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  • 特許-防護服及び保護体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】防護服及び保護体
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/015 20060101AFI20231116BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20231116BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20231116BHJP
   B32B 15/14 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A41D13/015
A41D31/02 B
A41D31/04 Z
B32B15/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018020082
(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2019137930
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】斧田 安弘
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-71296(JP,U)
【文献】実開平1-158126(JP,U)
【文献】特開2012-82552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00-13/12
A41D 31/00-31/32
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表カバー部及び裏カバー部からなる被服体と、前記表カバー部と前記裏カバー部との間に挿入される保護体とを備え、該保護体が複数枚の織物及び複数枚の金属箔から構成され、これら織物及び金属箔がその厚さ方向に交互に積層され、前記織物は目付が100g/m2~150g/m2の範囲にある高密度織物であり、前記金属箔は厚さが25μm~35μmの範囲にあるアルミニウムであり、
前記織物及び前記金属箔がそれぞれ他の部材と接合する部位である接合部を有し、これら全ての接合部が折り返された状態でテープにより互いに固定されていることを特徴とする防護服。
【請求項2】
前記織物及び前記金属箔がその周縁部の一部で互いに接合される一方で他の部位では互いに接合されていない状態にあることを特徴とする請求項1に記載の防護服。
【請求項3】
前記織物がポリエステル繊維から構成され、前記金属箔がアルミニウムから構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の防護服。
【請求項4】
防護服に用いられる保護体であって、複数枚の織物及び複数枚の金属箔から構成され、これら織物及び金属箔がその厚さ方向に交互に積層され、前記織物は目付が100g/m2~150g/m2の範囲にある高密度織物であり、前記金属箔は厚さが25μm~35μmの範囲にあるアルミニウムであり、
前記織物及び前記金属箔がそれぞれ他の部材と接合する部位である接合部を有し、これら全ての接合部が折り返された状態でテープにより互いに固定されていることを特徴とする保護体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護服及び保護体に関し、更に詳しくは、高圧の噴射水流を使用して作業する際の作業者の怪我を防止すると共に、軽量化を実現し、柔軟性を向上させることを可能にした防護服及び保護体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、既設のコンクリート構造物に対して補修工事や改修工事を行う際に、ウォータージェット工法と呼ばれる工法が行われている。この工法は、既設のコンクリート構造物に対して、通常、2000~2500バールの非常に高い水圧の水流を噴射させて、その衝撃力によりコンクリートを剥がし取るものである。その際、作業者は怪我を防止するために頭部や胴部、手足の先端部に至るまで全身を防護する防護服を着用する。
【0003】
このような防護服として、本体部が、可撓性を有する帯状の金属薄板の複数枚が一部重畳した構造を有して並置されて所要の面積を呈して連繋された連繋構造を有するものが提案されている(例えば、特許文献1)。上述した特許文献1に記載の防護服によれば非常に高い防護性能を確保することができる一方で、防護服の重量が重くなり柔軟性の観点で十分ではないという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6021154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高圧の噴射水流を使用して作業する際の作業者の怪我を防止すると共に、軽量化を実現し、柔軟性を向上させることを可能にした防護服及び保護体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の防護服は、表カバー部及び裏カバー部からなる被服体と、前記表カバー部と前記裏カバー部との間に挿入される保護体とを備え、該保護体が複数枚の織物及び複数枚の金属箔から構成され、これら織物及び金属箔がその厚さ方向に交互に積層され、前記織物は目付が100g/m2~150g/m2の範囲にある高密度織物であり、前記金属箔は厚さが25μm~35μmの範囲にあるアルミニウムであり、前記織物及び前記金属箔がそれぞれ他の部材と接合する部位である接合部を有し、これら全ての接合部が折り返された状態でテープにより互いに固定されていることを特徴とするものである。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の保護体は、防護服に用いられる保護体であって、複数枚の織物及び複数枚の金属箔から構成され、これら織物及び金属箔がその厚さ方向に交互に積層され、前記織物は目付が100g/m2~150g/m2の範囲にある高密度織物であり、前記金属箔は厚さが25μm~35μmの範囲にあるアルミニウムであり、前記織物及び前記金属箔がそれぞれ他の部材と接合する部位である接合部を有し、これら全ての接合部が折り返された状態でテープにより互いに固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、保護体は互いに積層された複数枚の織物及び複数枚の金属箔から構成されるので、その保護体を備えた防護服の軽量化を実現すると共に、良好な柔軟性を確保することができる。これにより、作業者の身体の動きに応じて防護服が柔軟に変形し、高圧の噴射水流を使用して作業する際の作業性を大幅に改善することができる。また、保護体において複数枚の織物及び複数枚の金属箔がその厚さ方向に交互に積層されているので、金属箔を薄肉化した場合であっても、積層された織物及び金属箔が高圧の噴射水流を遮断し、十分な防護性能を確保することができる。これにより、高圧の噴射水流を使用して作業する際の作業者の怪我を防止することができる。
【0010】
本発明では、織物及び金属箔はその周縁部の一部で互いに接合される一方で他の部位では互いに接合されていない状態にあることが好ましい。これにより、防護服として十分な柔軟性を確保することができる。また、必要に応じて金属箔の損傷状態を確認することができる。
【0011】
本発明では、織物はポリエステル繊維から構成され、金属箔はアルミニウムから構成されることが好ましい。これにより、防護服として十分な柔軟性を確保すると共に、重量を効果的に軽くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる防護服の一例を示す平面図である。
図2図1のX-X矢視断面図である。
図3】本発明の実施形態からなる保護体における成形時の形状を示すものであり、上半身に着用する上衣の平面図である。
図4】本発明の実施形態からなる防護服の変形例を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態からなる保護体の変形例における成形時の形状を示すものであり、下半身に着用する下衣の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は本発明の実施形態からなる防護服を示すものである。図1において、図面の上方が頭部側を示し、図面の下方が足部側を示す。図2において、図面の上方が外表面側を示し、図面の下方が身体側を示す。
【0014】
図1に示す本発明の防護服1は上半身に着用する上衣である。この防護服1は被服体10と保護体20からなる。被服体10は表カバー部11と裏カバー部12とを含むものである。図2に示すように、保護体20は表カバー部11と裏カバー部12との間に挿入される。保護体20は複数枚(図2では5枚)の織物21と複数枚(図2では4枚)の金属箔22から構成される。
【0015】
被服体10を構成する表カバー部11及び裏カバー部12はそれぞれ防護服1の表側及び裏側を構成する。これら表カバー部11及び裏カバー部12は、それぞれ撥水加工された繊維生地13,14を含んでいることが好ましい。このように表カバー部11の撥水加工された繊維生地13は防護服1の外表面側の表面層を構成し、裏カバー部12の撥水加工された繊維生地14は防護服1の身体側の表面層を構成することで、防護服1が水流を受けても表カバー部11及び裏カバー部12が水を弾き、防護服1の全体が水を含んだ状態になりにくくし、被服体10に挿入される保護体20を構成する金属箔22が腐食することを防止することができる。
【0016】
表カバー部11は、主に防護服1の内部への水の浸入を防止する役割を果たすものである。表カバー部11は撥水加工された繊維生地13のみから構成しても良い。このような撥水加工された繊維生地13は、ポリエステル又はナイロンからなる織物であることが好ましく、目付が200g/m2~300g/m2の範囲にある高密度織物であることがより好ましい。
【0017】
裏カバー部12は、表カバー部11と同様、防護服1の内部への水の浸入を防止することが重要である。裏カバー部12は、表面層を構成する撥水加工された繊維生地14と、アラミド繊維からなる繊維シート15とを含む少なくとも2層の積層構造を有することが好ましい。このように撥水加工された表面層として繊維生地14を配置した場合、その繊維生地14に隣接して繊維シート15を配置すると良い。
【0018】
また、アラミド繊維からなる繊維シート15はフェルト状であることが好ましい。このような繊維シート15を用いることで、高圧の噴射水流やコンクリートの破片が防護服1に衝突した際に繊維シート15がその衝撃に対する緩衝材となり、あらゆる方向に強力を発揮することができるため好適である。特に、アラミド繊維のうちパラ系アラミド繊維が望ましい。
【0019】
更に、本発明の防護服1は内部に金属箔22を含んでいるため帯電するおそれがある。こうした防護服1の帯電を防止するため、裏カバー部12は導電性繊維糸を含むポリエステル織物16を含んで構成しても良い。
【0020】
上記防護服において、保護体20を構成する織物21及び金属箔22は、その厚さ方向に交互に積層されている。このような積層構造を有することで、異種の材料が隣接して配置されるため層間のズレが発生し易く、防護服として適度な柔軟性を得ることができる。これに対して、織物と金属箔のいずれかがその積層構造の一部で隣接して配置されている場合、その隣接した部分では同じ素材が重なるため層間のズレが生じにくくなるため、防護服1としての柔軟性を確保するにあたって好ましくない。
【0021】
織物21は保護体20の外表面側及び身体側の表面層を構成する。織物21は、保護体20において金属箔22の枚数よりも1枚多く配置される。織物21は、ポリエステル繊維からなることが好ましく、更には、目付が100g/m2~150g/m2の範囲にある高密度織物であることがより好ましい。
【0022】
金属箔22は可撓性を有する平板状の薄い金属箔である。金属箔22の材質としてはアルミニウムを用いることが好ましい。金属箔22は、防護服1の防護性能を確保しながら、軽量化を実現するため、保護体20において少なくとも3枚を配置すると良い。
【0023】
金属箔22は厚さが25μm~35μmであることが好ましい。厚さが25μm~35μmである金属箔22を用いることで、軽量化を実現すると共に、良好な柔軟性を確保することができる。ここで、25μmよりも薄いと十分な防護性能を確保することが難しく、逆に厚さが35μmよりも厚いと適度な可撓性を得ることが難しく、一度変形すると元の形状に戻りにくい傾向がある。
【0024】
上述した防護服では、保護体20は互いに積層された複数枚の織物21及び複数枚の金属箔22から構成されるので、その保護体20を備えた防護服1の軽量化を実現すると共に、良好な柔軟性を確保することができる。これにより、作業者の身体の動きに応じて防護服1が柔軟に変形し、高圧の噴射水流を使用して作業する際の作業性を大幅に改善することができる。また、保護体20において複数枚の織物21及び複数枚の金属箔22がその厚さ方向に交互に積層されているので、金属箔22を薄肉化した場合であっても、積層された織物21及び金属箔22が高圧の噴射水流を遮断し、十分な防護性能を確保することができる。これにより、高圧の噴射水流を使用して作業する際の作業者の怪我を防止することができる。
【0025】
次に、本発明の防護服を構成する保護体の製造方法について説明する。図3は本発明の実施形態からなる防護服を構成する保護体の成形時の形状を示すものである。図3に示すように、成形工程において保護体20を構成する織物21及び金属箔22は互いに略同一の平面形状に成形される。その際、これら織物21及び金属箔22には、それぞれ他の部材と接合される部位である接合部23を設ける。これら全ての織物21及び金属箔22を図2に示す積層構造を形成するように重ね、これら全ての接合部23に対して幅方向の複数の箇所で仮留めを行い、その仮留めした接合部23を足部側に折り返した後、接合部23を幅方向に沿ってテープ等により固定する。このようにして保護体20を製造することができる。なお、本発明の保護体20で用いる金属箔22は薄く破れ易いため、織物21及び金属箔22の接合部23は縫製しない。
【0026】
上述のように製造された保護体20において、織物21及び金属箔22はその周縁部Lの一部(図1では頭部側に位置する上縁部20a)で互いに接合されている。その一方で、織物21及び金属箔22の頭部側に位置する上縁部20aを除く他の部位では互いに接合されていない。即ち、織物21及び金属箔22は、上縁部20aを除く他の部位において各部材間でフリーな状態を有している。なお、他の部位には織物21及び金属箔22の外表面側及び身体側の表面も含まれる。
【0027】
上述した保護体及びそれを備える防護服では、織物21及び金属箔22がその周縁部Lの一部で互いに接合される一方で他の部位では互いに接合されていない状態にあるので、保護体20又は防護服1として十分な柔軟性を確保することができる。また、必要に応じて金属箔22の損傷状態を確認することができる。
【0028】
また、本発明の防護服1は、上述のように成形した保護体20を表カバー部11及び裏カバー部12からなる袋状の被服体10に挿入した後、被服体10と保護体20とが互いにズレないように固定する。このようにして防護服1を製造することができる。また、被服体10には身体に装着できるようにベルト等の装着部材10aを適宜設けることができる。
【0029】
上記防護服において、保護体20は被服体10に対して着脱可能に構成されることが好ましい。具体的には、ボタン・ホック、レールファスナー、面ファスナー等を用いて保護体20を被服体10に対して着脱可能に固定することができる。このように保護体20を被服体10に対して着脱可能に構成することで、保護体20を構成する金属箔22が損傷した場合、その保護体20を容易に交換することができる。
【0030】
上述した図3の実施形態では、織物21及び金属箔22の接合部23は、それぞれ頭部側に位置する周縁部に1箇所設けられ、頭部側に突出した形状を有する例を示したが、接合部23の個数及び形状はこれに限定されるものではなく、任意の個数及び形状の接合部23を設けることができる。
【0031】
また、上述した図1及び図3の実施形態では、防護服1及び保護体20として上半身に着用する上衣の例を示したが、防護服1及び保護体20の形状は特に限定されるものではない。本発明の防護服1及び保護体20は、図4及び図5に示すように、下半身に着用する下衣にも適用することができる。下衣の場合、防護服1は複数の区画(図4では2区画)に区分され、一対の保護体20がそれぞれの区画に挿入された構造を有することができる。この場合、一対の保護体20はそれぞれが独立して図2に示す積層構造を有している。
【符号の説明】
【0032】
1 防護服
10 被服体
11 表カバー部
12 裏カバー部
13 繊維生地
14 繊維生地
15 繊維シート
16 ポリエステル織物
20 保護体
21 織物
22 金属箔
図1
図2
図3
図4
図5