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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】留め具
(51)【国際特許分類】
   A44B 99/00 20100101AFI20231116BHJP
【FI】
A44B99/00 611G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019203446
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021074276
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛
(72)【発明者】
【氏名】高荷 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 萌
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慶
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0107547(US,A1)
【文献】実開昭59-115908(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0132570(US,A1)
【文献】特表2016-505306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着部材の第1部分と第2部分とに取着され、前記第1部分と前記第2部分とを分離可能に連結して保持する留め具(1,2,3)であって、
前記被着部材の前記第1部分に取着されるプラグ部材(10,30,50)と、前記被着部材の前記第2部分に取着されるとともに前記プラグ部材(10,30,50)に対して厚さ方向に重なるソケット部材(20,40,60)とを有し、
前記プラグ部材(10,30,50)は、第1マグネット(6)と、プラグ本体部(11,31,51)とを有し、
前記プラグ本体部(11,31,51)は、縫製により前記被着部材の前記第1部分に取り付けられる薄板状の第1ベース部(12,32,52)と、前記第1ベース部(12,32,52)に一体的に形成されるとともに前記第1マグネット(6)を収容する第1収容部(14,34,54)と、前記第1ベース部(12,32,52)から立ち上がるフック部(13,33,53)とを備え、
前記ソケット部材(20,40,60)は、第2マグネット(7)と、ソケット本体部(21,41,61)とを有し、
前記ソケット本体部(21,41,61)は、縫製により前記被着部材の前記第2部分に取り付けられる薄板状の第2ベース部(22,42,62)と、前記第2ベース部(22,42,62)に一体的に形成されるとともに前記第2マグネット(7)を収容する第2収容部(24,44,64)と、前記第2ベース部(22,42,62)に支持されるとともに前記フック部(13,33,53)を引っ掛けて係止する係止部(23,43,63)とを備え、
前記プラグ本体部(11,31,51)の前記フック部(13,33,53)と前記第1収容部(14,34,54)とは、前記厚さ方向に直交する縦方向に、互いに位置をずらして設けられ、
前記ソケット本体部(21,41,61)の前記係止部(23,43,63)と前記第2収容部(24,44,64)とは、前記縦方向に互いに位置をずらして設けられ、
前記プラグ部材(10,30,50)の前記フック部(13,33,53)と前記ソケット部材(20,40,60)の前記係止部(23,43,63)とは、前記厚さ方向と前記縦方向とに直交する横方向に沿って配され、且つ、前記フック部(13,33,53)が前記係止部(23,43,63)に係止されたときに前記フック部(13,33,53)の先端部が前記係止部(23,43,63)の裏面側に回り込む形態を有し、
前記係止部(23,43)に対して前記縦方向に隣接して配されるとともに前記第2ベース部(22,42)から隆起する隆起部(27,47)、又は前記フック部(53)の周囲を取り囲むように配されるとともに前記第1ベース部(52)から隆起する隆起部(57)が、前記プラグ部材(10,30,50)と前記ソケット部材(20,40,60)との間の隙間を埋める又は小さくするように設けられている
ことを特徴とする留め具。
【請求項2】
前記プラグ部材(10,30)の前記第1収容部(14,34)は、前記ソケット部材(20,40)に当接する第1当接面(14a)と、前記第1当接面(14a)に突設される第1ガイド部(15,35)又は凹設される第1溝部とを有し、
前記ソケット部材(20,40)の前記第2収容部(24,44)は、前記プラグ部材(10,30)の前記第1当接面(14a)に当接する第2当接面(24a)と、前記第2当接面(24a)に凹設される第2溝部(25,45)又は突設される第2ガイド部とを有し、
前記第1ガイド部(15,35)又は前記第1溝部と、前記第2溝部(25,45)又は前記第2ガイド部とは、前記縦方向に沿って設けられ、且つ、互いに係合する
請求項1記載の留め具。
【請求項3】
前記第1ガイド部(15,35)又は前記第1溝部は、前記第1当接面(14a)における前記横方向の側縁部に配され、
前記第2溝部(25,45)又は前記第2ガイド部は、前記第2当接面(24a)における前記横方向の側縁部に配されている
請求項2記載の留め具。
【請求項4】
前記フック部(13,33)の頂端面は、前記フック部(13,33)の先端部に向けて前記フック部(13,33)の厚さを漸減させる向きの傾斜面(13c)を有し、
前記係止部(23,43)の頂端面は、前記係止部(23,43)の先端部に向けて前記係止部(23,43)の厚さを漸減させる向きの傾斜面(23d)を有する
請求項1~3のいずれかに記載の留め具。
【請求項5】
前記プラグ本体部(11,31)は、前記第1ベース部(12,32)から立ち上がるとともに前記第1収容部(14,34)と前記フック部(13,33)を連結する一対の補強壁部(16,36)と、前記フック部(13,33)の背面部に設けられるとともに前記プラグ本体部(11,31)及び前記ソケット本体部(21,41)間の隙間を埋める又は小さくする第1隙間調整リブ(17,37)とを有し、
前記ソケット本体部(21,41)は、前記係止部(23,43)における前記横方向の外側に設けられるとともに前記ソケット本体部(21,41)及び前記プラグ本体部(11,31)間の隙間を埋める又は小さくする第2隙間調整リブ(26,46)とを有する
請求項1~4のいずれかに記載の留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着部材の第1部分と第2部分とを分離可能に連結して保持する留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
ズボンやスカートなどのような衣服には、衣服を着脱する際に開閉する開閉部が設けられていることが多い。また、この衣服の開閉部における一方側の第1部分(例えば前身頃の上前部)と、他方側の第2部分(例えば前身頃の下前部)とには、一般的に、スライドファスナーが設けられているとともに、その第1部分と第2部分とを分離可能に連結して保持する留め具が設けられている。
【0003】
上述のような留め具の一つとして、例えばフックアンドアイ又はかぎフックと呼ばれる留め具が知られている。このフックアンドアイ(かぎフック)は、通常、衣服の上前部に取り付けられるフック部材と、下前部に取り付けられるアイ部材(受け部材)とを有しており、フック部材をアイ部材に引っ掛けて保持することにより衣服の上前部と下前部とを連結する。
【0004】
このようなフックアンドアイの一例が、実用新案登録第3204641号公報(特許文献1)に記載されている。例えば図13に示したように、特許文献1のフックアンドアイ80は、フック部材81とアイ部材(受け部材)91とを有する。フック部材81は、全体の断面がU字型を呈する形態を有する。このフック部材81は、同フック部材81の一対の脚部82が生地90を貫通して下座金83に係合することにより、生地90に取り付けられている。アイ部材91は、同アイ部材91の一対の脚部92が生地90を貫通して下座金93に係合することにより生地90に取り付けられている。アイ部材91には、フック部材81の一部を挿通可能な隙間が設けられている。
【0005】
特許文献1によれば、フック部材81が、フック部材81をアイ部材91に挿し抜きする縦方向の長さ(寸法)よりも横方向の長さを長くして形成されているため、フックアンドアイ80の全体を小さくできるとしている。また特許文献1には、フック部材81をアイ部材91に固定する仮固定手段が設けられているため、フック部材81とアイ部材91が連結されている状態では、フック部材81がアイ部材91から容易に離脱することはないとしている。
【0006】
ところで、例えば特表2016-505306号公報(特許文献2)には、ベルトの一端部と他端部とを分離可能に連結して保持する留め具として、図14に示したような留め具(クロージャ装置)100が記載されている。
【0007】
この特許文献2の留め具100は、ベルトの一端部に取り付けられる第1クロージャ部材110と、ベルトの他端部に取り付けられる第2クロージャ部材120との間に、磁石による磁気機構(磁気吸引力)が作用するように形成されている。この磁石の磁気機構により、第1クロージャ部材110を第2クロージャ部材120に対してスライドさせて連結する際に、第1クロージャ部材110のスライド動作をサポートしている。これによって、留め具(クロージャ装置)100を閉じる動作(連結動作)容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実用新案登録第3204641号公報
【文献】特表2016-505306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の一般的なフックアンドアイや、図13に示したような特許文献1のフックアンドアイ80において、衣服等に取り付けられたフック部材とアイ部材を連結させる操作や、連結しているフック部材とアイ部材を分離させる操作は、フック部材側とアイ部材側とをそれぞれ片手で保持し、フック部材をアイ部材に挿入させる又は抜脱させる操作を両手で行うことが必要とされる。しかし、利便性や操作性を高めるために、留め具の連結操作や分離操作を片手のみで行えるようにすることが要望されていた。
【0010】
例えば介護の現場において、要介護者が自分で着替えなどを行う場合や、補助者が要介護者を着替えさせる場合には、ゴムで伸び縮みするズボンが多く使用されているが、連結操作や分離操作を片手のみで行える留め具があれば、例えばスライドファスナー付きのズボンを容易に履くことが可能となる。それによって、要介護者が着衣可能な衣服の選択肢を広げることができる。またこの場合、連結操作や分離操作を片手のみで行えるようにするだけでなく、衣服の着衣時に、要介護者の動作等によって留め具が勝手に簡単に分離しないように、留め具が連結されている状態が安定して維持されることも必要となる。
【0011】
更に、例えば従来の一般的なフックアンドアイでは、要介護者の衣服が少し大きく、ゆったりしたものである場合、その衣服の緩みによってフックアンドアイのフック部材とアイ部材が分離し易くなるという欠点があった。一方、特許文献1のフックアンドアイ80の場合、フックアンドアイ80に仮固定手段が設けられているため、フック部材81とアイ部材91が分離し易いという問題は解消されるものの、仮固定手段を備えるフックアンドアイの連結操作や分離操作を片手のみで行うことが更に難しくなるという欠点があった。
【0012】
図14に示した特許文献2の留め具100は、その第1クロージャ部材110と第2クロージャ部材120を連結する際には、第2クロージャ部材120に対して第1クロージャ部材110の位置を合わせ、更に、第1クロージャ部材110を第2クロージャ部材120に向けて抑えながらスライドさせる。これによって、第1クロージャ部材110を第2クロージャ部材120に連結させることができるため、留め具100の連結操作を片手で行うことも可能である。
【0013】
しかし、留め具100の連結状態から第1クロージャ部材110を第2クロージャ部材120から分離させるときには、第2クロージャ部材120の作動機構121を移動させ、更に、第1クロージャ部材110をスライドさせることによって、第1クロージャ部材110と第2クロージャ部材120を分離させるため、留め具100の分離操作を片手で行うことは難しい場合もあった。
【0014】
また、特許文献2の留め具100は、第1クロージャ部材110及び第2クロージャ部材120の構造が非常に複雑であるため、留め具100の製造コストの増大を招く。更に、特許文献2の留め具100は、留め具100の構造上、厚く形成されるため、ベルト等の製品に対しては使用できるが、ズボンやスカートなどのような衣服の開閉部に使用する場合には、衣服の着衣時に違和感が生じない程度に厚さを薄くする等の改良を行う必要がある。
【0015】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、留め具の連結操作や分離操作を片手で容易に行うことが可能で、また、留め具の連結状態で留め具が取着された製品から連結方向に沿って引っ張られる力や緩める力を受けたとしても、その連結状態を維持し易くすることが可能な留め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明により提供される留め具は、被着部材の第1部分と第2部分とに取着され、前記第1部分と前記第2部分とを分離可能に連結して保持する留め具であって、前記被着部材の前記第1部分に取着されるプラグ部材と、前記被着部材の前記第2部分に取着されるとともに前記プラグ部材に対して厚さ方向に重なるソケット部材とを有し、前記プラグ部材は、第1マグネットと、プラグ本体部とを有し、前記プラグ本体部は、縫製により前記被着部材の前記第1部分に取り付けられる薄板状の第1ベース部と、前記第1ベース部に一体的に形成されるとともに前記第1マグネットを収容する第1収容部と、前記第1ベース部から立ち上がるフック部とを備え、前記ソケット部材は、第2マグネットと、ソケット本体部とを有し、前記ソケット本体部は、縫製により前記被着部材の前記第2部分に取り付けられる薄板状の第2ベース部と、前記第2ベース部に一体的に形成されるとともに前記第2マグネットを収容する第2収容部と、前記第2ベース部に支持されるとともに前記フック部を引っ掛けて係止する係止部とを備え、前記プラグ本体部の前記フック部と前記第1収容部とは、前記厚さ方向に直交する縦方向に、互いに位置をずらして設けられ、前記ソケット本体部の前記係止部と前記第2収容部とは、前記縦方向に互いに位置をずらして設けられ、前記プラグ部材の前記フック部と前記ソケット部材の前記係止部とは、前記厚さ方向と前記縦方向とに直交する横方向に沿って配され、且つ、前記フック部が前記係止部に係止されたときに前記フック部の先端部が前記係止部の裏面側に回り込む形態を有し、前記係止部に対して前記縦方向に隣接して配されるとともに前記第2ベース部から隆起する隆起部、又は前記フック部の周囲を取り囲むように配されるとともに前記第1ベース部から隆起する隆起部が、前記プラグ部材と前記ソケット部材との間の隙間を埋める又は小さくするように設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る留め具において、前記プラグ部材の前記第1収容部は、前記ソケット部材に当接する第1当接面と、前記第1当接面に突設される第1ガイド部又は凹設される第1溝部とを有し、前記ソケット部材の前記第2収容部は、前記プラグ部材の前記第1当接面に当接する第2当接面と、前記第2当接面に凹設される第2溝部又は突設される第2ガイド部とを有し、前記第1ガイド部又は前記第1溝部と、前記第2溝部又は前記第2ガイド部とは、前記縦方向に沿って設けられ、且つ、互いに係合することが好ましい。
【0018】
この場合、前記第1ガイド部又は前記第1溝部は、前記第1当接面における前記横方向の側縁部に配され、前記第2溝部又は前記第2ガイド部は、前記第2当接面における前記横方向の側縁部に配されていることが好ましい。
【0019】
また本発明において、前記フック部の頂端面は、前記フック部の先端部に向けて前記フック部の厚さを漸減させる向きの傾斜面を有し、前記係止部の頂端面は、前記係止部の先端部に向けて前記係止部の厚さを漸減させる向きの傾斜面を有することが好ましい。
【0020】
更に、前記プラグ本体部は、前記第1ベース部から立ち上がるとともに前記第1収容部と前記フック部を連結する一対の補強壁部と、前記フック部の背面部に設けられるとともに前記プラグ本体部及び前記ソケット本体部間の隙間を埋める又は小さくする第1隙間調整リブとを有し、前記ソケット本体部は、前記係止部における前記横方向の外側に設けられるとともに前記ソケット本体部及び前記プラグ本体部間の隙間を埋める又は小さくする第2隙間調整リブとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
上述のような本発明の留め具によれば、プラグ部材をソケット部材に連結させるときに、例えば片手でプラグ部材を保持してソケット部材に近付けることによって、第1マグネットと第2マグネット間の磁力を利用して、プラグ部材を片手だけでソケット部材に容易に連結できる。また、プラグ部材とソケット部材が連結されている状態から、例えば片手でプラグ部材を保持し、磁石の磁力に抗してソケット部材からめくるように剥がすことによって、片手だけでプラグ部材をソケット部材から容易に分離できる。
【0022】
また本発明の留め具では、プラグ本体部のフック部と第1収容部とが、縦方向に互いに位置をずらして設けられており、ソケット本体部の係止部と第2収容部とが、縦方向に互いに位置をずらして設けられている。更に、プラグ部材のフック部とソケット部材の係止部とが、横方向に沿って配されている。これにより、留め具全体を薄く形成することが可能となるため、ズボンやスカートなどのような衣服の開閉部に好適に使用できる。また、本発明の留め具では、プラグ部材とソケット部材とを比較的簡単な構造で形成できるため、例えば金型に要するコストを削減し、留め具を安価に提供できる。
【0023】
また本発明の留め具が連結されているときには、フック部は、そのフック部の先端部が係止部の裏面側に回り込ませた状態で係止部に係止される。更に、第1マグネットと第2マグネットとが磁力で互いに引き合っている。このため、連結状態の留め具が、例えば留め具が取着された製品から、縦方向に沿うような引っ張られる力を受けた場合には、フック部と係止部間の係合と、第1マグネット及び第2マグネット間の磁力によって、留め具の連結状態を安定して維持できる。また、連結されている留め具が、例えば留め具が取着された製品から、縦方向(連結方向)に沿って緩める方向の力を受けても、第1マグネット及び第2マグネット間の磁力によって、留め具の連結状態を安定して維持できる。
【0024】
このような本発明の留め具において、プラグ部材の第1収容部は、ソケット部材に当接する第1当接面と、第1当接面に突設される第1ガイド部又は凹設される第1溝部とを有する。また、ソケット部材の第2収容部は、プラグ部材の第1当接面に当接する第2当接面と、第2当接面に凹設される第2溝部又は突設される第2ガイド部とを有する。更に、第1ガイド部又は第1溝部と、第2溝部又は第2ガイド部とは、縦方向に沿って設けられ、且つ、互いに係合可能に形成されている。
【0025】
これにより、プラグ部材とソケット部材を重ねて安定して連結でき、また、プラグ部材とソケット部材の連結状態を安定して維持できる。特に、互いに係合可能な第1ガイド部又は第1溝部と、第2溝部又は第2ガイド部とが縦方向に沿って設けられていることにより、連結状態のプラグ部材及びソケット部材の一方が、他方に対して横方向にずれることを防止できる。
【0026】
この場合、第1ガイド部又は第1溝部は、第1当接面における横方向の側縁部に配されており、第2溝部又は第2ガイド部は、第2当接面における横方向の側縁部に配されていることによって、留め具をより薄く形成することが可能となる。
【0027】
また本発明において、フック部の頂端面は、フック部の先端部に向けてフック部の厚さを漸減させる向きの傾斜面を有し、係止部の頂端面は、係止部の先端部に向けて係止部の厚さを漸減させる向きの傾斜面を有する。これにより、プラグ部材とソケット部材を連結させるときに、プラグ部材のフック部を係止部の頂端面に引っ掛かり難くするこができ、それによって、フック部の先端部を係止部の裏面側に円滑に回り込ませて、フック部を係止部に円滑に係止させることができる。
【0028】
更に本発明において、プラグ本体部は、第1収容部及びフック部を支持する薄板状の第1ベース部と、第1ベース部から立ち上がるとともに第1収容部とフック部を連結する一対の補強壁部と、フック部の背面部に設けられるとともにプラグ本体部及びソケット本体部間の隙間を埋める又は小さくする第1隙間調整リブとを有する。
【0029】
プラグ本体部が上述のような第1ベース部を有することによって、衣服の生地等のような被着部材に対してプラグ部材を縫製等によって容易に取り付けて固定できる。プラグ本体部に一対の補強壁部が設けられていることによって、フック部の強度を高めて、フック部に変形を生じさせ難くすることができる。また、プラグ本体部に第1隙間調整リブが設けられていることによって、例えばプラグ部材とソケット部材が連結された状態で縦方向に沿うような引っ張り力を受けても、プラグ部材とソケット部材の間に隙間が形成され難くすることができ、それによって、プラグ部材とソケット部材の連結状態を安定して維持できる。
【0030】
ソケット本体部は、第2収容部及び係止部を支持する薄板状の第2ベース部と、係止部における横方向の外側に設けられるとともにソケット本体部及びプラグ本体部間の隙間を埋める又は小さくする第2隙間調整リブとを有する。ソケット本体部が第2ベース部を有することによって、プラグ本体部の場合と同様に、被着部材に対してソケット部材を縫製等によって容易に取り付けて固定できる。また、第2隙間調整リブが設けられていることによって、例えばプラグ部材とソケット部材が連結された状態で縦方向に沿うような引っ張り力を受けても、プラグ部材とソケット部材の間に隙間が形成され難くすることができ、それによって、プラグ部材とソケット部材の連結状態を安定して維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例1に係る留め具を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示した留め具を横方向から見た側面図である。
図3図1に示した留め具を分解するとともにソケット部材を厚さ方向の下に配置した状態で示す分解斜視図である。
図4図1に示した留め具を分解するとともにプラグ部材を厚さ方向の下に配置した状態で示す分解斜視図である。
図5図1に示した留め具を横方向の中央部で縦方向に沿って切断した断面図である。
図6】本発明の実施例2に係る留め具を横方向から見た側面図である。
図7図6に示した留め具を分解するとともにソケット部材を厚さ方向の下に配置した状態で示す分解斜視図である。
図8図6に示した留め具を分解するとともにプラグ部材を厚さ方向の下に配置した状態で示す分解斜視図である。
図9】本発明の実施例3に係る留め具を横方向から見た側面図である。
図10図9に示した留め具を分解するとともにソケット部材を厚さ方向の下に配置した状態で示す分解斜視図である。
図11図9に示した留め具を分解するとともにプラグ部材を厚さ方向の下に配置した状態で示す分解斜視図である。
図12図9に示した留め具を横方向の中央部で縦方向に沿って切断した断面図である。
図13】従来のフックアンドアイを示す斜視図である。
図14】従来の留め具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、且つ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0033】
例えば以下の実施例1~実施例3に係る留め具では、留め具のプラグ部材をズボンにおける前身頃の上前部に取着し、留め具のソケット部材をズボンにおける前身頃の下前部に取着する場合について説明する。しかし本発明では、留め具のプラグ部材とソケット部材を、前身頃の下前部と上前部にそれぞれ取着しても良い。また、本発明の留め具は、以下に説明するように、ズボン以外の製品に取り付けて使用することも可能である。
【実施例1】
【0034】
図1及び図2は、本実施例1に係る留め具を模式的に示す斜視図及び側面図である。図3は、分解された留め具をソケット部材が下に配置された状態で示す分解斜視図であり、図4は、分解された留め具をプラグ部材が下に配置された状態で示す分解斜視図である。図5は、留め具の断面図である。
【0035】
また、以下の説明において、留め具の厚さ方向とは、留め具のプラグ部材及びソケット部材が取着される生地の厚さ方向と同じ方向であり、また、プラグ部材とソケット部材が連結されたときに重なる方向を言う。この厚さ方向は、プラグ部材の後述する第1ベース部、及びソケット部材の後述する第2ベース部に対して直交する上下方向と言うこともできる。
【0036】
留め具の縦方向は、厚さ方向に直交する方向の1つであり、本実施例1並びに後述する実施例2及び3の場合、プラグ部材における略長方形状の第1ベース部及びソケット部材における略長方形状の第2ベース部の長手方向に平行な方向を言う。この場合、縦方向は、前後方向と言い換えることもできる。また、縦方向は、留め具がズボンの前身頃に取り付けられたときのズボンにおけるウエストベルト部の胴回り方向に沿った方向である。
【0037】
留め具の横方向は、留め具の厚さ方向と縦方向とに直交する方向であり、プラグ部材における第1ベース部及びソケット部材における第2ベース部の短手方向に平行な方向を言い、左右方向と言い換えることもできる。また、横方向は、留め具がズボンの前身頃に取り付けられたときのズボンにおけるウエストベルト部の幅方向に沿った方向である。
【0038】
本実施例1の留め具1は、ズボンにおける前身頃の上前部(第1部分)の裏面に取着されるプラグ部材(第1部材)10と、ズボンにおける前身頃の下前部(第2部分)の表面に取着され、プラグ部材10を連結させるソケット部材(第2部材)20とを有する。この留め具1のプラグ部材10及びソケット部材20は、ズボンの前身頃を形成する生地に載置された状態で、ミシンによる縫製加工を行うことによってそれぞれの生地に取り付けられる。
【0039】
プラグ部材10は、例えば図3及び図4に示すように、合成樹脂製のプラグ本体部11と、プラグ本体部11に収容されて保持される第1マグネット6とを有する。ソケット部材20は、合成樹脂製のソケット本体部21と、ソケット本体部21に収容されて保持される第2マグネット7とを有する。本実施例1のプラグ本体部11及びソケット本体部21は、ナイロン又はポリプロピレン等の合成樹脂により形成されている。なお本発明において、プラグ本体部11及びソケット本体部21の材質は特に限定されず、例えばプラグ本体部11及びソケット本体部21は、金属で形成されていても良い。
【0040】
第1マグネット6及び第2マグネット7は、ネオジム磁石により形成されている。本実施例1の第1マグネット6及び第2マグネット7は、それぞれ円盤状の形状を有する。また、第1マグネット6及び第2マグネット7は、プラグ本体部11の後述する第1収容部14、及びソケット本体部21の後述する第2収容部24にそれぞれ挿入、収容されて、例えば接着剤を第1収容部14及び第2収容部24に蓋をするように注入することによってそれぞれ固定されている。更に本実施例1では、第1マグネット6及び第2マグネット7の吸着力を増大させるために、第1マグネット6及び第2マグネット7にヨークをそれぞれ被せて固定しても良い。なお本発明において、第1マグネット6及び第2マグネット7の形状、並びに、プラグ本体部11及びソケット本体部21への固定方法及び固定手段は特に限定されない。
【0041】
本実施例1のプラグ本体部11は、薄板状の第1ベース部12と、第1ベース部12から立ち上がるフック部13と、第1ベース部12に一体的に形成される第1収容部14と、第1収容部14に突設される左右一対の第1ガイド部15と、フック部13と第1収容部14を連結する左右一対の補強壁部16と、フック部13の背面部に設けられる2つの第1隙間調整リブ17とを有する。
【0042】
プラグ本体部11のフック部13と第1収容部14とは、縦方向に位置をずらして設けられており、互いに離間している。これにより、プラグ本体部11を薄く形成することができる。また、第1ベース部12のフック部13と第1収容部14との間には、厚さ方向に貫通する第1貫通孔部18が設けられている。この第1貫通孔部18の設置により、プラグ本体部11の成形に用いる金型を簡単な構造で形成可能となり、その結果、製造コストの削減が図れる。
【0043】
第1ベース部12は、厚さ方向(上方又は下方)から見たときに略長方形又は角丸長方形の形状を有する。第1ベース部12は、フック部13及び第1収容部14が突設される第1表面(外面)と、ズボンの生地に接する第2表面(内面)とを有しており、この第1ベース部12に、フック部13及び第1収容部14が支持されている。
【0044】
第1ベース部12の第1表面における前側及び後側の端縁部には、横方向に沿った横収容凹溝部12aが設けられ、左側及び右側の端縁部には、縦方向に沿った縦収容凹溝部12bが設けられている。ここで、端縁部とは、第1ベース部12の外周縁に沿った幅をもつ領域を言い、プラグ本体部11を上方から見た平面視において、フック部13及び第1収容部14の外側に配置される部分を言う。第1ベース部12の横収容凹溝部12a及び縦収容凹溝部12bは、プラグ部材10を生地に縫い付ける縫製加工を行うときにミシン針が刺通する部分であり、また、横収容凹溝部12a及び縦収容凹溝部12bには、その縫製加工で形成される縫製糸の縫製部が収容される。
【0045】
フック部13は、第1ベース部12の第1表面から立ち上がるフック胴部13aと、フック胴部13aの頂端部から第1収容部14側に曲がって延出するフック頭部13bとを有する(図5を参照)。フック頭部13bは、プラグ部材10をソケット部材20に連結させたときに、ソケット部材20の後述する係止部23の裏面側に進入可能な長さで第1収容部14に向けて突出している。
【0046】
また、フック部13は、横方向に沿って一定の断面形状を有して形成されている。フック部13のフック頂端面は、第1ベース部12から離れて配されており、このフック頂端面は、第1ベース部12(特に、第1ベース部12の第2表面)と平行又は略平行に配される平坦面と、平坦面からフック先端部に向けて下り傾斜する傾斜面13cとを有する。ここで、下り傾斜する傾斜面13cとは、第1ベース部12と平行な方向に対し、フック頭部13bの厚さを減少させるように傾斜する向きの面を言う(後述する係止部23の下り傾斜についても同様である)。
【0047】
第1収容部14は、第1ベース部12の第1表面から盛り上がって形成されている。この第1収容部14は、プラグ部材10をソケット部材20に連結させたときに、ソケット部材20の後述する第2収容部24に当接する第1当接面14aを有しており、この第1当接面14aは、第1ベース部12(特に、第1ベース部12の第2表面)と平行に配されている。また、第1収容部14には、円盤状の第1マグネット6を収容して保持する第1収容空間14bが設けられており、この第1収容空間14bは、第1ベース部12の第2表面に開口している。
【0048】
左右の第1ガイド部15は、第1当接面14aの左右側縁部に縦方向に沿ってそれぞれ配されており、また、第1当接面14aから第1ベース部12から離れる方向に突出している。左右の第1ガイド部15は、ソケット部材20の後述する第2溝部25に挿入可能な形状及び大きさを有する。
【0049】
左右の補強壁部16は、縦方向に離間するフック部13と第1収容部14の間に設けられている。各補強壁部16は、第1収容部14の左右側縁部からフック部13に向けて縦方向に延び、更に、フック部13の近傍で左右方向の内側に向けて曲がるように延びることによって、フック部13の左右側縁部に連結している。このような左右の補強壁部16が設けられていることによって、第1ベース部12の強度を高めることができる。また、フック部13の強度も高めて、フック部13に変形を生じさせ難くすることができる。
【0050】
また、プラグ部材10の補強壁部16は、プラグ部材10をソケット部材20に連結させたときにソケット部材20の係止部23の左右側端部に当接可能な高さで形成されている。例えばプラグ部材10をソケット部材20に適切な位置で連結させたときには、プラグ部材10の左右の補強壁部16とソケット部材20の係止部23の左右側端部とは互いに離れているものの、プラグ部材10の補強壁部16の高さが上述のように設定されていることにより、プラグ部材10とソケット部材20の位置が相対的に横方向にずれたときに、ソケット部材20の係止部23をプラグ部材10の補強壁部16に当接させることができる。それによって、プラグ部材10とソケット部材20の位置が横方向に大きくずれることを防ぎ、プラグ部材10とソケット部材20の連結状態を安定して維持できる。
【0051】
左右の第1隙間調整リブ17は、フック部13におけるフック先端部とは反対側に配される背面部に突設されている。この場合、フック部13の背面部は、縦方向において、フック部13の第1収容部14に向く側とは反対側を向く部分となる。この第1隙間調整リブ17の頂端面は、図2及び図5に示すように、フック部13におけるフック頂端面の平坦面と同じ平面を形成している。このような第1隙間調整リブ17が設けられていることによって、フック部13の強度を増大させることができる。
【0052】
また、第1隙間調整リブ17によって、プラグ部材10とソケット部材20を連結したときに、互いに当接する第1収容部14及び第2収容部24よりも縦方向のフック部13及び係止部23側の領域において、プラグ部材10とソケット部材20との間に形成される隙間を埋めること、又は小さくすることができる。それによって、プラグ部材10とソケット部材20の連結時に、例えば図5に矢印で示すような引っ張り力8をズボンの生地から受けたときに、プラグ部材10の第1当接面14aとソケット部材20の第2当接面24aとの間に隙間を形成され難くして、プラグ部材10とソケット部材20の連結状態を安定して維持できる。
【0053】
ソケット部材20のソケット本体部21は、薄板状の第2ベース部22と、第2ベース部22に一体的に形成される係止部23及び第2収容部24と、第2収容部24に凹設される左右一対の第2溝部25と、係止部23の左右外側に設けられる左右一対の第2隙間調整リブ26と、係止部23に対して縦方向に隣接して設けられるとともに第2ベース部22から隆起する隆起部27とを有する。
【0054】
ソケット本体部21の係止部23と第2収容部24とは、互いに縦方向に位置をずらして設けられている。これにより、ソケット本体部21を薄く形成できる。第2ベース部22の係止部23と隆起部27との間には、厚さ方向に貫通する第2貫通孔部28が設けられている。この第2貫通孔部28の設置により、ソケット本体部21の成形に用いる金型を簡単な構造で形成可能となり、その結果、製造コストの削減が図れる。
【0055】
第2ベース部22は、厚さ方向(上方又は下方)から見たときに略長方形又は角丸長方形の形状を有する。第2ベース部22は、係止部23及び第2収容部24が設けられる第1表面(外面)と、ズボンの生地に接する第2表面(内面)とを有しており、この第2ベース部22に、係止部23及び第2収容部24が支持されている。また、第2ベース部22は、第1ベース部12と同様に、前側及び後側の端縁部に横方向に沿って設けられる横収容凹溝部22aと、左側及び右側の端縁部に縦方向に沿って設けられる縦収容凹溝部22bとを有する。
【0056】
係止部23は、第2ベース部22の第1表面から立ち上がる支持壁部23aと、支持壁部23aの頂端部から縦方向の第2収容部24側とは反対の側に向けて延びる係止本体部23bと、係止部23の左右側端部に配されるとともに係止本体部23bと第2ベース部22間を連結する左右の連結壁部23cとを有する。
【0057】
係止部23の支持壁部23aと係止本体部23bは、横方向に沿って一定の断面形状を有して形成されている。また、本実施例1の係止部23には、左右の連結壁部23cから隆起部27側に向けて延びる左右の補強リブが設けられていても良い。これにより、係止部23の強度を増大できるとともに、係止部23にフック部13を係止させたときに、フック部13の位置が横方向にずれることを抑制できる。
【0058】
係止本体部23bは、第2ベース部22から離れて配されるとともにプラグ部材10に対面する又は対向する頂端面と、頂端面とは厚さ方向の反対側に配される裏面とを有する。また、係止本体部23bの頂端面は、係止本体部23bの先端部に向けて下り傾斜する傾斜面23dを有する。更に、係止部23には、プラグ部材10のフック部13の一部を係止部23内に進入させる開口部23eが、係止本体部23b、左右の連結壁部23c、及び隆起部27に囲まれて形成されている。
【0059】
第2収容部24は、第2ベース部22の第1表面から盛り上がって形成されている。この第2収容部24は、プラグ部材10をソケット部材20に連結させたときに、プラグ部材10の第1当接面14aに当接する第2当接面24aを有する。この第2当接面24aは、第2ベース部22の第2面と平行に配されている。また、第2収容部24には、円盤状の第2マグネット7を収容して保持するとともに第2ベース部22の第2表面に開口する第2収容空間24bが設けられている。
【0060】
左右の第2溝部25は、第2当接面24aの左右側縁部に、縦方向に沿って、それぞれ第2当接面24aから第2ベース部22に近づく方向に凹設されている。左右の第2溝部25は、プラグ部材10の第1ガイド部15を挿入して収容可能な形状及び大きさを有する。本実施例1の留め具1では、プラグ部材10をソケット部材20に連結させたときに、プラグ部材10の第1ガイド部15がソケット部材20の第2溝部25に収容されることによって、第1ガイド部15と第2溝部25とが互いに係合し、それによって、プラグ部材10及びソケット部材20の位置が横方向に相対的にずれることを防止している。
【0061】
また本実施例1において、プラグ部材10の第1ガイド部15とソケット部材20の第2溝部25とは、それぞれ第1収容部14及び第2収容部24の側縁部に設けられている。これにより、例えばプラグ部材の第1ガイド部とソケット部材の第2溝部とがそれぞれ第1収容部及び第2収容部の横方向における中央部寄りの位置に設けられている場合に比べて、プラグ部材10とソケット部材20が連結したときの留め具1全体の厚さを薄くできる。
【0062】
左右の第2隙間調整リブ26は、第2収容部24の第2当接面24aの高さ位置よりも、第2ベース部22から離れる方向に突出して形成されている。ソケット本体部21の隆起部27は、プラグ部材10とソケット部材20を連結したときに、プラグ部材10の第1隙間調整リブ17の頂端面に対面する又は対向する位置に設けられている。ソケット本体部21に、左右の第2隙間調整リブ26及び隆起部27が設けられていることによって、プラグ部材10とソケット部材20を連結したときに、第1収容部14及び第2収容部24よりも縦方向のフック部13及び係止部23側の領域において、プラグ部材10とソケット部材20との間に形成される隙間を埋める、又は小さくすることができる。それによって、上述したようにプラグ部材10とソケット部材20の連結状態を安定して維持できる。
【0063】
上述のような留め具1のプラグ部材10は、ズボンにおける前身頃の上前部を形成する生地の裏面に、ミシンによる通常の縫製加工によって取り付けられる。また、ソケット部材20は、ズボンにおける前身頃の下前部を形成する生地の表面に、ミシンによる通常の縫製加工によって取り付けられる。また、このようにプラグ部材10及びソケット部材20をそれぞれ生地に縫い付けることによって、プラグ部材10における第1収容部14の開口と、ソケット部材20における第2収容部24の開口とをそれぞれ生地で覆って塞ぐことができる。このため、第1マグネット6及び第2マグネット7が、プラグ本体部11及びソケット本体部21からそれぞれ脱落することを確実に防止できる。
【0064】
なお本発明において、プラグ部材10及びソケット部材20を、生地等の被着部材に取り付ける方法及び手段は特に限定されるものではない。例えば、プラグ部材10の第1ベース部12と、ソケット部材20の第2ベース部22とに、上述した縦収容凹溝部12b及び横収容凹溝部12aを設ける代わりに、円形状の貫通孔を設けることによって、リベット等を用いてプラグ部材10及びソケット部材20を被着部材に取り付けることも可能である。
【0065】
ズボンの前身頃の上前部及び下前部にプラグ部材10及びソケット部材20がそれぞれ取着された本実施例1の留め具1では、例えばズボンの上前部を片手で掴んで、上前部のプラグ部材10を、下前部のソケット部材20に近づけることによって、プラグ部材10の第1マグネット6とソケット部材20の第2マグネット7とが引き合い、それによって、プラグ部材10とソケット部材20とを留め具1の厚さ方向に重ねて連結させることができる。以下に、プラグ部材10とソケット部材20の連結動作について具体的に説明する。
【0066】
本実施例1において、プラグ部材10におけるフック部13の頂端面には、フック先端部に向けて下り傾斜する傾斜面13cが設けられているとともに、ソケット部材20における係止部23の頂端面には、係止本体部23bの先端部に向けて下り傾斜する傾斜面23dが設けられている。このため、第1マグネット6と第2マグネット7の吸着力によってプラグ部材10がソケット部材20に対して厚さ方向から接近し、更にプラグ部材10におけるフック部13のフック先端部がソケット部材20の係止部23に当接することによって、フック部13の傾斜面13cと係止部23の傾斜面23dに沿って、プラグ部材10の位置をソケット部材20に対して縦方向にずらすことができる。それにより、フック部13のフック先端部が係止部23の先端部を乗り越えて第2ベース部22に近付くことができる。
【0067】
更にその後、第1マグネット6と第2マグネット7の吸着力によって、プラグ部材10が縦方向に移動して元の位置に戻るため、フック部13のフック先端部を、係止部23の裏面側に自動的に潜り込ませることができる。これによって、プラグ部材10のフック部13がソケット部材20の係止部23に引っ掛かって係止される。また同時に、プラグ部材10における第1収容部14の第1当接面14aとソケット部材20における第2収容部24の第2当接面24aとを当接させることができる。その結果、プラグ部材10とソケット部材20とを、図1図2及び図5に示したような状態で連結させることができる。
【0068】
このように本実施例1の留め具1によれば、片手による操作で、プラグ部材10をソケット部材20に近づけることによって、プラグ部材10をソケット部材20に簡単に連結させることができる。また、プラグ部材10とソケット部材20とが連結されている状態では、第1マグネット6と第2マグネット7の間に吸着力が生じているとともに、プラグ部材10のフック部13がソケット部材20の係止部23の裏面側に回り込んで係止されている。このため、プラグ部材10は、ソケット部材20に対して厚さ方向に外れ難くなり、プラグ部材10とソケット部材20の連結状態を安定して維持できる。
【0069】
また、本実施例1の留め具1がズボンの上前部と下前部に取着されている場合、留め具1には、ズボンの上前部及び下前部から、図5に示されるような縦方向に沿った引っ張り力8が加えられ易くなる。これに対し、本実施例1の留め具1では、プラグ部材10のフック部13がソケット部材20の係止部23に係止されている。また、プラグ部材10に設けた第1隙間調整リブ17と、ソケット部材20に設けた第2隙間調整リブ26及び隆起部27とによって、プラグ部材10とソケット部材20との間に隙間が形成され難くなっている。このため、図5に示した引っ張り力8を受けても、プラグ部材10とソケット部材20の連結状態を安定して維持できる。すなわち、本実施例1の留め具1は、上述したような縦方向の引っ張り力8に対して強く、このような力が生じやすいズボン等の製品に特に好適に使用される。
【0070】
一方、ソケット部材20に連結されているプラグ部材10をソケット部材20から外す場合には、例えばズボンの上前部を片手で掴んで、プラグ部材10を、ソケット部材20に対し、図5に円弧状の仮想線の矢印9で示すように、捲るように引き上げる。それによって、係止部23によるフック部13の係止が解除され、プラグ部材10とソケット部材20とを容易に分離させることができる。
【0071】
特にこの場合、プラグ部材10とソケット部材20の係合部となるフック部13及び係止部23は、例えば従来の一般的なフックアンドアイに設けられる係合部よりも小さく形成されているため、プラグ部材10をソケット部材20から容易に外すことができる。なお本実施例1では、プラグ部材10を、ソケット部材20に対して前後方向にずらすように移動させる一般的な操作を行うことによっても、当然にプラグ部材10とソケット部材20とを容易に分離させることが可能である。
【0072】
以上のように、本実施例1の留め具1は、片手だけで連結操作と分離操作を容易に且つ円滑に行うことができるため、例えば要介護者が着衣するズボン等の衣類に好適に使用される。それにより、要介護者が自分で着替えることや、補助者による要介護者の着替えを容易にすることが可能となる。また、要介護者が着衣可能な衣類の選択肢を広げることも可能となる。更に本実施例1の留め具1は、第1マグネット6と第2マグネット7の間の磁力を利用してプラグ部材10とソケット部材20の連結状態を維持しているため、例えば要介護者の衣服が少し大きく、ゆったりしたものであっても、その衣服の緩みによって留め具1が外れることを防止できる等の効果も得られる。
【0073】
また本実施例1の留め具1は、連結操作と分離操作が容易であるため、上述したような介護以外の分野にも有用である。例えばスキーや登山のときに手袋等を着用している場合でも、本実施例1の留め具1であれば、プラグ部材10とソケット部材20の連結操作及び分離操作を、手袋等をしたまま容易に行うことができる。
【0074】
なお本実施例1では、プラグ本体部11の第1収容部14に左右一対の第1ガイド部15が突設され、ソケット本体部21の第2収容部24に左右一対の第2溝部25が凹設されている。しかし本実施例1では、プラグ本体部11の第1収容部14に、第2溝部25のような左右一対の第1溝部が凹設されるとともに、ソケット本体部21の第2収容部24に、第1ガイド部15のような左右一対の第2ガイド部が突設されていても良い。これによっても、プラグ部材10及びソケット部材20の位置が横方向に相対的にずれることを防止できる。
【実施例2】
【0075】
図6は、本実施例2に係る留め具を模式的に示す側面図である。図7は、分解された留め具をソケット部材が下に配置された状態で示す分解斜視図であり、図8は、分解された留め具をプラグ部材が下に配置された状態で示す分解斜視図である。
【0076】
本実施例2の留め具2は、ズボンの上前部裏面に取着されるプラグ部材30と、ズボンの下前部表面に取着されるソケット部材40とを有する。プラグ部材30は、合成樹脂製のプラグ本体部31と、第1マグネット6とを有する。ソケット部材40は、合成樹脂製のソケット本体部41と、第2マグネット7とを有する。本実施例2の場合、第1マグネット6及び第2マグネット7は、前述した実施例1の第1マグネット6及び第2マグネット7と実質的に同様に形成されているため、同じ符号を用いて示すことによって、その詳しい説明を省略する。
【0077】
本実施例2のプラグ本体部31は、薄板状の第1ベース部32と、第1ベース部32から立ち上がるフック部33と、第1ベース部32に一体的に形成される第1収容部34と、第1収容部34に突設される左右一対の第1ガイド部35と、フック部33と第1収容部34を連結する左右一対の補強壁部36と、フック部33の背面部に設けられる2つの第1隙間調整リブ37とを有する。本実施例2のプラグ本体部31において、フック部33、第1収容部34、補強壁部36、及び第1隙間調整リブ37は、前述した実施例1のプラグ本体部11の各部位と実質的に同様に形成されている。
【0078】
本実施例2の第1ベース部32における第1表面の外周縁部(すなわち、前後及び左右の各端縁部を含み、フック部33及び第1収容部34を囲むように配される連続した部分)には、縫製糸の縫製部を収容可能な収容凹溝部32aが連続的に形成されている。この収容凹溝部32aには、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔32bが、収容凹溝部32aに沿って一定間隔で設けられている。このような複数の貫通孔32bが設けられていることにより、生地に対して、プラグ本体部31を手縫いで容易に取り付けることが可能となる。
【0079】
左右の第1ガイド部35は、第1収容部34における第1当接面に、縦方向に沿って突設されている。この場合、2つの第1ガイド部35は、第1当接面の面積を横方向に略3等分する位置に配されている。このような位置に第1ガイド部35が設けられているとともに、ソケット部材40に後述する第2溝部45が対応して設けられていることにより、前述の実施例1の場合と同様に、連結されたプラグ部材30及びソケット部材40における横方向への位置ずれを防止できる。また、本実施例2の第1ガイド部35は、第1収容部34の強度を高めることができる。なお本発明では、第1収容部34に第1ガイド部35を突設する代わりに、第1溝部を凹設しても良い。
【0080】
本実施例2のソケット本体部41は、薄板状の第2ベース部42と、第2ベース部42に一体的に形成される係止部43及び第2収容部44と、第2収容部44に凹設される左右一対の第2溝部45と、係止部43の左右外側に設けられる左右一対の第2隙間調整リブ46と、係止部43に対して縦方向に隣接して設けられる隆起部47とを有する。本実施例2のソケット本体部41において、係止部43、第2収容部44、第2隙間調整リブ46、及び隆起部47は、前述した実施例1のソケット本体部21の各部位と実質的に同様に形成されている。
【0081】
本実施例2の第2ベース部42は、第1ベース部32と同様に、第1表面の外周縁部に連続的に形成された収容凹溝部42aと、収容凹溝部42aに沿って一定間隔で設けられた複数の貫通孔42bとを有する。左右の第2溝部45は、プラグ部材30の2つの第1ガイド部35に対応するように、第2収容部44における第2当接面に縦方向に沿って凹設されている。なお本発明では、第2収容部44に第2溝部45を凹設する代わりに、第2ガイド部を突設しても良い。
【0082】
このような本実施例2の留め具2は、前述の実施例1の留め具1と同様に、ミシンによる縫製加工を行うことによって、ズボンにおける前身頃の上前部及び下前部に取り付けることができる。また、本実施例2の留め具2は、手縫いによってズボンの前身頃に取り付けることも可能である。そして、ズボンの前身頃に取り付けられた本実施例2の留め具2は、実施例1の留め具1と同様の連結操作及び分離操作を行うことができ、それによって、実施例1の留め具1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0083】
図9は、本実施例3に係る留め具を模式的に示す側面図である。図10は、分解された留め具をソケット部材が下に配置された状態で示す分解斜視図であり、図11は、分解された留め具をプラグ部材が下に配置された状態で示す分解斜視図である。図12は、留め具の断面図である。
【0084】
本実施例3の留め具3は、ズボンの上前部裏面に取着されるプラグ部材50と、ズボンの下前部表面に取着されるソケット部材60とを有する。プラグ部材50は、合成樹脂製のプラグ本体部51と、プラグ本体部51に収容されて固定される第1マグネット6とを有する。ソケット部材60は、合成樹脂製のソケット本体部61と、ソケット本体部61に収容されて固定される第2マグネット7とを有する。本実施例3の第1マグネット6及び第2マグネット7は、前述した実施例1及び2の第1マグネット6及び第2マグネット7に対し、大きさが異なるものの、それ以外については実質的に同様に形成されている。
【0085】
本実施例3のプラグ本体部51は、薄板状の第1ベース部52と、第1ベース部52から立ち上がるフック部53と、第1ベース部52に一体的に形成される第1収容部54と、第1ベース部52から隆起する隆起部57とを有する。この場合、フック部53と第1収容部54とは、縦方向に位置をずらして設けられている。また、フック部53における縦方向の第1収容部54側とは反対の側には、厚さ方向に貫通する第1貫通孔部58が第1ベース部52に設けられている。
【0086】
第1ベース部52は、厚さ方向から見たときに略長方形又は角丸長方形の形状を有する。この第1ベース部52に、フック部53、第1収容部54、及び隆起部57が支持されている。なお本実施例3では、第1ベース部52に、前述の実施例1で説明した横収容凹溝部12a及び縦収容凹溝部12b、又は前述の実施例2で説明した収容凹溝部32a及び複数の貫通孔32bを設けることも可能である。
【0087】
フック部53は、第1ベース部52の第1表面から立ち上がるフック胴部と、フック胴部の頂端部から第1収容部54側とは反対の側に向けて縦方向に沿って延出するフック頭部とを有する。このフック部53は、横方向に沿って一定の断面形状を有して形成されている。
【0088】
第1収容部54は、プラグ部材50をソケット部材60に連結させたときに、ソケット部材60の後述する第2収容部64に当接する平坦な第1当接面54aを有する。第1収容部54には、第1ベース部52の第2表面に開口するとともに第1マグネット6を収容して保持する第1収容空間54bが設けられている。
【0089】
隆起部57は、フック部53の周囲を取り囲むように設けられているとともに、第1収容部54に連結して形成されている。この隆起部57は、第1収容部54よりも、第1ベース部52からの厚さを小さくして(薄くして)形成されている。この隆起部57は、プラグ部材50とソケット部材60を連結したときに、ソケット部材60の後述する左右の第2支持壁部65に当接又は接近し、プラグ部材50とソケット部材60との間に形成される隙間を埋めること、又は小さくすることができる。それによって、プラグ部材50とソケット部材60の連結状態を安定して維持できる。
【0090】
本実施例3のソケット本体部61は、薄板状の第2ベース部62と、第2ベース部62に一体的に形成される第2収容部64と、プラグ部材50のフック部53を係止する係止部63と、係止部63を第2ベース部62から厚さ方向に所定の間隔を開けて支持する左右一対の第2支持壁部65とを有する。この場合、係止部63と第2収容部64とは、縦方向に位置をずらして設けられている。また、係止部63の真下には、厚さ方向に貫通する第2貫通孔部68が第2ベース部62に設けられている。
【0091】
第2ベース部62は、厚さ方向から見たときに略長方形又は角丸長方形の形状を有する。この第2ベース部62に、第2収容部64及び第2支持壁部65が支持されている。なお本実施例3では、第2ベース部62に、前述の実施例1で説明した横収容凹溝部12a及び縦収容凹溝部12b、又は前述の実施例2で説明した収容凹溝部32a及び複数の貫通孔32bを設けることも可能である。
【0092】
第2収容部64は、プラグ部材50をソケット部材60に連結させたときに、プラグ部材50の第1当接面54aに当接する平坦な第2当接面64aを有する。第2収容部64には、第2ベース部62の第2表面に開口するとともに第2マグネット7を収容して保持する第2収容空間64bが設けられている。
【0093】
係止部63は、左右の第2支持壁部65間に、横方向に沿って一定の断面形状を有して設けられている。
左右の第2支持壁部65は、第2収容部64の左右側縁部から縦方向に沿って延びて形成されている。左右の第2支持壁部65は、第2収容部64よりも第2ベース部62からの厚さを大きくして(厚くして)形成されている。
【0094】
なお、本実施例3の留め具3では、プラグ部材50における第1収容部54の第1当接面54aに、前述の実施例1の留め具1又は実施例2の留め具2に設けたような第1ガイド部15,35又は第1溝部を設け、且つ、ソケット部材60における第2収容部64の第2当接面64aに、第2溝部25,45又は第2ガイド部を設けることも可能である。それによって、互いに連結したプラグ部材50及びソケット部材60の位置が横方向に相対的にずれることを防止できる。
【0095】
上述のような本実施例3の留め具3は、前述の実施例1の留め具1と同様に、ミシンによる縫製加工を行うことによって、ズボンにおける前身頃の上前部及び下前部に取り付けることができる。なお、本実施例3の留め具3を前身頃の上前部及び下前部に取り付ける場合、プラグ部材50及びソケット部材60を、実施例1の留め具1とは縦方向の向きを反対にして上前部及び下前部にそれぞれ取り付けられる。
【0096】
ズボンの前身頃の上前部及び下前部にプラグ部材50及びソケット部材60がそれぞれ取着された本実施例3の留め具3では、例えばズボンの上前部を片手で掴んで、上前部のプラグ部材50を、例えばプラグ部材50におけるフック部53のフック先端をソケット部材60における第2ベース部62と係止部63の間に挿し込むように、下前部のソケット部材60に近づけることによって、図9及び図12に示したように、プラグ部材50とソケット部材60とを留め具3の厚さ方向に重ねて簡単に連結させることができる。
【0097】
また、プラグ部材50とソケット部材60とが連結されている状態では、第1マグネット6と第2マグネット7の間に吸着力が生じているとともに、プラグ部材50のフック部53がソケット部材60の係止部63に係止されている。このため、プラグ部材50は、ソケット部材60に対して厚さ方向に外れ難くなり、プラグ部材50とソケット部材60の連結状態を安定して維持できる。更に、本実施例3の留め具3に対し、図12に示したような縦方向に沿った引っ張り力8が加えられたとしても、プラグ部材50とソケット部材60の連結状態を安定して維持できる。
【0098】
一方、ソケット部材60に連結されているプラグ部材50をソケット部材60から外す場合には、例えばズボンの上前部を片手で掴んで、フック部53のフック先端をソケット部材60における第2ベース部62と係止部63の間から抜き出すようにして、プラグ部材50を捲るように引き上げる。それによって、係止部63によるフック部53の係止が解除されて、プラグ部材50とソケット部材60とを容易に分離させることができる。
【0099】
従って、本実施例3の留め具3によれば、実施例1の留め具1と同様に、片手だけで連結操作と分離操作を容易に且つ円滑に行うことができる。また、留め具3を取着した衣服が少し大きく、ゆったりしたものであっても、その衣服の緩みによって留め具3が分離することを防止できる。
【0100】
なお、実施例1~実施例3の留め具では、各留め具のプラグ部材及びソケット部材をズボンの上前部及び下前部にそれぞれ取り付けているが、本発明では、留め具のプラグ部材及びソケット部材を、それぞれズボンの下前部及び上前部へ反対に取り付けて使用することも可能である。
【0101】
また、実施例1~実施例3では、留め具をズボンに取り付ける場合について説明しているが、本発明の留め具が取り付けられる製品(被着部材)は、ズボン等の衣類に限定されるものではなく、薄型のバッグ、カバン、手袋、スキーウェアなどのような製品にも取り付けて使用することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1,2,3, 留め具
6 第1マグネット
7 第2マグネット
8 引っ張り力
9 矢印
10 プラグ部材(第1部材)
11 プラグ本体部
12 第1ベース部
12a 横収容凹溝部
12b 縦収容凹溝部
13 フック部
13a フック胴部
13b フック頭部
13c 傾斜面
14 第1収容部
14a 第1当接面
14b 第1収容空間
15 第1ガイド部
16 補強壁部
17 第1隙間調整リブ
18 第1貫通孔部
20 ソケット部材(第2部材)
21 ソケット本体部
22 第2ベース部
22a 横収容凹溝部
22b 縦収容凹溝部
23 係止部
23a 支持壁部
23b 係止本体部
23c 連結壁部
23d 傾斜面
23e 開口部
24 第2収容部
24a 第2当接面
24b 第2収容空間
25 第2溝部
26 第2隙間調整リブ
27 隆起部
28 第2貫通孔部
30 プラグ部材
31 プラグ本体部
32 第1ベース部
32a 収容凹溝部
32b 貫通孔
33 フック部
34 第1収容部
35 第1ガイド部
36 補強壁部
37 第1隙間調整リブ
40 ソケット部材
41 ソケット本体部
42 第2ベース部
42a 収容凹溝部
42b 貫通孔
43 係止部
44 第2収容部
45 第2溝部
46 第2隙間調整リブ
47 隆起部
50 プラグ部材
51 プラグ本体部
52 第1ベース部
53 フック部
54 第1収容部
54a 第1当接面
54b 第1収容空間
57 隆起部
58 第1貫通孔部
60 ソケット部材
61 ソケット本体部
62 第2ベース部
63 係止部
64 第2収容部
64a 第2当接面
64b 第2収容空間
65 第2支持壁部
68 第2貫通孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14