(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】多層コア成形方法
(51)【国際特許分類】
A63B 45/00 20060101AFI20231116BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20231116BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20231116BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A63B45/00 B
B29C43/18
B29C43/20
B29C43/34
(21)【出願番号】P 2019220549
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】中島 一憲
(72)【発明者】
【氏名】壽臺 悟
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0256946(US,A1)
【文献】特開2008-302217(JP,A)
【文献】特開2003-24474(JP,A)
【文献】米国特許第2376085(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0066976(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 45/00
B29C 43/18
B29C 43/20
B29C 43/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボール用の多層コアを成形するための、多層コア成形方法であって、
前工程金型装置を用いて成形を行う、前工程
と、
後工程金型装置を用いて成形を行う、後工程と、
を含み、
前記前工程金型装置は、
第1前工程型キャビティ面を有する、第1前工程型と、
第2前工程型キャビティ面を有する、第2前工程型と、
を備えており、
前記前工程金型装置は、前記第1前工程型及び前記第2前工程型どうしが閉じた状態において、前記第1前工程型キャビティ面と前記第2前工程型キャビティ面との間で前工程型キャビティを形成するように、構成されており、
前記前工程は、
前記第2前工程型キャビティ面上に、加硫済みの内コアを配置する、内コア配置工程と、
前記内コア配置工程の後、
前記第1前工程型及び前記第2前工程型どうしが閉じた状態において、前記前工程型キャビティの内部で、第1外コア用材料を前記内コアに被せ、それにより、中間成形体を得る、被覆工程と、
を含み、
前記被覆工程で得られた前記中間成形体は、
前記内コアと、
前記内コアの表面の一部のみを覆うとともに、前記内コアに一体化された、未加硫又は半加硫の前記第1外コア用材料と、
を含
み、
前記被覆工程では、押出成形によって、前記第1外コア用材料を前記内コアに被せ、
前記後工程金型装置は、
略半球面状の第1後工程型キャビティ面を有する、第1後工程型と、
略半球面状の第2後工程型キャビティ面を有する、第2後工程型と、
前記第1後工程型キャビティ面に対向配置されるように構成された略半球面状の中間板キャビティ面、及び、前記第2後工程型キャビティ面に対向配置されるように構成された略半球面状の中間板突起面を、有する、中間板と、
を備えており、
前記後工程は、
第2外コア用材料を、前記第2後工程型キャビティ面又は前記中間板突起面の上に配置する、第2外コア配置工程と、
前記中間成形体を、前記中間板キャビティ面又は前記第1後工程型キャビティ面の上に配置する、中間成形体配置工程と、
前記第2外コア配置工程及び前記中間成形体配置工程の後、前記第1後工程型、前記第2後工程型、及び前記中間板どうしが閉じた状態において、前記第2外コア用材料と前記中間成形体とを圧縮成形する、予備成形工程と、
を含む、多層コア成形方法。
【請求項2】
前記被覆工程において、前記前工程金型装置の温度は、前記第1外コア用材料の温度よりも高い、請求項
1に記載の多層コア成形方法。
【請求項3】
前記第2前工程型キャビティ面は、前記内コアを収容するように構成されたキャビティを区画する略半球面状の収容凹面部を有しており、
前記収容凹面部の開口端面の直径D1は、前記内コアの直径D2よりも大きい、請求項1
又は2に記載の多層コア成形方法。
【請求項4】
前記第2前工程型キャビティ面は、前記内コアを収容するように構成されたキャビティを区画する略半球面状の収容凹面部を有しており、
前記収容凹面部の深さは、前記内コアの半径と略同じである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の多層コア成形方法。
【請求項5】
前記被覆工程で得られた前記中間成形体の前記第1外コア用材料は、その少なくとも内周側部分が、未加硫又は半加硫の状態にある、請求項1~
4のいずれか一項に記載の多層コア成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層コア成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフボール用の多層コアを成形する方法として、球状の内コアの上に、内コアとは別体で、かつ、内コアを収容するための凹部を有するように成形された、外コア用材料を配置し、その後、金型を閉じて、略半球面状の外コア成形用のキャビティ面によって外コア用材料を内コアの周りで圧縮成形する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、内コアの偏芯が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、内コアの偏芯を抑制できる、多層コア成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多層コア成形方法は、
ゴルフボール用の多層コアを成形するための、多層コア成形方法であって、
前工程金型装置を用いて成形を行う、前工程を含み、
前記前工程金型装置は、
第1前工程型キャビティ面を有する、第1前工程型と、
第2前工程型キャビティ面を有する、第2前工程型と、
を備えており、
前記前工程金型装置は、前記第1前工程型及び前記第2前工程型どうしが閉じた状態において、前記第1前工程型キャビティ面と前記第2前工程型キャビティ面との間で前工程型キャビティを形成するように、構成されており、
前記前工程は、
前記第2前工程型キャビティ面上に、加硫済みの内コアを配置する、内コア配置工程と、
前記内コア配置工程の後、第1外コア用材料を前記内コアに被せ、それにより、中間成形体を得る、被覆工程と、
を含み、
前記被覆工程で得られた前記中間成形体は、
前記内コアと、
前記内コアの表面の一部のみを覆うとともに、前記内コアに一体化された、未加硫又は半加硫の前記第1外コア用材料と、
を含む。
【0007】
本発明の多層コア成形方法において、
前記被覆工程では、押出成形によって、前記第1外コア用材料を前記内コアに被せると、好適である。
【0008】
本発明の多層コア成形方法において、
前記被覆工程では、圧縮成形によって、前記第1外コア用材料を前記内コアに被せるようにしてもよい。
【0009】
本発明の多層コア成形方法において、
前記被覆工程では、前記第1前工程型及び前記第2前工程型どうしが閉じた状態において、前記前工程型キャビティの内部で、前記第1外コア用材料を前記内コアに被せると、好適である。
【0010】
本発明の多層コア成形方法において、
前記被覆工程において、前記前工程金型装置の温度は、前記第1外コア用材料の温度よりも高いと、好適である。
【0011】
本発明の多層コア成形方法において、
前記第2前工程型キャビティ面は、前記内コアを収容するように構成されたキャビティを区画する略半球面状の収容凹面部を有しており、
前記収容凹面部の開口端面の直径D1は、前記内コアの直径D2よりも大きいと、好適である。
【0012】
本発明の多層コア成形方法において、
前記第2前工程型キャビティ面は、前記内コアを収容するように構成されたキャビティを区画する略半球面状の収容凹面部を有しており、
前記収容凹面部の深さは、前記内コアの半径と略同じであると、好適である。
【0013】
本発明の多層コア成形方法において、
前記被覆工程で得られた前記中間成形体の前記第1外コア用材料は、その少なくとも内周側部分が、未加硫又は半加硫の状態にあると、好適である。
【0014】
本発明の多層コア成形方法において、
多層コア成形方法は、後工程金型装置を用いて成形を行う、後工程を、さらに含み、
前記後工程金型装置は、
略半球面状の第1後工程型キャビティ面を有する、第1後工程型と、
略半球面状の第2後工程型キャビティ面を有する、第2後工程型と、
前記第1後工程型キャビティ面に対向配置されるように構成された略半球面状の中間板キャビティ面、及び、前記第2後工程型キャビティ面に対向配置されるように構成された略半球面状の中間板突起面を、有する、中間板と、
を備えており、
前記後工程は、
第2外コア用材料を、前記第2後工程型キャビティ面又は前記中間板突起面の上に配置する、第2外コア配置工程と、
前記中間成形体を、前記中間板キャビティ面又は前記第1後工程型キャビティ面の上に配置する、中間成形体配置工程と、
前記第2外コア配置工程及び前記中間成形体配置工程の後、前記第1後工程型、前記第2後工程型、及び前記中間板どうしが閉じた状態において、前記第2外コア用材料と前記中間成形体とを圧縮成形する、予備成形工程と、
を含むと、好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内コアの偏芯を抑制できる、多層コア成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の前工程における、内コア配置工程の説明図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の前工程における、被覆工程の説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の前工程における、中間成形体取出工程の説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の後工程における、第2外コア配置工程の説明図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の後工程における、中間成形体配置工程の説明図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の後工程における、予備成形工程の説明図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の後工程における、中間板取出工程の説明図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の後工程における、生コア形成工程及び加硫工程の説明図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の後工程における、多層コア取出工程の説明図である。
【
図13】
図12の多層コアを有する連続成形体を示す斜視図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る多層コア成形方法の後工程における、第2外コア配置工程及び中間成形体配置工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る多層コア成形方法の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0018】
以下、本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法について、
図1~
図14を参照しつつ、説明する。
本実施形態の多層コア成形方法は、例えば
図14に示すような、ゴルフボール用の多層コア3を成形するために使用される。多層コア3は、ゴルフボールの一部を構成するように構成されている。
図14に示す多層コア3は、球状の内コア31と、内コア31の外周側に内コア31に隣接して配置された外コア32と、を備えている。
図14の例において多層コア3は、内コア31及び外コア32の2層からなる2層コアとして構成されているが、本実施形態の多層コア成形方法によって成形される多層コア3は、3層以上の多層コアとして構成されていてもよい。例えば、内コア31は、複数のコア層から構成されていてもよい。また、多層コア3は、外コア32の外周側にさらなる1つ又は複数のコア層を備えていてもよい。
内コア31及び外コア32は、それぞれ、ゴムで構成される。内コア31及び外コア32を構成するゴムとしては、それぞれ、例えばブタジエンゴムが好適である。内コア31を構成するゴムと外コア32を構成するゴムとは、互いに組成が異なっていると好適である。内コア31を構成するゴムと外コア32を構成するゴムとは、互いに硬度が異なっていると好適である。
なお、多層コア3を備えたゴルフボール(図示せず)は、任意の構成を備えてよいが、例えば、多層コア3の外周側に配置された1つ又は複数の中間層と、当該1つ又は複数の中間層の外周側に配置されたカバーと、を備えることができる。中間層は、例えば樹脂から構成される。カバーは、例えばウレタン又はアイオノマーから構成される。
【0019】
まず、本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法の各工程を概略的に説明する。
本発明の第1実施形態に係る多層コア成形方法は、前工程(
図1~
図6)と後工程(
図7~
図13)とを含む。
【0020】
〔前工程〕
まず、前工程(
図1~
図6)について概略的に説明する。前工程では、前工程金型装置1を用いて成形を行う。前工程では、後述の中間成形体33を得る。前工程は、内コア配置工程と、被覆工程と、中間成形体取出工程と、を含む。
【0021】
前工程金型装置1は、
図1に示すように、第1前工程型11と、第2前工程型12と、を備えている。
第1前工程型11と第2前工程型12とは、互いに対向配置されるように構成されている。
図1の例において、第1前工程型11と第2前工程型12とは、互いに鉛直方向に対向配置されるように構成されており、また、第1前工程型11は、第2前工程型12に対し、鉛直方向の上側に位置するように構成されている。ただし、第1前工程型11と第2前工程型12とは、互いに鉛直方向以外の任意の方向に対向配置されるように構成されていてもよく、また、第1前工程型11は、第2前工程型12に対し、鉛直方向の上側以外の任意の側に位置するように構成されていてもよい。
本明細書では、前工程金型装置1における第1前工程型11と第2前工程型12とが互いに対向配置される方向(図の例では、鉛直方向)を、「前工程金型軸線方向(EAD)」という。一方、前工程金型軸線方向(EAD)に対し垂直な方向(図の例では、水平方向)を、「前工程金型軸直方向(EPD)」という。
第1前工程型11は、1つ又は複数(図の例では複数)の第1前工程型キャビティ面110を有している。第1前工程型キャビティ面110は、第2前工程型12の第2前工程型キャビティ面120に対向配置されるように構成されている。第1前工程型キャビティ面110は、第2前工程型キャビティ面120側(
図1の例では、鉛直方向の下側)が開放された、窪み状に構成されている。
第2前工程型12は、1つ又は複数(図の例では複数)の第2前工程型キャビティ面120を有している。第2前工程型キャビティ面120は、第1前工程型11の第1前工程型キャビティ面110に対向配置されるように構成されている。第2前工程型キャビティ面120は、第1前工程型キャビティ面110側(
図1の例では、鉛直方向の上側)が開放された、窪み状に構成されている。
前工程金型装置1は、
図3に示すように、第1前工程型11及び第2前工程型12どうしが閉じた状態において、第1前工程型キャビティ面110と第2前工程型キャビティ面120との間で前工程型キャビティ14を形成するように、構成されている。
【0022】
-内コア配置工程-
内コア配置工程では、第2前工程型12の第2前工程型キャビティ面120の上に、加硫済みの内コア31を配置する(
図1~
図2)。
ここで、「第2前工程型キャビティ面120の上に・・・配置する」の「上に」とは、第2前工程型キャビティ面120と接触するように配置することを指す。
内コア31は、上述のようにゴムで構成されている。内コア31は、内コア配置工程の前に予め加硫されることによって、内コア31の全体にわたって加硫済みの状態にされている。内コア31は、球状に構成されている。内コア31は、加硫された後、かつ、内コア配置工程の前に、内コア31が球状となるように研磨されると、好適である。
なお、本明細書において、「加硫済み」とは、加硫が完全に完了している状態を指す。なお、ある部材(例えば内コア31)について「加硫が完全に完了している状態」の判断方法としては、例えば、当該部材から切り出した試料片をDSC測定(示差走査熱量測定)し、添加された有機過酸化物が分解すべき温度前後での発熱反応が実質上観察されないとき、当該部材は、有機過酸化物は残留していない状態、すなわち、「加硫が完全に完了している状態」にある、と判断できる。
一方、「未加硫」とは、加硫が全く生じていない状態を指す。また、「半加硫」とは、「加硫済み」と「未加硫」との間の状態を指しており、すなわち、加硫が途中まで進んだ状態を指す。
【0023】
-被覆工程-
被覆工程では、内コア配置工程の後、第1外コア用材料321を内コア31に被せ、それにより、中間成形体33を得る(
図3~
図4)。
被覆工程で得られた中間成形体33は、内コア31と、内コア31の表面の一部のみを覆うとともに、内コア31に一体化された、第1外コア用材料321と、を含む。図の例において、被覆工程で得られた中間成形体33は、内コア31と、内コア31の表面の一部のみを覆うとともに、内コア31に一体化された、第1外コア用材料321と、からなる。内コア31と第1外コア用材料321とは、互いに密着(接着)していて、互いから外れない又は外れにくいようにされている。
中間成形体33の第1外コア用材料321は、内コア31を覆う本体部321mを有している。内コア31は、第1外コア用材料321の本体部321mによって覆われておらず、本体部321mの外へ突出した、突出部31p(
図4)を、有している。突出部31pは、略半球状である。
第1外コア用材料321は、後述する後工程における加硫工程で加硫されることにより、最終的に得られる多層コア3(
図14)の外コア32の一部を構成するものである。第1外コア用材料321は、外コア32について上述したように、ゴムである。
第1外コア用材料321は、内コア31に被せられる直前及び間において、全体にわたって未加硫の状態にあると、好適である。この場合、被覆工程において、第1外コア用材料321は、内コア31に被せられた後に、所定時間にわたって加熱されても、又は、加熱されずに、全体にわたって未加硫状態に維持されていると好適である。すなわち、被覆工程で得られた中間成形体33の第1外コア用材料321は、全体にわたって未加硫状態となると、好適である。ただし、被覆工程において、第1外コア用材料321は、内コア31に被せられた後に、少なくとも一部で半加硫状態(一部で半加硫状態の場合、残りの部分は、好ましくは未加硫状態)にされてもよい。この場合、被覆工程で得られた中間成形体33の第1外コア用材料321は、少なくとも一部で半加硫状態(一部で半加硫状態の場合、残りの部分は、好ましくは未加硫状態)となる。
なお、第1外コア用材料321は、内コア31に被せられる直前及び間において、少なくとも一部で半加硫の状態(一部で半加硫状態の場合、残りの部分は、未加硫状態)にあってもよい。この場合、被覆工程で得られた中間成形体33の第1外コア用材料321は、少なくとも一部で半加硫の状態(一部で半加硫状態の場合、残りの部分は、好ましくは未加硫状態)であると、好適である。
被覆工程で得られた中間成形体33の第1外コア用材料321の外表面は、任意の形状に構成されてよい。図の例において、中間成形体33の第1外コア用材料321の外表面は、略円錐台形状に構成されている。
【0024】
-中間成形体取出工程-
中間成形体取出工程では、被覆工程の後、中間成形体33を前工程金型装置1から取り出す(
図5~
図6)。
図6は、中間成形体取出工程の後に得られた中間成形体33を示している。
【0025】
〔後工程〕
つぎに、後工程(
図7~
図13)について概略的に説明する。後工程では、後工程金型装置2を用いて成形を行う。後工程では、前工程で得られた中間成形体33を用いて、多層コア3(
図14)を得る。後工程は、第2外コア配置工程と、中間成形体配置工程と、予備成形工程と、中間板取出工程と、生コア形成工程と、加硫工程と、多層コア取出工程と、を含む。
【0026】
後工程金型装置2は、
図7及び
図8に示すように、第1後工程型21と、第2後工程型22と、中間板23と、を備えている。
中間板23は、第1後工程型21と第2後工程型22との間に配置されて、第1後工程型21と第2後工程型22とのそれぞれに対向配置されるように構成されている(
図8)。
図7及び
図8の例において、第1後工程型21と中間板23と第2後工程型22とは、鉛直方向に沿って配列されるように構成されており、また、第1後工程型21は、第2後工程型22に対し、鉛直方向の上側に位置するように構成されている。ただし、第1後工程型21と中間板23と第2後工程型22とは、鉛直方向以外の任意の方向に沿って配列されるように構成されていてもよく、また、第1後工程型21は、第2後工程型22に対し、鉛直方向の上側以外の任意の側に位置するように構成されていてもよい。
本明細書では、後工程金型装置2における第1後工程型21と中間板23と第2後工程型22とが互いに対向配置される方向(図の例では、鉛直方向)を、「後工程金型軸線方向(OAD)」という。一方、後工程金型軸線方向(OAD)に対し垂直な方向(図の例では、水平方向)を、「後工程金型軸直方向(OPD)」という。
第1後工程型21は、1つ又は複数(図の例では複数)の第1後工程型キャビティ面210を有している。第1後工程型キャビティ面210は、中間板23の中間板キャビティ面230に対向配置されるように構成されている(
図8)。第1後工程型キャビティ面210は、中間板キャビティ面230側(
図8の例では、鉛直方向の下側)が開放された、窪み状に構成されている。第1後工程型キャビティ面210は、略半球面状に構成されている。第1後工程型21は、中間板23側(
図8の例では、鉛直方向の下側)の面に、第1後工程型キャビティ面210の外周側において、後工程金型軸直方向OPDに平行に延在する平坦面215を、さらに有している。図の例において、この平坦面215は、第1後工程型キャビティ面210から第1後工程型キャビティ面210の外周側へ連続し、かつ、第1後工程型キャビティ面210の周りを全周にわたって連続的に延在している。第1後工程型21は、中間板23側(
図8の例では、鉛直方向の下側)の面に、上記平坦面215よりも第1後工程型21の外周側において、上記平坦面215よりも中間板23側(
図8の例では、鉛直方向の下側)に位置するとともに、後工程金型軸直方向OPDに平行に延在する、平坦面214を、さらに有している。
第2後工程型22は、1つ又は複数(図の例では複数)の第2後工程型キャビティ面220を有している。第2後工程型キャビティ面220は、中間板23の中間板突起面231に対向配置されるように構成されている(
図8)。第2後工程型キャビティ面220は、中間板突起面231側(
図8の例では、鉛直方向の上側)が開放された、窪み状に構成されている。第2後工程型キャビティ面220は、略半球面状に構成されている。第2後工程型22は、中間板23側(
図8の例では、鉛直方向の上側)の面に、第2後工程型キャビティ面220の外周側において、後工程金型軸直方向OPDに平行に延在する平坦面225を、さらに有している。図の例において、この平坦面225は、第2後工程型キャビティ面220から第2後工程型キャビティ面220の外周側へ連続し、かつ、第2後工程型キャビティ面220の周りを全周にわたって連続的に延在している。第2後工程型22は、中間板23側(
図8の例では、鉛直方向の上側)の面に、上記平坦面225よりも第2後工程型22の外周側において、上記平坦面225よりも中間板23側(
図8の例では、鉛直方向の上側)に位置するとともに、後工程金型軸直方向OPDに平行に延在する、平坦面224を、さらに有している。
中間板23は、第1後工程型21側(
図8の例では、鉛直方向の上側)の面に、1つ又は複数(図の例では複数)の中間板キャビティ面230を有している。中間板キャビティ面230は、第1後工程型21の第1後工程型キャビティ面210に対向配置されるように構成されている(
図8)。中間板キャビティ面230は、第1後工程型キャビティ面210側(
図8の例では、鉛直方向の上側)が開放された、窪み状に構成されている。中間板キャビティ面230は、略半球面状に構成されている。中間板キャビティ面230は、中間成形体33の内コア31の突出部31pを収容するためのキャビティを区画している。中間板23は、第1後工程型21側(
図8の例では、鉛直方向の上側)の面に、中間板キャビティ面230から中間板キャビティ面230の外周側へ連続するとともに、後工程金型軸直方向OPDに平行に延在する、第1平坦面233を、さらに有している。図の例において、第1平坦面233は、中間板キャビティ面230の周りを全周にわたって連続的に延在しているとともに、複数の中間板キャビティ面230どうしの間を連結するように連続的に延在している。
中間板23は、第2後工程型22側(
図8の例では、鉛直方向の下側)の面に、1つ又は複数(図の例では複数)の中間板突起面231を有している。中間板突起面231は、第2後工程型22の第2後工程型キャビティ面220に対向配置されるように構成されている(
図8)。中間板突起面231は、第2後工程型キャビティ面220側(
図8の例では、鉛直方向の下側)に向かって突出した、突起状に構成されている。中間板突起面231は、略半球面状に構成されている。中間板突起面231は、中間板キャビティ面230と同じ形状を有している。中間板23は、第2後工程型22側(
図8の例では、鉛直方向の下側)の面に、中間板突起面231から中間板突起面231の外周側へ連続するとともに、後工程金型軸直方向OPDに平行に延在する、第2平坦面234を、さらに有している。図の例において、第2平坦面234は、中間板突起面231の周りを全周にわたって連続的に延在しているとともに、複数の中間板突起面231どうしの間を連結するように連続的に延在している。
後工程金型装置2は、第1後工程型21及び中間板23どうしが閉じた状態において、第1後工程型キャビティ面210と中間板キャビティ面230及びその周りの第1平坦面233との間で第1後工程型キャビティ24aを形成するように、構成されている(
図9)。また、後工程金型装置2は、第2後工程型22及び中間板23どうしが閉じた状態において、第2後工程型キャビティ面220と中間板突起面231及びその周りの第2平坦面234との間で第2後工程型キャビティ24bを形成するように、構成されている(
図9)。また、後工程金型装置2は、中間板23を介さずに第1後工程型21及び第2後工程型22どうしが閉じた状態において、第1後工程型キャビティ面210と第2後工程型キャビティ面220との間で第3後工程型キャビティ24cを形成するように、構成されている(
図11)。
【0027】
-第2外コア配置工程-
第2外コア配置工程では、第2外コア用材料322を、第2後工程型22の第2後工程型キャビティ面220又は中間板23の中間板突起面231の上に配置する(
図7)。
図7の例では、第2外コア配置工程において、第2外コア用材料322を、第2後工程型キャビティ面220の上に配置している。
ここで、「第2後工程型キャビティ面220又は中間板23の中間板突起面231の上に配置する」の「上に」とは、第2後工程型キャビティ面220又は中間板突起面231と接触又は近接対向させるように配置することを指す。ただし、第2後工程型キャビティ面220の上に配置する場合、第2後工程型キャビティ面220と接触するように配置するのが好ましい。また、中間板突起面231の上に配置する場合、中間板突起面231と近接対向させるのが好ましい。
第2外コア用材料322を、中間板突起面231の上に配置する例については、
図15を参照しつつ後述する。
第2外コア配置工程は、上述の前工程の前、間、及び後のいずれにおいて行ってもよいが、前工程の前又は間に行うと、多層コア3の成形に掛かるトータルの時間を低減できるので、好適である。また、第2外コア配置工程は、後述の中間成形体配置工程の前、間、及び後のいずれにおいて行ってもよいが、中間成形体配置工程の前又は間に行うと、多層コア3の成形に掛かるトータルの時間を低減できるので、好適である。また、第2外コア配置工程は、後述の中間成形体配置工程の直前に行うと、第2外コア用材料322の加硫状態と、中間成形体配置工程で配置される中間成形体33の第1外コア用材料321の加硫状態とを、同等にすることができるため、より好適である。
第2外コア用材料322は、後の加硫工程で加硫されることにより、最終的に得られる多層コア3(
図14)の外コア32の一部を構成するものである。多層コア3の外コア32は、上述の第1外コア用材料321と第2外コア用材料322とから構成されることとなる。第2外コア用材料322は、外コア32について上述したように、ゴムである。
第2外コア用材料322は、第2外コア配置工程において、全体にわたって未加硫の状態にあると、好適である。
なお、第2外コア用材料322は、第2外コア配置工程において、少なくとも一部で半加硫の状態(一部で半加硫状態の場合、残りの部分は、未加硫状態)にあってもよい。
図7の例では、第2外コア配置工程において、第2外コア用材料322は、円柱形状に構成されているが、第2外コア配置工程において、第2外コア用材料322は、任意の形状に構成されてよく、例えば、半球状、球状、直方体形状等に構成されてもよい。
【0028】
-中間成形体配置工程-
中間成形体配置工程では、上述の前工程の後、前工程で得られた中間成形体33を、中間板23の中間板キャビティ面230又は第1後工程型21の第1後工程型キャビティ面210の上に配置する(
図8)。
図8の例では、中間成形体配置工程において、中間成形体33を、中間板キャビティ面230の上に配置している。
ここで、「中間板キャビティ面230又は第1後工程型21の第1後工程型キャビティ面210の上に配置する」の「上に」とは、中間板キャビティ面230又は第1後工程型キャビティ面210と接触するように配置することを指す。
中間成形体33を、第1後工程型キャビティ面210の上に配置する例については、
図15を参照しつつ後述する。
中間成形体配置工程では、
図8に示すように、中間成形体33のうち、内コア31の突出部31pが中間板キャビティ面230に対向配置され、中間成形体33のうち、第1外コア用材料321の本体部321mが第1後工程型キャビティ面210に対向配置される。これにより、第2外コア配置工程及び中間成形体配置工程の後、中間成形体33のうち、内コア31の突出部31pが、中間板23を介して、第2外コア用材料322と対向することができる(
図8)。
図8の例では、中間成形体配置工程において、中間成形体33の内コア31の突出部31pが中間板キャビティ面230と接触するように(言い換えれば、突出部31pが中間板キャビティ面230によって区画されるキャビティ内に収容されるように)、中間成形体33を中間板キャビティ面230の上に配置している。
【0029】
-予備成形工程-
予備成形工程では、第2外コア配置工程及び中間成形体配置工程の後、第1後工程型21、第2後工程型22、及び中間板23どうしが閉じた状態において、第2外コア用材料322と中間成形体33とを圧縮成形する(
図9)。
なお、第2後工程型22及び中間板23どうしを閉じる工程は、第2外コア配置工程の後かつ予備成形工程の前における任意のタイミングで行ってよい。また、第1後工程型21及び中間板23どうしを閉じる工程は、中間成形体配置工程の後かつ予備成形工程の前における任意のタイミングで行ってよい。
予備成形工程では、第2外コア用材料322が、第2後工程型キャビティ面220と中間板突起面231及びその周りの第2平坦面234との間の第2後工程型キャビティ24b内で、圧縮成形される。第2後工程型キャビティ面220は、第2外コア用材料322に、略半球面状の外表面を成形する。中間板突起面231は、第2外コア用材料322に、略半球面状の内表面322rを成形する。
また、予備成形工程では、中間成形体33(特には第1外コア用材料321)が、第1後工程型キャビティ面210と中間板キャビティ面230及びその周りの第1平坦面233との間の第1後工程型キャビティ24a内で、圧縮成形される。第1後工程型キャビティ面210は、中間成形体33の第1外コア用材料321に、略半球面状の外表面を成形する。
【0030】
-中間板取出工程-
中間板取出工程では、予備成形工程の後、第1後工程型21、第2後工程型22、及び中間板23どうしを開いて、中間板23を後工程金型装置2から取り出す(
図10)。
【0031】
-生コア形成工程-
生コア形成工程では、中間板取出工程の後、第2外コア用材料322を中間成形体33に組み付けることにより、生多層コア3Rを形成する(
図11)。
生コア形成工程では、中間成形体33の内コア31の突出部31pが、第2外コア用材料322の内表面322rに嵌め合わせられる(言い換えれば、突出部31pが、第2外コア用材料322の内表面322rによって区画されるキャビティ内に収容される)とともに、中間成形体33の第1外コア用材料321と第2外コア用材料322とが組み合わせられて、外コア32を形成する。
生多層コア3Rは、内コア31と、内コア31の外周側に配置された外コア32と、を備えている。外コア32は、内コア31の表面の全体を覆っている。外コア32は、中間成形体33の第1外コア用材料321と第2外コア用材料322とから構成される。
なお、「生多層コア3R」の「生」とは、生多層コア3R(具体的には、外コア32)の少なくとも一部が未加硫及び/又は半加硫の状態にあることを表している。
【0032】
-加硫工程-
加硫工程では、生コア形成工程の後、第1後工程型21及び第2後工程型22どうしを閉じた状態で、生多層コア3Rを加硫する(
図11)。
なお、第1後工程型21及び第2後工程型22どうしを閉じる工程は、生コア形成工程の間、又は、生コア形成工程の後かつ加硫工程の前のうち、任意のタイミングで、行ってよい。
図10の例において、第1後工程型21及び第2後工程型22どうしを閉じる工程は、生コア形成工程の間に行っている(
図11)。
加硫工程では、生多層コア3Rが、第1後工程型キャビティ面210と第2後工程型キャビティ面220との間の第3後工程型キャビティ24c内で、加硫成形される。
加硫工程において生多層コア3Rが加硫成形されることにより、加硫済みの多層コア3が形成される。
【0033】
-多層コア取出工程-
多層コア取出工程では、加硫工程の後、第1後工程型21及び第2後工程型22どうしを開いて、加硫工程において形成された多層コア3を、後工程金型装置2から取り出す(
図12、
図13)。
図13は、多層コア取出工程で取り出された多層コア3を示している。
なお、
図12~
図13の例では、複数の多層コア3どうしが、後述の合体バリ36によって互いに連結されている。
図12の多層コア3及び合体バリ36の断面は、
図13のA-A線に沿った断面に相当する。合体バリ36は、多層コア取出工程の後に除去される(バリ除去工程)。その後、最終的に個別の多層コア3が得られる。
【0034】
以上の前工程及び後工程を経て、最終的に多層コア3(
図14)を得ることができる。
【0035】
ここで、本実施形態の作用効果について説明する。
上述のように、本実施形態の多層コア成形方法は、前工程において、前工程金型装置1の第2前工程型キャビティ面120上に、加硫済みの内コア31を配置する、内コア配置工程(
図1~
図2)と、内コア配置工程の後、第1外コア用材料321を内コア31に被せ、それにより、中間成形体33を得る、被覆工程(
図3~
図4)と、を行うものである。また、被覆工程(
図3~
図4)で得られた中間成形体33は、内コア31と、内コア31の表面の一部のみを覆うとともに、内コア31に一体化された、未加硫又は半加硫の第1外コア用材料321と、を含むものである。また、後工程においては、第2外コア用材料322を、第2後工程型キャビティ面220又は中間板突起面231の上に配置する、第2外コア配置工程(
図7)と、中間成形体33を、中間板キャビティ面230又は第1後工程型キャビティ面210の上に配置する、中間成形体配置工程(
図8)と、第2外コア配置工程(
図7)及び中間成形体配置工程(
図8)の後、第1後工程型21、第2後工程型22、及び中間板23どうしが閉じた状態において、第2外コア用材料322と中間成形体33とを圧縮成形する、予備成形工程(
図9)と、を行うものである。
ここで、仮に、内コア31と未加硫又は半加硫の第1外コア用材料321とを、互いに別体の状態(互いに一体化(接着)していない状態)で、後工程金型装置2のキャビティ面上に積層させて配置する場合、内コア31と第1外コア用材料321とが別体であるがために、当該配置をする際に、第1外コア用材料321が内コア31に対して(ひいてはキャビティ面に対して)傾いたり位置ずれしたりしやすくなる。第1外コア用材料321が内コア31に対して傾いたり位置ずれしたりすると、その後の工程(例えば、予備成形工程)において、第1外コア用材料321が内コア31の周りで不均一に流れて、多層コア3(
図14)における内コア31の偏芯が生じやすくなる。また、この場合、第1外コア用材料321は、内コア31とは別体であるがために、時間の経過に応じて、第1外コア用材料321を構成するゴムの残留応力によって徐々に形状が崩れていきやすく、ひいては、当該配置をする際に、第1外コア用材料321が内コア31に対して(ひいてはキャビティ面に対して)さらに傾いたり位置ずれしたりしやすくなる。そのため、多層コア3(
図14)における内コア31の偏芯がさらに生じやすくなる。
ここで、内コア31の偏芯とは、最終的に得られる多層コア3(
図14)において、内コア31の中心C31が、外コア32の中心C32からずれた位置にあることを指す。
一方、本実施形態によれば、後工程金型装置2のキャビティ面(具体的には、中間板キャビティ面230又は第1後工程型キャビティ面210)の上に内コア31及び第1外コア用材料321を配置する前に、被覆工程において、第1外コア用材料321を内コア31に対して一体化させて中間成形体33を予め形成しておくので、その後、後工程金型装置2のキャビティ面上に内コア31及び第1外コア用材料321を配置する際に、第1外コア用材料321が内コア31に対して(ひいてはキャビティ面に対して)傾いたり位置ずれしたりするのを抑制でき、ひいては、多層コア3における内コア31の偏芯を抑制できる。また、本実施形態によれば、中間成形体33の第1外コア用材料321は、その内周側に一体化された内コア31によって、残留応力による変形が抑制されるので、それによっても、第1外コア用材料321が内コア31に対して傾いたり位置ずれしたりするのを抑制できる。ひいては、多層コア3における内コア31の偏芯をさらに抑制できる。
また、上述のように、予備成形工程(
図9)では、中間成形体33の内コア31の突出部31pが、中間板キャビティ面230によって区画されるキャビティ内に収容された状態で、第1外コア用材料321が第1後工程型キャビティ24a内で圧縮成形されるので、第1後工程型キャビティ24a内での内コア31の位置ずれを抑制できる。ひいては、内コア31の偏芯を抑制できる。
【0036】
以下、本発明の多層コア成形方法に関し、さらなる詳細な説明、好適な構成、変形例等について、説明する。
【0037】
本明細書で説明する各例においては、上述のように、後工程金型装置2において、第1後工程型21と中間板23と第2後工程型22とは、
図15に示す第2実施形態のように、鉛直方向に沿って配列されるように構成されているとともに、第2後工程型22が第1後工程型21に対して鉛直方向の上側に位置するように構成されていてもよい。
この場合、後工程における第2外コア配置工程では、第2外コア用材料322を、中間板23の中間板突起面231の上に配置し、また、中間成形体配置工程では、中間成形体33を、第1後工程型21の第1後工程型キャビティ面210の上に配置すると、好適である。
この場合、第2外コア配置工程で配置される第2外コア用材料322は、任意の形状をなしていてよいが、例えば、略半球面状の内表面322rを有しており、この内表面322rが中間板突起面231を非接触状態又は接触状態で覆うように、第2外コア用材料322が配置されると、第2外コア用材料322を安定的に配置できるので、好適である。
また、この場合、中間成形体配置工程では、
図15に示すように、中間成形体33のうち、内コア31の突出部31pが中間板キャビティ面230に対向配置され、中間成形体33のうち、第1外コア用材料321の本体部321mが第1後工程型キャビティ面210に対向配置される。より具体的に、中間成形体配置工程では、中間成形体33の第1外コア用材料321の本体部321mが第1後工程型キャビティ面210と接触するように(言い換えれば、本体部321mが、第1後工程型キャビティ面210によって区画されるキャビティ内に収容されるように)、中間成形体33を第1後工程型キャビティ面210の上に配置すると、好適である。
【0038】
本明細書で説明する各例においては、
図2に示す例のように、前工程金型装置1の第2前工程型キャビティ面120は、内コア31を収容するように構成されたキャビティを区画する略半球面状の収容凹面部121を有していると、好適である。収容凹面部121は、略半球面状に構成されているので、内コア配置工程において、内コア31を収容凹面部121上に配置するだけで、内コア31を簡単に位置決めすることができる。ひいては、内コア31の偏芯を抑制することが可能となる。
この場合、
図4に示すように、前工程金型装置1の第2前工程型キャビティ面120の収容凹面部121は、上記前工程の被覆工程において、第1外コア用材料321の本体部321mの外表面を成形しない。第1外コア用材料321の本体部321mの外表面は、少なくとも第2前工程型キャビティ面120のうち収容凹面部121以外の部分によって、成形される。
なお、本明細書において、「略半球面状」とは、完全なる半球面状であってもよいし、あるいは、完全なる半球面状ではないがそれに近い形状であってもよいことを指す。
【0039】
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図6に示す例のように、前工程の被覆工程では、押出成形によって、第1外コア用材料321を内コア31に被せると、好適である。この場合、前工程金型装置1は、押出成形機としての機能を備えるように構成される。押出成形機としての機能を備えた前工程金型装置1は、例えば、
図1及び
図3に示すように、第1前工程型11に、第1外コア用材料321を貯蔵するための貯蔵部16と、貯蔵部16内に配置された第1外コア用材料321を前工程型キャビティ14(
図3)側へ押圧するように構成された押圧部材15と、貯蔵部16と前工程型キャビティ14との間に配置された1つ又は複数(図の例では複数)の押出口17と、を備えていると、好適である。この場合、被覆工程においては、まず、前工程金型装置1における第1前工程型11及び第2前工程型12どうしを閉じる。つぎに、貯蔵部16内に予め貯蔵された第1外コア用材料321を、押圧部材15によって、前工程型キャビティ14へ向けて押圧する。押圧部材15によって押圧された第1外コア用材料321は、1つ又は複数の押出口17を通って、前工程型キャビティ14内へと押し出される。前工程型キャビティ14内へと押し出された第1外コア用材料321は、内コア31の表面の一部のみを覆うように、内コア31に被せられる。第1外コア用材料321の前工程型キャビティ14内への押し出しは、
図3の例のように、前工程金型軸線方向EADに行われると、好適である。
ただし、被覆工程では、圧縮成形によって、第1外コア用材料321を内コア31に被せるようにしてもよい。その場合、前工程金型装置1は、圧縮成形機としての機能を備えるように構成される。この場合、例えば、被覆工程においては、まず、前工程金型装置1における第1前工程型11及び第2前工程型12どうしを開いた状態で、任意の形状の第1外コア用材料321を、第2前工程型キャビティ面120上の内コア31と第1前工程型キャビティ面110との間に配置し、その後、第1前工程型11及び第2前工程型12どうしを閉じて、前工程型キャビティ14内で第1外コア用材料321を圧縮成形するようにしてもよい。これにより、第1外コア用材料321を、内コア31の表面の一部のみを覆うように、内コア31に被せることができる。
【0040】
本明細書で説明する各例において、前工程の被覆工程では、
図4に示す例のように、第1前工程型11及び第2前工程型12どうしが閉じた状態において、前工程型キャビティ14の内部で、第1外コア用材料321を内コア31に被せると、好適である。これによって、仮に被覆工程において、例えば押出成形によって、第1前工程型11及び第2前工程型12どうしが開いた状態で第1外コア用材料321を内コア31に被せる場合に比べて、第1外コア用材料321の形状や内コア31に対する位置等を、所期したとおりに実現することが可能になる。これにより、内コア31の偏芯を抑制することが可能となる。
この場合、かつ、前工程金型装置1が第2前工程型キャビティ面120に収容凹面部121を有する場合、第1外コア用材料321の本体部321mの外表面は、被覆工程において、前工程型キャビティ14の内部で、第2前工程型キャビティ面120のうち収容凹面部121以外の部分と、第1前工程型キャビティ面110とによって、成形される。
また、この場合、かつ、前工程金型装置1が第2前工程型キャビティ面120に収容凹面部121を有する場合、前工程金型装置1は、
図4に示す例のように、第1前工程型11及び第2前工程型12どうしが閉じた状態において、前工程型キャビティ14の中心軸線(又はその延長線。以下同じ。)O14が、第2前工程型キャビティ面120の収容凹面部121の開口端面121eの中心C121eを通るように構成されていると、好適である。ここで、収容凹面部121の開口端面121eは、円形の仮想面である。前工程型キャビティ14の中心軸線O14は、前工程金型軸線方向EADに平行であるのがよい。これにより、被覆工程により得られた中間成形体33の第1外コア用材料321の本体部321mの中心軸線O321mが、内コア31の中心C31を通ること(
図4)を、容易に実現でき、ひいては、その後の後工程において中間成形体33の突出部31pを中間板23の中間板キャビティ面230によって区画されるキャビティ内に収容する際(
図8の例では、中間成形体配置工程。
図15の例では、中間成形体配置工程の後かつ予備成形工程の前に第1後工程型21及び中間板23どうしを閉じる際。)において、第1外コア用材料321の本体部321mの中心軸線O321mが後工程金型軸線方向OADに平行になるとともに中間板キャビティ面230の開口端面230eの中心C230eを通るように、中間成形体33を配置しやすくなるので、内コア31の偏芯を抑制できる。ここで、中間板キャビティ面230の開口端面230eは、円形の仮想面である。
また、同様に、前工程金型装置1は、
図4に示す例のように、第1前工程型11及び第2前工程型12どうしが閉じた状態において、前工程型キャビティ14の中心軸線O14が、第2前工程型キャビティ面120(より具体的に、
図4の例では、収容凹面部121)上に配置された内コア31の中心C31を通るように構成されていると、好適である。これにより、被覆工程により得られた中間成形体33の第1外コア用材料321の本体部321mの中心軸線O321mが、内コア31の中心C31を通ること(
図4)を、容易に実現できるので、内コア31の偏芯を抑制できる。
【0041】
本明細書で説明する各例において、前工程金型装置1は、
図4に示す例のように、第2前工程型キャビティ面120が収容凹面部121を有する場合、第2前工程型キャビティ面120が、収容凹面部121(具体的には、収容凹面部121の開口端面121e)から外周側へ連続して、前工程金型軸直方向EPDに平行かつ平坦に延在する、平坦面部122(
図4)を有していると、好適である。平坦面部122は、収容凹面部121の周りを全周にわたって環状に延在していると、好適である。この場合、第2前工程型キャビティ面120の平坦面部122は、前工程の被覆工程において、中間成形体33の第1外コア用材料321の本体部321mに、平坦面部321f(
図4、
図6)を形成する。平坦面部321fは、中間成形体33の第1外コア用材料321の本体部321mの軸線方向(中心軸線O321mに平行な方向)の一方側の端面を構成している。中間成形体33の内コア31は、平坦面部321fよりも第1外コア用材料321の本体部321mの軸線方向の当該一方側の部分が、突出部31pを構成しており、平坦面部321fよりも第1外コア用材料321の本体部321mの軸線方向の他方側においては、第1外コア用材料321の本体部321mの内部に埋設されている。
このような構成により、その後の後工程において、中間成形体33の突出部31pを中間板23の中間板キャビティ面230によって区画されるキャビティ内に収容する際(
図8の例では、中間成形体配置工程。
図15の例では、中間成形体配置工程の後かつ予備成形工程の前に第1後工程型21及び中間板23どうしを閉じる際。)に、中間成形体33の第1外コア用材料321の平坦面部321fを中間板23の第1平坦面233に接触させることで、第1外コア用材料321の平坦面部321fが中間板23の第1平坦面233に平行(ひいては後工程金型軸直方向OPDに平行)となるように中間成形体33の位置及び向きを、簡単かつ確実に位置決めすることができる。これにより、中間成形体33の第1外コア用材料321の中心軸線O321mを後工程金型軸線方向OADに平行にすることを容易に実現でき、ひいては、内コア31の偏芯を抑制できる。
【0042】
本明細書で説明する各例においては、
図2に示す例のように、前工程金型装置1は、第2前工程型12の第2前工程型キャビティ面120が、内コア31を収容するように構成されたキャビティを区画する略半球面状の収容凹面部121を有している場合、収容凹面部121の開口端面121eの直径D1は、内コア31の直径D2よりも大きいと、好適である。この場合、前工程の内コア配置工程により内コア31が収容凹面部121によって区画されたキャビティ内に収容された状態において、収容凹面部121と内コア31との間に間隙121gが形成されることとなる。
これにより、仮に事前に準備される内コア31の寸法精度が所期したとおりのものでなく、内コア31が完全なる球状ではない場合であっても、内コア配置工程において、内コア31を収容凹面部121上に落とし込むだけで簡単に、内コア31の中心C31が、収容凹面部121の開口端面121eの中心C121e上に位置するように、又は当該開口端面121eの中心C121eと前工程金型軸線方向EADにおいて対向するように、内コア31を配置することが可能となる。これにより、内コア31の偏芯を抑制できる。
また、これにより、その後の被覆工程において、第1外コア用材料321の一部が間隙121gに入り込んで、薄皮部321sが形成されることができる(
図4、
図6)。その場合、中間成形体33の第1外コア用材料321は、本体部321mに加えて、薄皮部321sを有することとなる。薄皮部321sは、本体部321mから連続し、本体部321mから遠ざかるように内コア31の突出部31pの表面上を延在している。薄皮部321sは、内コア31の突出部31pの表面の一部のみを覆っている。被覆工程において薄皮部321sが形成されることにより、内コア31が、第1外コア用材料321の本体部321mだけでなく薄皮部321sによってもホールドされるので、内コア31と第1外コア用材料321との密着度を増大できる。ひいては、被覆工程の間、あるいは、その後の工程において、第1外コア用材料321が内コア31から位置ずれしたり外れたりするのを効果的に抑制できる。よって、多層コア3の耐久性を向上でき、また、内コア31の偏芯を抑制できる。
なお、この場合、後工程金型装置2は、中間板23の中間板キャビティ面230(
図8、
図15)によって区画されるキャビティが、中間成形体33の内コア31の突出部31pとそれを覆う薄皮部321sとを収容できるように構成されているのが好適である。このような観点から、後工程金型装置2は、中間板23の中間板キャビティ面230の開口端面230e(
図8、
図15)の直径が、内コア31の直径D2よりも大きいと、好適である。
なお、前工程金型装置1の収容凹面部121の開口端面121eの直径D1は、内コア31の直径D2の102~105%であると、好適である。
同様に、後工程金型装置2の中間板23の中間板キャビティ面230の開口端面230eの直径は、内コア31の直径D2の102~105%であると、好適である。また、後工程金型装置2の中間板23の中間板キャビティ面230の開口端面230eの直径は、前工程金型装置1の収容凹面部121の開口端面121eの直径D1と同じであると、好適である。
ただし、本明細書で説明する各例においては、収容凹面部121の開口端面121eの直径D1が、内コア31の直径D2と同じ(又は、略同じ)であってもよい。この場合、内コア配置工程により内コア31が収容凹面部121によって区画されるキャビティ内に収容された状態(
図2)において、収容凹面部121と内コア31との間に間隙121gが形成されず、また、その後の被覆工程(
図4)において、薄皮部321sが形成されないこととなる。よって、被覆工程によって得られた中間成形体33の第1外コア用材料321は、薄皮部321sを有さず、本体部321mのみを有することとなる。この場合、後工程金型装置2の中間板23の中間板キャビティ面230の開口端面230eの直径は、内コア31の直径D2と同じ(又は、略同じ)であると、好適である。
また、本明細書で説明する各例においては、収容凹面部121の開口端面121eの直径D1が、内コア31の直径D2よりも小さくてもよい。
【0043】
本明細書で説明する各例においては、
図2に示す例のように、前工程金型装置1は、第2前工程型12の第2前工程型キャビティ面120が、内コア31を収容するように構成されたキャビティを区画する略半球面状の収容凹面部121を有している場合、収容凹面部121の深さは、内コア31の半径(直径D2の半分)と同じ(又は略同じ)であってもよいし、それよりも小さくてもよいし、あるいは、それよりも大きくてもよい。
ここで、「収容凹面部(121)の深さ」は、収容凹面部121の最深点(収容凹面部121の開口端面121eから最も離れた点)から、収容凹面部121の開口端面121eまでの、距離を指す。
収容凹面部121の深さは、被覆工程で得られる中間成形体33の内コア31の突出部31pの高さに相当することとなる。収容凹面部121の深さが小さいほど、中間成形体33の内コア31の突出部31pの高さが小さくなり、ひいては、中間成形体33において内コア31の表面のうち第1外コア用材料321の本体部321mによって覆われる部分が多くなる。
中間成形体33の第1外コア用材料321の本体部321mと内コア31との密着度を高め、ひいては、多層コア3の耐久性を向上させる観点からは、収容凹面部121の深さは、内コア31の半径と同じ(又は略同じ)であるか、又は、それよりも小さいのが、好適であり、内コア31の半径よりも小さいのが、より好適である。
一方、後工程における中間成形体33の位置決めのし易さや、後工程における成形のし易さ等の観点からは、収容凹面部121の深さは、
図2の例のように、内コア31の半径と略同じ(より好ましくは、同じ)であると、好適である。この場合、被覆工程により得られた中間成形体33の第1外コア用材料321の本体部321mが、内コア31の表面のうち略半分を覆うこととなる(
図4)。
【0044】
本明細書で説明する各例において、前工程の被覆工程で得られた中間成形体33の第1外コア用材料321は、その少なくとも内周側部分が、未加硫又は半加硫の状態にあると、好適である。これにより、第1外コア用材料321と内コア31との密着性を向上でき、ひいては、その後の工程において、第1外コア用材料321が内コア31から位置ずれしたり外れたりするのを効果的に抑制できる。よって、多層コア3の耐久性を向上でき、また、内コア31の偏芯を抑制できる。
本明細書で説明する各例において、被覆工程で得られた中間成形体33の第1外コア用材料321は、その外周側部分が、半加硫の状態にあると、好適である。これにより、第1外コア用材料321のうち外周側部分を適度に硬化でき、ひいては、その後の予備成形工程の直前まで、第1外コア用材料321の形状や内コア31に対する位置若しくは向き等を効果的に維持できる。それにより、内コア31の偏芯を抑制できる。
本明細書で説明する各例において、被覆工程で得られた中間成形体33の第1外コア用材料321は、加硫済みの部分を有していないと、好適である。
【0045】
本明細書で説明する各例においては、前工程の被覆工程において、前工程金型装置1の温度が、第1外コア用材料321の温度よりも高いと、好適である。より具体的には、被覆工程の開始時(すなわち、第1外コア用材料321を内コア31に被せ始めた時)において、前工程金型装置1の温度が、第1外コア用材料321の温度よりも高いと、好適である。また、被覆工程の全体にわたって、前工程金型装置1の温度が、第1外コア用材料321の温度よりも高いと、さらに好適である。
なお、上述のように、被覆工程で得られた中間成形体33の第1外コア用材料321は、その全体において、未加硫の状態にあると、好適である。
同様の観点から、被覆工程(より具体的には、例えば、被覆工程の開始時、あるいは、被覆工程の全体)において、前工程金型装置1の温度は、例えば50~80℃であると、好適である。また、同様の観点から、被覆工程(より具体的には、例えば、被覆工程の開始時、あるいは、被覆工程の全体)において、第1外コア用材料321の温度は、例えば、40~60℃であると好適である。
なお、これらの温度は、
図3~
図4の例のように、被覆工程を押出成形により行う場合に、特に好適なものである。
また、同様の観点からは、
図3~
図4の例のように、被覆工程を、前工程金型装置1の第1前工程型11及び第2前工程型12どうしを閉じた状態で行う場合、被覆工程においては、例えば20~40秒にわたって、前工程金型装置1の第1前工程型11及び第2前工程型12どうしを閉じた状態を維持し、その後、中間成形体取出工程を行うと、好適である。
【0046】
本明細書で説明する各例においては、上記後工程における予備成形工程(
図9)において、
図9の例のように、第1後工程型21及び中間板23どうしが閉じた状態において、中間成形体33の第1外コア用材料321の本体部321mの中心軸線O321mが、後工程金型軸線方向OADに平行になるとともに、中間板キャビティ面230の開口端面230eの中心C230eと内コア31の中心C31と第1後工程型キャビティ面210の開口端面210e(
図8)の中心C210eとを通っていると、好適である。これにより、内コア31の偏芯を抑制できる。ここで、第1後工程型キャビティ面210の開口端面210e(
図8)は、円形の仮想面である。
【0047】
本明細書で説明する各例においては、後工程における中間板取出工程(
図10)では、後工程金型装置2の第1後工程型21、中間板23、及び第2後工程型22どうしが開かれて中間板23が後工程金型装置2から取り出される間、
図10の例のように、第2外コア用材料322が第2後工程型キャビティ面220上に保持されるとともに、中間成形体33が第1後工程型キャビティ面210上に保持されると、好適である。また、この場合、生コア形成工程(
図11)では、
図11の例のように、第1後工程型21及び第2後工程型22どうしを閉じることにより、第2外コア用材料322を中間成形体33に組み付けると、好適である。
これにより、中間板23を取り出した(中間板取出工程)後に、すぐに第1後工程型21及び第2後工程型22どうしを閉じて第2外コア用材料322を中間成形体33に組み付ける(生コア形成工程)ことができる。よって、多層コア3の成形に掛かるトータルの時間を低減できる。また、中間板23が後工程金型装置2から取り出されてから第2外コア用材料322が中間成形体33に組み付けられるまでの間に、第2外コア用材料322や中間成形体33の第1外コア用材料321がゴムの残留応力によって変形するのを抑制でき、ひいては、内コア31の偏芯を抑制できる。
【0048】
本明細書で説明する各例においては、後工程における予備成形工程(
図9)において、
図9の例のように、中間成形体33の第1外コア用材料321の一部が、第1後工程型キャビティ面210及び中間板キャビティ面230どうしの間(すなわち、第1後工程型キャビティ24a)よりも外側へはみ出て、第1後工程型21と中間板23との間で第1バリ321bを形成し、また、第2外コア用材料322の一部が中間板突起面231及び第2後工程型キャビティ面220どうしの間(すなわち、第2後工程型キャビティ24b)よりも外側へはみ出て、中間板23と第2後工程型22との間で第2バリ322bを形成すると、好適である。
これにより、その後の中間板取出工程(
図10)において、第1バリ321bが第1後工程型21側に張り付いて、中間成形体33が第1後工程型キャビティ面210上に保持されやすくなるとともに、第2バリ322bが第2後工程型22側に張り付いて、第2外コア用材料322が第2後工程型キャビティ面220上に保持されやすくなる。言い換えれば、後工程金型装置2の第1後工程型21、中間板23、及び第2後工程型22どうしが開かれる際に、中間成形体33及び第2外コア用材料322が中間板23側に張り付いて中間板23から離れなくなるのを抑制できる。
また、これにより、中間板取出工程(
図10)において、中間成形体33が第1後工程型キャビティ面210上に保持され、かつ、第2外コア用材料322が第2後工程型キャビティ面220上に保持される間、第1後工程型21側に張り付いた第1バリ321bが中間成形体33の第1外コア用材料321を外周側へ引っ張るので、第1外コア用材料321がゴムの残留応力によって縮まるのを抑制でき、また、第2後工程型22側に張り付いた第2バリ322bが第2外コア用材料322を外周側へ引っ張るので、第2外コア用材料322がゴムの残留応力によって縮まるのを抑制できる。これにより、内コア31の偏芯を抑制できる。
なお、この場合、第1バリ321b及び第2バリ322bは、生コア形成工程(
図11)において、互いに組み付けられる。その後、加硫工程において、第1バリ321b及び第2バリ322bは、加硫されることによって、互いに一体となって、合体バリ36を形成する(
図11~
図12)。加硫工程においては、多層コア3と合体バリ36とが一体に連結されてなる、連続成形体37が成形される。その後、多層コア取出工程(
図12~
図13)においては、加硫工程において形成された連続成形体37が、後工程金型装置2から取り出される。その後、合体バリ36が連続成形体37から除去され(バリ除去工程)、最終的に多層コア3が得られる。
なお、第1バリ321bは、
図9の例のように、複数の中間成形体33の第1外コア用材料321どうしを連結する部分を有していると、好適である。また、第2バリ322bは、
図9の例のように、複数の第2外コア用材料322どうしを連結する部分を有していると、好適である。
連続成形体37の合体バリ36の総体積は、当該連続成形体37の複数の多層コア3の総体積の5~20%であると好適である。
ただし、予備成形工程(
図9)において、第1バリ321b、第2バリ322bは、形成されなくてもよい。
【0049】
本明細書で説明する各例においては、上述のように予備成形工程(
図9)において第1バリ321bが形成される場合、第1後工程型21は、中間板23側の面に、第1後工程型キャビティ面210よりも外周側において、1つ又は複数(
図9の例では複数)の溝212を有していると、好適である。この場合、第1後工程型21は、中間板23側の面に、第1後工程型キャビティ面210と溝212との間において、第1後工程型キャビティ面210と溝212とを連結するように、後工程金型軸直方向OPDに平行に延在する、平坦面215を有していると、好適である。平坦面215は、第1後工程型キャビティ面210の開口端面に対し、同じ後工程金型軸線方向OADの位置にある。このような構成により、予備成形工程(
図9)において形成される第1バリ321bは、第1後工程型21の溝212と中間板23の第1平坦面233との間で成形される、肉厚部321bkと、第1後工程型21における第1後工程型キャビティ面210と溝212との間の平坦面215と中間板23の第1平坦面233との間で成形される、薄肉部321bnとを、有する。薄肉部321bnは、肉厚部321bkよりも、後工程金型軸線方向OADにおいて薄肉である。薄肉部321bnは、中間成形体33の第1外コア用材料321と肉厚部321bkとを連結している。第1バリ321bが肉厚部321bkを有することにより、第1バリ321bがより強固に第1後工程型21側に張り付くことができるので、中間板取出工程(
図10)において、中間成形体33が第1後工程型キャビティ面210上に保持されやすくなる。また、第1バリ321bが薄肉部321bnを有することにより、バリ除去工程において、第1バリ321bを薄肉部321bnにおいて簡単に破断することができ、ひいては、第1バリ321bの除去作業が簡単となる。
溝212は、第1後工程型キャビティ面210の外周側において、全周にわたって連続して延在していると、好適である。この場合、溝212によって成形される第1バリ321bの肉厚部321bkが、中間成形体33の外周側において、全周にわたって連続して延在することとなる。これにより、第1バリ321bがより強固に第1後工程型21側に張り付くことができる。
また、第1後工程型キャビティ面210と溝212との間の平坦面215は、第1後工程型キャビティ面210の周りを全周にわたって連続的に延在していると、好適である。この場合、平坦面215によって成形される第1バリ321bの薄肉部321bnが、中間成形体33と肉厚部321bkとの間において、全周にわたって連続して延在することとなる。これにより、第1バリ321bの除去作業がより簡単となる。
なお、この場合、第1後工程型21の1つ又は複数の溝212のうち少なくとも1つは、その溝底面(溝212の開口端面とは反対側の面)に、凸部213(
図9)を有していると、好適である。
図9の例においては、複数の溝212のうち、複数の第1後工程型キャビティ面210どうしの間に位置する1つ又は複数の溝212aのみが、その溝底面に、凸部213を有している。溝212が凸部213を有することにより、予備成形工程(
図9)において形成される第1バリ321bの肉厚部321bkは、凸部213によって成形される凹部321bgを有することとなる。これにより、アンカー効果により、第1バリ321bがさらに強固に第1後工程型21側に張り付くことができるので、中間板取出工程(
図10)において、中間成形体33が第1後工程型キャビティ面210上にさらに保持されやすくなる。
なお、
図9の例では、予備成形工程(
図9)において、第1後工程型21が有する上記1つ又は複数(
図9の例では複数)の溝212よりも第1後工程型21の外周側では、第1後工程型21の平坦面214と中間板23の第1平坦面233とが互いに当接し、第1バリ321bが形成されないようにされている。
【0050】
同様に本明細書で説明する各例においては、上述のように予備成形工程(
図9)において、第2バリ322bが形成される場合、第2後工程型22は、中間板23側の面に、第2後工程型キャビティ面220よりも外周側において、1つ又は複数(
図9の例では複数)の溝222を有していると、好適である。この場合、第2後工程型22は、中間板23側の面に、第2後工程型キャビティ面220と溝222との間において、第2後工程型キャビティ面220と溝222とを連結するように、後工程金型軸直方向OPDに平行に延在する、平坦面225を有していると、好適である。平坦面225は、第2後工程型キャビティ面220の開口端面に対し、同じ後工程金型軸線方向OADの位置にある。このような構成により、予備成形工程(
図9)において形成される第2バリ322bは、第2後工程型22の溝222と中間板23の第2平坦面234との間で成形される、肉厚部322bkと、第2後工程型22における第2後工程型キャビティ面220と溝222との間の平坦面225と中間板23の第2平坦面234との間で成形される、薄肉部322bnとを、有する。薄肉部322bnは、肉厚部322bkよりも、後工程金型軸線方向OADにおいて薄肉である。薄肉部322bnは、第2外コア用材料322と肉厚部322bkとを連結している。第2バリ322bが肉厚部322bkを有することにより、第2バリ322bがより強固に第2後工程型22側に張り付くことができるので、中間板取出工程(
図10)において、第2外コア用材料322が第2後工程型キャビティ面220上に保持されやすくなる。また、第2バリ322bが薄肉部322bnを有することにより、バリ除去工程において、第2バリ322bを薄肉部322bnにおいて簡単に破断することができ、ひいては、第2バリ322bの除去作業が簡単となる。
溝222は、第2後工程型キャビティ面220の外周側において、全周にわたって連続して延在していると、好適である。この場合、溝222によって成形される第2バリ322bの肉厚部322bkが、第2外コア用材料322の外周側において、全周にわたって連続して延在することとなる。これにより、第2バリ322bがより強固に第2後工程型22側に張り付くことができる。
また、第2後工程型キャビティ面220と溝222との間の平坦面225は、第2後工程型キャビティ面220の周りを全周にわたって連続的に延在していると、好適である。この場合、平坦面225によって成形される第2バリ322bの薄肉部322bnが、第2外コア用材料322と肉厚部322bkとの間において、全周にわたって連続して延在することとなる。これにより、第2バリ322bの除去作業がより簡単となる。
なお、この場合、第2後工程型22の1つ又は複数の溝222のうち少なくとも1つは、その溝底面(溝222の開口端面とは反対側の面)に、凸部223(
図9)を有していると、好適である。
図9の例においては、複数の溝222のうち、複数の第2後工程型キャビティ面220どうしの間に位置する1つ又は複数の溝222aのみが、その溝底面に、凸部223を有している。溝222が凸部223を有することにより、予備成形工程(
図9)において形成される第2バリ322bの肉厚部322bkは、凸部223によって成形される凹部322bgを有することとなる。これにより、アンカー効果により、第2バリ322bがさらに強固に第2後工程型22側に張り付くことができるので、中間板取出工程(
図10)において、第2外コア用材料322が第2後工程型キャビティ面220上にさらに保持されやすくなる。
なお、
図9の例では、予備成形工程(
図9)において、第2後工程型22が有する上記1つ又は複数(
図9の例では複数)の溝222よりも第2後工程型22の外周側では、第2後工程型22の平坦面224と中間板23の第2平坦面234とが互いに当接し、第2バリ322bが形成されないようにされている。
【0051】
図11~
図12に示す例では、加硫工程(
図11~
図12)において、第1バリ321bの肉厚部321bkと第2バリ322bの肉厚部322bkとが合体することにより、合体バリ36の肉厚部36kが形成され、また、第1バリ321bの薄肉部321bnと第2バリ322bの薄肉部322bnとが合体することにより、合体バリ36の薄肉部36nが形成される。
【0052】
後工程における予備成形工程(
図9)において、中間成形体33の第1外コア用材料321と第2外コア用材料322とは、その少なくとも内周側部分が、未加硫又は半加硫の状態に維持されると好適であり、未加硫状態に維持されるとより好適である。これにより、その後の加硫工程において、第1外コア用材料321及び第2外コア用材料322と内コア31との密着性を向上でき、ひいては、多層コア3の耐久性を向上できる。
また、後工程における予備成形工程(
図9)において、中間成形体33の第1外コア用材料321と第2外コア用材料322とは、その外周側部分が、半加硫又は加硫済みの状態にされると、好適である。これにより、第1外コア用材料321及び第2外コア用材料322のうち外周側部分を適度に硬化でき、ひいては、外コア32の球面状の外表面をより精度よく成形でき、また、内コア31の偏芯を抑制できる。
このような観点から、本明細書で説明する各例においては、後工程における予備成形工程(
図9)において、第1後工程型21の温度をT1、第2後工程型22の温度をT2としたとき、T1とT2とは、T1≧T2の関係を満たすと、好適である。
また、後工程における予備成形工程(
図9)において、中間板23の温度をT3としたとき、T1とT3とは、T1≧T3の関係を満たすと、好適であり、T1>T3の関係を満たすと、より好適である。また、T2とT3とは、T2≧T3の関係を満たすと、好適であり、T2>T3の関係を満たすと、より好適である。
また、T1とT2とT3とは、T1≧T2≧T3の関係を満たすと、好適である。T1とT2とT3とは、T1=T2>T3の関係を満たすか、あるいは、T1>T2>T3の関係を満たすと、より好適である。
また、T1は、80℃<T1<170℃であると好適であり、150℃<T1<170℃であるとより好適である。T2は、80℃<T2<170℃であると好適であり、150℃<T2<170℃であるとより好適である。T3は、50~100℃であると好適である。
なお、これらT1、T2、T3の温度の大小関係や数値範囲は、その後の中間板取出工程(
図10)において、後工程金型装置2の第1後工程型21、中間板23、及び第2後工程型22どうしが開かれて中間板23が後工程金型装置2から取り出される間、第2外コア用材料322が第2後工程型キャビティ面220上に保持されるとともに、中間成形体33が第1後工程型キャビティ面210上に保持されるのを、実現する観点からも、好適なものである。
【0053】
本明細書で説明する各例においては、後工程における加硫工程(
図11)における第1後工程型21の温度T1’及び第2後工程型22の温度T2’が、それぞれ、後工程における予備成形工程(
図9)における第1後工程型21の温度T1及び第2後工程型22の温度T2と同じであると、好適である。これにより、予備成形工程(
図9)と加硫工程(
図11)とで後工程金型装置2の温度を変える必要がないので、作業性を向上でき、また、多層コア3の成形に掛かるトータルの時間を低減できる。
ただし、T1’及びT2’は、それぞれT1及びT2と異なっていてもよい。
【0054】
本明細書で説明する各例においては、後工程の予備成形工程(
図9)における圧縮成形の時間tが、後工程の加硫工程(
図11)における加硫の時間t’よりも短いと、好適である。これにより、加硫工程の前に第1外コア用材料321と第2外コア用材料322とを加硫しすぎるのを抑制できる。
時間tは、例えば1~3分が好適である。時間t’は、例えば8~15分が好適である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の多層コア成形方法は、ゴルフボールの多層コアを成形するために利用できるものである。
【符号の説明】
【0056】
1:前工程金型装置、
11:第1前工程型、 110:第1前工程型キャビティ面、
12:第2前工程型、 120:第2前工程型キャビティ面、 121:収容凹面部、 121e:開口端面、 C121e:中心、121g:間隙、 122:平坦面部、
14:前工程型キャビティ、 O14:中心軸線、
15:押圧部材、 16:貯蔵部、 17:押出口、
EAD:前工程金型軸線方向、 EPD:前工程金型軸直方向、
2:後工程金型装置、
21:第1後工程型、 210:第1後工程型キャビティ面、 210e:開口端面、 C210e:中心、 212、212a:溝、 213:凸部、 214、215:平坦面、
22:第2後工程型、 220:第2後工程型キャビティ面、 222、222a:溝、 223:凸部、 224、225:平坦面、
23:中間板、 230:中間板キャビティ面、 230e:開口端面、 C230e:中心、 231:中間板突起面、 233:第1平坦面、 234:第2平坦面、
24a:第1後工程型キャビティ、 24b:第2後工程型キャビティ、 24c:第3後工程型キャビティ
OAD:後工程金型軸線方向、 OPD:後工程金型軸直方向、
3:多層コア、
31:内コア、 31p:突出部、 C31:中心、
32:外コア、 321:第1外コア用材料、 321m:本体部、 O321m:中心軸線、 321f:平坦面部、 321s:薄皮部、 321b:第1バリ、 321bk:肉厚部、 321bg:凹部、 321bn:薄肉部、 322:第2外コア用材料、 322b:第2バリ、 322bk:肉厚部、 322bg:凹部、 322bn:薄肉部、 322r:内表面、 C32:中心、
33:中間成形体、
36:合体バリ、 36k:肉厚部、 36n:薄肉部、
37:連続成形体、
3R:生多層コア