(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】位相差フィルム、並びに、これを用いた光学積層体、表示パネル及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231116BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231116BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231116BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20231116BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231116BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20231116BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231116BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20231116BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/18 Z
B32B27/34
G09F9/00 313
H05B33/02
H05B33/14 A
H10K59/00
(21)【出願番号】P 2018094672
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-03-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 光
(72)【発明者】
【氏名】坂寄 勝哉
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】関根 洋之
【審判官】大▲瀬▼ 裕久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/029995(WO,A1)
【文献】特開2018-28073(JP,A)
【文献】特開2009-145735(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差フィルムであって、
前記位相差フィルムは、バインダー樹脂としてのポリイミドと、複屈折粒子とを含み、
前記複屈折粒子は、短軸(長軸と垂直な方向)の屈折率が長軸の屈折率より大きく、
前記複屈折粒子は逆分散性を示し、
前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内位相差をRe(550)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長450nmにおける位相差をR
40(450)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長550nmにおける位相差をR
40(550)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長650nmにおける位相差をR
40(650)、前記位相差フィルムの波長550nmにおける厚み方向の位相差をRth(550)とした際に、下記式(1)~(4)を満たす、位相差フィルム。
Re(550)≦10nm (1)
Rth(550)<0nm (2)
R
40(450)/R
40(550)<1.00 (3)
1.00<R
40(650)/R
40(550) (4)
【請求項2】
JIS K5600-5-1:1999に規定の円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、位相差フィルムに割れが生じたマンドレルの直径が3mm以下である、請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドが、テトラカルボン酸の残基及びジアミンの残基を含み、前記ジアミンの残基として、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含む、請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
前記ジアミンの残基として、さらに芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基を含
み、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基に対する、前記主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基のモル比(主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基/芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基)が0.30~4.00である、請求項3に記載の位相差フィルム。
【請求項5】
前記テトラカルボン酸の残基、及び/又は、ジアミンの残基中にフッ素原子を含む、請求項3又は4に記載の位相差フィルム。
【請求項6】
偏光子と、λ/4位相差フィルムと、請求項1~5の何れか1項に記載の位相差フィルムとが積層されてなる、光学積層体。
【請求項7】
表示素子の光出射面側の面上に、請求項1~5の何れか1項に記載の位相差フィルムが配置されてなる表示パネル。
【請求項8】
前記表示素子の光出射面側の面上に偏光子を有し、前記表示素子と前記偏光子との間に、前記位相差フィルム及びλ/4位相差フィルムを有する、請求項7に記載の表示パネル。
【請求項9】
前記表示素子が有機EL表示素子である、請求項7又は8に記載の表示パネル。
【請求項10】
請求項7~9の何れか1項に記載の前記表示パネルを備えてなる、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム、並びに、これを用いた光学積層体、表示パネル及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等に適用される光学フィルムとして、入射した光に所望の位相差を付与する位相差フィルムがある。例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置では、λ/4位相差フィルムと直線偏光板とを組み合わせてなる円偏光板を、外光反射防止のために用いている。また、IPSモード等の液晶表示装置では、斜め方向からの視野に対するコントラストを高めるために、ポジティブAプレートとポジティブCプレートとが組み合わされた位相差フィルムが光学補償フィルムの一部として用いられている。
【0003】
このような位相差フィルムは、全ての波長に対して同様の効果をもたらすものではないことがよく知られている。
例えば、λ/4位相差フィルムと偏光子とを積層してなる反射防止積層体は、波長550nmの光を円偏光として外光反射を大幅に抑制することができるが、これより長い波長、及び短い波長の光は楕円偏光となるため、外光反射防止機能が低下するという問題がある。
また、汎用的なλ/4位相差フィルムは、長波長で測定した位相差が短波長で測定した位相差より小さくなるという位相差の波長依存性(位相差の正分散性)を有するため、純粋な黒表示ができず、青紫がかった色となり、ディスプレイの表示品質が悪くなる。
この点を解決する手法として、λ/4位相差フィルムとλ/2位相差フィルムとを積層する方法が提案されている。当該手法では、広い波長領域に対して、正面方向の色味に対する補償をすることができるが、斜め方向に対してはさらにポジティブCプレートを追加する構成をとる必要があった。また、ポジティブCプレートの中でも、位相差の逆分散性(長波長で測定した位相差が短波長で測定した位相差より大きくなる)を示すものは、より斜め方向の色味を改善することができる。
【0004】
ポジティブCプレートとは、位相差フィルムのフィルム面に沿ったX軸方向の屈折率をNx、フィルム面に沿った方向でX軸に直交するY軸方向の屈折率をNy、位相差フィルムの厚み方向の屈折率をNzとしたとき、Nx≒Ny<Nzの関係を有するものである。
このようなポジティブCプレートとして、例えば、特許文献1~3が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-14712号公報
【文献】特開2016-206239号公報
【文献】国際公開2016/043219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3のポジティブCプレートは、基材上に、配向膜及び液晶層を形成し、液晶層中の液晶化合物を垂直配向させることにより、ポジティブCの機能(Nx≒Ny<Nz)を発現するものである。また、特許文献1及び2のポジティブCプレートは逆分散性を示すものである。
しかし、特許文献1~3のような液晶化合物を用いたポジティブCプレートは、基材、配向膜及び液晶層の多層構造であり、製造工程が複雑であるという問題がある。また、通常、液晶化合物は硬化性を有するものを用いるが、液晶化合物の硬化時の収縮により目的とする光学的性質が得られなかったり、未反応の液晶化合物が経時的に反応し、光学的性質が経時的に変化したりする問題があった。
【0007】
また、近年、折り畳み可能な有機EL表示装置が提案されているが、特許文献1~3のような多層構造(基材、配向膜及び液晶層の3層構造)の位相差フィルムは、折り畳むなどの屈曲する動作に弱いという問題がある。
【0008】
本発明は、液晶化合物を用いることなく斜め方向の色味を改善し、さらには、耐屈曲性に優れた位相差フィルム、並びに、これを用いた光学積層体、表示パネル及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の[1]~[4]を提供する。
[1]位相差フィルムであって、
前記位相差フィルムは、バインダー樹脂としてのポリイミドと、複屈折粒子とを含み、
前記位相差フィルムの波長550nmにおける面内位相差をRe(550)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長450nmにおける位相差をR40(450)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長550nmにおける位相差をR40(550)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長650nmにおける位相差をR40(650)、前記位相差フィルムの波長550nmにおける厚み方向の位相差をRth(550)とした際に、下記式(1)~(4)を満たす、位相差フィルム。
Re(550)≦20nm (1)
Rth(550)<0nm (2)
R40(450)/R40(550)<1.00 (3)
1.00<R40(650)/R40(550) (4)
[2]偏光子と、λ/4位相差フィルムと、上記[1]に記載の位相差フィルムとが積層されてなる、光学積層体。
[3]表示素子の光出射面側の面上に、上記[1]に記載の位相差フィルムが配置されてなる表示パネル。
[4]上記[3]に記載の前記表示パネルを備えてなる、画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の位相差フィルム、並びに、これを用いた光学積層体、表示パネル及び画像表示装置は、液晶化合物を用いることなく斜め方向の色味を改善し、さらには、耐屈曲性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の位相差フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の光学積層体の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明の表示パネルの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
[位相差フィルム]
本発明の位相差フィルムは、バインダー樹脂としてのポリイミドと、複屈折粒子とを含み、波長550nmにおける面内位相差をRe(550)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長450nmにおける位相差をR40(450)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長550nmにおける位相差をR40(550)、前記位相差フィルムの法線方向から40度傾いた方向から測定される波長650nmにおける位相差をR40(650)、前記位相差フィルムの波長550nmにおける厚み方向の位相差をRth(550)とした際に、下記式(1)~(4)を満たすものである。
Re(550)≦20nm (1)
Rth(550)<0nm (2)
R40(450)/R40(550)<1.00 (3)
1.00<R40(650)/R40(550) (4)
【0013】
図1は、本発明の位相差フィルムの実施の形態を示す断面図である。
図1の位相差フィルム100は、バインダー樹脂11及び複屈折粒子12を含有している。なお、図示しないが、本発明の位相差フィルムは、バインダー樹脂11としてポリイミドを含むものである。また、位相差フィルムは
図1のような単層構造に限られず、複層構造であってもよい。
【0014】
<式(1)~(4)>
本発明の位相差フィルムは、下記式(1)~(4)を満たすことを要する。
Re(550)≦20nm (1)
Rth(550)<0nm (2)
R40(450)/R40(550)<1.00 (3)
1.00<R40(650)/R40(550) (4)
【0015】
位相差フィルムのRe(550)が20nmを超えて式(1)を満たさない場合、円偏光板の外光反射防止機能が損なわれてしまう。式(1)において、Re(550)は15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
本明細書において、波長550nmにおける面内位相差をRe(550)、及び、波長550nmにおける厚み方向の位相差をRth(550)とは、位相差フィルムの面内において屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率を「Nx」、面内において遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率を「Ny」、位相差フィルムの厚み方向の屈折率を「Nz」、位相差フィルムの厚みを「d(nm)」とした際に、下記式で表すことができる。
面内位相差(Re)=(Nx-Ny)×d
厚さ方向の位相差(Rth)=((Nx+Ny)/2-Nz)×d
【0016】
位相差フィルムのRth(550)が0nmを超えて式(2)を満たさない場合、λ/4位相差フィルム、又は、λ/4位相差フィルムとλ/2位相差フィルムとの積層体を斜めから視認した際の表示品質の低下を抑制できない。式(2)において、Rth(550)は-20nm以下であることが好ましく、-50nm以下であることがより好ましい。
なお、Rth(550)が小さすぎると、斜め視認した際の位相の補償が過度となり表示品質が低下する場合がある。このため、Rth(550)は-200nm以上であることが好ましく、-150nm以上であることがより好ましい。
【0017】
位相差フィルムのR40(450)/R40(550)が1.00以上となる場合、及び/又は、R40(650)/R40(550)が1.00以下となる場合、λ/4位相差フィルム、又は、λ/4位相差フィルムとλ/2位相差フィルムとの積層体を斜めから視認した際の表示品質の低下を抑制できない。
式(3)において、R40(450)/R40(550)は0.98以下であることが好ましく、0.96以下であることがより好ましい。なお、R40(450)/R40(550)を小さくし過ぎると、複屈折粒子の添加量が増加し、位相差フィルムの耐屈曲性の低下につながりやすい。このため、R40(450)/R40(550)は0.70以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましい。
式(4)において、R40(650)/R40(550)は1.02以上であることが好ましく、1.03以上であることがより好ましい。なお、R40(650)/R40(550)を大きくし過ぎると、複屈折粒子の添加量が増加し、位相差フィルムの耐屈曲性の低下につながりやすい。このため、R40(650)/R40(550)は1.15以下であることが好ましく、1.10以下であることがより好ましい。
【0018】
本明細書において、Re(550)、Rth(550)、R40(450)、R40(550)及びR40(650)、並びに、後述するYI、ヘイズ及び全光線透過率は、16箇所の測定値の平均値を意味する。16の測定箇所は、測定サンプルの外縁から1cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域に関して、縦方向及び横方向を5等分する線を引いた際の、交点の16箇所を測定の中心とすることが好ましい。測定サンプルが四角形の場合には、四角形の外縁から1cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域を縦方向及び横方向に5等分した線の交点の16箇所を中心として測定を行い、その平均値を算出することが好ましい。なお、測定サンプルが円形、楕円形、三角形、五角形等の四角形以外の形状の場合、これらの形状に内接する最大面積の四角形を書き、該四角形に関して、上記手法により16箇所の測定を行うことが好ましい。
上記のように測定した16箇所の測定値のうち、Re(550)、Rth(550)、R40(450)、R40(550)及びR40(650)のバラツキは、平均値に対して±30nm以内であることが好ましく、±20nm以内であることがより好ましく、±10nm以内であることがさらに好ましく、±5nm以内であることがよりさらに好ましい。また、上記のように測定した16箇所の測定値のうち、YI、ヘイズ及び全光線透過率のバラツキは、平均値に対して±15%以内であることが好ましく、±10%以内であることがより好ましく、±7%以内であることがさらに好ましく、±5%以内であることがよりさらに好ましい。
【0019】
<黄色度>
本発明の位相差フィルムは、JIS K7373:2006の黄色度を示すYIが5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。
【0020】
<マンドレル>
本発明の位相差フィルムは、JIS K5600-5-1:1999に規定の円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、位相差フィルムに割れが生じたマンドレルの直径が3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。
マンドレルの直径を3mm以下とすることにより、耐屈曲性をより良好にすることができる。
【0021】
<その他の物性>
位相差フィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが1.00%以下であることが好ましく、0.90%以下であることがより好ましく、0.80%以下であることがさらに好ましい。
また、位相差フィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0022】
<バインダー樹脂>
位相差フィルムはバインダー樹脂としてポリイミドを含む。
位相差フィルムがバインダー樹脂としてポリイミドを含まない場合、耐屈曲性を良好にすることができない。
バインダー樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲でポリイミド以外の樹脂を含有していてもよいが、ポリイミドの含有量は、位相差フィルムのバインダー樹脂の全量の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることがもっとも好ましい。
【0023】
ポリイミドは、テトラカルボン酸とジアミンとの反応生成物であることが好ましい。すなわち、ポリイミドは、テトラカルボン酸の残基及びジアミンの残基を含むことが好ましい。なお、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
【0024】
<<テトラカルボン酸>>
ポリイミドの原料であるテトラカルボン酸としては、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物、脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0025】
芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,3-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’-ビス〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0026】
<<ジアミン>>
ポリイミドの原料であるジアミンとしては、芳香族環を有するジアミン、脂肪族環を有するジアミン、環構造を有さないジアミン等の各種のジアミンが挙げられる。
これら各種のジアミンの中でも、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが好ましい。すなわち、ポリイミドは、ジアミンの残基として、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含むことが好ましい。
ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含むことにより、位相差フィルムの耐屈曲性をより良好にしやすくできる。また、ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含むことにより、位相差フィルムの平面方向において複屈折粒子の向きが揃わずにランダムとなりやすく、式(1)を満たしやすくできる。さらに、ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含むことにより、位相差フィルムの厚み方向において複屈折粒子の角度が略水平になりやすくなり、式(2)~(4)を満たしやすくできる。
【0027】
主鎖にケイ素原子を有するジアミンは、下記一般式(i)、(ii)で示すもの等が挙げられる。
【化1】
[式(i)中、nは1~5の整数を示す。また、式(i)中、R
1及びR
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキレン基を示す。また、式(i)中、R
3~R
6は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル基を示す。]
【0028】
式(i)において、nは1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
また、式(i)において、R1及びR2は、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~5のアルキレン基であることがさらに好ましく、炭素数2~3のアルキレン基であることがよりさらに好ましい。また、R1及びR2は同一であることが好ましい。
また、式(i)において、R3~R6は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~5のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがよりさらに好ましい。また、R3~R6は同一であることが好ましい。
【0029】
【化2】
[式(ii)中、R
7及びR
8は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキレン基を示す。また、式(ii)中、R
9及びR
10は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル基を示す。]
【0030】
また、式(ii)において、R7及びR8は、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~5のアルキレン基であることがさらに好ましく、炭素数2~3のアルキレン基であることがよりさらに好ましい。また、R7及びR8は同一であることが好ましい。
また、式(ii)において、R9及びR10は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~5のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがよりさらに好ましい。また、R9及びR10は同一であることが好ましい。
【0031】
また、ポリイミドの原料であるジアミンとして主鎖にケイ素原子を有するジアミンを用いる場合、さらに、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンを用いることが好ましい。すなわち、ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基を含む場合、ポリイミドは、さらに、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基を含むことが好ましい。
ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基に加えて、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基を含むことにより、上述した主鎖にケイ素原子を有するジアミンによる効果を保持しつつ、位相差フィルムの耐熱性を良好にしやすくできる。また、ポリイミドが主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基に加えて芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基を含むことにより、ポリイミド前駆体が溶剤に溶けやすくなり、位相差フィルムの成膜性を良好にしやすくできる。
【0032】
ポリイミド中における、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基に対する、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基のモル比(主鎖にケイ素原子を有するジアミンの残基/芳香族環又は脂肪族環を有するジアミンの残基)は、0.30~4.00であることが好ましく、0.70~3.00であることがより好ましく、1.10~2.00であることがさらに好ましい。
【0033】
芳香族環を有するジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン等が挙げられる。
芳香族環を有するジアミンは、位相差フィルムの耐熱性をより良好にできる点で好適である。また、分子中に芳香族環を有するジアミンの中でも、透明性の観点から、さらに、分子中にフッ素原子を有するものが好ましい。
【0034】
脂肪族環を有するジアミンとしては、trans-シクロヘキサンジアミン、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等が挙げられる。
脂肪族環を有するジアミンは、位相差フィルムの透明性を良好にし得る点で好適である。
【0035】
位相差フィルムの透明性を良好にする観点から、テトラカルボン酸の残基、及び/又は、ジアミンの残基中にはフッ素原子を含むことが好ましい。
残基にフッ素原子を含ませることができるテトラカルボン酸としては、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物が挙げられる。
残基にフッ素原子を含ませることができるジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。ここに例示した、残基にフッ素原子を含ませることができるジアミンは、何れも分子中に芳香族環を有するものである。
【0036】
ポリイミドは、位相差フィルムの耐熱性の観点から、ガラス転移温度が150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。ポリイミドのガラス転移温度の上限は400℃程度である。
【0037】
<複屈折粒子>
位相差フィルム中には、複屈折粒子が含まれる。
複屈折粒子は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム及び炭酸バリウム等から形成される粒子が挙げられる。これらの中でも炭酸ストロンチウムから形成される粒子が好ましい。
【0038】
複屈折粒子は、位相差フィルムの厚み方向において略水平に配置されやすくするために、棒状、針状、紡錘状等の細長い形態を有することが好ましく、この中でも針状が好ましい。また、複屈折粒子のアスペクト比(複屈折粒子の長軸方向の長さ/長軸方向に垂直な方向の直径)は、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。
また、複屈折粒子の複屈折粒子の長軸方向の長さは、位相差フィルムの厚み方向において略水平に配置されやすくするために、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の観点から、複屈折粒子の複屈折粒子の長軸方向の長さは200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
【0039】
複屈折粒子の平均粒子径は、以下の(a)~(c)の作業により算出できる。
(a)位相差フィルムの断面をTEM又はSTEMで撮像する。TEM又はSTEMの加速電圧は10kv~30kV、倍率は5万~30万倍とすることが好ましい。
(b)観察画像から任意の10個の複屈折粒子を抽出し、個々の複屈折粒子の粒子径を算出する。粒子径は、複屈折粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(c)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を複屈折粒子の平均粒子径とする。
【0040】
複屈折粒子は、短軸(長軸と垂直な方向)の屈折率が大きい性質を有する。言い換えると、複屈折粒子はNzが大きい性質を有する。したがって、かかる性質を有する複屈折率粒子を位相差フィルムの厚み方向において略水平に配置することにより、Nzを大きくすることができ、式(2)を満たしやすくすることができる。
また、ポリイミドは正分散性を示す一方で、複屈折粒子は逆分散性を示す。したがって、複屈折率粒子を位相差フィルムの厚み方向において略水平に配置し、かつ、所定量(ポリイミドの正分散性を打ち消す量)の複屈折率粒子を含有させることにより、式(3)及び(4)を満たしやすくすることができる。
また、複屈折粒子の長軸の屈折率は短軸の屈折率よりも小さい。そして、複屈折率粒子を位相差フィルムの平面方向においてランダムに配置することにより、Nx≒Nyとなり、式(1)を満たすことができる。
【0041】
位相差フィルム中における複屈折粒子の含有量は、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。
複屈折粒子の含有量を10質量%以上とすることにより、式(2)~(4)を満たしやすくできる。また、複屈折粒子の含有量を50質量%以下とすることにより、位相差フィルムの耐屈曲性を良好にしやすくできるとともに、YIを5.0以下にしやすくできる。
【0042】
位相差フィルムの厚みは特に限定されないが、取り扱い性及び機械的強度を良好にする観点から、15~300μmであることが好ましく、20~200μmであることがより好ましく、25~100μmであることがさらに好ましい。
位相差フィルムの厚みは、例えば、マイクロメーター(商品名:Digimatic Micrometer、ミツトヨ社製)により測定できる。
【0043】
位相差フィルム中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤及び光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
【0044】
<大きさ、形状等>
位相差フィルムは枚葉状であってもよいしロール状であってもよい。
また、枚葉の大きさは特に限定されないが、一般的には、大きさは対角で2~500インチ程度である。ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500~3000mm、長さは500~5000m程度である。
また、枚葉の形状も特に限定されず、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形等)や円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。
【0045】
<製造方法>
本発明の位相差フィルムは、例えば、下記(A1)~(A5)の工程で製造できる。なお、本発明の位相差フィルムを製造する際は、式(1)~(4)を満たしやすくする観点から、延伸処理を行わないことが好ましい。
(A1)ポリイミド前駆体組成物の調製
(A2)イミド化工程
(A3)複屈折粒子を分散する工程(位相差層形成用塗液の調製)
(A4)ポリイミドと複屈折粒子を含んだ溶液の調製
(A5)塗膜形成工程
【0046】
<<(A1)ポリイミド前駆体組成物の調製>>
ポリイミド前駆体組成物は、テトラカルボン酸とジアミンとを溶剤中で反応させることにより得ることができる。テトラカルボン酸とジアミンとのモル比は略1:1とすることが好ましい。
溶剤は、汎用の溶剤の中から、テトラカルボン酸及びジアミンを溶解できるものを選択して用いればよい。溶剤の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、100~1900質量部であることが好ましい。溶剤の含有量を100~1900質量部とすることにより、分子量を向上しやすくできる。
【0047】
ポリイミド前駆体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量は、位相差フィルムの強度の観点から、ポリスチレン換算で10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。一方、重量平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、10,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
【0048】
<<(A2)イミド化工程>>
工程(A2)は、ポリイミド前駆体をイミド化する工程である。イミド化の手段としては、化学的イミド化法及び加熱イミド化法が挙げられる。
化学的イミド化法は、無水酢酸とピリジンとの混合物等の脱水試薬で処理する方法である。加熱イミド化法は、200~350℃で加熱処理する方法である。何れの手法も、ポリイミド前駆体を溶剤に溶解した状態、すなわち、ポリイミド前駆体組成物の状態で、ポリイミド前駆体をイミド化することができる。
【0049】
<<(A3)複屈折粒子を分散する工程(分散液の調製)>>
工程(A3)は、複屈折粒子を含む分散液の調製をする工程である。
工程(A3)は、分散媒に複屈折粒子を添加し、分散することにより実施できる。分散媒としては、無機粒子、分散剤、ポリイミドと反応しない溶媒であれば特に制限はない。
【0050】
複屈折粒子の分散性を良好にするため、工程(A3)では分散剤を添加することが好ましい。
分散剤としては、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤が挙げられ、アニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤は、カルボン酸基、硫酸基、リン酸基を有するものが挙げられる。
分散剤の添加量は、複屈折粒子100質量部に対して、10~25質量部であることが好ましい。
【0051】
<<(A4)ポリイミドと複屈折粒子を含んだ溶液の調製>>
工程(A4)は、工程(A2)で得たポリイミドに、工程(A3)で得た分散液を混合し位相差相形成用塗布液を調整する工程である。
【0052】
位相差相形成用塗布液中の溶剤の含有割合は、塗布液全量の50~93質量%であることが好ましい。
溶剤の含有割合を50質量%以上とすることにより、工程(A5)の後の塗膜の平面性を良好にしやすくできる。また、溶剤の含有割合を93質量%以下とすることにより、乾燥時間を低減でき、また、乾燥後のフィルム中に残存する溶剤量を低減することができる。
【0053】
なお、工程(A2)で得たポリイミドではなく、工程(A1)で得たポリイミド前駆体組成物に対して、工程(A3)で得た分散液を混合することも考えられる。
しかし、ポリイミド前駆体に分散液を混合した場合、複屈折粒子が凝集しやすくなってしまう。また、ポリイミド前駆体溶液に対して分散液を混合した後にイミド化すると、ポリイミドの分子量を大きくすることができないために、ポリイミドフィルムの耐屈曲性を良好にすることが困難となる。
これに対し、本実施形態においては、予めイミド化によりポリイミドを得ておき、ポリイミドに対して複屈折粒子を含む分散液を混合しているため、複屈折粒子の凝集を抑制して透明性を良好にすることができ、さらには、ポリイミドの分子量を大きくして耐屈曲性に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0054】
<<(A5)塗膜形成工程>>
工程(A5)は、工程(A4)で得た位相差層形成用塗液を塗膜化する工程である。
塗膜化には種々の方法があるが、溶液流延法(いわゆる「キャスト法」)で塗膜化することが好ましい。キャスト法は、位相差フィルム用塗液を、表面を平滑にしたドラム(キャスティングドラム)やステンレス製の平滑ベルト上に付着させ、これを加熱する工程に通して溶剤を乾燥させ、塗膜化するものである。
キャスト法で位相差フィルムを塗膜化することにより、位相差フィルムの平面方向において、ポリイミド及び複屈折粒子の配向が起こらないため面内位相差が低くなり、式(1)を満たしやすくできる。
【0055】
乾燥温度は、使用する溶媒やポリイミドにより適宜選択すればよい。溶剤の乾燥時間は、膜厚、溶剤の種類及び乾燥温度に応じて適宜調整すればよい。
なお、位相差フィルムの厚み方向において複屈折率粒子を略水平に配置しやすくする観点からは、溶剤は急速に乾燥させないことが好ましい。具体的には、乾燥温度は20~200℃であることが好ましく、乾燥時間は10~120分とすることが好ましい。なお、乾燥は温度を段階的に上げながら行ってもよい。その場合、トータルの乾燥時間が前記範囲とすることが好ましい。
溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
【0056】
<位相差フィルムの用途>
本発明の位相差フィルムは、例えば、偏光子及びλ/4位相差フィルムを積層した円偏光板を備えた画像表示装置を斜めから視認した際に、色味が損なわれることを抑制できる。このため、本発明の位相差フィルムは、偏光子及びλ/4位相差フィルムを備えた画像表示装置に適用することが好ましい。
また、本発明の位相差フィルムは耐屈曲性に優れる。このため、本発明の位相差フィルムは、折り曲げ可能な画像表示装置に適用することが好ましい。折り曲げ可能な画像表示装置としては、有機EL表示装置が挙げられる。
【0057】
また、本発明の位相差フィルムは、バインダー樹脂がポリイミドであり耐熱性に優れるため、熱に晒される部材として好適に用いることができる。熱に晒される部材としては、表示装置(特に有機EL表示装置)の部材、透明導電性フィルムの基材が挙げられる。特に、透明導電性フィルムの基材は極めて高い温度に晒されるため、本発明の位相差フィルムが好適に用いられる。さらに、本発明の位相差フィルムは、画像表示装置に組み込まれたタッチパネル用透明導電性フィルムの基材として有用であり、中でも有機EL表示装置に組み込まれたタッチパネル用透明導電性フィルムの基材として極めて有用である。
【0058】
[光学積層体]
本発明の光学積層体は、偏光子と、λ/4位相差フィルムと、上述した本発明の位相差フィルムとが積層されてなるものである。
【0059】
図2は、本発明の光学積層体400の実施の形態を示す断面図である。
図2の光学積層体400は、偏光子200、λ/4位相差フィルム300及び位相差フィルム100をこの順に有している。
なお、図示しないが、光学積層体は、偏光子とλ/4位相差フィルムとの間に、λ/2位相差フィルムを有していてもよい。
【0060】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等のシート型偏光子、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶や二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。なお、これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
偏光子の両面は、プラスチックフィルム、ガラス等の透明保護板で覆うことが好ましい。また、該透明保護板として、本発明の位相差フィルムを用いることも可能である。
【0061】
λ/4位相差フィルム及びλ/2位相差フィルムは、汎用性の観点から、正分散性を有するものであることが好ましい。
λ/4位相差フィルムの面内位相差は、105~135nmであることが好ましく、110~130nmであることがより好ましく、113~127nmであることがさらに好ましい。λ/2位相差層の面内位相差は、210~270nmであることが好ましく、220~260nmであることがより好ましく、225~255nmであることがさらに好ましい。
【0062】
光学積層体中の位相差フィルムの位置は、偏光子よりも表示素子側であれば特に限定されない。本発明の光学積層体は、例えば、下記(A)~(E)の構成が挙げられる。なお、下記(A)~(E)において、「//」は各層の界面を意味する。また、下記(A)~(E)において、各層の間には、本発明の効果を阻害しない範囲で、接着剤層等のその他の層を有していてもよい。
(A)位相差フィルム//λ/4位相差フィルム//偏光子
(B)λ/4位相差フィルム//位相差フィルム //偏光子
(C)位相差フィルム//λ/4位相差フィルム//λ/2位相差フィルム//偏光子
(D)λ/4位相差フィルム//位相差フィルム//λ/2位相差フィルム//偏光子
(E)λ/4位相差フィルム//λ/2位相差フィルム//位相差フィルム//偏光子
【0063】
本発明の光学積層体は、λ/4位相差フィルムを基準として偏光子側の面が視認者側を向くようにして、画像表示装置に配置することにより、画像表示装置に外光反射防止機能を付与するとともに、斜めから視認した際に色味が損なわれることを抑制できる。
【0064】
[表示パネル]
本発明の表示パネルは、表示素子の光出射面側の面上に、上述した本発明の位相差フィルムが配置されてなるものである。
【0065】
図3は、本発明の表示パネル700の実施の形態を示す断面図である。
図3の表示パネル700は、表示素子500の光出射面側の面上に、位相差フィルム100が積層されている。また、
図3の表示パネル700は、位相差フィルム100上に、さらに、λ/4位相差フィルム300及び偏光子200を有している。
なお、表示パネルの表示素子が液晶表示素子である場合、液晶表示素子の背面には図示しないバックライトが必要である。バックライトとしては、エッジライト型バックライト、直下型バックライトの何れも用いることができる。また、バックライトの光源としては、LED、CCFL等が挙げられるが、光源として量子ドットを用いたバックライトは色再現性を高めやすい点で好ましい。
【0066】
図3に示すように、本発明の表示パネルは、表示素子の光出射面側の面上に偏光子を有し、表示素子と偏光子との間に、位相差フィルム及びλ/4位相差フィルムを有することが好ましい。かかる構成を採用することで、画像表示装置に外光反射防止機能を付与するとともに、斜めから視認した際に色味が損なわれることを抑制できる。
なお、表示素子上に配置する光学積層体400は、
図3に示す構成のほか、上記(B)~(E)の構成等を採用することができる。
【0067】
<表示素子>
表示素子としては、液晶表示素子、有機EL表示素子、無機EL表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー表示素子、LED表示素子(マイクロLEDなど)、量子ドットを用いた表示素子等が挙げられる。なお、液晶表示素子は、タッチパネル機能を素子内に備えたインセルタッチパネル液晶表示素子であってもよい。
これらの表示素子の中でも、有機EL表示素子は、本発明の効果を有効に発揮し得る点で好ましい。
【0068】
また、本発明の表示パネルはタッチパネルを有していてもよい。タッチパネルは、例えば、表示素子と位相差フィルムとの間に配置される。また、位相差フィルムがタッチパネルの透明導電性フィルムの基材を兼用するように配置してもよい。
タッチパネルとしては、抵抗膜式タッチパネル、静電容量式タッチパネル、光学式タッチパネル、超音波式タッチパネル及び電磁誘導式タッチパネル等が挙げられる。なお、これらタッチパネルは圧力検知機能を備えたものであってもよい。
【0069】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の表示パネルを備えるものであれば特に限定されないが、本発明の表示パネルと、該表示パネルに電気的に接続された駆動制御部と、これらを収容する筐体とを備えることが好ましい。
【実施例】
【0070】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
【0071】
1.測定、評価
実施例及び比較例で得られた位相差フィルムについて、下記の測定、評価を行った。結果を表1に示す。なお、各測定及び評価時の雰囲気は、温度は23℃±5℃、湿度40~65%とした。また、測定及び評価の前に、前記雰囲気にサンプルを30分以上晒した。
1-1.位相差の測定
実施例及び比較例で得られた位相差フィルムを縦50mm×横50mmの大きさに切断した測定用サンプルを作製した。大塚電子社製の商品名「RETS-100(測定スポット:直径5mm)」を用いて、該測定用サンプルのRe(550)、Rth(550)、R40(450)、R40(550)及びR40(650)を測定した。測定箇所は、明細書本文で規定した16箇所として、16箇所の値の平均値を、各実施例及び比較例のRe(550)、Rth(550)、R40(450)、R40(550)及びR40(650)とした。各実施例及び比較例のRe(550)、Rth(550)、R40(450)/R40(550)及びR40(650)/R40(550)を表1に示す。
【0072】
1-2.YIの測定
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社、商品名「V-7100」)を用い、JIS K7373:2006に準拠して、上記1-1で作製したサンプルのYIを測定した。具体的には、前記紫外可視近赤外分光光度計を用い、JIS Z8720に規定する分光測色方法により透過率を測定し、該透過率をもとにYIを算出した。測定箇所は、明細書本文で規定した16箇所として、16箇所の値の平均値を、各実施例及び比較例のYIとした。結果を表1に示す。
【0073】
1-3.全光線透過率及びヘイズの測定
ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社、商品名「HM150」)を用い、JIS K7361-1:1997及びJIS K7136:2000に準拠して、上記1-1で作製したサンプルの全光線透過率及びヘイズを測定した。測定箇所は、明細書本文で規定した16箇所として、16箇所の値の平均値を、各実施例及び比較例の全光線透過率及びヘイズとした。結果を表1に示す。
【0074】
1-4.色味
実施例及び比較例で得られた画像表示装置(有機EL表示装置)に画像を表示し、偏光子保護フィルム越しに正面及び斜め40度から視認し、画像の色味を評価した。評価のポイントは、正面と斜め40度との色味の一致の程度として、20人が評価し、下記の基準によりランク分けした。
A:正面及び斜めの画面の色味が同程度と答えた人が15人以上
B:正面及び斜めの画面の色味が同程度と答えた人が10~14人
C:正面及び斜めの画面の色味が同程度と答えた人が9人以下
【0075】
1-5.耐屈曲性
実施例及び比較例の位相差フィルムに関して、JIS K5600-5-1:1999に規定の円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験を行った。マンドレルの直径を徐々に小さくし、位相差フィルムに最初に割れが生じたマンドレルの直径を表1に示す。
【0076】
2.ポリイミド前駆体組成物の調製
<ポリイミド前駆体組成物1>
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド187.7g、及び、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)12.5g(50mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)11.1g(25mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)16.0g(50mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)33.3g(74.9mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体組成物1(固形分28重量%)を得た。ポリイミド前駆体1に用いられたAprTMOSとTFMBとのモル比は50:50であった(芳香族環を有するジアミンに対する、主鎖にケイ素原子を有するジアミンのモル比は1.00)。GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は79000であった。
【0077】
<ポリイミド前駆体組成物2>
AprTMOSの添加量を4.98g(20mmol)、TFMBの添加量を25.6g(80mmol)として、AprTMOSとTFMBとのモル比を20:80(芳香族環を有するジアミンに対する、主鎖にケイ素原子を有するジアミンのモル比は0.25)とした以外は、ポリイミド前駆体組成物1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物2(固形分28重量%)を得た。GPCによって測定したポリイミド前駆体2の重量平均分子量は160000であった。
【0078】
3.イミド化(化学イミド化)
ポリイミド前駆体組成物1に、触媒であるピリジン0.4g(4.9mmol)と無水酢酸38.0g(372mmol)を加え24時間室温で攪拌し、ポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液280gを5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル400gを加えて均一になるまで攪拌した。次に2-イソプロパノールを、僅かに濁りが見られるまで徐々に加え、濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に2-イソプロパノール2kgを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、2-イソプロパノールで10回洗浄し、ポリイミド1を得た。
同様に、ポリイミド前駆体組成物2に、触媒であるピリジン0.4g(4.9mmol)と無水酢酸39.6g(388mmol)を加え24時間室温で攪拌し、ポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液300gを5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル430gを加えて均一になるまで攪拌した。次に2-イソプロパノールを、僅かに濁りが見られるまで徐々に加え、濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液に2-イソプロパノール2kgを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、2-イソプロパノールで10回洗浄し、ポリイミド2を得た。
【0079】
4.位相差層形成用塗液の調製
<位相差層形成用塗液1>
分散媒(酢酸ブチル)、分散剤(BYK社製の商品名「DISPERBYK106」)、及び複屈折粒子(炭酸ストロンチウム粒子、長軸方向の長さの平均:70nm、長軸方向に垂直な方向直径の平均:30nm)を含む組成物(分散媒、分散剤及び複屈折粒子の質量比は16.7:2.3:81.0)に、ジルコニアビーズを添加してペイントシェーカーで分散処理し、分散液を得た。
次いで、得られた分散液に、所定の固形分となるよう追加の溶媒(分散媒と同じ)を添加し、さらにポリイミド1の粉末を添加して、スターラーによって攪拌し、位相差層形成用塗液1を得た。位相差層形成用塗液1中の固形分(ポリイミド及び炭酸ストロンチウム粒子)の割合は33.3質量%であった。また、位相差層形成用塗液1中の固形分に対する炭酸ストロンチウム粒子の割合は21%であった。
【0080】
<位相差層形成用塗液2~5>
ポリイミド前駆体組成物の種類、及び複屈折粒子(炭酸ストロンチウム粒子)の添加量を表1の値に変更した以外は、位相差層形成用塗液1と同様にして、位相差層形成用塗液2~4を得た。
【0081】
5.位相差フィルム及び画像表示装置の作製
[実施例1]
<位相差フィルムの作製>
厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に位相差層形成用塗液1を付着させ、40℃の循環オーブンで10分、150℃で10分乾燥した後、PETフィルムから剥離し、さらに150℃で1時間乾燥し、実施例1の位相差フィルムを得た。
<画像表示装置の作製>
表示素子として、マイクロキャビティ構造を備えた三色独立方式の有機EL表示素子を有する市販の有機EL表示装置を準備した。
次いで、実施例1の位相差フィルム、λ/4位相差フィルム(正分散、面内位相差120nm)、λ/2位相差フィルム(正分散、面内位相差240nm)、偏光子及び偏光子保護フィルム(TAC)を、透明接着剤層を介してこの順に積層した光学積層体を作製した。
前記有機EL表示装置の有機EL表示素子上の光学フィルムを取り外し、前記光学積層体のλ/4位相差フィルムを基準として偏光子側の面が視認者側を向くようにして、有機EL素子上に配置し、実施例1の画像表示装置(有機EL表示装置)を得た。
【0082】
[実施例2]、[比較例1~3]
位相差層形成用塗液1を位相差層形成用塗液2~5に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び比較例1~3の位相差フィルム及び画像表示装置を得た。
【0083】
【0084】
表1に示すように、実施例1~2の位相差フィルムは、液晶化合物を用いることなく斜め方向の色味を改善し、さらには、耐屈曲性に優れたものであることが確認できる。
【符号の説明】
【0085】
11:バインダー樹脂
12:複屈折粒子
100:位相差フィルム
200:偏光子
300:λ/4位相差フィルム
400:光学積層体
500:表示素子
700:表示パネル