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  • 特許-レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図1
  • 特許-レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図2
  • 特許-レーザ加工装置及びレーザ加工方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20231116BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20231116BHJP
   G02F 1/29 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/046
G02F1/29
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019232313
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021098223
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇輝
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012011(JP,A)
【文献】国際公開第2002/092276(WO,A1)
【文献】特表2019-512397(JP,A)
【文献】特開2013-108977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0313617(US,A1)
【文献】特開2002-144060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
G02F 1/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザパルスを出力するレーザ発振器と、
前記レーザパルスを2次元方向に偏向させるレーザ偏向部と、
前記レーザ発振器と前記レーザ偏向部を制御する制御部とを有し、
被加工物に前記レーザパルスを照射して加工するようにしたレーザ加工装置において、
前記レーザ偏向部に入力される前記レーザパルスの焦点を前記制御部による制御により電気的に変えることができる電気光学素子を前記レーザ偏向部の入力側に設け、
前記制御部は、前記電気光学素子に、階段状の電圧を印加することで、前記レーザパルスの焦点を一方向かつ段階的に変化させる、ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記被加工物における同じ加工位置に前記レーザパルスを繰返して照射する場合、前記制御部は前記電気光学素子の焦点を変えるように前記電気光学素子を制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
レーザ発振器から出力されたレーザパルスを2次元方向に偏向させるレーザ偏向部に入力し、
前記レーザ発振器と前記レーザ偏向部を制御して被加工物に前記レーザパルスを照射して加工するようにしたレーザ加工方法において、
前記レーザ偏向部に入力される前記レーザパルスの焦点を電気光学素子により電気的に変化させ、
前記レーザパルスの焦点を変化させる際に、前記電気光学素子に、階段状の電圧を印加することで、前記レーザパルスの焦点を一方向かつ段階的に変化させる、ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工方法において、
前記被加工物における同じ加工位置に前記レーザパルスを繰返して照射する場合、前記電気光学素子の焦点を変えることを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板のような被加工物にレーザを使用して穴あけ加工を行うためのレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板にレーザを使用して穴あけ加工等を行うレーザ加工装置においては、
レーザ発振器から出力されたレーザパルスをガルバノスキャナにより2次元方向へ偏向し、集光レンズ(Fθレンズ)を介してテーブルに載置されたプリント基板に照射するようになっている。
この種のレーザ加工装置においては、同じ加工位置にレーザ照射を連続して繰返しながら加工位置を移動するようにした、いわゆるバースト方式があり、このバースト方式については例えば特許文献1(段落0018)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-203211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のバースト方式においては、レーザ照射系の焦点は変えずにレーザ照射を連続している。このため、同じ加工位置で深さ方向に加工を進めていくと、適正な焦点でなくなるため高品質な加工は期待できない欠点がある。
一方、各加工位置毎にレーザパルスを1個ずつ照射しながら加工位置を移動し、全ての加工位置での加工を終了したら、必要な回数だけ同じ動作を繰り返すサイクル方式がある。
このサイクル方式においては、次のサイクルに移る時にレーザ照射系の焦点を変えることができるが、従来、この焦点移動はプリント基板に対するレーザ照射ユニットの間隔を変えることで行われており、機械動作を伴うので時間がかかり、さらにはサイクル方式は加工テーブルの移動が頻繁に起こり、加工効率が悪くなる欠点がある。
そこで本発明は、レーザ照射系の焦点を高速に変えることができるようにして、高品質で加工効率のよい加工を行うことができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ加工装置は、レーザパルスを出力するレーザ発振器と、前記レーザパルスを2次元方向に偏向させるレーザ偏向部と、前記レーザ発振器と前記レーザ偏向部を制御する制御部とを有し、被加工物に前記レーザパルスを照射して加工するようにしたレーザ加工装置において、前記レーザ偏向部に入力される前記レーザパルスの焦点を前記制御部による制御により電気的に変えることができる電気光学素子を前記レーザ偏向部の入力側に設けたことを特徴とする。
【0006】
また本願において開示される代表的なレーザ加工方法は、レーザ発振器から出力されたレーザパルスを2次元方向に偏向させるレーザ偏向部に入力し、前記レーザ発振器と前記レーザ偏向部を制御して被加工物に前記レーザパルスを照射して加工するようにしたレーザ加工方法において、前記レーザ偏向部に入力される前記レーザパルスの焦点を電気光学素子により電気的に変化させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上の通りであるが、ここで説明していない特徴については、後述する発明を実施するための形態において説明しており、また特許請求の範囲にも示した通りである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ照射系の焦点を高速に変えることができるようにして、高品質で加工効率のよい加工を行うことができるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例となるレーザ加工装置のタイミングチャートである。
図2】本発明の一実施例となるレーザ加工装置の概略構成図である。
図3】本発明の一実施例となるレーザ加工装置によるプリント基板の加工状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2は、本発明の一実施例となるレーザ加工装置のブロック図である。各構成要素や接続線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、レーザ加工装置として必要な全てを示している訳ではない。
【0011】
ここでのレーザ加工装置は、プリント基板に穴あけを行うものであるが、本発明はこれに限らず、被加工物の複数個所に加工を施すレーザ加工装置に適用できる。
図2において、2は加工すべきプリント基板1が載置される加工テーブルである。この加工テーブル2はX方向及び紙面と垂直方向に移動できるようになっている。3はレーザパルスL1を発振するレーザ発振器、4はレーザ発振器3から出射されたレーザパルスL1の焦点を電気的に変えることができる可変焦点レンズの機能をもつ電気光学素子(以下、EODと略す)、5はEOD4から出射されたレーザパルスL2をガルバノミラーを用いて2次元方向に偏向させるガルバノスキャナ、6はガルバノスキャナ5からのレーザパルスを受光し、レーザパルスL3をプリント基板1の穴あけ位置に照射する集光レンズである。
なお、上記EOD4は、例えば特開2015-18095号や「KTN単結晶を用いた高速可変焦点レンズ」 NTT技術ジャーナル P24~27 2009年11月に開示されているもので、電圧制御により焦点を高速に変えることが可能な素子である。
【0012】
10は装置全体の動作を制御するための全体制御部であり、例えばプログラム制御の処理装置を中心にして構成され、その中の各構成要素や接続線は、論理的なものも含むものとする。また各構成要素の一部はこれと別個に設けられていてもよい。また、全体制御部10はここで説明するもの以外の制御機能を有し、図示されていないブロックにも接続されているものとする。
全体制御部10の内部には、レーザ発振器3でのレーザパルスL1の発振と減衰を指令するためのレーザ発振指令信号Sを出力するレーザ発振制御部11、EOD4の焦点を制御するためのEOD駆動信号Eを出力するEOD制御部12、ガルバノスキャナ5の動作を制御するためのガルバノ制御信号Gを出力するガルバノ制御部13が設けられている。
【0013】
図1図2に示したレーザ加工装置において、レーザ発振器3からレーザパルスL1が発振された時のタイミングチャートである。
このレーザ加工装置においては、ガルバノスキャナ5における回転の停止に同期してレーザ発振器3でレーザ発振を行い、プリント基板1にレーザパルスL3を照射するようになっている。
図1において、全体制御部10の制御の下で、ガルバノ動作制御信号Gがオンとなってガルバノスキャナ5が回転し、ガルバノスキャナ5が目標の位置まで回転して位置決め動作が完了するとガルバノ動作制御信号Gがオフになり、レーザ発振制御部11からのレーザ発振指令信号Sが2回オンとなってレーザパルスL1の2回の発振がレーザ発振器3に指令される。
ここでは、レーザ発振器3からレーザパルスL1が2回発振されると、集光レンズ6からはレーザパルスL31とL32がプリント基板1の同じ加工位置に連続して照射される(バースト方式)が、この際、EOD4にはEOD制御部12から途中でEOD駆動信号Eが出力される。
【0014】
図3はこの時のプリント基板1の加工状態を示す断面図である。図3において、プリント基板1は、銅箔層31の上に樹脂層32が積層された構造体となっている。
図3(a)に示すように、先行するレーザパルスL31により樹脂層32が加工されるが、この時のEOD駆動信号Eのレベルはe1となり、EOD4は樹脂層32の主に上層部321を加工するのに適した焦点にされる。
次に図3(b)に示すように、後続するレーザパルスL32により同様に樹脂層32が加工されるが、この時のEOD駆動信号Eのレベルはe2となり、EOD4は主に樹脂層32の下層部322を加工するのに適した焦点にされる。
この後、レーザ発振指令信号Sのオンから所定時間後にガルバノ動作制御信号Gがオンとなり、次の加工位置への照射のためにガルバノスキャナ5が回転し、以後、同様に繰り返す。
【0015】
以上の実施例によれば、樹脂層32を加工する場合に、その途中で高速にレーザパルスL3の焦点を変え、樹脂層32の上層部321と下層部322の深さに合わせた適正な焦点のレーザパルスでそれぞれを加工するようにできるので、高品質な加工を行うことができる。
【0016】
以上、実施の形態に基づき本発明を具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、以上の実施例においては、同じ加工位置にレーザ照射を2回連続して繰返しながら加工位置を移動するようにしたバースト方式の例であるが、各加工位置での連続照射回数はもっと多くなっていてもよく、それぞれのレーザ照射でEOD4の焦点を変えてもよいし、焦点を変えないレーザ照射が途中に含まれていてもよい。
さらに、レーザ発振器3から出力されたレーザパルスL1を直接にEOD4に入力するようにしたが、これらの間に音響光学素子を設け、レーザパルスL1の一部を切出してEOD4に入力するようにしてもよい。
さらに、図3において、銅箔層31と樹脂層32の両方を加工するような場合、銅箔層31と樹脂層32とでEOD4の焦点を変えるようにしてもよい。
さらに、レーザ加工装置としては、被加工物の材料によってはEOD4での焦点は必ずしも変化させる必要はなく、一定にする加工モードも含むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0017】
1:プリント基板、2:加工テーブル、3:レーザ発振器、4:EOD、
5:ガルバノスキャナ、6:集光レンズ、10:全体制御部、
11:レーザ発振制御部、12:EOD制御部、13:ガルバノ制御部、
31:銅箔層、32:樹脂層
図1
図2
図3