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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及びタイヤモールド
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20231116BHJP
   B60C 13/02 20060101ALI20231116BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B60C13/00 D
B60C13/02
B29C33/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019213337
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021084477
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上埜 智徳
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-103517(JP,A)
【文献】特開2014-159178(JP,A)
【文献】特開平11-034060(JP,A)
【文献】特開2017-209958(JP,A)
【文献】特開2018-114731(JP,A)
【文献】特開2019-089357(JP,A)
【文献】特開2019-025988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00-13/02
B29C 33/02
B29D 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向に延びるサイドウォール部を備え、
前記サイドウォール部は、ベース面からタイヤ幅方向に突出する突出部を備え、
前記突出部は、タイヤ幅方向の外側端に配置される頂面と、前記ベース面及び前記頂面とそれぞれ連接する側面と、前記頂面と前記側面との境界で突出する第1線状突起部と、前記ベース面と前記側面との境界で突出する第2線状突起部と、前記第1線状突起部及び第2線状突起部とそれぞれ連接するように突出する第3線状突起部と、を備え
前記第1線状突起部は、屈曲することによって形成される第1角部を備え、
前記第2線状突起部は、屈曲することによって形成される第2角部を備え、
前記側面は、隣接する同士で連接されるように複数備えられ、
前記第3線状突起部は、前記第1角部及び前記第2角部とそれぞれ連接するように、前記側面同士の境界で突出し、
前記突出部は、前記頂面から突出する凸部と、前記凸部及び前記第1角部とそれぞれ連接するように突出する第4線状突起部と、を備え、
前記第4線状突起部は、前記第3線状突起部と直線状となるように、延びる、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第4線状突起部が連接される前記第1角部は、鋭角である、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ径方向に延びるサイドウォール部を備え、
前記サイドウォール部は、ベース面からタイヤ幅方向に突出する突出部を備え、
前記突出部は、タイヤ幅方向の外側端に配置される頂面と、前記ベース面及び前記頂面とそれぞれ連接する側面と、前記頂面と前記側面との境界で突出する第1線状突起部と、前記ベース面と前記側面との境界で突出する第2線状突起部と、前記第1線状突起部及び第2線状突起部とそれぞれ連接するように突出する第3線状突起部と、を備え、
前記第1線状突起部は、屈曲することによって形成される第1角部を備え、
前記第2線状突起部は、屈曲することによって形成される第2角部を備え、
前記側面は、隣接する同士で連接されるように複数備えられ、
前記第3線状突起部は、前記第1角部及び前記第2角部とそれぞれ連接するように、前記側面同士の境界で突出し、
前記突出部は、前記頂面から突出する凸部と、前記凸部及び前記第1角部とそれぞれ連接するように突出する第4線状突起部と、を備え、
前記第4線状突起部が連接される前記第1角部は、鋭角である、空気入りタイヤ。
【請求項4】
サイドウォール部を成形するサイドウォール成形部を備え、
前記サイドウォール成形部は、ベース面から凹む凹状部を備え、
前記凹状部は、底に配置される底面と、前記ベース面及び前記底面とそれぞれ連接する側面と、前記底面と前記側面との境界で凹む第1溝部と、前記ベース面と前記側面との境界で凹む第2溝部と、前記第1溝部及び前記第2溝部とそれぞれ連接するように凹む第3溝部と、を備え
前記第1溝部は、屈曲することによって形成される第1角部を備え、
前記第2溝部は、屈曲することによって形成される第2角部を備え、
前記側面は、隣接する同士で連接されるように複数備えられ、
前記第3溝部は、前記第1角部及び前記第2角部とそれぞれ連接するように、前記側面同士の境界で凹み、
前記凹状部は、前記底面に設けられるベントホールと、前記ベントホール及び前記第1角部とそれぞれ連接するように凹む第4溝部と、を備え、
前記第4溝部は、前記第3溝部と直線状となるように、延びる、タイヤモールド。
【請求項5】
前記第4溝部が連接される前記第1角部は、鋭角である、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
サイドウォール部を成形するサイドウォール成形部を備え、
前記サイドウォール成形部は、ベース面から凹む凹状部を備え、
前記凹状部は、底に配置される底面と、前記ベース面及び前記底面とそれぞれ連接する側面と、前記底面と前記側面との境界で凹む第1溝部と、前記ベース面と前記側面との境界で凹む第2溝部と、前記第1溝部及び前記第2溝部とそれぞれ連接するように凹む第3溝部と、を備え、
前記第1溝部は、屈曲することによって形成される第1角部を備え、
前記第2溝部は、屈曲することによって形成される第2角部を備え、
前記側面は、隣接する同士で連接されるように複数備えられ、
前記第3溝部は、前記第1角部及び前記第2角部とそれぞれ連接するように、前記側面同士の境界で凹み、
前記凹状部は、前記底面に設けられるベントホールと、前記ベントホール及び前記第1角部とそれぞれ連接するように凹む第4溝部と、を備え、
前記第4溝部が連接される前記第1角部は、鋭角である、タイヤモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤ及びタイヤモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、タイヤモールドは、サイドウォール部を成形するサイドウォール成形部を備え、サイドウォール成形部は、ベース面から凹む凹状部を備えている(例えば、特許文献1)。凹状部は、底に配置される底面と、ベース面及び底面とそれぞれ連接する側面と、底面と側面との境界で凹む第1溝部と、ベース面と側面との境界で凹む第2溝部とを備えている。
【0003】
ところで、特許文献1に係るタイヤモールドにおいては、底面及び側面の境界と、ベース面と側面との境界とにおいて、エアが滞留することを抑制することができる一方で、第1溝部と第2溝部との間において、エアが滞留する場合がある。斯かる場合には、サイドウォール部の突出部に欠損部が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-103517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の第1の目的は、サイドウォール部の突出部に欠損部が形成されることを抑制された空気入りタイヤを提供することである。
【0006】
本開示の第2の目的は、サイドウォール成形部の凹状部においてエアが滞留することを抑制することができるタイヤモールドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
空気入りタイヤは、タイヤ径方向に延びるサイドウォール部を備え、前記サイドウォール部は、ベース面からタイヤ幅方向に突出する突出部を備え、前記突出部は、タイヤ幅方向の外側端に配置される頂面と、前記ベース面及び前記頂面とそれぞれ連接する側面と、前記頂面と前記側面との境界で突出する第1線状突起部と、前記ベース面と前記側面との境界で突出する第2線状突起部と、前記第1線状突起部及び第2線状突起部とそれぞれ連接するように突出する第3線状突起部と、を備える。
【0008】
また、タイヤモールドは、サイドウォール部を成形するサイドウォール成形部を備え、前記サイドウォール成形部は、ベース面から凹む凹状部を備え、前記凹状部は、底に配置される底面と、前記ベース面及び前記底面とそれぞれ連接する側面と、前記頂面と前記側面との境界で凹む第1溝部と、前記ベース面と前記側面との境界で凹む第2溝部と、前記第1溝部及び前記第2溝部とそれぞれ連接するように凹む第3溝部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図
図2】同実施形態に係る空気入りタイヤの全体側面図
図3】同実施形態に係る空気入りタイヤの要部拡大側面図
図4図3のIV-IV線拡大断面図
図5】同実施形態に係るタイヤ製造装置の要部断面図
図6図5のVI矢印方向(タイヤ幅方向)視の要部図
図7図6のVII-VII線拡大断面図
図8】他の実施形態に係るタイヤモールドの要部拡大断面図
図9】同実施形態に係る空気入りタイヤの要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、空気入りタイヤ及びタイヤモールドにおける一実施形態について、図1図7を参照しながら説明する。なお、各図(図8及び図9も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0011】
図1及び図2に示すように、タイヤ1は、ビード1aを有する一対(図1及び図2においては、一つのみ図示している)のビード部1bと、各ビード部1bからタイヤ径方向D2の外側に延びる一対(図1及び図2においては、一つのみ図示している)のサイドウォール部1cと、一対のサイドウォール部1cのタイヤ径方向D2の外端部に連接されるトレッド部1dとを備えている。なお、タイヤ1は、リム(図示していない)に装着される。
【0012】
各図において、第1の方向D1は、タイヤ1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。また、タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面であって、タイヤ赤道面S1と直交する面のことである。
【0013】
タイヤ1は、一対のビード1aの間に架け渡されるカーカス層1eと、カーカス層1eの内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナー層1fとを備えている。カーカス層1e及びインナーライナー層1fは、ビード部1b、サイドウォール部1c及びトレッド部1dに亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0014】
サイドウォール部1cは、タイヤ外表面を構成すべく、カーカス層1eのタイヤ幅方向D1の外側に配置されるサイドウォールゴム2を備えている。また、トレッド部1dは、地面と接するトレッド面(接地面)を構成すべく、カーカス層1eの外周側に配置されるトレッドゴム1gと、カーカス層1eとトレッドゴム1gとの間に配置されるベルト層1hとを備えている。
【0015】
なお、サイドウォール部1cは、タイヤ最大幅となる位置(具体的には、カーカス層1eのタイヤ幅方向D1の外側同士間の距離のうち、最大距離となる位置)とタイヤ径方向D2で同じになる位置1iを、外表面に備えている。以下、当該位置1iを、タイヤ最大幅位置1iという。
【0016】
サイドウォールゴム2は、ベース部3と、ベース部3から突出する突出部4とを備えている。ベース部3は、表面にベース面3a、即ち、プロファイル面(図1図4及び図9も同様)において、突出部4に連接される部分を破線で示している)を備えており、突出部4は、ベース面3aからタイヤ幅方向D1の外側に向けて突出している。
【0017】
突出部4は、サイドウォール部1cの少なくともタイヤ径方向D2の外側に配置されている。具体的には、突出部4の少なくとも一部は、サイドウォール部1cのタイヤ最大幅位置1iよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。
【0018】
これにより、突出部4は、泥濘地や砂地において、車両の重みによりタイヤ1が沈降し、泥や砂に埋没した状態で接地したり、また、岩場において、凹凸の岩に接地したりできる。即ち、突出部4は、泥濘地、砂地、及び岩場といった悪路において、接地する。なお、突出部4は、平坦な道路において、通常走行時に接地しない。
【0019】
そして、突出部4は、タイヤ周方向D3に沿って複数並べられている。また、サイドウォールゴム2は、突出部4,4同士を接続するようにタイヤ周方向D3に沿って延びる複数の環状突起部5を備えている。
【0020】
図3及び図4に示すように、突出部4は、タイヤ幅方向D1の外側端に配置される頂面4aと、ベース面3a及び頂面4aとそれぞれ連接し且つ隣接する同士で連接する複数の側面4bとを備えている。また、突出部4は、頂面4aと側面4bとの境界で突出する第1線状突起部4cと、ベース面3aと側面4bとの境界で突出する第2線状突起部4dと、第1線状突起部4c及び第2線状突起部4dとそれぞれ連接するように突出する複数の第3線状突起部4eとを備えている。
【0021】
特に限定されないが、頂面4a及び側面4bは、それぞれ平面状に形成されている。また、特に限定されないが、第1~第3線状突起部4c~4eの幅は、例えば、1.0mm~1.5mmとすることができ、また、第1~第3線状突起部4c~4eが各面4a,3a,4bから突出する高さは、例えば、1.0mm~1.5mmとすることができる。
【0022】
なお、第1線状突起部4cは、例えば、頂面4aと側面4bとの境界の全部に設けられてもよく、また、例えば、一部に設けられてもよい。また、第2線状突起部4dは、例えば、ベース面3aと側面4bとの境界の全部に設けられてもよく、また、例えば、一部に設けられてもよい。また、特に限定されないが、本実施形態においては、線状突起部4c,4dは、先端へ行くほど幅狭となるように、例えば、断面が半円形状となるように、形成されている。
【0023】
第1線状突起部4cは、屈曲することによって形成される複数の第1角部4f,4gを備えており、第2線状突起部4dは、屈曲することによって形成される複数の第2角部4h,4iを備えている。そして、第3線状突起部4eは、第1角部4f,4g及び第2角部4h,4iとそれぞれ連接するように、側面4b,4b同士の境界で突出している。
【0024】
なお、第3突出部4eは、例えば、側面4b,4b同士の境界の全部に設けられてもよく、また、例えば、一部に設けられてもよい。また、第1角部4f,4gは、鋭角である第1鋭角部4fと、鈍角である第1鈍角部4gとを含み、第2角部4h,4iは、鋭角である第2鋭角部4hと、鈍角である第2鈍角部4iとを含んでいる。
【0025】
突出部4は、頂面4aから突出する複数の第1凸部4jと、第1凸部4j及び第1鋭角部4fとそれぞれ連接するように突出する第4線状突起部4kとを備えている。そして、第4線状突起部4kは、タイヤ幅方向D1視において第3線状突起部4eと直線状となるように、延びている。なお、第1鈍角部4gは、第4線状突起部4kを介することなく、第1凸部4jに連接されているが、第4線状突起部4kによって、第1凸部4jに接続されてもよい。
【0026】
突出部4は、ベース面3aから突出する複数の第2凸部4mと、第2凸部4m及び第2鋭角部4hとそれぞれ連接するように突出する第5線状突起部4nとを備えている。そして、第5線状突起部4nは、タイヤ幅方向D1視において第3線状突起部4eと直線状となるように、延びている。なお、第2鈍角部4iは、第5線状突起部4nを介することなく、第2凸部4mに連接されているが、第5線状突起部4nによって、第2凸部4mに接続されてもよい。
【0027】
なお、凸部4j,4mは、例えば、全ての角部4f~4iに対して設けられてもよく、また、例えば、一部の角部4f~4iに対して設けられてもよい。また、特に限定されないが、本実施形態においては、第1及び第2凸部4j,4mは、円柱状に形成されている。
【0028】
特に限定されないが、第1及び第2凸部4j,4mの直径は、例えば、1.5mm~3.0mmとすることができ、また、第1及び第2凸部4j,4mが各面4a,3aから突出する高さは、例えば、0.1mm~2.5mmとすることができる。また、特に限定されないが、第4及び第5線状突起部4k,4nの幅は、例えば、0.5mm~1.5mmとすることができ、また、第4及び第5線状突起部4k,4nが各面4a,3aから突出する高さは、例えば、0.5mm~1.5mmとすることができる。
【0029】
次に、タイヤモールドについて、図5図7を参照しながら説明する。
【0030】
図5に示すように、タイヤモールド6aは、タイヤ加硫装置に複数備えられている。具体的には、タイヤ加硫装置は、タイヤ1のサイドウォール部1cに接する一対のサイドモールド6aと、タイヤ1のトレッド部1dに接する複数のトレッドモールド6bと、タイヤ1のビード部1bが嵌合される一対のビードモールド6cとを備えている。
【0031】
一対のサイドモールド6aは、タイヤ幅方向D1に対面するように、配置されており、複数のトレッドモールド6bは、タイヤ周方向D3に並べられるように、配置されている。なお、タイヤモールド6a~6cにおける方向D1~D3は、タイヤ加硫装置で成形されるタイヤ1に対する方向(タイヤ幅方向D1、タイヤ径方向D2、タイヤ周方向D3)を使用する。
【0032】
サイドモールド6aは、サイドウォール部1cに接することによって、サイドウォール部1cを成形するサイドウォール成形部6dを備えている。サイドウォール成形部6dは、突出部4を成形するために、プロファイル面であるベース面6eから凹む凹状部7を備えている。
【0033】
図6及び図7に示すように、凹状部7は、底に配置される底面7aと、ベース面6e及び底面7aとそれぞれ連接し隣接する同士で連接する複数の側面7bとを備えている。また、凹状部7は、底面7aと側面7bとの境界で凹む第1溝部7cと、ベース面6eと側面7bとの境界で凹む第2溝部7dと、第1溝部7c及び第2溝部7dとそれぞれ連接するように凹む第3溝部7eとを備えている。
【0034】
特に限定されないが、底面7a及び側面7bは、それぞれ平面状に形成されている。また、特に限定されないが、第1~第3溝部7c~7eの幅は、例えば、1.0mm~1.5mmとすることができ、また、第1~第3溝部7c~7eが各面7a,6e,7bから凹む深さは、例えば、1.0mm~1.5mmとすることができる。
【0035】
なお、第1溝部7cは、例えば、底面7aと側面7bとの境界の全部に設けられてもよく、また、例えば、一部に設けられてもよい。また、第2溝部7dは、例えば、ベース面6eと側面7bとの境界の全部に設けられてもよく、また、例えば、一部に設けられてもよい。また、特に限定されないが、本実施形態においては、溝部7c,7dは、底へ行くほど幅狭となるように、例えば、断面が半円形状の空間となるように、形成されている。
【0036】
第1溝部7cは、屈曲することによって形成される複数の第1角部7f,7gを備えており、第2溝部7dは、屈曲することによって形成される複数の第2角部7h,7iを備えている。そして、第3溝部7eは、第1角部7f,7g及び第2角部7h,7iとそれぞれ連接するように、側面7b,7b同士の境界で凹む。
【0037】
なお、第3溝部7eは、例えば、側面7b,7b同士の境界の全部に設けられてもよく、また、例えば、一部に設けられてもよい。また、第1角部7f,7gは、鋭角である第1鋭角部7fと、鈍角である第1鈍角部7gとを含み、第2角部7h,7iは、鋭角である第2鋭角部7hと、鈍角である第2鈍角部7iとを含んでいる。
【0038】
サイドモールド6aは、底面7aに設けられる複数の第1ベントホール8aを備えており、凹状部7は、第1ベントホール8a及び第1鋭角部7fとそれぞれ連接するように凹む第4溝部7kを備えている。そして、第4溝部7kは、タイヤ幅方向D1視において第3溝部7eと直線状となるように、延びている。なお、第1鈍角部7gは、第4溝部7kを介することなく、第1ベントホール8aに連接されているが、第4溝部7kによって、第1ベントホール8aに接続されてもよい。
【0039】
サイドモールド6aは、ベース面6eに設けられる複数の第2ベントホール8bを備えており、凹状部7は、第2ベントホール8b及び第2鋭角部7hとそれぞれ連接するように凹む第5溝部7nを備えている。そして、第5溝部7nは、タイヤ幅方向D1視において第3溝部7eと直線状となるように、延びている。なお、第2鈍角7iは、第5溝部7nを介することなく、第2ベントホール8bに連接されているが、第5溝部7nによって、第2ベントホール8bに接続されてもよい。
【0040】
なお、ベントホール8a,8bは、例えば、全ての角部7f~7iに対して設けられてもよく、また、例えば、一部の角部7f~7iに対して設けられてもよい。また、特に限定されないが、第4及び第5溝部7k,7nの幅は、例えば、0.5mm~1.5mmとすることができ、また、第4及び第5溝部7k,7nが各面7a,6eから凹む深さは、例えば、0.5mm~1.5mmとすることができる。
【0041】
ベントホール8a,8bは、サイドモールド6aの内部と外部とを連通している。そして、サイドモールド6aは、ベントホール8a,8bを開閉する開閉弁9を備えている。開閉弁9は、気体が通過可能な孔を内部に有する弁座9aと、孔を閉止する閉止位置と孔を開放する開放位置とに移動可能な弁体9bと、弁体9bが閉止位置から開放位置へ向かうように、弁体9bに力を加える加力部9cとを備えている。
【0042】
開閉弁9においては、通常、加力部9cが弁体9bに力を加えることによって、弁体9bは、弁座9aの孔を開放する開放位置に位置している。一方、タイヤ1の加硫が進むと、ゴムがベントホール8a,8bに近づくことによって、タイヤモールド6aの内部の圧力が低下したり、ゴムが弁体9bに接したりする。それに伴って、弁体9bが加力部9cからの力に反して移動し、弁体9bが弁座9aの孔を閉止する閉止位置に位置する。このように、開閉弁9は、ベントホール8a,8bを開閉する。
【0043】
斯かるサイドモールド6aによれば、凹状部7は、突出部4を成形する。具体的には、底面7aは、頂面4aを成形し、側面7bは、側面4bを成形し、第1~第5溝部7c~7e,7k,7nは、それぞれ第1~第5線状突起部4c~4e,4k,4nを成形し、第1及び第2ベントホール8a,8bは、第1及び第2凸部4j,4mを成形している。
【0044】
以上より、本実施形態に係るタイヤモールド6aは、サイドウォール部1cを成形するサイドウォール成形部6dを備え、前記サイドウォール成形部6dは、ベース面6eから凹む凹状部7を備え、前記凹状部7は、底に配置される底面7aと、前記ベース面6e及び前記底面7aとそれぞれ連接する側面7bと、前記底面7aと前記側面7bとの境界で凹む第1溝部7cと、前記ベース面6eと前記側面7bとの境界で凹む第2溝部7dと、前記第1溝部7c及び前記第2溝部7dとそれぞれ連接するように凹む第3溝部7eと、を備える。
【0045】
斯かる構成によれば、側面7bに存在するエア、即ち、第1溝部7c及び第2溝部7d間に存在するエアは、第3溝部7eによって導かれる。これにより、サイドウォール成形部6dの凹状部7においてエアが滞留することを抑制することができる。
【0046】
なお、斯かるタイヤモールド6aによって成形される空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向D2に延びるサイドウォール部1cを備え、前記サイドウォール部1cは、ベース面3aからタイヤ幅方向D1に突出する突出部4を備え、前記突出部4は、タイヤ幅方向D1の外側端に配置される頂面4aと、前記ベース面3a及び前記頂面4aとそれぞれ連接する側面4bと、前記頂面4aと前記側面4bとの境界で突出する第1線状突起部4cと、前記ベース面3aと前記側面4bとの境界で突出する第2線状突起部4dと、前記第1線状突起部4c及び第2線状突起部4dとそれぞれ連接するように突出する第3線状突起部4eと、を備える。
【0047】
そして、斯かる空気入りタイヤ1は、サイドウォール部1cの突出部4に欠損部が形成されることを抑制された空気入りタイヤ1である。
【0048】
また、本実施形態に係るタイヤモールド6aにおいては、前記第1溝部7cは、屈曲することによって形成される第1角部7f,7gを備え、前記第2溝部7dは、屈曲することによって形成される第2角部7h,7iを備え、前記側面7bは、隣接する同士で連接されるように複数備えられ、前記第3溝部7eは、前記第1角部7f,7g及び前記第2角部7h,7iとそれぞれ連接するように、前記側面7b,7b同士の境界で凹む、という構成である。
【0049】
斯かる構成によれば、第1角部7f,7g及び第2角部7h,7iにエアが滞留し易いことに対して、第3溝部7eは、第1角部7f,7g及び第2角部7h,7iとそれぞれ連接している。これにより、第1角部7f,7g及び第2角部7h,7iにエアが滞留することを抑制することができる。
【0050】
なお、斯かるタイヤモールド6aによって成形される空気入りタイヤ1においては、前記第1線状突起部4cは、屈曲することによって形成される第1角部4f,4gを備え、前記第2線状突起部4dは、屈曲することによって形成される第2角部4h,4iを備え、前記側面4bは、隣接する同士で連接されるように複数備えられ、前記第3線状突起部4eは、前記第1角部4f,4g及び前記第2角部4h,4iとそれぞれ連接するように、前記側面4b,4b同士の境界で突出する。
【0051】
また、本実施形態に係るタイヤモールド6aは、前記底面7aに、前記タイヤモールド6aの内部から外部へ連通するベントホール8aを備え、前記凹状部7は、前記ベントホール8a及び前記第1角部7fとそれぞれ連接するように凹む第4溝部7kを備える、という構成である。
【0052】
斯かる構成によれば、第1角部7fにエアが滞留し易いことに対して、第4溝部7kは、ベントホール8a及び第1角部7fとそれぞれ連接している。これにより、第1角部7fのエアがベントホール8aに導かれるため、第1角部7fにエアが滞留することを効果的に抑制することができる。
【0053】
なお、斯かるタイヤモールド6aによって成形される空気入りタイヤ1においては、前記突出部4は、前記頂面4aから突出する凸部4jと、前記凸部4j及び前記第1角部4fとそれぞれ連接するように突出する第4線状突起部4kと、を備える。
【0054】
また、本実施形態に係るタイヤモールド6aにおいては、前記第4溝部7kは、前記第3溝部7eと直線状となるように、延びる、という構成である。
【0055】
斯かる構成によれば、第3溝部7eに導かれたエアは、第4溝部7kを経由して、ベントホール8aに導かれる。そして、第3溝部7eと第4溝部7kとが直線状となっているため、第3溝部7eに導かれたエアを、第4溝部7kによって確実にベントホール8aへ導くことができる。
【0056】
なお、斯かるタイヤモールド6aによって成形される空気入りタイヤ1においては、前記第4線状突起部4kは、前記第3線状突起部4eと直線状となるように、延びる。
【0057】
また、本実施形態に係るタイヤモールド6aにおいては、前記第1角部7fは、鋭角である、という構成である。
【0058】
斯かる構成によれば、鋭角の第1角部7fにエアが滞留し易いことに対して、第4溝部7kは、ベントホール8a及び第1角部7fとそれぞれ連接している。これにより、第1角部7fのエアがベントホール8aに導かれるため、第1角部7fにエアが滞留することを効果的に抑制することができる。
【0059】
なお、斯かるタイヤモールド6aによって成形される空気入りタイヤ1においては、前記第1角部4fは、鋭角である。
【0060】
なお、空気入りタイヤ1及びタイヤモールド6aは、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1及びタイヤモールド6aは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0061】
(1-1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1及び第2線状突起部4c,4dは、それぞれ角部4f~4iを備え、側面4bは、複数備えられている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1及び第2線状突起部4c,4dは、それぞれ角部4f~4iを備えておらず、側面4bは、一つ備えられている、という構成でもよい。
【0062】
(1-2)また、上記実施形態に係るタイヤモールド6aにおいては、第1及び第2溝部7c,7dは、それぞれ角部7f~7iを備え、側面7bは、複数備えられている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド6aは、斯かる構成に限られない。例えば、第1及び第2溝部7c,7dは、それぞれ角部7f~7iを備えておらず、側面7bは、一つ備えられている、という構成でもよい。
【0063】
(2-1)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第3線状突起部4eは、側面4b,4b同士の境界で突出している、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第3線状突起部4eは、側面4b,4b同士の境界から外れた位置で突出している、という構成でもよい。
【0064】
(2-2)また、上記実施形態に係るタイヤモールド6aにおいては、第3溝部7eは、側面7b,7b同士の境界で凹む、という構成である。しかしながら、タイヤモールド6aは、斯かる構成に限られない。例えば、第3溝部7eは、側面7b,7b同士の境界から外れた位置で凹む、という構成でもよい。
【0065】
(3-1)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、鋭角部4f,4hは、線状突起部4k,4nによって、凸部4j,4mと接続されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、鋭角部4f,4hは、線状突起部4k,4nに直接に連接されている、という構成でもよい。
【0066】
(3-2)また、上記実施形態に係るタイヤモールド6aにおいては、鋭角部7f,7hは、溝部7k,7nによって、ベントホール8a,8bと接続されている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド6aは、斯かる構成に限られない。例えば、鋭角部7f,7hは、ベントホール8a,8bに直接に連接されている、という構成でもよい。
【0067】
(4-1)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、突出部4は、凸部4j,4mを備えている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、突出部4は、凸部4j,4mを備えていない、という構成でもよい。
【0068】
(4-2)また、上記実施形態に係るタイヤモールド6aは、ベントホール8a,8bを備えている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド6aは、斯かる構成に限られない。例えば、タイヤモールド6aは、ベントホール8a,8bを備えておらず、タイヤモールド6aの内部のエアを、モールド6a,6b間の隙間から、タイヤモールド6aの外部へ導いている、という構成でもよい。
【0069】
(5-1)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第4及び第5線状突起部4k,4nは、第3線状突起部4eと直線状となるように、延びる、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第4及び第5線状突起部4k,4nの少なくとも一つは、第3線状突起部4eと傾斜して交差するように、延びる、という構成でもよい。
【0070】
(5-2)また、上記実施形態に係るタイヤモールド6aにおいては、第4及び第5溝部7k,7nは、第3溝部7eと直線状となるように、延びる、という構成である。しかしながら、タイヤモールド6aは、斯かる構成に限られない。例えば、第4及び第5溝部7k,7nの少なくとも一つは、第3溝部7eと傾斜して交差するように、延びる、という構成でもよい。
【0071】
(6-1)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、凸部4j,4mは、角部4f~4iに、連接されている(又は、線状突起部4k,4nによって接続されている)、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、凸部4j,4mは、線状突起部4c,4dの角部4f~4iから外れた位置に、連接されている(又は、線状突起部4k,4nによって接続されている)、という構成でもよい。
【0072】
(6-2)また、上記実施形態に係るタイヤモールド6aにおいては、ベントホール8a,8bは、角部7f~7iに、連接されている(又は、溝部7k,7nによって接続されている)、という構成である。しかしながら、タイヤモールド6aは、斯かる構成に限られない。例えば、ベントホール8a,8bは、溝部7c,7dのうち、角部7f~7iから外れた位置に、連接されている(又は、溝部7k,7nによって接続されている)、という構成でもよい。
【0073】
(7)また、上記実施形態に係るタイヤモールド6aは、ベントホール8a,8bを開閉する開閉弁9を備えている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド6aは、斯かる構成に限られない。例えば、タイヤモールド6aは、図8に示すように、ベントホール8a,8bの少なくとも一つに対して、開閉弁9を備えていない、という構成でもよい。
【0074】
斯かるタイヤモールド6aによって成形される空気入りタイヤ1においては、図9に示すように、凸部4j,4mは、長尺に形成されている。斯かる構成においては、特に限定されないが、凸部4j,4mが各面4a,3aから突出する高さは、例えば、10mm~15mmとすることができる。
【符号の説明】
【0075】
1…空気入りタイヤ、1a…ビード、1b…ビード部、1c…サイドウォール部、1d…トレッド部、1e…カーカス層、1f…インナーライナー層、1g…トレッドゴム、1h…ベルト層、1i…タイヤ最大幅位置、2…サイドウォールゴム、3…ベース部、3a…ベース面、4…突出部、4a…頂面、4b…側面、4c…第1線状突起部、4d…第2線状突起部、4e…第3線状突起部、4f…第1鋭角部、4g…第1鈍角部、4h…第2鋭角部、4i…第2鈍角部、4j…第1凸部、4k…第4線状突起部、4m…第2凸部、4n…第5線状突起部、5…環状突起部、6a…タイヤモールド(サイドモールド)、6b…トレッドモールド、6c…ビードモールド、6d…サイドウォール成形部、6e…ベース面、7…凹状部、7a…底面、7b…側面、7c…第1溝部、7d…第2溝部、7e…第3溝部、7f…第1鋭角部、7g…第1鈍角部、7h…第2鋭角部、7i…第2鈍角部、7k…第4溝部、7n…第5溝部、8a…第1ベントホール、8b…第2ベントホール、9…開閉弁、9a…弁座、9b…弁体、9c…加力部、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、S1…タイヤ赤道面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9