(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】動力伝達装置及びハイブリッドシステム
(51)【国際特許分類】
B60K 6/36 20071001AFI20231116BHJP
B60K 6/38 20071001ALI20231116BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20231116BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20231116BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20231116BHJP
B60L 50/16 20190101ALN20231116BHJP
【FI】
B60K6/36
B60K6/38 ZHV
B60K6/48
B60K17/04 G
B60K17/06 K
B60L50/16
(21)【出願番号】P 2019181992
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】北田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】北村 太一
(72)【発明者】
【氏名】桂 斉士
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075876(JP,A)
【文献】特開2011-231844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/36
B60K 6/38
B60K 6/48
B60K 17/04
B60K 17/06
B60L 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及び電動機からの動力を変速機に伝達する動力伝達装置であって、
前記エンジンの回転が入力される第1駆動軸と、
前記第1駆動軸と別の回転軸心を持ち、前記電動機の回転が入力される第2駆動軸と、
前記第1駆動軸に連結されるとともに前記第2駆動軸の回転が入力可能であるインペラと、前記第2駆動軸の回転が入力可能であるタービンと、を有するトルクコンバータと、
前記インペラに連結された第1出力軸と、
前記タービンに連結されるとともに、クラッチ機構を介することなく前記変速機に直結された第2出力軸と、
前記第1出力軸と前記第2駆動軸との間で回転を伝達可能な第1伝達部と、
前記第2出力軸と前記第2駆動軸との間で回転を伝達可能な第2伝達部と、
前記第1伝達部と前記第2伝達部のいずれか一方のみを作動可能にする伝達切替部と、
を備え、
前記トルクコンバータは、前記第1駆動軸からの回転を前記第1出力軸及び前記第2出力軸に伝達するとともに、前記変速機から前記第2出力軸を介して前記タービンに入力される回転を前記インペラに伝達しない、
動力伝達装置。
【請求項2】
前記トルクコンバータは、前記インペラと前記タービンとの間にステータをさらに有している、請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1駆動軸、前記第1出力軸、及び前記第2出力軸は、同じ回転軸心を有している、請求項
1又は2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第1伝達部は所定の変速比を有している、請求項1から
3のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記第1伝達部と前記第2伝達部とは異なる変速比を有している、請求項
4に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記第2駆動軸に連結された油圧発生装置をさらに備えている、請求項1から
5のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記伝達切替部は、
前記第1伝達部のみを作動可能にする第1切替モードと、
前記第2伝達部のみを作動可能にする第2切替モードと、
前記第1伝達部と前記第2伝達部の両方を作動不能にする中立モードと
を選択可能である、
請求項1から
6のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項8】
エンジンと、
電動機と、
変速機と、
請求項1から7のいずれかに記載の動力伝達装置と、
を備えたハイブリッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置、特に、エンジン及び電動機からの動力を変速機に伝達する動力伝達装置に関する。また、本発明は、この動力伝達装置を有するハイブリッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン及び電動機を備えたハイブリッド車両の動力伝達装置が、特許文献1及び特許文献2に示されている。
【0003】
特許文献1の装置は、エンジンと電動機とがオフセットされた軸上に配置されている。そして、エンジンからの動力はトルクコンバータを介して変速機に伝達される。また、電動機からの動力は、動力伝達部及びトルクコンバータを介して変速機に伝達される。ここでは、電動機の回転は、トルクコンバータの外郭を介して、すなわち、クラッチを介することなくエンジンに伝達される。
【0004】
また、特許文献2の装置は、エンジンと電動機とがオフセットされた軸上に配置されている。そして、エンジンからの動力はクラッチ等を介して変速機に伝達される。また、電動機からの動力は、チェーン及びスプロケットを介してエンジンが配置された軸に伝達され、変速機に伝達される。ここでは、電動機の回転は、クラッチを介してエンジンに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許公開公報2018/0015817
【文献】米国特許公開公報2019/0176608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、電動機が回転しているときは、常にエンジンが回転する。したがって、エネルギ回生時に電動機を回転させると、電動機とともにエンジンが連れ回る。このため、回生時において、摩擦等によるロスが大きくなるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2の装置では、電動機とエンジンとの間にクラッチが設けられているので、クラッチによって電動機とエンジンとの間の回転の伝達を遮断することが可能である。したがって、前述のようなエネルギ回生時のエンジン連れ回りによるロスをなくすことが可能である。
【0008】
しかし、電動機とエンジンとの間の回転伝達を遮断した状態で電動機による走行をしている際に、クラッチをオンすることによってエンジンを始動させようとすると、エンジン起動時のショックが大きくなる。このため、特許文献2のタイプの装置では、一般的に、走行用の電動機とは別に、エンジン始動用の電動機(スタータモータ)が設けられており、構造が複雑になる。
【0009】
また、電動機による走行中に、この電動機によってエンジンを始動させることも可能であるが、エンジン始動時のショックを抑えるために、クラッチを滑らせたり、電動機のトルクを高い精度で制御したりする必要がある。
【0010】
本発明の課題は、簡単な構成で、エネルギ回生時のロスを抑えることができるとともに、電動機による走行中に、始動用の電動機を用いることなくスムーズにエンジンの始動を行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る動力伝達装置は、エンジン及び電動機からの動力を変速機に伝達する。この動力伝達装置は、第1駆動軸と、第1出力軸と、第2出力軸と、伝達制御部と、第2駆動軸と、第1伝達部と、第2伝達部と、伝達切替部と、を備えている。
【0012】
第1駆動軸はエンジンの回転が入力される。第2出力軸は変速機に直結されている。伝達制御部は、第1駆動軸と第1出力軸及び第2出力軸との間に配置され、第1駆動軸からの回転を第1出力軸に伝達し、第1出力軸からの回転を第2出力軸に伝達し、第2出力軸からの回転を第1出力軸及び第1駆動軸に伝達しない。第2駆動軸は、第1駆動軸と別の回転軸心を持ち、電動機の回転が入力される。第1伝達部は第1出力軸と第2駆動軸との間で回転を伝達可能である。第2伝達部は第2出力軸と第2駆動軸との間で回転を伝達可能である。伝達切替部は第1伝達部と第2伝達部のいずれか一方のみを作動可能にする。
【0013】
この装置では、エネルギ回生時においては、伝達切替部によって、第2伝達部を作動可能とし、第1伝達部を作動不能とすることができる。このような状態では、車輪から変速機に伝達された回転は、変速機→第2出力軸→第2伝達部→第2駆動軸の経路で電動機に伝達される。これにより、電動機が回転して発電され、バッテリが充電されるとともに、回生ブレーキによって車両が減速する。
【0014】
このとき、第1伝達部は作動不能であるので、第2伝達部によって第2駆動軸に伝達された回転は、第1出力軸に伝達されない。したがって、エンジンには回転は伝達されず、エネルギ回生時のエンジンの連れ回りをなくすことができる。また、変速機からの回転は第2出力軸に伝達されるが、第2出力軸の回転は伝達制御部によって第1出力軸及び第1駆動軸に伝達されない。したがって、変速機から第2出力軸に伝達された回転もエンジンに伝達されず、エンジンは連れ回りしない。このため、エネルギ回生時において、エンジンの連れ回りによるロスをなくすことができる。
【0015】
次に、電動機による走行中においては、伝達切替部によって、第1伝達部を作動可能とし、第2伝達部を作動不能とすることができる。このような状態では、電動機の回転は、第2駆動軸→第1伝達部→第1出力軸→伝達制御部→第2出力軸→変速機の経路で車輪に伝達される。また、電動機の回転は、第2駆動軸→第1伝達部→第1出力軸→伝達制御部→第1駆動軸の経路でエンジンに伝達される。すなわち、電動機による走行中は、常にエンジンが回転している。このため、電動機による走行中に、エンジンを点火するだけで、エンジンをスムーズに始動することができる。ここでは、走行用の電動機を用いてエンジンを始動させることができ、スタータ用の電動機を別に設ける必要がなくなる。
【0016】
(2)好ましくは、伝達制御部は、インペラと、タービンと、を有する流体継手である。インペラは第1駆動軸及び第1出力軸が連結されている。タービンは第2出力軸が連結されている。
【0017】
一般的に、流体継手においては、インペラからの動力はタービンに効率よく伝達されるが、逆にタービンからの動力はインペラに実質的に伝達されない。このため、第1駆動軸からインペラに入力された動力(回転)は、タービンを介して第2出力軸に伝達されるが、変速機から第2出力軸に伝達された動力(回転)は、第1駆動軸にほぼ伝達されない。すなわち、伝達制御部として機能する。
【0018】
ここでは、伝達制御部が流体継手によって構成されているので、特に、電動機による走行中にエンジンを始動する場合、よりショックを少なくすることができる。
【0019】
(3)好ましくは、伝達制御部は、インペラとタービンとの間にステータをさらに有している。ここでは、伝達制御部がトルクコンバータによって構成されているので、電動機による走行において、電動機のトルクを増幅することができ、小型の電動機を用いることができる。
【0020】
(4)好ましくは、第1駆動軸、第1出力軸、及び第2出力軸は、同軸上に配置されている。
【0021】
(5)好ましくは、第1伝達部は所定の変速比を有している。ここでは、第1伝達部の変速比を仕様に応じて適宜設定することにより、例えば、電動機のトルクを増幅することができ、電動機の小型化を実現することができる。また、第1伝達部に所定の変速比を持たせることにより、要求特性の異なる電動機(例えば、油圧発生装置駆動用電動機、エンジン始動/車両駆動用電動機)を1つに集約することができる。具体的には、後述するように、本装置に油圧発生装置をさらに備える場合は、適切な変速比に設定することで,例えば車両駆動と油圧発生装置駆動などの異なる特性が要求される電動機を、1つの電動機で実現できる。
【0022】
(6)好ましくは、第1伝達部と第2伝達部とは異なる変速比を有している。ここで、第1伝達部と第2伝達部とが異なる変速比を有している場合は、例えば、エンジン走行中に電動機がジェネレータとして機能している時、電動機の発電効率が良い領域に近くなるような回転数になるように、第1伝達部の変速比とは無関係に第2伝達部の変速比を設定することができる。
【0023】
(7)好ましくは、第2駆動軸に連結された油圧発生装置をさらに備えている。ここでは、電動機によって第2駆動軸を回転させると、アイドリングストップしている際に、エンジンを再始動することなく油圧を発生させることができる。したがって、アイドリングストップの時間を長くすることができる。
【0024】
(8)好ましくは、伝達切替部は、第1切替モードと、第2切替モードと、中立モードと、を選択可能である。第1切替モードは第1伝達部のみを作動可能にするモードである。第2切替モードは第2伝達部のみを作動可能にするモードである。中立モードは第1伝達部と第2伝達部の両方を作動不能にするモードである。
【0025】
ここでは、エンジンによる走行中において油圧の供給が不要な場合に、油圧発生装置を停止させて油圧発生装置によるロスをなくすことができる。
【0026】
(9)本発明に係るハイブリッドシステムは、エンジンと、電動機と、変速機と、前記の動力伝達装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0027】
以上のような本発明では、簡単な構成で、エネルギ回生時のロスを抑えることができるとともに、電動機による走行中に、始動用の電動機を別に設けることなく、スムーズにエンジンの始動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態によるハイブリッドシステムの概略構成図。
【
図2】
図1の伝達切替部を第1切替モードに切り替えた場合の概略構成図。
【
図3】
図1の伝達切替部を第2切替モードに切り替えた場合の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[ハイブリッドシステム]
図1は、本発明の一実施形態によるハイブリッドシステムの概略構成図である。このハイブリッドシステムは、エンジン1と、電動機2と、動力伝達装置3と、変速機4と、を備えている。変速機4の出力軸は、左右の駆動車軸5L,5Rを介してそれぞれ車輪6L,6Rに連結されている。
【0030】
[動力伝達装置3]
動力伝達装置は、第1駆動軸11と、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ(伝達制御部の一例であり、以下、単に「トルクコンバータ」と記載する)20と、第1出力軸31及び第2出力軸32と、を備えている。第1駆動軸11と、第1出力軸31と、第2出力軸32と、は同じ回転軸心を有している。また、動力伝達装置3は、第2駆動軸12と、第1伝達部41と、第2伝達部42と、伝達切替部50と、を備えている。
【0031】
第1駆動軸11は、エンジン1の出力部材(例えばドライブプレート)に連結され、エンジン1の回転が直接入力される。トルクコンバータ20は、インペラ21と、タービン22と、ステータ23と、ロックアップクラッチ24と、を有する従来から周知の構成である。第1出力軸31は、インペラ21に連結されており、このインペラ21を介して第1駆動軸11の回転がそのまま第1出力軸31に伝達される。第2出力軸32は、タービン22及びロックアップクラッチ24の出力側に連結されている。したがって、第2出力軸32には、流体を介して、あるいはロックアップクラッチ24及びタービン22を介して、エンジン1の回転が伝達される。また、第2出力軸32は、変速機4の入力軸に連結されており、第2出力軸32と変速機4との間では、回転がそのまま伝達される。
【0032】
以上のように、第1駆動軸11と、第1出力軸31及び第2出力軸32と、の間にはトルクコンバータ20が設けられているので、第1駆動軸11からの回転は第1出力軸31及び第2出力軸32に伝達される。一方、トルクコンバータ20では、インペラ21からの回転は効率よくタービン22に伝達されるが、タービン22からの回転はインペラ21には実質的に伝達されない。このため、出力側(変速機4)からの回転が、第2出力軸32を介してタービン22に伝達された場合、このタービン22の回転はインペラ21及び第1駆動軸11を介してエンジン1には伝達されない。
【0033】
なお、出力側から回転が入力された場合は、トルクコンバータ20への作動油の供給を停止する等して、タービン22からの回転がインペラ21、第1駆動軸11、及びエンジン1に伝達されないようにすることも可能である。
【0034】
第2駆動軸12は、第1駆動軸11と別の回転軸心を持ち、電動機2の出力軸に連結されている。したがって、この第2駆動軸12には、電動機2の回転がそのまま伝達される。この第2駆動軸12の端部には、油圧発生装置60が連結されている。したがって、電動機2が回転すれば、常に油圧発生装置60が駆動され、油圧が発生する。
【0035】
第1伝達部41は、第1プーリ411と、第3プーリ413と、これらのプーリ411,413を連結するベルト415と、を有している。第1プーリ411は第1出力軸31に固定されている。第3プーリ413は第2駆動軸12に相対回転自在に支持されている。
【0036】
第2伝達部42は、第2プーリ412と、第4プーリ414と、これらのプーリ412,414を連結するベルト416と、を有している。第2プーリ412は第2出力軸32に固定されている。第4プーリ414は第2駆動軸12に相対回転自在に支持されている。
【0037】
伝達切替部50は、クラッチCと、第1係合部51と、第2係合部52と、を有している。クラッチCは、第2駆動軸12と相対回転不能に、かつ軸方向移動自在に装着されている。第1係合部51は、第3プーリ413に設けられ、クラッチCと係合可能である。第2係合部52は、第4プーリ414に設けられ、クラッチCと係合可能である。そして、クラッチCは、第1係合部51に係合する第1切替位置と、第2係合部52に係合する第2切替位置と、第1係合部51及び第2係合部52のいずれにも係合しない中立位置と、を取り得る。
【0038】
したがって、伝達切替部50のクラッチCが第1切替位置に移動する第1切替モードでは、第1伝達部41が作動し、第1出力軸31と第2駆動軸12との間で回転が伝達される。また、クラッチCが第2切替位置に移動する第2切替モードでは、第2伝達部42が作動し、第2出力軸32と第2駆動軸12との間で回転が伝達される。逆に言えば、第1切替モードでは、第2伝達部42は作動せず、第2出力軸32と第2駆動軸12との間では回転が伝達されない。また、第2切替モードでは、第1伝達部41は作動せず、第1出力軸31と第2駆動軸12との間では回転が伝達されない。さらに、クラッチCが中立位置に移動する中立モードでは、第1伝達部41及び第2伝達部42はともに作動せず、第1出力軸31及び第2出力軸32と、第2駆動軸12と、の間では回転は伝達されない。
【0039】
[動作]
各運転モードにおける動力伝達装置3の動作は、以下の通りである。
【0040】
<車両の発進及び走行>
(1)エンジン1による発進及び走行
エンジン1によって車両を発進させる場合は、まず、変速機4においてブレーキ(図示せず)を作動させておく。これは、エンジン始動と同時に車両が前進するのを防止するためである。次に、
図2に示すように、伝達切替部50のクラッチCを第3プーリ413の第1係合部51に係合させて、伝達切替部50を第1切替モードに切り替える。これにより、第1伝達部41において、回転の伝達が可能になる。
【0041】
以上のような状態で、電動機2を駆動する。この電動機2の回転は、第2駆動軸12→伝達切替部50→第1伝達部41(第3プーリ413→ベルト415→第1プーリ411)→第1出力軸31→トルクコンバータ20(インペラ21)→第1駆動軸11の経路でエンジン1に伝達される。そして、エンジン1の回転中に点火することによって、エンジン1が始動する。ここでは、電動機2を、エンジン1のスタータとして機能させることができる。
【0042】
そして、エンジン1の始動後、変速機4のブレーキを解除する。これにより、エンジン1の回転は、第1駆動軸11→トルクコンバータ20→第2出力軸32→変速機4の経路で伝達され、車両を発進させ、走行することができる。
【0043】
このとき、伝達切替部50は第1切替モードに切り替えられているので、エンジン1の回転は第2駆動軸12に伝達され、油圧発生装置60が駆動されている。したがって、油圧を各部に供給することができる。
【0044】
なお、アイドリングストップが採用された車両では、アイドリングストップの際にエンジン1の回転は停止する。この場合、本実施形態では、伝達切替部50の中立モードにおいて電動機2を回転させることによって油圧発生装置60を駆動させることができる。したがって、アイドリングストップ中においても各部に適切な油圧を供給することができ、アイドリングストップの時間を長くとることができる。
【0045】
(2)電動機2による発進及び走行
電動機2によって車両を発進させる場合は、伝達切替部50のクラッチCを第3プーリ413の第1係合部51に係合させて、伝達切替部50を第1切替モードに切り替える。この状態で、電動機2を駆動する。電動機2の回転は、第2駆動軸12→伝達切替部50→第1伝達部41(第3プーリ413→ベルト415→第1プーリ411)→第1出力軸31→トルクコンバータ20→第2出力軸32の経路で変速機4に伝達され、車両を発進させることができる。
【0046】
また、同様の経路で電動機2による走行を行うことができる。この電動機2による走行中は、電動機2の動力をトルクコンバータ20によって増幅することができるので、比較的小型の電動機を採用することができる。また、第1伝達部41の変速比を適宜設定することによって、仕様に応じて適切な動力、回転数を得ることができる。
【0047】
このとき、電動機2の回転によって油圧発生装置60が駆動されている。したがって、油圧を各部に供給することができる。
【0048】
<電動機走行中のエンジン始動>
電動機2によって走行しているとき、前述のように、トルクコンバータ20(インペラ21)が回転しているので、この回転は、第1駆動軸11を介してエンジン1に伝達されている。すなわち、電動機2による走行中は、エンジン1が連れ回りしている。したがって、エンジン1を点火すれば、エンジン1は始動する。エンジン1の始動後、エンジン1の回転はトルクコンバータ20を介して変速機4に伝達されるので、電動機2による走行中にエンジン1を始動させても、トルクコンバータ20によって車両のショックを低減することができる。なお、この場合、ロックアップクラッチ24はオフ(動力伝達遮断)が好ましい。
【0049】
<エネルギ回生>
エネルギ回生を行う場合は、
図3に示すように、伝達切替部50のクラッチCを第4プーリ414の第2係合部52に係合させて、伝達切替部50を第2切替モードに切り替える。また、ロックアップクラッチ24をオフにしておく。
【0050】
ここでは、変速機4からの回転は、第2出力軸32→第2伝達部42(第2プーリ412→ベルト416→第4プーリ414)→伝達切替部50→第2駆動軸12の経路で電動機2に伝達され、電動機2を回転させることができる。そして、この電動機2の回転によって発生した電力をバッテリに充電することができる。なお、変速機4からの回転は、第2出力軸32を介してタービン22に伝達される。しかし、前述のように、トルクコンバータ20では、タービン22に入力された回転は、インペラ21へはほとんど伝達されない。このため、変速機4からの回転が、第2出力軸32及びタービン22に伝達されても、このタービン22の回転はエンジン1には伝達されない。
【0051】
このため、エネルギ回生時において、エンジン1の連れ回りを防止でき、エネルギ回生時におけるエンジン連れ回りによるロスをなくすことができる。
【0052】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0053】
(a)前記実施形態では、伝達制御部としてトルクコンバータ20を例にとって説明したが、伝達制御部はこの例に限定されない。例えば、フルードカップリングを用いることもできる。また、ロックアップクラッチを有していないトルクコンバータであってもよい。
【0054】
(b)第1伝達部41及び第2伝達部42を、プーリとベルトによって構成したが、例えば、チェーン及びスプロケットや、歯車列等、種々の構成を採用することができる。
【0055】
(c)伝達切替部50のクラッチC及び係合部51,52については、ドグクラッチ、摩擦クラッチ、磁力式クラッチ等、種々の構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン
2 電動機
3 動力伝達装置
4 変速機
11 第1駆動軸
12 第2駆動軸
20 トルクコンバータ(伝達制御部)
21 インペラ
22 タービン
23 ステータ
31 第1出力軸
32 第2出力軸
41 第1伝達部
42 第2伝達部
50 伝達切替部
60 油圧発生装置