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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04313 20160101AFI20231116BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20231116BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20231116BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20231116BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231116BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20231116BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20231116BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231116BHJP
【FI】
H01M8/04313
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04955
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J3/38 170
H02J7/00 303E
H02J7/34 A
H02J7/35 K
H01M8/10 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019178987
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057181
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-074759(JP,A)
【文献】特開2018-121405(JP,A)
【文献】特開2015-162966(JP,A)
【文献】特開2017-220354(JP,A)
【文献】特開2014-032820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を用いて発電可能であるとともに、発電時に発生する熱を蓄える燃料電池と、
前記燃料電池の動作を制御する制御部と、
自然エネルギーを利用して発電可能な発電部と、
電力を充放電可能な蓄電池と、
を具備し、
前記燃料電池は、
電力需要に応じて運転する電主運転と、熱需要に応じて運転する熱主運転とを実行可能であり、
前記制御部は、
前記燃料電池が発電時に発生する熱を蓄えることなく発電を行う場合の第一発電コストが、系統電源からの買電価格以下である場合、前記燃料電池に前記電主運転を実行させることが可能であり、
前記第一発電コストが前記買電価格より高く、かつ、前記燃料電池が発電時に発生する熱を蓄えながら発電を行う場合の第二発電コストが前記買電価格よりも低い場合、前記燃料電池に前記熱主運転を実行させることが可能であり、
前記蓄電池は、
前記系統電源側へ電力が流れていると判断した場合、前記発電部からの電力を充電する第一モードと、
所定の時間帯に前記系統電源からの電力を充電するとともに、前記発電部が発電する時間帯に必要に応じて放電する第二モードと、
蓄電残量が所定値以下まで減少した場合に充電を行う第三モードと、を実行可能であり、
前記制御部は、
前記第一発電コストが前記買電価格以下であり、かつ、前記買電価格が前記発電部で発電された電力の売電価格よりも高い場合、前記蓄電池を前記第一モードに設定する、
電力供給システム。
【請求項2】
燃料を用いて発電可能であるとともに、発電時に発生する熱を蓄える燃料電池と、
前記燃料電池の動作を制御する制御部と、
電力を充放電可能な蓄電池と、
を具備し、
前記燃料電池は、
電力需要に応じて運転する電主運転と、熱需要に応じて運転する熱主運転とを実行可能であり、
前記制御部は、
前記燃料電池が発電時に発生する熱を蓄えることなく発電を行う場合の第一発電コストが、系統電源からの買電価格以下である場合、前記燃料電池に前記電主運転を実行させることが可能であり、
前記第一発電コストが前記買電価格より高く、かつ、前記燃料電池が発電時に発生する熱を蓄えながら発電を行う場合の第二発電コストが前記買電価格よりも低い場合、前記燃料電池に前記熱主運転を実行させることが可能であり、
電力負荷の電力需要及び熱負荷の熱需要を予測し、
前記熱需要に応じた必要熱量の生成に伴う前記燃料電池の発電量である第一の発電量と、前記電力需要に応じた前記燃料電池の必要発電量である第二の発電量とを算出し、
前記第一の発電量と前記第二の発電量とを比較し、その比較結果に基づいて前記燃料電池及び前記蓄電池の動作を制御する、
力供給システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第一発電コスト及び前記第二発電コストがともに前記買電価格より高い場合、前記燃料電池を発電不可な状態とする、
請求項1又は請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
自然エネルギーを利用して発電可能な発電部を具備し、
前記制御部は、
前記第一発電コストが前記買電価格より高く、かつ、前記第二発電コストが前記買電価格よりも低く、さらに前記買電価格が前記発電部で発電された電力の売電価格以下である場合、前記燃料電池に前記熱主運転を実行させる、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第一発電コストが前記買電価格以下であり、かつ、前記買電価格が前記発電部で発電された電力の売電価格以下である場合、前記蓄電池を前記第二モード又は前記第三モードに設定する、
請求項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第一の発電量が前記第二の発電量よりも多い場合、前記第一の発電量と前記第二の発電量との差分だけ発電するように前記燃料電池を運転させる第一制御を実行可能である、
請求項に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第一制御によって前記燃料電池で発電された電力を前記蓄電池に充電させる第二制御を実行可能である、
請求項6に記載の電力供給システム。
【請求項8】
自然エネルギーを利用して発電可能な発電部を具備し、
前記制御部は、
前記燃料電池の発電コストが前記発電部で発電された電力の売電価格よりも高い場合、前記発電部で発電される発電時間帯において前記燃料電池を発電不可な状態とする第三制御を実行可能である、
請求項2、請求項6又は請求項7のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第二の発電量が前記第一の発電量よりも多い場合、前記発電時間帯において、前記第一の発電量に対する前記第二の発電量の超過分だけ前記燃料電池を発電不可な状態とする第四制御を実行可能である、
請求項8に記載の電力供給システム。
【請求項10】
前記制御部は、
前記発電部で発電された電力の売電価格が、前記第二発電コストよりも高く、前記第一発電コストよりも低い場合に前記第四制御を実行する、
請求項9に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を有する電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池を有する電力供給システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、太陽光を利用して発電する太陽電池と、水素等の燃料を用いて発電可能であるとともに発電時に発生する排熱を用いて湯を沸かすことができる燃料電池と、電力を充放電可能な蓄電池を具備する電力供給システムが記載されている。当該電力供給システムにおいては、これら燃料電池等からの電力が電力負荷に供給される。
【0004】
このような燃料電池を有する電力供給システムにおいて、蓄電池の充放電を制御することにより、燃料電池の発電量を間接的に制御する電力供給システムが知られているが、燃料電池を直接的に制御することによって、光熱費をより低減することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-48992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、光熱費の低減を図ることができる電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、燃料を用いて発電可能であるとともに、発電時に発生する熱を蓄える燃料電池と、前記燃料電池の動作を制御する制御部と、自然エネルギーを利用して発電可能な発電部と、電力を充放電可能な蓄電池と、を具備し、前記燃料電池は、電力需要に応じて運転する電主運転と、熱需要に応じて運転する熱主運転とを実行可能であり、前記制御部は、前記燃料電池が発電時に発生する熱を蓄えることなく発電を行う場合の第一発電コストが、系統電源からの買電価格以下である場合、前記燃料電池に前記電主運転を実行させることが可能であり、前記第一発電コストが前記買電価格より高く、かつ、前記燃料電池が発電時に発生する熱を蓄えながら発電を行う場合の第二発電コストが前記買電価格よりも低い場合、前記燃料電池に前記熱主運転を実行させることが可能であり、前記蓄電池は、前記系統電源側へ電力が流れていると判断した場合、前記発電部からの電力を充電する第一モードと、所定の時間帯に前記系統電源からの電力を充電するとともに、前記発電部が発電する時間帯に必要に応じて放電する第二モードと、蓄電残量が所定値以下まで減少した場合に充電を行う第三モードと、を実行可能であり、前記制御部は、前記第一発電コストが前記買電価格以下であり、かつ、前記買電価格が前記発電部で発電された電力の売電価格よりも高い場合、前記蓄電池を前記第一モードに設定するものである。
【0009】
請求項2においては、燃料を用いて発電可能であるとともに、発電時に発生する熱を蓄える燃料電池と、前記燃料電池の動作を制御する制御部と、電力を充放電可能な蓄電池と、を具備し、前記燃料電池は、電力需要に応じて運転する電主運転と、熱需要に応じて運転する熱主運転とを実行可能であり、前記制御部は、前記燃料電池が発電時に発生する熱を蓄えることなく発電を行う場合の第一発電コストが、系統電源からの買電価格以下である場合、前記燃料電池に前記電主運転を実行させることが可能であり、前記第一発電コストが前記買電価格より高く、かつ、前記燃料電池が発電時に発生する熱を蓄えながら発電を行う場合の第二発電コストが前記買電価格よりも低い場合、前記燃料電池に前記熱主運転を実行させることが可能であり、電力負荷の電力需要及び熱負荷の熱需要を予測し、前記熱需要に応じた必要熱量の生成に伴う前記燃料電池の発電量である第一の発電量と、前記電力需要に応じた前記燃料電池の必要発電量である第二の発電量とを算出し、前記第一の発電量と前記第二の発電量とを比較し、その比較結果に基づいて前記燃料電池及び前記蓄電池の動作を制御するものである。
【0010】
請求項3においては、前記制御部は、前記第一発電コスト及び前記第二発電コストがともに前記買電価格より高い場合、前記燃料電池を発電不可な状態とするものである。
【0011】
請求項4においては、自然エネルギーを利用して発電可能な発電部を具備し、前記制御部は、前記第一発電コストが前記買電価格より高く、かつ、前記第二発電コストが前記買電価格よりも低く、さらに前記買電価格が前記発電部で発電された電力の売電価格以下である場合、前記燃料電池に前記熱主運転を実行させるものである。
【0012】
請求項5においては、前記制御部は、前記第一発電コストが前記買電価格以下であり、かつ、前記買電価格が前記発電部で発電された電力の売電価格以下である場合、前記蓄電池を前記第二モード又は前記第三モードに設定するものである。
【0013】
請求項6においては、前記制御部は、前記第一の発電量が前記第二の発電量よりも多い場合、前記第一の発電量と前記第二の発電量との差分だけ発電するように前記燃料電池を運転させる第一制御を実行可能であるものである。
【0014】
請求項7においては、前記制御部は、前記第一制御によって前記燃料電池で発電された電力を前記蓄電池に充電させる第二制御を実行可能であるものである。
【0015】
請求項8においては、自然エネルギーを利用して発電可能な発電部を具備し、前記制御部は、前記燃料電池の発電コストが前記発電部で発電された電力の売電価格よりも高い場合、前記発電部で発電される発電時間帯において前記燃料電池を発電不可な状態とする第三制御を実行可能であるものである。
【0016】
請求項9においては、前記制御部は、前記第二の発電量が前記第一の発電量よりも多い場合、前記発電時間帯において、前記第一の発電量に対する前記第二の発電量の超過分だけ前記燃料電池を発電不可な状態とする第四制御を実行可能であるものである。
【0017】
請求項10においては、前記制御部は、前記発電部で発電された電力の売電価格が、前記第二発電コストよりも高く、前記第一発電コストよりも低い場合に前記第四制御を実行するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
請求項1においては、光熱費の低減を図ることができる。
【0021】
請求項2においては、光熱費の低減を図ることができる。また電力需要及び熱需要に応じて燃料電池を適切に制御することができる。
【0022】
請求項3においては、光熱費の低減を図ることができる。
【0023】
請求項4においては、光熱費の低減を図ることができる。
【0024】
請求項5においては、光熱費の低減を図ることができる。
【0025】
請求項6においては、熱需要に対する熱の不足分を賄うことができる。
【0026】
請求項7においては、燃料電池で発電された電力の有効活用を図ることができる。また、燃料電池の発電コストが系統電源からの買電単価よりも低い場合、蓄電池に充電した電力を電力需要に充てることにより、光熱費の低減を図ることができる。
【0027】
請求項8においては、発電部で発電された電力の自家消費の拡大を図ることができ、ひいては、光熱費の低減を図ることができる。
【0028】
請求項9においては、燃料電池が発電のみを行う(発電時に発生する熱を蓄えることなく運転する)のを防止することができる。また、燃料電池の停止により減少した電力は発電部で発電される電力で補うことができる。
【0029】
請求項10においては、光熱費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第一実施形態に係る電力供給システムの構成を示したブロック図。
図2】燃料電池及び蓄電池の運転制御における処理を示したフローチャート。
図3】燃料電池及び蓄電池の運転制御における処理を示したフローチャート。
図4】燃料電池を電主運転させたときの燃料電池の発電量等の一例を示した図。
図5】燃料電池を熱主運転させたときの燃料電池の発電量等の一例を示した図。
図6】燃料電池をPV発電時間帯に全停止させたときの燃料電池の発電量等の一例を示した図。
図7】燃料電池をPV発電時間帯に停止させたときの燃料電池の発電量等の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。なお、本明細書においては、「上流側」及び「下流側」とは、系統電源Kからの電力供給方向を基準とするものとする。
【0033】
図1に示す電力供給システム1は、系統電源Kからの電力や、発電された電力を電力負荷Hへと供給するものである。電力供給システム1は、住宅に設けられ、当該住宅の電力負荷H(例えば、住宅の機器等)へと電力を供給する。電力供給システム1は、主として蓄電システム10、分電盤20、燃料電池30、第一センサ40、第二センサ50及びEMS60を具備する。
【0034】
蓄電システム10は、電力を蓄電したり、電力負荷Hへと供給するものである。蓄電システム10は、系統電源Kと電力負荷Hとの間に設けられる。蓄電システム10は、太陽光発電部11、蓄電池12及びハイブリッドパワコン13を具備する。
【0035】
太陽光発電部11は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部11は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部11は、例えば、住宅の屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。
【0036】
蓄電池12は、電力を充電可能に構成されるものである。蓄電池12は、例えば、リチウムイオン電池により構成される。蓄電池12は、後述するハイブリッドパワコン13を介して太陽光発電部11と接続される。
【0037】
ハイブリッドパワコン13は、電力を適宜変換するもの(ハイブリッドパワーコンディショナ)である。ハイブリッドパワコン13は、太陽光発電部11で発電された電力及び蓄電池12から放電された電力を配電線L(電力負荷H)に出力可能であると共に、配電線Lを流れる電力(系統電源Kからの電力及び後述する燃料電池30で発電された電力)を蓄電池12に出力可能に構成される。また、ハイブリッドパワコン13は、太陽光発電部11及び蓄電池12の性能や運転状態に関する情報を取得可能に構成される。ハイブリッドパワコン13は、系統電源Kと電力負荷H(分電盤20)とを繋ぐ配電線Lの中途部(接続点P)に対して、電路A1を介して接続される。蓄電システム10のハイブリッドパワコン13は、後述する第一センサ40の検出結果等に基づいて、放電(出力)する電力を調整する負荷追従運転を行うことができる。
【0038】
分電盤20は、電力負荷Hへと電力を分配するものである。分電盤20は、蓄電システム10(接続点P)よりも下流側に設けられ、電力負荷Hと接続される。なお、図1においては1つの電力負荷Hしか示していないが、分電盤20は複数の負荷に接続され、各負荷に電力を分配する。分電盤20は、系統電源Kからの電力、蓄電池12から放電された電力及び後述する燃料電池30からの電力を電力負荷Hへと供給する。
【0039】
燃料電池30は、水素等のガス燃料を用いて発電する装置である。燃料電池30は、発電ユニット31及び貯湯タンク32を具備する。
【0040】
発電ユニット31は、燃料電池30の発電部である。発電ユニット31は、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)や制御部等により構成される。発電ユニット31は、後述する第二センサ50によって計測された電力量(住宅の電力負荷Hの消費電力の合計)に応じて負荷追従運転を行う。
【0041】
貯湯タンク32は、発電ユニット31の発電時に発生する熱(排熱)を、温水として蓄熱するものである。貯湯タンク32は、発電ユニット31の発電時に発生する熱(排熱)によって加熱された上水(温水)を貯湯する。
【0042】
このように構成された燃料電池30は、貯湯タンク32の貯湯量が最大容量に達すると(貯湯タンク32がこれ以上蓄熱ができない状態となると)、発電ユニット31による発電を停止させる場合がある。また、燃料電池30は、給湯需要の発生時間帯までに貯湯タンク32の貯湯量が最大容量になるように、発電を開始させる。
【0043】
燃料電池30は、定格出力(最大発電電力)までの電力を発電可能である。また、燃料電池30は、最低出力(最低発電電力)以上の電力を発電可能である。本実施形態においては、燃料電池30の定格出力を700Wとし、最低出力を50Wとする。
【0044】
第一センサ40は、配電線Lの中途部に設けられる。より詳細には、第一センサ40は、蓄電システム10(接続点P)よりも上流側(接続点Pの直ぐ上流側)に設けられる。第一センサ40は、当該第一センサ40が設けられた箇所を流れる電力(上流側へと流れる電力及び下流側へと流れる電力)の電圧(供給電圧)及び電流(供給電流)を検出する。
【0045】
第二センサ50は、配電線Lの中途部に設けられる。より詳細には、第二センサ50は、蓄電システム10(接続点P)と分電盤20との間に設けられる。第二センサ50は、当該第二センサ50が設けられた箇所を流れる電力(上流側へと流れる電力及び下流側へと流れる電力)の電圧(供給電圧)及び電流(供給電流)を検出する。
【0046】
EMS60は、電力供給システム1の動作を管理するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)である。EMS60は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部や、タッチパネル等の入出力部等を具備する。EMS60の記憶部には、電力供給システム1の動作を制御する際に用いられる種々の情報やプログラム等が予め記憶される。EMS60の演算処理部は、前記プログラムを実行して前記種々の情報を用いた所定の演算処理等を行うことで、電力供給システム1を動作させることができる。
【0047】
EMS60は、ハイブリッドパワコン13と電気的に接続される。EMS60は、所定の信号をハイブリッドパワコン13に送信し、蓄電池12の運転(例えば、蓄電池12の充放電等)を制御することができる。また、EMS60は、ハイブリッドパワコン13から所定の信号が入力可能に構成され、各種の情報(蓄電池12の蓄電残量等)を取得することができる。
【0048】
また、EMS60は、燃料電池30に電気的に接続され、当該燃料電池30の動作を制御することができる。
【0049】
上述の如く構成された電力供給システム1において、系統電源Kから購入された電力や、太陽光発電部11及び燃料電池30で発電された電力を、蓄電池12に充電することができる。また、当該電力供給システム1において、系統電源Kから購入された電力、太陽光発電部11及び燃料電池30で発電された電力、及び蓄電池12に充電された電力を、住宅の電力負荷Hへと供給することができる。また、当該電力供給システム1において、太陽光発電部11で発電された電力の余剰分(余剰電力)は、系統電源Kへと逆潮流させて売却することもできる。
【0050】
上述の如く構成された電力供給システム1において、まず、第二センサ50の検出結果に応じて、燃料電池30からの電力が電力負荷Hに供給される。それでも電力需要に対して電力が不足する場合、太陽光発電部11からの電力が電力負荷Hに供給される。それでも電力需要に対して電力が不足する場合、第一センサ40の検出結果に応じて、蓄電池12からの電力が電力負荷Hに供給される。それでも電力需要に対して電力が不足する場合、系統電源Kからの電力が電力負荷Hに供給される。
【0051】
以下、燃料電池30の運転の態様(運転モード)について説明する。
【0052】
燃料電池30の運転モードには、主として電主運転及び熱主運転が含まれる。
【0053】
電主運転は、燃料電池30が電力負荷Hの電力需要に応じて運転を行うモードである。燃料電池30は、当該運転により発電された電力を電力負荷Hに供給する。また、燃料電池30は、当該運転により生成された熱(湯)を貯湯タンク32に蓄え、必要に応じて給湯負荷(浴室など)に供給する。
【0054】
熱主運転は、燃料電池30が給湯負荷の給湯需要に応じて運転を行うモードである。燃料電池30は、当該運転により発電された熱(湯)を貯湯タンク32に蓄え、給湯負荷(浴室など)に供給する。また、燃料電池30は、当該運転により発電された電力を、必要に応じて電力負荷Hに供給する。
【0055】
以下、図2及び図3を用いて、運転モード決定制御について説明する。運転モード決定制御は、燃料電池30(及び蓄電池12)の運転モードを決定するものである。
【0056】
なお、運転モード決定制御は、定期的に行われる。本実施形態においては、当該運転モード決定制御は毎日午前0時に行われ、午前0時から24時間の稼働スケジュールが決定されるものとする。
【0057】
図2のステップS101において、EMS60は、「FC発電コスト1>買電単価」であるか否かを判定する。ここで、「FC発電コスト1」とは、燃料電池30の発電に要するコストであって、燃料電池30の排熱利用(発電ユニット31の発電時に発生する熱(排熱)によって加熱された上水(温水)を貯湯タンク32に貯湯すること)を考慮しないものである。FC発電コスト1は、以下の式(1)によって算出される。
【0058】
FC発電コスト1[円/kWh]=ガス単価[円/m]÷発電効率[%]÷発熱量[MJ/m]×3.6[MJ/kWh]・・・式(1)
なお、「3.6[MJ/kWh]」とは、単位を変換するためのものである。
FC発電コスト1は、例えば20[円/kWh]と算出される。
【0059】
EMS60は、「FC発電コスト1>買電単価」であると判定した場合(ステップS101で「YES」)、ステップS102に移行する。一方、EMS60は、「FC発電コスト1>買電単価」でないと判定した場合(ステップS101で「NO」)、ステップS104に移行する。
【0060】
なお、ステップS101で「YES」の場合とは、燃料電池30が排熱利用しない場合は、系統電源Kから電力を購入した方が燃料電池30を運転するよりも光熱費メリットがある(光熱費の低減を図ることができる)ことを示している。一方、ステップS101で「NO」の場合とは、燃料電池30が排熱利用しない場合であっても、燃料電池30を運転する方が系統電源Kから電力を購入するよりも光熱費メリットがあることを示している。
【0061】
ステップS102において、EMS60は、「買電単価>FC発電コスト2」であるか否かを判定する。ここで、「FC発電コスト2」とは、燃料電池30の発電に要するコストであって、燃料電池30の排熱利用を考慮したものである。FC発電コスト2は、以下の式(2)によって算出される。
【0062】
FC発電コスト2[円/kWh]=FC発電コスト1[円/kWh]-ガス単価[円/m]÷排熱効率[%]÷発電効率[%]÷発熱量[MJ/m]×3.6[MJ/kWh]・・・式(2)
つまり、FC発電コスト2は、燃料電池30の発電のみに要するコスト(FC発電コスト1)から、燃料電池30によって製造される湯が生み出すコストメリットを差し引いたものである。
FC発電コスト2は、例えば10[円/kWh]と算出される。
【0063】
EMS60は、「買電単価>FC発電コスト2」であると判定した場合(ステップS102で「YES」)、ステップS103に移行する。一方、EMS60は、「買電単価>FC発電コスト2」でないと判定した場合(ステップS102で「NO」)、ステップS105に移行する。
【0064】
なお、ステップS102で「YES」の場合とは、燃料電池30が排熱利用する場合は、燃料電池30を運転する方が系統電源Kから電力を購入するよりも光熱費メリットがあることを示している。一方、ステップS102で「NO」の場合とは、燃料電池30が排熱利用する場合であっても、系統電源Kから電力を購入した方が燃料電池30を運転するよりも光熱費メリットがあることを示している。
【0065】
ステップS103において、EMS60は、「買電単価>PV売電単価」であるか否かを判定する。ここで、「PV売電単価」とは、太陽光発電部11で発電された電力を系統電源Kへ逆潮流させて売却したときの売電単価を示すものである。
【0066】
EMS60は、「買電単価>PV売電単価」であると判定した場合(ステップS103で「YES」)、ステップS110に移行する。一方、EMS60は、「買電単価>PV売電単価」でないと判定した場合(ステップS103で「NO」)、ステップS107に移行する。
【0067】
なお、ステップS103で「YES」の場合とは、太陽光発電部11で発電された電力を自家消費(電力負荷Hで消費)した方が、当該電力を系統電源Kへと逆潮流させて売却し系統電源Kから電力を購入するよりも光熱費メリットがあることを示している。一方、ステップS103で「NO」の場合とは、太陽光発電部11で発電された電力を系統電源Kへと逆潮流させて売却し系統電源Kから電力を購入する方が、太陽光発電部11で発電された電力を自家消費(電力負荷Hで消費)するよりも光熱費メリットがあることを示している。
【0068】
すなわち、ステップS110に移行する場合とは、燃料電池30が排熱利用する場合に燃料電池30を運転する方が系統電源Kから電力を購入するよりも光熱費メリットがあり、かつ、太陽光発電部11で発電された電力を自家消費(電力負荷Hで消費)した方が系統電源Kへと逆潮流させて売却させるよりも光熱費メリットがある場合である。
【0069】
ステップS104において、EMS60は、燃料電池30を電主運転させる。すると、燃料電池30は、電力負荷Hの電力需要に応じて運転を行う。これにより、買電単価よりも発電コストが低い燃料電池30で発電された電力を優先して、電力負荷Hの消費に充てることができる。よって、光熱費の低減を図ることができる。
【0070】
図4は、燃料電池30が電主運転される場合の各種電力量(発電量)の一例である。図4に示すように、燃料電池30が電主運転される場合、燃料電池30は電力需要に応じて運転し、当該運転により発電された電力(FC発電量)が電力需要に充てられる。燃料電池30が定格運転(定格出力による運転)を行っても電力需要に対して電力が不足する場合、太陽光発電部11で発電された電力(PV発電量)が電力需要に充てられる。それでも電力需要に対して電力が不足する場合、蓄電池12から放電された電力(蓄電池放電量)が電力需要に充てられる。
【0071】
ステップS105において、EMS60は、燃料電池30を停止させる。これにより、買電単価よりも発電コストが高い燃料電池30の電力を発電しないようにすることができる。
【0072】
EMS60は、ステップS104又はステップS105の処理を行った後、ステップS106に移行する。
【0073】
ステップS106において、EMS60は、「買電単価>PV売電単価」であるか否かを判定する。
【0074】
EMS60は、「買電単価>PV売電単価」であると判定した場合(ステップS106で「YES」)、ステップS108に移行する。一方、EMS60は、「買電単価>PV売電単価」でないと判定した場合(ステップS106で「NO」)、ステップS109に移行する。
【0075】
なお、ステップS106で「YES」の場合とは、太陽光発電部11で発電された電力を自家消費(電力負荷Hで消費)した方が、当該電力を系統電源Kへと逆潮流させて売却し系統電源Kから電力を購入するよりも光熱費メリットがあることを示している。一方、ステップS106で「NO」の場合とは、太陽光発電部11で発電された電力を系統電源Kへと逆潮流させて売却し系統電源Kから電力を購入する方が、太陽光発電部11で発電された電力を自家消費(電力負荷Hで消費)するよりも光熱費メリットがあることを示している。
【0076】
一方、ステップS107において、EMS60は、燃料電池30を熱主運転させる。これにより、燃料電池30は、給湯負荷の給湯需要に応じて運転を行う。これにより、給湯負荷を賄うことができる。
【0077】
図5は、燃料電池30が熱主運転される場合の各種電力量(発電量)の一例である。図5に示すように、燃料電池30が熱主運転される場合、燃料電池30は給湯需要に応じて運転し、当該運転により発電された電力(FC発電量)が電力需要に充てられる。それでも電力需要に対して電力が不足する場合、太陽光発電部11で発電された電力(PV発電量)が電力需要に充てられる。それでも電力需要に対して電力が不足する場合、蓄電池12から放電された電力(蓄電池放電量)が電力需要に充てられる。
【0078】
図4に示す電主運転においては、午前5時から8時頃において、電力需要に応じて燃料電池30が運転し、当該運転によって発電された電力が電力需要に充てられる。そして、不足分が蓄電池12からの電力によって賄われる。一方、図5に示す熱主運転においては、給湯需要の発生時間帯までに貯湯タンク32の貯湯量が最大容量となるように燃料電池30の運転の開始時刻が調整されるのであるが、例えば給湯需要の発生時間帯が夕方である場合、午前5時から8時頃においては未だ燃料電池30の運転を開始する必要はない。このため、午前5時から8時頃において燃料電池30による発電は行われず、太陽光発電部11で発電された電力及び蓄電池12からの電力によって電力需要が賄われる。
【0079】
EMS60は、ステップS106又はステップS107の処理を行った後、ステップS108に移行する。
【0080】
ステップS108において、EMS60は、蓄電池12の運転モードを第一モードに設定する。第一モードは、太陽光発電部11で発電した電力の電力負荷Hでの消費(電力負荷Hで消費することで省エネ効果を得ること)を目的としたモードである。第一モードが設定された場合、ハイブリッドパワコン13は、第一センサ40等の検出結果に基づいて、上流側へ電力が流れているか(太陽光発電部11で発電した電力を売電しているか)どうかを確認する。ハイブリッドパワコン13は、上流側へ電力が流れていると判断した場合、蓄電池12に太陽光発電部11からの電力を充電する。また、ハイブリッドパワコン13は、太陽光発電部11が発電していない深夜の時間帯に、必要に応じて蓄電池12を放電する。これにより、太陽光発電部11からの電力によって充電した電力を住宅内で消費する。
【0081】
一方、ステップS109において、EMS60は、蓄電池12を第二モード又は第三モードに設定する。第二モードは、太陽光発電部11で発電した電力の売却(系統電源Kへと逆潮流させて売却することで利益を得ること)を目的としたモードである。第二モードが設定された場合、ハイブリッドパワコン13は、予め設定された時間帯(例えば、電力料金が安い深夜の時間帯)に系統電源Kからの電力によって蓄電池12を充電する。第二モードにおいて、ハイブリッドパワコン13は、太陽光発電部11が発電する昼間の時間帯に、必要に応じて蓄電池12を放電する。これにより、太陽光発電部11の余剰電力量を増やし、より多くの電力を売電する。また、第三モードは、蓄電池12の性能維持等を目的としたモードである。第三モードが設定された場合、ハイブリッドパワコン13は、蓄電池12の蓄電残量が所定値以下まで減少した場合、蓄電池12に充電を行う。
【0082】
EMS60は、ステップS108又はステップS109の処理を行った後、運転モード決定制御を終了する。
【0083】
ステップS110において、EMS60は、電力需要、太陽光発電量及び給湯需要の予測を行う。この処理において、EMS60は、所定の時間帯ごとの電力需要、太陽光発電量及び給湯需要を予測する。本実施形態においては、EMS60は、各時刻(1時間ごと)の電力需要等を予測するものとする。
【0084】
ここで、電力需要とは、電力負荷Hで消費される電力量[Wh]である。また、太陽光発電量とは、太陽光発電部11で発電される電力量[Wh]である。また、給湯需要とは、住宅の給湯負荷(例えば、浴室など)で消費されるエネルギー[Wh]である。
【0085】
なお、電力需要等の予測は、種々の手法により行うことが可能である。例えば、EMS60により住宅の過去の電力需要等を学習(機械学習)し、当該学習結果から予測する方法や、一般的な住宅の電力需要等に関する統計情報に基づいて予測する方法が考えられる。
【0086】
EMS60は、ステップS110の処理を行った後、ステップS111に移行する。
【0087】
ステップS111において、EMS60は、「給湯需要>蓄熱可能量」であるか否かを判定する。ここで、「蓄熱可能量」とは、燃料電池30が貯湯タンク32に蓄えることが可能な最大熱量[Wh]である。蓄熱可能量は、以下の式(3)によって算出される。
【0088】
蓄熱可能量[kWh]=タンク容量[L]×比熱[kJ/L/K]÷3600[kJ/kWh]×(排熱温度[℃]-水温[℃])・・・式(3)
なお、タンク容量[L]は、燃料電池30の貯湯タンク32の容量である。
蓄熱可能量は、例えば6.44[kWh]と算出される。
【0089】
EMS60は、「給湯需要>蓄熱可能量」であると判定した場合(ステップS111で「YES」)、ステップS112に移行する。一方、EMS60は、「給湯需要>蓄熱可能量」でないと判定した場合(ステップS111で「NO」)、ステップS113に移行する。
【0090】
ステップS112において、EMS60は、燃料電池30によって生成することが必要な1日単位の熱量(以下、「必要熱量」という)を蓄熱可能量とする。
【0091】
一方、ステップS113において、EMS60は、必要熱量を給湯需要とする。
【0092】
EMS60は、ステップS112又はステップS113の処理を行った後、ステップS114に移行する。
【0093】
図3に示すステップS114において、EMS60は、必要発電量を算出する。ここで、「必要発電量」とは、燃料電池30が必要熱量(ステップS112及びステップS113参照)を生成するのに必要な発電量(必要熱量を生成するのに伴って生成される発電量)[Wh]である。必要発電量は、以下の式(4)によって算出される。
【0094】
必要発電量[kWh]=必要熱量[kWh]÷排熱効率[%]×発電効率[%]
なお上述の如く、必要熱量[kWh]は、ステップS112又はステップS113で算出されたものである。
必要発電量は、例えば5.15[kWh]と算出される。
【0095】
EMS60は、ステップS114の処理を行った後、ステップS115に移行する。
【0096】
ステップS115において、EMS60は、発電予定量を算出する。ここで、「発電予定量」とは、電力需要に応じた燃料電池30の発電量[Wh]である。発電予定量は、各時刻の電力需要を合計することによって算出される。但し、当該発電予定量には、各時刻の電力需要が燃料電池30の最低出力(50W)未満となる時間帯の電力需要や、各時刻の電力需要のうち燃料電池30の定格出力(700W)を超えた分は含まれない。
【0097】
EMS60は、ステップS115の処理を行った後、ステップS116に移行する。
【0098】
ステップS116において、EMS60は、「FC発電コスト2>PV売電単価」であるか否かを判定する。
【0099】
EMS60は、「FC発電コスト2>PV売電単価」であると判定した場合(ステップS116で「YES」)、ステップS117に移行する。一方、EMS60は、「FC発電コスト2>PV売電単価」でないと判定した場合(ステップS116で「NO」)、ステップS121に移行する。
【0100】
なお、ステップS116で「YES」の場合とは、太陽光発電部11で発電された電力を自家消費(電力負荷Hで消費)した方が燃料電池30を排熱利用のうえ運転するよりも光熱費メリットがあることを示している。一方、ステップS116で「NO」の場合とは、燃料電池30を排熱利用のうえ運転した方が太陽光発電部11で発電された電力を自家消費(電力負荷Hで消費)するよりも光熱費メリットがあることを示している。
【0101】
ステップS117において、EMS60は、PV発電時間帯(太陽光発電部11が発電すると予測される時間帯)に燃料電池30を停止させる。この処理において、EMS60は、PV発電時間帯の全体に亘って、燃料電池30が発電不可となるように当該燃料電池30を停止させる。そして、EMS60は、ステップS115で算出した発電予定量から、燃料電池30の停止により減少した発電量を減算する。
【0102】
このようにPV発電時間帯に燃料電池30を停止させることにより、PV発電時間帯において、系統電源Kへと逆潮流させて売却していた電力を、電力負荷Hで消費される電力に回すことができる。すなわち、太陽光発電部11で発電された電力の自家消費の拡大を図ることができる。このステップS117の処理が行われるのは、PV売電単価がFC発電コスト2よりも安い場合(ステップS116でYES)であるので、燃料電池30で発電された電力に代えて、太陽光発電部11で発電された電力を電力負荷Hで消費させることで、光熱費の低減を図ることができる。
【0103】
EMS60は、ステップS117の処理を行った後、ステップS118に移行する。
【0104】
ステップS118において、EMS60は、「必要発電量>発電予定量」であるか否かを判定する。この処理において、EMS60は、ステップS114で算出した必要発電量が、ステップS115で算出した発電予定量より多いか否かを判定する。
【0105】
EMS60は、「必要発電量>発電予定量」であると判定した場合(ステップS118で「YES」)、ステップS119に移行する。一方、EMS60は、「必要発電量>発電予定量」でないと判定した場合(ステップS118で「NO」)、ステップS120に移行する。
【0106】
なお、ステップS118で「YES」の場合とは、電力需要に合わせて燃料電池30の運転を行った場合、当該運転によって生成される熱量で給湯需要又は蓄熱可能量を賄えないことを示している。一方、ステップS118で「NO」の場合とは、電力需要に合わせて燃料電池30の運転を行った場合、当該運転によって生成される熱量で給湯需要又は蓄熱可能量を賄えることを示している。
【0107】
ステップS119において、EMS60は、PV発電時間帯以外の時間帯に熱の不足分だけ燃料電池30を運転させる。この処理において、EMS60は、電力需要に合わせて燃料電池30の運転を行った場合に、給湯需要に対して不足する熱量を算出する。そして、EMS60は、PV発電時間帯以外の時間帯、すなわち太陽光発電部11が発電しないと予測される時間帯(例えば、夜間)、かつ、電力需要が燃料電池30の定格出力(700W)未満の時間帯において、当該不足する熱量を生成可能な時間だけ、燃料電池30を定格運転(定格出力によって運転)させる。これにより、給湯需要を賄うことができる。
【0108】
このように熱の不足分を賄うために燃料電池30をさらに運転させると、燃料電池30で発電される電力が電力需要に対して余剰することとなる。EMS60は、余剰する当該電力(余剰電力)を蓄電池12に充電させる。
【0109】
排熱利用を考慮した当該余剰電力の発電コスト(FC発電コスト2)は系統電源Kからの買電単価よりも安いため(ステップS102でYES)、当該余剰電力を蓄電池12に充電することにより、光熱費メリットを得ることができる。
【0110】
また仮に、熱の不足分以上に燃料電池30をさらに運転させて余剰した電力を蓄電池12に充電したとしても、排熱利用を考慮しない燃料電池30の発電コスト(FC発電コスト1)は系統電源Kからの買電単価よりも高いため(ステップS101でYES)、光熱費メリットは得られない。したがって、ステップS119では、熱の不足分だけ燃料電池30を運転させる。
【0111】
このように、ステップS119の処理を行うことにより、給湯需要を賄いつつ、光熱費の低減を図ることができる。
【0112】
図6は、ステップS117の処理によりPV発電時間帯全体に亘って燃料電池30を停止させたうえで、ステップS119の処理を行った場合の各種電力量(発電量)の一例である。図6に示すように、PV発電時間帯全体に亘って燃料電池30を停止させると、当該PV発電時間帯において、太陽光発電部11で発電された電力が電力需要に充てられる。このように、太陽光発電部11で発電された電力の自家消費量が増加する。また、夜間(22時から23時頃)に熱の不足分だけ燃料電池30を運転させることで、給湯需要を賄うとともに、当該運転に伴う発電電力が蓄電池12に充電される。
【0113】
EMS60は、ステップS119の処理を行った後、ステップS120に移行する。
【0114】
ステップS120において、EMS60は、蓄電池12を第一モードに設定する。EMS60は、ステップS120の処理を行った後、運転モード決定制御を終了する。
【0115】
一方、ステップS121において、EMS60は、EMS60は、「発電予定量>必要発電量」であるか否かを判定する。この処理において、EMS60は、ステップS115で算出した発電予定量が、ステップS114で算出した必要発電量より多いか否かを判定する。
【0116】
EMS60は、「発電予定量>必要発電量」であると判定した場合(ステップS121で「YES」)、ステップS122に移行する。一方、EMS60は、「発電予定量>必要発電量」でないと判定した場合(ステップS121で「NO」)、ステップS123に移行する。
【0117】
なお、ステップS121で「YES」の場合とは、電力需要に合わせて燃料電池30の運転を行った場合、当該運転によって生成される熱量で給湯需要又は蓄熱可能量を賄えることを示している。すなわち、電力需要に合わせて燃料電池30の運転を行った場合、給湯需要又は蓄熱可能量に対して当該運転によって生成される熱量が余剰(超過)することを示している。一方、ステップS121で「NO」の場合とは、電力需要に合わせて燃料電池30の運転を行った場合、当該運転によって生成される熱量で給湯需要又は蓄熱可能量を賄えないことを示している。
【0118】
ステップS122において、EMS60は、PV発電時間帯に超過分だけ燃料電池30を停止させる。この処理において、EMS60は、ステップS114で算出された必要発電量に対して、ステップS115で算出された発電予定量がどれだけ超過しているかを算出する。そして、EMS60は、PV発電時間帯においてその超過分に相当する時間だけ燃料電池30を停止させ、当該超過分だけ燃料電池30の発電量を減少させる。
【0119】
このようにPV発電時間帯に超過分だけ燃料電池30を停止させることにより、燃料電池30が排熱利用することなく発電するのを防止することができる。すなわち、貯湯タンク32の貯湯量が最大容量に達した状態(貯湯タンク32がこれ以上蓄熱ができない状態)、又は、燃料電池30が給湯需要を超えて蓄熱する状態で発電するのを防止することができる。なお、燃料電池30の停止により代わりに電力負荷Hに供給する電力が必要となるが、燃料電池30の停止はPV発電時間帯に行われるので、太陽光発電部11で発電された電力を電力負荷Hへの供給に充てることができる。
【0120】
ステップS122には「FC発電コスト1>PV売電単価」である場合(ステップS101で「YES」、かつ、ステップS103で「YES」)に移行する。すなわち、ステップS122には、太陽光発電部11で発電された電力を自家消費した方が燃料電池30を排熱利用なしで運転するよりも光熱費メリットがある場合に移行する。よって、PV発電時間帯に超過分だけ燃料電池30を停止させることにより、給湯需要を賄えるだけの熱量を確保しつつ、光熱費の低減を図ることができる。
【0121】
図7は、ステップS122の処理により、PV発電時間帯に前記超過分だけ燃料電池30を停止させた場合の各種電力量(発電量)の一例である。図7に示すように、PV発電時間帯(9~17時)に前記超過分だけ燃料電池30を停止させると、当該PV発電時間帯のうち燃料電池30を停止させた時間帯において、太陽光発電部11で発電された電力が電力需要に充てられる。
【0122】
一方、ステップS123において、EMS60は、PV発電時間帯以外の時間帯に熱の不足分だけ燃料電池30を運転させる。この処理において、EMS60は、電力需要に合わせて燃料電池30の運転を行った場合に、給湯需要に対して不足する熱量を算出する。そして、EMS60は、PV発電時間帯以外の時間帯(例えば、夜間)、かつ、電力需要が燃料電池30の定格出力(例えば、700W)未満の時間帯において、当該不足する熱量を生成可能な時間だけ、燃料電池を定格運転させる。これにより、給湯需要を賄うことができる。
【0123】
このように熱の不足分だけ燃料電池30を運転させると、燃料電池30で発電される電力が電力需要に対して余剰することとなる。EMS60は、余剰する当該電力(余剰電力)を蓄電池12に充電させる。
【0124】
排熱利用を考慮した当該余剰電力の発電コスト(FC発電コスト2)は系統電源Kからの買電単価よりも安いため(ステップS102でYES)、当該余剰電力を蓄電池12に充電することにより、光熱費メリットを得ることができる。
【0125】
EMS60は、ステップS122又はステップS123の処理を行った後、ステップS124に移行する。
【0126】
ステップS124において、EMS60は、蓄電池12を第一モードに設定する。EMS60は、ステップS124の処理を行った後、運転モード決定制御を終了する。
【0127】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1においては、給湯需要に応じた発電量(必要発電量)や電力需要に応じた発電量(発電予定量)、電力単価等に応じて、直接的に燃料電池30の発電量を制御することにより、光熱費の低減を図ることができる。また、エネルギー消費量の削減を図ることができる。
【0128】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、燃料を用いて発電可能であるとともに、発電時に発生する熱を蓄える燃料電池30と、前記燃料電池30の動作を制御するEMS60(制御部)と、を具備し、前記燃料電池30は、電力需要に応じて運転する電主運転と、熱需要に応じて運転する熱主運転とを実行可能であり、前記EMS60は、前記燃料電池30が発電時に発生する熱を蓄えることなく発電を行う場合の第一発電コスト(FC発電コスト1)が、系統電源Kからの買電価格以下である場合(図2に示すステップS101で「NO」)、前記燃料電池30に前記電主運転を実行させる(図2に示すステップS104)ことが可能であり、前記第一発電コスト(FC発電コスト1)が前記買電価格より高く(図2に示すステップS101で「YES」)、かつ、前記燃料電池30が発電時に発生する熱を蓄えながら発電を行う場合の第二発電コスト(FC発電コスト2)が前記買電価格よりも低い場合(図2に示すステップS102で「YES」)、前記燃料電池30に前記熱主運転を実行させる(図2に示すステップS107)ことが可能であるものである。
このように構成されることにより、光熱費の低減を図ることができる。
【0129】
また、前記EMS60は、前記第一発電コスト(FC発電コスト1)及び前記第二発電コスト(FC発電コスト2)がともに前記買電価格より高い場合(図2に示すステップS101で「YES」、かつ、ステップS102で「NO」)、前記燃料電池30を発電不可な状態とする(図2に示すステップS105)ものである。
このように構成されることにより、光熱費の低減を図ることができる。
【0130】
また、自然エネルギーを利用して発電可能な太陽光発電部11(発電部)を具備し、前記EMS60は、前記第一発電コスト(FC発電コスト1)が前記買電価格より高く(図2に示すステップS101で「YES」)、かつ、前記第二発電コスト(FC発電コスト2)が前記買電価格よりも低く(図2に示すステップS102で「YES」)、さらに前記買電価格が前記太陽光発電部11で発電された電力の売電価格以下である場合(図2に示すステップS103で「NO」)、前記燃料電池30に前記熱主運転を実行させる(図2に示すステップS107)ものである。
このように構成されることにより、光熱費の低減を図ることができる。
【0131】
また、本実施形態に係る電力供給システム1は、自然エネルギーを利用して発電可能な太陽光発電部11(発電部)と、電力を充放電可能な蓄電池12と、を具備し、前記蓄電池30は、前記系統電源K側へ電力が流れていると判断した場合、前記太陽光発電部11からの電力を充電する第一モードと、所定の時間帯に前記系統電源Kからの電力を充電するとともに、前記太陽光発電部11が発電する時間帯に必要に応じて放電する第二モードと、蓄電残量が所定値以下まで減少した場合に充電を行う第三モードと、を実行可能であり、前記EMS60は、前記第一発電コスト(FC発電コスト1)が前記買電価格以下であり(図2に示すステップS101で「NO」)、かつ、前記買電価格が前記太陽光発電部11で発電された電力の売電価格よりも高い場合(図2に示すステップS106で「YES」)、前記蓄電池12を前記第一モードに設定する(図2に示すステップS108)ものである。
このように構成されることにより、光熱費の低減を図ることができる。
【0132】
また、前記EMS60は、前記第一発電コスト(FC発電コスト1)が前記買電価格以下であり(図2に示すステップS101で「NO」)、かつ、前記買電価格が前記太陽光発電部11で発電された電力の売電価格以下である場合(図2に示すステップS106で「NO」)、前記蓄電池12を前記第二モード又は前記第三モードに設定する(図2に示すステップS109)ものである。
このように構成されることにより、光熱費の低減を図ることができる。
【0133】
また、本実施形態に係る電力供給システム1は、電力を充放電可能な蓄電池12を具備し、前記EMS60は、電力負荷Hの電力需要及び熱負荷の熱需要を予測し(図2に示すステップS110)、前記熱需要に応じた必要熱量の生成に伴う前記燃料電池30の発電量である必要発電量(第一の発電量)と、前記電力需要に応じた前記燃料電池30の必要発電量である発電予定量(第二の発電量)とを算出し(図3に示すステップS114及びS115)、前記必要発電量(第一の発電量)と前記発電予定量(第二の発電量)とを比較し(図3に示すステップS118又はS121)、その比較結果に基づいて前記燃料電池30及び前記蓄電池12の動作を制御するものである。
このように構成されることにより、電力需要及び給湯需要に応じて燃料電池30を適切に制御することができる。
【0134】
また、前記EMS60は、前記必要発電量(第一の発電量)が前記発電予定量(第二の発電量)よりも多い場合(図3に示すステップS118で「YES」)、前記必要発電量(第一の発電量)と前記発電予定量(第二の発電量)との差分だけ発電するように前記燃料電池30を運転させる第一制御(図3に示すステップS119)を実行可能であるものである。
このように構成されることにより、熱需要に対する熱の不足分を賄うことができる。
【0135】
また、前記EMS60は、前記第一制御によって前記燃料電池30で発電された電力を前記蓄電池12に充電させる第二制御(図3に示すステップS119)を実行可能であるものである。
このように構成されることにより、燃料電池30で発電された電力の有効活用を図ることができる。また、燃料電池30の発電コストが系統電源Kからの買電単価よりも低い場合、蓄電池12に充電した電力を電力需要に充てることにより、光熱費の低減を図ることができる。
【0136】
また、自然エネルギーを利用して発電可能な太陽光発電部11(発電部)を具備し、前記EMS60は、前記燃料電池30の発電コストが前記太陽光発電部11で発電された電力の売電価格よりも高い場合(図3に示すステップS116で「YES」)、前記太陽光発電部11で発電される発電時間帯において前記燃料電池30を発電不可な状態とする第三制御(図3に示すステップS117)を実行可能であるものである。
このように構成されることにより、太陽光発電部11で発電された電力の自家消費の拡大を図ることができ、ひいては、光熱費の低減を図ることができる。
【0137】
また、前記EMS60は、前記発電予定量(第二の発電量)が前記必要発電量(第一の発電量)よりも多い場合(図3に示すステップS121で「YES」)、前記発電時間帯において、前記必要発電量(第一の発電量)に対する前記発電予定量(第二の発電量)の超過分だけ前記燃料電池30を発電不可な状態とする第四制御(図3に示すステップS122)を実行可能であるものである。
このように構成されることにより、燃料電池30が発電のみを行う(発電時に発生する熱を蓄えることなく運転する)のを防止することができる。また、燃料電池30の停止により減少した電力は太陽光発電部11で発電される電力で補うことができる。
【0138】
また、前記EMS60は、前記太陽光発電部11で発電された電力の売電価格が、前記第二発電コスト(FC発電コスト2)よりも高く(図3に示すステップS116で「NO」)、前記第一発電コスト(FC発電コスト1)よりも低い場合(図2に示すステップS101で「YES」、かつ、ステップS102で「YES」、かつ、ステップS103で「YES」)に前記第四制御(図3に示すステップS122)を実行するものである。
このように構成されることにより、光熱費の低減を図ることができる。
【0139】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0140】
例えば、本実施形態においては、電力供給システム1は住宅に設けられるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、オフィス等に設けられるものであってもよい。
【0141】
また、本実施形態において発電部は、太陽光を利用して発電する太陽光発電部11であるものとしたが、他の自然エネルギー(例えば、水力や風力)を利用して発電するものであってもよい。
【0142】
また、本実施形態においては、ステップS117及びステップS122において燃料電池30を停止させるものとしたが、発電不可な状態とすればよく、待機状態とするものであってもよい。
【符号の説明】
【0143】
1 電力供給システム
11 太陽光発電部
12 蓄電池
30 燃料電池
60 EMS
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7