(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】回転打撃工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
B25B21/02 Z
B25B21/02 G
(21)【出願番号】P 2019177316
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慈
(72)【発明者】
【氏名】川合 靖仁
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-168011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008156(US,A1)
【文献】特開2014-121765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0336249(US,A1)
【文献】特開2015-145061(JP,A)
【文献】特開2014-140930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0352699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転力によって回転するハンマと、前記ハンマの回転力を受けて回転し
ねじ締めのための工具要素が装着されるアンビルとを備え、前記アンビルに対して外部から所定値以上のトルクが加わると、前記ハンマが前記アンビルから外れて空転し、前記アンビルを回転方向に打撃する打撃機構と、
前記モータを制御するように構成された制御部と
を備え、
前記制御部は、前記モータに加わる負荷
の値が
、前記モータの駆動中において前記アンビルがロックされているときの値として予め設定された
値以上である場合に、前記モータの出力を制限
し、
前記制御部は、第1制限出力と、前記第1制限出力よりも小さい第2制限出力とにより、前記モータの出力を制限できるように構成されており、
前記制御部は、前記第1制限出力で前記モータの出力を制限している状態において、前記負荷の値が再び予め設定された前記値以上になった場合には、前記第1制限出力から前記第2制限出力に切り替えて前記モータの出力を制限し、
前記制御部は、更に、前記第2制限出力よりも小さい第3制限出力により、前記モータの出力を制限できるように構成されており、
前記制御部は、前記第2制限出力で前記モータの出力を制限している状態において、前記負荷の値が再び予め設定された前記値以上になった場合には、前記第2制限出力から前記第3制限出力に切り替えて前記モータの出力を制限する回転打撃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の回転打撃工具であって、
前記負荷は、前記アンビルに加えられる前記トルクによって検出される回転打撃工具。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の回転打撃工具であって、
前記制御部は、前記モータの回転速度であるモータ回転速度が予め設定された目標回転速度に一致するように前記モータを制御し、
前記制御部は、前記目標回転速度を小さくすることによって、前記モータの出力を制限する回転打撃工具。
【請求項4】
請求項1に記載の回転打撃工具であって、
前記負荷は、前記モータへの通電電流によって検出される回転打撃工具。
【請求項5】
請求項1に記載の回転打撃工具であって、
前記負荷は、前記モータの回転速度の単位時間当りの低下量によって検出される回転打撃工具。
【請求項6】
請求項1~
請求項5の何れか1項に記載の回転打撃工具であって、
前記制御部は、前記モータへの通電電流に対してPWM制御を実行することにより前記モータを制御し、
前記制御部は、前記PWM制御のデューティ比を小さくすることによって、前記モータの出力を制限する回転打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータの回転力により回転動作し、外部から所定値以上のトルクが加わると回転方向へ打撃力を加えるよう構成された回転打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの回転力を受けて回転するハンマと、ハンマの回転力を受けて回転するアンビルとを備え、工具要素が装着されるアンビルに対して外部から所定値以上のトルクが加わると、ハンマがアンビルを打撃するよう構成された回転打撃工具が記載されている。このように構成された回転打撃工具は、ねじを対象物に固定する際に、ハンマによるアンビルの打撃によって、対象物に対してねじをしっかりと締め付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンマとアンビルとを備える回転打撃工具において、回転打撃工具を構成する機械部品が破損してしまうことがある。この破損してしまう機械部品の例としては、例えば、遊星歯車、太陽歯車、内歯車等が挙げられる。
【0005】
本開示は、回転打撃工具の破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、モータと、打撃機構と、制御部とを備える回転打撃工具である。
打撃機構は、ハンマと、アンビルとを備え、アンビルに対して外部から所定値以上のトルクが加わると、ハンマがアンビルから外れて空転し、アンビルを回転方向に打撃する。ハンマは、モータの回転力によって回転する。アンビルは、ハンマの回転力を受けて回転し工具要素が装着される。
【0007】
制御部は、モータを制御するように構成される。そして制御部は、モータに加わる負荷が予め設定された制限判定値以上である場合に、モータの出力を制限する。
このように構成された本開示の回転打撃工具は、制限判定値以上の大きさの負荷がモータに加わるとモータの出力を制限するため、モータの出力に起因して制限判定値以上の大きさの負荷が継続して機械部品に加わるのを抑制することができ、これにより、回転打撃工具の破損を抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様では、制御部は、負荷が制限判定値以上になってからモータの駆動が停止するまで、モータの出力の制限を継続するようにしてもよい。これにより、本開示の回転打撃工具は、少なくとも、負荷が制限判定値以上になってからモータの駆動が停止するまでは、モータの出力に起因して制限判定値以上の大きさの負荷が継続して機械部品に加わるのを抑制することができ、回転打撃工具の破損を更に抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様では、制御部は、第1制限出力と、第1制限出力よりも小さい第2制限出力とにより、モータの出力を制限できるように構成されており、制御部は、第1制限出力でモータの出力を制限している状態において、負荷が再び制限判定値以上になった場合には、第1制限出力から第2制限出力に切り替えてモータの出力を制限するようにしてもよい。
【0010】
本開示の一態様では、制御部は、更に、第2制限出力よりも小さい第3制限出力により、モータの出力を制限できるように構成されており、制御部は、第2制限出力でモータの出力を制限している状態において、負荷が再び制限判定値以上になった場合には、第2制限出力から第3制限出力に切り替えてモータの出力を制限するようにしてもよい。
【0011】
本開示の一態様では、負荷は、モータへの通電電流によって検出されるようにしてもよいし、モータの回転速度の単位時間当りの低下量によって検出されるようにしてもよいし、アンビルに加えられるトルクによって検出されるようにしてもよい。
【0012】
本開示の一態様では、制御部は、モータの回転速度であるモータ回転速度が予め設定された目標回転速度に一致するようにモータを制御し、制御部は、目標回転速度を小さくすることによって、モータの出力を制限するようにしてもよい。これにより、本開示の回転打撃工具は、モータの回転速度を低減することによって、モータの出力を制限することができる。
【0013】
本開示の一態様では、制御部は、モータへの通電電流に対してPWM制御を実行することによりモータを制御し、制御部は、PWM制御のデューティ比を小さくすることによって、モータの出力を制限するようにしてもよい。これにより、本開示の回転打撃工具は、モータへの通電電流を低減することによって、モータの出力を制限することができる。
【0014】
本開示の別の態様は、モータと、打撃機構と、制御部とを備える回転打撃工具である。そして制御部は、モータが駆動しているときにおいてアンビルが固定されているか否かを判断し、アンビルが固定されている場合には、モータの出力を制限する。
【0015】
このように構成された本開示の回転打撃工具は、アンビルが固定されているとモータの出力を制限するため、アンビルが固定されている状態においてモータの出力に起因して大きな負荷が継続して機械部品に加わるのを抑制することができ、回転打撃工具の破損を抑制することができる。
【0016】
本開示の別の態様では、制御部は、アンビルが固定されていると判断してからモータの駆動が停止するまで、モータの出力の制限を継続するようにしてもよい。これにより、本開示の回転打撃工具は、少なくとも、アンビルが固定されていると判断してからモータの駆動が停止するまでは、アンビルが固定されている状態においてモータの出力に起因して大きな負荷が継続して機械部品に加わるのを抑制することができ、回転打撃工具の破損を更に抑制することができる。
【0017】
本開示の別の態様では、制御部は、アンビルに加えられるトルクによって、アンビルが固定されているか否かを判断するようにしてもよい。
本開示の別の態様では、制御部は、モータの回転速度であるモータ回転速度が予め設定された目標回転速度に一致するようにモータを制御し、制御部は、目標回転速度を小さくすることによって、モータの出力を制限するようにしてもよい。これにより、本開示の回転打撃工具は、モータの回転速度を低減することによって、モータの出力を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】インパクトドライバの構成を示す断面図である。
【
図3】スピンドル、ハンマ、アンビルおよびコイルバネなどを分離した状態で示す斜視図である。
【
図4】第1,2,5,6実施形態のモータ駆動装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】第1実施形態の出力制限処理を示すフローチャートである。
【
図10】PI制御処理を示すフローチャートである。
【
図11】モータ回転速度、モータ電流、およびデューティ比の時間変化を示す第1のグラフである。
【
図12】モータ回転速度、モータ電流、およびデューティ比の時間変化を示す第2のグラフである。
【
図13】第2実施形態の出力制限処理を示すフローチャートである。
【
図14】第3,4実施形態のモータ駆動装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図15】第3実施形態の出力制限処理を示すフローチャートである。
【
図16】第4実施形態の出力制限処理を示すフローチャートである。
【
図17】第5実施形態の出力制限処理を示すフローチャートである。
【
図19】低下量算出処理を示すフローチャートである。
【
図20】第6実施形態の出力制限処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下に本開示の第1実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のインパクトドライバ1は、ボルトおよびナット等を対象物に固定するために利用される。
【0020】
インパクトドライバ1は、
図1に示すように、工具本体2と、バッテリパック3とを備える。バッテリパック3は、工具本体2に着脱可能に装着されて、工具本体2に電力を供給する。
【0021】
工具本体2は、ハウジング4と、ハンドグリップ5と、チャックスリーブ6と、トリガ7と、バッテリ装着部8と、モード切替スイッチ9と、正逆切替スイッチ10と、操作パネル11とを備える。
【0022】
ハウジング4は、後述するモータ21および打撃機構23等を収容する。
ハンドグリップ5は、ハウジング4の下方に設置される。ハンドグリップ5は、インパクトドライバ1の使用者がハンドグリップ5を片手で把持可能に成形されている。
【0023】
チャックスリーブ6は、ハウジング4の前方に設置される。チャックスリーブ6は、その前端部に、ドライバビットおよびソケットビット等の各種工具ビットを着脱自在に装着する装着機構を備える。
【0024】
トリガ7は、ハンドグリップ5の上部前方に設置され、インパクトドライバ1の使用者がインパクトドライバ1を駆動するときに操作される。トリガ7は、使用者がハンドグリップ5を把持した状態で、指で引き操作することができるように形成されている。
【0025】
バッテリ装着部8は、ハンドグリップ5の下端部に設置され、バッテリパック3が着脱可能に装着される。
モード切替スイッチ9は、ハンドグリップ5におけるトリガ7の上方に設置される。モード切替スイッチ9は、使用者が、インパクトドライバ1の動作モードを、予め登録した動作モードに1回の操作で切り替えるときに操作される。
【0026】
正逆切替スイッチ10は、ハンドグリップ5におけるモード切替スイッチ9の後方に設置される。正逆切替スイッチ10は、使用者が、インパクトドライバ1の回転方向を、ねじの締め付け方向である正方向と、正方向に対して逆の方向である逆方向との間で切り替えるときに操作される。
【0027】
操作パネル11は、バッテリ装着部8に設置される。操作パネル11は、インパクトドライバ1の動作モードを、予め設定された複数種類の動作モードの中から設定するときに押下操作される打撃ボタン12および特殊ボタン13を備える。
【0028】
インパクトドライバ1は、
図2に示すように、モータ21と、釣鐘状のハンマケース22と、打撃機構23とを備える。モータ21、ハンマケース22および打撃機構23は、ハウジング4内に収容される。
【0029】
ハンマケース22は、モータ21の前方(すなわち、
図2の右側)に組み付けられている。
打撃機構23は、ハンマケース22内に収容されている。すなわち、ハンマケース22内には、後端側に中空部が形成されたスピンドル24が同軸で収容されており、ハンマケース22内の後端側に設けられたボールベアリング25が、このスピンドル24の後端外周を回転可能に支持している。
【0030】
スピンドル24におけるボールベアリング25の前方には、回転軸に対して点対称となるようにして回転可能に支持された3つの遊星歯車を備える遊星歯車機構26が、ハンマケース22の後端側の内周面に取り付けられた内歯車27に噛み合っている。
【0031】
また遊星歯車機構26は、モータ21の出力軸21aの先端部に形成された太陽歯車21bに噛み合っている。
そして遊星歯車機構26は、
図3に示すように、太陽歯車21bと、内歯車27と、3つの遊星歯車26aと、3つのピン26bとを備える。
【0032】
そして打撃機構23は、
図2に示すように、スピンドル24と、ハンマ28と、アンビル29と、コイルバネ30とを備える。
図3に示すように、スピンドル24には、V字状のスピンドル溝24aが形成されている。そのスピンドル溝24aには、ボール24bが嵌っている。また、ハンマ28には、ハンマ溝28bが形成されている。そのハンマ溝28bには、ボール24bが嵌っている。
【0033】
図2に示すように、ハンマ28は、スピンドル24に対して一体に回転可能に、且つ、スピンドル24の軸方向に沿って移動可能に連結されている。そしてハンマ28は、コイルバネ30により前方へ付勢されている。このため、ボール24bは、スピンドル溝24aの前端に配置されている。
【0034】
また、スピンドル24の前端部は、アンビル29の後端に、遊びがある状態で同軸に挿入されることで回転可能に支持されている。
アンビル29は、ハンマ28による回転力および打撃力を受けて軸回りに回転する。アンビル29は、ハウジング4の前端部に設けられた軸受31によって、軸回りに回転可能に且つ軸方向に変位不能に支持されている。また、アンビル29の前端部には、チャックスリーブ6が取り付けられる。
【0035】
なお、モータ21の出力軸21a、スピンドル24、ハンマ28、アンビル29およびチャックスリーブ6は互いに同軸上に配置されている。
ハンマ28は、アンビル29に打撃力を与えるための2つの打撃突部28aを備える。2つの打撃突部28aは、ハンマ28の周方向に沿って180°の間隔を隔てて、ハンマ28の前端面から突出するように設置されている。
【0036】
アンビル29は、ハンマ28の2つの打撃突部28aに対応する2つの打撃アーム29aを備える。2つの打撃アーム29aは、ハンマ28の周方向に沿って180°の間隔を隔てて、アンビル29の後端に設置されている。
【0037】
そして、コイルバネ30の付勢力によってハンマ28が前方へ付勢されることで、ハンマ28の打撃突部28aにおける回転方向に対して垂直な面が、アンビル29の打撃アーム29aにおける回転方向に対して垂直な面に接触するようになる。
【0038】
打撃突部28aと打撃アーム29aとが接触している状態で、モータ21の回転力により遊星歯車機構26を介してスピンドル24が回転すると、ハンマ28がスピンドル24とともに回転し、ハンマ28の回転力が打撃突部28aと打撃アーム29aとを介してアンビル29へ伝達される。
【0039】
これにより、アンビル29の先端に装着された工具ビットが回転し、ねじ締めが可能となる。
そして、ねじが所定位置まで締め付けられることにより、アンビル29に対して外部から所定値以上のトルクが加わると、そのアンビル29に対するハンマ28のトルクも所定値以上になる。
【0040】
これにより、ハンマ28がコイルバネ30の付勢力に抗して、スピンドル24の回転方向とは相対的に逆の回転方向へと回転しながら後方へ変位し、ハンマ28の打撃突部28aがアンビル29の打撃アーム29aを乗り越えるようになる。つまり、ハンマ28の打撃突部28aがアンビル29の打撃アーム29aから一旦外れ、空転する。なお、上記のハンマ28の、逆の回転方向へと回転しながらの後方への変位は、ハンマ28と共にボール24bが後方へと移動することにより起きる。
【0041】
このようにハンマ28の打撃突部28aがアンビル29の打撃アーム29aを乗り越えると、ハンマ28は、スピンドル24とともに回転しつつコイルバネ30の付勢力で再び、スピンドル24の回転方向とは相対的に同じ回転方向へと回転しながら前方へ変位し、ハンマ28の打撃突部28aがアンビル29の打撃アーム29aを回転方向に打撃する。なお、上記のハンマ28の同じ回転方向へと回転しながらの前方への変位は、ハンマ28と共にボール24bが前方へと移動することにより起きる。
【0042】
従って、アンビル29に対して所定値以上のトルクが加わる毎に、そのアンビル29に対してハンマ28による打撃が繰り返し行われる。そして、このようにハンマ28の打撃力がアンビル29に間欠的に加えられることにより、インパクトドライバ1は、ねじを高トルクで増し締めすることができる。
【0043】
トリガスイッチ32は、使用者により引き操作されるトリガ7と、トリガ7の引き操作によりオンまたはオフされるとともにトリガ7の操作量に応じて抵抗値が変化するように構成されたスイッチ本体部33とを備える。
【0044】
モータ21は、
図4に示すように、U,V,W各相の電機子巻線を備えた3相ブラシレスモータである。そして工具本体2は、モータ21の回転位置(すなわち、回転角度)を検出する回転センサ41を備える。回転センサ41は、例えば、モータ21の各相に対応して配置される3つのホール素子を備える。ホール素子は、モータ21が所定角度回転する毎に回転検出信号を発生させるホールIC等で構成される。
【0045】
工具本体2は、モータ21を駆動制御するモータ駆動装置50を備える。
トリガスイッチ32のスイッチ本体部33は、トリガ7が引き操作されているときにオン状態となるメインスイッチ61と、トリガ7の引き量を検出する操作量検出部62とを備える。操作量検出部62は、トリガ7の引き量に応じて抵抗値が変化する可変抵抗である。メインスイッチ61および操作量検出部62は、モータ駆動装置50に接続される。
【0046】
工具本体2は、打撃スイッチ63と、特殊スイッチ64とを備える。打撃スイッチ63は、打撃ボタン12が押下操作されているときにオン状態となるスイッチである。特殊スイッチ64は、特殊ボタン13が押下操作されているときにオン状態となるスイッチである。打撃スイッチ63および特殊スイッチ64は、モータ駆動装置50に接続される。
【0047】
また、モード切替スイッチ9および正逆切替スイッチ10は、モータ駆動装置50に接続される。
モータ駆動装置50は、駆動回路51、電流検出回路52、位置検出回路53、表示回路54、電源回路55および制御回路56を備える。
【0048】
駆動回路51は、バッテリパック3から電力供給を受けて、モータ21の各相巻線に電流を流すための回路である。本実施形態では、駆動回路51は、6つのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6を備える3相フルブリッジ回路として構成されている。本実施形態では、スイッチング素子Q1~Q6はMOSFETである。
【0049】
駆動回路51において、スイッチング素子Q1~Q3は、モータ21の各端子U,V,Wと、バッテリパック3の正極側に接続された電源ラインとの間に、いわゆるハイサイドスイッチとして設けられている。スイッチング素子Q4~Q6は、モータ21の各端子U,V,Wと、バッテリパック3の負極側に接続されたグランドラインとの間に、いわゆるローサイドスイッチとして設けられている。
【0050】
バッテリパック3の正極側から駆動回路51に至る電力供給経路には、バッテリ電圧の電圧変動を抑制するためのコンデンサC1が設けられている。
駆動回路51からバッテリパック3の負極側に至る電力供給経路には、この経路を導通または遮断するためのスイッチング素子Q7と、電流検出用の抵抗R1とが設けられている。そして電流検出回路52は、抵抗R1の両端電圧を電流検出信号として制御回路56へ出力する。
【0051】
位置検出回路53は、回転センサ41からの検出信号に基づき、モータ21の回転位置を検出する回路であり、回転位置の検出結果を示す検出信号を制御回路56へ出力する。
表示回路54は、制御回路56からの指令に従い、操作パネル11の打撃力モード表示部66および特殊モード表示部67に設けられた複数のLEDを点灯させるための回路である。
【0052】
電源回路55は、モータ駆動装置50内の各部に電源供給を行うための回路であり、バッテリパック3から電力供給を受けて、所定の電源電圧Vccを生成する。生成された電源電圧Vccは、制御回路56、表示回路54、各種スイッチからの入力経路に設けられたプルアップ抵抗等に供給される。
【0053】
電源回路55は、動作停止時において、メインスイッチ61がオンされることにより起動し、メインスイッチ61、モード切替スイッチ9、打撃ボタン12および特殊ボタン13の操作停止期間が一定時間以上経過すると、動作を停止する。
【0054】
制御回路56は、CPU56a、ROM56bおよびRAM56c等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されている。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU56aが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM56bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU56aが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御回路56を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。なお、ROM56bは、データを書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM56bには、各動作モードにおけるモータ21の制御特性等が記憶される。
【0055】
制御回路56は、CPU56aが実行するソフトウェア処理により実現される機能ブロックとして、SW入力部71と、速度指令部72と、表示制御部73と、回転速度演算部74と、PWM生成部75と、モータ駆動制御部76とを備える。
【0056】
SW入力部71は、メインスイッチ61、モード切替スイッチ9、打撃スイッチ63および特殊スイッチ64のオン状態およびオフ状態を検出して、動作モードと、各種LEDの状態(すなわち、点灯状態または消灯状態)とを設定する。SW入力部71は、設定した動作モードを示す情報を、ROM56bに記憶する。SW入力部71は、各種LEDの状態を示すLED状態情報を、表示制御部73へ出力する。
【0057】
速度指令部72は、操作量検出部62からの入力信号に基づきトリガ7の操作量を検出し、トリガ7の操作量に応じた回転速度を指示する回転速度指令をPWM生成部75へ出力する。
【0058】
表示制御部73は、SW入力部71からの入力に従い、表示回路54を介して各種LEDの状態を制御する。
回転速度演算部74は、位置検出回路53からの検出信号に基づき、モータ21の回転速度を算出し、算出結果をPWM生成部75へ出力する。
【0059】
PWM生成部75は、SW入力部71にて設定された動作モードに対応した制御特性をROM56bから読み出し、読み出した制御特性に従いモータ21を駆動するための制御信号であるPWM信号を生成する。
【0060】
つまり、PWM生成部75は、ROM56bから読み出した制御特性と、速度指令部72から入力される回転速度指令と、回転速度演算部74から入力されるモータ21の回転速度とに基づき、PWM信号を生成する。
【0061】
モータ駆動制御部76は、PWM生成部75にて生成されたPWM信号に従い、駆動回路51を構成する各スイッチング素子Q1~Q6をオンまたはオフさせることで、モータ21の各相巻線に電流を流し、モータ21を回転させる。
【0062】
モータ駆動制御部76は、正逆切替スイッチ10からの入力信号に基づき、モータ21の回転方向を切り替える。
次に、打撃ボタン12および特殊ボタン13を介して設定される動作モードについて説明する。
【0063】
インパクトドライバ1では、動作モードとして、「最速」、「強」、「中」、「弱」の4種類の打撃力モードと、「木材」、「テクス薄」、「テクス厚」、「ボルト1」、「ボルト2」、「ボルト3」の7種類の特殊モードとが設定されている。テクスは、登録商標である。
【0064】
これらの動作モードは、モータ21の制御方法を規定する。各動作モードで規定された制御方法を実現するため、ROM56bには、各動作モードでモータ21を制御するのに必要な制御特性が予め記憶されている。
【0065】
そして、「最速」、「強」、「中」、「弱」の4種類の打撃力モードは、打撃ボタン12を操作することにより、最速→強→中→弱→最速…というように順次切り換え可能である。
【0066】
また、「木材」、「テクス薄」、「テクス厚」、「ボルト1」、「ボルト2」、「ボルト3」の7種類の特殊モードは、特殊ボタン13を操作することで、木材→テクス薄→テクス厚→ボルト1→ボルト2→ボルト3→木材…というように順次切り換え可能である。
【0067】
図5に示すように、操作パネル11は、打撃ボタン12と、特殊ボタン13と、打撃力モード表示部66と、特殊モード表示部67と、モード表示LED81,82,83,84,85とを備える。
【0068】
打撃力モード表示部66および特殊モード表示部67は、表示回路54からの指令に基づいて、モード表示LED81,82,83,84,85を点灯させたり、消灯させたりする。
【0069】
動作モードが「最速」である場合には、モード表示LED81,82,83,84が点灯する。動作モードが「強」である場合には、モード表示LED81,82,83が点灯する。動作モードが「中」である場合には、モード表示LED81,82が点灯する。動作モードが「弱」である場合には、モード表示LED81が点灯する。
【0070】
動作モードが「木材」である場合には、モード表示LED81,85が点灯する。動作モードが「テクス薄」である場合には、モード表示LED82,85が点灯する。動作モードが「テクス厚」である場合には、モード表示LED83,85が点灯する。
【0071】
動作モードが「ボルト1」である場合には、モード表示LED81,84,85が点灯する。動作モードが「ボルト2」である場合には、モード表示LED82,84,85が点灯する。動作モードが「ボルト3」である場合には、モード表示LED83,84,85が点灯する。
【0072】
「最速」、「強」、「中」、「弱」の4種類の打撃力モードでは、打撃力モード毎に、トリガ7の引き量に応じたPWM信号のデューティ比が設定されている。
具体的には、打撃力モードが「最速」である場合には、例えば、トリガ引き量を「1」から「10」までの10段階に分割した際、トリガ引き量が最も大きい「10」であるときにPWM信号のデューティ比が最大となり、モータ21を最速で回転させるように設定される。
【0073】
そして、トリガ引き量が「10」であるときにおけるPWM信号のデューティ比は、「最速」、「強」、「中」、「弱」の順で小さくなる。
また、打撃力モードが「最速」、「強」、「中」、「弱」の何れであっても、トリガ引き量が最小である「1」に達したときに、PWM信号のデューティ比が0付近の最小値となる。そして、トリガ引き量が「1」から増加するに従い、トリガ引き量が「10」に達したときのデューティ比まで、徐々に上昇するように設定されている。
【0074】
このため、打撃力モードでは、トリガ引き量が「1」以上となる操作範囲が、モータ21を駆動可能な有効操作範囲となり、その有効操作範囲内で、トリガ引き量が「10」に達するまでの領域が、モータ21の回転速度を調整可能な制御範囲となる。
【0075】
このため、打撃力モードにおいてトリガ7が引き操作されると、モータ21の回転速度が徐々に増加し、モータ21が無負荷状態であれば、トリガ7の引き量に対応した一定回転速度となる。
【0076】
そして、ねじ締め等によりモータ21に負荷が加わると、その負荷に応じてモータ21の回転速度が低下し、その後、打撃が発生すると、モータ21に加わる負荷が一時的に低下するため、モータ21の回転速度が変動する。
【0077】
なお、上記説明では、トリガ引き量を10段階に分割して、有効操作範囲および制御範囲を設定した例について説明したが、有効操作範囲および制御範囲は、トリガ7の全操作領域に対し適宜設定すればよく、上記設定方法に限定されるものではない。
【0078】
次に、特殊モードのうち、「テクス薄」、「テクス厚」は、被加工材にねじ孔を開けるためのドリルが先端部分に設けられたテクスねじを締め付けるための動作モードである。
「テクス厚」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の駆動が開始されてから打撃が発生するまで、打撃力モードと同様に、トリガ7の引き量に応じたデューティ比のPWM信号でモータ21を駆動する。但し、トリガ引き量に応じたデューティ比は、「最速」の打撃力モードと一致するように設定されている。
【0079】
そして、打撃が所定回発生すると、制御回路56は、被加工材にねじ孔が形成されたものと判断して、PWM信号のデューティ比を小さくし、モータ21の回転速度を低下させる。
【0080】
これにより、インパクトドライバ1は、モータ21の駆動が開始されてから被加工材にねじ孔が形成されるまではモータ21を高速で回転させ、その後、モータ21の回転速度を低下させることができる。このため、インパクトドライバ1の使用者は、ねじ締めを安定して実施できるようになる。
【0081】
なお、テクスモードでの「テクス薄」と「テクス厚」との違いは、被加工材の厚さである。
「テクス薄」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の駆動が開始されてから打撃が発生するまで、打撃力モードと同様に、トリガ7の引き量に応じたデューティ比のPWM信号でモータ21を駆動する。但し、トリガ引き量に応じたデューティ比は、「強」の打撃力モードよりもモータ21の回転速度が若干低くなるように設定されている。そして、打撃が所定回発生すると、制御回路56は、モータ21の駆動を停止する。
【0082】
また、特殊モードのうち、「木材」では、制御回路56は、トリガ7が引き操作されると、その引き量に応じてPWM信号のデューティ比を設定する。なお、このデューティ比は、「最速」の打撃力モードよりも小さくなるように設定される。
【0083】
そして、モータ21の駆動開始後、打撃が所定回発生すると、制御回路56は、PWM信号のデューティ比を徐々に増加させる。これは、木材へねじを固定する場合において、モータ21の駆動開始直後には、ねじは木材に食い込んでいないため、ねじをゆっくりと回転させて、木材に食い込ませる必要があるためである。
【0084】
つまり、「木材」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の駆動開始後にモータ21を低回転速度で駆動し、その後、所定回打撃が発生すると、ねじが木材に食い込んだものとして、モータ21の回転を徐々に増加させる。この結果、インパクトドライバ1の使用者は、木材へのねじの固定および締め付けを短時間で効率よく実施できるようになる。
【0085】
特殊モードのうち、「ボルト1」、「ボルト2」、「ボルト3」は、ボルトまたはナットの締め付け若しくは取り外しを行うための動作モードである。以下、「ボルト1」、「ボルト2」、「ボルト3」の特殊モードをまとめて、ボルトモードという。
【0086】
すなわち、モータ21を回転させてボルトの締め付け若しくは取り外しを行う際には、工具ビットをボルトの頭部に嵌めるため、ねじを締め付けるときのように、工具ビットがボルトから外れることはない。
【0087】
このため、ボルトモードでは、PWM信号のデューティ比が最大となるトリガ引き量が、打撃力モードでの引き量に比べて小さくなるように、制御特性が設定されている。
つまり、ボルトモードでは、トリガ引き量が「4」以上でPWM信号のデューティ比が最大となるように、モータ21の制御特性が設定されている。
【0088】
また、ボルトモードでは、ボルトの締め付け若しくは取り外しを速やかに実施できるようにするため、トリガ引き量が「4」以上になったときのPWM信号のデューティ比は、「最速」の打撃力モードと同じ若しくは略同じ最大値に設定されている。
【0089】
このため、ボルトモードでは、最速の動作モードに比べ、トリガ7を少し引いただけで、モータ21が最速で回転することになり、インパクトドライバ1の使用者は、ボルトの締め付け若しくは取り外しを短時間で効率よく行うことができることになる。
【0090】
また使用者は、トリガ7を最大引き量付近まで引き操作することなく、モータ21を高速回転させることができる。このため、インパクトドライバ1は、使用者が、ボルトの締め付け若しくは取り外し作業を行う際に、トリガ7の操作によって使用者の指が疲労し、長時間、作業を継続することができなくなるという事態の発生を抑制することができる。
【0091】
また、ボルトモードにおいて、モータ21を逆回転させて、ボルト若しくはナットの締め付けを緩める際には、モータ21の駆動を開始すると、ボルト若しくはナットから負荷が加わるので、直ぐに打撃が発生する。
【0092】
そして、その打撃によって、ボルト若しくはナットの締め付けが緩むと、モータ21に加わる負荷が低下し、モータ21の回転速度が上昇する。
そこで、ボルトモードにおいて、モータ21の逆回転時には、モータ21の駆動を開始してから、打撃が検出され、その後、所定時間打撃が検出されなくなると、モータ21の駆動を停止若しくは低減させるように、制御特性が設定される。
【0093】
このため、インパクトドライバ1は、ボルト若しくはナットの締め付けを緩める際には、モータ21を必要以上に回転させてボルト若しくはナットが工具ビットから落下するのを抑制できる。
【0094】
「ボルト1」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の正回転時において、モータ21の駆動が開始されてから打撃が発生するまで、2500[/分]の回転速度でモータ21を駆動する。そして、打撃が所定回発生すると、制御回路56は、モータ21の駆動を停止する。
【0095】
「ボルト1」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の逆回転時において、まず、2500[/分]の回転速度でモータ21を駆動する。そして、打撃が検出され、その後、所定時間打撃が検出されなくなると、制御回路56は、モータ21が2回転してから、モータ21の駆動を停止する。
【0096】
「ボルト2」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の正回転時において、モータ21の駆動が開始されてから打撃が発生するまで、「最速」の打撃力モードと同様にしてモータ21を駆動する。そして、打撃が所定回発生した後に打撃が0.3秒間継続すると、制御回路56は、モータ21の駆動を停止する。
【0097】
「ボルト2」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の逆回転時において、まず、「最速」の打撃力モードと同様にしてモータ21を駆動する。そして、打撃が検出され、その後、所定時間打撃が検出されなくなると、制御回路56は、モータ21が2回転してから、モータ21の駆動を停止する。
【0098】
「ボルト3」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の正回転時において、モータ21の駆動が開始されてから打撃が発生するまで、「最速」の打撃力モードと同様にしてモータ21を駆動する。そして、打撃が所定回発生した後に打撃が1秒間継続すると、制御回路56は、モータ21の駆動を停止する。
【0099】
「ボルト3」の特殊モードでは、制御回路56は、モータ21の逆回転時において、まず、「最速」の打撃力モードと同様にしてモータ21を駆動する。そして、打撃が検出され、その後、所定時間打撃が検出されなくなると、制御回路56は、モータ21の回転速度を250[/分]まで急速に低下させる。
【0100】
ROM56bには、
図6に示すように、トリガ引き量に応じて目標回転速度およびデューティ比を設定するための設定テーブル90が記憶されている。
設定テーブル90は、「最速」、「強」、「中」、「弱」の打撃力モードのそれぞれについて、打撃前の目標回転速度、打撃前のPWMデューティ比、打撃後の目標回転速度および打撃後のPWMデューティ比とトリガ引き量との対応関係を設定している。
【0101】
なお、
図6には示していないが、設定テーブル90は、「木材」、「テクス薄」、「テクス厚」、「ボルト1」、「ボルト2」、「ボルト3」の特殊モードのそれぞれについても、打撃前の目標回転速度、打撃前のPWMデューティ比、打撃後の目標回転速度および打撃後のPWMデューティ比とトリガ引き量との対応関係を設定している。
【0102】
次に、制御回路56のCPU56aが実行する工具制御処理の手順を説明する。工具制御処理は、制御回路56に電源電圧Vccが供給されて制御回路56が起動した後に開始される処理である。
【0103】
工具制御処理が実行されると、CPU56aは、
図7に示すように、まずS10にて、現在設定されている動作モードを示す現在モード情報をROM56bから読み出す。
そしてCPU56aは、S20にて、モード切替操作が行われたか否かを判断する。モード切替操作は、モード切替スイッチ9、打撃ボタン12および特殊ボタン13に対する操作である。
【0104】
ここで、モード切替操作が行われていない場合には、CPU56aは、S40に移行する。一方、モード切替スイッチ9が操作された場合には、CPU56aは、S30にて、現在設定されている動作モードと、検出されたモード切替操作とに基づいて、動作モードを変更し、変更した動作モードを示す情報を現在モード情報としてROM56bに記憶し、S40に移行する。
【0105】
そして、S40に移行すると、CPU56aは、出力制限値をリセットする。具体的には、CPU56aは、RAM56cに設けられた出力制限回転速度Limit_Speedおよび出力制限デューティ比Limit_Dutyをリセット(すなわち、0に設定)する。
【0106】
さらにCPU56aは、S50にて、メインスイッチ61からの入力信号に基づき、トリガ7が操作されているか否かを判断する。ここで、トリガ7が操作されていない場合には、CPU56aは、S20に移行する。
【0107】
一方、トリガ7が操作されている場合には、CPU56aは、S60にて、操作量検出部62からの入力信号に基づきトリガ7の引き量を検出する。さらにCPU56aは、S70にて、現在の動作モードとトリガ7の引き量とに対応する打撃前の目標回転速度と、現在の動作モードとトリガ7の引き量とに対応する打撃後の目標回転速度とを、設定テーブル90から取得する。
【0108】
そしてCPU56aは、S80にて、後述する出力制限処理を実行する。
さらにCPU56aは、S90にて、打撃検出処理を実行する。打撃検出処理では、CPU56aは、まず、回転センサ41からの検出信号により得られるモータ21の回転速度の予め設定された増減判定時間内における増減量が、予め設定された打撃判定値以上であるか否かを判断する。本実施形態では、増減判定時間は例えば50[ms]に設定され、打撃判定値は例えば100[/分]に設定されている。
【0109】
ここで、増減判定時間内における増減量が打撃判定値未満である場合には、CPU56aは、打撃検出処理を終了する。
一方、増減判定時間内における増減量が打撃判定値以上である場合には、CPU56aは、RAM56cに設けられた打撃カウンタをインクリメント(すなわち、1加算)する。なお、打撃カウンタは、トリガ7が操作されている状態から、トリガ7が操作されていない状態へ移行した時点で、リセットされる。
【0110】
次にCPU56aは、打撃カウンタの値が予め設定された打撃判定回数以上であるか否かを判断する。ここで、打撃カウンタの値が打撃判定回数未満である場合には、CPU56aは、打撃検出処理を終了する。
【0111】
一方、打撃カウンタの値が打撃判定回数以上である場合には、CPU56aは、RAM56cに設けられた打撃検出フラグをセットして、打撃検出処理を終了する。なお、打撃検出フラグは、トリガ7が操作されている状態から、トリガ7が操作されていない状態へ移行した時点で、クリアされる。
【0112】
そして、打撃検出処理が終了すると、CPU56aは、S100にて、打撃を検出したか否かを判断する。具体的には、CPU56aは、打撃検出フラグがセットされているか否かを判断し、打撃検出フラグがセットされている場合には、打撃を検出したと判断し、打撃検出フラグがクリアされている場合には、打撃を検出していないと判断する。
【0113】
ここで、打撃を検出していない場合には、CPU56aは、S110にて、後述するP制御処理を実行し、S50に移行する。一方、打撃を検出した場合には、CPU56aは、S120にて、後述するPI制御処理を実行し、S50に移行する。
【0114】
次に、S80でCPU56aが実行する出力制限処理の手順を説明する。
出力制限処理が実行されると、CPU56aは、
図8に示すように、まずS210にて、現在の電流値を算出する。具体的には、CPU56aは、電流検出回路52から電流検出信号を取得し、取得した電流検出信号に基づいて、電流値を算出する。
【0115】
そしてCPU56aは、S220にて、S210で算出された電流値が予め設定された制限電流判定値以上であるか否かを判断する。ここで、電流値が制限電流判定値未満である場合には、CPU56aは、出力制限処理を終了する。
【0116】
一方、電流値が制限電流判定値以上である場合には、CPU56aは、S230にて、現在の電流値と制限電流判定値との差を算出する。具体的には、CPU56aは、S210で算出された電流値から制限電流判定値を減算した減算値を、RAM56cに設けられた電流差Current_Diffに格納する。
【0117】
そしてCPU56aは、S240にて、出力制限回転速度を増加させる。具体的には、CPU56aは、RAM56cに設けられた出力制限回転速度Limit_Speedに格納されている値と、予め設定された加算回転速度INC_Speedとを加算した加算値を、出力制限回転速度Limit_Speedに格納する。
【0118】
さらにCPU56aは、S250にて、出力制限デューティ比を増加させて、出力制限処理を終了する。具体的には、CPU56aは、RAM56cに設けられた出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納されている値と、予め設定された加算デューティ比INC_Dutyとを加算した加算値を、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納する。
【0119】
次に、S110でCPU56aが実行するP制御処理の手順を説明する。
P制御処理が実行されると、CPU56aは、
図9に示すように、まずS310にて、打撃前の目標回転速度を算出する。具体的には、CPU56aは、S70で取得した打撃前の目標回転速度から、出力制限回転速度Limit_Speedに格納されている値を減算した減算値を、RAM56cに設けられた目標回転速度Targetに格納する。
【0120】
そしてCPU56aは、S320にて、基本デューティ比を取得する。具体的には、CPU56aは、現在の動作モードと、S60で検出したトリガ引き量とに対応する打撃前のPWMデューティ比を、設定テーブル90から取得する。そしてCPU56aは、取得したPWMデューティ比を示す値を、RAM56cに設けられた基本デューティ比BaseDutyに格納する。
【0121】
次にCPU56aは、S330にて、回転速度差を算出する。具体的には、CPU56aは、目標回転速度Targetに格納されている値から、回転センサ41からの検出信号により得られるモータ21の回転速度(以下、現在の実回転速度)を減算した減算値を算出し、この減算値を、RAM56cに設けられた回転速度差Diffに格納する。
【0122】
さらにCPU56aは、S340にて、比例補正量を算出する。具体的には、CPU56aは、回転速度差Diffに格納されている値と、予め設定されている比例ゲインGain_Pとを乗算した乗算値を、RAM56cに設けられた比例補正量Offset_Pに格納する。本実施形態では、比例ゲインGain_Pは例えば0.01に設定されている。
【0123】
そしてCPU56aは、S350にて、出力デューティ比を算出して、P制御処理を終了する。具体的には、CPU56aは、基本デューティ比BaseDutyに格納されている値と、比例補正量Offset_Pに格納されている値とを加算した加算値から、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納されている値を減算した減算値を、RAM56cに設けられた出力デューティ比Outputに格納する。
【0124】
次に、S120でCPU56aが実行するPI制御処理の手順を説明する。
PI制御処理が実行されると、CPU56aは、
図10に示すように、まずS410にて、打撃後の目標回転速度を算出する。具体的には、CPU56aは、S70で取得した打撃後の目標回転速度から、出力制限回転速度Limit_Speedに格納されている値を減算した減算値を、RAM56cに設けられた目標回転速度Targetに格納する。
【0125】
そしてCPU56aは、S420にて、基本デューティ比を取得する。具体的には、CPU56aは、現在の動作モードと、S60で検出したトリガ引き量とに対応する打撃後のPWMデューティ比を、設定テーブル90から取得する。そしてCPU56aは、取得したPWMデューティ比を示す値を基本デューティ比BaseDutyに格納する。
【0126】
次にCPU56aは、S430にて、回転速度差を算出する。具体的には、CPU56aは、目標回転速度Targetに格納されている値から現在の実回転速度を減算した減算値を算出し、この減算値を、回転速度差Diffに格納する。
【0127】
さらにCPU56aは、S440にて、比例補正量を算出する。具体的には、CPU56aは、回転速度差Diffに格納されている値と比例ゲインGain_Pとを乗算した乗算値を比例補正量Offset_Pに格納する。
【0128】
そしてCPU56aは、S450にて、累積差を算出する。具体的には、CPU56aは、RAM56cに設けられた累積差Diff_integralに格納されている値と、回転速度差Diffに格納されている値とを加算した加算値を、累積差Diff_integralに格納する。
【0129】
次にCPU56aは、S460にて、累積補正量を算出する。具体的には、CPU56aは、累積差Diff_integralに格納されている値と、予め設定されている累積ゲインGain_Iとを乗算した乗算値を、RAM56cに設けられた累積補正量Offset_Iに格納する。
【0130】
そしてCPU56aは、S470にて、出力デューティ比を算出して、PI制御処理を終了する。具体的には、CPU56aは、基本デューティ比BaseDutyに格納されている値と、比例補正量Offset_Pに格納されている値と、累積補正量Offset_Iに格納されている値とを加算した加算値から、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納されている値を減算した減算値を、出力デューティ比Outputに格納する。
【0131】
図11は、モータ21の駆動が開始されてから打撃を検出した後までにおけるモータ回転速度の変化と、モータ21への通電電流(以下、モータ電流)の変化と、デューティ比の変化とを示す第1のグラフである。
図11では、打撃が検出された後にモータ電流が制限電流判定値RJを超える。
【0132】
図11における時刻t0は、モータ21の駆動が開始されたタイミングである。時刻t1は、モータ21に負荷が掛かり始めたタイミングである。時刻t2は、打撃が開始されたタイミングである。時刻t3は、制御回路56が打撃を検出したタイミングである。
【0133】
線L1は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行しない場合におけるモータ回転速度を示す。
線L2は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行する場合におけるモータ回転速度を示す。
【0134】
線L11は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行しない場合におけるモータ電流を示す。
線L12は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行する場合におけるモータ電流を示す。
【0135】
線L21は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行しない場合におけるデューティ比を示す。
線L22は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行する場合におけるデューティ比を示す。
【0136】
線L1で示すモータ回転速度は、時刻t0から時刻t1までの間に打撃前目標回転速度TG1に達し、時刻t1から時刻t2までは直線的に低下する。さらに、線L1で示すモータ回転速度は、時刻t2から時刻t3までの間に振動しながら徐々に低下する。そして、線L1で示すモータ回転速度は、時刻t3以降は振動しながら打撃後目標回転速度TG2の近傍を維持する。
【0137】
線L11で示すモータ電流は、時刻t1から時刻t2までは直線的に増加し、時刻t2以降は振動する。そして、線L11で示すモータ電流は、時刻t4、時刻t5、時刻t6、時刻t7、時刻t8で、制限電流判定値RJを超える。
【0138】
線L21で示すデューティ比は、時刻t0から時刻t1までの間に基本デューティ比に達し、時刻t1から時刻t2までは直線的に上昇する。さらに、線L21で示すデューティ比は、時刻t2以降は振動しながらほぼ一定値を維持する。
【0139】
インパクトドライバ1を利用してボルト等を対象物に固定する作業中において、所定時間が経過して、ボルト等が対象物に対して回転できずに固定された状態となる。この際には、ボルト等が回転しないので、工具ビットも回転することができない状態(以下、ロック状態)となる。このように工具ビットがロックされているときに、ハンマ28がアンビル29を打撃すると、打撃後にハンマ28に伝わる反力が大きくなる。この時、上述したハンマ28及びボール24bが、後方へと戻りすぎることが起きる。ボール24bが戻りすぎると、ボール24bがスピンドル溝24aの後端へと接触することになる。このハンマ28及びボール24bの戻り過ぎによって、ハンマ28のスピンドル24の回転方向とは逆方向の慣性が、ボール24bを介してスピンドル24へと伝達されることになる。
【0140】
ハンマ28のスピンドル24の回転方向とは逆方向への慣性が回転抵抗としてスピンドル24へと伝達されると、それまで所定の回転数で回転していたスピンドル24の回転数が下がることとなる。スピンドル24の回転数が下がるということは、すなわち、駆動側の遊星歯車26aおよび太陽歯車21bの回転数が下がるということである。このような現象によって、モータ21の回転数(すなわち、ロータの回転数)が通常の打撃よりも下がることになる(時刻t4参照)。
【0141】
このように回転数が下がったモータ21は元の回転数に戻すために、モータ電流が急激に増加し、モータ電流が制限電流判定値RJを超える。
線L2で示すモータ回転速度は、時刻t0から時刻t1までの間に打撃前目標回転速度TG1に達し、時刻t1から時刻t2までは直線的に低下する。さらに、線L2で示すモータ回転速度は、時刻t2から時刻t3までの間に振動しながら徐々に低下する。そして、線L2で示すモータ回転速度は、時刻t3から時刻t4までの間では、振動しながら打撃後目標回転速度TG2の近傍を維持し、時刻t4から時刻t5までの間では、振動しながら打撃後目標回転速度TG3の近傍を維持する。打撃後目標回転速度TG3は、打撃後目標回転速度TG2より低い。そして、線L2で示すモータ回転速度は、時刻t5以降は、振動しながら打撃後目標回転速度TG4の近傍を維持する。打撃後目標回転速度TG4は、打撃後目標回転速度TG3より低い。
【0142】
線L12で示すモータ電流は、時刻t1から時刻t2までは直線的に増加し、時刻t2以降は振動する。そして、線L12で示すモータ電流は、時刻t4、時刻t5で制限電流判定値RJを超える。また、線L12で示すモータ電流は、時刻t5で制限電流判定値RJを超えてその後に制限電流判定値RJ未満となった以降は、制限電流判定値RJ未満を維持する。
【0143】
線L22で示すデューティ比は、時刻t0から時刻t1までの間に基本デューティ比に達し、時刻t1から時刻t2までは直線的に上昇する。さらに、線L22で示すデューティ比は、時刻t2以降は振動しながらほぼ一定値を維持する。但し、線L22で示すデューティ比は、時刻t4以降において、線L21で示すデューティ比より小さくなる。さらに、線L22で示すデューティ比は、時刻t5以降において、線L21で示すデューティ比より更に小さくなる。
【0144】
図12は、モータ21の駆動が開始されてから打撃を検出した後までにおけるモータ回転速度の変化と、モータ電流の変化と、デューティ比の変化とを示す第2のグラフである。
図12では、打撃が検出される前にモータ電流が制限電流判定値RJを超える。
【0145】
図12における時刻t10は、モータ21の駆動が開始されたタイミングである。時刻t11は、モータ21に負荷が掛かり始めたタイミングである。時刻t12は、モータ電流が制限電流判定値RJを超えたタイミングである。時刻t13は、打撃が開始されたタイミングである。時刻t14は、制御回路56が打撃を検出したタイミングである。
【0146】
線L3は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行しない場合におけるモータ回転速度を示す。
線L4は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行する場合におけるモータ回転速度を示す。
【0147】
線L13は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行しない場合におけるモータ電流を示す。
線L14は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行する場合におけるモータ電流を示す。
【0148】
線L23は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行しない場合におけるデューティ比を示す。
線L24は、工具制御処理においてS80の出力制限処理を実行する場合におけるデューティ比を示す。
【0149】
線L3で示すモータ回転速度は、時刻t0から時刻t1までの間に打撃前目標回転速度TG1に達し、時刻t11から時刻t13までは直線的に低下する。さらに、線L3で示すモータ回転速度は、時刻t13から時刻t14までの間に振動しながら徐々に低下する。そして、線L3で示すモータ回転速度は、時刻t14以降は振動しながら打撃後目標回転速度TG2の近傍を維持する。
【0150】
線L13で示すモータ電流は、時刻t11から時刻t13までは直線的に増加し、時刻t12で制限電流判定値RJを超える。そして、線L13で示すモータ電流は、時刻t13以降は振動する。そして、線L13で示すモータ電流は、時刻t15、時刻t16、時刻t17、時刻t18、時刻t19で、制限電流判定値RJを超える。
【0151】
線L23で示すデューティ比は、時刻t10から時刻t11までの間に基本デューティ比に達し、時刻t11から時刻t13までは直線的に上昇する。さらに、線L23で示すデューティ比は、時刻t13以降は振動しながらほぼ一定値を維持する。
【0152】
線L4で示すモータ回転速度は、時刻t10から時刻t11までの間に打撃前目標回転速度TG1に達し、時刻t11から時刻t13までは直線的に低下する。但し、時刻t12でモータ電流が制限電流判定値RJを超えるため、線L4で示すモータ回転速度は、時刻t13から時刻t14までの間において、打撃前目標回転速度TG1より低い打撃前目標回転速度TG11となるように制御される。
【0153】
さらに、線L4で示すモータ回転速度は、時刻t13から時刻t14までの間に振動しながら徐々に低下する。そして、線L4で示すモータ回転速度は、時刻t14から時刻t15までの間では、振動しながら打撃後目標回転速度TG2の近傍を維持し、時刻t15から時刻t16までの間では、振動しながら打撃後目標回転速度TG3の近傍を維持する。そして、線L4で示すモータ回転速度は、時刻t16以降は、振動しながら打撃後目標回転速度TG4の近傍を維持する。
【0154】
線L14で示すモータ電流は、時刻t11から時刻t12までは直線的に増加し、時刻t12で制限電流判定値RJを超える。そして、線L14で示すモータ電流は、時刻t13以降は振動する。線L14で示すモータ電流は、時刻t13から時刻t14までの間において、線L13で示すモータ電流より小さい。そして、線L14で示すモータ電流は、時刻t15、時刻t16で制限電流判定値RJを超える。また、線L14で示すモータ電流は、時刻t16で制限電流判定値RJを超えてその後に制限電流判定値RJ未満となった以降は、制限電流判定値RJ未満を維持する。
【0155】
線L24で示すデューティ比は、時刻t10から時刻t11までの間に基本デューティ比に達し、時刻t11から時刻t12までは直線的に上昇する。そして、線L24で示すデューティ比は、時刻t12から時刻t13までの間に徐々に低下する。さらに、線L24で示すデューティ比は、時刻t13以降は振動しながらほぼ一定値を維持する。但し、線L24で示すデューティ比は、時刻t13から時刻t14までの間において、線L23で示すデューティ比より小さくなる。また、線L24で示すデューティ比は、時刻t15以降において、線L23で示すデューティ比より小さくなる。さらに、線L24で示すデューティ比は、時刻t16以降において、線L23で示すデューティ比より更に小さくなる。
【0156】
このように構成されたインパクトドライバ1は、モータ21と、打撃機構23と、制御回路56とを備える。
打撃機構23は、ハンマ28と、アンビル29とを備え、アンビル29に対して外部から所定値以上のトルクが加わると、ハンマ28がアンビル29から外れて空転し、アンビル29を回転方向に打撃する。ハンマ28は、モータ21の回転力によって回転する。アンビル29は、ハンマ28の回転力を受けて回転し工具ビットが装着される。
【0157】
制御回路56は、モータ21を制御する。そして制御回路56は、モータ21に加わる負荷が予め設定された制限判定値以上である場合に、モータ21の出力を制限する。具体的には、制御回路56は、モータ21の電流値が予め設定された制限電流判定値以上である場合に、モータ21に加わる負荷が予め設定された制限判定値以上であると判断する。
【0158】
このようにインパクトドライバ1は、制限判定値以上の大きさの負荷がモータ21に加わるとモータ21の出力を制限するため、モータ21の出力に起因して制限判定値以上の大きさの負荷が継続してモータ21に加わるのを抑制することができる。また、これにより、モータ21のロータによる正転方向への駆動中に、太陽歯車21bに対して、モータ21のロータによる正転方向への駆動力と、ハンマ28およびボール24bから伝達されたスピンドル24による逆転方向への駆動力とが掛りにくくなる。このため、太陽歯車21bが破損することが少なくなる。同じく、太陽歯車21bと噛み合う遊星歯車26aにも同じく力が掛りにくくなるため、遊星歯車26aが破損することが少なくなる。同様に、遊星歯車26aと噛み合う内歯車27も破損することが少なくなる。すなわち、インパクトドライバ1の破損を抑制することができる。
【0159】
また制御回路56は、モータ21の電流値が制限電流判定値以上になってからモータ21の駆動が停止するまで、モータ21の出力の制限を継続する。これにより、インパクトドライバ1は、少なくとも、負荷が制限判定値以上になってからモータ21の駆動が停止するまでは、モータ21の出力に起因して制限判定値以上の大きさの負荷が継続してモータ21に加わるのを抑制することができ、インパクトドライバ1の破損を更に抑制することができる。
【0160】
また制御回路56は、第1制限出力と、第1制限出力よりも小さい第2制限出力とにより、モータ21の出力を制限できるように構成されている。そして制御回路56は、第1制限出力でモータ21の出力を制限している状態において、負荷が再び制限判定値以上になった場合には、第1制限出力から第2制限出力に切り替えてモータ21の出力を制限する。
【0161】
第1制限出力は、P制御処理において、基本デューティ比と比例補正量との加算値に対して加算デューティ比を減算することによって得られる出力デューティ比である。第2制限出力は、P制御処理において、第1制限出力に対応する出力デューティ比に対して更に加算デューティ比を減算することによって得られる出力デューティ比である。
【0162】
同様に、第1制限出力は、PI制御処理において、基本デューティ比と比例補正量と累積補正量との加算値に対して加算デューティ比を減算することによって得られる出力デューティ比である。第2制限出力は、PI制御処理において、第1制限出力に対応する出力デューティ比に対して更に加算デューティ比を減算することによって得られる出力デューティ比である。
【0163】
また制御回路56は、更に、第2制限出力よりも小さい第3制限出力により、モータ21の出力を制限できるように構成されている。そして制御回路56は、第2制限出力でモータ21の出力を制限している状態において、負荷が再び制限判定値以上になった場合には、第2制限出力から第3制限出力に切り替えてモータ21の出力を制限する。
【0164】
第3制限出力は、P制御処理およびPI制御処理において、第2制限出力に対応する出力デューティ比に対して更に加算デューティ比を減算することによって得られる出力デューティ比である。
なお、本実施形態では、モータ21の出力の制限は、第1~3制限出力のみで行われるのではない。すなわち、制御回路56は、負荷が制限判定値以上になる毎に、第3制限出力よりも小さい第4制限出力、第4制限出力よりも小さい第5制限出力、・・・というように、順次、制限出力が小さくなるように切り替えて、モータ21の出力を制限する。
【0165】
また制御回路56は、モータ回転速度が目標回転速度に一致するようにモータ21を制御し、制御回路56は、目標回転速度を小さくすることによって、モータ21の出力を制限する。これにより、インパクトドライバ1は、モータ21の回転速度を低減することによって、モータ21の出力を制限することができる。
【0166】
また制御回路56は、モータ21への通電電流に対してPWM制御を実行することによりモータ21を制御し、制御回路56は、PWM制御のデューティ比を小さくすることによって、モータ21の出力を制限する。これにより、インパクトドライバ1は、モータ21への通電電流を低減することによって、モータ21の出力を制限することができる。
【0167】
また制御回路56は、モータ21が駆動しているときにおいてアンビル29がロックされているか否かを判断し、アンビル29が固定されている場合には、モータ21の出力を制限する。具体的には、制御回路56は、モータ21の電流値が制限電流判定値以上である場合に、アンビル29が固定されていると判断する。
【0168】
このようにインパクトドライバ1は、アンビル29がロックされているとモータ21の出力を制限するため、アンビル29が固定されている状態においてモータ21の出力に起因して大きな負荷が継続してモータ21に加わるのを抑制することができ、インパクトドライバ1の破損を抑制することができる。
【0169】
また制御回路56は、アンビル29がロックされていると判断してからモータ21の駆動が停止するまで、モータ21の出力の制限を継続する。これにより、インパクトドライバ1は、少なくとも、アンビル29が固定されていると判断してからモータ21の駆動が停止するまでは、アンビル29が固定されている状態においてモータ21の出力に起因して大きな負荷が継続してモータ21に加わるのを抑制することができ、インパクトドライバ1の破損を更に抑制することができる。
【0170】
以上説明した実施形態において、インパクトドライバ1は回転打撃工具に相当し、工具ビットは工具要素に相当し、制御回路56は制御部に相当し、制限電流判定値は制限判定値に相当する。
【0171】
(第2実施形態)
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0172】
第2実施形態のインパクトドライバ1は、出力制限処理の手順が変更された点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態の出力制限処理は、
図13に示すように、S240,S250の処理が省略されて、S270,S280,S290の処理が追加された点が第1実施形態と異なる。
【0173】
すなわち、S230の処理が終了すると、CPU56aは、S270にて、制限加算値を算出する。具体的には、CPU56aは、まず、予め設定された加算回転速度ゲインINC_Speed_Gainに、電流差Current_Diffに格納されている値を乗算した乗算値を、RAM56cに設けられた加算回転速度INC_Speedに格納する。さらにCPU56aは、予め設定された加算デューティ比ゲインINC_Duty_Gainに、電流差Current_Diffに格納されている値を乗算した乗算値を、RAM56cに設けられた加算デューティ比INC_Dutyに格納する。
【0174】
そしてCPU56aは、S280にて、制限加算値に基づいて出力制限回転速度を増加させる。具体的には、CPU56aは、出力制限回転速度Limit_Speedに格納されている値と、加算回転速度INC_Speedに格納されている値とを加算した加算値を、出力制限回転速度Limit_Speedに格納する。
【0175】
さらにCPU56aは、S290にて、制限加算値に基づいて出力制限デューティ比を増加させて、出力制限処理を終了する。具体的には、CPU56aは、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納されている値と、加算デューティ比INC_Dutyに格納されている値とを加算した加算値を、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納する。
【0176】
(第3実施形態)
以下に本開示の第3実施形態を図面とともに説明する。なお第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0177】
第3実施形態のインパクトドライバ1は、工具本体2の構成と、制御回路56の構成と、出力制限処理の手順とが変更された点が第1実施形態と異なる。
図14に示すように、工具本体2は、トルクセンサ42を備える。トルクセンサ42は、モータ21の出力軸21aに加えられるトルクを検出し、検出結果を示すトルク検出信号を出力する。
【0178】
制御回路56は、CPU56aが実行するソフトウェア処理により実現される機能ブロックとして、更に、トルク演算部77を備える。トルク演算部77は、トルクセンサ42からのトルク検出信号に基づき、トルク値を算出し、算出結果をPWM生成部75へ出力する。
【0179】
次に、第3実施形態の出力制限処理の手順を説明する。
第3実施形態の出力制限処理が実行されると、CPU56aは、
図15に示すように、まずS610にて、現在のトルク値を算出する。具体的には、CPU56aは、トルクセンサ42からトルク検出信号を取得し、取得したトルク検出信号に基づいて、トルク値を算出する。
【0180】
そしてCPU56aは、S620にて、S610で算出されたトルク値が予め設定された制限トルク判定値以上であるか否かを判断する。ここで、トルク値が制限トルク判定値未満である場合には、CPU56aは、出力制限処理を終了する。
【0181】
一方、トルク値が制限トルク判定値以上である場合には、CPU56aは、S630にて、現在のトルク値と制限トルク判定値との差を算出する。具体的には、CPU56aは、S610で算出されたトルク値から制限トルク判定値を減算した減算値を、RAM56cに設けられたトルク差Torque_Diffに格納する。
【0182】
そしてCPU56aは、S640にて、出力制限回転速度を増加させる。具体的には、CPU56aは、RAM56cに設けられた出力制限回転速度Limit_Speedに格納されている値と、予め設定された加算回転速度INC_Speedとを加算した加算値を、出力制限回転速度Limit_Speedに格納する。
【0183】
さらにCPU56aは、S650にて、出力制限デューティ比を増加させて、出力制限処理を終了する。具体的には、CPU56aは、RAM56cに設けられた出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納されている値と、予め設定された加算デューティ比INC_Dutyとを加算した加算値を、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納する。
【0184】
このように構成されたインパクトドライバ1では、制御回路56は、モータ21に加わる負荷が予め設定された制限判定値以上である場合に、モータ21の出力を制限する。具体的には、制御回路56は、モータ21のトルク値が予め設定された制限トルク判定値以上である場合に、モータ21に加わる負荷が予め設定された制限判定値以上であると判断する。
【0185】
このようにインパクトドライバ1は、制限判定値以上の大きさの負荷がモータ21に加わるとモータ21の出力を制限するため、モータ21の出力に起因して制限判定値以上の大きさの負荷が継続してモータ21に加わるのを抑制することができ、これにより、インパクトドライバ1の破損を抑制することができる。
【0186】
また制御回路56は、モータ21が駆動しているときにおいてアンビル29が固定されているか否かを判断し、アンビル29が固定されている場合には、モータ21の出力を制限する。具体的には、制御回路56は、モータ21のトルク値が予め設定された制限トルク判定値以上である場合に、アンビル29が固定されていると判断する。
【0187】
このようにインパクトドライバ1は、アンビル29が固定されているとモータ21の出力を制限するため、アンビル29が固定されている状態においてモータ21の出力に起因して大きな負荷が継続してモータ21に加わるのを抑制することができ、インパクトドライバ1の破損を抑制することができる。
【0188】
また制御回路56は、アンビル29が固定されていると判断してからモータ21の駆動が停止するまで、モータ21の出力の制限を継続する。これにより、インパクトドライバ1は、少なくとも、アンビル29が固定されていると判断してからモータ21の駆動が停止するまでは、アンビル29が固定されている状態においてモータ21の出力に起因して大きな負荷が継続してモータ21に加わるのを抑制することができ、インパクトドライバ1の破損を更に抑制することができる。
【0189】
以上説明した実施形態において、制限トルク判定値は制限判定値に相当する。
(第4実施形態)
以下に本開示の第4実施形態を図面とともに説明する。なお第4実施形態では、第3実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0190】
第4実施形態のインパクトドライバ1は、出力制限処理の手順が変更された点が第3実施形態と異なる。
第4実施形態の出力制限処理は、
図16に示すように、S640,S650の処理が省略されて、S670,S680,S690の処理が追加された点が第3実施形態と異なる。
【0191】
すなわち、S630の処理が終了すると、CPU56aは、S670にて、制限加算値を算出する。具体的には、CPU56aは、まず、予め設定された加算回転速度ゲインINC_Speed_Gainに、トルク差Torque_Diffに格納されている値を乗算した乗算値を、RAM56cに設けられた加算回転速度INC_Speedに格納する。さらにCPU56aは、予め設定された加算デューティ比ゲインINC_Duty_Gainに、トルク差Torque_Diffに格納されている値を乗算した乗算値を、RAM56cに設けられた加算デューティ比INC_Dutyに格納する。
【0192】
そしてCPU56aは、S680にて、制限加算値に基づいて出力制限回転速度を増加させる。具体的には、CPU56aは、出力制限回転速度Limit_Speedに格納されている値と、加算回転速度INC_Speedに格納されている値とを加算した加算値を、出力制限回転速度Limit_Speedに格納する。
【0193】
さらにCPU56aは、S690にて、制限加算値に基づいて出力制限デューティ比を増加させて、出力制限処理を終了する。具体的には、CPU56aは、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納されている値と、加算デューティ比INC_Dutyに格納されている値とを加算した加算値を、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納する。
【0194】
(第5実施形態)
以下に本開示の第5実施形態を図面とともに説明する。なお第5実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0195】
第5実施形態のインパクトドライバ1は、出力制限処理の手順が変更された点が第1実施形態と異なる。
次に、第5実施形態の出力制限処理の手順を説明する。
【0196】
第5実施形態の出力制限処理が実行されると、CPU56aは、
図17に示すように、まずS810にて、モータ21の回転速度の単位時間当りの低下量を算出する低下量算出処理を実行する。
【0197】
そしてCPU56aは、S820にて、S810で算出された低下量が予め設定された制限低下判定値以上であるか否かを判断する。ここで、低下量が制限低下判定値未満である場合には、CPU56aは、出力制限処理を終了する。
【0198】
一方、低下量が制限低下判定値以上である場合には、CPU56aは、S830にて、現在の低下量と制限低下判定値との差を算出する。具体的には、CPU56aは、S810で算出された低下量(すなわち、後述する低下量Drop_Speedに格納されている値)から制限低下判定値を減算した減算値を、RAM56cに設けられた低下差Drop_Diffに格納する。
【0199】
そしてCPU56aは、S840にて、出力制限回転速度を増加させる。具体的には、CPU56aは、RAM56cに設けられた出力制限回転速度Limit_Speedに格納されている値と、予め設定された加算回転速度INC_Speedとを加算した加算値を、出力制限回転速度Limit_Speedに格納する。
【0200】
さらにCPU56aは、S850にて、出力制限デューティ比を増加させて、出力制限処理を終了する。具体的には、CPU56aは、RAM56cに設けられた出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納されている値と、予め設定された加算デューティ比INC_Dutyとを加算した加算値を、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納する。
【0201】
次に、S810でCPU56aが実行する低下量算出処理の手順を説明する。
なお、RAM56cには、
図18に示すように、直近で検出されたモータ21の回転速度をn個格納する回転速度バッファBFが設けられている。すなわち、回転速度バッファBFは、n個の格納領域を備える。そして、n個の格納領域には、各格納領域を識別するための格納インデックスが設定されている。具体的には、n個の格納領域にはそれぞれ、互いに異なる1からnまでの整数値が格納インデックスとして割り当てられている。
【0202】
低下量算出処理が実行されると、CPU56aは、
図19に示すように、まずS910にて、回転速度バッファBFに格納されている最大のモータ回転速度を抽出し、抽出したモータ回転速度を、RAM56cに設けられた最大回転速度MAX_Speedに格納する。
【0203】
次にCPU56aは、S920にて、最大回転速度MAX_Speedに格納に格納されている値から、現在の実回転速度を減算した減算値を、RAM56cに設けられた低下量Drop_Speedに格納する。
【0204】
そしてCPU56aは、S930にて、回転速度バッファBFにおいて、RAM56cに設けられた格納インデックスIndexの値に対応する格納領域に現在の実回転速度を格納する。なお、格納インデックスIndexは、初期値として1が設定されている。
【0205】
さらにCPU56aは、S940にて、格納インデックスIndexをインクリメント(すなわち、1加算)する。
そしてCPU56aは、S950にて、格納インデックスIndexに格納されている値がバッファ格納数nを超えているか否かを判断する。ここで、バッファ格納数nを超えていない場合には、CPU56aは、低下量算出処理を終了する。一方、バッファ格納数nを超えている場合には、CPU56aは、S960にて、格納インデックスIndexに1を格納して、低下量算出処理を終了する。
【0206】
このように構成されたインパクトドライバ1では、制御回路56は、モータ21に加わる負荷が予め設定された制限判定値以上である場合に、モータ21の出力を制限する。具体的には、制御回路56は、モータ21の回転速度の単位時間当りの低下量が予め設定された制限低下判定値以上である場合に、モータ21に加わる負荷が予め設定された制限判定値以上であると判断する。なお、バッファ格納数nが単位時間に相当する。
【0207】
このようにインパクトドライバ1は、制限判定値以上の大きさの負荷がモータ21に加わるとモータ21の出力を制限するため、モータ21の出力に起因して制限判定値以上の大きさの負荷が継続してモータ21に加わるのを抑制することができ、これにより、インパクトドライバ1の破損を抑制することができる。
【0208】
以上説明した実施形態において、制限低下判定値は制限判定値に相当する。
(第6実施形態)
以下に本開示の第6実施形態を図面とともに説明する。なお第6実施形態では、第5実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0209】
第6実施形態のインパクトドライバ1は、出力制限処理の手順が変更された点が第5実施形態と異なる。
第6実施形態の出力制限処理は、
図20に示すように、S840,S850の処理が省略されて、S870,S880,S890の処理が追加された点が第3実施形態と異なる。
【0210】
すなわち、S830の処理が終了すると、CPU56aは、S870にて、制限加算値を算出する。具体的には、CPU56aは、まず、予め設定された加算回転速度ゲインINC_Speed_Gainに、低下差Drop_Diffに格納されている値を乗算した乗算値を、RAM56cに設けられた加算回転速度INC_Speedに格納する。さらにCPU56aは、予め設定された加算デューティ比ゲインINC_Duty_Gainに、低下差Drop_Diffに格納されている値を乗算した乗算値を、RAM56cに設けられた加算デューティ比INC_Dutyに格納する。
【0211】
そしてCPU56aは、S880にて、制限加算値に基づいて出力制限回転速度を増加させる。具体的には、CPU56aは、出力制限回転速度Limit_Speedに格納されている値と、加算回転速度INC_Speedに格納されている値とを加算した加算値を、出力制限回転速度Limit_Speedに格納する。
【0212】
さらにCPU56aは、S890にて、制限加算値に基づいて出力制限デューティ比を増加させて、出力制限処理を終了する。具体的には、CPU56aは、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納されている値と、加算デューティ比INC_Dutyに格納されている値とを加算した加算値を、出力制限デューティ比Limit_Dutyに格納する。
【0213】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
例えば上記実施形態では、負荷が制限判定値以上になる毎に、順次、制限出力が小さくなるように切り替えて、モータ21の出力を制限する形態を示した。しかし、制限出力の切り替えを所定回数実行した後は、負荷が制限判定値以上になっても、制限出力の切り替えを実行せずに、制限出力の切り替えを所定回数実行した後における制限出力を維持するようにしてもよい。また、制限出力の切り替えを所定回数実行した後は、モータ21を停止させるようにしてもよい。
【0214】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0215】
上述したインパクトドライバ1の他、制御回路56としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、工具制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0216】
1…インパクトドライバ、21…モータ、23…打撃機構、28…ハンマ、29…アンビル、56…制御回路