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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】蓋および蓋付容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019170000
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021046221
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稜
(72)【発明者】
【氏名】内田 景
(72)【発明者】
【氏名】益田 栄太郎
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕仁
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-195487(JP,A)
【文献】特開2018-027820(JP,A)
【文献】特開2014-091542(JP,A)
【文献】登録実用新案第3203611(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備える、電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋であって、
前記蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備え、
前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、気体や液体の流通を可能とする内外流通部を備えており、
前記外周突出部は、通常突条部と、この通常突条部より突出高さが高い第二突条部と、前記通常突条部と前記第二突条部との間に形成された傾斜部とを有し、
少なくとも前記外周突出部で囲まれた内側部分は、前記被覆部材にて覆われ、
前記内外流通部は、前記通常突条部の稜線部と前記傾斜部の稜線部と前記被覆部材とで囲まれた三角形状の隙間にて構成されている
ことを特徴とする蓋。
【請求項2】
容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備える、電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋であって、
前記蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備え、
前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、気体や液体の流通を可能とする内外流通部を備えており、
前記内外流通部の外側に、前記外周突出部と間隔をあけて配置された外部突条が形成され、
少なくとも前記外周突出部で囲まれた内側部分と前記外部突条とは、前記被覆部材にて覆われている
ことを特徴とする蓋。
【請求項3】
前記通気部は、フラップを有し、
前記内側突出部が、前記フラップの先端外側に形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓋。
【請求項4】
前記通気部は、複数の微細孔からなる微細孔群にて構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓋。
【請求項5】
前記通気部は、前記内側突出部を囲うように形成されている
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の蓋。
【請求項6】
電子レンジ加熱食品用の蓋付容器であって、
容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備え、
前記蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し、前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備え、
前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、気体や液体の流通を可能とする内外流通部を備えており、
前記外周突出部は、通常突条部と、この通常突条部より突出高さが高い第二突条部と、前記通常突条部と前記第二突条部との間に形成された傾斜部とを有し、
前記被覆部材は、少なくとも前記外周突出部で囲まれた内側部分の全面を覆うように装着され、
前記内外流通部は、前記通常突条部の稜線部と前記傾斜部の稜線部と前記被覆部材とで囲まれた三角形状の隙間にて構成されている
ことを特徴とする蓋付容器。
【請求項7】
電子レンジ加熱食品用の蓋付容器であって、
容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備え、
前記蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し、前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備え、
前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、気体や液体の流通を可能とする内外流通部を備えており、
前記内外流通部の外側に、前記外周突出部と間隔をあけて配置された外部突条が形成され、
前記被覆部材は、少なくとも前記外周突出部で囲まれた内側部分と前記外部突条とを覆うように装着されている
ことを特徴とする蓋付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋、および蓋付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品には、スーパーやコンビニエンスストアといった店舗で、常温もしくはそれ以下の温度で販売され、購入後、電子レンジなどによって加熱調理して食べるものが数多くある。それら加工食品の中には、電子レンジによる加熱調理をするとき、食品が容器に入った状態のまま電子レンジ庫内に導入し、加熱するものがある。
【0003】
食品を容器ごと電子レンジで加熱した場合、空気の膨張や、容器内の食品に含まれる水分が気化した蒸気による容器内圧の上昇が原因で、容器の蓋が本体から離脱したり、容器が破損するといった問題を引き起こすことがある。このような問題を防ぐためには、膨張した空気や発生した蒸気を、容器外部に排出する必要がある。なお容器内部には、空気や蒸気の他に、温度等の状態により湯気(液体)も存在し、容器外部と流通するが、厳密にこれらを区別しているものではない、説明箇所により、流通するものとして「気体や液体」や「蒸気」と表記しているが、「蒸気」と表記している場合でも空気や湯気(液体)を含んでいてよい。また容器外部から内部に流通する空気を「外気」と表記する場合がある。
【0004】
電子レンジでの加熱調理を想定した容器に使用する蓋には、一般的に、蒸気を容器外部に排出するための通気部が形成されている(たとえば、特許文献1,2参照)。しかし、通気部があることで、容器内部と容器外部とが常に開放状態となる。そして、通気部は蒸気を排出できるだけの十分な大きさを有している。そのため、店舗での販売時や輸送中に通気部から容器内部に異物が混入する虞がある。そこで、このような異物の混入を防ぐために、リング状のシュリンクフィルム等の被覆部材が設けられており、この被覆部材で通気部を覆うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-91542号公報
【文献】特開2017-81599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2の容器では、加熱調理する際に通気部から蒸気が容器外へ排出される。そして、加熱調理終了後は、容器内の蒸気が急激に冷却され、体積が減ることで容器内部は減圧する。このとき、通気部を介して容器外から容器内部へ外気が流入するが、被覆部材が通気部に引き寄せられて密着することで通気部を塞いでしまい、容器外から容器内部へ外気が流入するのを妨げることがある。この状態で容器内の蒸気がされに冷却されると、容器が内部の減圧に耐えられず容器の変形、破損や収容されている食品の流出を招く虞があった。
【0007】
本発明は、加熱調理終了後に容器内への外気の流入を阻害しない蓋および蓋付容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第一の発明は、容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備える、電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋である。かかる蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備えている。そして、前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、気体や液体の流通を可能とする内外流通部を備えている。さらに、前記外周突出部は、通常突条部と、この通常突条部より突出高さが高い第二突条部と、前記通常突条部と前記第二突条部との間に形成された傾斜部とを有し、少なくとも前記外周突出部で囲まれた内側部分は、前記被覆部材にて覆われ、前記内外流通部は、前記通常突条部の稜線部と前記傾斜部の稜線部と前記被覆部材とで囲まれた三角形状の隙間にて構成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成の蓋によれば、加熱調理終了後の容器内部が減圧して、被覆部材が通気部に引き寄せられようとしても、被覆部材は外周突出部と内側突出部とで蓋の表面から離れた高さで支持されているので、蓋の表面に張り付かない。したがって、被覆部材が通気部を塞ぐことはなく、通気部の周囲に空間を確保できる。よって、加熱調理終了後に容器内への外気の流入が阻害されない。さらに、通気部に繋がる流路が確保されるので、気体や液体の流通が円滑になる。
【0010】
前記課題を解決するための第二の発明は、容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備える、電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋である。前記蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備えている。前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、気体や液体の流通を可能とする内外流通部を備えており、前記内外流通部の外側に、前記外周突出部と間隔をあけて配置された外部突条が形成され、少なくとも前記外周突出部で囲まれた内側部分と前記外部突条とは、前記被覆部材にて覆われていることを特徴とする。
【0011】
また、前記通気部は、フラップを有し、前記フラップが蓋に連結している部分をフラップ基端部、前記フラップ基端部の反対側で、フラップが可動した場合に最も高くなる部分をフラップ先端部とすると、前記内側突出部は、前記フラップ先端部のさらに外側に形成されていることが好ましい。なお、ここでいうフラップの先端部のさらに外側とは、フラップ先端部の近傍で、フラップ基端部とは反対側の蓋の表面に位置する部位である。このような構成によれば、通気部で最も開口が大きくなるフラップの先端部付近で、流路を確保できるので、効率的な気体や液体の流通が可能となる。
【0012】
さらに、前記通気部は、複数の微細孔からなる微細孔群にて構成されているものが好ましい。
【0013】
一方、前記通気部は、前記内側突出部を囲うように形成されているものが好ましい。このような構成によれば、流路を確保できる内側突出部の周囲に通気部が形成されるので、効率的な気体や液体の流通が可能となる。
【0014】
前記課題を解決するための第の発明は、電子レンジ加熱食品用の蓋付容器であって、容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備えている。前記蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し、前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備えている。前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、気体や液体の流通を可能とする内外流通部を備えている。前記外周突出部は、通常突条部と、この通常突条部より突出高さが高い第二突条部と、前記通常突条部と前記第二突条部との間に形成された傾斜部とを有している。前記被覆部材は、少なくとも前記外周突出部で囲まれた内側部分の全面を覆うように装着され、前記内外流通部は、前記通常突条部の稜線部と前記傾斜部の稜線部と前記被覆部材とで囲まれた三角形状の隙間にて構成されていることを特徴とする。
前記課題を解決するための第四の発明は、電子レンジ加熱食品用の蓋付容器であって、容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備えている。前記蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し、前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備えている。前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、気体や液体の流通を可能とする内外流通部を備えている。前記内外流通部の外側に、前記外周突出部と間隔をあけて配置された外部突条が形成され、前記被覆部材は、少なくとも前記外周突出部で囲まれた内側部分と前記外部突条とを覆うように装着されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成の蓋付容器によれば、請求項1および2と同様に、被覆部材が通気部を塞ぐことはなく、通気部の周囲に空間を確保できる。したがって、加熱調理終了後に容器内への外気の流入が阻害されない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加熱調理終了後に容器内への外気の流入が阻害されず、気体や液体の流通を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る蓋付容器を示した斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る蓋を示した要部平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る蓋を示した要部斜視図である。
図4】(a)は本発明の実施形態に係る蓋を示した図2のIV-IV線断面図、(b)はさらに被覆部材を加えた図2のIV-IV線断面図である。
図5】(a)は本発明の実施形態に係る蓋を示した図2のV-V線断面図、(b)はさらに被覆部材を加えた図2のV-V線断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る蓋を示した図であって、(a)は蒸気が排出される状態を示した要部斜視図、(b)は外気が流入する状態を示した要部斜視図である。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る蓋を示した要部斜視図である。
図8】本発明の実施形態の変形例に係る蓋を示した要部断面図である。
図9】本発明の実施形態の変形例に係る蓋を示した図であって、(a)は蒸気を排出する状態を示した要部斜視図、(b)は外気を吸入する状態を示した要部斜視図である。
図10】(a)~(d)は本発明の実施形態の変形例に係る蓋を示した要部斜視図である。
図11】(a)~(e)は本発明の実施形態の変形例に係る蓋を示した要部平面図である。
図12】(a)~(e)は本発明の実施形態の変形例に係る蓋を示した要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明である、電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋および前記蓋付容器の実施形態について、それらの図面を参照しながら以下説明する。但し、本発明の実施形態は、以下記載の実施形態に限定されるものではない。なお、かかる電子レンジ加熱食品用の蓋付容器は、食品を収容して蓋を装着したままの状態で電子レンジに入れられ、加熱調理されるものである。
【0019】
<電子レンジ加熱食品用の蓋付容器の全体構成>
本発明の第一の実施形態は、「容器本体」と、前記容器本体の上部開口に嵌合している「蓋」と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う「被覆部材」とを備える電子レンジ加熱食品用の「蓋付容器」の「蓋」である。
【0020】
<容器本体、その素材や形状、およびその成形方法>
本発明に係る容器本体は、食品を収容する部位である。容器本体の素材については特に限定を設けるものではないが、成形加工が容易であること、電子レンジによる加熱に対応するため、耐熱性を考慮した合成樹脂、紙などが挙げられる。成型加工性、蓋との嵌合性や利便性の観点から、特に無機フィラーを含むポリプロピレンや発泡ポリスチレンのシートが、素材として好ましく用いられる。なお、容器本体は上部に開口部を有しており、前記開口部には蓋が嵌合している。また、容器本体の全体形状について特に限定は無い。また、容器本体の開口部の形状についても特に限定は無く、円形、楕円形、三角形以上の多角形、その他自由形状、種々の形状となすことが可能であり、例えば上部が円形状に開口するどんぶり形状が好ましく採用される。また、容器本体の上部開口部の周縁部には、蓋と嵌合するための鍔部が形成されている。
【0021】
容器本体は、その素材に適した既知の成形方法を採用することができるが、合成樹脂のシートから成形する場合は、通常、公知の真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法、プレス成形法等が好ましく採用される。前記の真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法において、合成樹脂のシートの加熱手段として熱板を用いることもあり、この場合には熱板成形法とも呼称することがある。また、これらの成形方法に限らず、射出成形やブロー成形によって容器本体を成形してもよい。
【0022】
<蓋、その素材や形状、およびその成形方法>
蓋の素材については特に限定を設けるものではなく、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの合成樹脂から適宜選択される。使用目的に適した強度を有すること、成形加工が容易であること、電子レンジによる加熱に耐えうる耐熱性を有すること、透明性を有すること、経済性等の理由から、スチレン系樹脂の二軸延伸シートを好ましく用いることができる。
蓋の形状についても特に限定は無いが、容器本体の上部開口に嵌合するものである。そのため蓋の外周縁部には、容器本体の鍔部に嵌合される嵌合部が通常形成されている。
【0023】
なお、前記スチレン系樹脂は、スチレン単量体単位を基本構造に有するスチレン系樹脂を主体として含む樹脂の総称である。前記スチレン系樹脂の種類に限定は無いが、特にスチレン-メタクリル酸共重合体の樹脂であることが好ましく、この場合には、スチレン系樹脂中に含まれるメタクリル酸単量体単位は、2質量%以上20質量%以下、より好ましくは3質量%以上16質量%以下である。メタクリル酸単量体単位が2質量%未満のスチレン系樹脂では、電子レンジを利用した使用に対する耐熱性が不足する場合があり、またメタクリル酸単量体単位が20質量%を超えると二軸延伸シートの外観への悪影響が懸念される。
【0024】
また、スチレン-メタクリル酸共重合体の重量平均分子量(Mw)は、12万~25万であることが好ましく、より好ましくは14万~22万、さらに好ましくは15万~20万である。スチレン-メタクリル酸共重合体の重量平均分子量が12万未満であると、シートのドローダウン、ネックインが発生するなど、シート製膜性の低下、延伸配向の不足、容器成形時の熱板接触による表面荒れが発生し易くなる。一方、スチレン-メタクリル酸共重合体の重量平均分子量が25万を超えると、流動性低下によるシート製膜時の厚みムラ、ダイラインなどのシート外観低下、容器成形時の賦型不良などが発生し易くなる。
【0025】
さらに、スチレン-メタクリル酸共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnの値は、2.0~3.0であることが好ましく、より好ましくは2.2~2.8である。Mw/Mnの値が3.0を超えると、容器成形時の熱板接触による表面荒れが発生し易くなる。一方、Mw/Mnの値が2.0未満であると、流動性低下による製膜時の厚みムラや容器成形時の賦型不良が発生し易くなる。また、Z平均分子量(Mz)とMwとの比Mz/Mwの値は、1.5~2.0であることが好ましく、より好ましくは1.6~1.9である。Mz/Mwの値が1.5未満であると、シートのドローダウン、ネックインが発生しやすくなるなどの製膜性の低下、延伸配向の不足が発生し易くなる。一方、Mz/Mwの値が2.0を超えると、流動性低下によるシート製膜時の厚みムラやダイラインなどのシート外観低下が発生し易くなる。
【0026】
なお、上述の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)は、一般にGPC測定において、以下の装置類、測定条件にて、市販されている分子量既知の単分散標準ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出した値である。
機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
【0027】
前記スチレン系樹脂は、ビカット軟化温度が106~132℃の範囲であることが好ましい。ビカット軟化温度が106℃未満であると、シートの耐熱性が不足し、電子レンジ加熱時に変形が起こり易くなる。ビカット軟化温度は好ましくは112℃以上、さらに好ましくは116℃以上である。一方、ビカット軟化温度が130℃を超えると、製膜時および容器成形時の加工性が低下するおそれがある。ビカット軟化温度は好ましくは128℃以下である。なお、ここで言うビカット軟化温度は、JIS K-7206に準拠して、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nの条件での測定値である。
【0028】
さらに、蓋の素材である合成樹脂には、酸化防止剤、滑剤、ゲル化防止剤等の各種添加剤が添加され、また成形加工にレーザー光線の照射による熱加工(以降「レーザー加工」とも言う)を用いる場合、例えば蓋の通気部をレーザー加工で形成する場合には、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)を添加することができる。前記ゴム強化ポリスチレンとしては、ゴム成分の含有量が5.0~12.0質量%である一般に市販されているゴム強化ポリスチレンを用いることができる。
【0029】
特に蓋の素材としてゴム強化ポリスチレンを添加したスチレン系樹脂を採用した場合には、前記スチレン系樹脂中のゴム成分の含有割合は0.05~0.35質量%であることが好ましい。ゴム成分の含有割合が0.05質量%未満であると、スチレン系樹脂の二軸延伸シートは、レーザー光線を透過してしまい、レーザー加工が困難となる。ゴム成分の含有割合が0.05質量%以上であれば、スチレン系樹脂からなる二軸延伸シートはレーザー光線を吸収して短時間で加工することが可能である。ただし、ゴム成分の含有割合が0.35質量%を超えると、二軸延伸シートの透明性が低下するため好ましくない。
【0030】
前記二軸延伸シート中のゴム成分の平均ゴム粒子径は、1~9μmであることが好ましい。平均ゴム粒子径が1μm未満であると、二軸延伸シートは、レーザー光線を吸収せず、透過してしまう。その結果、レーザー光線による穿孔が困難となる。平均ゴム粒子径が1μm以上であれば、二軸延伸シートは、レーザー光線を吸収し、レーザー光線が熱に変換されるため、穿孔を容易に行うことができる。一方、平均ゴム粒子径が9μmを超えると、二軸延伸シートの透明性が低下するため、好ましくない。
【0031】
二軸延伸シート中のゴム成分の平均ゴム粒子径は、超薄切片法にて観察面がシート平面と平行方向となるように切削し、四酸化オスミウム(OsO4)でゴム成分を染色した後、透過型顕微鏡にて粒子100個の粒子の長径を測定し、以下の式により算出した値である。ここで、長径とは、粒子の外周の2点を結ぶ直線のうち最大の長さのことである。
平均ゴム粒子径=Σni(Di)4/Σni(Di)3(ni:測定個数、Di:測定した粒子径(長径))
【0032】
ここで言うスチレン系樹脂中のゴム成分の含有割合は、一塩化ヨウ素法によって測定される。すなわち、スチレン系樹脂をクロロホルムに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合と反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定することによって測定される。
【0033】
<二軸延伸シート>
前記スチレン系樹脂の二軸延伸シートは、前記スチレン系樹脂を原材料として用い、以下に示す方法で製造することができる。まず、前記スチレン系樹脂を押出機により溶融混練して、ダイ(特にTダイ)から未延伸シートを押し出す。次に、当該未延伸シートを縦方向(シート流れ方向、MD;Machine Direction)および横方向(シート流れ方向に垂直な方向、TD;Transverse Direction)の二軸方向に逐次又は同時で延伸することによって、二軸延伸シートが製造される。
【0034】
前記二軸延伸シートの厚みは、シートおよび包装容器の強度、特に剛性を確保するために、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。一方、賦型性および経済性の観点から、二軸延伸シートの厚みは、好ましくは0.7mm以下であり、より好ましくは0.6mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0035】
前記二軸延伸シートの縦方向および横方向の延伸倍率はいずれも、1.8~3.2倍の範囲にあることが好ましい。延伸倍率が1.8倍未満では、シートの耐折性が低下し易い。一方、延伸倍率が3.2倍を超えると、熱成形時の収縮率が大きすぎることにより賦形性が損なわれるおそれがある。
【0036】
本発明の電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋は、その素材に適した既知の作製方法を採用することができるが、合成樹脂のシートから作製する場合は、通常、公知の真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法、プレス成形法、熱板を用いる熱板成形法等が好ましく採用される。また、これらの成形方法に限らず、射出成形やブロー成形によって蓋を成形してもよい。
【0037】
本発明である電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋は、前述したように前記蓋付容器の内外を通気させる「通気部」と、当該通気部の周囲に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された「外周突出部」と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された「内側突出部」とを備えている。さらに前記外周突出部は、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、蒸気の流通を可能とする「内外流通部」を備えていることが好ましい。
【0038】
<通気部の位置、形状や数、およびその成形方法>
本発明である電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋に係る、通気部の位置、形状や数に関しては、特に限定は無い。通気部の形状は、小孔、長孔、また容器の内圧により開度が変化するフラップ形状であっても良く、複数の通気部が存在する場合、それらが同一の形状である必要もない。但し、蓋付容器内への異物の混入を防止しつつ、かつ蒸気の流路面積を十分確保するため、虫等も含む異物を想定した直径0.7mmの球体が通過できない形状であること、また、通気部の合計面積が100mm以上確保されていることが好ましい。通気部の成形方法にも特に限定は無いが、成形した蓋の上面に、機械的に打ち抜きして作孔する方法、またはレーザー光線の照射により作孔する方法が通常好ましく採用される。
【0039】
<外周突出部の位置、形状や数、およびその成形方法>
本発明である電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋に係る、外周突出部の位置、形状や数に関しては、外周突出部が、前記通気部の周囲に位置し、前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成されていれば、さらなる限定は無い。外周突出部の成形方法にも特に限定はないが、蓋全体の成形時に、その一部として同時に成形する方法が通常好ましく採用される。
【0040】
<内側突出部の位置、形状や数、およびその成形方法>
本発明である電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋に係る、内側突出部の位置、形状や数に関しては、内側突出場が、前記外周突出部の内側に位置し、前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成されていれば、さらなる限定は無い。内側突出部の成形方法にも特に限定はないが、蓋全体の成形時に、その一部として同時に成形する方法が通常好ましく採用される。
【0041】
<内外流通部の位置、形状や数、およびその成形方法>
本発明である電子レンジ加熱食品用の蓋付容器における蓋に係る、内外流通部の位置、形状や数に関しては、前記外周突出部が形成する投影形の少なくとも全面を前記被覆部材が覆っている状態である下で、前記蓋の表面と前記外周突出部と前記被覆部材とに囲まれた空間部の内側と外側で、蒸気の流通を可能とする機能を有していれば、さらなる限定は無い。内外流通部は、外周突出部に高さの異なる部分を設け、被覆部材と被覆部材の間に隙間を設けることで形成されているのが一般的である。内側流通部の成形方法にも特に限定はないが、蓋全体の成形時に、その一部として同時に成形する方法が通常好ましく採用される。
【0042】
<被覆部材、その素材や形状>
本発明に係る被覆部材は、店舗での販売時や輸送中に容器内部への異物の混入を防ぐとともに、蓋が容器本体から外れるのを防ぐための部材である。被覆部材に用いられる素材については特に限定を設けるものではないが、電子レンジ加熱に耐えられる素材であるとともに、透明な素材であることが好ましい。このような素材として、ポリエステル、ポリプロピレン、スチレン-メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また被覆部材の形状や、幅や長さの寸法に限定はないが、両端部同士を接合した閉じた帯状であることが好ましく、容器本体とそれに嵌合した蓋とを囲うように装着されていることが好ましい。この場合、少なくとも蓋の外周突出部の全周囲を超えて覆うことが異物の混入防止の観点から好ましい。
【0043】
<蓋付容器>
本発明の第二の実施形態は、前述した容器本体と、前記容器本体の上部開口に嵌合している蓋と、少なくとも前記蓋の一部の面を覆う被覆部材とを備え、前記蓋は、前記蓋付容器の内外を通気させる通気部と、当該通気部の周囲に位置し、前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された外周突出部と、当該外周突出部の内側に位置し前記蓋の表面から蓋付容器の外方へ突出して形成された内側突出部とを備え、前記被覆部材は、前記外周突出部で囲まれた内側部分の少なくとも全面を覆うように装着されていることを特徴とする「蓋付容器」である。
【実施例
【0044】
以下に本発明である蓋および蓋付容器の実施形態について、実施例の図面を参照しながら、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
図1に実施例1の蓋および蓋付容器の全体構成を、蓋付容器1として表示する。前記蓋付容器1は、容器本体(図1の10)、蓋(図1の20)、被覆部材(図1の40)とから構成されている。以降、図面と関連させて具体的に説明する場合、例えば「蓋(図1の20)」を説明する場合は、単に「蓋20」の要領でその対象を表記し、説明を記載する。
【0046】
本発明に係る実施例1の容器本体10は、上部に開口部を有しており、上部開口部の周縁部には、蓋20と嵌合するための鍔部(図示せず)が形成されている。前記開口部には蓋20が嵌合している。蓋20の外周縁部には、容器本体10の鍔部に嵌合される蓋20の嵌合部26が形成されている。蓋20の上面21は平坦な円形に形成されており、容器本体10の上部開口より高い位置に配置されている。蓋20は、通気部22と外周突出部23と内側突出部24とを備えている。通気部22は、フラップ形状の通気部である。
【0047】
実施例1の蓋20に設けられた外周突出部23は、一対のコの字型の連続突出部28,28からなる外周突出部であり、即ち連続突出部28,28を合わせた総称が、蓋20の外周突出部23である。前記連続突出部28,28は、通気部22を取り囲むように端部を向かい合わせて配置されている。また、連続突出部28,28は、蓋20の上面21の表面から蓋付容器1の外方へ突出して形成されており、半円状の断面形状を有している。前記連続突出部28,28の向かい合う端部間の隙間の部分は、外周突出部23が備える内外流通部29に相当する。外周突出部23(連続突出部28,28)は、通気部22と被覆部材40が密着しないように、被覆部材40を蓋20の上面21の表面から持ち上げた状態で支持している。
【0048】
図2および図3は、図1に示した蓋付容器1の通気部周辺を、上方向または斜め上方から示した図である。実施例1の蓋20に設けられた通気部22は、蓋付容器1の内外を通気させる部位であって、この通気部22を介して加熱調理時に生じる蒸気が容器外に排出される。通気部22は、上面21の中央部に一つ形成されている。通気部22は、U字状のフラップ25を有しており、U字の上側部が蓋20の上面21に連結され、U字に沿う周縁が上面21から切断され形成されている。以下、上面21に連結された側をフラップ25の基端側と称し、上面21と離れた側をフラップ25の先端側と称する。フラップ25は、上面21に刃で平面視U字状の切込みを入れることで形成されている。なおフラップ25のU字の高さ方向の長さはたとえば16mmであり、U字の幅方向の長さはたとえば12mmである。
【0049】
実施例1の連続突出部28,28の高さ寸法と幅寸法は、どちらもともに5mmである。外周突出部23の全体形状、即ち連続突出部28,28の向かい合う端部間の隙間を繋げた仮想の形状は、平面視で矩形枠の形状を呈している。前記矩形枠の外郭各辺の寸法は、たとえばともに50mmである。外周突出部23は、内外流通部29を好ましく備えることができるが、内外流通部29は、外周突出部23に高さの異なる部分を設けることで形成されていることが好ましい。前記内外流通部29は、外周突出部23が形成する投影形の少なくとも全面を被覆部材40が覆っている状態である下で、蓋20の表面(上面21)と外周突出部23と被覆部材40とに囲まれた空間部の内側と外側で、蒸気の流通を可能とする流路であるように形成されていることが好ましい。蓋20では、連続突出部28,28の向かい合う端部間の隙間は、例えばどちらもともに15mmであり、前記端部間の隙間の部分が、外周突出部23に備えられた内外流通部29に相当する。即ち本実施形態では、内外流通部29は、連続突出部28,28間の二か所の隙間(連続突出部28がない部分)にて構成されている。内外流通部29の個所数、大きさや位置は本実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0050】
実施例1の内側突出部24は、外周突出部23の内側において、通気部22の近傍の上面21に被覆部材40が密着して、通気部22を塞ぐことを防止するための部位である。内側突出部24は、外周突出部23の内側に位置し、蓋20の表面(上面21)から蓋付容器1の外方へ突出して形成されている。内側突出部24は、フラップ25の先端外側でフラップ25と内外流通部29との間に形成されている。内側突出部24は、円錐台形状を呈している。内側突出部24の高さは、外周突出部23の高さと同等の5mmである。なお、内側突出部24の形状は円錐台形に限定されるものではなく、円柱形状や四角柱形状や半球状等他の形状であってもよい。また、内側突出部24の高さは、外周突出部23の高さと必ずしも同等でなくてもよく、被覆部材40と通気部22との密着を防げれば、外周突出部23の高さより高くてもよいし、低くてもよい。さらに、内側突出部24の数、位置、大きさにおいても、本実施形態に限定されるものではない。
【0051】
図1中に示される実施例1の被覆部材40は、店舗での販売時や輸送中に容器内部への異物の混入を防ぐとともに、蓋20が容器本体10から外れるのを防ぐための、帯状フィルムの両端部同士を接合した閉じた帯状部材である。被覆部材40は、図2の直線L1と並行に装着されており、少なくとも外周突出部の全部を覆っている。そのため被覆部材40の幅寸法は、例えば60mmである。
【0052】
次に、図1に示した蓋20および蓋付容器1の作用効果を説明する。図4は、図2におけるIV-IVに沿った断面図である。図4(a)は、被覆部材40を含まない図であり、図4(b)は、被覆部材40を含む図である。図5は、図2におけるV-Vに沿った断面図である。図5(a)は、被覆部材40を含まない図であり、図5(b)は、被覆部材40を含む図である。
【0053】
かかる蓋20および蓋付容器1によれば、図4および図5に示すように、通気部22の周囲では、外周突出部23と内側突出部24によって被覆部材40が上面21から離れた位置に持ち上げられて支持されているので、通気部22に繋がる流路を確保できる。
【0054】
図6(a)は、実施例1の蓋付容器1を用いて電子レンジによる加熱調理したときの様相を模式的に示した図である。加熱中は、図6(a)に示すように、内外流通部29を介して外周突出部23の外部に蒸気を排出できる。外部に排出された蒸気は、被覆部材40の幅方向外側に排出される。
【0055】
加熱調理が終了して蓋付容器1を電子レンジから取り出すと、容器内の空気や蒸気が急激に冷却され、体積が減ることで容器内部が減圧するが、かかる蓋付容器1では、図6(b)に示すように、内外流通部29を介して外気が流入される。このとき、被覆部材40は、通気部22に引き寄せられようとするが、被覆部材40は外周突出部23と内側突出部24とで蓋20の表面から離れた高さで支持されているので、蓋20の表面に張り付かない。よって、被覆部材40が通気部22を塞ぐことはなく、通気部22の周囲に空間を確実に確保できるため、加熱調理終了後に蓋付容器1内への外気の流入が阻害されない。したがって、容器本体10や蓋20の変形を抑制することができる。
【0056】
図6(b)に示すように、内外流通部29と通気部22は、好ましく被覆部材40の周方向に沿った方向に開口しているので、蓋20と被覆部材40端部の隙間から異物が入ったとしても、直接的に通気部22に届かない。したがって、蓋付容器1内へ異物が混入し難い。
【0057】
さらに、通気部22は、フラップ25を有して構成されているので、図4および図5に示すように、フラップ25が開くことで、通気部22の開口部が大きくなり、より広い蒸気の流路が確保される。
【0058】
また、内側突出部24が、フラップ25の先端外側に形成されているので、図4(b)に示すように、通気部22で最も開口が大きくなるフラップ25の先端部付近で、流路を確保できるので、効率的な蒸気の流通が可能となる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る蓋20および蓋付容器1によれば、加熱時の蒸気の排出が良好に行われるとともに、加熱調理終了後に容器内への外気の流入が阻害されない。つまり、加熱中および加熱後のいずれの状態でも、蒸気の流通を良好に行うことができる。
【0060】
実際に、本実施形態の構成の蓋付容器1に市販の味噌ラーメンを収容し、電子レンジにて食品表示に記載された加熱を行ったところ、容器の変形や内容物の流出がないことが確認された。
【0061】
<変形例>
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、材質、形状や大きさなど適宜設計変更が可能である。以下に本発明である蓋および蓋付容器の実施形態について、実施例1の変形例の図面を参照しながら、本発明の実施形態の変化について説明する。変形例も本発明の実施形態の例であるが、本発明はこれら変形例に限定されるものではない。
【0062】
<変形例1>
図7図9を参照しながら、実施例1をさらに設計変更した変形例1に係る蓋20aの構成を説明する。変形例1である図7に示す蓋20aでは、内外流通部29aの構成が、前記内外流通部29の実施形態とは異なる。かかる内外流通部29aは、外周突出部の一部に、突出高さが高い第二突条部30を形成することで構成されている。なお、第二突条部30とその他の通常高さの通常突条部31との間には、傾斜部32が形成されており、第二突条部30と通常突条部31とが連なるように設けられている。このような外周突出部23の上に被覆部材40を敷設すると、第二突条部30の端部と、第二突条部30が形成された辺の通常突条部31の角部との間で、被覆部材40が直線状に張られる。これによって、通常突条部31の稜線部と傾斜部32の稜線部と被覆部材40とで囲まれた三角形状の隙間が形成され、この隙間が内外流通部29aとなる(図8および図9参照)。なお、その他の構成については、前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0063】
このような内外流通部29aによれば、図9(a)および図9(b)に示すように、第二突条部30の両側に流路が形成されて、蒸気が流れやすくなり、効率的な蒸気の流通を行うことができる。本実施形態では、傾斜部32を設けているので、成形加工時における離型が容易となり、蓋20aが破損し難くなっている。一方、傾斜部32を省略すれば、隙間の面積を大きくできるので、流通効率を向上できる。
【0064】
<変形例2>
例えば、前記変形例1では、突出高さが高い第二突条部30と通常突条部31の角部との間に内外流通部29aを形成したが、これに限定されるものではない。変形例2である図10(a)に示す蓋20bのように、変形例1の第二突条部30に代えて、逆に突出高さが低い突条部33を形成してもよい。このような構成の外周突出部23bによれば、低い突条部33の頂辺部と被覆部材(図示せず)とで囲まれた隙間が形成され、この隙間が内外流通部29bとなる。
【0065】
また、その他、通気部22、外周突出部23および内側突出部24の形状も適宜設計変更が可能である。以下に、各部を設計変更した蓋の構成を変形例3~15として説明する。
【0066】
<変形例3>
変形例3である図10(b)に示す蓋20cは、島状突出部34を、間隔をあけて配列することで、外周突出部23cを構成した例である。島状突出部34は、円錐台形状を呈しており、平面視で矩形状に配置され、全体として外周突出部を形成している。その他の構成については、図3に示した蓋20と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。このような構成によれば、隣り合う島状突出部34,34間に内外流通部29cが形成されるので、内外流通部29cが多数形成される。したがって、外周突出部23cの内外の蒸気の流通効率が非常に高い。
【0067】
<変形例4>
変形例4である図10(c)に示す蓋20dでは、通気部22dが、複数の微細孔35,35・・からなる微細孔群にて構成されている。この微細孔群は打ち抜き加工やレーザー加工により形成することができる。内側突出部24は、外周突出部23で囲まれた部分の中央に配置されている。微細孔35,35は、円形を呈しており、中央の内側突出部24を囲むように配置されている。なお微細孔35,35は、楕円形でも良い。変形例4のように微細孔群により構成された通気部は、異物混入の抑止に有効であり、孔数を最適化することで蒸気の流通も効率的に行うことができる。
【0068】
<変形例5>
変形例5である図10(d)に示す蓋20eでは、内外流通部29の外側に、外部突条36が形成されている。外部突条36は、外周突出部23と同等の断面形状を呈しており、内外流通部29の開口幅より長い形状を備えている。外部突条36は、外周突出部23から離れた位置に形成されている。外部突条36と外周突出部23との離間距離は、蒸気が良好に流通できる長さに設定されている。このような構成によれば、内外流通部29の外側においても、被覆部材が外部突条36と外周突出部23とで支持される。さらに、外部突条36を設けることにより、異物混入の防止確率をより高めることができる。
【0069】
<変形例6>
変形例6である図11(a)に示す蓋20fでは、通気部22fを形成するフラップ25であって、放射状に設けられた4枚のフラップ25,25・・の先端部が、外周突出部23で囲まれた部分の中央部に向いている。外周突出部23で囲まれた部分の中央部には、内側突出部24が形成されている。
【0070】
<変形例7>
変形例7である図11(b)に示す蓋20gでは、蓋20gの円錐台形状の内側突出部24に代えて四角錘台形状の内側突出部24gが設けられている。
【0071】
<変形例8>
変形例8である図11(c)に示す蓋20hでは、蓋20gの内側突出部24gに代えて平面視十字形状の内側突出部24hが設けられている。このような構成によれば、被覆部材が通気部22hを塞ぐ現象の起こる確率をより下げることができる。さらに、フラップ25の先端部の近傍に内側突出部24hが形成されているので、蒸気の流路を確保できる。変形例8では特に十字形状の内側突出部24hを用いたことで、通気部22hからの蒸気の流れを内外流通部29にガイドすることができる。
【0072】
<変形例9>
変形例9である図11(d)に示す蓋20iでは、通気部22iを形成するフラップ25が3枚設けられており、120度ピッチで放射状に形成されている。3枚のフラップ25,25,25の先端部が、外周突出部23で囲まれた部分の中央部に向いている。外周突出部23の内側の中央部には、内側突出部24が形成されている。このような構成によれば、蓋20gと同様に、通気部22jの流路面積が大きくなるので、容器内外の蒸気の流通効率が高くなる。さらに、フラップ25の先端部の近傍に内側突出部24が形成されているので、流路を確保できる。
【0073】
<変形例10>
変形例10である図11(e)に示す蓋20jでは、通気部22jを形成するフラップ25が2枚設けられている。2枚のフラップ25,25は、被覆部材の幅方向に並列されており、一方のフラップ25の先端部は、一方の内外流通部29側に向いており、他方のフラップ25の先端部は、他方の内外流通部29側に向いている。各フラップ25の先端部の近傍には内側突出部24がそれぞれ形成されている。このような構成によれば、蓋20gと同様の作用効果を得られる他に、2枚のフラップ25の先端部がそれぞれ別個の内外流通部29側に向いているので、排出される蒸気の流れがぶつかり合うことなく、より一層効率的に蒸気の流通を行うことができる。
【0074】
<変形例11>
変形例11である図12(a)に示す蓋20kでは、内側突出部24kがフラップ25の先端部の形状に沿った円弧形状を呈している。このような構成によれば、蓋20と同様の作用効果を得られる他に、万一外周突出部23の内側に異物が侵入した際に、内側突出部24kで堰き止めることができ、通気部22から容器内部に異物が混入するのを防止できる。
【0075】
<変形例12>
変形例12である図12(b)に示す蓋20mでは、通気部22mが、レーザー加工を実施することで設けた複数の微細孔35m,35m・・からなる微細孔群にて構成されている。微細孔35mは、楕円形を呈しており、平面視十字形状に配列されている。内側突出部24は、四ケ所に設けられており、外周突出部23で囲まれた部分の四隅の近傍にそれぞれ配置されている。このような構成によれば、通気部22mが広い面積に渡って形成されているので、蒸気の流通をより一層効率的に行うことができると共に、四ケ所に設けた内側突出部により、被覆部材が通気部を塞ぐ現象を防止する効果も高い。
【0076】
<変形例13>
変形例13である図12(c)に示す蓋20nでは、通気部22nを形成するフラップ25であって、放射状に設けられた4枚のフラップ25,25・・の先端部が、外周突出部23で囲まれた部分の中央部に向いている。外周突出部23の内側の中央部には、内側突出部24が2つ並んで形成されている。
【0077】
<変形例14>
変形例14である図12(d)に示す蓋20oでは、蓋20nの内側突出部24nに代えて頂部の平面が長円の長円錘台形状の内側突出部24oが設けられている。このような構成によれば、内側突出部の面積が広くなるため、被覆部材が通気部を塞ぐ現象を、より効果的に防止することができる。
【0078】
<変形例15>
変形例15である図12(e)に示す蓋20pでは、通気部22pを形成するフラップ25pが2枚設けられている。2枚のフラップ25p,25pは、上面21に刃で平面視S字状の切込みを入れることで形成されている。2枚のフラップ25p,25pは、被覆部材の幅方向に並んで隣接している。一方のフラップ25pの先端部は、一方の内外流通部29側に向いており、他方のフラップ25pの先端部は、他方の内外流通部29側に向いている。各フラップ25pの先端部の近傍には内側突出部24がそれぞれ形成されている。このような構成によれば、変形例10の蓋20jと同様の作用効果を得られる他に、2枚のフラップ25p,25pが繋がっているので、通気部22pを形成する切り込み長さを減らして蓋の強度低下を最小限に抑えつつ、一方通気部の開口面積を保つことができる。
【符号の説明】
【0079】
1 蓋付容器
10 容器本体
20 蓋
21 蓋20の上面
22 通気部
23 外周突出部
24 内側突出部
25 フラップ
26 蓋20の嵌合部
28 連続突出部
29 内外流通部
40 被覆部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12