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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】操船支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 79/40 20200101AFI20231116BHJP
   B63B 35/68 20060101ALI20231116BHJP
   B63B 35/70 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B63B79/40
B63B35/68
B63B35/70
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019190606
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021066225
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】檜野 武憲
(72)【発明者】
【氏名】原田 芳輝
(72)【発明者】
【氏名】坂田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】八木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】西東 貴士
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0059206(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0225307(US,A1)
【文献】特開2002-244543(JP,A)
【文献】特開平8-324493(JP,A)
【文献】特開2016-113008(JP,A)
【文献】実開昭61-105298(JP,U)
【文献】特表2019-512428(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093416(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109153433(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0031300(US,A1)
【文献】SafePilot SmartPort System,スウェーデン,Trelleborg Marine and Infrastructure,2018年,pp.1-18
【文献】岡村世紀一,第六章 作業実務,ハーバータグボート ―性能・操船・実務―,初版,日本,海文堂出版株式会社,2011年10月11日,pp.45-86,ISBN 978-4-303-22260-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 79/40,35/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本船が少なくとも1隻のタグボートで支援されながら岸壁に離岸又は着岸する際の操船支援システムであって、
前記岸壁を含む海図画像、本船図形、及びタグボート図形を格納した記憶装置と、
前記本船の位置及び方位、並びに、前記タグボートの位置及び方位を検出する少なくとも1つの検出装置と、
少なくとも1つのディスプレイと、
前記ディスプレイに操船支援画面を表示させるプロセッサとを備え、
前記操船支援画面は、前記海図画像、前記検出装置で検出された前記本船の位置及び方位に基づいて前記海図画像上に配置された前記本船図形、前記検出装置で検出された前記タグボートの位置及び方位に基づいて前記海図画像上に配置された前記タグボート図形、並びに、前記タグボート図形上に配置されて、前記タグボートに搭載された複数のタグボート推進機の各々について当該タグボート推進機によって生じる推進力の方向を表したタグボート推進機情報を含む、
操船支援システム。
【請求項2】
前記タグボート推進機情報は、前記タグボートに対する前記タグボート推進機の相対的位置と、前記タグボート図形に対する前記タグボート推進機情報の相対的位置とが対応するように、前記画面上に配置されている、
請求項1に記載の操船支援システム。
【請求項3】
前記操船支援画面は、前記本船図形上に配置され、前記本船に搭載された舵の舵角を表した本船舵図形を含む、
請求項1又は2に記載の操船支援システム。
【請求項4】
前記操船支援画面は、前記海図画像上に配置され、前記本船の進行方向及び速度を表した速度ベクトルを更に含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の操船支援システム。
【請求項5】
前記操船支援画面は、前記本船に働く推力の向き及び大きさを表した本船推力ベクトルと、前記タグボートに働く推力の向き及び大きさを表したタグボート推力ベクトルとを更に含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の操船支援システム。
【請求項6】
前記操船支援画面は、前記岸壁の種類を表した岸壁種別図形を更に含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の操船支援システム。
【請求項7】
前記操船支援画面は、前記本船と前記タグボートが所定の接続位置となると現れ、前記タグボートと前記本船とをタグラインで接続するように指示する接続指示テキストを更に含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の操船支援システム。
【請求項8】
前記操船支援画面は、前記本船と前記タグボートが所定の接続解除位置となると現れ、前記タグラインの接続を解除するように指示する接続解除指示テキストを更に含む、
請求項7に記載の操船支援システム。
【請求項9】
前記操船支援画面は、トランシーバで利用するVHFチャンネルを表すチャンネル指示テキストを更に含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の操船支援システム。
【請求項10】
前記操船支援画面は、前記海図画像上に重ねられた前記タグボートが前記本船へアプローチする際の前記タグボートの計画航路を更に含む、
請求項1に記載の操船支援システム。
【請求項11】
前記操船支援画面は、前記計画航路に重畳して表示された前記タグボートの実航路を更に含む、
請求項10に記載の操船支援システム。
【請求項12】
前記タグボートの各々に搭載され、前記タグボートの前方を撮影するカメラを更に備え、
前記操船支援画面は、前記カメラで撮影された少なくとも1つの撮影画像を含む、
請求項1に記載の操船支援システム。
【請求項13】
本船が少なくとも1隻のタグボートで支援されながら岸壁に離岸又は着岸する際に、前記本船及び前記タグボートの操船を支援する情報端末のプロセッサが少なくとも1つのディスプレイに操船支援画面を表示させるステップを含み、
前記操船支援画面が、前記岸壁を含む海図画像、前記本船の位置及び方位と対応して前記海図画像上に配置された本船図形、前記タグボートの位置及び方位と対応して前記海図画像上に配置されたタグボート図形、並びに、前記タグボート図形上に配置されて、前記タグボートに搭載された複数のタグボート推進機の各々について当該タグボート推進機によって生じる推進力の方向を表したタグボート推進機情報を含む、
操船支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1隻のタグボートを利用して船舶(本船)の離着岸を支援する際に、離着岸操船の当事者(即ち、水先人、本船船長、タグオペレータ、及び、地上作業員など)を支援するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貨物船や客船などの大型の船舶(本船)が港湾で岸壁に着岸/離岸する際に、少なくとも1隻のタグボートが本船の航行を支援することがある。タグボートは、本船との間に渡されたタグラインで本船を牽引・曳航する。また、タグボートは、防舷物(タイヤなど)を介して自身を本船に直に接触させて本船を押す。このようなタグボートによる本船の押し曳きを受けながら、本船船長が本船を操船する。水先人は、多くの場合は本船へ乗船し、GPS測位装置などの航海計器を適宜使用して、国際VHF無線でタグオペレータや地上作業員と連絡を取りながら本船船長を補助し、本船を目的の場所まで安全に誘導する。
【0003】
上記のようなタグボート支援による離着岸操船において、当事者のコミュニケーションは、現状では、互いの目視情報に基づいて無線トランシーバを介して行われている。そのため、離着岸操船の当事者が、必要な情報を十分に共有できず、また、双方の連絡内容が正確に伝わらないこと(ミスコミュニケーション)が生じることがあり、これらが効率的な離着岸を実現する上で課題となっている。そこで、特許文献1~4では、このような離着岸操船における課題を解決しようとするコミュニケーションツールが提案されている。
【0004】
特許文献1には、タグボートに配置されて、タグボートが本船に対し行うべき作業をタグオペレータに指示する装置が開示されている。この装置は、従来の無線機と同様に連絡し合うためのマイクロフォン及びスピーカと、本船からタグボートへの指示をテキストで表した小画面と、本船に対するタグボートの位置及び進行方向、並びに、本船に対して行うべきタグボートの押し作業/引き作業の区別を図形で表した大画面とを有する。
【0005】
特許文献2には、操船者及び支援者のそれぞれに端末装置を携帯させ、その複数の端末装置が通信を行うことによって、操船支援情報や操船指令情報などの情報を交換し合い、各端末装置に共通の情報を保有させることが開示されている。
【0006】
特許文献3には、船舶が離着岸する港湾施設の鳥瞰図に、船舶の鳥瞰図を重ねて表示するとともに、船舶の位置、岸橋と船舶との距離、船舶の対地速度、船首方位、避険線情報、標準航路情報、及び、港湾の風や海象に関する情報を表示する表示部を備える支援システムが開示されている。
【0007】
特許文献4では、船体及びその周囲の撮像画像から船体及びその周囲を含む一帯の俯瞰画像が、船舶に設けられた第1表示ユニットと、タグボートや関連設備に設けられた第2表示ユニットとに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開昭61-105298号広報
【文献】国際公開WO2004/019302A1パンフレット
【文献】特表2019-512428号広報
【文献】国際公開WO2019/093416A1パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~4には、本船及びタグボートの位置及び向きと併せてタグボートの推進機の推力の有無やその方向(以下、「推進機の現況」と称する)を一目でわかりやすいように表示するものは開示されていない。タグボートの推進機の現況は、タグボートに働く推力及びタグボートの動きを推し量るうえで重要な情報といえる。よって、この情報を当事者が把握し、当事者間で共有できれば、より円滑で安全且つ効率的な離着岸操船が可能となる。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、本船の離着岸操船に携わる当事者に対して本船及びタグボートの位置及び向きと併せてタグボートに搭載された各推進機の状況を直感的に理解可能な態様で提示することにより、当事者による状況の把握を助け、離着岸操船を支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る操船支援システムは、本船が少なくとも1隻のタグボートで支援されながら岸壁に離岸又は着岸する際の操船支援システムであって、
前記岸壁を含む海図画像、本船図形、及びタグボート図形を格納した記憶装置と、前記本船の位置及び方位、並びに、前記タグボートの位置及び方位を検出する少なくとも1つの検出装置と、少なくとも1つのディスプレイと、前記ディスプレイに操船支援画面を表示させるプロセッサとを備える。
前記操船支援画面は、前記海図画像、前記検出装置で検出された前記本船の位置及び方位に基づいて前記海図画像上に配置された前記本船図形、前記検出装置で検出された前記タグボートの位置及び方位に基づいて前記海図画像上に配置された前記タグボート図形、並びに、前記タグボート図形上に配置されて、前記タグボートに搭載された複数のタグボート推進機の各々について当該タグボート推進機によって生じる推進力の方向を表したタグボート推進機情報を含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の一態様に係る操船支援方法は、本船が少なくとも1隻のタグボートで支援されながら岸壁に離岸又は着岸する際に前記本船及び前記タグボートの操船を支援する情報端末のプロセッサが少なくとも1つのディスプレイに操船支援画面を表示させるステップを含み、
前記操船支援画面が、前記岸壁を含む海図画像、前記本船の位置及び方位と対応して前記海図画像上に配置された本船図形、前記タグボートの位置及び方位と対応して前記海図画像上に配置されたタグボート図形、並びに、前記タグボート図形上に配置されて、前記タグボートに搭載された複数のタグボート推進機の各々について当該タグボート推進機によって生じる推進力の方向を表したタグボート推進機情報を含むことを特徴としている。
【0013】
上記操船支援システム及び方法において、「タグボート図形上に配置されたタグボート推進機情報」には、画面上でタグボート図形と視覚的に重畳するように配置されたタグボート推進機情報に加えて、タグボートに搭載されたタグボート推進機との対応が視覚的に明らかとなるように海図画像上においてタグボート図形に近接して配置されたタグボート推進機情報が含まれ得る。
【0014】
上記操船支援システム及び方法によれば、ディスプレイに表示された海図画像上に示された本船図形とタグボート図形によって本船及びタグボートの位置関係が示されたうえ、タグボート推進機情報によって各タグボート推進機について当該タグボート推進機によって生じる推進力の方向が示される。このように、ディスプレイに表示された一つの画面に、本船とタグボートの位置関係を示す情報と、タグボート推進機の状況を示す情報とが併せて図示されているので、この画面を見た当事者はこれらの相互関係を直感的に把握することができる。タグボート推進機の状況は、タグボートに働く推力やその方向を推し量るうえで重要な情報であり、この情報を当事者が直感的に容易に把握することにより、より円滑で効率的な離着岸操船が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本船の離着岸操船に携わる当事者に対して本船及びタグボートの位置及び方向と、タグボートに搭載された各推進機の状況が直感的に理解可能な態様で提示されるので、当事者による状況の把握を助け、離着岸操船を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る操船支援システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、タグボートの概略構成を示す図である。
図3図3は、情報収集装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、情報端末の構成を示すブロック図である。
図5図5は、処理装置の構成を示すブロック図である。
図6図6は、操船支援画面を示す図である。
図7図7は、操船支援画面を示す図である。
図8図8は、操船支援画面を示す図である。
図9図9(A)は本船に設定された押し点を示す図、図9(B)は本船に設定された曳き点を示す図である。
図10図10は、操船支援画面を示す図である。
図11図11は、操船支援画面を示す図である。
図12図12は、操船支援画面を示す図である。
図13図13は、操船支援画面を示す図である。
図14図14は、操船支援画面を示す図である。
図15図15は、操船支援画面を示す図である。
図16図16は、操船支援画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、操船支援システム1の概略構成を示す図である。図1に示す操船支援システム1は、少なくとも1隻のタグボート3で支援される大型の船舶(以下、「本船2」と称する)の離着岸操船に利用され得る。
【0018】
図2はタグボート3の概略構成を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係るタグボート3は、左右一対の推進機68を有する船体38を備える。船体38の内部には、船員室区域や機関室などが形成されている(いずれも図示略)。船体38にはマスト39が立設されており、マスト39には遠隔カメラ34が設置されている。遠隔カメラ34では、タグボート3の前方を撮像することができる。各推進機68は、例えば、360度旋回可能な可変ピッチプロペラを備えるアジマススラスタである。可変ピッチプロペラの旋回角度により推進方向の調整を調節することができ、また、可変ピッチプロペラのピッチ角度の調節によって推進力を調節することができる。但し、上記構成は例示に過ぎず、本発明は一般的なアジマススラスタやシュナイダープロペラなどの推進機を備えるタグボート3を用いた操船支援に適用することができる。
【0019】
図1に戻って、本実施形態に係る操船支援システム1は、複数の情報端末20と、複数の情報収集装置30と、情報処理装置40と、これらを相互に情報の送受信を可能に接続する無線通信網5とを備える。
【0020】
情報処理装置40は、本船2に配置されている。情報処理装置40は、陸上に配置されてもよいし、タグボート3に配置されてもよい。情報処理装置40は、水先人又は本船船長によって操作され得る。また、情報端末20は、本船2及び各タグボート3に搭載されるか、水先人、本船船長、タグオペレータ及び地上作業員を含む当事者に携帯されてよい。情報収集装置30は、本船2、各タグボート3、及び、港湾内の他の船舶のそれぞれに搭載されている。以下では、本船2、各タグボート3、及び、港湾内の他の船舶を区別せずに説明する際に「船舶」と示すことがある。無線通信網5による通信は、陸上又は船上の無線基地局50を介した通信であってもよいし、船上の携帯基地局を介した通信であってもよい。
【0021】
〔情報収集装置30〕
図3は、情報収集装置30の構成を示すブロック図である。図3に示す情報収集装置30は、コンピュータ31と無線の通信装置35とを備える。コンピュータ31には、各種の航海計器32、各種の機関情報検出器33、及び、遠隔カメラ34が通信可能に接続されている。コンピュータ31は、航海計器32、機関情報検出器33、及び遠隔カメラ34から取得した情報やデータを船舶の識別情報と供に通信装置35及び無線通信網5を介して情報処理装置40へ送信する。
【0022】
航海計器32は、例えば、船舶の所定の位置に設置された測位アンテナを含むGPS測位装置、ジャイロコンパス(方位計)、水深計、風向/風速計、船速計、及び、喫水計を含む。GPS測位装置は、時刻(協定世界時)及び位置(緯度・経度)を受信し、これらの情報から対地速度及び対地針路を求めることができる。ジャイロコンパスは、船首方位を検出し、この情報から得られる船舶の旋回角度から回頭角速度を求めることができる。
本船2の機関情報検出器33は、舵角、推進軸の回転数、サイドスラスタ(スタンスラスタ/バウスラスタ)の回転数などの検出器を含む。タグボート3の機関情報検出器33は、アジマススラスタのプロペラの回転数、プロペラ軸方向などの検出器を含む。
【0023】
遠隔カメラ34は、船舶の適宜位置に設置されている(図1、参照)。本船2に搭載される遠隔カメラ34は、本船2の側部から岸壁を撮像できるように設置されていてよい。また、遠隔カメラ34は、前述のとおりタグボート3にも搭載されている。
【0024】
情報収集装置30は、従来船舶に搭載されているAIS(Automatic Identification System)を利用したものであってもよい。この場合、通信装置35としてAISが備えるVHS通信装置(図示略)が利用されてよい。AISは、船舶のデータを自動的にVHF電波で送受信し、周辺の船舶の動静を把握するための装置である。AISが送受信する情報は、一般的に、搭載された船舶の動的情報、静的情報、及び、航海関連情報を含む。動的情報には、一般的に、時刻(協定世界時)、位置(緯度・経度)、対地速度、対地針路、位置精度に関する情報、船首方位、回頭角速度、及び、航海ステータスが含まれる。静的情報には、一般的に、MMSI番号(海上移動業務識別番号)、呼出符号と船名、船舶の種類、IMO番号、測位アンテナの位置、及び、船体長と船幅が含まれる。航海関連情報には、一般的に、船舶の喫水、目的地と目的地到着予測日・予測時刻、及び、積載危険物の種類が含まれる。AISは公知であるので、AISについてこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0025】
〔情報端末20〕
図4は、情報端末20の構成を示すブロック図である。図4に示す情報端末20は、コンピュータ21と、入力装置23と、出力装置24と、記憶装置25と、通信装置26とを備える。コンピュータ21は、プロセッサ211と、RAMやROMなどのメモリ212と、入力制御部213と、出力制御部214と、ディスク制御部215と、通信制御部216と、その他の各種インターフェース217とを備える。入力制御部213には、入力装置23が接続されている。入力装置23は、タッチパネル231とマイク232とを含む。入力装置23には、キーボード、ポインティングデバイス、及び、ボタンやスティック型の操作具のうち、少なくとも1つが含まれていてもよい。出力制御部214には、出力装置24が接続されている。出力装置24は、ディスプレイ241と、スピーカ242とを含む。ディスク制御部215には、ハードディスクなどの記憶装置25が接続されている。通信制御部216には、無線の通信装置26が接続されている。通信装置26は、送受信アンテナを有し、このアンテナと無線基地局50とを介して、他の情報端末20や情報処理装置40と情報の送受信が可能である。
【0026】
情報端末20には、表示プログラム7が予めインストールされている。プロセッサ211は、メモリ212に記憶されたプログラムを実行し、入力装置23を介して入力された情報、メモリ212や記憶装置25に記憶された情報、通信装置26を介して外部から取得した情報、及び、インターフェース217を介して外部から取得した情報の少なくとも1つを利用して演算処理を行い、その結果を出力装置24及び/又は通信装置26へ出力する。
【0027】
〔情報処理装置40〕
図5は、情報処理装置40の構成を示すブロック図である。図5に示す情報処理装置40は、コンピュータ41と、入力装置43と、出力装置44と、記憶装置45と、通信装置46とを備える。コンピュータ41は、プロセッサ411と、RAMやROMなどのメモリ412と、入力制御部413と、出力制御部414と、ディスク制御部415と、通信制御部416と、その他の各種インターフェース417とを備える。入力制御部413には、入力装置43が接続されている。入力装置43は、タッチパネル431とマイク432とを含む。入力装置43は、キーボード、ポインティングデバイス、及び、ボタンやスティック型の操作具のうち、少なくとも1つを含んでいてもよい。出力制御部414には、出力装置44が接続されている。出力装置44は、ディスプレイ441と、スピーカ442とを含む。ディスク制御部415には、ハードディスクなどの記憶装置45が接続されている。通信制御部416には、無線の通信装置46が接続されている。通信装置46は、送受信アンテナを有し、このアンテナと無線基地局50とを介して、情報端末20及び情報収集装置30と情報の送受信が可能である。プロセッサ411は、メモリ412に記憶されたプログラムを実行し、入力装置43を介して入力された情報、メモリ412や記憶装置45に記憶された情報、通信装置46を介して外部から取得した情報、及び、インターフェース417を介して外部から取得した情報の少なくとも1つを利用して演算処理を行い、その結果を出力装置44及び/又は通信装置46へ出力する。
【0028】
記憶装置45には、港湾情報データベース、船体情報データベース、及び、航海情報データベースが構築されている。
【0029】
港湾情報データベースには、本船2が入港する港湾に関する情報が格納されている。港湾に関する情報には、港湾を含む海図、離着岸する岸壁の種類、目標着岸位置、ブイの位置、避険線、標準航路、水深、等深線、潮流、障害物(例えば、浅瀬やいけすなどの構造物)、航行する船舶の必要経由ポイント、航行禁止域、船舶ごとの侵入禁止領域、及び、港湾の局所気象海象などが含まれる。標準航路は、岸壁ごとに、或いは、船舶ごとに決定されて、予め記憶されていてよい。岸壁には水深の深い海上に設けられたシーバースなども含まれていてもよい。
【0030】
船体情報データベースには、船舶の識別情報と対応づけて船舶の特性に関する情報が格納されている。船舶の特性に関する情報には、船舶ごとの形状特性及び運動特性が含まれる。形状特性には、長さ、幅、外形、基準点の船体相対位置、及び、測位アンテナの船体相対位置などが含まれる。特に、本船2の形状特性には、ストロングポイントと呼ばれる押し点の船体相対位置とボラードが設けられた曳き点の船体相対位置とが更に含まれる。運動特性には、搭載されている推進機やその性能(種類や定格出力)、推力を求めるための演算モデルなどが含まれる。
【0031】
航海情報データベースには、港湾内の船舶に搭載された情報収集装置30から取得した情報が船舶の識別情報と対応づけて格納されている。また、航海情報データベースには、港湾内の船舶に搭載されたAISから取得した情報が船舶の識別情報と対応づけて格納されてもよい。
【0032】
情報処理装置40のコンピュータ41は、メモリ412又は記憶装置45に格納されたプログラムを実行することにより、情報取得モジュール、予測位置演算モジュール、衝突回避モジュール、航路計画モジュール、推力演算モジュール、音声通話モジュール、及び、表示データ生成モジュールとしての機能を備える。
【0033】
情報取得モジュールは、各情報収集装置30から送信される情報を取得し、航海情報データベースに格納する。航海情報データベースの情報は、他の演算処理で読み出されて利用される。
【0034】
予測位置演算モジュールは、船舶の現在位置と、当該船舶の船速及び方位から、所定時間後の船舶の位置(予測位置)を時々刻々と求める。
【0035】
離着岸距離演算モジュールは、船舶の現在位置と、港湾情報と、船舶の形状特性情報とから、船舶と岸壁との距離を求める。船舶と岸壁との距離は、船舶と岸壁との距離のうち最小の値であってよい。離着岸距離演算モジュールは、船舶と目標着岸位置までの距離を求めてもよい。
【0036】
衝突回避モジュールは、海上における船舶衝突の防止のための船舶運用の規則に従った回避行動をとるように、対象となる船舶に情報を送信する。衝突回避モジュールは、船舶の現在位置及び予測位置から、船舶同士の衝突リスクを求める。また、衝突回避モジュールは、船舶の現在位置及び予測位置と、障害物の位置とから、船舶と障害物との衝突リスクを求める。衝突リスクは、例えば、数値やレベルで表される。衝突回避モジュールは、衝突リスクが所定の閾値を超えると、警告情報を生成し、それを無線通信網5を介して情報端末20へ送信する。警告情報には、衝突の警告の対象となる船舶の情報に加えて、どの船舶に対しいつどのような回避行動を指示するべきかの情報が含まれていてよい。
【0037】
航路計画モジュールは、必要経由ポイント情報(位置、方位、船速)、航行禁止域情報、海象気象(風力・潮力)、及び、本船動作特性に基づいて、本船2の着壁又は離壁の推奨航路を設定する。推奨航路の設定情報には、複数のウエイポイントと、各ウエイポイントにおける本船2の方位及び船速と、タグラインの接続及び接続解除タイミングとが含まれる。航路計画モジュールは、例えば、港湾の気象及び海象、並びに、他の船舶の位置を変数とするモデルを用いて、演算により好適な航路を求め、それを推奨航路して設定するように構成される。好適な航路は、安全性、経済性などの特定の観点から好適な航路であってよい。或いは、航路計画モジュールは、港湾の気象及び海象、並びに、他の船舶の位置に基づいて、予め容易された幾つかの航路候補の中から一つを推奨航路と設定するように構成されていてよい。或いは、航海計画モジュールは、船長や水先人が指示した航海計画を推奨航路として設定するように構成されていてよい。或いは、航海計画モジュールは、予め記憶された標準航路を推奨航路として設定するように構成されていてよい。
【0038】
推力演算モジュールは、本船2の推進機やサイドスラスタ(スタンスラスタ/バウスラスタ)で現在発生している推力と、タグボート3のアジマススラスタで現在発生している推力とを求める。推力は、並進推力及び旋回モーメント推力を含む。推力演算モジュールは、予め与えられた演算モデルを用いて、推進機(又は、サイドスラスタ、アジマススラスタ)の出力(回転数)から推力を求める。推力演算モジュールは、更に、本船2の推進機(サイドスラスタを含む)で発生している推力と、タグボート3の推進機で発生している推力などとが合成された、本船2に働く推力(本船合成推力)を求める。
【0039】
音声通話モジュールは、マイク432で拾った音をデジタル変換して音声データとし、それを通信装置46を介して音声通話先の情報端末20へ送信する。また、音声通話モジュールは、音声通話先の情報端末20から送られてきた音声データをアナログ変換してスピーカ442から出力する。
【0040】
操船状況データ生成モジュールは、操船状況データを生成する。操船状況データは、情報処理装置40のディスプレイ441及び情報端末20のディスプレイ241に表示させる各種の操船支援画面に掲載される情報を含む。情報処理装置40のコンピュータ41は、生成した操船状況データを通信制御部416及び無線通信網5を介して各情報端末20へ送信する。各情報端末20のコンピュータ21では、受け取った操船状況データがメモリ212に記憶され、プロセッサ211は表示プログラム7を実行することにより、操船状況データに基づいてディスプレイ241に少なくとも1種類の操船支援画面を表示させる。なお、情報処理装置40のコンピュータ41にも、情報端末20と同様の表示プログラム7がインストールされていてもよい。この場合、情報処理装置40のコンピュータ41のプロセッサ411は表示プログラム7を実行することにより、操船状況データに基づいてディスプレイ441に少なくとも1種類の操船支援画面を表示させる。情報端末20のディスプレイ241に表示される操船支援画面と情報処理装置40のディスプレイ441に表示される操船支援画面とは同期されていてよい。コンピュータ21,41により出力される各種の操船支援画面及びその表示方法は実質的に同じであるので、情報端末20のディスプレイ241の画面表示について詳細に説明し、情報処理装置40のディスプレイ441の画面表示についての説明を省略する。
【0041】
図6は、ディスプレイ241に表示される操船支援画面Sの一例である。操船支援画面Sは、現況表示部98を含む。現況表示部98には、海図情報に基づいて、港湾を含む海図画像60が表示される。海図画像60には、岸壁61に加えて、ブイや障害物(いずれも図示略)などが示されている。海図画像60には、深度や等深線が示されていてもよい。
【0042】
現況表示部98の左下部には、本船2が離着岸する岸壁の種類を表した岸壁種別図形62が表示される。岸壁の種類には、一般的に、重力式岸壁矢板式岸壁、桟橋式岸壁、及び、浮桟橋などがある。図6では、岸壁種別図形62として、桟橋式岸壁の側面模式図が示されている。このように岸壁種別図形62が図形で示されることにより、鳥瞰図である海図画像60からは読み取り難い岸壁の種類を当事者が直感的に把握することができる。
【0043】
現況表示部98の右下部には、潮流情報に基づいて、潮流の流れ(向き)を表した潮流ベクトル63が示される。潮流ベクトル63の矢印の向きが潮流の流れ(向き)を表し、潮流ベクトル63の矢印の大きさが潮流の大きさを表す。このように潮流がテキストではなく図形で示されることにより、当事者は、現況表示部98から潮流を直感的に把握することができる。
【0044】
現況表示部98には、本船2の位置情報、方位情報、及び、形状特性に基づいて、本船2を模式的に表した図形(以下、「本船図形2s」と称する)が海図画像60に重ねて表示される。本船図形2sは、例えば、本船2の平面視の輪郭を図形化したものである。本船2の実際の位置及び方位と現況表示部98の海図画像60上の本船図形2sの位置及び方位とは対応している。
【0045】
現況表示部98には、タグボート3の位置情報、方位情報、及び、形状特性に基づいて、タグボート3を模式的に表した図形(以下、「タグボート図形3s」と称する)が海図画像60に重ねて表示される。タグボート図形3sは、例えば、タグボート3の平面視の輪郭を図形化したものである。タグボート3の実際の位置及び方位と現況表示部98の海図画像60上のタグボート図形3sの位置及び方位とは対応している。
【0046】
現況表示部98には、本船2の舵角の情報に基づいて、舵を模式的に表した舵図形67が本船図形2s上に重ねて表示される。本船図形2s上に配置された舵図形67には、現況表示部98上で本船図形2s上と視覚的に重畳するように配置された舵図形67に加えて、本船2の舵との対応が視覚的に明らかとなるように海図画像60上において本船図形2sに近接して配置された舵図形67が含まれ得る。
【0047】
現況表示部98上の本船図形2sと舵図形67との相対的な位置関係は、本船2とそれに搭載された舵との相対的な位置関係と対応している。舵図形67は、平面視の舵板を模した線分であり、本船2の船体に対する舵板の舵角と対応した角度で本船図形2s上に配置されている。
【0048】
現況表示部98には、本船2の推進機の情報に基づいて、推進機を模式的に表した本船推進機図形70が本船図形2sに重ねて表示される。現況表示部98上の本船図形2sと船推進機図形70との相対的な位置関係は、本船2とそれに搭載された推進器との相対的な位置関係と対応している。図6に例示する現況表示部98において、本船推進機図形70は長手方向及び短手方向を有する鎖線四角形で示され、本船2の船体上のサイドスラスタの位置と対応して本船図形2s上に配置されている。但し、船推進機図形70の外観は上記に限定されない。なお、本船2は推進機として、主推進機とサイドスラスタ(又はアジマススラスタ)とを備えるが、本実施形態に係る現況表示部98では、離着岸操船で稼働するサイドスラスタについての本船推進機図形70のみが表示されている。現況表示部98には、主推進機を表した本船推進機図形70が表示されてもよい。
【0049】
本船推進機図形70は、本船2の推進機の現況を直感的に把握できるように現況表示部98に表示される。本船2の推進機がサイドスラスタの場合、本船2に対するサイドスラスタのプロペラの軸角度、即ち、本船2を基準とした推進方向は一定である。本船2の推進機がアジマススラスタの場合、本船2に対するアジマススラスタのプロペラの軸角度は可変であり、本船2を基準とした推進方向は変化する。そこで、本実施形態では、本船2の推進機の本船2を基準とした推進方向が明確となるように、本船2に対する推進機のプロペラの回転面の面内方向と本船図形2sに対する本船推進機図形70の長手方向とが対応している。
【0050】
現況表示部98には、タグボート3の推進機68の各々について、推進機68で生じる推進力の方向を表したタグボート推進機情報68sが、タグボート図形3s上に配置されている。タグボート図形3s上に配置されたタグボート推進機情報68sには、現況表示部98上でタグボート図形3sと視覚的に重畳するように配置されたタグボート推進機情報68sに加えて、タグボート3に搭載されたタグボート推進機68との対応が視覚的に明らかとなるように海図画像60上においてタグボート図形3sに近接して配置されたタグボート推進機情報68sが含まれ得る。
【0051】
現況表示部98上のタグボート図形3sとタグボート推進機情報68sとの相対的な位置関係は、タグボート3とそれに搭載された推進機68との相対的な位置関係と対応している。図2に示すように、タグボート3に搭載された推進機68がアジマススラスタである場合には、アジマススラスタで生じる推進力の方向はプロペラ軸方向と略平行である。このような場合には、プロペラ軸方向の情報から、推進機68で生じる推進力の方向を得ることができる。また、タグボート3に搭載された推進機68がスクリュープロペラである場合には、スクリュープロペラと併せて搭載される舵の方向によってスクリュープロペラで生じる推進力の方向が定まる。このような場合には、舵の方向の情報から、推進機68で生じる推進力の方向を得ることができる。
【0052】
図6では、プロペラ軸方向の情報に基づいて、プロペラを模式的に表した図形がタグボート推進機情報68sとしてタグボート図形3sに重ねて表示されている。このタグボート推進機情報68sは、平面視のプロペラの回転面を模した線分であり、この線分と直交する方向がプロペラ軸方向(即ち、推進機68で生じる推進力の方向)を表している。本実施形態に係る各タグボート3は2機の推進機68を搭載しており、各推進機68についてタグボート推進機情報68sが表示されている。このように、タグボート推進機情報68sは、タグボート3の推進機68の現況、特に、推進機68の数(又は、稼働状況)や、タグボート3を基準とした各推進機68の推進力の発生方向を直感的に把握できるように現況表示部98に表示される。この現況表示部98を視認した当事者は、各タグボート推進機情報68sによって画面上に示された各推進機68の推進力の発生方向に基づいて、タグボート3に働く推力の方向を推定することができる。
【0053】
現況表示部98には、離着岸距離演算モジュールが求めた本船2と岸壁までの距離に基づいて、本船2と岸壁61までの距離64を表す数値と矢印とが海図画像60に重ねて表示される。このように、本船2と岸壁61までの距離64が数値で明確に示されるので、本船船長や水先人はこの距離64を考慮して操船を行うことができる。
【0054】
現況表示部98には、本船2の対地針路及び対地速度に基づいて、本船2の進行方向及び速度を表した速度ベクトル69が表示される。速度ベクトル69は、本船図形2sの船首を起点とし、進行方向を向き、速度と対応した長さを有する矢印である。本船2の速度には、船舶のエンジンを停止したあとに、惰力により舵を取った方向に動き続けるときの速度(行き脚)も含まれ得る。なお、速度ベクトル69に加えて、本船2の船速が数値で表示されてもよい。
【0055】
現況表示部98には、タグボート3と本船2とをタグラインで接続するように指示する接続指示テキスト73aが表示される。接続指示テキスト73aは、例えば、本船2及びタグボート3の接続位置情報に基づいて、本船2とタグボート3とが接続位置となったタイミングで表示される。同様に、現況表示部98には、タグラインの接続を解除するように指示する接続解除指示テキスト73b(図7、参照)が表示される。接続解除指示テキスト73bは、例えば、本船2及びタグボート3の接続解除位置情報に基づいて、本船2とタグボート3とが接続解除位置となったタイミングで表示される。接続位置情報及び接続解除位置情報は推奨航路から導き出されるものであって、推奨航路の設定情報に含まれていてもよいし、情報処理装置40のオペレータが情報処理装置40を操作して任意のタイミングで接続指示テキスト73a及び接続解除指示テキスト73bを表示させてもよい。
【0056】
操船支援画面Sには、無線トランシーバで利用するVHFチャンネルの情報を表したチャンネル指示テキスト71が表示されている。
【0057】
操船支援画面Sには、通話ボタン72が設けられている。通話ボタン72が選択されると、コンピュータ21は通話開始の操作入力を受け付けて音声通話モジュールを起動させる。情報端末20のオペレータは、情報処理装置40及び他の情報端末20と音声通話が可能である。同様に、情報処理装置40のオペレータは、複数の情報端末20のうちいずれか一つ又は複数の組み合わせと音声通話が可能である。また、情報処理装置40及び複数の情報端末20に通話用カメラが搭載されている場合には、ビデオ通話が可能である。
【0058】
現況表示部98において、本船2の船速、舵の方向、及び推力に係る情報は表示/非表示を選択可能である。同様に、現況表示部98において、タグボート3の船速及び推力に係る情報は表示/非表示を選択可能である。操船支援画面Sには、複数の切替ボタンを表示した表示アイテム切替部99が設けられている。表示アイテム切替部99では、現況表示部98に示されるアイテムの表示/非表示を切り替えることができる。表示アイテム切替部99の複数の切替ボタンの中から現況ボタンが選択されると、本船2の船速、舵の方向、及び推力に係る情報の表示/非表示を切り替えるボタン、並びに、タグボート3の船速及び推力に係る情報の表示/非表示を切り替えるボタンが表示される。このように、現況表示部98では、表示される情報を減らして、所望の情報を切り出して表示することができる。
【0059】
図7に示す操船支援画面Sの現況表示部98aでは、本船2の船速に係る情報と、タグボート3の船速に係る情報とが表示され、本船2の舵の方向、本船2及びタグボート3の推力に係る情報は非表示となっている。
【0060】
現況表示部98aには、本船2の対地針路及び対地速度に基づいて、本船2の船速を表した速度ベクトル69が表示される。更に、現況表示部98aには、タグボート3の対地針路及び対地速度に基づいて、タグボート3の船速を表したタグ船速ベクトル96が表示される。タグ船速ベクトル96は、タグボート図形3sの船首を起点とし、タグボート3の対地針路を向き、タグボート3の対地速度と対応する長さを有する矢印である。但し、タグ船速ベクトル96に加えて、タグボート3の船速が数値で示されてもよい。
【0061】
図8に示す操船支援画面Sの現況表示部98bでは、本船2の推力に係る情報と、タグボート3の推力に係る情報とが表示され、本船2の舵の方向、本船2及びタグボート3の船速に係る情報は非表示となっている。
【0062】
現況表示部98bには、推力演算モジュールが求めた本船2とタグボート3の推力に基づいて、本船2に働く推力の向き及び大きさを表した本船推力ベクトル65aと、タグボート3に働く推力の向き及び大きさを表したタグボート推力ベクトル66aとが表示される。現況表示部98bには、本船合成推力75が表示されてもよい。本船推力ベクトル65aは、本船2の推進機の位置を起点とし、並進推力の方向を向き、並進推力の大きさに対応した長さを有する実線の矢印(有向線分)である。タグボート推力ベクトル66aは、タグボート3の推進機の位置を起点とし、並進推力の発生方向を向き、並進推力の大きさに対応した長さを有する実線の矢印である。
【0063】
更に、現況表示部98bには、本船2への推力指令の向き及び大きさを表した本船推力指令ベクトル65bと、タグボート3への推力指令の向き及び大きさを表したタグボート推力指令ベクトル66bとが表示されてもよい。
【0064】
本船推力指令ベクトル65bは、推力の作用点86(押し点又は曳き点)を起点とし、推力の方向を向き、推力と対応する長さを有する鎖線の矢印である。タグボート推力指令ベクトル66bは、タグボート推力指令ベクトル66bは、タグボート3の推進機の位置を起点とし、推力の発生方向を向き、推力の大きさに対応した長さを有する鎖線の矢印である。
【0065】
本船推力指令ベクトル65b及びタグボート推力指令ベクトル66bの近傍には、指令の内容がテキストで表示される。例えば、指令の内容は、単位「N」「PS」を付けた絶対値で表示される。例えば、指令の内容は、定格出力に対するパーセンテージで表示される。例えば、指令の内容は、「前進スロー」「前進フル」などの従来の曳船の指揮用語で表示される。
【0066】
上記の現況表示部98bでは、本船推力ベクトル65aと本船推力指令ベクトル65bとが重畳して示されている。また、タグボート推力ベクトル66aとタグボート推力指令ベクトル66bとが重畳して示されている。これにより、現在生じている推力(即ち、出力値)と、指令に応じてこれから生じ得る推力(即ち、指示値)とを、比較することができる。また、現況表示部98bを見た当事者は、今後の推力の変化を直感的に認識することができる。これにより当事者による指令の誤認を防ぐことができ、また、当事者間で指令への認識を共有することができる。
【0067】
本船2への推力指令の向き及び大きさ、及び、タグボート3に働く推力の向き及び大きさは、本船船長(又は水先人)が操作する情報端末20又は情報処理装置40でから入力される。換言すれば、本船船長(又は水先人)の操作する情報端末20又は情報処理装置40では、推力に関する指令の入力が許容される。
【0068】
図9(A)は本船2に設定された押し点36を示す図、図9(B)は本船2に設定された曳き点37を示す図である。図9(A)に示すように、タグボート3が本船2を押圧する際にタグボート3が接触する本船2上の押し点36と、図9(B)に示すように、タグボート3が本船2を曳航する際にタグラインが接続される本船2上の曳き点37とは、船舶ごとに予め定められている。タグボート3の押し曳き指令は、押し点36又は曳き点37の船体相対位置と、そこに与えるべき推力の大きさと向きとからなる。指令の入力を容易とするために、押し点36又は曳き点37の位置の指令は、情報処理装置40のディスプレイ441上で表示された押し点36及び曳き点37の中から選択できるように構成されているとよい。また、与えるべき推力の大きさと向きの指令は、入力装置43で受け付けられ、ディスプレイ441上にベクトルや数値で表示されるように構成されているとよい。
【0069】
操船支援画面Sの現況表示部98には、操船指示に関する情報を示すことができる。図10は、操船指示に関する情報が表示された操船支援画面S3を示す図である。操船支援画面S3は、情報処理装置40のコンピュータ41のプロセッサ411が表示プログラム7を実行することにより、ディスプレイ441に表示される。操船支援画面S3の表示アイテム切替部99では、現況表示部98に表示する操船指示に関する情報の表示/非表示を選択することができる。操船指示に関する情報は、例えば、各タグボートについての推力、押し位置、曳き位置、及び経路である。図10に例示された操船支援画面S3の現況表示部98では、海図画像60上に、本船2の位置及び方位を表した本船図形2sと、タグボート3の位置及び方位を表したタグボート図形3sとが表示され、更に、操船指示に関する情報が表示される。
【0070】
操船支援画面S3に複数のタグボート図形3sが表示される場合には、タグボート図形3sと推力指令ベクトル87の組み合わせが明確となるように、関連付けて表示される。関連付けの方法としては、タグボート図形3sとそれに対応する推力指令ベクトル87の組み合わせが色で区別される、推力指令ベクトル87にタグボート3の船名を表したラベルを付ける、推力指令ベクトル87の起点(作用点86)とタグボート図形3sとを鎖線で結ぶ、などが例示される。指揮者(水先人又は本船船長)の操作する端末では、操船支援画面S3において推力の指示の入力が許容され、タグボート3が本船2に与える推力を推力指令ベクトル87として入力することができる。
【0071】
操船支援画面Sの現況表示部98には、遠隔カメラ34の撮影画像82を示すことができる。図6に戻って、操船支援画面Sの表示アイテム切替部99に設けられた複数の切替ボタンからモニタボタンが選択されると、コンピュータ21はモニタを選択するボタンが設けられた表示アイテム切替部99を含む操船支援画面S2を表示させる。
【0072】
図11は、モニタを選択するボタンが設けられた操船支援画面S2を示す図である。操船支援画面S2の表示アイテム切替部99では、現況表示部98に表示する撮影画像82を切り替えるボタンが表示されている。図11に例示される操船支援画面S2の表示アイテム切替部99では、タグ1、タグ2、及びタグ3の各タグボート3のモニタがオンとなっている。そして、操船支援画面S2の現況表示部98では、海図画像60、本船図形2s、タグボート図形3sに加えて、複数の撮影画像82(映像)が一覧できるように並べて表示されている。
【0073】
各撮影画像82には、「TAG1」「TAG2」「TAG3」のラベルが付けられる。ラベルは、その画像が撮像された遠隔カメラ34が搭載されたタグボート3の識別情報を示す。本例では、遠隔カメラ34は各タグボート3の船首に前向きに設置されており、各タグボート3から前方を見た撮影画像82が表示されている。この撮影画像82は、タグボート3の上空から前方を見渡すようにタグボート3の中央にあるマスト39に配置された遠隔カメラ34で撮影されたものである。このように撮影画像82が示された現況表示部98から、「TAG1」のラベルが付けられたタグボート3がタグラインで接続された本船2の船首を曳き、「TAG2」のラベルが付けられたタグボート3が本船2の前方側部を押し、「TAG3」のラベルが付けられたタグボート3が本船2の後方側部を押している様子が明らかとなる。これにより、操船支援画面S2を見た水先人や本船船長は、タグボート3の上空から前方を見渡している状況をほぼリアルタイムで把握することができ、ブリッジを行き来すること無くタグ操船者の状況を推定し、タグ操船者に指示を出すことができる。
【0074】
上記において複数の撮影画像82は、タグボート3に搭載された遠隔カメラ34で撮像されたものであるが、本船2や岸壁に配置された遠隔カメラ34の撮影画像82が含まれていてもよい。
【0075】
操船支援画面Sの現況表示部98には、航路計画を示すことができる。図6に戻って、表示アイテム切替部99に設けられた切替ボタンから航路計画ボタンが選択されると、コンピュータ21は、ディスプレイ241に航路計画の表示/非表示を切り替えるボタンが設けられた操船支援画面S4を表示させる。
【0076】
図12は、航路計画の表示/非表示を切り替えるボタンが設けられた操船支援画面S4を示す図である。操船支援画面S4の表示アイテム切替部99には、現況表示部98への航路計画の表示/非表示を切り替えるボタンが設けられている。
【0077】
図12に例示する操船支援画面S4の現況表示部98には、本船2の対地針路及び対地速度に基づいて、本船2の船速を表した速度ベクトル69が表示されている。更に、操船支援画面S4には、タグボート3の対地針路及び対地速度に基づいて、タグボート3の船速を表したタグ船速ベクトル96が表示されている。
【0078】
操船支援画面S4の現況表示部98には、航路計画モジュールで設定された推奨航路に基づいて、本船2の推奨航路84が海図画像60に重ねて表示される。推奨航路84は、本例では、現在の本船図形2sの位置から目標着岸位置まで連続する鎖線として示されている。推奨航路84上には、複数のウエイポイント97が表示されている。ウエイポイント97は、本例では、船型及び丸囲み数字で示されている。
【0079】
操船支援画面S4の現況表示部98には、ズームイン・ズームアウトの倍率変更ボタン83が設けられている。倍率変更ボタン83でズームインが選択されると、コンピュータ41は操船支援画面S4の表示倍率の変更の指令を受け付けて、操船支援画面S4が部分的に拡大された操船支援画面S5をディスプレイ241に表示させる。但し、本船2がウエイポイント97に近づくと、そのウエイポイント97の詳細が表示されるように自動で画面の倍率が変更されてもよい。このような操船支援画面S4,S5を見た当事者は、本船2が入港してから着岸するまでの航路全体を把握できるとともに、各ウエイポイント97における本船2とタグボート3との関係を把握することができる。なお、特に説明しないが操船支援画面Sの少なくとも現況表示部98は、全体的に又は部分的に任意に表示の拡大縮小が可能である。
【0080】
図13は、航路計画が示された操船支援画面S5を示す図である。操船支援画面S5の現況表示部98には、複数のウエイポイント97のうち第3ウエイポイント(丸3)、第4ウエイポイント(丸4)、及び、第5ウエイポイント(丸5)が示されている。第5ウエイポイント(丸5)は目標着岸位置と対応している。各ウエイポイント97には、本船図形2sが表示されて、この本船図形2s上に速度ベクトル69及び舵図形67が重ねて表示されている。また、第4ウエイポイント(丸4)と第5ウエイポイント(丸5)では、本船2を支援するタグボート3を表したタグボート図形3sが表示されている。
【0081】
第1ウエイポイント(丸1)から第3ウエイポイント(丸3)までは、本船2はタグボート3の支援を受けずに航行する。この間、本船2は自身の推進機から推進力を得ており、第1ウエイポイント(丸1)から第3ウエイポイント(丸3)までの適宜位置(例えば、港湾に入ったところ)で推進機が停止する。本船2の推進機が稼働している間は、本船2とタグボート3との接触を回避するため、タグボート3を本船2から離しておく必要がある。そこで、情報処理装置40及び情報端末20は、本船2と接触の可能性のあるタグボート3に対する退避指示をディスプレイ241,441に表示することができる。
【0082】
図14は、退避指示が示された操船支援画面S6を示す図である。操船支援画面S6の現況表示部98には、本船図形2sと、タグボート図形3sと、侵入禁止領域93とが表示される。侵入禁止領域93は予め設定されている。侵入禁止領域93は、絶対座標で設定されてもよいし、本船2を基準とした相対座標として設定されていてもよい。図14に示す例では、侵入禁止領域93は本船図形2sを取り囲む矩形形状の領域であるが、侵入禁止領域93は任意の形状であってよい。また、侵入禁止領域93は、情報処理装置40のディスプレイ441上でその範囲を設定できるように構成されているとよい。
【0083】
操船支援画面S6の現況表示部98では、侵入禁止領域93内に存在するタグボート3に対し、警告が表示される。図14に示す例では、侵入禁止領域93内に存在するタグボート3は、侵入禁止領域93外に存在するタグボート3とは異なる色で表示され、点滅表示され、更に、「要退避」のテキストの吹き出しが表示されている。このように、侵入禁止領域93から退避すべきタグボート3が操船支援画面S6上で明確に示される。
【0084】
当事者は、情報処理装置40及び各情報端末20を操作して、任意に退避指示を示した操船支援画面S6をディスプレイ241(及び/又はディスプレイ441)に表示させることができる。また、情報処理装置40は、航路のうち侵入禁止領域93が設定されている部分において本船2と各タグボート3との位置を監視し、侵入禁止領域93へタグボート3が侵入した際に、情報処理装置40及び各情報端末20に退避指示を示した操船支援画面S6を強制的に表示させることができる。
【0085】
図13に戻って、第4ウエイポイント(丸4)では、TAG1のタグボート3が本船2を押す位置まで移動し、TAG2のタグボート3が本船2を曳く位置まで移動してタグラインで接続される。情報処理装置40及び情報端末20は、タグボート3が本船2へアプローチする際のタグボート3の航路を示した操船支援画面S7をディスプレイ241,441に表示させることができる。
【0086】
図15は、1隻のタグボート3が本船2へアプローチする際のタグボート3の航路を示した操船支援画面S7を示す図である。操船支援画面S7の現況表示部98には、本船2の位置及び方位を表した本船図形2sと、タグボート3の位置及び方位を表したタグボート図形3sとが表示される。操船支援画面S7の現況表示部98には、タグボート3が本船2へアプローチする際の到着ポイント90と少なくとも1つのウエイポイント89とが示されている。ウエイポイント89どうしの間、ウエイポイント89と到着ポイント90との間を適切な補完関数で補完することにより、タグボート図形3sからウエイポイント89を通って到着ポイント90に至るアプローチ航路88を計画することができる。操船支援画面S7において、アプローチ航路88は鎖線で示されている。タグオペレータは、操船支援画面S7を視認して、タグボート3がアプローチ航路88に沿って航行するように、タグボート3を操船することができる。
【0087】
操船支援画面S7の現況表示部98には、アプローチ航路88上に、タグボート3の実航路88’が重畳して表示される。アプローチ航路88と実航路88’とは、異なる態様で表示される。本例では、アプローチ航路88は鎖線で示され、実航路88’は実線で示されている。アプローチ航路88と実航路88’とを比較することにより、その差異が明確となる。
【0088】
図16は、複数隻のタグボート3が本船2にアプローチする際のタグボート3の航路を示した操船支援画面S8を示す図である。本船2にアプローチするタグボート3の数が増えても、上述の通り各タグボート3に対応してアプローチ航路88が表示される。但し、一つのアプローチ航路88と他のアプローチ航路88とが交差したり、アプローチ航路88どうしが所定の閾値よりも近接したりする場合には、操船支援画面S8に注意喚起領域92が表示されるとともに、「接触注意」のテキストの吹き出しが表示される。
【0089】
操船支援画面S7,S8は、情報端末20のプロセッサ211が表示プログラム7を実行することにより、ディスプレイ241に表示される。また、情報処理装置40は、本船2と各タグボート3との位置を監視し、タグボート3が本船2へアプローチを開始する直前に、情報処理装置40及び各情報端末20に操船支援画面S7,S8を強制的に表示させることができる。
【0090】
図13に戻って、第4ウエイポイント(丸4)から第5ウエイポイント(丸5)までは、本船2はタグボート3の支援を受けて湾内を推奨航路に沿って航行する。第5ウエイポイント(丸5)では、本船2とTAG2のタグボート3との接続が解除され、本船2はTAG1のタグボート3のみから支援を受ける。なお、操船支援画面S6,S7,S8では、タグボート3によって本船2が押し曳きされる際に、タグボート3が本船2へ与える推力が推力ベクトルとして表示されてもよい。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態に係る操船支援システム1は、本船2が少なくとも1隻のタグボート3で支援されながら岸壁に離岸又は着岸する際の操船支援システム1であって、岸壁を含む海図画像60、本船図形2s、及びタグボート図形3sを格納した記憶装置(メモリ212、412、記憶装置25,45)と、本船2の位置及び方位、並びに、タグボート3の位置及び方位を検出する少なくとも1つの検出装置(航海計器32)と、少なくとも1つのディスプレイ(241;441)と、ディスプレイ(241;441)に操船支援画面Sを表示させるプロセッサ(211;411)とを備える。プロセッサ(211;411)は表示プログラム7を実行することにより、操船状況データに基づいてディスプレイ(241;441)に操船支援画面Sを表示させる。
【0092】
操船支援画面Sは、記憶装置に記憶された岸壁61を含む海図画像60、検出装置で検出された本船2の位置及び方位に基づいて海図画像60上に配置された本船図形2s、検出装置で検出されたタグボート3の位置及び方位に基づいて海図画像60上に配置されたタグボート図形3s、並びに、タグボート図形3s上に配置されて、タグボート3に搭載された複数のタグボート推進機68の各々について当該タグボート推進機68によって生じる推進力の方向を表したタグボート推進機情報68sを含む。このタグボート推進機情報68sは、タグボート3に対するタグボート推進機68の相対的位置と、タグボート図形3sに対するタグボート推進機情報68sの相対的位置とが対応するように、操船支援画面S上に配置されている。
【0093】
また、本実施形態に係る操船支援方法は、本船2が少なくとも1隻のタグボート3で支援されながら岸壁に離岸又は着岸する際に、本船2及びタグボート3の操船を支援する情報端末(20;40)のプロセッサ(211;411)が少なくとも1つのディスプレイ(241;441)に操船支援画面Sを表示させるステップを含む。操船支援画面Sは、岸壁を含む海図画像60、本船2の位置及び方位に基づいて海図画像60上に配置された本船図形2s、タグボート3の位置及び方位に基づいて海図画像60上に配置されたタグボート図形3s、並びに、タグボート図形3s上に配置されて、タグボート3に搭載された複数のタグボート推進機68の各々について当該タグボート推進機68によって生じる推進力の方向を表したタグボート推進機情報68sを含む。ここで、タグボート推進機情報68sは、タグボート3に対するタグボート推進機68の相対的位置と、タグボート図形3sに対するタグボート推進機情報68sの相対的位置とが対応するように、現況表示部98上に配置されている。
【0094】
上記操船支援システム1及び方法によれば、ディスプレイ241,441に表示された海図画像60上に示された本船図形2sとタグボート図形3sによって本船2及びタグボート3の位置関係が示されたうえ、タグボート推進機情報68sによってタグボート3に搭載された個々の推進機の現況(例えば、推進機の稼働状況と推進力の発生方向)が示される。このように、ディスプレイ241,441に表示された一つの画面に、本船2とタグボート3の位置関係を示す情報と、タグボート3の個々の推進機の現況を示す情報とが併せて図示されているので、この画面を見た当事者はこれらの相互関係を直感的に把握することができる。タグボート3に搭載された個々の推進機の現況は、タグボート3に働く推力を推し量るうえで重要な情報であり、この情報を当事者が直感的に容易に把握することにより、より円滑で効率的な離着岸操船が可能となる。
【0095】
また、本実施形態に係る操船支援システム1において、操船支援画面Sは、本船図形2s上に配置され、本船2に搭載された舵の舵角を表した本船舵図形67を含んでいる。
【0096】
このように、操船支援画面Sに上記要素に加えて舵図形67が示されることによって、この画面を見た当事者は本船2の舵の方向を直感的に把握することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る操船支援システム1では、操船支援画面Sは、海図画像60上に配置され、本船2の進行方向及び速度を表した速度ベクトル69を更に含んでいる。
【0098】
このように速度ベクトル69が図示されることによって、当事者は本船2の進行方向及び速度を直感的に把握することができる。速度はタグボート3から本船2へ与えるべき推力を決定するために重要な情報であり、この情報を当事者が直感的に容易に把握することにより、より円滑で効率的な離着岸操船が可能となる。
【0099】
また、本実施形態に係る操船支援システム1では、操船支援画面Sは、本船2に働く推力の向き及び大きさを表した本船推力ベクトル65a(及び/又は、船推力指令ベクトル65b)と、タグボート3に働く推力の向き及び大きさを表したタグボート推力ベクトル66a(及び/又は、タグボート推力指令ベクトル66b)とを更に含んでいる。
【0100】
このように本船2に働く推力とタグボート3に働く推力とが併せて一つの画面に示されることによって、当事者は系に働いている推力を包括的に把握することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る操船支援システム1では、操船支援画面Sは、岸壁61の種類を表した岸壁種別図形62を更に含んでいる。
【0102】
岸壁61の種類は海図から直感的に把握することが難しいが、岸壁種別図形62として岸壁61の種類が図示されるので、当事者は岸壁61の種類を直感的に把握することができる。
【0103】
また、本実施形態に係る操船支援システム1では、操船支援画面Sは、本船2とタグボート3が接続位置となると現れ、タグボート3と本船2とをタグラインで接続するように指示する接続指示テキスト73aを更に含んでいる。また、本実施形態に係る操船支援システム1では、操船支援画面Sは、本船2とタグボート3が接続解除位置となると現れ、タグラインの接続を解除するように指示する接続解除指示テキスト73bを更に含んでいる。
【0104】
これにより、タグラインの接続・接続解除のタイミングを、ディスプレイ241,441を視認する全ての当事者で共通の認識とすることができる。よって、より円滑で効率的な離着岸操船が可能となる。
【0105】
また、本実施形態に係る操船支援システム1では、操船支援画面Sは、VHFチャンネルを表したチャンネル指示テキスト71を更に含んでいる。
【0106】
通常、離着岸操船の前にトランシーバの使用チャンネルを設定するが、混信や電波障害などによって作業中に通信が乱れることがある。このような場合に、安定した通信経路から使用すべきチャンネルが提示されることで、当事者はトランシーバの使用チャンネルをスムースに切り替えることが可能となる。
【0107】
また、本実施形態に係る操船支援システム1において、操船支援画面S(S7,S8)は、海図画像60上に重ねられたタグボート3が本船2へアプローチする際のタグボート3の計画航路(即ち、アプローチ航路88)を含んでいる。
【0108】
このようにタグボート3が本船2へアプローチする際の計画航路(アプローチ航路88)が当事者へ提示されることで、タグボート3のアプローチ航路88をディスプレイ241,441を視認する全ての当事者で共通の認識とすることができる。よって、より円滑で効率的な離着岸操船が可能となる。
【0109】
また、本実施形態に係る操船支援システム1において、操船支援画面S(S8)は、計画航路(即ち、アプローチ航路88)に重畳して表示されたタグボート3の実航路88’を更に含んでいる。
【0110】
このようにタグボート3の計画航路88と実航路88’とが一つの画面に示されることによって、実航路88’の計画航路88からのずれを容易に把握することができる。
【0111】
また、本実施形態においてタグボート3は複数隻であって、操船支援システム1は、タグボート3の各々に搭載され、タグボート3の前方を撮影するカメラ34とを更に備える。そして、操船支援画面S(S2)は、カメラ34で撮影された少なくとも1つの撮影画像82を含む。
【0112】
これにより、操船支援画面S(S2)に表示された撮影画像82を視認した水先人や本船船長は、タグボート3の前方を見渡している状況をほぼリアルタイムで把握することができ、ブリッジを行き来すること無くタグボート3の状況を推定し、タグ操船者に指示を出すことができる。
【0113】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【0114】
例えば、上記実施形態において、情報処理装置40は本船2又は陸上に設置されているが、情報処理装置40は情報端末20のように水先人又は本船船長に携帯される携帯情報端末として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 :操船支援システム
2 :本船
2s :本船図形
3 :タグボート
3s :タグボート図形
20 :情報端末
32 :航海計器(請求の範囲の検出装置の一例)
34 :遠隔カメラ
37 :推進機
60 :海図画像
61 :岸壁
62 :岸壁種別図形
65a :本船推力ベクトル
65b :本船推力指令ベクトル
66a :タグボート推力ベクトル
66b :タグボート推力指令ベクトル
68 :タグボート推進機情報
69 :速度ベクトル
70 :船推進機図形
71 :チャンネル指示テキスト
73 :接続指示テキスト
73a :接続指示テキスト
73b :接続解除指示テキスト
88 :アプローチ航路(計画航路)
88' :実航路
21 :コンピュータ
211 :プロセッサ
212 :メモリ(請求の範囲の記憶装置の一例)
241 :ディスプレイ
25 :記憶装置(請求の範囲の記憶装置の一例)
41 :コンピュータ
411 :プロセッサ
412 :メモリ(請求の範囲の記憶装置の一例)
441 :ディスプレイ
45 :記憶装置(請求の範囲の記憶装置の一例)
98 :現況表示部
99 :表示アイテム切替部
S :操船支援画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16