(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】カロテノイド含有油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20231116BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20231116BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20231116BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20231116BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20231116BHJP
A61K 31/336 20060101ALI20231116BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231116BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A23L33/10
A23D9/007
A23D9/013
A61K31/047
A61K31/122
A61K31/336
A61K47/14
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2019113258
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2018116743
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山際 均
(72)【発明者】
【氏名】福原 寛央
(72)【発明者】
【氏名】冨永 悦子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112573(WO,A1)
【文献】米国特許第03886294(US,A)
【文献】Rose Drop Night Peeling Concentrate,Mintel GNPD, [online], ID#:5682941,2018年05月,[Retrieved on 28-03-2023], Retrieved from the Internet: <URL: https://portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23D
A61K
A61P
A61Q
C11B
C11C
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイドと中鎖脂肪酸エステルと油脂とを含有する
カロテノイド含有油脂組成物であって、前記カロテノイドがフコキサンチンであり、前記中鎖脂肪酸エステルは、カプリル酸モノグリセリンエステル、カプリン酸モノグリセリンエステル及びラウリン酸ジグリセリンエステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、前記中鎖脂肪酸エステルの含量は、フコキサンチン1質量部に対して、0.5~20質量部の範囲である経口投与用カロテノイド含有油脂組成物。
【請求項2】
カロテノイドと中鎖脂肪酸エステルと油脂とを含有す
るカロテノイド含有油脂組成物であって、前記カロテノイドは、ルテイン及びアスタキサンチンからなる群から選択される少なくとも一つであり、前記中鎖脂肪酸エステルの中鎖脂肪酸の炭素数は、8個~12個であり、前記中鎖脂肪酸エステルの含量は、カロテノイド1質量部に対して、0.5~5質量部の範囲である経口投与用カロテノイド含有油脂組成物。
【請求項3】
カロテノイドと中鎖脂肪酸エステルと油脂とを含有するカロテノイド含有油脂組成物であって、前記カロテノイドは、ルテイン、アスタキサンチン及びフコキサンチンからなる群から選択される少なくとも一つであり、前記中鎖脂肪酸エステルは、カプリル酸モノグリセリンエステル、カプリン酸モノグリセリンエステル及びラウリン酸ジグリセリンエステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、前記中鎖脂肪酸エステルの含量は、前記カロテノイド1質量部に対して、0.5~5質量部の範囲である経口投与用カロテノイド含有油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロテノイド含有油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンやルテインなどのカロテノイド化合物には、白内障や加齢黄斑変性症などの眼疾患に有効であることが知られている。これらのカロテノイドは、野菜や果物に含まれているものの、極微量に過ぎない。このため、カロテノイドを野菜や果物から抽出し、油や有機溶剤で乳化することによって、食品分野や化粧品分野に応用する技術が報告されている(特許文献1)。
また、アスタキサンチンやルテインの吸収率を向上させて、機能性食品素材を提供する研究開発が行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-512587号公報
【文献】特開2008-255069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤と、多価アルコール、水、レシチン、セラミドなどと共に乳化させる技術が開示されている。
しかしながら、上記技術は、多くの添加物を含むことから、なるべく少ない材料によって、カロテノイドの吸収性を向上させる技術が望まれていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カロテノイドの吸収性を向上させたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するための本発明に係るカロテノイド含有油脂組成物は、カロテノイドと中鎖脂肪酸エステルとを含有することを特徴とする。
カロテノイド(カルチノイド)とは、赤色・黄色・橙色などを示す天然の色素の一群であり、一般に8個のイソプレン単位が結合して構成された化学式C40H56の基本骨格を持つ。本発明のカロテノイドには、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、リコペン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン及びこれらのエステル体の化合物が含まれる。
本願発明における中鎖脂肪酸エステルとは、グリセリンの3個のヒドロキシ基のうち1個または2個に中鎖脂肪酸がエステル結合したものを意味する。すなわち、中鎖脂肪酸エステルは、モノグリセリン中鎖脂肪酸エステルまたはジグリセリン中鎖脂肪酸エステルを意味する。中鎖脂肪酸とは、炭素数が8個~12個(C8、C10、C12)の脂肪酸を意味し、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸を意味する。本願発明において、中鎖脂肪酸エステルを用いる場合には、モノグリセリン中鎖脂肪酸エステルまたはジグリセリン中鎖脂肪酸エステルをそれぞれ単独で用いても良いし、両者を混合して用いることもできる。
【0006】
中鎖脂肪酸エステルのモノエステル含量は特に限定するものではないが、モノグリセリン中鎖脂肪酸エステルのモノエステル含量は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上である。ジグリセリン中鎖脂肪酸エステルのモノエステル含量は70%以上が好ましく、より好ましくは75%以上である。
一般にグリセリン中鎖脂肪酸エステルは、グリセリンと中鎖脂肪酸を加熱し、エステル化反応を為し、蒸留操作により、副生成物となるグリセリン、ジエステル、トリエステルを除き、モノエステル含量が規定値以上のものを得ることが出来る。
モノエステル含量の分析は、常法に従いグリセリン中鎖脂肪酸エステルをアセチル化もしくはTMS化を行った後、ガスクロマトグラフ測定を行い、モノエステルに相当するピーク面積を算出するなどして行うことができる。
本発明で言うモノエステル含量とは、グリセリン脂肪酸エステル中のモノエステルのことを言う。
【0007】
上記発明において、中鎖脂肪酸エステルの含量は、カロテノイド(但し、フコキサンチンを除く)が1に対して、0.5~50(好ましくは0.5~30)の量を用いることが好ましい。カロテノイドがフコキサンチンの場合には、中鎖脂肪酸エステルの含量は、フコキサンチンが1に対して、0.5~100(好ましくは0.5~90)の範囲であることが好ましい。
油脂とは、脂肪酸とグリセリンとのエステルでトリグリセリドの形態を取るものを意味し、常温で液体のもの(脂肪油)と固体のもの(脂肪)がある。本発明においては、常温で液体のものを用いることが好ましい。そのような油脂としては、例えばコーン油、サラダ油、白絞油、大豆油、ゴマ油、キャノーラ油(菜種油)、こめ油、榧油、糠油、椿油、サフラワー油(ベニバナ油)、ヤシ油(パーム核油)、綿実油、ひまわり油、エゴマ油、アマニ油、オリーブ油、ピーナッツ油、アーモンド油、アボガドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウオールナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル、レタス油、鯨油、鮫油、肝油などが例示される。
【0008】
本発明のカロテノイド含有油脂組成物には、前記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で通常の食品に使用可能な界面活性剤を併用でき、特に限定されるものではないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド誘導体(ただし、本発明の中鎖脂肪酸エステルを除く)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、レシチン、酵素分解レシチン、サポニン、キラヤ抽出物といった天然物由来の界面活性剤などが挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生体への吸収率を高めたカロテノイド含有油脂組成物、特に吸収性を向上させたもの(カロテノイドの吸収性向上剤)を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】対照例、実施例1~実施例4において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。データは、それぞれ5例の平均値±S.E.を示す(
図2~
図10においても同じ)。
【
図2】実施例5~実施例7において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図3】実施例8~実施例12において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図4】実施例13~実施例15において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図5】実施例16~実施例18において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図6】実施例19~実施例21において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図7】実施例32~実施例35において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図8】比較例1~比較例3において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図9】比較例4~比較例7において、投与後の時間と血中アスタキサンチン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図10】実施例22~実施例26において、投与後の時間と血中ルテイン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図11】実施例36及び実施例37において、投与後の時間と血中ルテイン濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図12】実施例27~実施例31において、投与後の時間と血中フコキサンチノール濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図13】実施例38~実施例41において、投与後の時間と血中フコキサンチノール濃度の関係を示す折線グラフである。
【
図14】実施例42~実施例44において、投与後の時間と血中フコキサンチノール濃度の関係を示す折線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
<アスタキサンチンの評価>
まず、カロテノイドとして、アスタキサンチンを選択し、本発明によって提供される製剤の評価を行った。
1.アスタキサンチン含有油脂組成物の調製
表1~表3に示す配合により、対照例、本実施形態のアスタキサンチン含有油脂組成物及び比較製剤を調製した。すなわち、実施例については、アスタキサンチン含有油脂(アスタキサンチン35%含有)、油脂(コーン油)及び中鎖脂肪酸エステル(カプリル酸モノグリセリンエステル(C8)、カプリン酸モノグリセリンエステル(C10)、ラウリン酸モノグリセリンエステル(C12)、カプリル酸ジグリセリンエステル(C8)、カプリン酸ジグリセリンエステル(C10)、ラウリン酸ジグリセリンエステル(C12))を表に示す通りに加え、全量を100gとした。
対照例(対照実験)として、アスタキサンチン含有油脂とコーン油のみを含有し、中鎖脂肪酸エステルを含有しないものを用いた。比較例として、各種の中鎖脂肪酸エステル2.5g(比較例6,7)、中鎖脂肪酸2.5g(比較例1~3)、中鎖脂肪酸トリグリセリド2.5g(比較例4)またはステアリン酸モノグリセリンエステル2.5g(比較例5)を含有するものを用いた。また、比較例6,7では、コーン油に代えて、イオン交換水を用いた。
上記各成分を混合した後に、ヒスコトロン NS-50型(日音医理科器機製作所社製)を用いて目盛り35で2分間処理して全体を均質化した。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
2.吸収性確認試験
表1~表3に示した対照例(対照実験)、実施例1~21,32~35及び比較例1~比較例7の各製剤について、ラットを用いてアスタキサンチンの吸収性を調べた。
各試験群毎に5匹のラット(SD系雄性、10週齢)を体重のバラツキが少なくなるように群分けした。各製剤は、ラット体重当たりアスタキサンチンの投与量が20mg/Kgとなるように約0.12ml~0.4mlを経口投与針を用いて経口投与した。
各製剤を投与した後、0、2、4、6及び8時間後に尾静脈から約1mLを採血した。血液を遠心分離(3500rpm×10分間)し、血漿サンプルを得た。各血漿サンプルについて、エーテルでアスタキサンチンを抽出後に乾固し、ヘキサン:アセトン(82:18)に再溶解させた後、HPLC(Waters製 Alliance 2695)分析に供した。HPLCには、カラムとしてPhenomenex Luna 3μ silica (II)を、移動相としてヘキサン:アセトン(82:18)を流量1.2ml/minで用いた。検出にはUV検出器(波長470nm)を用いた。また、カラムヒーターを用いて、カラム温度を30℃とした。
血漿サンプル中のアスタキサンチン濃度を測定し、投与後の時間と血中濃度の関係を調べ、AUC(血中濃度・時間曲線下面積)を算出した。
【0016】
投与後の時間の血中濃度のグラフを
図1~
図8に示した。対照実験のデータ(
図1中の最も低い位置にあるグラフ)に比べると、実施例1~実施例21、実施例32~実施例35では、いずれも血漿中アスタキサンチン濃度は高値を示した。表1~表3の下から4段目にはAUCの平均値を、3段目には対照実験と比較した時のAUCの割合を示した。対照実験と比較すると、実施例では2.5倍~5.6倍の吸収性を示した。
比較例1~比較例3より、中鎖脂肪酸のみ(C8~C12)を用いた場合には、吸収性は向上することが分かった(但し、後述のように、風味評価が悪くなるために、そのままでは飲食品に使い難かった。)。
比較例4,5より、中鎖脂肪酸トリグリセリドや長鎖脂肪酸エステル(C18)を用いた場合には、吸収性は、実施例よりも低かった。
また、比較例6,7より、イオン交換水を用いた場合(油脂を用いない場合)には、吸収性は向上しなかった。
【0017】
3.風味の評価試験
表1~表3に示す実施例及び比較例のそれぞれについて、小さじ1杯の試料を口に含み、対照品と比較した際の風味評価を訓練された10名の専門パネラーにより実施した。風味の評価として、0点(対照品より悪い)から5点(対照品と同等)までの6段階とした。
結果を表1~表3の下から2段目に示した。データは、10名のパネラーの平均値で示した。
実施例1~21,32~35では、風味評価の平均値は、0.7~3.9であった。また、比較例1~比較例7については、風味評価の平均値は、0.2~4.5であった。特に、比較例1~比較例3(本実施形態の中鎖脂肪酸エステルに代えて、中鎖脂肪酸を用いたもの)では、風味評価が0.2~0.5と非常に低値であった。
【0018】
4.総合評価
吸収性試験と風味評価試験の結果を纏めて、総合評価を行った。その結果を表1~表3の最下段に示した。総合評価の値が高いほど、有用性が高いと考えられた。結果を見ると、実施例1~21,32~35では、8.8~13.0を示した。一方、比較例1~比較例7では、5.0~7.6であった。
上記結果より、本発明によって提供される製剤は、カロテノイド(アスタキサンチン)の吸収性を向上させると共に、風味が良好であることが分かった。
【0019】
<ルテインの評価>
次に、カロテノイドとして、ルテインを選択し、本発明によって提供される製剤の評価を行った。
1.ルテイン含有油脂組成物の調製
表4に示す配合により、対照例及び本実施形態のルテイン含有油脂組成物を調製した。実施例22~26,36,37については、ルテイン配合油脂(ルテイン20%含有)、油脂(コーン油)及び中鎖脂肪酸エステル(モノグリセリン中鎖脂肪酸エステル、ジグリセリン中鎖脂肪酸エステル)を表に示す通りに加え、全量を100gとした。
対照例(対照実験)として、ルテイン含有油脂とコーン油のみを含有し、中鎖脂肪酸エステルを含有しないものを用いた。上記各成分を混合した後に、「<アスタキサンチンの評価>1.アスタキサンチン含有油脂組成物の調製」に記載の方法に従って処理し、全体を均質化した。
【0020】
【0021】
2.吸収性確認試験
前記「<アスタキサンチンの評価>2.吸収性確認試験」に記載の方法に従って、ラットを用いてルテインの吸収性を調べた。但し、各製剤は、ラット体重当たりルテインの投与量が15mg/Kgとなるように約0.09ml~0.35mlを経口投与針を用いて経口投与した。
各製剤を投与後の時間の血中濃度のグラフを
図10及び
図11に示した。対照実験のデータに比べると、実施例22~26,36,37では、いずれも血漿中ルテイン濃度は高値を示した。表4の下から4段目にはAUCの平均値を、3段目には対照実験と比較した時のAUCの割合を示した。対照実験と比較すると、実施例では2.7倍~5.1倍の吸収性を示した。
【0022】
3.風味の評価試験
前記「<アスタキサンチンの評価>3.風味の評価試験」に記載の方法に従って、対照品と比較した際の風味評価を6段階で行った。結果を表4の下から2段目に示した。データは、10名のパネラーの平均値で示した。
実施例22~26,36,37では、風味評価の平均値は、0.9~3.9であった。
4.総合評価
吸収性試験と風味評価試験の結果を纏めて、総合評価を行った。その結果を表4の最下段に示した。実施例22~26,36,37では、7.3~11.6と高値を示した。
なお、上記実施例については一部のみを示したが、ルテインについても、アスタキサンチンと同様の結果を得た。上記結果より、本発明によって提供される製剤は、カロテノイド(ルテイン)の吸収性を向上させると共に、風味が良好であることが分かった。
【0023】
<フコキサンチンの評価>
次に、カロテノイドとして、フコキサンチンを選択し、本発明によって提供される製剤の評価を行った。
1.フコキサンチン含有油脂組成物の調製
表5に示す配合により、対照例及び本実施形態のフコキサンチン含有油脂組成物を調製した。実施例27~31,38~44については、フコキサンチン配合油脂(フコキサンチン20%含有)、油脂(コーン油)及び中鎖脂肪酸エステル(モノグリセリン中鎖脂肪酸エステル、ジグリセリン中鎖脂肪酸エステル)を表に示す通りに加え、全量を100gとした。
対照例(対照実験)として、フコキサンチン含有油脂とコーン油のみを含有し、中鎖脂肪酸エステルを含有しないものを用いた。上記各成分を混合した後に、「<アスタキサンチンの評価>1.アスタキサンチン含有油脂組成物の調製」に記載の方法に従って処理し、全体を均質化した。
【0024】
【0025】
2.吸収性確認試験
前記「<アスタキサンチンの評価>2.吸収性確認試験」に記載の方法に従って、ラットを用いてフコキサンチンの吸収性を調べた。但し、各製剤は、ラット体重当たりフコキサンチンの投与量が20mg/kgとなるように約0.12ml~2.0mlを経口投与針を用いて経口投与した。なおフコキサンチンの吸収性に関しては、代謝産物であるフコキサンチノールの血漿中濃度を測定し評価した。
各製剤を投与後の時間の血中濃度のグラフを
図12~
図14に示した。対照実験のデータに比べると、実施例27~31,38~44では、いずれも血漿中フコキサンチノール濃度は高値を示した。表5の下から4段目にはAUCの平均値を、3段目には対照実験と比較した時のAUCの割合を示した。対照実験と比較すると、実施例では2.7倍~5.4倍の吸収性を示した。
【0026】
3.風味の評価試験
前記「<アスタキサンチンの評価>3.風味の評価試験」に記載の方法に従って、対照品と比較した際の風味評価を6段階で行った。結果を表5の下から2段目に示した。データは、10名のパネラーの平均値で示した。
実施例27~31,38~44では、風味評価の平均値は、0.6~3.4であった。
4.総合評価
吸収性試験と風味評価試験の結果を纏めて、総合評価を行った。その結果を表5の最下段に示した。実施例27~31,38~44では、6.0~12.1と高値を示した。
なお、上記実施例については一部のみを示したが、フコキサンチンについても、アスタキサンチンと同様の結果を得た。上記結果より、本発明によって提供される製剤は、カロテノイド(フコキサンチン)の吸収性を向上させると共に、風味が良好であることが分かった。
【0027】
また、その他のカロテノイド(α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、リコペン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、アンテラキサンチン及びビオラキサンチン)についても、アスタキサンチンと同様の結果が得られた。
このように、本実施形態によれば、中鎖脂肪酸エステルを用いることにより、カロテノイドの吸収率を格段に向上させると共に、風味を良好に維持できるカロテノイド含有油脂組成物を提供できた。