(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】接合構造体
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20231116BHJP
E04B 1/16 20060101ALI20231116BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/16 D
E04B1/58 508P
(21)【出願番号】P 2019186654
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 典哉
(72)【発明者】
【氏名】今田 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】田渕 浩司
(72)【発明者】
【氏名】福原 武史
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-144931(JP,A)
【文献】特開2016-176216(JP,A)
【文献】特開2016-196788(JP,A)
【文献】特開平02-221535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/16,1/30
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を構成するコンクリート柱と梁とを接合する接合構造体であって、
鋼製の筒状体を有する仕口部であって、前記コンクリート柱と前記梁とを接合するための仕口部と、
前記梁を前記筒状体に対して接合する梁接合手段と、
前記梁接合手段における前記筒状体に挿通される部分に設けられる取付部であって、吊り金具を前記梁接合手段に取り付けるための取付部と、を備え、
前記筒状体の内縁の平面形状と前記コンクリート柱の外縁の平面形状とを、左右方向及び前後方向に沿った各辺を有する略同一の矩形状とし、
前記筒状体は、所定の厚みを有する筒状体であり、且つ、前記筒状体の上下方向の軸心と前記コンクリート柱の上下方向の軸心とが一致するように配置されており、
平面視上における前記筒状体
の内縁と前記コンクリート柱
の外縁との相互間の隙間である平面視隙間の長さを、前記筒状体内に打設されるコンクリートが漏れることを抑制可能な長さとし、
前記平面視隙間の長さを、前記コンクリート柱の階高の1/1000の長さ以下とし、
前記筒状体の外径を、前記コンクリート柱の外径よりも大きくし、
前記筒状体の左右方向の長さを、前記コンクリート柱の左右方向の長さよりも前記平面視隙間の
4倍の長さだけ長くし、
前記筒状体の前後方向の長さを、前記コンクリート柱の前後方向の長さよりも前記平面視隙間の
4倍の長さだけ長くした、
接合構造体。
【請求項2】
前記筒状体の外縁の平面形状と前記コンクリート柱の外縁の平面形状とを略同一の矩形状とし、
前記筒状体の角部をアール状に形成し、
前記コンクリート柱の角部を面取りした形状に形成し、
前記筒状体の角部のアールの径を、前記筒状体の板厚の4倍から10倍程度にした、
請求項1に記載の接合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物を構成するコンクリート柱と梁とを接合する技術が提案されている。このような技術においては、例えば、断面ロ字型に形成された鋼板枠と、鋼板枠内に一体に形成された補強鋼板と、鋼板枠を横に貫通する複数の連結ロッドとを備え、各連結ロッドの鋼板枠からの突出端にカプラを介して梁主筋に結合する技術(例えば、特許文献1参照)が開示されている。また、コンクリート柱の外径は、鋼板枠の外径よりも大きく設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来の技術においては、上述したように、コンクリート柱の外径が鋼板枠の外径よりも大きく設定されているので、例えば、コンクリート柱の設計上必要な外径が鋼板枠の外径よりも小さい場合には、コンクリート柱を打設する際に、コンクリート柱の外径が鋼板枠の外径よりも大きくなるように、コンクリートの増し打ちを行う必要があることから、施工コストが過大になるおそれがあった。したがって、施工コストの観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、施工コストを抑制することが可能となる、接合構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の接合構造体は、建物を構成するコンクリート柱と梁とを接合する接合構造体であって、鋼製の筒状体を有する仕口部であって、前記コンクリート柱と前記梁とを接合するための仕口部と、前記梁を前記筒状体に対して接合する梁接合手段と、前記梁接合手段における前記筒状体に挿通される部分に設けられる取付部であって、吊り金具を前記梁接合手段に取り付けるための取付部と、を備え、前記筒状体の内縁の平面形状と前記コンクリート柱の外縁の平面形状とを、左右方向及び前後方向に沿った各辺を有する略同一の矩形状とし、前記筒状体は、所定の厚みを有する筒状体であり、且つ、前記筒状体の上下方向の軸心と前記コンクリート柱の上下方向の軸心とが一致するように配置されており、平面視上における前記筒状体の内縁と前記コンクリート柱の外縁との相互間の隙間である平面視隙間の長さを、前記筒状体内に打設されるコンクリートが漏れることを抑制可能な長さとし、前記平面視隙間の長さを、前記コンクリート柱の階高の1/1000の長さ以下とし、前記筒状体の外径を、前記コンクリート柱の外径よりも大きくし、前記筒状体の左右方向の長さを、前記コンクリート柱の左右方向の長さよりも前記平面視隙間の4倍の長さだけ長くし、前記筒状体の前後方向の長さを、前記コンクリート柱の前後方向の長さよりも前記平面視隙間の4倍の長さだけ長くした。
【0007】
請求項2に記載の接合構造体は、請求項1に記載の接合構造体において、前記筒状体の外縁の平面形状と前記コンクリート柱の外縁の平面形状とを略同一の矩形状とし、前記筒状体の角部をアール状に形成し、前記コンクリート柱の角部を面取りした形状に形成し、前記筒状体の角部のアールの径を、前記筒状体の板厚の4倍から10倍程度にした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の接合構造体によれば、平面視隙間の長さを、筒状体内に打設されるコ
ンクリートが漏れることを抑制可能な長さとしたので、筒状体の内部にコンクリートを打
設する際に平面視隙間からコンクリートが漏れることを抑制できる。よって、従来技術(コンクリート柱の外径を鋼板枠の外径よりも大きくする技術)に比べて、コンクリート柱の増し打ちを省略でき、施工コストを抑制することが可能となる。
また、平面視隙間の長さを、コンクリート柱の階高の1/1000の長さ以下としたので、コンクリート柱の施工精度を考慮した平面視隙間の長さを設定でき、コンクリート柱の施工精度を確保しながら、平面視隙間からのコンクリートの漏れを抑制することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の接合構造体によれば、筒状体の外径をコンクリート柱の外径よりも大きくし、且つ筒状体の外縁の平面形状とコンクリート柱の外縁の平面形状とを略同一の矩形状とし、筒状体の角部のアールの径を、筒状体の板厚の4倍から10倍程度にしたので、筒状体の平面形状と柱の平面形状とが略同一の矩形状である場合において、筒状体の角部がアール状であることで仕口部の外観をシャープな仕上がりにすることができる。また、筒状体の角部のアールの径が筒状体の板厚の4倍を下回る場合又は筒状体の板厚の10倍を上回る場合に比べて、筒状体の必要強度を確保しながら、筒状体の角部の外観とコンクリート柱の面取り部の外観との統一性が図りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る接合構造体を概念的に示す斜視図である。
【
図3】
図2の接合構造体の角部の周辺領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る接合構造体の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物を構成するコンクリート柱と梁とを接合する接合構造体に関する。
【0015】
ここで、「建物」の具体的な構造や種類は任意であり、例えば、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設等の建物等を含む概念であるが、実施の形態では、複数階を有する立体駐車場として説明する。また、「コンクリート柱と梁とを接合する」とは、コンクリート柱と接合構造体とを直接又は間接につなぎ合わせると共に、梁と接合構造体とを直接又は間接につなぎ合わせることを意味する。
【0016】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0017】
(構成)
最初に、実施の形態に係る接合構造体50の構成と、この接合構造体50が設置される建物1の構成とについて説明する。
【0018】
(構成-建物)
まず、建物1の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る接合構造体50を概念的に示す斜視図である(一部図示省略)。以下の説明では、
図1のX方向を建物1の左右方向(-X方向を建物1の左方向、+X方向を建物1の右方向)、
図1のY方向を建物1の前後方向(+Y方向を建物1の前方向、-Y方向を建物1の後方向)、
図1のZ方向を建物1の上下方向(+Z方向を建物1の上方向、-Z方向を建物1の下方向)と称する。
【0019】
建物1は、例えば鉄筋コンクリート造の建物であり、所定の敷地内に設けられており、
図1に示すように、床(図示省略)、壁(図示省略)、柱10、及び梁20を備えている。
【0020】
(構成-建物-床)
床は、建物1を構成する部材であって、建物1の階層を構成する部材である。この床は、例えば公知の床材(一例として、コンクリート製の床パネル材)等を用いて構成されており、相互に間隔を隔てて上下方向に向けて複数並設されている。
【0021】
(構成-建物-壁)
壁は、建物1を構成する部材であって、床同士の相互間を仕切るための部材である。この壁は、例えば公知の壁材(一例として、コンクリート製の壁材)等を用いて構成されており、床同士の相互間に複数設けられている。
【0022】
(構成-建物-柱)
柱10は、建物1を構成する部材であって、床を支持する部材である。この柱10は、例えば公知のコンクリート製の長尺な柱材(一例として、鉄筋コンクリート製、プレストレストコンクリート製の柱材)等を用いて構成されており、床同士の相互間(すなわち、建物1の各階層の空間)に複数設けられている。なお、以下では、柱10を「コンクリート柱10」と称して説明する。
【0023】
また、コンクリート柱10の具体的な形状及び長さについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。すなわち、
図1に示すように、コンクリート柱10の平面形状については、略矩形状(具体的には、正方形状)に設定しており、具体的には、コンクリート柱10の角部を面取りした形状に設定している(なお、この面取りした部分を「面取り部」と称する)。ただし、これに限らず、例えば、三角形状の如き他の多角形状、円形状、楕円形状等に設定してもよい。また、コンクリート柱10の左右方向の長さについては、床部の左右方向の長さよりも短く設定している。ただし、これに限らず、例えば、床部の左右方向の長さよりも長く、又は同一に設定してもよい。また、コンクリート柱10の前後方向の長さについては、床部の前後方向の長さよりも短く設定している。ただし、これに限らず、例えば、床部の前後方向の長さよりも長く、又は同一に設定してもよい。また、コンクリート柱10の上下方向の長さについては、当該コンクリート柱10が設置される階層の上下方向の長さよりも短く設定している。
【0024】
(構成-建物-梁)
梁20は、建物1を構成する部材であって、床を支持する部材である。この梁20は、例えば公知の長尺な鋼製の梁材(一例として、スチール製又はステンレス製の梁材)等を用いて構成されており、各床の下面と当接するように複数設けられている。
【0025】
また、梁20の具体的な形状及び長さについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。すなわち、
図1に示すように、梁20の長手方向に直交する断面の断面形状については、略I字状に設定している。ただし、これに限らず、例えば、L字状、直線状等に設定してもよい。また、梁20の長手方向の長さについては、コンクリート柱10の左右方向又は前後方向の長さよりも長く設定している。ただし、これに限らず、例えば、床部の左右方向の長さよりも長く、又は同一に設定してもよい。また、梁20の幅方向の長さについては、コンクリート柱10の左右方向又は前後方向の長さよりも短く設定している。ただし、これに限らず、例えば、床部の左右方向の長さよりも長く、又は同一に設定してもよい。また、梁20の上下方向の長さについては、コンクリート柱10の上下方向の長さよりも短く設定している。
【0026】
(構成-接合構造体)
次に、接合構造体50の構成について説明する。
図2は、
図1のA-A矢視断面図である(一部図示省略)。接合構造体50は、コンクリート柱10と梁20とを接合するためのものである。
図1、
図2に示すように、この接合構造体50は、コンクリート柱10(具体的には、コンクリート柱10の上端部)と複数の梁20(具体的には、各梁20の長手方向の端部)との相互間に設けられており、仕口部60、第1梁接合部70、及び第2梁接合部80を備えている。なお、実施の形態に係る建物1には各コンクリート柱10と各梁20との相互間に接合構造体50がそれぞれ設けられているが、これらはいずれも同様に構成できるため図示や詳細な説明を省略し、以下では1つの接合構造体50のみに着目して説明する。また、以下では、接合構造体50に接続される複数の梁20のうち、左側に位置する梁21を「左側梁21」と称し、右側に位置する梁22を「右側梁22」と称し、前側に位置する梁23を「前側梁23」と称し、後側に位置する梁24を「後側梁24」と称する。
【0027】
(構成-接合構造体-仕口部)
図1に戻り、仕口部60は、接合構造体50の基本構造体であり、
図1、
図2に示すように、筒状体61、充填体63、第1挿通孔(図示省略)、及び第2挿通孔(図示省略)を備えている。
【0028】
(構成-接合構造体-仕口部-筒状体)
図1に戻り、筒状体61は、仕口部60の基本構造体である。この筒状体61は、例えば、上端部及び下端部が開放状である鋼製の筒状体を用いて構成されており、
図1に示すように、コンクリート柱10の上端部に立設されている。
【0029】
また、筒状体61の具体的な形状及び長さについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。すなわち、
図1、
図2に示すように、筒状体61の平面形状については、筒状体61の外縁の平面形状とコンクリート柱10の外縁の平面形状とが略同一の矩形状になるように設定しており、具体的には、略矩形環状(
図2では、正方形環状)に設定していると共に、この角部の各々をアール状に形成している。また、筒状体61の左右方向及び前後方向の長さについては、筒状体61の外径がコンクリート柱10の外径よりも大きくなるように設定している。具体的には、筒状体61の左右方向の長さについては、コンクリート柱10の左右方向の長さよりも長く設定していると共に、筒状体61の前後方向の長さについては、コンクリート柱10の前後方向の長さよりも長く設定している。また、筒状体61の上下方向の長さについては、コンクリート柱10の上下方向の長さよりも短く設定している。なお、以下では、筒状体61を構成する側片62(以下、「筒側片62」と称する)のうち、左側に位置する筒側片62aを「左側筒側片62a」と称し、右側に位置する筒側片62bを「右側筒側片62b」と称し、前側に位置する筒側片62cを「前側筒側片62c」と称し、後側に位置する筒側片62dを「後側筒側片62d」と称する。
【0030】
(構成-接合構造体-仕口部-充填体)
図1に戻り、充填体63は、筒状体61を補強するための補強手段であり、コンクリート柱10と筒状体61とを接続する接続手段である。充填体63は、例えば、公知のコンクリート製の充填材等を用いて構成されており、
図1、
図2に示すように、筒状体61の内部に充填されており、コンクリート柱10の上端部から上方に向けて突出した複数の鉄筋(図示省略。あるいは、鋼製の板材等)を介してコンクリート柱10に接続されている。
【0031】
(構成-接合構造体-仕口部-第1挿通孔)
第1挿通孔は、第1梁接合部70を筒状体61に挿通するための挿通孔(貫通孔)である。この第1挿通孔は、第1梁接合部70のY-Z平面に沿った断面形状と略同一の形状にて形成されており、左側筒側片62a及び右側筒側片62bにそれぞれ設けられている。
【0032】
(構成-接合構造体-仕口部-第2挿通孔)
第2挿通孔は、第2梁接合部80を筒状体61に挿通するための挿通孔(貫通孔)である。この第2挿通孔は、第2梁接合部80のX-Z平面に沿った断面形状と略同一の形状にて形成されており、前側筒側片62c及び後側筒側片62dにそれぞれ設けられている。なお、仕口部60の構成の詳細については、後述する。
【0033】
(構成-接合構造体-第1梁接合部)
図1に戻り、第1梁接合部70は、左側梁21及び右側梁22を筒状体61に対して接合する梁接合手段である。この第1梁接合部70は、例えば公知の鋼製の梁材等を用いて構成され、第1挿通孔を介して筒状体61に挿通するように設けられており、左側梁21及び右側梁22の各々に対して図示しない継手部材を介して固定具等によってそれぞれ接続されている。
【0034】
また、第1梁接合部70の具体的な形状及び長さについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。すなわち、
図1、
図2に示すように、第1梁接合部70のY-Z平面に沿った断面形状については、左側梁21(又は右側梁22)のY-Z平面に沿った断面形状と略同一に設定しており、例えば、略I字状に設定している。また、第1梁接合部70の左右方向の長さについては、コンクリート柱10の左右方向の長さよりも長く設定している。また、第1梁接合部70の前後方向の長さについては、コンクリート柱10の前後方向の長さよりも短く設定している。また、第1梁接合部70の上下方向の長さについては、コンクリート柱10の上下方向の長さよりも短く設定している。
【0035】
また、第1梁接合部70の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、吊り金具(例えば、アイボルト)を取り付けるための取付孔(図示省略)を有する取付部(図示省略)を設けることで、組立てられた接合構造体50(ただし、充填体63を除く)を取付孔に取り付けられた吊り金具を用いてクレーン等で搬送できるようにしてもよい。なお、この取付部の設置位置については任意であるが、例えば、接合構造体50が組立てられた状態において、取付部が筒状体61の内部に収容されるように設置することにより、取付部が外部に露出することを回避してもよい。また、この取付部は、例えば、第2梁接合部80に設けられてもよい。
【0036】
(構成-接合構造体-第2梁接合部)
図1に戻り、第2梁接合部80は、前側梁23及び後側梁24を筒状体61に対して接合する梁接合手段である。この第2梁接合部80は、例えば公知の鋼製の梁材等を用いて構成され、第1梁接合部70に形成された挿通孔(図示省略)及び第2挿通孔を介して筒状体61に挿通するように設けられており、前側梁23及び後側梁24の各々に対して図示しない継手部材を介して固定具等によってそれぞれ接続されている。
【0037】
また、第2梁接合部80の具体的な形状及び長さについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。すなわち、
図1、
図2に示すように、第2梁接合部80のX-Z平面に沿った断面形状については、前側梁23(又は後側梁24)のX-Z平面に沿った断面形状と略同一に設定しており、例えば、略I字状に設定している。また、第2梁接合部80の左右方向の長さについては、コンクリート柱10の左右方向の長さよりも短く設定している。また、第2梁接合部80の前後方向の長さについては、コンクリート柱10の前後方向の長さよりも長く設定している。また、第2梁接合部80の上下方向の長さについては、コンクリート柱10の上下方向の長さよりも短く設定している。
【0038】
このような接合構造体50の構成により、仕口部60とコンクリート柱10とをつなぎ合わせることができると共に、第1梁接合部70及び第2梁接合部80と複数の梁20とをつなぎ合わせることができる。
【0039】
(構成-接合構造体-仕口部の構成の詳細)
次に、仕口部60の構成の詳細について説明する。
図3は、
図2の接合構造体50の角部の周辺領域の拡大図である。仕口部60の筒状体61の構成の特徴については、実施の形態では、以下に示す通りとなる。
【0040】
(構成-接合構造体-仕口部の構成の詳細-第1の特徴)
まず、筒状体61の第1の特徴については、
図2、
図3に示すように、平面視上における筒状体61とコンクリート柱10との相互間の隙間FS(以下、「平面視隙間FS」と称する)の長さは、筒状体61内に打設されるコンクリート(具体的には、充填体63を形成するためのコンクリート)が漏れることを抑制可能な長さに設定されている。なお、「平面視上における筒状体61とコンクリート柱10との相互間の隙間」とは、平面方向から見て、筒状体61におけるコンクリート柱10側の端部とコンクリート柱10における筒状体61側の端部との間の空間を意味し、実施の形態では、筒状体61の内縁部とコンクリート柱10の外縁部との間の空間が該当する。
【0041】
具体的には、平面視隙間FSの長さは、コンクリート柱10の階高(上下方向の長さ)の1/1000の長さ以下に設定されている。例えば、コンクリート柱10の階高=6000mmである場合には、平面視隙間FS=コンクリート柱10の階高×1/1000=6000×1/1000=6mm以下に設定されてもよい。ここで、「コンクリート柱10の階高の1/1000の長さ以下」に設定した理由については、コンクリート柱10の施工誤差を吸収するために一般的に必要な寸法であるコンクリート柱10の階高の1/1000の長さを基準に設定することで、コンクリート柱10の施工精度を確保しながら、コンクリートを打設する際に平面視隙間FSからコンクリートが漏れることを回避することを可能にするためである。
【0042】
また、
図2に示すように、筒状体61は、平面方向から見てコンクリート柱10の周囲全体に平面視隙間FSが形成されるように構成されている。より具体的には、筒状体61の左右方向の長さは、コンクリート柱10の左右方向の長さよりも平面視隙間FSの2倍の長さだけ長く設定されていると共に、筒状体61の前後方向の長さは、コンクリート柱10の前後方向の長さよりも平面視隙間FSの2倍の長さだけ長く設定されている。そして、筒状体61の上下方向の軸心とコンクリート柱10の上下方向の軸心とが一致するように、筒状体61が配置されている。
【0043】
このような第1の特徴により、筒状体61の内部にコンクリートを打設する際に平面視隙間FSからコンクリートが漏れることを抑制できる。よって、従来技術(コンクリート柱10の外径を鋼板枠の外径よりも大きくする技術)に比べて、コンクリート柱10の増し打ちを省略でき、施工コストを抑制することが可能となる。また、平面視隙間FSの長さをコンクリート柱10の階高の長さ以下に設定しているので、コンクリート柱10の施工精度を考慮した平面視隙間FSの長さを設定でき、コンクリート柱10の施工精度を確保しながら、平面視隙間FSからのコンクリートの漏れを抑制することが可能となる。
【0044】
(構成-接合構造体-仕口部の構成の詳細-第2の特徴)
次に、筒状体61の第2の特徴については、上述したように、筒状体61の外径がコンクリート柱10の外径よりも大きく設定され、筒状体61の外縁の平面形状とコンクリート柱10の外縁の平面形状とが略同一の矩形状に設定され、筒状体61の角部がアール状に形成され(アール状部分、且つコンクリート柱10の角部が面取りした形状に形成されたことに加えて、
図3に示すように、筒状体61の角部のアールの径Rは、筒状体61の板厚tの4倍から10倍程度に設定されている。
【0045】
例えば、コンクリート柱10の面取り部の幅W=15mm、筒状体61の板厚t=6mmである場合に、筒状体61の角部のアールの径Rが、筒状体61の板厚tの4倍程度(すなわち、6mm×4=24mm)に設定されることで、筒状体61の角部のアールの径Rとコンクリート柱10の面取り部の幅Wとの比率=24mm/15mm=1.6程度に設定されてもよい。このような例示を踏まえると、筒状体61の角部のアールの径Rが筒状体61の板厚tの4倍程度から10倍程度に設定された場合には、上記比率を1.6倍から4倍程度に設定できることから、筒状体61の角部のアールの径Rが筒状体61の板厚tの10倍を上回る場合に比べて、筒状体61の必要強度を確保しながら、筒状体61の角部の外観とコンクリート柱10の面取り部の外観との統一性が図りやすくなる。
【0046】
このような第2の特徴により、筒状体61の平面形状と柱の平面形状とが略同一の矩形状である場合において、筒状体61の角部がアール状であることで仕口部60の外観をシャープな仕上がりにすることができる。また、筒状体61の角部のアールの径Rが筒状体61の板厚tの4倍を下回る場合又は筒状体61の板厚tの10倍を上回る場合に比べて、筒状体61の必要強度を確保しながら、筒状体61の角部の外観とコンクリート柱10の面取り部の外観との統一性が図りやすくなる。
【0047】
(接合構造体の施工方法)
次に、実施の形態に係る接合構造体50の施工方法について説明する。実施の形態に係る接合構造体50の施工方法は、コンクリート柱形成工程、組立工程、配置工程、充填工程、及び梁接合工程を含んでいる。
【0048】
(接合構造体の施工方法-コンクリート柱形成工程)
まず、コンクリート柱形成工程について説明する。コンクリート柱形成工程は、コンクリート柱10を形成するための工程である。
【0049】
具体的には、建物1の屋内において、コンクリート柱10が設置される周辺に型枠を設置する。次に、型枠に複数の鉄筋を配置した後に、コンクリートを流し込んで打設する。なお、この複数の鉄筋は、型枠よりも上方に突出するように配置される。そして、打設したコンクリートを所定期間固化した後に、型枠を撤去する。この場合において、型枠の具体的な形状及びサイズの設定については、コンクリートの打ち増しを考慮しないコンクリート柱10の形状及びサイズに形成することが可能な形状で構成されていると共に、コンクリートを打設するだけで、面取り部を有するコンクリート柱10を形成することが可能な形状に構成されている。これにより、コンクリート柱10のコンパクト化を図ることができると共に、コンクリート柱10を効率的に形成できる。
【0050】
(接合構造体の施工方法-組立工程)
次に、組立工程について説明する。組立工程は、コンクリート柱形成工程の後(又はコンクリート柱形成工程の前)に、接合構造体50(ただし、充填体63を除く)を組立てるための工程である。
【0051】
具体的には、コンクリート柱10の近傍位置(又は工場)において、第1梁接合部70を第1挿通孔を介して筒状体61に挿通した後に、第2梁接合部80を第1梁接合部70の挿通孔及び第2挿通孔を介して筒状体61に挿通することにより、組立てる。
【0052】
(接合構造体の施工方法-配置工程)
次いで、配置工程について説明する。配置工程は、組立工程の後に、組立工程にて組立てられた接合構造体50をコンクリート柱10に配置するための工程である。
【0053】
具体的には、接合構造体50の取付部に吊り具を取り付けた後に、クレーンを用いて接合構造体50を吊り上げることにより、接合構造体50をコンクリート柱10の上端部に配置する。より具体的には、筒状体61は、平面方向から見てコンクリート柱10の周囲全体に平面視隙間FSが形成されるように配置すると共に、コンクリート柱10から上方に突出した複数の鉄筋が接合構造体50の内部に位置するように配置する。
【0054】
(接合構造体の施工方法-充填工程)
次に、充填工程について説明する。充填工程は、配置工程の後に、充填体63を仕口部60の内部に充填するための工程である。
【0055】
具体的には、配置工程にて配置された筒状体61の内部にコンクリートを流し込んで打設し、その後当該打設したコンクリートを所定期間固化することにより、充填する。これにより、上記上方に突出した複数の鉄筋を介して筒状体61とコンクリート柱10とを接合することができる。また、筒状体61とコンクリート柱10との相互間に平面視隙間FSが形成されているものの、平面視隙間FSからコンクリートが漏れることが抑制されるので、筒状体61の内部にコンクリートを保持でき、充填体63を筒状体61の内部に確実に充填することができる。ただし、これに限らず、例えば、平面視隙間FSの下端部を公知のバックアップ材でさらに塞ぐことにより、平面視隙間FSからコンクリートが漏れることを回避してもよい。
【0056】
(接合構造体の施工方法-梁接合工程)
続いて、梁接合工程について説明する。梁接合工程は、充填工程の後に、複数の梁20と接合構造体50とを接合するための工程である。
【0057】
具体的には、クレーン等を用いて左側梁21(又は右側梁22)を吊り下げた状態で、当該左側梁21(又は右側梁22)と第1梁接合部70とを、継手部材を介して固定具等によって接続する。また、これと同様に、クレーン等を用いて前側梁23(又は後側梁24)を吊り下げた状態で、当該前側梁23(又は後側梁24)と第2梁接合部80とを、継手部材を介して固定具等によって接続する。
【0058】
以上のような接合構造体50の施工方法により、従来技術(コンクリート柱10の外径を鋼板枠の外径よりも大きくする技術)に比べて、コンクリート柱10の増し打ち作業を省略でき、施工コストを抑制することが可能となる。また、組立工程の後に配置工程を行うので、接合構造体50(ただし、充填体63を除く)を効率的且つ安全に設置することができ、接合構造体50の施工性を高めることができる。
【0059】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、平面視隙間FSの長さを、筒状体61内に打設されるコンクリートが漏れることを抑制可能な長さとしたので、筒状体61の内部にコンクリートを打設する際に平面視隙間FSからコンクリートが漏れることを抑制できる。よって、従来技術(コンクリート柱10の外径を鋼板枠の外径よりも大きくする技術)に比べて、コンクリート柱10の増し打ちを省略でき、施工コストを抑制することが可能となる。
【0060】
また、平面視隙間FSの長さを、コンクリート柱10の階高の1/1000の長さ以下としたので、コンクリート柱10の施工精度を考慮した平面視隙間FSの長さを設定でき、コンクリート柱10の施工精度を確保しながら、平面視隙間FSからのコンクリートの漏れを抑制することが可能となる。
【0061】
また、筒状体61の外径をコンクリート柱10の外径よりも大きくし、且つ筒状体61の外縁の平面形状とコンクリート柱10の外縁の平面形状とを略同一の矩形状とし、筒状体61の角部のアールの径Rを、筒状体61の板厚tの4倍から10倍程度にしたので、筒状体61の平面形状と柱の平面形状とが略同一の矩形状である場合において、筒状体61の角部がアール状であることで仕口部60の外観をシャープな仕上がりにすることができる。また、筒状体61の角部のアールの径Rが筒状体61の板厚tの4倍を下回る場合又は筒状体61の板厚tの10倍を上回る場合に比べて、筒状体61の必要強度を確保しながら、筒状体61の角部の外観とコンクリート柱10の面取り部の外観との統一性が図りやすくなる。
【0062】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0063】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0064】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0065】
(梁について)
上記実施の形態では、梁20が、鋼材で構成されていると説明したが、これに限らず、例えば、コンクリート材で構成されてもよい。
【0066】
(コンクリート柱について)
上記実施の形態では、コンクリート柱10の角部を、面取りした形状に形成していると説明したが、これに限らず、例えば、面取りした形状に形成しなくてもよい。
【0067】
(接合構造体について)
上記実施の形態では、筒状体61の外縁の平面形状を、コンクリート柱10の外縁の平面形状と略同一の矩形状に設定していると説明したが、これに限らず、例えば、コンクリート柱10の外縁の平面形状とは異なる矩形状又は矩形状以外の他の形状(一例として、円形状等)に設定してもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、筒状体61の角部をアール状に形成していると説明したが、これに限らず、例えば、アール状に形成しなくてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、接合構造体50と接合される梁20の個数が4つであると説明したが、これに限らず、例えば、3つ未満であってもよく、あるいは、5つ以上であってもよい。この場合には、梁20の個数に応じた個数の挿通孔が仕口部60に形成されると共に、梁20の個数に応じた個数の梁接合手段が設けられてもよい。
【0070】
(平面視隙間について)
上記実施の形態では、平面視隙間FSの長さを、コンクリート柱10の階高の1/1000の長さ以下に設定していると説明したが、これに限らない。例えば、接合構造体50の施工方法の充填工程において、筒状体61の内部にコンクリートを打設した際にコンクリートが漏れることを抑制できれば、コンクリート柱10の階高(上下方向の長さ)の1/1000の長さを上回る長さに設定してもよい。
【0071】
(接合構造体の施工方法について)
上記実施の形態では、組立工程を行った後に、配置工程を行うと説明したが、これに限らない。例えば、クレーン等を用いて組立工程をコンクリート柱10の上端部で行うことにより、配置工程を省略してもよい。
【0072】
(付記)
付記1の接合構造体は、建物を構成するコンクリート柱と梁とを接合する接合構造体であって、鋼製の筒状体を有する仕口部であって、前記コンクリート柱と前記梁とを接合するための仕口部を備え、平面視上における前記筒状体と前記コンクリート柱との相互間の隙間である平面視隙間の長さを、筒状体内に打設されるコンクリートが漏れることを抑制可能な長さとした。
【0073】
付記2の接合構造体は、付記1に記載の接合構造体において、前記平面視隙間の長さを、前記コンクリート柱の階高の1/1000の長さ以下とした。
【0074】
付記3の接合構造体は、付記1又は2に記載の接合構造体において、前記筒状体の外径を前記コンクリート柱の外径よりも大きくし、且つ前記筒状体の外縁の平面形状と前記コンクリート柱の外縁の平面形状とを略同一の矩形状とし、前記筒状体の角部をアール状に形成し、前記コンクリート柱の角部を面取りした形状に形成し、前記筒状体の角部のアールの径を、前記筒状体の板厚の4倍から10倍程度にした。
【0075】
(付記の効果)
付記1に記載の接合構造体によれば、平面視隙間の長さを、筒状体内に打設されるコンクリートが漏れることを抑制可能な長さとしたので、筒状体の内部にコンクリートを打設する際に平面視隙間からコンクリートが漏れることを抑制できる。よって、従来技術(コンクリート柱の外径を鋼板枠の外径よりも大きくする技術)に比べて、コンクリート柱の増し打ちを省略でき、施工コストを抑制することが可能となる。
【0076】
付記2に記載の接合構造体によれば、平面視隙間の長さを、コンクリート柱の階高の1/1000の長さ以下としたので、コンクリート柱の施工精度を考慮した平面視隙間の長さを設定でき、コンクリート柱の施工精度を確保しながら、平面視隙間からのコンクリートの漏れを抑制することが可能となる。
【0077】
付記3に記載の接合構造体によれば、筒状体の外径をコンクリート柱の外径よりも大きくし、且つ筒状体の外縁の平面形状とコンクリート柱の外縁の平面形状とを略同一の矩形状とし、筒状体の角部のアールの径を、筒状体の板厚の4倍から10倍程度にしたので、筒状体の平面形状と柱の平面形状とが略同一の矩形状である場合において、筒状体の角部がアール状であることで仕口部の外観をシャープな仕上がりにすることができる。また、筒状体の角部のアールの径が筒状体の板厚の4倍を下回る場合又は筒状体の板厚の10倍を上回る場合に比べて、筒状体の必要強度を確保しながら、筒状体の角部の外観とコンクリート柱の面取り部の外観との統一性が図りやすくなる。
【符号の説明】
【0078】
1 建物
10 コンクリート柱
20 梁
21 左側梁
22 右側梁
23 前側梁
24 後側梁
50 接合構造体
60 仕口部
61 筒状体
62 筒側片
62a 左側筒側片
62b 右側筒側片
62c 前側筒側片
62d 後側筒側片
63 充填体
70 第1梁接合部
80 第2梁接合部
FS 平面視隙間