IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシザキ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-冷却貯蔵庫 図1
  • 特許-冷却貯蔵庫 図2
  • 特許-冷却貯蔵庫 図3
  • 特許-冷却貯蔵庫 図4
  • 特許-冷却貯蔵庫 図5
  • 特許-冷却貯蔵庫 図6
  • 特許-冷却貯蔵庫 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20231116BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20231116BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F25B1/00 311D
F25D19/00 510C
F25D11/00 101E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019163544
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021042881
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊切 義朗
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-303887(JP,A)
【文献】特開平08-271063(JP,A)
【文献】実開昭57-097863(JP,U)
【文献】特開2000-130864(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147290(WO,A1)
【文献】特開昭55-049662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25D 19/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却貯蔵庫であって、
回転数が可変の圧縮機、凝縮器、膨張部品及び蒸発器が配管によって循環接続されている冷凍回路と、
前記凝縮器と前記膨張部品とを接続している前記配管から分岐し、前記圧縮機に接続されているインジェクション回路と、
を備え、
前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間において、前記圧縮機の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は前記凝縮器から前記インジェクション回路を介して前記圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、前記所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となる位置で前記配管から分岐している、冷却貯蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却貯蔵庫であって、
前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間から分岐している分岐配管と、前記分岐配管に接続されているインジェクション用膨張部品とを有し、
前記分岐配管が、前記凝縮器と前記膨張部品とを接続している前記配管から上に向かって気液冷媒を分離できる角度で立ち上がっている、冷却貯蔵庫。
【請求項3】
請求項1に記載の冷却貯蔵庫であって、
前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間から分岐している分岐配管と、前記分岐配管に接続されているインジェクション用膨張部品とを有し、
前記凝縮器と前記膨張部品との間において前記分岐配管が分岐している分岐位置及び前記分岐配管の配管長は、前記高負荷時は前記凝縮器から前記インジェクション回路を介して前記圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、前記低負荷時は気相状態となる分岐位置及び配管長である、冷却貯蔵庫。
【請求項4】
請求項1に記載の冷却貯蔵庫であって、
前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間から分岐している分岐配管と、前記分岐配管に接続されているインジェクション用膨張部品とを有し、
前記凝縮器と前記膨張部品との間において前記分岐配管が分岐している分岐位置及び前記分岐配管の配管径は、前記高負荷時は前記凝縮器から前記インジェクション回路を介して前記圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、前記低負荷時は気相状態となる分岐位置及び配管径である、冷却貯蔵庫。
【請求項5】
請求項1に記載の冷却貯蔵庫であって、
前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間から分岐している非直線形状の分岐配管と、前記分岐配管に接続されているインジェクション用膨張部品とを有し、
前記凝縮器と前記膨張部品との間において前記分岐配管が分岐している分岐位置及び前記分岐配管の形状は、前記高負荷時は前記凝縮器から前記インジェクション回路を介して前記圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、前記低負荷時は気相状態となる分岐位置及び形状である、冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
回転数が可変の圧縮機、凝縮器、膨張部品及び蒸発器が配管によって循環接続されている冷凍回路において、凝縮器と膨張部品との間の冷媒を圧縮機に送るインジェクション回路を備えるものが知られている。インジェクション回路は高圧の液相冷媒を圧縮機のシリンダ内部に送り、液相冷媒の蒸発潜熱で圧縮機の吐出ガスの温度を低くすることによって圧縮機のモータを冷却する回路である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-81698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインジェクション回路は、インジェクション用の膨張部品としてキャピラリチューブを使用し、キャピラリチューブの手前に設けられている電磁弁を開閉することによってインジェクション回路に冷媒を流すか流さないかを制御している。具体的には、圧縮機の出口側に接続されている配管(圧縮機吐出管)に配されている吐出管サーモスタットによって検知された温度と電磁弁の開閉とが連動し、圧縮機吐出管の温度が一定値以上になると電磁弁が開になる。電磁弁が開になるとインジェクション回路から蒸発器に冷媒が流れ、圧縮機が冷却される。圧縮機吐出管の温度が一定値未満になると電磁弁が閉になる。電磁弁が閉になるとインジェクション回路が遮断され、圧縮機の冷却が停止する。
【0005】
圧縮機として回転数が可変の圧縮機を用いる冷凍回路では、圧縮機の単位時間当たりの回転数(以下、単に「回転数」という)が制御部によって制御される。制御部は庫内温度を検知し、検知した温度に応じて圧縮機の回転数を制御する。圧縮機の回転数が高いと庫内を冷却する冷力が大きくなり、圧縮機の回転数が低いと冷力が小さくなる。例えば、冷却貯蔵庫の扉を開閉したときや、庫内に収納物を収納したとき、あるいは周囲温度が高いときは圧縮機が高回転で運転される。逆に、周囲温度が低いときは低回転で運転される。また、圧縮機は高回転で運転すると冷力が大きくなると同時に、圧縮機の温度上昇、冷媒循環量の増加、高圧圧力上昇する傾向がある。ただし、高圧圧力に関しては周囲温度や凝縮器ファンモータの制御によって変動しない場合もある。
【0006】
冷凍回路が収容されている機械室が貯蔵庫の下にある機種(例えばクローズドショーケース)は、機械室内に熱が籠るため、圧縮機の周囲温度が上昇して圧縮機の温度が上昇し易い。圧縮機の温度が上昇すると圧縮機吐出管の温度が上昇する。圧縮機吐出管の温度が上昇すると電磁弁が開となり、インジェクション回路に冷媒が流れて圧縮機が冷却される。
凝縮器の出口の冷媒は高圧の液相冷媒(高圧液)であり、圧縮機内の冷媒は低圧の気相冷媒(低圧ガス)である。インジェクション流量はそれらの圧力差とインジェクション回路の管路抵抗によって決まる。また、インジェクション回路の入口の冷媒が液相状態だとインジェクション回路の出口で冷媒が膨張するので圧縮機の冷却効果が得られるが、気相状態だと状態変化が起きないため圧縮機の冷却効果は得られない。
【0007】
インジェクション回路は液相冷媒の一部を圧縮機自体の冷却で使用するので、圧縮機の効率や冷力が低下する。また圧縮機が過熱していないときにインジェクションすると圧縮機内で冷媒が蒸発しないため液圧縮する可能性がある。液圧縮すると圧縮機が故障する虞がある。
【0008】
これらの理由から、従来は、インジェクション回路の制御として、前述した吐出管サーモスタットによって検知された温度に応じて電磁弁を開閉する制御を行っていた。しかしながら、電磁弁や吐出管サーモスタットを備えると部品点数が増加するという課題があった。
【0009】
本明細書では、圧縮機過熱時には圧縮機に液相冷媒が流れ、圧縮機非過熱時には気相冷媒が流れるインジェクション回路を、部品点数を抑制しつつ実現する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本明細書で開示する冷却貯蔵庫は、回転数が可変の圧縮機、凝縮器、膨張部品及び蒸発器が配管によって循環接続されている冷凍回路と、前記凝縮器と前記膨張部品とを接続している前記配管から分岐し、前記圧縮機に接続されているインジェクション回路と、を備え、前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間において、前記圧縮機の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は前記凝縮器から前記インジェクション回路を介して前記圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、前記所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となる位置で前記配管から分岐している、冷却貯蔵庫。
【0011】
本願発明者は、凝縮器と膨張部品との間には、圧縮機の高負荷時には冷媒が液相状態となり、低負荷時には気相状態となる位置が存在することを見出した。
【0012】
上記の冷却貯蔵庫によると、分岐配管の分岐位置は、凝縮器と膨張部品との間のうち、圧縮機の高負荷時には冷媒が液相状態となり、低負荷時には冷媒が気相状態となる位置である。このようにすると、高負荷時にはインジェクション回路に液相冷媒が流れ易くなり、低負荷時にはインジェクション回路に気相冷媒が流れ易くなる。このため、圧縮機過熱時のインジェクションが必要なときには液相冷媒が流れて圧縮機を冷却し、圧縮機非過熱時のインジェクションが不要なときには気相冷媒が流れて圧縮機を冷却しないインジェクション回路を、電磁弁や電磁弁の開閉を制御する吐出管サーモスタットなどを用いることなく実現できる。
よって冷却貯蔵庫によると、圧縮機過熱時には圧縮機に液相冷媒が流れ、圧縮機非過熱時には気相冷媒が流れるインジェクション回路を、部品点数を抑制しつつ実現できる。
【0013】
(2)前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間から分岐している分岐配管と、前記分岐配管に接続されているインジェクション用膨張部品とを有し、前記分岐配管が、前記凝縮器と前記膨張部品とを接続している前記配管から上に向かって気液冷媒を分離できる角度で立ち上がっていてもよい。
【0014】
上記の冷却貯蔵庫によると、分岐配管が上に向かって気液冷媒を分離できる角度で立ち上がっているので、高負荷時にはインジェクション回路に液相冷媒がより流れ易くなり、低負荷時にはインジェクション回路に気相冷媒がより流れ易くなる。
【0015】
(3)前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間から分岐している分岐配管と、前記分岐配管に接続されているインジェクション用膨張部品とを有し、前記凝縮器と前記膨張部品との間において前記分岐配管が分岐している分岐位置及び前記分岐配管の配管長は、前記高負荷時は前記凝縮器から前記インジェクション回路を介して前記圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、前記低負荷時は気相状態となる分岐位置及び配管長であってもよい。
【0016】
前述した(1)の構成の場合、分岐配管の分岐位置が限定される。しかしながら、冷凍回路を構成している部品のレイアウト上、高負荷時には液相状態となり、低負荷時には気相状態となる位置からインジェクション回路を分岐できないこともあり得る。
これについて検討した本願発明者は、分岐配管の配管長には、高負荷時は凝縮器からインジェクション回路を介して圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、低負荷時は気相状態となる配管長があることを見出した。
上記の冷却貯蔵庫によると、分岐配管の分岐位置と配管長との組み合わせによって分岐位置の選択範囲が広がるため、インジェクション回路の設計の自由度が向上する。
【0017】
(4)前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間から分岐している分岐配管と、前記分岐配管に接続されているインジェクション用膨張部品とを有し、前記凝縮器と前記膨張部品との間において前記分岐配管が分岐している分岐位置及び前記分岐配管の配管径は、前記高負荷時は前記凝縮器から前記インジェクション回路を介して前記圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、前記低負荷時は気相状態となる分岐位置及び配管径であってもよい。
【0018】
前述した(1)の構成の場合、分岐配管の分岐位置が限定される。しかしながら、冷凍回路を構成している部品のレイアウト上、高負荷時には液相状態となり、低負荷時には気相状態となる位置からインジェクション回路を分岐できないこともあり得る。
これについて検討した本願発明者は、分岐配管の配管径(言い換えると分岐配管の太さ)には、高負荷時は凝縮器からインジェクション回路を介して圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、低負荷時は気相状態となる配管径があることを見出した。
上記の冷却貯蔵庫によると、分岐配管の分岐位置と配管径との組み合わせによって分岐位置の選択範囲が広がるため、インジェクション回路の設計の自由度が向上する。
【0019】
(5)前記インジェクション回路は、前記凝縮器と前記膨張部品との間から分岐している非直線形状の分岐配管と、前記分岐配管に接続されているインジェクション用膨張部品とを有し、前記凝縮器と前記膨張部品との間において前記分岐配管が分岐している分岐位置及び前記分岐配管の形状は、前記高負荷時は前記凝縮器から前記インジェクション回路を介して前記圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、前記低負荷時は気相状態となる分岐位置及び形状であってもよい。
【0020】
前述した(1)の構成の場合、分岐配管の分岐位置が限定される。しかしながら、冷凍回路を構成している部品のレイアウト上、高負荷時には液相状態となり、低負荷時には気相状態となる位置からインジェクション回路を分岐できないこともあり得る。
これについて検討した本願発明者は、分岐配管の形状には、高負荷時は凝縮器からインジェクション回路を介して圧縮機に流れる冷媒が液相状態となり、低負荷時は気相状態となる形状があることを見出した。
上記の冷却貯蔵庫によると、分岐配管の分岐位置と形状との組み合わせによって分岐位置の選択範囲が広がるため、インジェクション回路の設計の自由度が向上する。
【0021】
本明細書によって開示される発明は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係るクローズドショーケースの斜視図
図2】冷凍回路のブロック図
図3】凝縮器と膨張部品とを接続している配管の一部、及び、インジェクション回路の一部を示す側面図
図4】クローズドショーケースの電気的構成を示すブロック図
図5】太い分岐配管及び細い分岐配管の断面図
図6】実施形態3に係る凝縮器と膨張部品とを接続している配管の一部、及び、インジェクション回路の一部を示す側面図
図7】実施形態4に係る凝縮器と膨張部品とを接続している配管の一部、及び、インジェクション回路の一部を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図4に基づいて説明する。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0024】
(1)クローズドショーケースの構成
図1に示すように、実施形態1に係る冷却貯蔵庫としてのクローズドショーケース1は、前側が開放されている断熱箱体により構成された貯蔵庫本体11、貯蔵庫本体11の前側の開口を開閉する左右一対の観音開き式のガラス扉13、及び、貯蔵庫本体11の下方に設けられている機械室12を備えている。機械室12には貯蔵庫本体11の庫内を冷却する冷凍回路30(図2参照)、制御部50(図4参照)、図示しない電源部などが収容されている。機械室12の前面には操作部51が設けられている。
【0025】
(2)冷凍回路
図2に示すように、冷凍回路30はインバータ圧縮機31(回転数が可変の圧縮機の一例)、凝縮器32、ドライヤ33、熱交換区間34、サイトグラス35、膨張弁36(膨張部品の一例)、蒸発器37及びアキュムレータ38を備えており、これらがこの順で配管39(39A~39D)によって循環接続されている。蒸発器37は機械室12ではなく貯蔵庫本体11の庫内に配置されている。冷凍回路30は膨張弁36に替えてキャピラリチューブを備えてもよい。
【0026】
熱交換区間34とは、凝縮器32と膨張弁36とを接続している配管39Bの一部と、蒸発器37とインバータ圧縮機31とを接続している配管39Dの一部とが隣接されて平行に延びている区間のことをいう。熱交換区間34はフラッシュガスや低圧冷媒の液戻りを防止する目的で設けられている。サイトグラス35は配管39Bの途中に設置され、配管39内を通る冷媒を直接目視することによって冷媒の状態を観察するための器具である。サイトグラスはなくてもよい。
【0027】
また、冷凍回路30はインバータ圧縮機31の高負荷時にインバータ圧縮機31を冷却するためのインジェクション回路40、蒸発器37によって冷却された空気を庫内に循環させる庫内ファン18(図4参照)、凝縮器32を冷却するための凝縮器ファン41(図4参照)なども備えている。
【0028】
図3に示すように、インジェクション回路40は、凝縮器32と膨張弁36とを接続している配管39Bにおいて凝縮器32と熱交換区間34との間から分岐している分岐配管40Aと、分岐配管40Aに接続されているキャピラリチューブ40B(インジェクション用膨張部品の一例)とを有している。キャピラリチューブ40Bは一端が分岐配管40Aに接続されており、他端がインバータ圧縮機31に接続されている。インジェクション用膨張部品はキャピラリチューブ40Bに限定されるものではなく、例えば膨張弁36であってもよい。
分岐配管40Aは配管39Bから上に向かって気液冷媒を分離できる角度で延びている。具体的には、実施形態1に係る分岐配管40Aは上に向かって鉛直に延びている。
【0029】
(3)クローズドショーケースの電気的構成
図4に示すように、クローズドショーケース1は制御部50、操作部51などを備えている。
制御部50はCPUやRAMなどが1チップ化されたマイクロコンピュータ50AやROM50Bなどを備えている。ROM50Bにはクローズドショーケース1を制御するための制御プログラムや各種のデータが記憶されている。制御部50には操作部51、インバータ圧縮機31、庫内ファン18、凝縮器ファン41、庫内温度センサ20などが接続されている。制御部50はROM50Bに記憶されている制御プログラムを実行することによってクローズドショーケース1の各部を制御する。
【0030】
操作部51は、庫内温度などを表示するための表示部や、各種の操作ボタンなどを備えている。クローズドショーケース1の利用者は操作ボタンを操作することによって庫内の目標温度の設定などの各種の操作を行うことができる。
【0031】
(4)冷凍回路の特性、及び、分岐配管の分岐位置
先ず、冷凍回路30の特性について説明する。
(特性1)インバータ圧縮機31は、低負荷時には過熱運転にならず、仕事量の多い高速運転時に過熱運転となる。
(特性2)冷媒は、凝縮器32の出口では液相冷媒となり、熱交換区間34の手前では途中の配管39Bで周囲温度の影響を受けるため再蒸発して気液混合冷媒となる。凝縮器32の出口から熱交換区間34までは熱交換区間34に近いほど気相冷媒の割合が多くなる。
(特性3)インバータ圧縮機31の低負荷時は低速運転となり、冷媒循環量が減少する。冷媒循環量が減少すると配管39内の冷媒速度が遅くなるので、周囲温度との熱交換時間が長くなる。このため、熱交換区間34の手前ではより気相冷媒の割合が高くなる。
(特性4)冷媒速度が遅いと配管39内の冷媒は層流状態となり、液相冷媒は重力により配管39内の下側、気相冷媒は配管39内の上側に位置する。
(特性5)インバータ圧縮機31の高負荷時は高速運転となり、冷媒循環量が増加する。冷媒循環量が増加すると配管39内の冷媒速度が速くなるので周囲温度との熱交換時間が短くなる。このため熱交換区間34の手前ではより気相冷媒の割合が低くなる。
(特性6)冷媒速度が速いと配管39内の冷媒は乱流状態になり、配管壁面との摩擦により配管壁面側に液相冷媒、配管中心側に気相冷媒が位置する。
【0032】
次に、インジェクション回路40の分岐配管40Aの分岐位置について説明する。上述した冷凍回路30の特性から、凝縮器32の出口から熱交換区間34までの間には、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路40を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となる位置が存在する。所定の回転数はインバータ圧縮機31の耐熱性などに応じて適宜に決定できる。
【0033】
このため、分岐配管40Aは、高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路40を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、低負荷時は気相状態となるように分岐位置が設定されている。このような分岐位置は冷凍回路30の冷却能力や上述した所定の回転数などによって異なるが、冷凍回路30毎に実験を行うことによってこのような分岐位置を特定できる。
【0034】
(5)実施形態の効果
クローズドショーケース1によると、分岐配管40Aの分岐位置は、凝縮器32と熱交換区間34との間のうち、インバータ圧縮機31の高負荷時には液相状態となり、低負荷時には気相状態となる位置である。このようにすると、高負荷時にはインジェクション回路40に液相冷媒が流れ易くなり、低負荷時にはインジェクション回路40に気相冷媒が流れ易くなる。このため、圧縮機過熱時のインジェクションが必要なときには液相冷媒が流れてインバータ圧縮機31を冷却し、圧縮機非過熱時のインジェクションが不要なときには気相冷媒が流れてインバータ圧縮機31を冷却しないインジェクション回路40を、電磁弁や電磁弁の開閉を制御する吐出管サーモスタットなどを用いることなく実現できる。よってクローズドショーケース1によると、圧縮機過熱時にはインバータ圧縮機31に液相冷媒が流れ、圧縮機非過熱時には気相冷媒が流れるインジェクション回路40を、部品点数を抑制しつつ実現できる。
部品点数を抑制すると、部品費用、組み立て工数、部品設置スペースなどを低減できる。更に、部品自体の故障、部品の接続個所からの冷媒漏れ、漏電などのリスクも低減できる。
【0035】
クローズドショーケース1によると、インジェクション回路40は上に向かって鉛直に延びている。このようにすると、高負荷時にはインジェクション回路40に液相冷媒がより流れ易くなり、低負荷時にはインジェクション回路40に気相冷媒がより流れ易くなる。
【0036】
<実施形態2>
実施形態2は実施形態1の変形例である。実施形態2では、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路40を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となるように分岐配管40Aの分岐位置及び配管長が設定されている。
【0037】
先ず、図3を参照して、分岐配管40Aの配管長Hの特性について説明する。
(特性1)分岐配管40Aの配管長Hが長いと分岐配管40A内の冷媒が外気と熱交換する時間が長くなるため、一定以上の配管長H(熱交換)になると再蒸発し、気相状態となりインジェクションの冷却効果が小さくなる。
(特性2)分岐配管40Aの配管長Hが長いと配管壁面との接触抵抗により圧損が発生し、インジェクション回路40の出入口の圧力差が小さくなり、インジェクション流量が減少する。また、圧損が大きくなると気相状態となり、インジェクションの冷却効果が小さくなる。
(特性3)分岐配管40Aを縦向きに配した場合、配管長Hが長いと重力(位置エネルギー)によってインジェクション回路40の出入口の圧力差が小さくなり、インジェクション流量が減少する。また、圧損が大きくなると気相状態となり、インジェクションの冷却効果が小さくなる。
【0038】
上述した配管長Hの特性から、分岐配管40Aには、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路40を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となる配管長Hがある。
【0039】
このため、実施形態2に係る分岐配管40Aは、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路40を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となるように分岐位置及び配管長Hが設定されている。このような分岐位置及び配管長Hは冷凍回路30の冷却能力や上述した所定の回転数などによって異なるが、冷凍回路30毎に実験を行うことによってこのような分岐位置及び配管長Hを特定できる。
【0040】
実施形態2に係るクローズドショーケース1によると、分岐配管40Aの分岐位置と配管長Hとの組み合わせによって分岐位置の選択範囲が広がるため、インジェクション回路40の設計の自由度が向上する。
【0041】
<実施形態3>
実施形態3は実施形態1の変形例である。実施形態3では、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路40を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となるように分岐配管40Aの分岐位置及び配管径(太さ)が設定されている。
【0042】
先ず、図5及び図6を参照して、分岐配管40Aの配管径Qの特性について説明する。
(特性1)図5では配管径Qが異なる2つの分岐配管40A(40B_1,40B_2)を示している。図5に示すように、配管径Qが一定以下の細さになると、配管内壁との表面張力によって分岐配管40A内の液冷媒60は上部まで引き上げられる。図6は実施形態3に係るインジェクション回路340を示している。図6に示すように、主管である配管39B以上の配管径Qになると表面張力による液面位置上昇は望めなくなる。
(特性2)配管径Qが太くなると冷媒の流速が遅くなり、層流状態となる。冷媒が層流状態になると液相冷媒と気相冷媒とが分離する。
【0043】
上述した配管径Qの特性から、分岐配管40Aには、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路340を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となる配管径Qがある。
【0044】
このため、実施形態3に係る分岐配管340Aは、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路340を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となるように分岐位置及び配管径Qが設定されている。具体的には、図6に示すように、実施形態3に係る分岐配管340Aの配管径Qは、凝縮器32と膨張弁36とを接続している配管39の配管径Rより大きくなっている(言い換えると太くなっている)。
このような分岐位置及び配管径Qは冷凍回路30の冷却能力や上述した所定の回転数などによって異なるが、冷凍回路30毎に実験を行うことによってこのような分岐位置及び配管径Qを特定できる。
【0045】
実施形態3に係るクローズドショーケース1によると、分岐配管340Aの分岐位置と配管径Qとの組み合わせによって分岐位置の選択範囲が広がるため、インジェクション回路340の設計の自由度が向上する。
【0046】
<実施形態4>
実施形態4は実施形態1の変形例である。図7に示すように、実施形態4では分岐配管440Aの形状がS字状(非直線形状の一例)である。非直線形状はS字状に限定されるものではなく、例えばベンド形状であってもよいし、エルボ形状であってもよいし、鉤状に曲がっていてもよい。
【0047】
先ず、図7を参照して、非直線形状の分岐配管の特性について説明する。
(特性1)分岐配管440Aを非直線形状に形成することによって冷媒の流れに抵抗を与えると、冷媒の圧力値が低下し、気液混合状態となる。更に抵抗を増すと、気相状態となり、インジェクションの冷却効果が小さくなる。
【0048】
上述した配管形状の特性から、分岐配管440Aには、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路40を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となる配管形状がある。
このため、実施形態4に係る分岐配管440Aは、インバータ圧縮機31の回転数が所定の回転数以上である高負荷時は凝縮器32からインジェクション回路440を介してインバータ圧縮機31に流れる冷媒が液相状態となり、所定の回転数未満である低負荷時は気相状態となるように分岐位置及び形状が設定されている。このような分岐位置及び配管形状は冷凍回路30の冷却能力や上述した所定の回転数などによって異なるが、冷凍回路30毎に実験を行うことによってこのような分岐位置及び形状を特定できる。
【0049】
実施形態4に係るクローズドショーケース1によると、分岐配管440Aの分岐位置と形状との組み合わせによって分岐位置の選択範囲が広がるため、インジェクション回路440の設計の自由度が向上する。
【0050】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0051】
(1)上記実施形態1ではインジェクション回路40の分岐配管40Aが配管39から上に向かって延びている場合を例に説明した。これに対し、気液冷媒を分離できれば分岐配管40Aは必ずしも上に向かって延びていなくてもよい。
【0052】
(2)上記実施形態1ではインジェクション回路40の分岐配管40Aが上に向かって鉛直に延びている場合を例に説明した。しかしながら、分岐配管40Aは上に向かって気液冷媒を分離できる角度で延びていれば必ずしも鉛直に延びていなくてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態2~4では実施形態1の構成に実施形態2~4のいずれか一つの構成を組み合わせる場合を例に説明した。これに対し、実施形態1の構成に実施形態2~4のうちいずれか2以上の構成を組み合わせてもよい。このようにするとインジェクション回路40の設計の自由度がより向上する。
【0054】
(4)上記実施形態では冷凍回路30が熱交換区間34を備えている場合を例に説明したが、冷凍回路30は必ずしも熱交換区間34を備えていなくてもよい。
【0055】
(5)上記実施形態では冷却貯蔵庫としてクローズドショーケースを例に説明したが、冷却貯蔵庫はクローズドショーケースに限定されるものではなく、オープンショーケース、冷蔵庫、冷凍庫などであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…クローズドショーケース(冷却貯蔵庫の一例)、30…冷凍回路、31…インバータ圧縮機(回転数が可変の圧縮機の一例)、32…凝縮器、34…熱交換区間、36…膨張弁(膨張部品の一例)、37…蒸発器、39…配管、40…インジェクション回路、40A…分岐配管、40B…キャピラリチューブ(インジェクション用膨張部品の一例)、340…インジェクション回路、340A…分岐配管、440…インジェクション回路、440A…分岐配管、H…配管長、Q…配管径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7