである。有機塩基を触媒として、上記範囲で使用すると、優れた触媒活性を発揮することができ、分子量分布の狭いポリカーボネートポリオール(B)を効率よく製造することができる。有機塩基の使用量が上記範囲を上回ると、得られるポリカーボネートポリオール(B)の色相が悪化する傾向がある。一方、有機塩基の使用量が上記範囲を下回ると、十分な触媒活性が得られ難くなる傾向がある。また、得られるポリカーボネートポリオール(B)の色相が悪化したり、低分子量のポリカーボネートポリオール(B)の混入割合が増加し、分子量分布が広くなる傾向がある。
【0065】
本発明の製造方法(3)における反応温度は、例えば、30~220℃、好ましくは75~200℃、特に好ましくは80~180℃である。反応温度が低すぎると、反応速度が遅くなる傾向がある。一方、反応温度が高すぎると、カーボネート交換反応、脱炭酸による着色や生じた重合体の分解反応が進行するため、色相が良好であり、分子量分布の狭いポリカーボネートポリオール(B)を得ることは困難となる傾向がある。
【0066】
また、本発明の製造方法(3)における反応時間は、例えば0.5~60時間、好ましくは1~50時間であり、前記範囲内において、反応温度が高い場合は短めに、反応温度が低い場合は長めに調整することが好ましい。更に反応圧力は例えば0.7~1.3気圧、好ましくは0.8~1.2気圧、特に好ましくは0.9~1.1気圧であり、常圧下(1気圧下)で行うことが最も好ましい。
【0067】
また、本発明の製造方法(3)における反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0068】
本発明の製造方法(3)では、塊状重合、溶液重合、及び懸濁重合の何れの重合方法も採用することができる。
【0069】
前記溶液重合の際に使用する溶剤としては、比較点沸点が高く且つ反応に不活性な溶媒を使用することが好ましく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を使用することが好ましい。溶媒は実質的に無水のものが望ましい。
【0070】
本発明の製造方法(3)では、開環重合反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法で行うこともできる。反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィー等の分離精製手段やこれらを組み合わせた手段により分離精製できる。
【0071】
本発明の製造方法(3)により得られるポリカーボネートポリオール(B)は、好ましくは開始剤としての「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」に対し1分子以上の環状カーボネートが開環重合して得られる化合物であり、1分子の環状カーボネートが開環重合して得られるポリカーボネートポリオール(B)、1分子を超え10分子以下の環状カーボネートが開環重合して得られるポリカーボネートポリオール(B)のオリゴマー、及び10分子を超える環状カーボネートが開環重合して得られるポリカーボネートポリオール(B)のポリマーが含まれる。ポリカーボネートポリオール(B)は、環状カーボネート由来の構成単位をポリカーボネートポリオール(B)全量の50モル%以上含有する。前記ポリカーボネートポリオール(B)には、環状カーボネート由来の構成単位以外にも環状カーボネートと共重合可能な他のモノマー由来の構成単位を含有していてもよい。
【0072】
ポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量は、特に限定されないが、200~10000が好ましく、より好ましくは300~5000、さらに好ましくは400~4000である。数平均分子量が200未満では、低弾性率化、曲げ強度などの機械特性の向上の効果が得られにくい場合がある。一方、数平均分子量が10000を超えると、常温(25℃)で液状ではなくなる場合があり、取り扱いにくくなる場合がある。なお、上記数平均分子量は、ポリカーボネートポリオールの水酸基価を用いて、下式より算出することができる。
[数平均分子量]= 56.11 × n/[水酸基価] × 1000
但し、nは1分子のポリカーボネートポリオールに含まれる水酸基の数を表し、例えば、水酸基を3個有するポリカーボネートトリオールの場合には、n=3として数平均分子量を算出する。
例えば、本発明の製造方法(3)で製造されるポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量は、環状カーボネートに対する「分子内に水酸基を2.5個以上有する低分子ポリオール」の割合を調整することにより、制御することができる。
【0073】
本発明のポリカーボネートポリオール(B)は、低分子量成分の混入割合が低い。そのため、分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が狭く、例えば1.8以下、好ましくは1.7以下、特に好ましくは1.6以下、最も好ましくは1.5以下である。そのため、例えば、繊維強化複合材料等の原料として使用した場合に、最終製品にブリードアウトやブルーミング(低分子量成分のしみだし)が発生することを抑制することができる。
【0074】
ポリカーボネートポリオール(B)のカーボネート結合は熱分解を受けにくいため、ポリカーボネートポリオールを含む樹脂硬化物は高温高湿下でも優れた耐湿熱性を示す。なお、ポリカーボネートポリオール(B)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリカーボネートポリオール(B)としては、プラクセルCD305((株)ダイセル製)などの市販品を用いることもできる。
【0075】
ポリカーボネートポリオール(B)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、上記脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、5~60重量部が好ましく、より好ましくは15~45重量部、さらに好ましくは25~35重量部である。ポリカーボネートポリオール(B)の配合量が60重量部を超えると、硬化物のTgが低下し過ぎて、加熱による体積変化が大きくなり、繊維強化複合材料の耐熱性低下、強度低下等の不具合が起こる場合がある。また、曲げ伸度等の機械特性は向上するが透明性が低下する場合がある。ポリカーボネートポリオール(B)の配合量が5重量部未満であると、硬化物の柔軟性が低下し、繊維強化複合材料とした場合において繊維材料からの剥離やクラックが発生する場合がある。
【0076】
ポリカーボネートポリオール(B)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、上記本発明の硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、4~40重量%が好ましく、より好ましくは4~30重量%、さらに好ましくは15~25重量%である。ポリカーボネートポリオール(B)の配合量が40重量%を超えると、硬化物のTgが低下し過ぎて、加熱による体積変化が大きくなり、繊維強化複合材料の耐熱性低下、強度低下等の不具合が起こる場合がある。また、曲げ伸度等の機械特性は向上するが透明性が低下する場合がある。ポリカーボネートポリオール(B)の配合量が4重量%未満であると、硬化物の柔軟性が低下し、繊維強化複合材料とした場合において繊維材料からの剥離やクラックが発生する場合がある。
【0077】
<硬化触媒(C)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化触媒(C)を含んでいてもよい。硬化触媒(C)としては、紫外線照射又は加熱処理を施すことによりカチオン種を発生して、重合を開始させるカチオン触媒を用いることができる。なお、硬化触媒(C)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
紫外線照射によりカチオン種を発生するカチオン触媒としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩などを挙げることができ、UVACURE1590(ダイセル・サイテック(株)製)、CD-1010、CD-1011、CD-1012(米国サートマー製)、イルガキュア264(チバ・ジャパン(株)製)、CIT-1682(日本曹達(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。
【0079】
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン触媒としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体などを挙げることができ、PP-33、CP-66、CP-77((株)ADEKA製)、FC-509(スリーエム製)、UVE1014(G.E.製)、サンエイド SI-60L、サンエイド SI-80L、サンエイド SI-100L、サンエイド SI-110L(三新化学工業(株)製)、CG-24-61(チバ・ジャパン(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物であってもよい。
【0080】
硬化触媒(C)の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.01~15重量部が好ましく、より好ましくは0.01~12重量部、さらに好ましくは0.05~10重量部、特に好ましくは0.1~10重量部である。硬化触媒(C)をこの範囲内で使用することにより、耐熱性、耐光性、透明性に優れた硬化物を得ることができる。
【0081】
<硬化剤(D)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤(D)を含んでいてもよい。硬化剤(D)は、エポキシ基を有する化合物を硬化させる働きを有する。本発明における硬化剤(D)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができる。硬化剤(D)としては、中でも、25℃で液状の酸無水物が好ましく、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などを挙げることができる。また、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの常温(約25℃)で固体状の酸無水物は、常温(約25℃)で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、本発明の硬化性樹脂組成物における硬化剤(D)として使用することができる。なお、硬化剤(D)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
また、本発明においては、硬化剤(D)として、リカシッド MH-700(新日本理化(株)製)、HN-5500(日立化成工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0083】
硬化剤(D)の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、50~200重量部が好ましく、より好ましくは100~145重量部である。より具体的には、上記硬化性樹脂組成物中に含有する全てのエポキシ基を有する化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.5~1.5当量となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(D)の使用量が50重量部を下回ると、硬化が不十分となり、硬化物の強靱性が低下する傾向があり、一方、硬化剤(D)の使用量が200重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0084】
<硬化促進剤(E)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(E)を含んでいてもよい。硬化促進剤(E)は、エポキシ基を有する化合物が硬化剤により硬化する際に、硬化速度を促進する機能を有する化合物である。特に硬化剤(D)と併用することが多い。硬化促進剤(E)としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用することができ、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、及びその塩(例えば、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、ヨードニウム塩);ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール;リン酸エステル、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p-トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛などの有機金属塩;金属キレートなどが挙げられる。上記硬化促進剤(E)は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0085】
また、本発明においては、硬化促進剤(E)として、U-CAT SA 506、U-CAT SA 102、U-CAT 5003、U-CAT 410、U-CAT 18X、12XD(開発品)(いずれもサンアプロ(株)製)、TPP-K、TPP-MK(いずれも北興化学工業(株)製)、PX-4ET(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0086】
硬化促進剤(E)の含有量としては、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.05~5重量部が好ましく、より好ましくは0.1~3重量部、さらに好ましくは0.2~3重量部、特に好ましくは0.25~2.5重量部である。硬化促進剤(E)の使用量が0.05重量部を下回ると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤(E)の使用量が5重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0087】
<酸化防止剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤を含むことにより、いっそう耐熱性(特に、耐黄変性)に優れた硬化物を製造することが可能となる。酸化防止剤としては、公知乃至慣用の酸化防止剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤(フェノール系化合物)、ヒンダードアミン系酸化防止剤(ヒンダードアミン系化合物)、リン系酸化防止剤(リン系化合物)、イオウ系酸化防止剤(イオウ系化合物)等が挙げられる。
【0088】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-p-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のビスフェノール類;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類等が挙げられる。
【0089】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0090】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2、4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2-t-ブチル-6-メチル-4-{2-(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
【0091】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ドデカンチオール、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物において酸化防止剤は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、酸化防止剤は、公知乃至慣用の方法により製造することもできるし、例えば、商品名「Irganox1010」(BASF製、フェノール系酸化防止剤)、商品名「AO-60」、「AO-80」((株)ADEKA製、フェノール系酸化防止剤)、商品名「Irgafos168」(BASF製、リン系酸化防止剤)、商品名「アデカスタブHP-10」、「アデカスタブPEP-36」((株)ADEKA製、リン系酸化防止剤)、商品名「HCA」(三光(株)製、リン系酸化防止剤)等の市販品を使用することもできる。
【0093】
本発明の硬化性樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、本発明の硬化性樹脂組成物における酸化防止剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、より好ましくは0.5~3重量部である。酸化防止剤の含有量を0.1重量部以上とすることにより、硬化物の酸化が効率的に防止され、耐熱性、耐黄変性がより向上する傾向がある。一方、酸化防止剤の含有量を5重量部以下とすることにより、着色が抑制され、色相がより良好な硬化物が得られやすい傾向がある。
【0094】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記以外にも、例えば、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、界面活性剤、無機充填剤(シリカ、アルミナ等)、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、蛍光体、離型剤などの慣用の添加剤;熱可塑性樹脂;熱硬化性樹脂などのその他の成分を含んでいてもよい。これら成分(その他の成分)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、10重量%以下(例えば、0~10重量%)が好ましく、より好ましくは5重量%以下である。
【0095】
本発明の硬化性樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)とポリカーボネートポリオール(B)とを少なくとも含んでいればよく、その製造方法(調製方法)は特に限定されない。具体的には、例えば、硬化性樹脂組成物を構成する各成分を所定の割合で攪拌・混合することにより調製することができる。なお、各成分の攪拌・混合には公知の装置、例えば、自転公転型ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ディソルバーなどを使用できる。上記攪拌・混合は、必要に応じて、加熱しながら実施することもできる。
【0096】
<硬化物>
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物(樹脂硬化物)を得ることができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱により硬化させることができる熱硬化性樹脂組成物であってもよく、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などの活性エネルギー線の照射により硬化させることができる光硬化性樹脂組成物であってもよい。
【0097】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させる際の条件は、特に限定されないが、例えば、加熱により硬化させる場合、加熱温度(硬化温度)を20~250℃(より好ましくは40~200℃)とし、加熱時間(硬化時間)を0.1~480分間(より好ましくは10~240分間、さらに好ましくは30~180分間)とすることが好ましい。加熱は、一定温度で行ってもよいし、段階的に(例えば、2段階で)昇温させて行ってもよい。加熱温度が低すぎる場合や加熱時間が短すぎる場合には、硬化が不十分となり硬化物の耐熱性や機械物性などが低下する場合がある。一方、加熱温度が高すぎる場合や加熱時間が長すぎる場合には、硬化性樹脂組成物中の成分の分解や劣化などが生じる場合がある。
【0098】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)のガラス転移温度は、特に限定されないが、80℃以上(例えば、80~250℃)が好ましく、より好ましくは90℃以上である。ガラス転移温度が80℃未満であると、用途によっては、硬化物や繊維強化複合材料の耐熱性が不十分となる場合がある。なお、硬化物のガラス転移温度は、例えば、熱機械分析(TMA)や、粘弾性スペクトロメータ(DMS)などにより測定することができる。
【0099】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)のガラス転移温度以下における線膨張係数(α1)、ガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)は、特に限定されないが、α1は、例えば40~150ppm/℃であり、好ましくは40~120ppm/℃である。ま た、α2は、例えば90~200ppm/℃であり、好ましくは90~190ppm/℃である。 なお、硬化物の線膨張係数α1、α2は、TMA等により測定できる。
【0100】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)の曲げ強度は、特に限定されないが、60MPa以上(例えば、60~500MPa)が好ましく、より好ましくは90MPa以上である。また、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)の曲げ弾性率は、特に限定されないが、2000MPa以上(例えば、2000~8000MPa)が好ましく、より好ましくは2300MPa以上である。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)の曲げ伸度は、特に限定されないが、2.0%以上(例えば、2.0~20%)が好ましく、より好ましくは2.5%以上である。
【0101】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)のプレッシャークッカー試験(121℃、2atm、100%RH、48時間)後の曲げ強度は、特に限定されないが、40MPa以上(例えば、40~100MPa)が好ましく、より好ましくは50MPa以上である。また、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)のプレッシャークッカー試験(121℃、2atm、100%RH、48時間)後の曲げ弾性率は、特に限定されないが、1500MPa以上(例えば、1500~2000MPa)が好ましく、より好ましくは1800MPa以上である。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)のプレッシャークッカー試験(121℃、2atm、100%RH、48時間)後の曲げ伸度は、特に限定されないが、2.0%以上(例えば、2.0~20%)が好ましく、より好ましくは2.5%以上である。
なお、上記硬化物の曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ伸度は、例えば、JIS K6911に準拠して(例えば、曲げ速度1mm/分の条件で)、測定することができる。
【0102】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物(例えば、80℃で1時間の後、150℃で1時間の条件で硬化させることにより得られる硬化物)のプレッシャークッカー試験(121℃、2atm、100%RH、48時間)後の吸水率は、特に限定されないが、7.0%以下が好ましく、より好ましくは6.0%以下である。なお、上記硬化物の吸水率は、例えば、JIS K6911に準拠して測定することができる。
【0103】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、優れた柔軟性、耐湿熱性及び機械特性を有する。特に、上記硬化物は、ポリカーボネートポリオール(B)の代わりに、ポリエステルポリオールを含む樹脂組成物(即ち、エポキシ化合物(A)、及びポリエステルポリオールを含む樹脂組成物)を硬化させて得られる硬化物と比較して、非常に優れた耐湿熱性を有する。これは、ポリエステルポリオールのエステル結合が加水分解を受けやすいのに対して、ポリカーボネートポリオール(B)を構成するカーボネート結合は加水分解を受けにくいことによるものと推測される。
また、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、ポリカーボネートポリオール(B)の代わりに、ポリポリカーボネートジオールを含む樹脂組成物(即ち、エポキシ化合物(A)、及びポリポリカーボネートジオールを含む樹脂組成物)を硬化させて得られる硬化物と比較して、非常に優れた機械特性(曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ伸度等)を有する。これは、ポリカーボネートポリオール(B)を使用することにより、架橋点が増えて、立体的に架橋された3次元構造が形成されることによるものと推測される。
【0104】
<繊維強化複合材料>
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化させることにより柔軟性、耐湿熱性、及び機械特性に優れる硬化物を形成できるため、特に、該硬化物と強化繊維との複合材料(繊維強化複合材料)を形成するための樹脂組成物(繊維強化複合材料用樹脂組成物)として好ましく使用できる。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物を強化繊維に塗工又は含浸して得られるプリプレグ(「本発明のプリプレグ」と称する場合がある)を硬化させることによって、繊維強化複合材料(「本発明の繊維強化複合材料」と称する場合がある)を得ることができる。本発明の繊維強化複合材料は、上記構成を有することにより、柔軟性、耐湿熱性、及び機械特性に優れる。
【0105】
上記強化繊維としては、公知乃至慣用の強化繊維を使用することができ、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、高強度ポリエチレン繊維、タングステンカーバイド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維(PBO繊維)などが挙げられる。上記炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維などが挙げられる。中でも、機械物性(強靭性等)の観点で、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましい。なお、上記強化繊維は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0106】
上記強化繊維の形態は、特に限定されず、例えば、フィラメント(長繊維)の形態、トウの形態、トウを一方向に配列させた一方向材の形態、織物の形態、不織布の形態などが挙げられる。強化繊維の織物としては、例えば、平織、綾織、朱子織、若しくはノンクリンプファブリックに代表される繊維束を一方向に引き揃えたシートや角度を変えて積層したようなシートをほぐれないようにステッチしたステッチングシートなどが挙げられる。
【0107】
本発明のプリプレグにおける強化繊維の含有量は、特に限定されず、適宜調整可能である。
【0108】
本発明の硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸又は塗工する方法は特に限定されず、公知乃至慣用のプリプレグの製造方法における含浸又は塗工の方法により実施することができる。
【0109】
なお、本発明のプリプレグは、本発明の硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸又は塗工した後、さらに、加熱や活性エネルギー線照射などを行って、硬化性樹脂組成物中の硬化性化合物(特に、脂環式エポキシ化合物(A)、ポリカーボネートポリオール(B))の一部を硬化(即ち、半硬化)させたものであってもよい。
【0110】
本発明の繊維強化複合材料は、上述のように、本発明のプリプレグを硬化させることにより得ることができ、その製造方法は特に限定されないが、公知乃至慣用の方法、例えば、ハンドレイアップ法、プリプレグ法、RTM法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法、スプレーアップ法、引抜成形法などによって製造できる。
【0111】
本発明の繊維強化複合材料は、各種の構造物の材料として使用することができ、特に限定されないが、例えば、航空機の胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドアなど;宇宙機のモーターケース、主翼など;人工衛星の構体;自動車のシャシーなどの自動車部品;鉄道車両の構体;自転車の構体;船舶の構体;風力発電のブレード;圧力容器;釣り竿;テニスラケット;ゴルフシャフト;ロボットアーム;ケーブル(例えば、ケーブルの芯材など)などの構造物の材料として好ましく使用することができる。
【0112】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、その硬化物が柔軟性、耐湿熱性、機械特性に優れるので、繊維強化複合材料以外の用途、例えば、接着剤、構造材、コーティング剤、封止剤、透明材料、光学材料、電子材料などの多種多様な用途にも使用可能である。
【実施例
【0113】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0114】
実施例1
表1に示すように、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製)100重量部、ポリカーボネートトリオール(商品名「プラクセルCD305」、(株)ダイセル製)30重量部、酸化防止剤(商品名「アデカスタブPEP-36」、(株)ADEKA製)0.5重量部、及び熱カチオン重合開始剤(商品名「サンエイドSI-100L」、三新化学工業(株)製)1重量部を、自転公転型ミキサー(商品名「あわとり練太郎」、(株)シンキー製)を用いて、室温で5分間攪拌しながら混合することによって配合し、硬化性樹脂組成物を調製した。
次に、上記で得た硬化性樹脂組成物を、成形型(厚さ4mm及び3mmの注型用型枠)に入れ、その後、80℃で1時間加熱後、150℃でさらに1時間加熱し、厚さ4mm及び3mmの硬化物(樹脂硬化物)を調製した。
【0115】
比較例1
ポリカーボネートトリオールの代わりにポリエステルトリオール(商品名「プラクセル305」、(株)ダイセル製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物及び硬化物を調製した。
【0116】
比較例2
ポリカーボネートトリオールの代わりにポリカーボネートジオール(商品名「プラクセルCD205PL」、(株)ダイセル製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物及び硬化物を調製した。
【0117】
比較例3
ポリカーボネートトリオールの代わりにポリエステルジオール(商品名「プラクセル205」、(株)ダイセル製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物及び硬化物を調製した。
【0118】
[評価]
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物及び硬化物について、下記の評価を実施した。
【0119】
(1)機械特性試験(曲げ弾性率、曲げ強度、曲げ伸度(曲げ歪み))
実施例及び比較例で得られた硬化物(厚さ4mm)を加工し、厚み4mm×幅10mm×長さ80mmのサイズの試験片を作製した。上記試験片について、JIS K6911に準じて、テンシロン万能試験機((株)オリエンテック製)を使用して、エッジスパン:67mm、曲げ速度2mm/分の条件で、3点曲げ試験を行うことにより、硬化物の曲げ弾性率、曲げ強度、及び曲げ伸度(曲げ歪み)を測定した。結果をそれぞれ、表1の「機械特性」の「曲げ弾性率」、「曲げ強度」、「曲げ伸度」の欄に示す。
【0120】
(2)耐湿熱性試験
実施例及び比較例で得られた硬化物(厚さ3mm)を加工し、厚み3mm×幅30mm×長さ50mmのサイズの試験片を作製した。上記試験片について、プレッシャークッカー試験装置(エスペック(株)製)を用いて、121℃、2atm、100%RHの条件で48時間、プレッシャークッカー処理を行った。プレッシャークッカー試験後の試験片について、上記機械特性試験と同様に硬化物の曲げ弾性率、曲げ強度、及び曲げ伸度(曲げ歪み)を測定した。結果をそれぞれ、表1の「耐湿熱性(プレッシャークッカー試験後」の「曲げ弾性率」、「曲げ強度」、「曲げ伸度」の欄に示す。
また、プレッシャークッカー試験後の試験片の吸水率を、JIS K6911に準拠して測定した。結果を表1の「耐湿熱性(プレッシャークッカー試験後」の「吸水率」の欄に示す。
また、プレッシャークッカー試験後の試験片について、マイクロスコープで100倍に拡大して、写真を撮影した。実施例1、比較例1~3の写真を図1~4に示す。図1~4の写真において、シェルクラックが認められた箇所を○で囲んだ。
また、192mm2あたりのシェルクラックの平均個数が1個未満であれば○、1個以上であれば×と評価した。結果を表1の「耐湿熱性(プレッシャークッカー試験後」の「シェルクラック評価」の欄に示す。
【0121】
(3)透過性試験
実施例及び比較例で得られた硬化物(厚さ3mm)を加工し、厚み3mm×幅30mm×長さ50mmのサイズの試験片を作製し、分光光度計(島津製作所製、UV-2450)を用いて400nm、450nm、550nmの光線透過率を測定した。結果を表1の「透過率」の「透過率(400nm)」、「透過率(450nm)」、「透過率(550nm)」の欄に示す。
【0122】
(4)耐熱性試験
実施例及び比較例で得られた硬化物(厚さ4mm)より、高さ10mm、断面積20mm2のサイズの試験片を切り出し、熱機械測定装置(TMA)(セイコーインスツルメント(株)製)を用いて上記試験片のガラス転移温度(Tg、単位:℃)、ガラス転移温度以下における線膨張係数(α1)、ガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)(単位:ppm/℃)を測定した。結果を表1の「耐熱性(TMA)」「Tg(TMA)」、「α1」、「α2」の欄に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1に示すように、ポリカーボネートトリオールを配合した実施例1で得られた硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、優れた機械特性や柔軟性を示し、特に、プレッシャークッカー試験後においても大幅に劣化することなく、シェルクラックの発生は認められなかった。
ポリエステルトリオールを配合した比較例1で得られた硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、優れた機械特性や柔軟性を示すものの、プレッシャークッカー試験後においては、機械特性や柔軟性が大幅に低下し、シェルクラックの発生が認められた。
ポリカーボネートジオールを配合した比較例2で得られた硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、機械特性が実施例1よりも劣り、プレッシャークッカー試験後においてはシェルクラックの発生は認められた。
ポリエステルジオールを配合した比較例3で得られた硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、機械特性が実施例1よりも劣り、プレッシャークッカー試験後においては、機械特性や柔軟性が大幅に低下し、シェルクラックの発生が認められた。
【0125】
なお、実施例、比較例で使用した成分は、以下の通りである。
[脂環式エポキシ化合物]
セロキサイド2021P:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(株)ダイセル製
[ポリオール]
プラクセルCD305:ポリカーボネートトリオール、水酸基数:2.7個(平均値)、(株)ダイセル製
プラクセル305:ポリエステルトリオール、水酸基数:3個、(株)ダイセル製
プラクセルCD205PL:ポリカーボネートジオール、水酸基数:2個、(株)ダイセル製
プラクセル205:ポリエステルジオール、水酸基数:2個、(株)ダイセル製
[酸化防止剤]
アデカスタブ PEP-36:リン系酸化防止剤、(株)ADEKA製
[熱カチオン重合開始剤]
サンエイド SI-100L:アリールスルホニウム塩、三新化学工業(株)製
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化させることに柔軟性、耐湿熱性、及び機械特性に優れる硬化物を形成できるため、特に、該硬化物と強化繊維との複合材料(繊維強化複合材料)を形成するための樹脂組成物(繊維強化複合材料用樹脂組成物)として好ましく使用できる。本発明の繊維強化複合材料は、各種の構造物の材料として使用することができ、例えば、航空機の胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドアなど;宇宙機のモーターケース、主翼など;人工衛星の構体;自動車のシャシーなどの自動車部品;鉄道車両の構体;自転車の構体;船舶の構体;風力発電のブレード;圧力容器;釣り竿;テニスラケット;ゴルフシャフト;ロボットアーム;ケーブル(例えば、ケーブルの芯材など)などの構造物の材料として好ましく使用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 シェルクラック
図1
図2
図3
図4