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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】潤滑剤塗布装置及び潤滑剤塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/16 20060101AFI20231116BHJP
   B05C 1/06 20060101ALI20231116BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231116BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20231116BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231116BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231116BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B05C1/16
B05C1/06
B05C11/10
B05C11/02
B05D7/00 K
B05D7/24 301Q
B05D3/00 F
B05D3/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221941
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021090899
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】清水 晶太
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 力茂
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-276688(JP,A)
【文献】特開2003-205261(JP,A)
【文献】特開平08-270653(JP,A)
【文献】特開2015-051411(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170581(WO,A1)
【文献】特開2020-081901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-3/20
7/00-21/00
B05D 1/00-7/26
F16N 3/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部と小径部とを含む軸状部品の前記大径部に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置であって、
前記軸状部品が挿通される開穴であって、前記開穴の軸に沿って外部に向かって開口するスリットを有し、前記大径部の外周面に配設されたOリングによって前記軸状部品が前記開穴の周壁と一定間隔を保持しながら回動可能に挿通される長穴部と、
前記スリットの幅方向において少なくとも一部に設けられる削落部と、を備え、
前記削落部は、前記スリットで露呈する前記軸状部品の前記大径部に付着する前記潤滑剤を、前記長穴部における前記軸状部品の回転によって削ぎ落とす潤滑剤塗布装置。
【請求項2】
前記削落部に隣接する位置に設けられる凹部と、
前記凹部から退避可能に前記凹部に配置され、前記削落部により削ぎ落とされる前記潤滑剤を受け止める受止部と、を備える請求項1に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項3】
前記軸状部品の前記削落部に対向する位置で前記軸状部品と対向して前記スリットを覆う覆部を備える請求項1または2に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項4】
大径部と小径部とを含む軸状部品の前記大径部に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布方法であって、
開穴の軸に沿って外部に向かって開口するスリットを有する長穴部に、前記大径部の外周面に配設されたOリングによって前記軸状部品を前記開穴の周壁と一定間隔を保持しながら回動可能に挿通する挿通工程と、
前記スリットで露呈する前記軸状部品の前記大径部に対して前記潤滑剤を付着させる付着工程と、
前記軸状部品の前記大径部に付着する前記潤滑剤を、前記長穴部における前記軸状部品の回転によって、前記スリットの幅方向において少なくとも一部に設けられる削落部で削ぎ落とす削落工程と、を備える潤滑剤塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸状部品に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置及び潤滑剤塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の潤滑剤塗布装置及び潤滑剤塗布方法に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、被塗布部材の一部分が保持体と接触面を有する状態で、前記保持体が前記被塗布部材を保持する被塗布部材保持体を作製する第1の工程と、前記被塗布部材保持体における前記被塗布部材の前記接触面以外の表面にグリスを塗布して前記被塗布部材をグリス塗布部材とし、前記被塗布部材保持体をグリス塗布部材保持体とする第2の工程と、前記グリス塗布部材保持体から前記グリス塗布部材を離脱する第3の工程とを有する被塗布部材へのグリス塗布方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-51916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のグリス塗布方法では、被塗布部材へのグリス塗布量を一定にすることは困難である。
【0005】
本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、軸状部品に塗布される潤滑剤の膜厚を管理可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、大径部と小径部とを含む軸状部品の大径部に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置であって、軸状部品が挿通される開穴であって、開穴の軸に沿って外部に向かって開口するスリットを有し、大径部の外周面に配設されたOリングによって軸状部品が開穴の周壁と一定間隔を保持しながら回動可能に挿通される長穴部と、スリットの幅方向において少なくとも一部に設けられる削落部と、を備え、削落部は、スリットで露呈する軸状部品の大径部に付着する潤滑剤を、長穴部における軸状部品の回転によって削ぎ落とす潤滑剤塗布装置を、開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、軸状部品に塗布される潤滑剤の膜厚が管理可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の潤滑剤塗布装置を表す斜視図である。
図2】同潤滑剤塗布装置でグリスが塗布されるスプールを表す斜視図である。
図3】同スプールが用いられる部品実装機を表す斜視図である。
図4】同部品装置の実装ヘッドを模式的に表す図である。
図5】同潤滑剤塗布装置を表す斜視図である。
図6】同潤滑剤塗布装置を表す正面図である。
図7図1の線I-Iにおける同潤滑剤塗布装置の断面を模式的に表す図である。
図8図1の線II-IIにおける同潤滑剤塗布装置の一部断面を表す図である。
図9】同潤滑剤塗布装置を表す正面図である。
図10】本実施形態の潤滑剤塗布方法を表すフローチャートである。
図11】ガード処理後の潤滑剤塗布装置を表す斜視図である。
図12】同潤滑剤塗布装置を表す正面図である。
図13】同線II-IIにおける同潤滑剤塗布装置の一部断面を表す図である。
図14】付着処理後の潤滑剤塗布装置を表す斜視図である。
図15】同潤滑剤塗布装置を表す正面図である。
図16】同線II-IIにおける同潤滑剤塗布装置の一部断面を表す図である。
図17】削落処理中の潤滑剤塗布装置を表す斜視図である。
図18】同線II-IIにおける同潤滑剤塗布装置の一部断面を表す図である。
図19】同線I-Iにおける同潤滑剤塗布装置の断面を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図面では、構成の一部が省略されて描かれていることがあり、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。各図における方向は、各図に記載された通りである。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の潤滑剤塗布装置10は、本体12、ガード部材14、及び付着部材16等を備えており、本体12に挿通されたスプール80に対し、ガード部材14及び付着部材16を用いて、半固体又は半流動体のグリス(後述の図16等の符号18)を塗布する装置である。先ず、スプール80等について説明し、潤滑剤塗布装置10の説明は後述する。
【0011】
図2に示すように、スプール80は、軸形状であって、複数の小径部82と複数の大径部84とが交互に設けられた部品である。各大径部84は、各小径部82よりも径が大きい。各大径部84の周面には、1個又は2個のOリング86が装着されている。各Oリング86は、各大径部84の周面よりも径方向へ突出している。スプール80の一端には、レバー部88が径方向へ突出した状態で設けられている。レバー部88は、板形状であって、スプール80の一端部分を占める大径部84の端面において、ボルト90によって固定されている。
【0012】
次に、図3及び図4を参照して、スプール80が取り付けられた部品実装機110について、説明する。
【0013】
図3に示すように、部品実装機110は、基板112に部品を実装する装置である。部品実装機110は、基台111と、部品供給装置120と、基板搬送装置125と、XYロボット130と、実装ヘッド140と、パーツカメラ128と、制御装置129等を備えている。
【0014】
部品供給装置120は、水平面(XY平面)に平行な配列方向に並ぶように複数設けられている。部品供給装置120は、部品実装機110の前側に配置され、部品供給装置120の配列方向は、左右方向(X軸方向)である。複数の部品供給装置120の各々は、所定間隔毎に形成された収容部に部品が収容されたテープを送り出すことにより、部品を供給するテープフィーダとして構成されている。
【0015】
基板搬送装置125は、基板112を水平面(XY平面)に平行な搬送方向に搬送する装置である。搬送方向は、左右方向(X軸方向)である。基板搬送装置125は、前後に間隔を開けて設けられ左右方向に架け渡された一対のコンベアベルト126,126(図3では一方のみ図示)を有している。基板112は、コンベアベルト126,126により搬送方向に搬送されて所定の取込位置に到達すると、裏面側に多数立設された支持ピン127によって支持される。
【0016】
XYロボット130は、実装ヘッド140を水平面(XY平面)に平行に移動させる装置である。XYロボット130は、前後方向(Y軸方向)に沿って設けられた左右一対のY軸ガイドレール133,133と、左右一対のY軸ガイドレール133,133に架け渡されたY軸スライダ134とを備えている。また、XYロボット130は、Y軸スライダ134の前面に左右方向(X軸方向)に沿って設けられたX軸ガイドレール131,131と、X軸ガイドレール131,131に取り付けられたX軸スライダ132とを備えている。X軸スライダ132は、X軸モータ(不図示)の駆動によってX軸方向に移動可能であり、Y軸スライダ134は、Y軸モータ(不図示)の駆動によってY軸方向に移動可能である。X軸スライダ132には実装ヘッド140が取り付けられている。実装ヘッド140は、XYロボット130が作動することにより、XY平面上の任意の位置に移動される。
【0017】
実装ヘッド140は、部品を採取して基板112に実装する装置である。実装ヘッド140は、筐体140a及びヘッド本体141等を備えている。筐体140aは、実装ヘッド140の外装であり、略直方体形状をなしている。筐体140aの後側には、X軸スライダ132が取り付けられている。図4に示すように、ヘッド本体141は、ノズルホルダ142、ノズル144、及び上記のスプール80等を備えている。
【0018】
ヘッド本体141は、円柱状の回転体である。ヘッド本体141には、複数のホルダ孔141a及びスプール孔141bが空けられている。ノズルホルダ142は、ヘッド本体141の周方向に沿って所定間隔で複数設けられて、円周上に配置されている。これにより、実装ヘッド140は、ロータリーヘッドとして構成されている。複数のノズルホルダ142の各々は、ホルダ孔141aを貫通しており、上下動可能にヘッド本体141に取り付けられている。ノズル144は、各ノズルホルダ142の先端部に交換可能に取り付けられている。ノズル144は、ノズルホルダ142を介してヘッド本体141に取り付けられており、ヘッド本体141の周方向に沿って円周上に配置されている。ノズル144は、圧力供給装置180から供給される負圧の作用によって部品を先端に吸着して保持する。ノズルホルダ142及びノズル144が配置された円周の中心は、ヘッド本体141の中心と一致している。本実施形態では、ヘッド本体141には、ノズルホルダ142及びノズル144がそれぞれ12本ずつ取り付けられている。そのため、隣り合うノズルホルダ142同士は、ヘッド本体141の周方向に沿って30°の間隔で配置されている。ノズル144についても同様である。
【0019】
スプール80は、ヘッド本体141に複数配設され、複数のスプール孔141b及びノズル144の各々に対応して設けられている。スプール80は、対応するノズル144に圧力供給装置180からの負圧が供給されるか否かを切り替える切替弁を構成する。本実施形態では、スプール80は、ノズル144に圧力供給装置180からの負圧が供給されるか正圧が供給されるかを切り替える。スプール80は、ヘッド本体141の周方向に沿って所定間隔で複数設けられて、円周上に配置されている。複数のスプール80の各々は、スプール孔141b内に挿入されて上下動可能にヘッド本体141に取り付けられている。複数のスプール80の各々は、図2及び図4に示すように、軸形状でありスプール孔141bの内径よりも小径の小径部82と、小径部82よりも大径でありスプール孔141b内の空間を区画する複数(本実施形態では4個)の大径部84と、を備えている。本実施形態では、ヘッド本体141にはスプール80が12本(ノズル144と同数)取り付けられている。そのため、隣り合うスプール80同士は、ヘッド本体141の周方向に沿って30°の間隔で配置されている。但し、複数のスプール80の各々は、対応するノズル144に対してヘッド本体141の円周の径方向からずれた位置に配置されている。
【0020】
なお、スプール80の各大径部84は、その周面に装着された上記のOリング86を介し、スプール孔141bを形成する周壁に密接することによって、スプール孔141b内
の空間を区画している。
【0021】
また、複数のスプール80の各々は、下端にレバー部88を有している(図2及び図4参照)。レバー部88は、ヘッド本体141よりも径方向外側に突出し、バルブ駆動装置(不図示)から上下方向の駆動力を受ける。これにより、スプール80は、スプール孔141b内を上下動して、ノズル144への負圧の供給の有無を切り替えるようになっている。その際、スプール80の各大径部84は、上記のOリング86を介し、スプール孔141bの周壁を摺動する。そのため、スプール80のうち、上記のOリング86を含む各大径部84の周面に対しては、上記のグリスが塗布されている。しかしながら、スプール80の各小径部82に対しては、スプール孔141b内で区画される空間が負圧又は正圧の供給路として使用されるため、上記のグリスが塗布されない。
【0022】
ヘッド本体141は、R軸151を備えている。R軸151は、上下方向に延び、下端がヘッド本体141の中心軸に取り付けられている。R軸151は、筐体140a内において、回転自在に支持されている。R軸151は、R軸駆動装置(不図示)からの駆動力で回転することにより、ヘッド本体141を回転させる。ヘッド本体141が回転することにより、ヘッド本体141と共に複数のノズルホルダ142及び複数のノズル144が円周方向に回転移動(公転)する。すなわち、上記のR軸駆動装置が駆動することで、複数のノズルホルダ142及び複数のノズル144は、ヘッド本体141の回転軸を中心とした公転軌跡に沿って公転する。なお、ヘッド本体141には複数のスプール80も取り付けられているため、上記のR軸駆動装置が駆動することで複数のスプール80も複数のノズルホルダ142と一体的に回転移動(公転)する。また、上記のR軸駆動装置は、所定角度(例えば1ノズルピッチ分である30°)ずつヘッド本体141を間欠回転させることにより、ノズル144を所定角度ずつ間欠的に公転させることができる。
【0023】
ここで、ノズル144の公転軌跡上には、ノズル144が部品供給装置120からの部品の採取と基板112への部品の実装との少なくとも一方を行うための、第1ノズル位置及び第2ノズル位置が定められている。第1,第2ノズル位置は、互いにノズル144の公転軌跡の中心軸を挟んで左右に対向する位置にある。第1,第2ノズル位置はノズル144の公転軌跡上の右端及び左端の位置である。上記のR軸駆動装置は、ヘッド本体141を回転させることで、12個のノズルのうちいずれのノズル144が第1,第2ノズル位置の各々に位置するかを変更する。
【0024】
また、レバー部88の公転軌跡上には、上記のバルブ駆動装置からレバー部88を操作するための位置として、第1,第2操作位置が定められている。第1,第2操作位置の各々は、第1,第2ノズル位置に位置するノズル144に対応するレバー部88の位置として定められている。
【0025】
また、各ノズルホルダ142は、Q軸駆動装置(不図示)によって、ノズルホルダ142の中心軸回りに同一回転方向に同一回転量(回転角度)だけ回転させられる。これに伴い複数のノズル144も互いに同期して自転する。更に、ノズルホルダ142及びノズル144は、Z軸駆動装置(不図示)によって、Z軸方向に移動(上下動)させられる。上記のZ軸駆動装置は、ノズルホルダ142の公転軌跡上の第1,第2ノズル位置に位置するノズルホルダ142を個別に昇降可能である。
【0026】
圧力供給装置180は、負圧及び正圧を供給する装置であって、正圧源180a及び負圧源180bを備えている。また、圧力供給装置180が複数のノズル144の各々に負圧と正圧とのいずれを供給するかは、各々のノズル144に対応するスプール80によって切り替えられる。そのため、実装ヘッド140は、ヘッド通路183a,183bと、正圧導入通路184aと、負圧導入通路184bと、正圧供給通路187aと、負圧供給
通路187b等を備えている。
【0027】
正圧源180aは例えばコンプレッサとして構成されている。負圧源180bは例えば真空ポンプとして構成されている。ヘッド通路183a,183bは、それぞれ正圧源180a及び負圧源180bと連通し、R軸151及びヘッド本体141の中心軸方向に沿って延びるように形成されている。なお、図4に示すように、ヘッド通路183aは、R軸151及びヘッド本体141の中心軸を含む円柱状の通路である。ヘッド通路183bは、ヘッド通路183aから離間しつつその周囲を囲むような円筒状(断面がリング状)の通路として、ヘッド通路183aと同軸に形成されている。
【0028】
正圧導入通路184aは、ヘッド通路183aと連通し、ヘッド本体141の中心軸から径方向外側に向かって放射状に延びるように複数形成されている。複数の正圧導入通路184aの各々は、複数のスプール80の各々と対応して形成されており、対応するスプール80が挿入されたスプール孔141bに向かって直線的に延びてそのスプール孔141b内と連通している。
【0029】
負圧導入通路184bは、ヘッド通路183bと連通し、ヘッド本体141の中心軸側から径方向外側に向かって放射状に延びるように複数形成されている。複数の負圧導入通路184bの各々は、複数のスプール80の各々と対応して形成されており、対応するスプール80が挿入されたスプール孔141bに向かって直線的に延びてそのスプール孔141b内と連通している。
【0030】
正圧供給通路187aは、ヘッド本体141の内部に複数形成され、各々が複数のスプール80の各々に対応して形成されている。複数の正圧供給通路187aの各々は、互いに対応するノズルホルダ142とスプール80との間を結ぶように形成されて、ホルダ孔141aとスプール孔141bとを連通させている。
【0031】
負圧供給通路187bは、ヘッド本体141の内部に複数形成され、各々が複数のスプール80の各々に対応して形成されている。負圧供給通路187bの各々は、同じスプール孔141bから延びる正圧供給通路187aと合流して、この正圧供給通路187aを介してホルダ孔141aと連通している。
【0032】
ノズル144に供給される圧力の切り替えについて説明する。スプール80が上昇した位置にある状態では、スプール80は、正圧導入通路184aと正圧供給通路187aとをスプール孔141bを介して連通させる。また、スプール80は、大径部84がスプール孔141b内を区画することで負圧導入通路184bと負圧供給通路187bとの連通を遮断する。これらにより、正圧源180aからの正圧が、ヘッド通路183a、正圧導入通路184a、スプール孔141b、及び正圧供給通路187aを介してホルダ孔141a内に供給される。そして、ホルダ孔141a内の正圧がノズルホルダ142の側面に形成された孔を介してノズルホルダ142内に供給され、ノズル144の先端に正圧が供給される。一方、スプール80が下降した位置にある状態では、スプール80は、大径部84がスプール孔141b内を区画することで正圧導入通路184aと正圧供給通路187aとの連通を遮断する。また、スプール80は、負圧導入通路184bと負圧供給通路187bとをスプール孔141bを介して連通させる。これらにより、負圧源180bからの負圧が、ヘッド通路183b、負圧導入通路184b、スプール孔141b、及び負圧供給通路187bを介してホルダ孔141a内に供給される。そのため、ノズル144の先端には負圧が供給される。このように、スプール80が上昇位置にあるときにはそのスプール80に対応するノズル144には正圧が供給され、スプール80が下降位置にあるときには対応するノズル144には負圧が供給される。
【0033】
パーツカメラ128は、図3に示すように、部品供給装置120と基板搬送装置125との間に設けられている。パーツカメラ128は、ノズル144に吸着された部品の姿勢を下方から撮像する。
【0034】
次に、部品実装機110が生産処理を行うときの動作について説明する。制御装置129は、図示しない管理装置から受信した生産プログラムに基づいて、部品実装機110の各部を制御して複数の部品が実装された基板112を生産する。なお、生産処理の開始時には、複数のスプール80はいずれも上昇位置にあるものとする。生産処理では、制御装置129は、まず、実装ヘッド140を部品供給装置120の上方に移動させる。続いて、制御装置129は、複数のノズル144の各々に部品を順次採取させる採取処理を行う。採取処理では、制御装置129は、まず、第1,第2ノズル位置に位置するノズル144をそれぞれ下降させる。また、制御装置129は、第1,第2操作位置に位置するレバー部88を操作して下降させる。これにより、第1,第2ノズル位置に位置するノズル144には負圧が供給されて、これらのノズル144の各々が部品供給装置120から供給された部品を採取して保持する。そして、制御装置129は、第1,第2ノズル位置に位置するノズル144を上昇させる。なお、第1,第2ノズル位置は部品供給装置120の配列方向と同じ左右方向に配列されているから、第1,第2ノズル位置に位置するノズル144に同時に部品を採取させることができる。制御装置129は、このように第1,第2ノズル位置に位置するノズル144に部品を採取させる処理と、上記のR軸駆動装置により第1,第2ノズル位置に位置するノズル144を変更する処理とを交互に行って、全てのノズル144に部品を採取させる。
【0035】
採取処理を行うと、制御装置129は、実装ヘッド140をパーツカメラ128の上方に移動し、各ノズル144に吸着された部品を順次パーツカメラ128で撮像する。制御装置129は、各撮像画像に基づいて部品の姿勢を認識し、その姿勢を加味して部品を基板112上に実装する実装処理を行う。実装処理では、制御装置129は、まず、第1ノズル位置に位置するノズル144が保持している部品が基板112上の実装位置の上方に位置するよう実装ヘッド140を移動させる。次に、制御装置129は、パーツカメラ128の撮像画像に基づく部品の姿勢を加味して第1ノズル位置に位置するノズル144を適切な向きに自転させ、ノズル144を下降させる。続いて、制御装置129は、第1操作位置に位置するレバー部88を操作して上昇させる。これにより、第1ノズル位置に位置するノズル144には正圧が供給されて、ノズル144は部品を離し、部品が基板112に実装される。そして、制御装置129は、第1ノズル位置に位置するノズル144を上昇させる。制御装置129は、このように第1ノズル位置に位置するノズル144が保持している部品を基板112に実装する処理と、上記のR軸駆動装置により第1ノズル位置に位置するノズル144を変更する処理とを交互に行って、全てのノズル144の部品を基板112に実装する。なお、制御装置129は、第2ノズル位置に位置するノズル144を用いて実装処理を行ってもよい。
【0036】
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置10について説明する。図5及び図6に示すように、潤滑剤塗布装置10は、上記の本体12、ガード部材14、及び付着部材16等を備えている。本体12は、略直方体形状をなしている。本体12の上面12aには、その前辺側中央において、開穴20が設けられている。
【0037】
開穴20は、円形の一部が本体12の上面12aの前辺で切り欠かれたような略D形状をなし、上下方向に沿って、本体12の下面12b付近にまで空けられることによって、長穴部22を形成している。これにより、本体12の前面12cには、スリット24が形成されている。スリット24は、本体12の前面12cにおける長穴部22の切れ目であって、上下方向に平行な開穴20の軸Aに沿って、本体12の外部へ向かって開口している。
【0038】
本体12の前面12cには、スリット24よりも左側において、左側奥面26が設けられている。左側奥面26は、本体12の前面12cよりも後方向の位置に配設されている。左側奥面26には、ガード部材14が配設されている。
【0039】
ガード部材14は、略厚板形状をなしている。ガード部材14は、その左側回動端部14aが、本体12の左側奥面26において、例えば、ヒンジ(不図示)等によって、上下方向に平行な軸を回動中心として回動可能に支持されている。これにより、ガード部材14は、その内面14dが本体12の左側奥面26に向けて移動する閉方向へ回動し、あるいは、その閉方向とは反対の開方向へ回転することが可能である。なお、以下の説明では、ガード部材14を閉方向へ回転させることを、ガード部材14を閉じると表記し、ガード部材14を開方向へ回転させることを、ガード部材14を開けると表記する。
【0040】
更に、ガード部材14には、その左側回動端部14aとは反対側にある右側先端面14bにおいて、外方へ突き出した3個の受止部28が、上下方向で、所定間隔を置いて並んで設けられている。各受止部28は、ガード部材14の右側先端面14bにおいて、ガード部材14の外面14c寄りに設けられた突片であり、ガード部材14の外面14cとは面一に設けられている。これに対して、各受止部28は、ガード部材14の右側先端面14bにおいて、ガード部材14の内面14dから外面14cへ向かう方向の位置に配設されることによって、ガード部材14の内面14dとの間に段差を形成している。
【0041】
本体12の前面12cには、スリット24よりも右側において、右側奥面30が設けられている。右側奥面30は、本体12の前面12cよりも後方向の位置に配設されることによって、本体12の前面12cとの間に段差を形成している。右側奥面30には、付着部材16が配設されている。
【0042】
付着部材16は、略厚板形状をなしている。付着部材16は、その右側回動端部16aが、本体12の右側奥面30において、例えば、ヒンジ(不図示)等によって、上下方向に平行な軸を回動中心として回動可能に支持されている。これにより、付着部材16は、その内面16dが本体12の右側奥面30に向けて移動する閉方向へ回動し、あるいは、その閉方向とは反対の開方向へ回転することが可能である。なお、以下の説明では、付着部材16を閉方向へ回転させることを、付着部材16を閉じると表記し、付着部材16を開方向へ回転させることを、付着部材16を開けると表記する。
【0043】
更に、付着部材16には、その右側回動端部16aとは反対側にある左側先端面16bにおいて、外方へ突き出した4個の覆部32が、上下方向で、ガード部材14の各受止部28の上下方向長さよりも大きな間隔を置いて並んで設けられている。
【0044】
各覆部32は、付着部材16の左側先端面16bにおいて、付着部材16の外面16c寄りに設けられた突片であり、付着部材16の外面16cとは面一に設けられている。これに対して、各覆部32は、付着部材16の左側先端面16bにおいて、本体12における前面12cと右側奥面30との段差に相当する分、付着部材16の内面16dから外面16cへ向かう方向の位置に配設されることによって、付着部材16の内面16dとの間に段差を形成している。
【0045】
なお、付着部材16が閉じられると、付着部材16の内面16dと各覆部32との間に形成された段差が、本体12の前面12cと右側奥面30との間に形成された段差と相対する。そのため、付着部材16が閉じられた場合、付着部材16の内面16dが本体12の右側奥面30と対向すると共に、付着部材16の各覆部32が本体12の前面12c及びスリット24と対向する状態になる(後述の図14及び図15参照)。
【0046】
本体12の前面12cには、スリット24にその左右側で隣接する一対の凹部34a,34bが、3組設けられている。各組の凹部34a,34bは、スリット24を挟んで、左右方向に並んでいる。各組の凹部34a,34bのうち、スリット24にその左側で隣接する各凹部34aは、スリット24の左側において上下方向に並び、スリット24にその右側で隣接する各凹部34bは、スリット24の右側において上下方向に並んでいる。各組の凹部34a,34bは、ガード部材14が閉じられた場合にガード部材14の各受止部28が対向する位置に配設されている。
【0047】
また、各組の凹部34a,34bのうち、スリット24にその左側で隣接する各凹部34aは、本体12の左側奥面26と連なるが、ガード部材14における内面14dと受止部28との段差に相当する分、本体12の左側奥面26よりも前方向に位置することによって、本体12の左側奥面26と段差を形成している。
【0048】
なお、ガード部材14が閉じられると、ガード部材14の内面14dと各受止部28との間に形成された段差が、本体12の左側奥面26と各凹部34aとの間に形成された段差と相対する。そのため、ガード部材14が閉じられた場合、ガード部材14の内面14dが本体12の左側奥面26と対向すると共に、ガード部材14の各受止部28が、各組の凹部34a,34bに配置される。
【0049】
その際、ガード部材14の各受止部28は、本体12のスリット24に左右方向で架け渡されると共に、本体12の前面12cから外方へ突出した状態になる(後述の図11及び図12参照)。その後において、ガード部材14が開けられると、ガード部材14の内面14dが本体12の左側奥面26から離れると共に、ガード部材14の各受止部28が、各組の凹部34a,34bから離れて退避した状態になる。
【0050】
本体12の前面12cには、一対の凹部34a,34bにその上側又は下側で隣接する一対の削落部36a,36bが、4組設けられている。各組の削落部36a,36bは、本体12の前面12cにおいて、スリット24の左右縁端の一部を形成している。各組の削落部36a,36bは、スリット24を挟んで、左右方向に並んでいる。各組の削落部36a,36bのうち、スリット24の左縁端の一部を形成する各削落部36aは、スリット24の左側において上下方向に並び、スリット24の右縁端の一部を形成する各削落部36bは、スリット24の右側において上下方向に並んでいる。
【0051】
このようにして、本体12の前面12cでは、スリット24の左右側において、4組の削落部36a,36bと3組の凹部34a,34bとが上下方向で交互に並んでいる。
【0052】
各組の削落部36a,36bのうち、スリット24の右縁端の一部を形成する各削落部36bは、本体12の前面12cにおいて、付着部材16が閉じられた場合に付着部材16の各覆部32が対向する位置に配設されている。そのため、付着部材16が閉じられた場合、スリット24の右縁端の一部を形成する各削落部36bは、付着部材16の各覆部32で覆われる。
【0053】
従って、ガード部材14及び付着部材16が閉じられると、本体12のスリット24では、付着部材16の4個の覆部32とガード部材14の3個の受止部28とが、上下方向で交互に並んだ状態になる(後述の図14及び図15参照)。つまり、ガード部材14の各受止部28が、付着部材16の各覆部32の間に介在する状態になる。
【0054】
なお、付着部材16が閉じられると、付着部材16の各覆部32は、スリット24の右縁端の一部を形成する各削落部36bから、スリット24の左縁端の一部を形成する各削
落部36aの右側付近まで、本体12のスリット24を左右方向に沿って覆う。つまり、付着部材16が閉じられた場合、各組の削落部36a,36bのうち、スリット24の左縁端の一部を形成する各削落部36aは、付着部材16の各覆部32に覆われない。そのため、スリット24の左縁端の一部を形成する各削落部36aと付着部材16の各覆部32との間から、スリット24が露呈する。
【0055】
次に、図7乃至図9を参照して、潤滑剤塗布装置10の本体12に形成された長穴部22について説明する。本体12の長穴部22には、その上端に相当する本体12の上面12aの開穴20から、スプール80が差し入れられる。スプール80は、そのレバー部88及びボルト90が設けられた一端とは軸方向で反対側にある他端92が、本体12の下面12bよりも上方に位置する長穴部22の底壁22aと突き当たって載せられるまで、長穴部22に差し込まれる。これにより、スプール80は、長穴部22に挿着される。
【0056】
長穴部22、つまり開穴20の内径D1は、スプール80のOリング86の外径D2よりも僅かに小さい。内径D1と外径D2の差は、スプール80の大径部84に装着されたOリング86のパーティングライン86aの厚みに相当する。従って、スプール80が長穴部22に差し入れられる際は、スプール80のOリング86のパーティングライン86aが、長穴部22、つまり開穴20を形成する周壁20aで圧縮される。そのため、スプール80は、長穴部22に挿着されると、長穴部22、つまり開穴20の周壁20aとスプール80の大径部84との間を一定間隔Cに保ち続けながら、上下方向に平行な開穴20の軸Aの回りを回動することが可能となる。
【0057】
なお、図7では、スプール80のOリング86のパーティングライン86aのうち、長穴部22、つまり開穴20の周壁20aで圧縮される部位を2点鎖線で示している。この点は、後述する図19においても、同様である。また、以下の説明では、開穴20の周壁20aは、長穴部22の周壁20aと表記する。
【0058】
このようにして、スプール80が長穴部22に挿着されると、本体12のスリット24では、スプール80の各小径部82、各大径部84、及び各Oリング86が露呈する状態になる。また、スリット24では、その左右方向の中央域において、スプール80の各大径部84及び各Oリング86が、本体12の前面12c、つまりスリット24よりも前方へ僅かに突き出た状態になる。
【0059】
更に、スリット24では、スプール80の各小径部82が各組の凹部34a,34bの間に配置された状態になり、スプール80の各大径部84及び各Oリング86が各組の削落部36a,36bの間に配置された状態になる。つまり、スリット24の左右側において上下方向で交互に並んでいる各組の凹部34a,34bと各組の削落部36a,36bは、長穴部22に挿着された際のスプール80の各小径部82、各大径部84、及び各Oリング86に応じた位置に設けられている。
【0060】
なお、各削落部36a,36bの形状は、長穴部22の周壁20aと本体12の前面12cとの稜角が、丸み面取りされたような縁辺をなしている。また、各Oリング86は、その内側がスプール80の各大径部84に周設された溝に嵌着されている。これにより、各Oリング86は、その外側がスプール80の各大径部84の周面よりも径方向へ突出している。
【0061】
次に、図10を参照にして、本実施形態の潤滑剤塗布方法200について説明する。潤滑剤塗布方法200では、挿通処理S10、ガード処理S12、付着処理S14、削落処理S16、及び抜去処理S18が、それらの記載順で作業者によって実行される。潤滑剤塗布方法200が実行されると、潤滑剤塗布装置10において、スプール80の各Oリン
グ86及び各大径部84の周面に対し、上記のグリスが塗布される。
【0062】
挿通処理S10では、先ず、作業者は、本体12のガード部材14及び付着部材16を開けた状態にする。その後、上述した図1図8、及び図9に示すようにして、作業者は、スプール80を、本体12の長穴部22に挿着する。
【0063】
ガード処理S12では、図11及び図12に示すようにして、作業者は、ガード部材14を閉じる。これにより、上述したように、ガード部材14の各受止部28は、本体12の各組の凹部34a,34bに配置されると共に、本体12のスリット24に左右方向で架け渡された状態になる。また、図13に示すように、本体12のスリット24では、ガード部材14の各受止部28の後方側が、スプール80の各大径部84の間に入り込んで、スプール80の各小径部82の周面に当接する状態になる(後述の図19参照)。もっとも、ガード部材14の各受止部28の後方側は、スプール80の各小径部82の周面に当接しない状態であってもよい。更に、本体12のスリット24では、ガード部材14の各受止部28の前方側が、スプール80の各大径部84の間において、スプール80の各大径部84の周面及び各Oリング86よりも前方へ突き出した状態になる。
【0064】
付着処理S14では、先ず、作業者は、上記のグリスを、付着部材16の各覆部32の後面に十分に塗りつける。その後、図14及び図15に示すようにして、作業者は、付着部材16を閉じる。これにより、付着部材16の各覆部32の後面は、本体12のスリット24の右縁端の一部を形成する削落部36bがスプール80と対向する位置で、スプール80と対向して、本体12のスリット24を覆う状態になる。
【0065】
また、上述したように、本体12のスリット24では、付着部材16の各覆部32とガード部材14の各受止部28とが、上下方向で交互に並んだ状態になる。付着部材16の各覆部32の左側では、本体12のスリット24が、付着部材16の各覆部32と本体12の各削落部36aとの間から露呈する状態になる。更に、図16に示すように、本体12のスリット24では、付着部材16の各覆部32の後面が、スプール80の各Oリング86に圧接し、スプール80の各Oリング86の外側を圧縮する。そのため、スプール80の各大径部84の周面及び各Oリング86のうち、本体12のスリット24で露呈している部位に対して、付着部材16の各覆部32の後面に塗りつけられたグリス18が付着される。
【0066】
その際、グリス18が、付着部材16の覆部32の後面から垂下する場合がある。そのような場合、付着部材16の覆部32の後面から垂下したグリス18は、その後面の下方に位置するガード部材14の受止部28に受け止められて堆積する。
【0067】
削落処理S16では、図17に示すようにして、作業者は、スプール80を、例えば、そのレバー部88を操作することによって、平面視で反時計回りの正方向94へ回転させる。そのような回転は、少なくとも1回転行われる。これにより、本体12のスリット24では、スプール80の各大径部84の周面及び各Oリング86と付着部材16の各覆部32の後面との間に介在するグリス18が、本体12の長穴部22の周壁20aとスプール80の各大径部84の周面とのクリアランスに送り込まれる。そのため、図18及び図19に示すように、本体12の長穴部22の周壁20aとスプール80の各大径部84の周面とのクリアランスは、グリス18で満たされる。
【0068】
その際、図19に示すように、本体12のスリット24では、各削落部36a,36bのうち、スプール80の回転方向である正方向94の下流側に位置する削落部36aによって、グリス18が、スプール80の大径部84の周面及びOリング86から削ぎ落とされる。このようにして、スプール80の大径部84と開穴20の周壁20aとのクリアラ
ンスに入りきれないグリス18が、削落部36aで削ぎ落とされる。削落部36aで削ぎ落とされたグリス18は、その削落部36aと付着部材16の覆部32との間を経由して、その削落部36aの下方に位置するガード部材14の受止部28に受け止められて堆積する。
【0069】
なお、付着処理S14又は削落処理S16において、ガード部材14の受止部28に堆積したグリス18は、その粘性や、スプール80の回転による遠心力等のため、ガード部材14の受止部28とスプール80の小径部82との間に入り込まない。そのため、グリス18は、スプール80の小径部82に塗布されない。
【0070】
抜去処理S18では、先ず、作業者は、付着部材16を開ける。続いて、作業者は、上述したスプール80の回転を少なくとも1回転行う。これにより、本体12のスリット24では、付着部材16の各覆部32がスプール80の各Oリング86から本体12の外部へ遠くに離れた状態で、スプール80の各大径部84及び各Oリング86が正方向94へ回転する。そのため、スプール80の各大径部84の周面及び各Oリング86のうち、本体12のスリット24で露呈している部位に対して、本体12の長穴部22の周壁20aとスプール80の各大径部84の周面とのクリアランスに応じた膜厚のグリス18が付着した状態になる。
【0071】
その後、作業者は、ガード部材14を開ける。これにより、本体12のスリット24では、ガード部材14の各受止部28が、スプール80の各大径部84の間から抜け出すと共に、本体の各凹部34a,34bから退避し、付着部材16の各覆部32が、スプール
80の各大径部84の周面及び各Oリング86から離れた状態になる。その後、作業者は、スプール80を、例えば、そのレバー部88を上方向へ引き上げることによって、本体12の長穴部22から抜き去る。これにより、スプール80の各Oリング86及び各大径部84の周面には、本体12の長穴部22の周壁20aとスプール80の各大径部84の周面とのクリアランスに応じた膜厚のグリス18が塗布され、潤滑剤塗布方法200は終了する。
【0072】
以上詳細に説明したように、本実施形態の潤滑剤塗布装置10及び潤滑剤塗布方法200では、スプール80の各大径部84の周面と、本体12の長穴部22の周壁20aとのクリアランスに応じた膜厚のグリス18が、各Oリング86を含むスプール80の各大径部84の周面に塗布される。これにより、本実施形態の潤滑剤塗布装置10及び潤滑剤塗布方法200は、スプール80に塗布されるグリス18の膜厚を管理することが可能である。
【0073】
ちなみに、本実施形態において、グリス18は、潤滑剤の一例である。スプール80は、軸状部品の一例である。左右方向は、スリットの幅方向の一例である。挿通処理S10は、挿通工程の一例である。付着処理S14は、付着工程の一例である。削落処理S16は、削落工程の一例である。
【0074】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、削落処理S16において、作業者は、スプール80を、正方向94とは反対の逆方向(平面視で時計方向)へ回転させてもよい。このような場合、本体12のスリット24では、各削落部36a,36bのうち、スプール80の回転方向である逆方向の下流側に位置する削落部36bによって、グリス18が、スプール80の大径部84の周面及びOリング86から削ぎ落とされる。
【0075】
また、付着処理S14において、作業者は、その手又刷毛等を使用することによって、
スプール80の各大径部84の周面及び各Oリング86のうち、本体12のスリット24で露呈している部位に対して、グリス18を直接に付着させてもよい。このような場合、付着部材16を省くことが可能である。
【0076】
また、スプール80が本体12の長穴部22に挿着された際に、本体12のスリット24で露呈しているスプール80の各大径部84は、本体12の前面12cよりも本体12の内方、つまり本体12の長穴部22内に位置してもよい。このような場合でも、Oリング86を含むスプール80の各大径部84の周面に対して、本体12の長穴部22の周壁20aとスプール80の各大径部84の周面とのクリアランスに応じた膜厚のグリス18を塗布させることが可能である。
【0077】
また、本体12の長穴部22に差し込まれたスプール80を本体12の開穴20の軸Aの回りで回動可能にするために、例えば、本体12の上面12aにおいて、軸支部材を設けてもよい。その軸支部材は、スプール80の径方向を本体12の開穴20の軸Aの方へ向かって移動することによって、本体12の開穴20から上方向へ突出するスプール80の部位を回動支持し、スプール80の径方向を本体12の開穴20の外方へ移動することによって、その回動支持を解除する。このような場合、スプール80の各Oリング86を長穴部22の周壁20aで圧縮させる必要がない。そのため、スプール80が本体12の長穴部22に差し込まれた際に、本体12のスリット24で露呈しているスプール80の各Oリング86は、本体12の前面12cよりも本体12の内方、つまり本体12の長穴部22内に位置してもよい。
【0078】
また、本体12の長穴部22に差し込まれた軸状部材の周面全域に対して、グリス18を塗布させたい場合には、例えば、ガード部材14を省くと共に、本体12のスリット24の全域に亘って露出している軸状部材の部位に対して、グリス18を付着させればよい。その付着作業は、付着部材16の各覆部32を上下方向で一つに連続させた新たな付着部材16によって行われてもよいし、あるいは、手又は刷毛等を使用した作業者の手作業によって行われてもよい。なお、このような場合の軸状部材は、軸方向の全域に亘って径が一定な棒状の部材であってもよいし、軸方向の位置によっては径が異なる上記のスプール80のような部材であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10:潤滑剤塗布装置、18:グリス、20:開穴、20a:開穴の周壁、22:長穴部、24:スリット、28:受止部、32:覆部、34a,34b:凹部、36a,36b:削落部、80:スプール、200:潤滑剤塗布方法、S10:挿通処理、S14:付着処理、S16:削落処理、A:開穴の軸、C:一定間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19