(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】クレセント錠及び建具
(51)【国際特許分類】
E05B 65/08 20060101AFI20231116BHJP
E05C 3/04 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E05B65/08 P
E05C3/04 J
(21)【出願番号】P 2019228276
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】長尾 公詳
(72)【発明者】
【氏名】杉本 みく
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-68275(JP,U)
【文献】特開昭62-220682(JP,A)
【文献】特開2004-324290(JP,A)
【文献】特開2002-21404(JP,A)
【文献】実開昭55-33371(JP,U)
【文献】特開2005-83024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するハンドル本体と、
前記凹部に充填された充填部材と、
を含
み、
前記充填部材は前記ハンドル本体の表面と面一となるように形成される、クレセント錠。
【請求項2】
前記ハンドル本体は、前記凹部の底面から突出するリブ部を有する、請求項1に記載のクレセント錠。
【請求項3】
前記リブ部は、前記充填部材によって埋め込まれる、請求項2に記載のクレセント錠。
【請求項4】
請求項3に記載のクレセント錠を含む建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クレセント錠及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、台座と、台座により回動可能に支持されたスプーンと、スプーンと一体的に回動するハンドルと、を含むクレセント錠が開示されている。特許文献1に記載のクレセント錠のハンドルには、台座に対向する側に開口部を有する凹部が形成されている。この凹部には、裏蓋が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1の開示技術に関して検討したところ、次の点で改善の余地があるとの認識を得た。特許文献1に記載のクレセント錠のハンドルでは、ハンドル本体と裏蓋との間の隙間から、凹部にゴミやほこりが入り込む場合がある。よって、この問題の改善が望まれる。
【0005】
本開示の目的の1つは、凹部へのゴミやほこりの侵入を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本開示のある態様はクレセント錠である。ある態様のクレセント錠は、凹部を有するハンドル本体と、前記凹部に充填された充填部材と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態のサッシ窓を室内側から見た正面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のクレセント錠の側面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のハンドルの構成を例示する図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のハンドルの構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、その寸法を適宜拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0009】
<第1の実施形態>
図1のサッシ窓1は、建物の開口部に設けられた枠体10と、枠体10に対して摺動可能に配置された内障子20及び外障子30と、クレセント受け40と、クレセント錠100と、を含む。本実施形態のクレセント錠100は、内障子20の召合せ框21に設けられる。クレセント受け40は、外障子30の召合せ框31に設けられる。本実施形態のサッシ窓1は、建具の一例である。
【0010】
クレセント錠100は、クレセント受け40に係合又は係合解除できるように取り付けられる。クレセント受け40は、内障子20及び外障子30が閉じた状態でクレセント錠100のスプーン130が回動することでクレセント錠100と係合する。内障子20及び外障子30が閉じた状態でクレセント錠100をクレセント受け40に係合させることで、内障子20及び外障子30の開放が規制される。また、クレセント受け40に対するクレセント錠100の係合を解除することにより、内障子20及び外障子30が開放可能となる。
【0011】
図2のクレセント錠100は、召合せ框21に固定されたボックス状の台座部110と、台座部110に回動可能に取付けられたハンドル120と、ハンドル120に固定されてハンドル120と共に回動する爪状のスプーン130と、を含む。
【0012】
図3は、本実施形態のハンドル120を台座部110側から見たとき図である。
図3は、ハンドル本体121と、軸部122と、充填部材123と、を有するハンドル120を示す。本実施形態のハンドル本体121は、細長柱状の形状を有する。ハンドル本体121の一端部は、他端部と比べて幅広に形成される。ハンドル本体121は、ポリアミド樹脂、ナイロン等の合成樹脂を素材とする。
【0013】
図3~5に示されるように、ハンドル本体121は、凹部124を有する。本実施形態の凹部124は、ハンドル本体121においてハンドル120を操作する人から見て裏側の面に設けられる。本実施形態の凹部124は、ハンドル本体121において台座部110と対向する側の面に設けられ、この対向する側の面とは反対側の面に向かって凹んでいる。本実施形態の凹部124は、ハンドル本体121において軸部122が設けられる側の面に設けられる。
【0014】
凹部124は、ハンドル本体121において軸部122よりもハンドル本体121の他端側に形成される。本実施形態の凹部124は、ハンドル本体121の長手方向に延びるように、細長柱状に形成される。
【0015】
軸部122は金属部材で、ハンドル120の回転軸となる。軸部122は、ハンドル本体2の内部に一体にインサート成形される。軸部122は、ハンドル本体121から、ハンドル本体121の長さ方向と交差する方向に突出するように構成される。軸部122は、スプーン130の軸穴(不図示)に嵌合して固定されるとともに、台座部50に対して取り付けられる。本実施形態の軸部122は、ハンドル本体121の一端部に形成された幅広部分に設けられる。
【0016】
充填部材123は、ハンドル本体121の凹部124を埋め込むように形成される。充填部材123は、凹部124の底面及び側壁全体を覆うように凹部124に形成される。本実施形態の充填部材123は、例えばポリアミド樹脂、ナイロン等の合成樹脂を素材とする充填材を凹部124に充填することにより形成される。本実施形態の充填部材123の表面123bは、ハンドル本体121の表面と面一となるように形成される。本実施形態の充填部材123の表面123bは、ハンドル本体121の表面に対して平坦に形成される。例えば、充填部材123の底面123aから充填部材123の表面123bまでの寸法は、凹部124の底面124aから凹部124の側壁の頂部124bまでの寸法と等しい。
【0017】
しかしながら、この凹部124にゴミやほこりが入り込むことがあった。特に、本実施形態のようにハンドル本体121が合成樹脂で形成される場合、静電気によりハンドル本体121がゴミやほこりを吸着しやすく、凹部124にこれらが入り込みやすい。
【0018】
この対策として、特許文献1に記載の技術のように、凹部124に裏蓋を装着する構成が想定される。しかしこの構成では、ハンドル本体と裏蓋との間の隙間から凹部にゴミやほこりが入り込む場合がある。裏蓋が外れてしまえば、この問題はさらに大きくなる。
【0019】
本実施形態のハンドル120は、凹部124を充填する充填部材123を含む。これにより、ハンドル本体121と充填部材123との間の隙間の発生が抑制される。その結果、凹部124へのごみやほこりの侵入が抑制される。
【0020】
さらに、本実施形態のハンドル120によると、充填部材123がハンドル本体121と一体となるように形成されるため、充填部材123のハンドル本体121からの離脱が抑制され、従来の裏蓋に伴う問題が解消する。
【0021】
加えて、本実施形態のハンドル120によると、充填部材123がハンドル本体121の表面と面一となるように形成されるため、上記侵入が効果的に抑制されるとともに、意匠の円滑性が向上する。
【0022】
以下、本実施形態の変形例を説明する。
【0023】
ハンドル本体121の素材は特に限られず、例えば、アルミニウム合金等の合金であってもよい。
【0024】
凹部124は、ハンドル本体121において上記裏側の面以外の面に設けられてもよい。凹部124は、ハンドル本体121の1つの面又は複数の面に複数形成されてもよい。例えば、凹部124は、ハンドル本体121において上記裏側の面とは反対側の表面に設けられてよい。
【0025】
<第2の実施形態>第2の実施形態の図面及び説明では、第1の実施形態と同一又は同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1の実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1の実施形態と相違する構成について重点的に説明する。第2の実施形態は、リブ部201が設けられている点で、第1の実施形態と相違する。
【0026】
図6~8に示されるように、ハンドル本体121は、凹部124の底面から突出するリブ部201を有する。本実施形態のリブ部201は、凹部124の側壁の高さ方向に延びるように形成される。本実施形態のリブ部201は、凹部124の底面と垂直に突出するように形成される。本実施形態のリブ部201は、ハンドル本体121の長手方向の軸部122側の凹部124の端部からその反対側の端部を繋ぐように、ハンドル本体121の短手方向の中央部分に一直線状に形成される。リブ部はポリアミド樹脂、ナイロンなどの合成樹脂で形成される。
【0027】
リブ部201が形成された凹部124に上記の合成樹脂を流し込んで充填部材とすることで、リブ部201の存在により、例えばリブ部201の側壁と凹部124の側壁との間の肉厚及びリブ部201の頂部と充填部材123の表面との間の肉厚など、充填部材123の肉厚が小さくなる。その結果、充填部材123におけるひけの発生が抑制される。
【0028】
例えば、ハンドル本体121について、凹部124を形成せずに中実として一体成形した場合や、リブ部201を設けずに凹部124に合成樹脂を流し込んで充填部材とした場合にはハンドル本体121を成形後に冷却する際、肉盗みがなされるためハンドル本体121におけるひけが発生するおそれがある。しかし、リブ部201を設けた凹部124に充填部材123を設けることによりひけの発生が抑制される。特にハンドル本体121と充填部材123の材料が同じ場合は顕著な効果を表す。
【0029】
さらに、
図8に示されるように、本実施形態のリブ部201は、充填部材123によって埋め込まれる。本実施形態のリブ部201の高さは、充填部材123の底面123aから充填部材123の表面123bまでの高さよりも小さい。この構成によると、リブ部201が充填部材123の表面から突き出なくなる。その結果、リブ部201が目立ちにくくなるため、意匠性の悪化が抑制される。
【0030】
以下、本実施形態の変形例を説明する。
【0031】
リブ部201の形状は特に限られず、例えば、ハンドル本体121の短手方向に一直線状に形成されてもよく、ハンドル本体121の長手方向及び短手方向に十字形状に形成されてもよい。また、リブ部201は、ハンドル本体121の長手方向の軸部122側の凹部124の端部からその反対側の端部を繋がずに、凹部124内で終端してもよく、また円形状であってもよい。さらに、リブ部201は、凹部124に複数設けられてもよい。なお、ハンドル本体121、リブ201、充填部材123が同じ素材であると特にひけの発生が抑制される。
【0032】
なお、本開示のハンドル120は、以上説明した引違い窓のクレセント錠のハンドルに限定されず、例えば上げ下げ窓のクレセント錠のハンドルであってもよい。
【0033】
図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0034】
1…サッシ窓、10…枠体、20…内障子、21、31…召合せ框、40…クレセント受け、100…クレセント錠、110…台座部、120…ハンドル、121…ハンドル本体、122…軸部、123…充填部材、124…凹部、130…スプーン、201…リブ部。