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特許7386002投擲用シューズのアウトソール及びこれを備えた投擲用シューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】投擲用シューズのアウトソール及びこれを備えた投擲用シューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/12 20060101AFI20231116BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20231116BHJP
   A43B 5/00 20220101ALI20231116BHJP
【FI】
A43B13/12 A
A43B13/14 B
A43B5/00 310
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019110952
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020202895
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (公開日)2019年5月21日(公開場所)アシックスジャパン株式会社 東京本社 (公開日)2019年5月28日(公開場所)アシックスジャパン株式会社 関西オフィス
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 知起
(72)【発明者】
【氏名】菱川 文智
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509384(JP,A)
【文献】特表平04-507364(JP,A)
【文献】特開2002-045204(JP,A)
【文献】特表2018-534028(JP,A)
【文献】特開2009-106694(JP,A)
【文献】特表2015-536762(JP,A)
【文献】特表2015-533591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0278476(US,A1)
【文献】特開2003-289903(JP,A)
【文献】実開昭60-172507(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/12
A43B 13/14
A43B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と、前記第1領域よりも内側に位置し、且つ、少なくとも踏み付け部のうち足の第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に位置する第2領域と、を有するアウトソール本体を備え、
前記第2領域上に配置された前記アウトソール本体よりも剛性が高いプレート状の高剛性部を更に備
前記第2領域の接地面は、平面又は曲面であり、
前記第1領域の接地面は、前記第2領域の接地面よりも幅方向の曲率が大きな曲面である、
ことを特徴とする投擲用シューズのアウトソール。
【請求項2】
前記高剛性部は、少なくとも足趾部から中足部まで連続的に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の投擲用シューズのアウトソール。
【請求項3】
第1領域と、前記第1領域よりも内側に位置し、且つ、少なくとも踏み付け部のうち足の第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に位置する第2領域と、を有するアウトソール本体を備え、
前記第2領域上に配置された前記アウトソール本体よりも剛性が高いプレート状の高剛性部を更に備えるか、又は、前記第2領域が前記第1領域よりも剛性が高い高剛性部から形成されており、
前記第2領域の接地面は、平面又は曲面であり、
前記第1領域の接地面は、前記第2領域の接地面よりも幅方向の曲率が大きな曲面であり、
前記高剛性部は、趾部から前記踏み付け部に向けて前後方向に延びる2つの切り込み部によって幅方向に分割された3つの分割部を有し、
前記3つの分割部は、内足側に位置するものほど幅が広くなっている、
ことを特徴とす投擲用シューズのアウトソール。
【請求項4】
第1領域と、前記第1領域よりも内側に位置し、且つ、少なくとも踏み付け部のうち足の第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に位置する第2領域と、を有するアウトソール本体を備え、
前記第2領域上に配置された前記アウトソール本体よりも剛性が高いプレート状の高剛性部を更に備えるか、又は、前記第2領域が前記第1領域よりも剛性が高い高剛性部から形成されており、
前記第2領域の接地面は、平面又は曲面であり、
前記第1領域の接地面は、前記第2領域の接地面よりも幅方向の曲率が大きな曲面であり、
前記高剛性部は、趾部から前記踏み付け部までの部分が前後方向に湾曲し、それ以外の部分が平面状である、
ことを特徴とす投擲用シューズのアウトソール。
【請求項5】
少なくとも前足部における前記第1領域の接地面は、内足側に位置する部分の方が外足側に位置する部分よりも幅方向の曲率が大きい、
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の投擲用シューズのアウトソール。
【請求項6】
少なくとも内足側において足の第1基節骨又は第1末節骨の前方に対応する部分は前記第1領域とされ、
前記第2領域は、幅方向中央部が最も前方に突出している、
ことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の投擲用シューズのアウトソール。
【請求項7】
前記第2領域は、前記アウトソール本体に形成された凹溝を備え、
前記プレート状の高剛性部は、前記凹溝に嵌合され、
前記第1領域の上面と前記プレート状の高剛性部の上面とが略面一である、
ことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の投擲用シューズのアウトソール。
【請求項8】
少なくとも前足部から中足部までの前記第2領域の接地面が平滑面である、
ことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の投擲用シューズのアウトソール。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載のアウトソールと、
アッパーと、を備える、
ことを特徴とする投擲用シューズ。
【請求項10】
前記アッパーの底面と前記アウトソールの上面とが接触している、
ことを特徴とする請求項9に記載の投擲用シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンマー投げ、砲丸投げ、円盤投げなどの投擲用シューズのアウトソール及びこれを備えた投擲用シューズに関する。特に、本発明は、地面への踏み付け力を伝え易くしてグリップ性を高めると共に、スムーズな回転動作を行うことができる投擲用シューズのアウトソール及びこれを備えた投擲用シューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンマー投げ、砲丸投げ、円盤投げなどの投擲用シューズのアウトソールとして、例えば、特許文献1、2のアウトソールが提案されている。
特許文献1に記載のアウトソールは、軸足用のアウトソールの接地面の所定領域に環状突部又は環状溝を形成し、他方の足用のアウトソールの接地面の所定領域に任意形状の突起又は凹部を複数形成したものである(特許文献1の実用新案登録請求の範囲等)。
特許文献2に記載のアウトソールは、アウトソールの接地面の所定の領域に複数の溝を形成したものである(特許文献2の特許請求の範囲等)。
【0003】
特許文献1、2に記載のアウトソールは、いずれも接地面に形成する突起や溝の配置や形状に工夫を施したものであり、グリップ性の向上及びスムーズな回転動作の双方を実現する上で十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平4-23405号公報
【文献】特開2002-45204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、地面への踏み付け力を伝え易くしてグリップ性を高めると共に、スムーズな回転動作を行うことができる投擲用シューズのアウトソール及びこれを備えた投擲用シューズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、第1手段として、第1領域と、前記第1領域よりも内側に位置し、且つ、少なくとも踏み付け部のうち足の第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に位置する第2領域と、を有するアウトソール本体を備え、前記第2領域上に配置された前記アウトソール本体よりも剛性が高いプレート状の高剛性部を更に備、前記第2領域の接地面は、平面又は曲面であり、前記第1領域の接地面は、前記第2領域の接地面よりも幅方向の曲率が大きな曲面である、ことを特徴とする投擲用シューズのアウトソールを提供する。
【0007】
本発明に係る第1手段によれば、アウトソール本体が、第1領域と、第1領域よりも内側に位置し、踏み付け部(着用者の足の第1~第5MP関節に概ね対応する(着用時にこれらMP関節の下側に位置する)部分)のうち、両足支持期に地面への踏み付け力が比較的多くかかりやすい第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に少なくとも位置する第2領域と、を有する。そして、本発明に係る第1手段においては、第2領域上にアウトソール本体(第1領域及び第2領域を有する部材)よりも剛性が高いプレート状の高剛性部が配置されている。高剛性部は、アウトソール本体よりも剛性が高いため、変形量が同じであれば、元に戻ろうとする反発力が大きくなる結果、地面への踏み付け力が伝わり易く、グリップ性を高めることが可能である。一方、回転動作の際に使用することが多い外側に位置する第1領域は、高剛性部よりも剛性が低いために変形し易く、回転動作をスムーズに行うことが可能である。なお、本発明に係る第1手段においては、第1領域の剛性と第2領域の剛性とは、同じであってもよい
以上のように、本発明に係る第1手段によれば、地面への踏み付け力を伝え易くしてグリップ性を高めると共に、スムーズな回転動作を行うことができる投擲用シューズのアウトソールが提供される。
また、本発明に係る第1手段によれば、外側に位置する第1領域の接地面が内側に位置する第2領域の接地面よりも幅方向の曲率が大きいため、回転動作の際に第2領域の接地面をスムーズに接地させ易くなり、回転動作をより一層スムーズに行うことが可能である
【0008】
なお、本発明において、第2領域が「第1領域よりも内側に位置」するとは、足の前側(末節骨側)と後側(踵骨側)とを結ぶ直線の方向である「前後方向」については、第2領域の前端が第1領域の前端よりも後側に位置し、且つ、第2領域の後端が第1領域の後端よりも前側に位置し、「前後方向」に直交する「幅方向」については、第2領域の内足側(母指(第1指)側)の端が第1領域の内足側の端よりも外足側(小指(第5指)側)に位置し、且つ、第2領域の外足側の端が第1領域の外足側の端よりも内足側に位置することを意味する。
また、本発明において、「足の第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に位置する第2領域」とは、第1MP関節の全体、第2MP関節の全体及び第3MP関節の全体の下側に位置する領域に限るものではなく、第1MP関節の少なくとも一部、第2MP関節の少なくとも一部及び第3MP関節の少なくとも一部の下側に位置する領域を含む概念である。
【0009】
好ましくは、前記高剛性部は、少なくとも足趾部から中足部まで連続的に設けられている。
【0010】
上記の好ましい構成によれば、高剛性部が少なくとも足趾部から中足部まで連続的に(前後方向に分断することなく)設けられているため、両足支持期に地面への踏み付け力をより一層伝え易くして、より一層グリップ性を高めることが可能である。
【0011】
なお、上記の好ましい構成において、「足趾部」とは、MP関節よりも前方に位置する趾骨に概ね対応する(着用時に趾骨の下側に位置する)部分を意味する。また、「中足部」とは、楔状骨、舟状骨及び立方骨に概ね対応する(着用時にこれらの骨の下側に位置する)部分を意味する。アウトソールの全長を100%とした場合、アウトソールの前端から概ね5~30%の領域が足趾部に対応し、概ね30~85%の領域が中足部に対応する。さらに、「高剛性部が少なくとも足趾部から中足部まで連続的に設けられている」とは、足趾部の全体から中足部の全体まで連続的に高剛性部が設けられている場合に限るものではなく、足趾部の少なくとも一部から中足部の少なくとも一部まで連続的に高剛性部が設けられている場合を含む概念である。
【0012】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第2手段として、第1領域と、前記第1領域よりも内側に位置し、且つ、少なくとも踏み付け部のうち足の第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に位置する第2領域と、を有するアウトソール本体を備え、前記第2領域上に配置された前記アウトソール本体よりも剛性が高いプレート状の高剛性部を更に備えるか、又は、前記第2領域が前記第1領域よりも剛性が高い高剛性部から形成されており、前記第2領域の接地面は、平面又は曲面であり、前記第1領域の接地面は、前記第2領域の接地面よりも幅方向の曲率が大きな曲面であり、前記高剛性部は、趾部から前記踏み付け部に向けて前後方向に延びる2つの切り込み部によって幅方向に分割された3つの分割部を有し、前記3つの分割部は、内足側に位置するものほど幅が広くなっている、ことを特徴とする投擲用シューズのアウトソールとしても提供される
【0013】
本発明に係る第2手段によれば、高剛性部が2つの切り込み部によって幅方向に分割された3つの分割部を有するため、切り込み部が設けられずに幅方向に連続的に設けられた高剛性部である場合に比べて、アウトソールが幅方向に屈曲し易くなるため、回転動作に支障を来さないという利点が得られる。また、足趾部及び踏み付け部は、内足側に位置する部分ほど、両足支持期に地面への踏み付け力が比較的多くかかりやすいため、3つの分割部の幅が内足側に位置するものほど広くなっていることで、回転動作に支障を来さない状態で、踏み付け力を伝え易くして、グリップ性を高めることが可能である。
【0014】
なお、本発明に係る第2手段において、「内足側」とは、前述のように、アウトソールの幅方向の両側のうち母指(第1指)側を意味する。また、「3つの分割部は、内足側に位置するものほど幅が広くなっている」とは、各分割部の幅方向の寸法(幅)の平均値又は最大値が、内足側に位置する分割部ほど大きいことを意味する。
また、本発明に係る第2手段の一の態様においては、第1手段と同様に、第2領域上にアウトソール本体よりも剛性が高いプレート状の高剛性部が配置されているが、他の態様においては、プレート状の高剛性部を備える代わりに、アウトソール本体が有する第2領域が第1領域よりも剛性が高い高剛性部から形成されている。この態様についても、上記の一の態様と同様に、高剛性部から形成された第2領域によって、地面への踏み付け力が伝わり易く、グリップ性を高めることが可能であり、高剛性部よりも剛性が低い第1領域によって、回転動作をスムーズに行うことが可能である。
【0015】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第3手段として、第1領域と、前記第1領域よりも内側に位置し、且つ、少なくとも踏み付け部のうち足の第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に位置する第2領域と、を有するアウトソール本体を備え、前記第2領域上に配置された前記アウトソール本体よりも剛性が高いプレート状の高剛性部を更に備えるか、又は、前記第2領域が前記第1領域よりも剛性が高い高剛性部から形成されており、前記第2領域の接地面は、平面又は曲面であり、前記第1領域の接地面は、前記第2領域の接地面よりも幅方向の曲率が大きな曲面であり、前記高剛性部は、趾部から前記踏み付け部までの部分が前後方向に湾曲し、それ以外の部分が平面状である、ことを特徴とする投擲用シューズのアウトソールとしても提供される
【0016】
一般に、アウトソール本体は、足趾部から踏み付け部までの部分が前後方向に湾曲し、それ以外の部分が平面状になっている。
したがい、本発明に係る第3手段によれば、アウトソール本体の第2領域上に配置されたプレート状の高剛性部を備える一の態様において、高剛性部をアウトソール本体に沿って容易に配置することが可能である。
【0017】
好ましくは前記第2領域は、前記第1領域よりも剛性が高い。
【0018】
上記の好ましい構成によれば第2領域の剛性が第1領域の剛性よりも高いため、地面への踏み付け力がより一層伝わり易く、グリップ性をより一層高めることが可能である。
【0019】
なお、上記の好ましい構成において、「前記第2領域は、前記第1領域よりも剛性が高い」とは、アウトソール本体の第2領域上に配置されたプレート状の高剛性部を備える一の態様の場合、アウトソール本体の第2領域が第1領域よりも剛性が高いことを意味する。すなわち、プレート状の高剛性部の剛性>アウトソール本体の第2領域の剛性>アウトソール本体の第1領域の剛性、の順に剛性が高いことを意味する。また、アウトソール本体が有する第2領域が第1領域よりも剛性が高い高剛性部から形成されている他の態様の場合、アウトソール本体の第2領域(高剛性部)が第1領域よりも剛性が高いことを意味する。
【0020】
好ましくは、少なくとも前足部における前記第1領域の接地面は、内足側に位置する部分の方が外足側に位置する部分よりも幅方向の曲率が大きい。
【0021】
上記の好ましい構成によれば、第1領域の接地面の内足側に位置する部分の方が外足側に位置する部分よりも幅方向の曲率が大きいため、特に内足側に足を大きく傾けるハンマー投げに適した回転動作を行うことが可能である。
【0022】
なお、上記の好ましい構成において、「前足部」とは、趾骨、MP関節及び中足骨に概ね対応する(着用時にこれらの骨の下側に位置する)部分を意味する。アウトソールの全長を100%とした場合、アウトソールの前端から概ね0~30%の領域が前足部に対応する。また、「外足側」とは、前述のように、アウトソールの幅方向の両側のうち小指(第5指)側を意味する。
【0023】
好ましくは、少なくとも内足側において足の第1基節骨又は第1末節骨の前方に対応する部分は前記第1領域とされ、前記第2領域は、幅方向中央部が最も前方に突出している。
【0024】
上記の好ましい構成によれば、両足支持期とリリース時の双方において、地面への踏み付け力をより一層伝え易くして、より一層グリップ性を高めることが可能である。
【0025】
好ましくは、前記第2領域は、前記アウトソール本体に形成された凹溝を備え、前記プレート状の高剛性部は、前記凹溝に嵌合され、前記第1領域の上面と前記プレート状の高剛性部の上面とが略面一である。
【0026】
上記の好ましい構成によれば、第1領域の上面と、第2領域(凹溝)上に配置されたプレート状の高剛性部の上面とが略面一であるため、着用時に足当たりが良いという利点が得られる。
【0027】
好ましくは、少なくとも前足部から中足部までの前記第2領域の接地面が平滑面である。
【0028】
上記の好ましい構成によれば、より一層グリップ性を高めることが可能である。
【0029】
なお、上記の好ましい構成において、「接地面が平滑面である」とは、特許文献1、2に記載されているような突起や溝等の意匠が接地面に形成されておらず、例えば、鏡面加工が施されているものが好ましいが、サンドブラスト加工が施されているものでもよい。
【0030】
また、前記課題を解決するため、本発明は、上記の何れかに記載のアウトソールと、アッパーと、を備える、ことを特徴とする投擲用シューズとしても提供される。
【0031】
好ましくは、前記アッパーの底面と前記アウトソールの上面とが接触している。
【0032】
上記の好ましい構成によれば、アッパーの底面とアウトソールの上面とが接触している、換言すれば、アッパーの底面とアウトソールの上面との間にミッドソールが存在しないため、着用時の足の裏面と地面との距離を短くすることができ、地面への踏み付け力をより一層伝え易くして、より一層グリップ性を高めることが可能である。
ただし、本発明に係る投擲用シューズは、上記の好ましい構成に限るものではなく、ミッドソールを備えた投擲用シューズとすることも可能である。この場合、ミッドソールの厚みをアウトソールの厚みよりも小さくすることで、地面への踏み付け力をより伝え易くして、グリップ性を高めることが可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、地面への踏み付け力を伝え易くしてグリップ性を高めると共に、スムーズな回転動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に係る投擲用シューズの概略構成を示す上面斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る投擲用シューズの概略構成を示す上面斜視分解図である。
図3】本発明の一実施形態に係る投擲用シューズの概略構成を示す下面斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るアウトソールと足の骨との位置関係を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るアウトソールの概略構成を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るアウトソールの概略構成を示す断面図である。
図7】本発明の変形例に係るアウトソールの前足部と足の骨との位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る投擲用シューズのアウトソール及びこれを備えた投擲用シューズについて説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る投擲用シューズの概略構成を示す上面斜視図である。図2は、本実施形態に係る投擲用シューズの概略構成を示す上面斜視分解図である。図3は、本実施形態に係る投擲用シューズの概略構成を示す下面斜視図である。図4は、本実施形態に係るアウトソールと足の骨との位置関係を示す平面図である。図1図4では、投擲用シューズ及びアウトソールとして、左足用を図示しているが、右足用は左足用と線対称の形状を有するので図示を省略し、以下、左足用についてのみ説明する。
図1図3に示すように、本実施形態に係る投擲用シューズ100は、実線で示すアウトソール10と、破線で示すアッパー40と、を備えている。本実施形態に係る投擲用シューズ100では、図2に示すように、アッパー40の底面41とアウトソール10の上面(本実施形態では、アウトソール本体20の上面及び高剛性部30の上面)とが接触しており、ミッドソールが存在しない。
【0037】
本実施形態に係るアウトソール10は、アウトソール本体20と、アウトソール本体20上に配置されたプレート状の高剛性部30とを備えている。
アウトソール本体20は、第1領域21と、第1領域21よりも内側に位置する第2領域22(図1図3において、ドット状のハッチングを施した領域)と、を有する。
図2に示すように、本実施形態の第2領域22は、アウトソール本体20に形成された凹溝22aを備え、図1に示すように、高剛性部30は、第2領域22の凹溝22aに嵌合され、第1領域21の上面と高剛性部30の上面とが略面一になっている。本実施形態では、高剛性部30は、アウトソール本体20の凹溝22aに嵌合されているだけであり、接着剤等によってアウトソール本体20に固定されてはいない。
ただし、本発明はこれに限るものではなく、高剛性部30が接着剤等によって凹溝22aに固定されていてもよい。また、第2領域22に凹溝22aを設けず、第2領域22上に高剛性部30を単に載せる構成でもよい。この場合、第1領域21の上面と高剛性部30の上面とが面一にならない(高剛性部30の上面が、高剛性部30の厚み分だけ第1領域21の上面よりも上方に突出する)。着用時の足当たりの違和感を解消したい場合、例えば、アウトソール10の上面に厚みの小さなミッドソールを配置すればよい。
【0038】
図4に示すように、高剛性部30が配置される第2領域22は、少なくとも踏み付け部(着用者の足の第1~第5MP関節に概ね対応する部分)のうちハッチングを施した足の第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に位置する。
具体的には、本実施形態の第2領域22は、好ましい態様として、少なくとも足趾部(MP関節よりも前方に位置する趾骨に概ね対応する部分)から中足部(楔状骨、舟状骨及び立方骨に概ね対応する部分)に対応する位置まで連続的に設けられている。これに伴い、第2領域22の凹溝22aに嵌合する高剛性部30は、少なくとも足趾部から中足部に対応する位置まで連続的に設けられている。
より具体的には、図4に示すように、本実施形態の第2領域22は、好ましい態様として、足趾部から後足部(距骨及び踵骨に概ね対応する部分)に対応する位置まで連続的に設けられている。これに伴い、第2領域22に嵌合する高剛性部30は、足趾部から後足部に対応する位置まで連続的に設けられている。
【0039】
アウトソール本体20は、例えば、ラバー又は樹脂から形成されている。一方、高剛性部30は、例えば、ナイロン、ポリプロピレン又はポリウレタンから形成され、アウトソール本体20よりも剛性が高くなっている。アウトソール本体20の第1領域21の硬度は、HA60以上が好ましく、65以上がより好ましい。第2領域22の硬度は、HA60以上が好ましく、70以上がより好ましい。高剛性部30の硬度は、HD60以上が好ましく、65以上がより好ましい。
【0040】
また、本実施形態のアウトソール本体20は、好ましい態様として、第2領域22が第1領域21よりも剛性が高くなっている。すなわち、図1図2及び図3において、アウトソール本体20のドット状のハッチングを施した第2領域22の剛性が、ハッチングを施していない第1領域21の剛性よりも高くなっている。したがい、高剛性部30の剛性>アウトソール本体20の第2領域22の剛性>アウトソール本体20の第1領域21の剛性、の順に剛性が高くなっている。
【0041】
第1領域21を形成する材料としては、例えば、ゴム成分を含む粘弾性体であることが好ましい。粘弾性体としては、23℃、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み7%の条件下における動的粘弾性測定での損失係数[tanδ]が0.17以上であることが好ましい。また、同条件下における動的粘弾性測定での貯蔵弾性率[E’]が5.7MPa以下であることが好ましい。さらに、100%伸張時の引張応力に対する300%伸張時の引張応力の比[M300/M100]が4.4以上であるものが好ましい。ゴム成分は、スチレンブタジエンランダム共重合体ゴムを含むことが好ましい。
第1領域21を上記のような材料で形成することで、グリップ性が高く、回転時の点接地時や蹴り出しの最終局面においてもエネルギーロスが起こらない。また、雨にも強いという効果が得られる。
【0042】
第2領域22を形成する材料としては、例えば、ブタジエンゴムとシリカとを含むゴム組成物であることが好ましい。このゴム組成物は、オイルをさらに含有し、このオイルの質量平均分子量が1060以上1800未満であることが好ましい。ブタジエンゴムは、含有する全てのゴムの量を100質量部とした際に85質量部を超える割合で含まれており、且つ、ブタジエンゴムは、分子構造の80%以上がシス-1,4単位となっているハイシスタイプのブタジエンゴムであることが好ましい。
第2領域22を上記のような材料で形成することで、耐摩耗性に優れ、回転の際の摩耗によるエネルギーロスを防ぐことができる。
【0043】
なお、アウトソール本体20に第1領域21及び第2領域22を形成する、すなわちアウトソール本体20の剛性を部位によって変えるには、例えば、異なる硬度を有する樹脂を用いて2色成形を行えばよい。この他、加圧条件を変えた複数回のプレス加工を行うことでも実現できる。具体的には、1回目のプレス加工で第2領域22のみを加工し、2回目のプレス加工で第1領域21のみを加工することが考えられる。また、1回目のプレス加工で全領域を加工し、2回目のプレス加工で第2領域22のみを加工することも考えられる。
【0044】
図2図4に示すように、本実施形態の高剛性部30は、フォーク状の形状を有する。具体的には、高剛性部30は、足趾部から踏み付け部に向けて前後方向に延びる複数(本実施形態では2つ)の切り込み部31によって幅方向に分割された複数(本実施形態では3つ)の分割部32a、32b、32cを有する。切り込み部31は、各趾骨に沿うように、斜めに形成(前方に向かうにつれて内足側に向かうように形成)されている。そして、複数の分割部32a、32b、32cは、内足側(母指側)に位置するものほど幅(各分割部の幅の平均値又は最大値)が広くなっている。すなわち、図2に示すように、分割部32aの幅Wa>分割部32bの幅Wb>分割部32cの幅Wc、の順に広くなっている。
高剛性部30が嵌合する第2領域22の凹溝22aも、上記の高剛性部30の形状に応じた切り込み部を有するフォーク状の形状になっている。第2領域22は、凹溝22aの切り込み部を除いて、凹溝22aの外縁に概ね沿った形状を有する。
【0045】
高剛性部30が複数の切り込み部31によって幅方向に分割された複数の分割部32a、32b、32cを有することにより、アウトソール10が幅方向に屈曲し易くなる。また、足趾部及び踏み付け部は、内足側に位置する部分ほど、両足支持期に地面への踏み付け力が比較的多くかかりやすいため、複数の分割部32a、32b、32cの幅が上記のようになっていることで、回転動作に支障を来さない状態で、踏み付け力を伝え易くして、グリップ性を高めることが可能である。
切り込み部31の幅は、分割部32a、32b、32cの幅よりも小さい。また、切り込み部31は、MP関節に概ね対応する踏み付け部まで延びている。これにより、高剛性部30の強度を維持しつつ、屈曲性を付与することができる。
【0046】
なお、高剛性部30が切り込み部31によって分割された分割部32a、32b、32cを有することが好ましいが、本発明はこれに限るものではなく、高剛性部30に切り込み部31が設けられていなくてもよい。また、切り込み部31の数(これに応じて決まる分割部の数)は適宜変更可能である。さらに、切り込み部31に相当する部分の厚みが、他の部分の厚みよりも小さく形成されていてもよい。
【0047】
図4に示すように、本実施形態のアウトソール本体20では、少なくとも内足側において、ハッチングを施した足の第1基節骨の前方に対応する部分は第1領域21とされている。換言すれば、本実施形態のアウトソール本体20では、少なくとも内足側において、第1基節骨の前方に対応する部分に第2領域22を有しない(したがって、凹溝22aを有しない)。また、第2領域22及び凹溝22aは、幅方向中央部が最も前方に突出している。具体的には、分割部32bが凹溝22aに嵌合する幅方向中央部が最も前方に突出している。上記の形状を有する第2領域22の凹溝22aに嵌合する高剛性部30も、上記の第2領域22の凹溝22aの形状に応じた形状になっている。
【0048】
図3に示すように、少なくとも前足部から中足部までの第2領域22の接地面(本実施形態ではアウトソール本体20の接地面全体)は平滑面であり、特許文献1、2に記載されているような突起や溝等の意匠が接地面に形成されていない。
なお、第2領域22の接地面が平滑面であればよく、例えば、第1領域21と第2領域22との間に溝が形成されていてもよい。
【0049】
図5は、本実施形態に係るアウトソール10の概略構成を示す図である。図5(a)は上面図を、図5(b)は内足側から見た側面図を、図5(c)は下面図を、図5(d)は外足側から見た側面図を示す。なお、図5(c)には、第2領域22にドット状のハッチングを施しているが、図5(a)では省略している。また、図5(a)及び図5(c)に示すAA線は、アウトソール10の中心線(最も前方に位置する点と最も後方に位置する点とを結ぶ直線)を意味する。また、図5(a)~(d)にそれぞれ示すBB線、CC線、DD線及びEE線は、アウトソール10の前後方向の同じ位置を示している。さらに、図5(b)及び(d)に示す直線Hは、地面を意味する。図5では、アウトソール10として、左足用を図示しているが、右足用は左足用と線対称の形状を有するので図示を省略し、以下、左足用についてのみ説明する。
図6は、本実施形態に係るアウトソール10の概略構成を示す断面図である。図6(a)は図5(a)に示すAA線に沿った断面を内足側から見た図を、図6(b)は図5(a)に示すBB線に沿った断面を後側から見た図を、図6(c)は図5(a)に示すCC線に沿った断面を後側から見た図を、図6(d)は図5(a)に示すDD線に沿った断面を後側から見た図を、図6(e)は図5(a)に示すEE線に沿った断面を後側から見た図を示す。なお、図6において、高剛性部30にはハッチングを施している。
【0050】
図6から分かるように、高剛性部30の厚みは、アウトソール本体20の凹溝が設けられていない部分(高剛性部30が配置されていない部分)の厚みの半分以上である。また、高剛性部30の厚みは、アウトソール本体20の凹溝が設けられている部分の厚みと同じか又は少し大きい。高剛性部30が上記のような厚みを有することで、地面への踏み付け力をより確実に伝えることができる。
【0051】
図6(a)から分かるように、本実施形態の高剛性部30は、前端からCC線近傍までの部分が前後方向に湾曲(下に凸に湾曲)し、それ以外の部分(CC線近傍から後方の部分)が平面状になっている。図4及び図5(a)も参照すれば、これは、高剛性部30が、足趾部から踏み付け部までの部分が前後方向に湾曲し、それ以外の部分が平面状であることを示している。
【0052】
図6(b)~(e)から分かるように、高剛性部30が配置されているアウトソール本体20の第2領域22の接地面2mは、平面又は曲面(図6に示す例では大部分が平面)である。一方、第1領域21の接地面2i、2oは、第2領域22の接地面2mよりも幅方向の曲率が大きな曲面である。接地面2i、2oの曲率半径は5mm~25mmであることが好ましい。接地面2mが曲面の場合、その曲率半径は150mm以上であることが好ましい。
【0053】
また、図6(b)、(c)から分かるように、第1領域21の接地面2i、2oのうち、内足側に位置する接地面2iの方が外足側に位置する接地面2oよりも幅方向の曲率が大きい。図4及び図5(a)も参照すれば、これは、少なくとも前足部における第1領域21の接地面2i、2oのうち、内足側に位置する接地面2iの方が外足側に位置する接地面2oよりも幅方向の曲率が大きいことを示している。
【0054】
以上に説明した構成を有する本実施形態に係るアウトソール10及びこれを備えた投擲用シューズ100によれば、アウトソール本体20が、第1領域21と、第1領域21よりも内側に位置し、踏み付け部のうち、両足支持期に地面への踏み付け力が比較的多くかかりやすい第1MP関節、第2MP関節及び第3MP関節に対応する部分に少なくとも位置する第2領域22と、を有する。そして、第2領域22上にアウトソール本体20よりも剛性が高いプレート状の高剛性部30が配置されている。高剛性部30は、アウトソール本体20よりも剛性が高いため、変形量が同じであれば、元に戻ろうとする反発力が大きくなる結果、地面への踏み付け力が伝わり易く、グリップ性を高めることが可能である。一方、回転動作の際に使用することが多い外側に位置する第1領域21は、高剛性部30よりも剛性が低いために変形し易く、回転動作をスムーズに行うことが可能である。
【0055】
なお、本実施形態では、アウトソール10が、アウトソール本体20と、アウトソール本体20の第2領域22上に配置(凹溝22aに嵌合)された高剛性部30と、を備えた構成について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、プレート状の高剛性部30を備える代わりに、アウトソール本体20が有する第2領域22が第1領域21よりも剛性が高い高剛性部から形成されたアウトソールとすることも可能である。すなわち、プレート状の高剛性部30に代えて、第2領域22全体が高剛性の樹脂で形成されていてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、少なくとも内足側において、足の第1基節骨の前方に対応する部分が第1領域21とされたアウトソール本体20について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、図7に示すように、少なくとも内足側において、足の第1末節骨の前方に対応する部分が第1領域21とされたアウトソール本体にすることも可能である。その他、第1領域21と第2領域22との境界は適宜変更可能である。
【0057】
さらに、本実施形態では、投擲用シューズ100のアッパー40の底面41とアウトソール10の上面とが接触しており、ミッドソールが存在しない構成について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、ミッドソールを備えた投擲用シューズとすることも可能である。この場合、ミッドソールの厚みをアウトソール10の厚みよりも小さくすることで、地面への踏み付け力をより伝え易くして、グリップ性を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10・・・アウトソール
20・・・アウトソール本体
30・・・高剛性部
40・・・アッパー
21・・・第1領域
22・・・第2領域
22a・・・凹溝
100・・・投擲用シューズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7