(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0612 20160101AFI20231116BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20231116BHJP
【FI】
H01M8/0612
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
(21)【出願番号】P 2019208603
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】坪井 文雄
(72)【発明者】
【氏名】川上 晃
(72)【発明者】
【氏名】小林 千尋
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
(72)【発明者】
【氏名】松尾 卓哉
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181405(JP,A)
【文献】特開2019-091619(JP,A)
【文献】特開2013-134929(JP,A)
【文献】特開2008-218277(JP,A)
【文献】特開2015-207510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された燃料ガスと酸化剤ガスを反応させることにより発電する燃料電池モジュールであって、
複数の平板型燃料電池セルを積層することにより構成され、積層された上記平板型燃料電池セルの複数の端面によって形成される第1の面と、上記平板型燃料電池セルの板面と平行な一対の第2の面と、を備えた燃料電池セルスタックと、
原燃料ガスを改質して、水素を含む燃料ガスを生成し、上記燃料電池セルスタックに供給する改質器と、
上記燃料電池セルスタックにおいて発電に使用されずに残った残余燃料ガスを燃焼させ、その燃焼熱により上記改質器を加熱する燃焼器と、
上記改質器及び上記燃焼器を収容する
と共に、上記燃料電池セルスタックの上方に配置されたハウジングと、
このハウジングの上方に配置され、原燃料ガスを改質する水蒸気を生成するための蒸発器と、
上記燃料電池セルスタックからの熱の放散を抑制するための断熱材と、
を有し、
上記ハウジングは、上記燃料電池セルスタックの上記第1の面と対向するように配置され、
上記断熱材の
うちの第1の断熱材は、上記ハウジングと上記蒸発器の間に配置され、さらに、上記断熱材のうちの第2の断熱材は、上記第1の断熱材の端面と接触すると共に、上記燃料電池セルスタックの上記第2の面及び上記ハウジングの一側面を
覆うように一続
きに構成され
、
上記蒸発器は、上記第1の断熱材と上記第2の断熱材の境界線を跨ぐように配置されていることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
上記断熱材は、上記燃料電池モジュールの最外層を構成している請求項1記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
上記断熱材は、上記燃料電池セルスタックの上記第2の面及び上記ハウジングに接触するように配置されている請求項1又は2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
上記ハウジング内においては上記改質器の下方に上記燃焼器が配置さ
れている請求項
1記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
上記蒸発器は、概ね直方体に構成され、上記ハウジング及び上記燃料電池セルスタックは、上面視において、上記蒸発器の長手方向の両側面の間に位置している請求項
4記載の燃料電池モジュール。
【請求項6】
上記断熱材の一部は、上記ハウジングと上記燃料電池セルスタックとの間に配置されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに関し、特に、供給された燃料ガスと酸化剤ガスを反応させることにより発電する燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-91683号公報(特許文献1)には、燃料電池モジュールが記載されている。この燃料電池モジュールにおいては、水平方向に向けられた平板型の燃料電池セルが鉛直方向に積層され、燃料電池セルスタックが構成されている。この燃料電池セルスタックの上方には、改質器及び燃焼器を収容したハウジングが配置されている。これら燃料電池セルスタックとハウジングの間は、燃料ガス及び発電用の空気をハウジングから燃料電池セルスタックへ供給する各配管と、残余燃料及び残余空気を燃料電池セルスタックからハウジングへ戻す各配管により接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の燃料電池モジュールにおいては、積層されている平板型の燃料電池セル毎に温度ムラが発生しやすいという問題がある。即ち、特許文献1記載の燃料電池モジュールにおいては、改質器及び燃焼器を収容したハウジングが、最も上側に積層された平板型の燃料電池セルと対向しているため、この燃料電池セルにハウジングからの熱が集中的に伝達されてしまう。加えて、燃料電池モジュールの起動初期においては、原燃料ガスを改質することにより生成された高温の燃料ガス、及びハウジング内で加熱された発電用の空気が、燃料電池セルスタックの上端から供給される。このため、最も温度の高い燃料ガスが上端に積層された燃料電池セルに流入する一方、下部に積層されている燃料電池セルに供給される原燃料ガス及び発電用の空気は、温度が低下している。
【0005】
この結果、燃料電池セルスタックの上部に積層された燃料電池セルは温度が高くなり、下部に積層された燃料電池セルは温度が低くなるため、燃料電池セル毎の温度ムラが大きくなってしまう。このような燃料電池セルの温度ムラは、燃料電池モジュールによる発電効率を低下させると共に、各燃料電池セルの劣化を引き起こすという問題がある。また、燃料電池モジュールの断熱構造によっては、高温の料電池セルスタックやハウジングによって加熱された空気が、燃料電池モジュール内で熱伝達を引き起こし、燃料電池セルの温度ムラを助長したり、発電効率を低下させたりするという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、燃料電池セルスタックを構成する各燃料電池セルの温度ムラを抑制すると共に、発電効率を向上させることができる燃料電池モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、供給された燃料ガスと酸化剤ガスを反応させることにより発電する燃料電池モジュールであって、複数の平板型燃料電池セルを積層することにより構成され、積層された平板型燃料電池セルの複数の端面によって形成される第1の面と、平板型燃料電池セルの板面と平行な一対の第2の面と、を備えた燃料電池セルスタックと、原燃料ガスを改質して、水素を含む燃料ガスを生成し、燃料電池セルスタックに供給する改質器と、燃料電池セルスタックにおいて発電に使用されずに残った残余燃料ガスを燃焼させ、その燃焼熱により改質器を加熱する燃焼器と、改質器及び燃焼器を収容するハウジングと、燃料電池セルスタックからの熱の放散を抑制するための断熱材と、を有し、ハウジングは、燃料電池セルスタックの第1の面と対向するように配置され、断熱材の一部は、燃料電池セルスタックの第2の面及びハウジングの一側面を、一続きの断熱材によって覆うように構成されていることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、積層された平板型燃料電池セルの複数の端面によって形成された、燃料電池セルスタックの第1の面がハウジングと対向しているので、ハウジングからの熱が、燃料電池セルスタックを構成する1つの平板型燃料電池セルに集中することがない。このため、燃料電池セルスタックを構成する各燃料電池セルの間の温度ムラを抑制することができる。また、上記のように構成された本発明によれば、断熱材の一部が、燃料電池セルスタックの第2の面及びハウジングの一側面を、一続きの断熱材によって覆うように構成されている。このため、燃料電池セルスタックや、ハウジングによって加熱された空気が、断熱材の隙間から流出するのを抑制することができ、燃料電池モジュールの発電効率を向上させることができる。また、燃料電池セルスタックや、ハウジングによって加熱された空気が流れることによる温度ムラの発生を抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、断熱材は、燃料電池モジュールの最外層を構成している。
このように構成された本発明によれば、燃料電池セルスタックの第2の面及びハウジングの一側面が一続きの断熱材によって覆われているので、燃料電池モジュールの最外層が断熱材により構成されていても、熱の放散を十分に抑制することができ、発電効率を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、断熱材は、燃料電池セルスタック及びハウジングに接触するように配置されている。
このように構成された本発明によれば、断熱材が、燃料電池セルスタックの第2の面及びハウジングに接触するように配置されているので、燃料電池セルスタックや、ハウジングと、断熱材との間で空気が流れるのを抑制することができ、熱の放散を抑制し、発電効率を向上させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、燃料電池セルスタックとハウジングは、鉛直方向に並べて配置されている。
このように構成された本発明によれば、燃料電池セルスタックとハウジングが、鉛直方向に並べて配置されているので、燃料電池モジュールの設置床面積を縮小することができ、スペースファクターを向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、さらに、原燃料ガスを改質する水蒸気を生成するための蒸発器を有し、この蒸発器はハウジングの上方に配置され、ハウジング内においては改質器の下方に燃焼器が配置され、ハウジングの下方には燃料電池セルスタックが配置されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、上方から順に、蒸発器、ハウジング、燃料電池セルスタックが配置されている。燃料電池モジュールによる定常発電中においては、発電熱により燃料電池セルスタックの温度が最も高く、次いでハウジングの温度が高く、改質用の水を蒸発させる蒸発器の温度が最も低くなる。このため、燃料電池セルスタックによって加熱された空気が上方に流れたとしても、その熱はハウジングによって吸収される。また、ハウジングによって加熱された空気が上方に流れたとしても、その熱を蒸発器によって吸収することができる。これにより、燃料電池モジュールからの熱の放散を更に少なくすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、蒸発器は、概ね直方体に構成され、ハウジング及び燃料電池セルスタックは、上面視において、蒸発器の長手方向の両側面の間に位置している。
【0015】
このように構成された本発明によれば、ハウジング及び燃料電池セルスタックは、蒸発器の両側面の間に位置している。このため、ハウジングや、燃料電池セルスタックによって加熱された空気が上方に流れた場合でも、その熱を蒸発器によって確実に吸収することができ、燃料電池モジュールからの熱の放散を更に少なくすることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、断熱材の一部は、ハウジングと燃料電池セルスタックとの間に配置されている。
このように構成された本発明によれば、断熱材の一部がハウジングと燃料電池セルスタックとの間に配置されているので、ハウジングと燃料電池セルスタック相互間での熱影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燃料電池モジュールによれば、燃料電池セルスタックを構成する各燃料電池セルの温度ムラを抑制すると共に、発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による燃料電池モジュールの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態による燃料電池モジュールの側面図であり、断熱材を取り除いた状態で示している。
【
図3】本発明の実施形態による燃料電池モジュールの正面断面図である。
【
図4】本発明の実施形態による燃料電池モジュールの
図3のIV-IV線に沿う側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による燃料電池モジュールを説明する。
図1は、本発明の実施形態による燃料電池モジュールの概略構成を示すブロック図である。なお、
図1において、燃料ガス(原燃料ガス及び残余燃料ガスを含む)の流れを一点鎖線で示し、空気(残余酸化剤ガスを含む)の流れを実線で示し、排気ガスの流れを破線で示す。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態による燃料電池モジュール1は、発電反応を行う燃料電池セルスタック2と、この燃料電池セルスタック2に、原燃料ガスを改質した燃料ガス、及び加熱した酸化剤ガスである空気を供給する流体供給装置4と、を有する。流体供給装置4は、蒸発器4a及び改質・加熱器4bから構成されている。
【0021】
蒸発器4aには、水を供給するための水供給用配管20と、原燃料ガスを供給するための原燃料ガス供給配管22と、排気ガスを排出するための排気ガス排出管23が接続されている。また、蒸発器4aには、改質・加熱器4bのハウジング6から蒸発器4aへ排気ガスを供給する排気ガス配管26と、蒸発器4aから改質器10へ混合ガスを供給する混合ガス導管28とが接続されている。
【0022】
蒸発器4aは、排気ガス配管26を通じて供給された排気ガスの熱により、水供給用配管20から供給された水を蒸発させて水蒸気を生成すると共に、この水蒸気を原燃料ガス供給配管22から供給された原燃料ガスと混合するように構成されている。蒸発器4aにおいて水蒸気と混合された原燃料ガスは、混合ガス導管28を通じて改質器10に供給される。なお、水を加熱した排気ガスは排気ガス排出管23を通じて外部に排出される。
【0023】
改質・加熱器4bはハウジング6を備えており、このハウジング6が燃料電池セルスタック2の上方に鉛直方向に並べて配置されている。これらの燃料電池セルスタック2、及びハウジング6は、断熱材8によって包囲されているとともに、燃料電池セルスタック2とハウジング6との間にも断熱材8が設けられており、燃料電池セルスタック2からの熱の放散を抑制している。この燃料電池セルスタック2及びハウジング6を包囲している断熱材8は、燃料電池モジュール1の最外層を構成しており、断熱材8の外側を覆う金属製の容器等は設けられていない。また、ハウジング6によって密閉された空間内には、改質器10、燃焼器12が収容されている。
【0024】
ハウジング6は、二重壁構造となっており内壁と外壁の間に空気流路6Aが形成されている。ハウジング6の天面には空気供給パイプ24が接続されており、外部から空気供給パイプ24を通じて酸化剤ガスとしての空気が供給される。空気流路6Aに供給された空気(酸化剤ガス)は、空気流路6Aを流れる間に、燃焼器12の燃焼熱により加熱される。空気流路6A内において加熱された空気は、酸化剤ガス供給配管32を介して燃料電池セルスタック2に供給される。
【0025】
改質・加熱器4bと燃料電池セルスタック2との間には、改質器10から燃料電池セルスタック2の燃料ガスを供給する燃料供給配管30が設けられ、ハウジング6の空気流路6Aから加熱された空気を燃料電池セルスタック2に供給する酸化剤ガス供給配管32が設けられている。また、改質・加熱器4bと燃料電池セルスタック2との間には、燃料電池セルスタック2において発電に使用されなかったオフガスである残燃料ガスを燃焼器12に供給するための燃料排出配管34と、燃料電池セルスタック2において発電に使用されなかった酸化剤ガスを燃焼器12に供給するための酸化剤ガス排出配管36が接続されている。
【0026】
改質器10には、改質触媒(図示せず)が充填されており、蒸発器4aから混合ガス導管28を通じて水蒸気が混合された原燃料ガスが供給され、燃焼器12の燃焼熱により原燃料ガスを水蒸気改質して、水素を豊富に含む燃料ガスを生成するように構成されている。改質器10において生成された燃料ガスは燃料電池セルスタック2に送られ、燃料電池セルスタック2において発電に使用される。この燃料ガスは、改質器10と燃料電池セルスタック2の間に延びる燃料供給配管30を介して燃料電池セルスタック2に供給される。ここで、改質器10はハウジング6内に収容され、ハウジング6は断熱材8によって包囲されているので、燃料ガスを供給する燃料供給配管30は、ハウジング6及び断熱材8を貫通して燃料電池セルスタック2へ延びている。
【0027】
燃焼器12は、燃料電池セルスタック2において発電に使用されずに残った残余燃料ガス及び残余空気を燃焼させるように構成されている。燃料電池セルスタック2において発電に使用されずに残った燃料は、燃焼器12と燃料電池セルスタック2の間に延びる燃料排出配管34を介して燃焼器12へ排出される。この燃料排出配管34も、ハウジング6及び断熱材8を貫通して燃料電池セルスタック2から燃焼器12へ延びている。燃焼器12へ排出された残余燃料は、燃焼器12によって燃焼され、燃焼器12の上方に配置された改質器10を加熱する。これにより、改質器10内の改質触媒(図示せず)が水蒸気改質可能な温度に加熱される。
【0028】
一方、発電用の酸化剤ガスである空気も外部から空気供給パイプ24を通じてハウジング6に供給され、空気流路6Aを通る間に燃焼器12の燃焼熱によって加熱され、高温になった状態で燃料電池セルスタック2へ供給される。流体供給装置4において加熱された発電用の空気は、ハウジング6から延びる酸化剤ガス供給配管32を介して燃料電池セルスタック2に供給される。この酸化剤ガス供給配管32も、ハウジング6を包囲する断熱材8を貫通してハウジング6から燃料電池セルスタック2へ延びている。
【0029】
燃料電池セルスタック2は、平板型セルスタックであり、複数の長方形の平板型燃料電池セルを積層して構成されている。燃料電池セルスタック2は、ハウジング6の外部に独立して設けられている。各燃料電池セルは、酸化物イオン導電体で構成された平板状の電解質の両面に、燃料極及び空気極(酸化剤ガス極)の電極を夫々設けることにより構成され、各燃料電池セルの間にはセパレータが配置されている。各燃料電池セルには、燃料供給配管30及び酸化剤ガス供給配管32を通じて燃料ガス及び酸化剤ガスが供給され、燃料電池セルによる発電が行われる。
【0030】
燃料電池セルスタック2に供給され、発電に使用されずに残った残余の燃料ガスは、上述の通り、燃料排出配管34を介して燃焼器12へ排出される。また、燃料電池セルスタック2に供給され、発電に使用されずに残った残余の空気は、酸化剤ガス排出配管36を介して燃焼器12へ排出される。この酸化剤ガス排出配管36も、ハウジング6を包囲する断熱材8を貫通して燃料電池セルスタック2から燃焼器12へ延びている。燃焼器12へ排出された残余空気は、燃焼器12における燃焼に使用される。燃焼により生成された燃焼ガスは、排気ガスとして排気ガス配管26を通じて蒸発器4aに排出される。蒸発器4aに排出された排気ガスは、水を蒸発するのに用いられた後に、排気ガス排出管23から外部に排出される。
【0031】
次に、
図2乃至
図4を参照して、本発明の実施形態による燃料電池モジュール1の具体的構造を説明する。
図2は、本発明の実施形態による燃料電池モジュールの側面図であり、断熱材を取り除いた状態で示している。
図3は、本発明の実施形態による燃料電池モジュールの正面断面図である。
図4は、本発明の実施形態による燃料電池モジュールの
図3のIV-IV線に沿う側面断面図である。
【0032】
図2に示すように、燃料電池セルスタック2は、ハウジング6の下方に配置されていると共に、燃料電池セルスタック2の一側面とハウジング6の底面との間が各配管で接続されている。また、燃料電池セルスタック2は、複数の平板型燃料電池セル38から構成され、各平板型燃料電池セル38は、各々鉛直方向に向けられ積層されている。さらに、積層された平板型燃料電池セル38は、両側からエンドプレート40a、40bで挟まれている。また、積層された平板型燃料電池セル38の複数の端面によって形成される第1の面42aが、上方に配置されたハウジング6の底面と対向している。一方、各エンドプレート40a、40bの表面は、平板型燃料電池セル38の板面と平行な一対の第2の面42bを構成し、各配管は第2の面42bの一方に接続されている。
【0033】
また、
図2に示すように、蒸発器4aは概ね直方体の形状に構成されている。
図2に想像線で示すように、ハウジング6及び燃料電池セルスタック2は、上面視において、蒸発器4aの長手方向(
図2の紙面に垂直な方向)の両側面の間に位置している。さらに、
図3に示すように、ハウジング6内には改質器10及び燃焼器12が収容され、ハウジング6内の天井面近傍に配置された改質器10が、ハウジング6の床面近傍に配置された燃焼器12における燃焼熱によって、加熱されるように構成されている。
【0034】
上述したように、燃料電池モジュール1を構成する燃料電池セルスタック2及びハウジング6は、断熱材8により周囲を囲まれている。具体的には、
図3及び
図4に示すように、平板状ないし直方体状に形成された複数の断熱材のブロックを燃料電池セルスタック2等の周囲に配置することにより、断熱されている。
【0035】
即ち、
図3に示すように、燃料電池セルスタック2の下側には断熱材8aが配置され、両側面には断熱材8b、8cが配置されている。また、ハウジング6と燃料電池セルスタック2の間には断熱材8dが配置され、ハウジング6と蒸発器4aの間には断熱材8eが配置されている。これら断熱材8d、8eには、各種配管等を通すための孔が設けられている。さらに、断熱材8b、8cの外側には、断熱材8f、8gが夫々配置され、燃料電池モジュール1の最外層を形成している。また、蒸発器4aの上側には断熱材8hが配置され、蒸発器4aの上面を覆っている。なお、ハウジング6と燃料電池セルスタック2の間に配置された断熱材8dは省略することもできる。この断熱材8dを省略した場合でも、ハウジング6及び燃料電池セルスタック2は、他の断熱材により取り囲まれており、外部への熱の放散を十分に抑制することができる。
【0036】
さらに、
図4に示すように、燃料電池セルスタック2の両側に、その第2の面42bと平行に断熱材8i、8jが夫々配置されている。また、ハウジング6と断熱材8jの間の隙間に断熱材8kが配置され、エンドプレート40aと断熱材8iの間の隙間に断熱材8mが配置されている。この断熱材8mには、各配管を受け入れるための凹部が形成されている。さらに、断熱材8i、8jの外側には断熱材8n、8oが夫々配置されており、燃料電池モジュール1の最外層を形成している。
【0037】
次に、本発明の実施形態による燃料電池モジュール1の作用を説明する。
まず、水供給用配管20を介して蒸発器4aに水が供給され、蒸発されて水蒸気が生成される。生成された水蒸気は、原燃料ガス供給配管22を介して供給された原燃料ガスと蒸発器4a内で混合される。水蒸気と混合された原燃料ガスは、混合ガス導管28を通って、ハウジング6内の改質・加熱器4bに供給される。水蒸気と混合された原燃料ガスは、改質・加熱器4b内において、水素を豊富に含む燃料ガスに水蒸気改質され、燃料供給配管30を通って燃料電池セルスタック2に供給される。
【0038】
一方、空気供給パイプ24から供給された発電用の空気は、ハウジング6の空気流路6Aに導入され、ここで加熱される。加熱された発電用の空気は、酸化剤ガス供給配管32を通って燃料電池セルスタック2に供給される。供給された原燃料ガス及び発電用の空気は、エンドプレート40aを通って、平板型燃料電池セル38の燃料極側、空気極側に夫々導かれる。各平板型燃料電池セル38に導かれた燃料ガス及び発電用の空気は発電反応し、電力が生成される。
【0039】
発電に使用されずに残った残余燃料ガスは、エンドプレート40aから延びる燃料排出配管34を通ってハウジング6に戻される。また、発電に使用されずに残った残余の発電用空気(酸化剤ガス)は、エンドプレート40aから延びる酸化剤ガス排出配管36を通ってハウジング6に戻される。ハウジング6に戻された残余燃料ガスは燃焼器12内に流入し、燃焼器12の上面に設けられた複数の小穴(図示せず)から流出する。一方、ハウジング6に戻された残余の発電用空気はハウジング6の内部空間に流入し、燃焼器12の小穴から流出した残余燃料ガスを燃焼させる。この燃焼熱により、燃焼器12の上方に配置された改質器10を加熱すると共に、ハウジング6の周囲壁面に設けられた空気流路6A内を流れる発電用空気を加熱する。
【0040】
残余燃料ガスの燃焼により生成された排気ガスは、混合ガス導管28を取り囲むように形成された排気ガス配管26を通って蒸発器4aに流入する。この排気ガスの熱により、蒸発器4aに供給された水が蒸発され、改質用の水蒸気が生成される。水の加熱に利用された排気ガスは、排気ガス排出管23を通って燃料電池モジュール1から排出される。
【0041】
このように、燃料電池モジュール1の発電運転によって、燃料電池セルスタック2や、ハウジング6には熱が発生する。ここで、断熱材8m、8jは、燃料電池セルスタック2の第2の面42bに密着するように接触して配置され、断熱材8i、8kは、ハウジング6の側面に密着するように接触して配置されている。このため、燃料電池セルスタック2やハウジング6と、断熱材との間に滞留している空気は極めて少なく、燃料電池セルスタック2やハウジング6の熱によって加熱された空気が、燃料電池モジュール1の外へ流出することによる熱の放散を抑制することができる。
【0042】
また、断熱材のうち、断熱材8b、8c、8f、8g、8i、8j、8n、8oは、燃料電池セルスタック2の第2の面42b及びハウジング6の側面を、一続きの断熱材のブロックによって覆うように配置されている。このため、燃料電池セルスタック2やハウジング6によって加熱された空気が、燃料電池モジュール1の側面から流出することはなく、燃料電池セルスタック2や、ハウジング6と、外気との間の断熱性を極めて高くすることができる。
【0043】
さらに、燃料電池セルスタック2と、断熱材8jや8mとの間で空気が加熱された場合、加熱された空気は、燃料電池セルスタック2と断熱材の間の僅かな隙間や、断熱材と断熱材の間の僅かな隙間を通って上昇する。この加熱されて上昇した空気は、燃料電池セルスタック2の上方に配置されたハウジング6に到達する。ここで、燃料電池モジュール1の定常運転中においては、燃料電池セルスタック2で比較的大きな発電熱が発生する一方、ハウジング6内の改質器10では、原燃料ガスの水蒸気改質により吸熱反応が発生している。これにより、ハウジング6の周囲の温度は、燃料電池セルスタック2の周囲の温度よりも相対的に低くなる。このため、燃料電池セルスタック2によって加熱された空気が上昇してハウジング6に到達すると、空気の熱の一部がハウジング6によって吸収される。ハウジング6によって吸収された熱は、空気流路6A内を流れる空気の加熱に利用される。
【0044】
ハウジング6の周囲で熱を奪われた空気は、さらに上昇して蒸発器4aに到達する。蒸発器4aにおいては、原燃料ガスの水蒸気改質用の水蒸気を生成するために、常に水が蒸発されており、蒸発器4aの温度はハウジング6の温度よりも低くなっている。このため、ハウジング6の周囲から蒸発器4aに到達した空気は、蒸発器4aによって更に熱を奪われる。蒸発器4aによって吸収された熱は、水蒸気改質用の水蒸気の生成に利用される。上記のように、ハウジング6及び燃料電池セルスタック2は、上面視において、蒸発器4aの長手方向の両側側面の間に位置している(
図2)。このため、ハウジング6の周囲から上方に流れた空気は確実に蒸発器4aに到達し、蒸発器4aによって熱を奪われる。このように、燃料電池セルスタック2と断熱材の間に滞留する空気は少量であり、この少量の空気が加熱され、燃料電池モジュール1内で上昇したとしても、上昇した空気の熱は、上方に配置されたハウジング6や蒸発器4aによって吸収され、発電に利用される。
【0045】
本発明の実施形態の燃料電池モジュール1によれば、積層された平板型燃料電池セル38の複数の端面によって形成された、燃料電池セルスタック2の第1の面42aがハウジング6と対向しているので、ハウジング6からの熱が、燃料電池セルスタック2を構成する1つの平板型燃料電池セル38に集中することがない。このため、燃料電池セルスタック2を構成する各燃料電池セル38の間の温度ムラを抑制することができる。また、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、断熱材8i、8j、8n、8o(
図4)が、燃料電池セルスタック2の第2の面42b及びハウジング6の一側面を、一続きの断熱材によって覆うように配置されている。このため、燃料電池セルスタック2や、ハウジング6によって加熱された空気が、断熱材8の隙間から流出するのを抑制することができ、燃料電池モジュール1の発電効率を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、燃料電池セルスタック2の第2の面42b及びハウジング6の一側面が一続きの断熱材8i、8j、8n、8oによって覆われているので、燃料電池モジュール1の最外層が断熱材により構成されていても、熱の放散を十分に抑制することができ、発電効率を向上させることができる。
【0047】
さらに、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、断熱材8i、8j、8k、8mが、燃料電池セルスタック2の第2の面42b及びハウジング6に接触するように配置されているので、燃料電池セルスタック2や、ハウジング6と、断熱材との間で空気が流れるのを抑制することができ、熱の放散を抑制し、発電効率を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、燃料電池セルスタック2とハウジング6が、鉛直方向に並べて配置されているので、燃料電池モジュール1の設置床面積を縮小することができ、スペースファクターを向上させることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、上方から順に、蒸発器4a、ハウジング6、燃料電池セルスタック2が配置されている。燃料電池モジュール1による定常発電中においては、発電熱により燃料電池セルスタック2の温度が最も高く、次いでハウジング6の温度が高く、改質用の水を蒸発させる蒸発器4aの温度が最も低くなる。このため、燃料電池セルスタック2によって加熱された空気が上方に流れたとしても、その熱はハウジング6によって吸収される。また、ハウジング6によって加熱された空気が上方に流れたとしても、その熱を蒸発器4aによって吸収することができる。これにより、燃料電池モジュール1からの熱の放散を更に少なくすることができる。
【0050】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、ハウジング6及び燃料電池セルスタック2は、蒸発器4aの両側面の間に位置している(
図2)。このため、ハウジング6や、燃料電池セルスタック2によって加熱された空気が上方に流れた場合でも、その熱を蒸発器4aによって確実に吸収することができ、燃料電池モジュール1からの熱の放散を更に少なくすることができる。
【0051】
さらに、本実施形態の燃料電池モジュール1によれば、断熱材8dがハウジング6と燃料電池セルスタック2との間に配置されている(
図4)ので、ハウジング6と燃料電池セルスタック6相互間での熱影響を低減することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 燃料電池モジュール
2 燃料電池セルスタック
4 流体供給装置
4a 蒸発器
4b 改質・加熱器
6 ハウジング
6A 空気流路
8 断熱材
10 改質器
12 燃焼器
20 水供給用配管
22 原燃料ガス供給配管
23 排気ガス排出管
24 空気供給パイプ
26 排気ガス配管
28 混合ガス導管
30 燃料供給配管
32 酸化剤ガス供給配管
34 燃料排出配管
36 酸化剤ガス排出配管
38 平板型燃料電池セル
40a、40b エンドプレート
42a 第1の面
42b 第2の面