(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】交流き電システム
(51)【国際特許分類】
B60M 3/06 20060101AFI20231116BHJP
H02J 3/06 20060101ALI20231116BHJP
H02J 3/36 20060101ALI20231116BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20231116BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B60M3/06 B
B60M3/06 A
H02J3/06
H02J3/36
H02J3/32
H02J3/46
(21)【出願番号】P 2019215514
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基也
(72)【発明者】
【氏名】宮内 努
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 稔
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117993(JP,A)
【文献】特開2005-205970(JP,A)
【文献】特開2018-016108(JP,A)
【文献】特開2011-126298(JP,A)
【文献】特開2010-040348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 3/06
H02J 3/06
H02J 3/36
H02J 3/32
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するき電区間を形成する第一のき電線と第二のき電線とに跨って電力融通を可能に接続された電力変換器を備えた交流き電システムであって、
前記第一のき電線を介して第一の車両に電力供給する第一の電源と、
前記第二のき電線を介して第二の車両に電力供給する第二の電源と、
前記第二の電源と前記第二のき電線の間に接続された蓄電装置と、
前記電力変換器に電力融通を求める要求電力量と前記蓄電装置に対して充電又は放電させる電力量を指示する充放電指令とを生成する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記き電区間を走行する車両から生ずる回生電力の配分先として、前記蓄電装置よりも前記電力変換器を優先する
とともに、
前記第二の電源からの受電電力と、前記蓄電装置の充放電電力と、の差に基づいて前記要求電力量を生成する、
交流き電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、所定の観測情報及び所定の制御条件に基づいて、前記要求電力量及び前記充放電指令を生成し、
前記観測情報は、少なくとも、前記第二の電源からの受電電力と、前記蓄電装置の充放電電力と、を取得する
請求項1に記載の交流き電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記観測情報としてさらに前記第一の電源からの受電電力と前記電力変換器の出力電力とを取得するとともに、取得された前記第一の電源からの受電電力と、前記第二の電源からの受電電力と、前記蓄電装置の充放電電力と、前記電力変換器の出力電力と、に基づいて前記要求電力量又は前記充放電指令を生成する、
請求項2に記載の交流き電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第二の電源からの受電電力と前記充放電電力の差と、前記第一の電源からの受電電力と前記電力変換器の出力電力の差と、に基づいて、前記要求電力量を生成する、
請求項
3に記載の交流き電システム。
【請求項5】
隣接するき電区間を形成する第一のき電線と第二のき電線とに跨って電力融通を可能に接続された電力変換器を備えた交流き電システムであって、
前記第一のき電線を介して第一の車両に電力供給する第一の電源と、
前記第二のき電線を介して第二の車両に電力供給する第二の電源と、
前記第二の電源と前記第二のき電線の間に接続された蓄電装置と、
前記電力変換器に電力融通を求める要求電力量と前記蓄電装置に対して充電又は放電させる電力量を指示する充放電指令とを生成する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記き電区間を走行する車両から生ずる回生電力の配分先として、前記蓄電装置よりも前記電力変換器を優先するとともに、前記第二の電源からの受電電力から前記
蓄電装置の充放電電力の成分を分離することで前記要求電力量を生成する、
交流き電システム。
【請求項6】
隣接するき電区間を形成する第一のき電線と第二のき電線とに跨って電力融通を可能に接続された電力変換器を備えた交流き電システムであって、
前記第一のき電線を介して第一の車両に電力供給する第一の電源と、
前記第二のき電線を介して第二の車両に電力供給する第二の電源と、
前記第二の電源と前記第二のき電線の間に接続された蓄電装置と、
前記電力変換器に電力融通を求める要求電力量と前記蓄電装置に対して充電又は放電させる電力量を指示する充放電指令とを生成する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記き電区間を走行する車両から生ずる回生電力の配分先として、前記蓄電装置よりも前記電力変換器を優先するとともに、前記第二の電源からの受電電力と前記
蓄電装置の充放電電力の差に基づいて前記充放電指令を生成する、
交流き電システム。
【請求項7】
前記第二の電源は三相交流を供給し、
該第二の電源と前記第二のき電線との間に三相交流と単相交流とを相数変換可能な変圧器を介在し、
前記変圧器の三相交流側に接続された前記蓄電装置は、前記三相交流と直流とを双方向に変換可能な三相交流適応型の交直変換器を有する、
請求項1~
6の何れか1項に記載の交流き電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気鉄道の交流き電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道におけるエネルギー効率の向上を図るため、回生ブレーキにより発生した電力(回生電力)の有効活用が注目されている。回生ブレーキとは、車両に搭載されたモータの起電力により制動力を確保する減速手段で、従来の摩擦ブレーキでは熱として捨てていた車両の運動エネルギーを電力に変換することで再利用が可能となる。回生ブレーキにより発生した回生電力は、架線を介して、他の列車の駆動用電力へと供給されてきた。
【0003】
ただし、架線は所定の間隔でき電区間として電気的に分離されているため、同一き電区間に回生電力を消費する駆動中の車両(以下、「力行車両」ともいう)が不在となる場合には回生電力を活用できない。このため、力行車両が同一き電区間内に不在となる状況でも回生電力を有効に活用する技術が必要とされている。
【0004】
このような課題に対する技術として、特許文献1により電鉄き電線の制御装置およびシステムが開示されている。この公報では、隣接するき電区間を電力変換器を介して接続し、電力変換器がき電区間の間で電力を融通することで、回生電力を供給できるき電区間を拡大し、回生電力の活用機会を向上することを可能としている。
【0005】
さらに、特許文献2に開示された電力変換器および電力変換器の制御方法では、特許文献1の電力変換器の構成に蓄電装置を組み込むことで、回生電力の活用機会を一層向上することを可能としている。すなわち、特許文献2の技術では、隣接したき電区間のどちら側にも力行車両が不在となる場合においても、回生電力を蓄電装置に充電することで回収し、これを力行車両が現れた際に放電することで有効に活用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-104962号公報
【文献】特開2014-117993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の電力変換器を既に備えた路線に対して特許文献2の電力変換器を導入するためには、既設の電力変換器を、一式交換する必要があり、導入費用が高くなるという問題がある。すなわち、蓄電装置を含まない既設の電力変換器から、蓄電装置を備えた電力変換器へと機能向上させるには、既設の電力変換器に対して、単に蓄電装置を付設すれば足りるというものではない。
【0008】
まず、既設の電力変換器は、単相交流のき電線どうし隣接する区間に跨って、電力融通する第1機能がある。これに対し、特許文献2の構成に適合させるためには第2機能が必要である。この第2機能は、電力変換器に実質上組み込まれる蓄電装置に対し、電力融通する機能である。これら、第1機能と第2機能を併せ持ちながら、合理的に統合制御された電力変換器を実現するには、既設の電力変換器の構成に適合した蓄電装置の設計と制御の開発が必要となり容易でない。
【0009】
また、導入費用を抑えて第2機能を安直に実現するため、電力変換器の制御とは独立した制御によって、回生電力を充電する蓄電装置を設置することも考えられる。そのような独立制御の場合、電力変換器と蓄電装置とを合理的に統合制御することが困難である。その結果、回生電力を活用する電力変換器と蓄電装置と双方の機能が競合し、不安定動作や非効率な動作配分が引き起こされ、導入設備の利用効率が悪化するという問題がある。
【0010】
より具体的には、隣接するき電区間に跨る交流き電系統において、力行車両不在のため消費され難い回生電力を隣接する区間へ融通しようとする電力変換器と、同じ発生源の回生電力を充電しようとする蓄電装置と、両方が同時に作動した場合に両者が電力を取り合うように干渉する。その結果、エネルギー効率と安定化の観点から不合理な現象、例えば、回生電力の配分が定まらないような現象が引き起こされる。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電力変換器と蓄電装置との干渉を回避するとともに、回生電力の活用率、さらに導入設備の利用効率を向上するようにした交流き電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。すなわち、隣接するき電区間を形成する第一のき電線と第二のき電線とに跨って電力融通を可能に接続された電力変換器を備えた交流き電システムであって、第一のき電線を介して第一の車両に電力供給する第一の電源と、第二のき電線を介して第二の車両に電力供給する第二の電源と、第二の電源と第二のき電線の間に接続された蓄電装置と、電力変換器に電力融通を求める要求電力量と蓄電装置に対して充電又は放電させる電力量を指示する充放電指令とを生成する制御装置と、を備え、制御装置は、所定の観測情報及び所定の制御条件に基づいて、要求電力量及び充放電指令を生成し、観測情報は、少なくとも、第二の電源からの受電電力と、蓄電装置の充放電電力と、を取得し、制御条件は、き電区間を走行する車両から生ずる回生電力の配分として、蓄電装置よりも電力変換器を優先する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力変換器と蓄電装置との干渉を回避するとともに、回生電力の活用率、さらに導入設備の利用効率を向上するようにした交流き電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係る交流き電システムの系統構成図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る制御のブロック線図である。
【
図3A】
図1の系統構成において、第一の車両が力行中、第二の車両が回生中であり、かつ、回生電力が力行電力より小さい場合の電力潮流図である。
【
図3B】
図1の系統構成において、第一の車両が回生中、第二の車両が力行中であり、かつ、回生電力が力行電力より大きい場合の電力潮流図である。
【
図4A】
図1の系統構成において、第一の車両が力行中、第二の車両が回生中であり、かつ、回生電力が力行電力より大きい場合の電力潮流図である。
【
図4B】
図1の系統構成において、第一の車両が回生中、第二の車両が力行中であり、かつ、回生電力が力行電力より小さい場合の電力潮流図である。
【
図5A】
図1の系統構成において、第一の車両と第二の車両が共に回生中の電力潮流図である。
【
図5B】
図1の系統構成において、第一の車両と第二の車両が共に力行中の電力潮流図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る交流き電システムの系統構成図である。
【
図7】本発明の実施例2に係る制御のブロック線図である。
【
図8A】
図6の系統構成において、第一の車両が力行中、第二の車両が回生中であり、かつ、回生電力が力行電力より小さい場合の電力潮流図である。
【
図8B】
図6の系統構成において、第一の車両が回生中、第二の車両が力行中であり、かつ、回生電力が力行電力より大きい場合の電力潮流図である。
【
図9A】
図6の系統構成において、第一の車両が力行中、第二の車両が回生中であり、かつ、回生電力が力行電力より大きい場合の電力潮流図である。
【
図9B】
図6の系統構成において、第一の車両が回生中、第二の車両が力行中であり、かつ、回生電力が力行電力より小さい場合の電力潮流図である。
【
図10A】
図6の系統構成において、第一の車両と第二の車両が共に回生中の電力潮流図である。
【
図10B】
図6の系統構成において、第一の車両と第二の車両が共に力行中の電力潮流図である。
【
図11】本発明の実施例3に係る交流き電システムの系統構成図である。
【
図12】本発明の実施例4に係る交流き電システムの系統構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係る交流き電システムの系統構成図である。
図1に示す交流き電システム14は、第一の車両1aと、第二の車両1bと、第一のき電線2aと、第二のき電線2bと、第一の電源4aと、第二の電源4bと、電力変換器5と、蓄電装置6と、制御装置7から構成される。第一の車両1aは、第一のき電線2aとの間で電力の授受を可能にパンタグラフ等の接触子で摺接しながら走行する。
【0017】
第一の車両1aが力行する際には第一のき電線2aから電力の供給を受ける。第一の車両1aが回生する際には第一のき電線2aへ電力を供給する。第一のき電線2aは、第一の電源4aと第一の結節点12aで接している。第一の車両1aが力行する際には、第一の電源4aから電力の供給を受ける。第一の車両1aが回生する際には、第一の電源4aへ電力を供給する。
【0018】
第二の車両1bは、第二のき電線2bとの間で電力の授受を可能にパンタグラフ等の接触子で摺接しながら走行する。第二の車両1bが力行する際には第二のき電線2bから電力の供給を受ける。第二の車両1bが回生する際には第二のき電線2bへ電力を供給する。第二のき電線2bは、第二の電源4bと第二の結節点12bで接している。第二の車両1bが力行する際には、第二の電源4bから電力の供給を受ける。第二の車両1bが回生する際には、第二の電源4bへ電力を供給する。
【0019】
ここで、第一のき電線2aが給電する区間を第一のき電区間13aと呼ぶ。同様に、第二のき電線2bが給電する区間を第二のき電区間13bと呼ぶ。蓄電装置6は、第二の結節点12bと第二の電源4bの間に接続されており、充放電指令10に従って充放電する。充放電指令10は、後に詳述する制御装置7が生成する。
【0020】
電力変換器5は、第一のき電線2aと第二のき電線2bに跨って接続されており、第一のき電線2aから第二のき電線2bへ電力を融通する。このとき、電力変換器5は、後述するように、第一の要求電力量11aと第二の要求電力量11bを相殺する。なお、第一のき電線2aと第二のき電線2bとは絶縁されており、電力変換器5を介せずに相互に電力融通されることはない。
【0021】
電力変換器5は、第一の要求電力量11aとして、第一の電源4aから受電する第一の受電電力8aが与えられる。また、電力変換器5は、第二の要求電力量11bとして、制御装置7が出力する値を与えられる。制御装置7は、第二の電源4bから受電する第二の受電電力8bと蓄電装置6の充放電電力9を入力とし、蓄電装置6の充電よりも優先して、電力変換器5が第一のき電線2aと第二のき電線2bとの間で、回生電力を融通するように第二の要求電力量11bと充放電電力10を出力する。
【0022】
これにより、交流き電システム14は、電力変換器5を経由して供給できるような、隣接するき電区間13a,13bの相手側から、電力融通を受けられたならば、第一の電源4a、第二の電源4b、及び蓄電装置6からの電力供給を受けないか、又は軽減することを可能にする。特に、上述した相手側から受けた電力融通だけで充足できるならば、蓄電装置6の利用頻度を少なくし、充足できない分だけを充放電電力9で補填する。
【0023】
図2は、本発明の実施例1に係る制御のブロック線図である。すなわち、
図2は、実施例1に係る交流き電システム14における制御装置7の処理を例示する。第二の受電電力8bの符号としては、正を供給(第二の電源4bから第二のき電線2bへ向かう電力)、負を逆潮(第二のき電線2bから第二の電源4bへ向かう電力)と定義し、充放電電力9の符号としては、正を充電、負を放電と定義する。
【0024】
制御装置7は電力変換器5による電力融通を蓄電装置6の充放電よりも優先させる。その概念として、第二の要求電力量11bは、第二の受電電力8bから充放電電力9を分離し、蓄電装置6が停止させた状態に相当する第二の受電電力8bが与えられる。具体的には、第二の要求電力量11bとして、第二の受電電力8bから充放電電力9を差し引いた値が与えられる。これにより、上述した隣接するき電区間13a,13bの相手側(13a)から受けた電力融通だけで充足できるならば、蓄電装置6の利用頻度を少なくし、充足できない分だけを充放電電力9で補填する。
【0025】
また、充放電指令10としては、電力変換器5が動作している下で、第二の結節点12bから第二の電源4bへと向かう電力を与える。具体的には、充放電指令10として、充放電電力9から第二の受電電力8bを差し引いた値を与える。これにより、制御装置7は、第二の結節点12bから第二の電源4bへと向かう回生電力の仕向けについて、蓄電装置6に追加充電可能な空き容量がある限り、第二の電源4bへ戻さずに正の充放電電力9だけで吸収させる。
【0026】
また、制御装置7は、蓄電装置6に追加充電可能な空き容量に制限があるときは、可能な限り正の充放電電力9で吸収させて、そこからあふれる分だけを第二の電源4bへ戻す。つまり、回生電力の配分について、できるだけ電力系統へは戻さずに、鉄道施設のみで吸収して再利用するように、制御装置7が制御する。その方が効率的である。
【0027】
図3A、
図3B、
図4A、
図4B、
図5A、
図5Bは、実施例1に係る交流き電システム14の動作を示す説明図である。これら
図3A~
図5Bは、
図1に示した実施例1に係る交流き電システム14の系統構成上に、電力潮流を重ねて示した図である。これらの図では、挙動が異なる6つの条件毎の電力潮流31を矢印で明示することにより、それぞれの効果を説明する。なお、電力潮流31の太さは電力の強度に対応する。
【0028】
図3Aは第一の車両1aが力行中、第二の車両1bが回生中であり、かつ、回生電力が力行電力より小さい場合である。この場合、電力変換器5は第一の車両1aの力行電力と第二の車両1bの回生電力を相殺するように、第二のき電区間13bから第一のき電区間13aに電力を融通する。
【0029】
これにより、第一の結節点12aにおいては、第一の車両1aの力行電力のうち、第二の車両1bの回生電力からの供給で不足する分が第一の電源4aから供給される。また、第二の結節点12bにおいては、流れる電力が0であり、蓄電装置6は充放電しない。このため、第二の電源4bへの電力は0となる。
【0030】
このように、第二のき電区間13bに発生した回生電力が第一のき電区間13bの力行電力として全て活用できる場合には、蓄電装置6が充放電することなく、第二のき電区間13bに発生した全ての回生電力が第一のき電区間13aの力行電力として活用される。回生電力が力行電力として活用された分、電源からの供給される電力を削減できる。
【0031】
図3Bは第一の車両1aが回生、第二の車両1bが力行しており、かつ、回生電力が力行電力より大きい場合である。この場合、
図3Aの場合の電力潮流31が反転し、第一のき電区間13aに発生した全ての回生電力が第二のき電区間13bの力行電力として活用される。回生電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。
【0032】
図4Aは第一の車両1aが力行中、第二の車両1bが回生中であり、かつ、回生電力が力行電力より大きい場合である。この場合、電力変換器5は第一の車両1aの力行電力と第二の車両1bの回生電力を相殺するように、第二のき電区間13bから第一のき電区間13aに電力を融通する。
【0033】
これにより、第一の結節点12aにおいては、第一の電源4aから供給される電力が0となる。また、第二の結節点12bにおいては、第二の車両1bの回生電力のうち、第一の車両1aで消費しきれない余剰分が流入する。このため、蓄電装置6が第二の結節点1bに流入する回生電力の余剰分を充電する。これにより、第二の電源4bへと流れる電力は0となる。
【0034】
このように、第二のき電区間13bに発生した回生電力の一部のみしか第一のき電区間13bの力行電力として活用できない場合には、第二のき電区間13bに発生した回生電力は、第一のき電区間13aの力行電力として活用され、余剰分が蓄電装置6に充電される。
【0035】
回生電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。充電された回生電力は、放電する機会に活用され、電源が供給する電力の削減に寄与する。
【0036】
図4Bは第一の車両1aが回生、第二の車両1bが力行しており、かつ、回生電力が力行電力より小さい場合である。この場合、
図3Bの場合の電力潮流31が反転し、第二のき電区間13bの力行電力は、第一のき電区間13aの回生電力と、蓄電装置6に充放電電力により供給される。
【0037】
回生電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。さらに、蓄電装置6の充放電電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。
【0038】
図5Aは、第一の車両1aと第二の車両1bが共に回生中の場合である。
この場合、第一の車両1aの電力と第二の車両1bの電力は相殺できないため、電力変換器5は動作しない。
【0039】
このため、第一の結節点12aにおいては、第一の車両1aの回生電力が第一の電源4aに流れる。また、第二の結節点12bにおいては、第二の車両1bの回生電力が全て流入する。このため、蓄電装置6が第二の結節点1bに流入する回生電力を充電する。これにより、第二の電源4bへと流れる電力は0となる。
【0040】
このように、第一のき電区間13aの回生電力と第二のき電区間13bの双方で回生電力が発生した場合には、第二のき電区間13bに発生した回生電力が蓄電装置6に充電される。充電された回生電力は、放電する機会に活用され、電源が供給する電力の削減に寄与する。すなわち電力事業者から購入する電力使用量を削減し、省エネで電気料金の節約になる。
【0041】
図5Bは第一の車両1aと第二の車両1bが共に力行している場合である。この場合、
図5Aに示した電力潮流31が反転し、第二のき電区間13bの力行電力は、蓄電装置6の充放電電力により供給される。この充放電電力が力行電力として活用された分、上述のように、省エネで電気料金の節約になる。
【0042】
以上のように、実施例1に係る交流き電システム14によれば、電力変換器5による融通により力行電力として消費され、残留分のみが蓄電装置6に充電するように回生電力が配分される。その結果、化学的エネルギー変換を伴うことで電力変換効率が相対的に低い蓄電装置6による利用を抑制することができる。
【0043】
また、交流き電システム14によれば、回生電力の充電と同じように、放電機会が得られ、充電した回生電力を力行電力として活用することができる。このように、電力変換器5と蓄電装置6が競合することなく動作させ、回生電力の利用機会と利用効率を向上することが可能となる。すなわち、蓄電装置6との機能干渉を回避するとともに、電力損失を抑制するように回生電力を配分することで、回生電力の活用率を向上させ、低コスト化を実現することが可能である。
【実施例2】
【0044】
図6は本発明の実施例2に係る交流き電システムの系統構成図である。
図6に示す実施例2の交流き電システム15は、実施例1に対し、つぎの相違点がある。すなわち、実施例1の交流き電システム14の制御装置7に対し、実施例2の制御装置7aへの入力として第一の受電電力8aと電力変換器5の融通電力41を追加した。さらに、その制御装置7aは、第一のき電区間13aを走行する第一の車両1aの回生電力又は力行電力を蓄電装置6に対して充放電するように、第二の要求電力量11bと充放電指令10を出力する点が異なる。
【0045】
図7は、本発明の実施例2に係る制御のブロック線図である。すなわち、
図7は、実施例2に係る交流き電システム15における制御装置7aの処理を例示する。第一の受電電力8aの符号として、正を供給(第一の電源4aから第一のき電線2aへ向かう電力)、負を逆潮(第一のき電線2aから第一の電源4aへ向かう電力)と定義し、融通電力41の符号としては、正を第一のき電線2aから第二のき電線2bへ向かう融通電力、負を第二のき電線2bから第一のき電線2aへ向かう融通電力と定義する。第二の受電電力8bの符号、および、充放電電力9の符号としては、実施例1と同様に定義する。
【0046】
制御装置7aは電力変換器5による電力融通を蓄電装置6の充放電よりも優先させるとともに、第一の車両1aの電力を蓄電装置6に充放電させるため、実施例1の第二の要求電力量11bに対し、第一の車両1aの電力を強制的に第二のき電線2bへ融通するように仮想負荷を加算して与える。
【0047】
具体的には、第二の受電電力8bから充放電電力9を差引いた値に対し、第一の車両1aの電力の逆数に対応する融通電力41から第一の受電電力8aを差し引いた値を加算して与える。
【0048】
なお、蓄電装置6の能力以上の電力を融通することを回避するため、蓄電装置6の出力限界に対応するリミッタ51を挿入する。また、充放電指令10としては、充放電電力9から第二の受電電力8bを差し引いた値を与え、実施例1と同様である。
【0049】
図8A、
図8B、
図9A、
図9B、
図10A、
図10Bは、実施例2に係る交流き電システム15の動作を示す説明図である。これら
図8A~
図10Bは、実施例1の構成図上に、挙動が異なる6つの条件毎の電力潮流31を矢印で明示することにより、それぞれの効果を説明する。ここでも、電力潮流31の太さは電力の強度に対応する。
【0050】
図8Aは、
図6の系統構成において、第一の車両1aが力行中、第二の車両1bが回生中であり、かつ、回生電力が力行電力より小さい場合の電力潮流図である。この潮流の場合、電力変換器5は第一の車両1aの力行電力に相当する電力を第二のき電区間13bから第一のき電区間13aに融通する。これにより、第一の結節点12aにおいては、第一の電源4aから供給される電力が0となる。一方、第二の結節点12bにおいては、第一の車両1aの力行電力のうち、第二の車両1bの回生電力からの供給で不足する分の負荷が発生する。
【0051】
このため、蓄電装置6が第二の結節点12bの負荷に対応して放電する。これにより、第二の電源4bから供給される電力は0となる。このように、第一のき電区間13aに発生した力行電力が第二のき電区間13bに発生した回生電力より大きい場合には、第二のき電区間13bに発生した回生電力が第一のき電区間13aの力行電力として活用され、なお不足する力行電力に対して蓄電装置6の放電により供給される。回生電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。さらに、充放電電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。その結果、上述のように、省エネで電気料金の節約になる。
【0052】
図8Bは、
図6の系統構成において、第一の車両1aが回生中、第二の車両1bが力行中であり、かつ、回生電力が力行電力より大きい場合の電力潮流図である。この潮流の場合、
図8Aの電力潮流が反転し、第一のき電区間13aに発生した回生電力が、第二のき電区間13bの力行電力として活用され、余剰分が蓄電装置6に充電される。
【0053】
回生電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。充電された回生電力は、放電する機会に活用され、電源からの供給電力削減に寄与する。
【0054】
図9Aは、
図6の系統構成において、第一の車両1aが力行中、第二の車両1bが回生中であり、かつ、回生電力が力行電力より大きい場合の電力潮流図である。この潮流の場合、電力変換器5は第一の車両1aの力行電力と第二の車両1bの回生電力を相殺するように、第二のき電区間13bから第一のき電区間13aに電力を融通する。
【0055】
これにより、第一の結節点12aにおいては、第一の電源4aから供給される電力が0となる。また、第二の結節点12bにおいては、第二の車両1bの回生電力のうち、第一の車両1aで消費しきれない余剰分が流入する。このため、蓄電装置6が第二の結節点1bに流入する回生電力の余剰分を充電する。これにより、第二の電源4bへと流れる電力は0となる。
【0056】
このように、第二のき電区間13bに発生した回生電力の一部のみしか第一のき電区間13bの力行電力として活用できない場合には、第二のき電区間13bに発生した回生電力は、第一のき電区間13aの力行電力として活用され、余剰分が蓄電装置6に充電される。回生電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。充電された回生電力は、放電する機会に活用され、電源が供給する電力の削減に寄与する。
【0057】
図9Bは、
図6の系統構成において、第一の車両1aが回生、第二の車両1bが力行しており、かつ、回生電力が力行電力より小さい場合の電力潮流図である。この潮流の場合、
図9Aの電力潮流31が反転し、第二のき電区間13bの力行電力は、第一のき電区間13aの回生電力と、蓄電装置6に充放電電力により供給される。
【0058】
回生電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。さらに、充放電電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。
【0059】
図10Aは、
図6の系統構成において、第一の車両1aと第二の車両1bが共に回生中の電力潮流図である。この潮流の場合、電力変換器5は第一の車両1aの回生電力を、第二のき電区間13bに融通する。これにより、第一の結節点12aにおいては、第一の電源4aへと向かう電力は0となる。一方、第二の結節点12bにおいては、第一の車両1aの回生電力と第二の車両1bの回生電力の合計が流入する。このため、蓄電装置6が第二の結節点12bの電力を充電する。これにより、第二の電源4bへと流れる電力は0となる。
【0060】
このように、第一のき電区間13aの回生電力と第二のき電区間13bの双方で回生電力が発生した場合には、第一のき電区間13aに発生した回生電力と第二のき電区間13bに発生した回生電力が蓄電装置6に充電される。充電された回生電力は、放電する機会に活用され、電源が供給する電力の削減に寄与する。
【0061】
図10Bは、
図6の系統構成において、第一の車両1aと第二の車両1bが共に力行中の電力潮流図である。この潮流の場合、
図10Aの電力潮流31が反転し、蓄電装置6が放電した電力は、第二のき電区間13bの力行電力に供給されると共に、第一のき電区間13aの力行電力にも供給される。充放電電力が力行電力として活用された分、電源から供給される電力を削減できる。
【0062】
以上のように、実施例2により、実施例1の効果に加え、第一の車両1aで発生する回生電力を蓄電装置6に充放電させることで、回生電力の利用機会を向上することが可能となる。
【実施例3】
【0063】
図11は、本発明の実施例3に係る交流き電システムの系統構成図である。
図11に示す実施例3の交流き電システム16は、
図1に示す実施例1の交流き電システム14に対し、つぎの相違点を有する。まず、第一のき電線2aと第一の電源4aとの間に、第一の変圧器3aを備える。同様に、第二のき電線2bと第一の電源4bとの間に、第二の変圧器3bを備える点が実施例1の形態とは異なる。
【0064】
これら第一の変圧器3a、又は第二の変圧器3bとして、例えば、スコット結線変圧器が採用できる。スコット結線変圧器とは、三相から二相に変換する変圧器で、電力系統の三相電源から交流き電に必要な単相負荷を上り方面/下り方面の二系統に割り当てるために一般的に使用されている。
【0065】
図11において、第一の変圧器3aは、その一次側に三相電源として第一の電源4aを接続し、二次側に単相負荷として第一のき電線2aが接続され、3/2相変換するとともに2系統に分割する。同様に、第二の変圧器3bは、その一次側に三相電源として第二の電源4bを接続し、二次側に単相負荷として第二のき電線2bが接続され、3/2相変換するとともに2系統に分割する。なお、第一、第二の変圧器3a,3bは、何れも、一次側から二次側へ一方行の電力潮流に限らず、その逆潮流も可能である。
【0066】
図11に示す実施例3の交流き電システム16は、制御装置7が観測情報を取得するため、第一の受電電力8aの測定点を第一の変圧器3aより第一の電源4a側、第二の受電電力8bの測定点を第二の変圧器3bより第二の電源4b側とする。これにより取得される観測情報は、
図1に示した実施例1の交流き電システム14と同様になり、実施例1と同じ効果が得られる。なお、実施例3の交流き電システム16は、つぎのような背景の下に技術的意義が見出される。
【0067】
一般的な三相交流の電力系統を支援することに適応した蓄電システム(以下、「三相交流用蓄電装置」ともいう)の技術がある。近年、この三相交流用蓄電装置は、産業用蓄電システムと呼ばれるほどに、防災、ピークカット、ピークシフトの用途、又は再生可能エネルギーを活用するために広く普及されており、量産効果と市場での競争原理により合理的価格で提供されている。
【0068】
その技術は、蓄電池に組み合わせて三相交流の電力系統における潮流変化に対応可能なインバータやコンバータ等の交直変換機能、及びその制御機能にも波及しており、これら一式をユニット調達することも容易になっている。
【0069】
一方、用途が限定される単相交流用蓄電装置は、現在のところ、普及が進んでいない。したがって、これを導入するためには、単相交流の電力系統における潮流変化を検出するセンサ類、潮流変化に対応可能なインバータやコンバータ等の交直変換機能、及びその制御機能に至る全部を設計開発することを余儀なくされる。しかし、当該技術を適用する事業者は、そのようにして導入費用が膨らむことを避けたい。
【0070】
そこで、導入費用を抑えるため、単相交流用蓄電装置を用いず、一般的な三相交流用蓄電装置の完成ユニット等を電気鉄道に適用することが考えられる。この場合、
図11に示すように、三相交流用蓄電装置6aは、単相交流側の電力変換器5からは独立し、三相交流側に接続される。このような構成による実施例3の交流き電システム16は、実施例1の交流き電システム14と同じ効果が得られることに加えて、設備導入費用が軽減できるので、実施される可能性が高い。
【実施例4】
【0071】
図12は、本発明の実施例4に係る交流き電システムの系統構成図である。
図12に示す実施例4の交流き電システム17も、
図11に示した実施例3の交流き電システム16と同様に、第一、第二の変圧器3a,3bを備えている。第一、第二の変圧器3a,3bは、それぞれが、一系統の三相電源を3/2相変換するとともに、二系統の単相負荷に分割する。第一、第二の変圧器3a,3bは、何れも、一次側から二次側へ一方行の電力潮流に限らず、その逆潮流も可能である点でも同様である。
【0072】
図12に示す実施例4の交流き電システム17は、制御装置7aが観測情報を取得するため、第一の受電電力8aの測定点を第一の変圧器3aより第一の電源4a側、第二の受電電力8bの測定点を第二の変圧器3bより第二の電源4b側とすることで、観測値は実施例2と同様となる。このような構成による実施例4の交流き電システム17は、実施例2の交流き電システム15と同等の優れた効果が得られることに加えて、なお、設備導入費用が軽減できるので、実施される可能性が極めて高い。
【0073】
本発明の実施形態に係る交流き電システム14~17は、つぎのように総括される。
<実施例1~4>
[1]
図1~
図12に示した交流き電システム14~17は、隣接するき電区間13a,13bを形成する第一のき電線2aと第二のき電線2bとに跨って電力融通を可能に接続された電力変換器5,5を備えた。この交流き電システム14~17は、さらに、第一の電源4aと、第二の電源4bと、蓄電装置6,6aと、制御装置7,7aと、を備えた。
【0074】
第一の電源4aは、第一のき電線2aを介して第一の車両1aに電力供給する。第二の電源4bは、第二のき電線2bを介して第二の車両1bに電力供給する。蓄電装置6と、第二の電源4bと第二のき電線2bの間に接続される。制御装置7は、要求電力量11a,11b及び充放電指令10を、所定の観測情報と、所定の制御条件と、に基づいて生成する。
【0075】
要求電力量11a,11bは、電力変換器5,5に対して電力融通を求める電力量である。充放電指令10は、蓄電装置6に対して充電又は放電させる電力量を指示する。観測情報は、第二の電源4bからの受電電力8bと、蓄電装置6,6aの充放電電力9と、である。制御条件は、き電区間13a,13bを走行する車両1a,1bから生ずる回生電力の配分として、蓄電装置6,6aよりも電力変換器5,5を優先する。その理由は、電気的変換のみを伴う電力変換器5,5の方が、電気から化学的エネルギーへの変換を伴う蓄電装置6よりもエネルギー変換効率が高いからである。
【0076】
また、交流き電システム14~17において、き電区間13a,13bを力行する車両がなく、もっぱら回生状態の車両1a,1bから生ずる回生電力が自然には吸収されないとき、制御条件がつぎのように規定されている。すなわち、自然には吸収先の無い回生電力の配分として、制御装置7,7aは、蓄電装置6,6aよりも電力変換器5,5を優先するように制御条件がプログラムされている。この制御条件を実現するためのプログラムを実行するコンピュータを制御装置7,7aに具備しても良いが、他の電子回路で実現しても構わない。
【0077】
ここで、
図1の交流き電システム14、及びその符号のみを用いて説明する。制御装置7は、第二の電源4bからの受電電力8bと、蓄電装置6の充放電電力9と、を観測情報として検出し、両者の絶対値及び大小関係を参照した上で、上述の制御条件を実現するように、要求電力量11b及び充放電指令10それぞれの値を最適に調整して生成する。多様な潮流に応じた中の一例として、第二の電源4bからの受電電力8bが、大きければ、第二のき電線2bには多くの回生電力を配分する余地があるので、電力変換器5によって電力融通するが、そうでなければ充放電電力9により吸収させる。
【0078】
自然の潮流による吸収先の無い回生電力は、上述した理由による低効率の蓄電装置6に充電されるよりも、先に高効率の電力変換器5だけで、隣接するき電区間13a,13bの相手側へと融通できないかを試行される。それで吸収できない場合に限って、行き場の無い回生電力を蓄電装置6に充電させることで吸収する。これにより、もっぱら回生状態の車両1a,1bしか在線していなくとも、これらに回生ブレーキが有効に作用する。
【0079】
逆に、き電区間13s,13bにそれぞれ在線する車両1a,1bの何れかが力行中であれば、蓄電装置6から放電させる前に、まず電力変換器5を経由して供給できるような、隣接するき電区間13a,13bの相手側から電力融通を受けられないかどうかを優先的に試行して、足りなければ蓄電装置6から放電させる。
【0080】
このように制御条件として、高効率の電力変換器5を多用するように、制御装置7がそのプログラムにより明確に規定して実行するので、高効率を維持できる。その結果、隣接するき電区間13a,13bに跨る既設の電力変換器5を生かしつつ、その電力融通機能を増進するために付設された蓄電装置6を不具合なく活用できる。すなわち、交流き電システム14~17は、電力変換器5と蓄電装置6の動作干渉を回避するとともに、回生電力の活用率、さらに導入設備利用率を向上することが可能となる。
【0081】
<実施例1>
[2]上記[1]において、制御装置7は、制御条件を実現させるため、観測情報における受電電力8bと充放電電力9との差に基づいて要求電力量11bを生成する。すなわち、制御装置7は、観測情報における受電電力8bから充放電電力9を差し引いた値を要求電力量11bとして与える。つまり、制御装置7は、要求電力量11bとしては、受電電力8bから充放電電力9を差し引き計算することにより分離し、あたかも蓄電装置6が停止した状態に相当する受電電力8bを与える。そのように制御装置7が制御すれば、上述の制御条件を実現させられる。すなわち、電力融通は、蓄電装置6の充放電よりも電力変換器5に優先して配分される。
【0082】
[3]上記[1]において、制御装置7,7aは、制御条件を実現させるため、観測情報における受電電力8bから充放電電力9の成分を分離することで要求電力量11bを生成しても良い。これにより、制御装置7,7aは、観測情報における受電電力8bから充放電電力9を分離し、あたかも蓄電装置6,6aが停止した状態に相当する受電電力8bを与える。そのように制御装置7,7aが制御すれば、上述の制御条件を実現させられる。すなわち、電力融通は、蓄電装置6,6aの充放電よりも電力変換器5に優先して配分される。
【0083】
[4]上記[1]において、制御装置7,7aは、制御条件を実現させるため、第二の電源4bからの受電電力8bと充放電電力9の差に基づいて充放電指令10を生成しても良い。これにより、制御装置7,7aは、生成された充放電指令10を用いて制御条件を実現させることが可能である。
【0084】
<実施例2>
つぎに、
図6~
図10Bに示した本発明の実施例2に係る交流き電システム15について総括する。
[5]上記[1]に含まれた、
図6に示す実施例2の交流き電システム15において、制御装置7aは、観測情報として、さらに第一の電源4aからの受電電力8aと、電力変換器5の出力電力41と、を取得する。これらを用いるように、制御装置7aは、第一の電源4aからの受電電力8aと、第二の電源4bからの受電電力8bと、蓄電装置6の充放電電力9と、電力変換器5の出力電力41と、に基づいて、要求電力量11a,11b及び充放電指令10を生成する。
【0085】
実施例2の交流き電システム16によれば、制御装置7aは、多面的に広範囲で検出される観測情報を取得して追加する。すなわち、制御装置7aは、隣接するき電区間13a,13bのうち電力供給する蓄電装置6から遠い第一の電源4aからの受電電力8aと、電力変換器5の出力電力41と、を観測情報に追加する。その結果、上述の制御条件をより精密に実現させることが可能である。
【0086】
[6]上記[5]の交流き電システム16において、制御装置7aは、
図7に示す制御のブロック線図の演算処理を観測情報に対して実行しても良い。すなわち、制御装置7aは、第二の電源4bからの受電電力8bと充放電電力9の差に基づいて、要求電力量11bを生成しても良い。また、制御装置7aは、第一の電源4aからの受電電力8aと電力変換器5の出力電力41の差に基づいて、要求電力量11bを生成するようにしても良い。
【0087】
このように、制御装置7aは、観測情報とその演算処理について、第一の電源4aからの受電電力8aと電力変換器5の出力電力41の差を用いて多様化しても良い。このとき、上述した第二の電源4bからの受電電力8bと充放電電力9の差も併用し、これらに基づいて、要求電力量11a,11bを生成する。その結果、上述の制御条件をより精密に実現させることが可能である。
【0088】
<実施例3,4>
[7]
図11に示す実施例3の交流き電システム16、及び、
図12に示す実施例4の交流き電システム17は、上記[1]において、第二の電源4bは三相交流を供給するものである。この第二の電源4bと第二のき電線2bとの間に、三相交流と単相交流とを相数変換可能な変圧器3bを介在させる。三相交流適応型の蓄電装置6aは、変圧器3bの三相交流側に接続されている。この蓄電装置6aは、三相交流と直流とを双方向に変換可能な三相交流適応型の交直変換器(不図示)を具備している。
【0089】
現状では、単相交流用蓄電装置に対する需要と供給が未成熟で、その調達が困難ある。一方、三相交流用蓄電装置ならば、調達容易である。そこで、三相と単相と相数変換可能な変圧器3bを介在し、その変圧器3bの三相交流側に蓄電装置6aを接続する。
【0090】
換言すれば、電気鉄道用の単相交流用蓄電装置は、普及が進んでいないため調達困難ある。そこで、
図11及び
図12に示す実施例3,4の交流き電システム16,17では、無理せずに、調達容易な三相交流適応型の蓄電装置6aを用いる。その蓄電装置6aは、三相と単相と相数変換可能な変圧器3bの三相交流側(一次側)に接続されることにより、一般的に普及している産業用蓄電システムの技術で高効率に電力融通機能を増進できる。
【符号の説明】
【0091】
1a:第一の車両、1b:第二の車両
2a:第一のき電線、2b:第二のき電線
3a:第一の変圧器、3b:第二の変圧器
4a:第一の電源、4b:第二の電源
5:電力変換器
6,6a:蓄電装置
7,7a:制御装置
8a:第一の受電電力、8b:第二の受電電力
9:充放電電力
10:充放電指令
11a:第一の要求電力量、11b:第二の要求電力量
12a:第一の結節点
12b:第二の結節点
13a:第一のき電区間
13b:第二のき電区間
31:電力潮流
41:融通電力
51:リミッタ