(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電子部品の支持構造及び電子時計
(51)【国際特許分類】
G04G 17/06 20060101AFI20231116BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G04G17/06
H05K1/18 J
(21)【出願番号】P 2020036590
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小峰 伸一
(72)【発明者】
【氏名】人見 正彦
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-147211(JP,A)
【文献】特開2014-21117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00 - 99/00
G04B 43/00
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有しない回路基板と、可撓性を有する平板状の可撓性基板と、規制部材と、電子部品と、を備え、
前記可撓性基板は、一端部で前記回路基板に接合されて支持され、
前記電子部品は、前記可撓性基板の、前記回路基板に接合された部分とは異なる部分に接合して配置され、
前記規制部材の少なくとも一部は、前記可撓性基板の、前記回路基板に接合された部分から前記電子部品までの距離よりも、前記電子部品までの距離が短い部分に配置さ
れ、
前記規制部材は、前記可撓性基板が撓んでいない状態では、前記電子部品及び前記可撓性基板と間隔をあけて配置され、前記可撓性基板が撓んだ状態では、前記電子部品が前記規制部材に当たる以前に前記可撓性基板の他端部が前記規制部材に当たるように配置されて、前記電子部品が前記規制部材に当たるのを防ぐ、電子部品の支持構造。
【請求項2】
前記可撓性基板の、前記電子部品が配置される側の面と前記規制部材の、前記可撓
性基板と対向している面との間隔は、前記電子部品と前記規制部材との間隔よりも短く設定されている、請求項
1に記載の電子部品の支持構造。
【請求項3】
前記回路基板は、前記可撓性基板が前記回路基板に接合された部分を固定端として撓む範囲に平面視で少なくとも重なる領域が、切りかかれている請求項
1又は2に記載の電子部品の支持構造。
【請求項4】
前記可撓性基板の、前記規制部材が前記可撓性基板に対向して配置された部分は、前記可撓性基板の中心に対して、前記回路基板に接合された部分とは反対側の領域である請求項
1から3のうちいずれか1項に記載の電子部品の支持構造。
【請求項5】
前記可撓性基板と前記回路基板とを接合する第1 の接合部材は、前記電子部品と前記可撓性基板とを接合する第2 の接合部材よりも、硬化する温度が低いものである請求項1か
ら4のうちいずれか1項に記載の電子部品の支持構造。
【請求項6】
前記電子部品と前記可撓性基板とを接合する第2の接合部材は、前記可撓性基板と前記回路基板とを接合する第1の接合部材よりも、接合後の硬度が軟らかいものである請求項1か
ら5のうちいずれか1項に記載の電子部品の支持構造。
【請求項7】
前記電子部品が水晶振動子を有する水晶発振器であり、前記水晶発振器の長手方向が、前記可撓性基板の、前記回路基板に接合された部分を固定端として撓む長手方向に対して直交した姿勢で配置されている請求項1か
ら6のうちいずれか1項に記載の電子部品の支持構造。
【請求項8】
前記水晶振動子の長手方向が、前記可撓性基板の、前記回路基板に接合された部分を固定端として撓む長手方向に対して直交した姿勢で配置されている請求
項7に記載の電子部品の支持構造。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか1項に記載の電子部品の支持構造を備えた電子時計。
【請求項10】
可撓性を有しない回路基板と、可撓性を有する平板状の可撓性基板と、規制部材と、電子部品と、を備え、
前記可撓性基板は、一端部で前記回路基板に接合されて支持され、
前記電子部品は、前記可撓性基板の、前記回路基板に接合された部分とは異なる部分に接合して配置され、
前記規制部材の少なくとも一部は、前記可撓性基板の、前記回路基板に接合された部分から前記電子部品までの距離よりも、前記電子部品までの距離が短い部分に配置さ
れ、
前記可撓性基板の、前記電子部品が接合された面とは反対の面における、平面視で前記電子部品が接合された領域と重なる領域に、前記可撓性基板よりも線膨張係数の小さい金属やセラミックによるベタパターンが固定されている、電子部品の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の支持構造及び電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
電子時計は、主に水晶振動子の発振に基づいて内部時刻を計時し、計時した時刻を表示手段によって示す。水晶振動子は、外的要因による影響を受け易い。例えば、電子時計の内部に実装された状態で水晶振動子に負荷がかかると、電子時計の動作の精度の低下を招くおそれがある。
【0003】
電子時計に作用する負荷としては、機械的な負荷や熱的な負荷がある。機械的な負荷は、電子時計を落としたり、電子時計を他の物にぶつけたりするなどの衝撃の入力で発生し、熱的な負荷は、電子時計の使用温度による負荷に加えて、水晶振動子が封入された水晶発振器を接合部材で回路基板に固定する際の加熱と、その後の冷却などによって発生する。
【0004】
上述した機械的な負荷や熱的な負荷は、電子時計の水晶振動子に限って生じることではなく、電子時計に用いられている他の電子部品についても水晶振動子と同様に生じ得る。
【0005】
電子部品に作用する機械的な負荷や熱的な負荷を軽減するために、電子部品を、ガラスエポキシ樹脂の材料で形成されたリジッドな回路基板に直接実装するのではなく、回路基板にフレキシブルプリント基板の一部を接合し、フレキシブルプリント基板の、回路基板から浮かされた部分(回路基板に接合されていない部分)に電子部品を実装する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
この技術によれば、回路基板に入力された衝撃や熱が、フレキシブルプリント基板の変形によって吸収されて、回路基板から電子部品に直接伝達されないため、電子部品に作用する機械的な負荷や熱的な負荷を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した先行技術文献に記載の技術は、衝撃を吸収したフレキシブルプリント基板は大きく変形するが、その変形によって、電子部品に機械的な負荷が生じ得る。また、この技術は、フレキシブルプリント基板を折り返した形状に形成されているため、回路基板の厚さ方向の寸法が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、厚さ方向の寸法が大きくなるのを抑制しつつ、回路基板に実装される電子部品に作用し得る機械的な負荷及び熱的な負荷を低減することができる電子部品の支持構造及び電子部品の支持構造を備えた電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、可撓性を有しない回路基板と、可撓性を有する平板状の可撓性基板と、規制部材と、電子部品と、を備え、前記可撓性基板は、一端部で前記回路基板に接合されて支持され、前記電子部品は、前記可撓性基板の、前記回路基板に接合された部分とは異なる部分に接合して配置され、前記規制部材の少なくとも一部は、前記可撓性基板の、前記回路基板に接合された部分から前記電子部品までの距離よりも、前記電子部品までの距離が短い部分に配置されている電子部品の支持構造である。
【0011】
本発明の第2は、本発明に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子部品の支持構造及び電子時計によれば、厚さ方向の寸法が大きくなるのを抑制しつつ、回路基板に実装される電子部品に作用し得る機械的な負荷及び熱的な負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計を裏蓋側から見た平面図である。
【
図2】
図1におけるA-A線に沿った断面図である。
【
図3】実施形態2に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計を裏蓋側から見た平面図である。
【
図4】
図3におけるB-B線に沿った断面図である。
【
図5】実施形態3に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計を裏蓋側から見た平面図である。
【
図6】
図5におけるC-C線に沿った断面図である。
【
図7】実施形態4に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計を裏蓋側から見た平面図である。
【
図8】
図7におけるD-D線に沿った断面図である。
【
図9】規制部材で変位が規制されるFPC30の部分の一例を示す平面図である。
【
図10】FPCの長手方向と水晶発振器の長手方向との関係を示す平面図である。
【
図11】FPCの裏面に、金属やセラミックによるベタパターンが固定されているものを示す、
図2,8相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電子部品の支持構造及びこの電子部品の支持構造を備えた電子時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
<実施形態1>
図1は本発明の実施形態1に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計100を裏蓋側から見た平面図、
図2は
図1におけるA-A線に沿った断面図である。
【0016】
なお、
図1において、(12H)は電子時計100の文字板における12時方向、(3H)は文字板における3時方向、(6H)は文字板における6時方向、(9H)は文字板における9時方向をそれぞれ示す。
【0017】
また、3時と9時を結ぶ方向をX軸方向、12時と6時を結ぶ方向をY軸方向とし、電子時計100の厚さ方向であってX軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とする。さらに、X軸方向とY軸方向を含む平面(XY平面)を、Z軸方向から視た図を平面視とする。以下、他の実施形態2~4についても同様である。
【0018】
本発明の実施形態1の電子時計100は、本実施形態1の電子部品の支持構造を備えている。本実施形態1の電子部品の支持構造は、
図1,2に示すように、回路基板20と、フレキシブルプリント基板(可撓性基板の一例。以下、FPC(Flexible Printed Circuits)という。)30と、規制部材の一例としての地板10及び基板押え50と、電子部品の一例としての水晶発振器40と、を備えている。
【0019】
地板10は、電子時計100のステッピングモータ91や、そのステッピングモータ91が発生した駆動力を時刻表示用の指針等に伝達する歯車輪列92や、動力源である電池93等含むムーブメントを支持する部材である。
【0020】
回路基板20は、地板10と、電子時計100の裏蓋(図示せず。)との間に配置されている。回路基板20は、例えば、ガラスエポキシ樹脂により平板状に形成されていて、可撓性を有しない。回路基板20の6時(6H)位置近くには、後述するFPC30との干渉を避けるための矩形状の切り欠き25が形成されている。この切り欠き25は、具体的には、FPC30が回路基板20に接合された一端部31を固定端として撓む範囲に平面視で少なくとも重なる領域である。
【0021】
ここで、回路基板20が可撓性を有しない、とは、水晶発振器40が実装される後述のFPC30と比較して柔軟性(弾性)を有しておらず、例えば、FPC30よりも縦弾性係数(ヤング率)が大きく、FPC30よりも変形しにくい材料、構造であることを指す。
【0022】
回路基板20には、電子時計100のステッピングモータ等の駆動を制御する制御ICチップやその他の電子部品が実装されている。なお、制御ICチップ等は、回路基板20の例えばおもて面(地板10に近い側の面)20Aに実装されているが、裏面(裏蓋に近い側の面)20Bに実装されていてもよい。
【0023】
FPC30は可撓性を有していて、例えば矩形状の平板に形成されている。FPC30は、長手方向の一端部31(
図1,2において左端部)の裏面(裏蓋に近い側の面)30Bが回路基板20のおもて面20Aに半田60により接合して、固定されている。この一端部31においてFPC30は、回路基板20のZ軸方向に、回路基板20と所定の間隔を以て略平行に支持されている。
【0024】
FPC30は、回路基板20に接合されている一端部31を除いた大部分が、平面視(
図1)において、回路基板20に形成された切り欠き25の範囲に配置されている。FPC30のおもて面30Aには、電子部品の一例として水晶発振器40が、例えば導電性シリコーン接着剤70により接合して固定されている。
【0025】
水晶発振器40は、例えば、セラミックパッケージの内部に、所定方向に長い水晶振動子41を封入している。水晶発振器40は、所定の振動周波数で振動し、この振動に応じた出力信号を制御ICチップ等へ出力する。水晶発振器40は、FPC30の一端部31とは反対側の端部である他端部32に近い位置に配置されている。
【0026】
ここで、地板10は、FPC30の長手方向の、一端部31とは反対側の端部である他端部32のおもて面30Aと対向する部分が、おもて面30Aと所定の間隔t1を以て配置されており、規制部として機能する。この他端部32に対向した地板10の部分におけるFPC30との間隔t1は、おもて面30Aに固定された水晶発振器40と地板10との間隔t2よりも短い寸法に設定されている。
【0027】
FPC30は長手方向の一端部31が回路基板20に固定されているため、FPC30には、
図2に示す鉛直方向の加速度Fが作用する(例えば、電子時計100に外部からの衝撃が加わって、衝撃力が入力される)と、一端部31を固定端とする梁と同様に、長手方向Lにおける中心に対して、一端部31とは反対側の自由端である他端部32が最も大きく撓む。
【0028】
そして、FPC30が撓んだとき、水晶発振器40が地板10に当たる以前に、他端部32が地板10に当たるため、FPC30の撓みが止まり、水晶発振器40が地板10に当たるのを防ぐことができる。
【0029】
なお、FPC30の一端部31から水晶発振器40までの距離よりも、FPC30が撓んだときに最初に地板10に当たる他端部32から水晶発振器40までの距離のほうが短い。つまり、地板10における規制部材として機能する領域は、平面視において、可撓性基板であるFPC30の、回路基板20に接合された部分(一端部31)から電子部品である水晶発振器40までの距離L1よりも、水晶発振器40までの距離L2が短い部分に重なるように、FPC30に対向して配置されている。
【0030】
また、本実施形態1において、FPC30の、地板10の規制部材として機能する領域がFPC30に対向して配置された部分は、FPC30の中心に対して、一端部31とは反対側の領域(他端部32)である。
【0031】
このような構成により、FPC30が撓んだときに、固定された一端部31及びその周辺に応力が集中するため、水晶発振器40の配置を固定された一端部31よりも、他端部32側に遠ざけることによって、発生する応力による水晶発振器40への影響を抑制することができる。
【0032】
基板押え50は、回路基板20の裏面20B側に配置され、切り欠き25の形成されている部分も含めて回路基板20を裏蓋側から覆うことで、回路基板20が裏蓋側に浮き上がるのを押さえる。基板押え50は、回路基板と同様に可撓性を有さず、回路基板20と同等か又はそれ以上の剛性を有することが好ましい。
【0033】
ここで、基板押え50は、FPC30の長手方向の、一端部31とは反対側の端部である他端部32の裏面30Bと対向する部分が、裏面30Bと所定の間隔を以て配置されており規制部材として機能する。基板押え50の少なくとも一部が、規制部材として機能し、その規制部材として機能する領域は、FPC30における回路基板20に接合された部分(一端部31)から電子部品である水晶発振器40までの距離L1よりも距離が短い部分で、FPC30と対向するように構成される。
【0034】
図2においては、基板押え50は平板状であって回路基板20よりも裏蓋側に配置されているが、本発明はこの実施形態に限定されない。例えば、基板押え50は、平面視における切り欠き25及びFPC30と重なる領域であって、一端部31よりも他端部32に近い領域のおもて面50Aに、凸部を有していてもよい。
【0035】
この凸部により、基板押え50とFPC30の裏面30Bとの距離を短くすることができるため、FPC30が撓んだときの変位量を抑制することができる。特に、凸部は平面視において電子部品である水晶発振器40までの距離が距離L1よりも短い範囲内に配置することが好ましく、FPC30の中心位置に対して、一端部31とは反対側の領域(他端部32)で重なるように構成されることが好ましい。
【0036】
以上のように構成された本実施形態1の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、水晶発振器40は、リジッドな回路基板20に直接固定されているのではなく、可撓性を有するFPC30を介して回路基板20に固定されている。
【0037】
したがって、仮に、電子時計100を他の物体にぶつける等して回路基板20に衝撃力(機械的な負荷)が入力された場合も、回路基板20と水晶発振器40との間に介在するFPC30が撓むことで、FPC30が、入力された衝撃エネルギを吸収し、水晶発振器40に衝撃力がそのまま入力されるのを防ぐことができる。
【0038】
また、本実施形態1の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、FPC30がその衝撃力により撓み、その撓みによる変位で他端部32が地板10に当たることにより、他端部32の変位を規制することができ、電子時計100内において水晶発振器40が大きく変位するのを防止することができる。
【0039】
つまり、地板10が、FPC30の変位を規制する。この結果、FPC30の撓みを低減することができ、FPC30が撓むことにより水晶発振器40に生じ得る機械的な負荷を低減することができる。これにより、水晶発振器40の内部の水晶振動子41に生じ得る特性(例えば、発振周波数の精度。以下、同じ。)の変化を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態1の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、衝撃力の入力によりFPC30が、最初に
図2の下方(文字板側の方向)に撓むのではなく、
図2の上方(裏蓋側の方向)に撓んだ場合には、撓んだFPC30が切り欠き25を通って、他端部32の裏面30Bが、基板押え50のおもて面50Aに当たることで、他端部32の変位を規制する。
【0041】
これにより、電子時計100内において水晶発振器40が大きく変位するのを防止することができる。この結果、FPC30の撓みを低減することができ、FPC30が撓むことにより水晶発振器40に生じ得る機械的な負荷を低減することができる。
【0042】
また、水晶発振器40の内部の水晶振動子41に生じ得る特性の変化を抑制することができる。さらに、地板10及び基板押え50を規制部材として用いることにより、新規の部品を追加する必要がなく、電子時計100の全体が大型化したり、厚さが増えたりするのを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態1の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、FPC30が一端部31でのみ回路基板20に固定されているため、他端部32も回路基板20に固定されている場合に比べて、FPC30に熱的な負荷が発生するのを防止又は抑制することができる。
【0044】
すなわち、回路基板20とFPC30との物性の差により、両者間での加熱時の熱膨張の量及び冷却時の熱収縮の量に差が生じるにも拘わらず、仮に、一端部31と他端部32との2か所又は3か所以上の複数個所で、FPC30が回路基板20に固定されていた場合、両者(FPC30、回路基板20)の間に歪が生じて、FPC30に固定されている水晶発振器40にも、FPC30に生じた歪による応力が作用し、負荷(熱的な負荷)が発生する。
【0045】
しかし、本実施形態1の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100は、FPC30が一端部31でのみ回路基板20に固定されているため、FPC30に加熱時の熱膨張や冷却時の熱収縮が発生しても、他端部32が伸縮によって変位するだけであり、他端部32も固定されている場合にFPC30に生じ得る熱的な負荷(歪)が発生しない。したがって、FPC30に固定された水晶発振器40にも熱的な負荷が作用するのを防止又は抑制することができる。これにより、水晶発振器40の内部の水晶振動子41に生じ得る特性の変化を抑制することができる。
【0046】
<実施形態2>
図3は本発明の実施形態2に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計100を裏蓋側から見た平面図、
図4は
図3におけるB-B線に沿った断面図である。
【0047】
本発明の実施形態2の電子時計100は、本実施形態2の電子部品の支持構造を備えている。本実施形態2の電子部品の支持構造及び電子時計100は、実施形態1と同様、
図3,4に示すように、切り欠き25を有する回路基板20と、FPC30と、規制部材の一例としての地板10及び基板押え50と、電子部品の一例としての水晶発振器40と、を備えている。
【0048】
切り欠き25は、実施形態1と同様に、FPC30が回路基板20に接合された一端部31を固定端として撓む範囲に平面視で少なくとも重なる領域に形成されている。
【0049】
実施形態2の電子部品の支持構造及び電子時計100は、実施形態1と異なり、FPC30の裏面30Bに、水晶発振器40が接合して固定されている。このような構成により、実施形態1と比較して、電子時計100のZ軸方向における、基板20、FPC30及び水晶発振器40の実装による厚さを薄くすることができる。なお、水晶発振器40は、実施形態1と同様に、一端部31よりも他端部32に近い位置に配置されている。
【0050】
基板押え50は、FPC30の長手方向の、一端部31とは反対側の端部である他端部32の裏面30Bと対向する部分が、裏面30Bと所定の間隔を以て配置されている。本実施形態においては、基板押え50には、FPC30が
図4の上方に撓んだ状態で、水晶発振器40を通すための切り欠き55が形成されている。
【0051】
そして、他端部32に対向した基板押え50の部分におけるFPC30との間隔t3は、裏面30Bに固定された水晶発振器40と基板押え50の切り欠き55を介して対向する部材(図示せず;対向する部材の面を
図4において破線で示す)との間隔t4よりも短い寸法に設定されている。
【0052】
地板10は、FPC30の長手方向の、一端部31とは反対側の端部である他端部32のおもて面30Aと対向する部分が、おもて面30Aと所定の間隔を以て配置されている。
【0053】
図4に示すように、規制部材として機能する基板押え50及び地板10のそれぞれの少なくとも一部は、回路基板20に固定されたFPC30の一端部31から水晶発振器40までの距離L1よりも、FPC30が撓んだときに基板押え50又は地板10に当たる領域(本実施形態2においては他端部32)から水晶発振器40までの距離L2の方が短くなるように構成されている。
【0054】
以上のように構成された実施形態2の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、仮に、電子時計100を他の物体にぶつける等して回路基板20に衝撃力(機械的な負荷)が入力された場合も、回路基板20と水晶発振器40との間に介在するFPC30が撓むことで、FPC30が、入力された衝撃エネルギを吸収し、水晶発振器40に衝撃力がそのまま入力されるのを防ぐことができる。
【0055】
また、本実施形態2の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、FPC30がその衝撃力により撓み、その撓みによる変位で他端部32が地板10に当たることにより、他端部32の変位を規制することができ、FPC30が撓むことにより水晶発振器40に生じ得る機械的な負荷を低減することができる。
【0056】
また、本実施形態2の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、衝撃力の入力によりFPC30が、最初に
図4の上方に撓んだ場合には、撓んだFPC30が切り欠き25を通り、他端部32の裏面30Bが、基板押え50のおもて面50Aに当たることで、他端部32の変位を規制する。このとき、水晶発振器40が基板押え50の切り欠き55を通り、水晶発振器40が基板押え50に干渉するのを防いでいる。
【0057】
これにより、電子時計100内において水晶発振器40が大きく変位するのを防止することができる。この結果、FPC30の撓みを低減することができ、FPC30が撓むことにより水晶発振器40に生じ得る機械的な負荷を低減することができる。
【0058】
また、本実施形態2の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、FPC30が一端部31でのみ回路基板20に固定されているため、他端部32も回路基板20に固定されている場合に比べて、FPC30に熱的な負荷が発生するのを防止又は抑制することができる。
【0059】
なお、本実施形態2において、基板押え50は、水晶発振器40を挿通可能な切り欠き55を有しているが、本発明はこの実施形態に限定されず、FPC30が変位した際に、FPC30における規制部材と対向する領域が水晶発振器40よりも先行して当たって、FPC30がそれ以上変位しないように規制される構成であればよい。
【0060】
例えば、間隔t3よりも基板押え50の厚さが十分に大きい場合、基板押え50に形成するのは、Z軸方向に貫通した切り欠き55ではなく、貫通していない凹部としてもよい。このように、凹部が形成された基板押え50は、切り欠き55が形成された基板押え50に比べて剛性を高くすることができる。
【0061】
また、基板押え50のおもて面50Aに凸部を設けてもよい。これにより、凸部とFPC30との間隔t3をより短くすることができ、FPC30の変位量を一層抑制することができるとともに、凹部の深さを浅くすることができるため、基板押え50の剛性をさらに向上させることができる。
【0062】
<実施形態3>
図5は本発明の実施形態3に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計100を裏蓋側から見た平面図、
図6は
図5におけるC-C線に沿った断面図である。
【0063】
本発明の実施形態3の電子時計100は、本実施形態3の電子部品の支持構造を備えている。本実施形態3の電子部品の支持構造及び電子時計100は、実施形態1,2と同様、
図5,6に示すように、切り欠き25を有する回路基板20と、FPC30と、規制部材の一例としての地板10及び基板押え50と、電子部品の一例としての水晶発振器40と、を備えている。
【0064】
切り欠き25は、実施形態1と同様に、FPC30が回路基板20に接合された一端部31を固定端として撓む範囲に、平面視で少なくとも重なる領域に形成されている。
【0065】
実施形態3の電子部品の支持構造及び電子時計100は、実施形態1,2と異なり、FPC30のおもて面30Aが回路基板20の裏面20Bに接合して固定されている。水晶発振器40は実施形態1と同様、FPC30のおもて面30Aに接合して固定されている。
【0066】
この構成により、実施形態1や後述する実施形態4と比較して、電子時計100のZ軸方向における、基板20、FPC30及び水晶発振器40の実装による厚さを薄くすることができる。また、実施形態1,2と同様に、水晶発振器40は、一端部31よりも他端部32に近い位置に配置されている。
【0067】
地板10は、FPC30の長手方向の、一端部31とは反対側の端部である他端部32のおもて面30Aと対向する部分が、おもて面30Aと所定の間隔t5を以て配置されている。この間隔t5は、おもて面30Aに固定された水晶発振器40と地板10とのZ軸方向における間隔t6よりも短い寸法に設定されている。
【0068】
基板押え50は、FPC30の長手方向の、一端部31とは反対側の端部である他端部32の裏面30Bと対向する部分が、裏面30Bと所定の間隔を以て配置されている。
【0069】
図6に示すように、規制部材として機能する地板10及び基板押え50のそれぞれの少なくとも一部は、回路基板20に固定されたFPC30の一端部31から水晶発振器40までの距離L1よりも、FPC30が撓んだときに基板押え50又は地板10に当たる領域(実施形態3において他端部32)から水晶発振器40までの距離L2の方が、短くなるように構成されている。
【0070】
以上のように構成された実施形態3の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、仮に、電子時計100を他の物体にぶつける等して回路基板20に衝撃力(機械的な負荷)が入力された場合も、回路基板20と水晶発振器40との間に介在するFPC30が撓むことで、FPC30が、入力された衝撃エネルギを吸収し、水晶発振器40に衝撃力がそのまま入力されるのを防ぐことができる。
【0071】
また、本実施形態3の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、FPC30がその衝撃力により撓み、その撓みによる変位で他端部32が地板10に当たることにより、他端部32の変位を規制することができ、FPC30が撓むことにより水晶発振器40に生じ得る機械的な負荷を低減することができる。
【0072】
また、実施形態3の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、衝撃力の入力によりFPC30が、最初に
図6の上方に撓んだ場合には、撓んだFPC30が基板押え50のおもて面50Aに当たることで、他端部32の変位を規制する。
【0073】
これにより、電子時計100内において水晶発振器40が大きく変位するのを防止することができる。この結果、FPC30の撓みを低減することができ、FPC30が撓むことにより水晶発振器40に生じ得る機械的な負荷を低減することができる。
【0074】
また、本実施形態3の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、FPC30が一端部31でのみ回路基板20に固定されているため、他端部32も回路基板20に固定されている場合に比べて、FPC30に熱的な負荷が発生するのを防止又は抑制することができる。
【0075】
<実施形態4>
図7は本発明の実施形態4に係る電子部品の支持構造を備えた電子時計100を裏蓋側から見た平面図、
図8は
図7におけるD-D線に沿った断面図である。
【0076】
本発明の実施形態4の電子時計100は、本実施形態4の電子部品の支持構造を備えている。本実施形態4の電子部品の支持構造及び電子時計100は、実施形態1~3と同様、
図7,8に示すように、切り欠き25を有する回路基板20と、FPC30と、規制部材の一例としての地板10及び基板押え50と、電子部品の一例としての水晶発振器40と、を備えている。
【0077】
切り欠き25は、実施形態1と同様に、FPC30が回路基板20に接合された一端部31を固定端として撓む範囲に、平面視で少なくとも重なる領域に形成されている。
【0078】
実施形態4の電子部品の支持構造及び電子時計100は、実施形態2と同様に、FPC30の裏面30Bに、水晶発振器40が接合して固定され、基板押え50には、FPC30が
図8の上方に撓んだ状態で、水晶発振器40を通すための切り欠き55が形成されている。また、水晶発振器40は、実施形態1~3と同様には、一端部31よりも他端部32に近い位置に配置されている。
【0079】
また、実施形態4の電子部品の支持構造及び電子時計100は、実施形態3と同様に、FPC30のおもて面30Aが回路基板20の裏面20Bに接合して固定されている。
【0080】
基板押え50の少なくとも一部は、FPC30の長手方向の、一端部31とは反対側の端部である他端部32の裏面30Bと対向する部分が、裏面30Bと所定の間隔t7を以て配置されている。この他端部32に対向した基板押え50の部分におけるFPC30との間隔t7は、裏面30Bに固定された水晶発振器40と回路基板50の切り欠き55を介して対向する部材(図示せず;対向する部材の面を
図8において破線で示す)との間隔t8よりも短い寸法に設定されている。
【0081】
地板10は、FPC30の長手方向の、一端部31とは反対側の端部である他端部32のおもて面30Aと対向する部分が、おもて面30Aと所定の間隔を以て配置されている。
【0082】
なお、
図8において、地板10のFPC30と対向する面は平坦な面であるが、本発明は、この実施形態に限定されない。例えば、地板10は、平面視における切り欠き25及びFPC30と重なる領域に、一端部31よりも他端部32に近い領域の面に向かって突出した凸部を有していてもよい。
【0083】
この凸部により、地板10とFPC30のおもて面30Aとの距離を短くすることができるため、FPC30が撓んだときの変位量を抑制することができる。特に、凸部は平面視において電子部品である水晶発振器40までの距離が距離L1よりも短い範囲内に配置することが好ましく、FPC30の中心位置に対して、一端部31とは反対側の領域(他端部32)で重なるように構成されることが好ましい。
【0084】
図8に示すように、規制部材として機能する地板10及び基板押え50のそれぞれの少なくとも一部は、回路基板20に固定されたFPC30の一端部31から水晶発振器40までの距離L1よりも、FPC30が撓んだときに基板押え50又は地板10に当たる領域(本実施形態4において他端部32)から水晶発振器40までの距離L2の方が短くなるように構成されている。
【0085】
以上のように構成された実施形態4の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、仮に、電子時計100を他の物体にぶつける等して回路基板20に衝撃力(機械的な負荷)が入力された場合も、回路基板20と水晶発振器40との間に介在するFPC30が撓むことで、FPC30が、入力された衝撃エネルギを吸収し、水晶発振器40に衝撃力がそのまま入力されるのを防ぐことができる。
【0086】
また、本実施形態4の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、FPC30がその衝撃力により撓み、撓んだFPC30が切り欠き25を通り、その撓みによる変位で他端部32が地板10に当たることにより、他端部32の変位を規制することができ、FPC30が撓むことにより水晶発振器40に生じ得る機械的な負荷を低減することができる。
【0087】
また、本実施形態4の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100によれば、衝撃力の入力によりFPC30が、最初に
図8の上方に撓んだ場合には、撓んだFPC30の他端部32の裏面30Bが、基板押え50のおもて面50Aに当たることで、他端部32の変位を規制する。このとき、水晶発振器40が基板押え50の切り欠き55を通り、水晶発振器40が基板押え50に干渉するのを防いでいる。
【0088】
これにより、電子時計100内において水晶発振器40が大きく変位するのを防止することができる。この結果、FPC30の撓みを低減することができ、FPC30が撓むことにより水晶発振器40に生じ得る機械的な負荷を低減することができる。
【0089】
また、本実施形態4の水晶発振器40の支持構造及び電子時計100よれば、FPC30が一端部31でのみ回路基板20に固定されているため、他端部32も回路基板20に固定されている場合に比べて、FPC30に熱的な負荷が発生するのを防止又は抑制することができる。
【0090】
<その他の実施形態>
上述した各実施形態1~4の電子部品の支持構造及び電子時計100は、FPC30の長手方向Lの一端部31が回路基板20に接合され、長手方向Lの他端部32が地板10や基板押え50等の規制部材により変位を規制されている。
【0091】
しかし、本発明に係る電子時計の支持構造及び電子時計は、このように規制部材で変位を規制される可撓性基板の部分が、可撓性部材の長手方向の一端部とは反対側の他端部であるものに限定されない。
【0092】
図9は規制部材で変位が規制されるFPC30の部分の一例を示す平面図である。本発明に係る電子時計の支持構造及び電子時計は、規制部材で変位を規制される可撓性基板の部分が、可撓性基板の、回路基板に接合された部分から電子部品までの距離よりも、電子部品までの距離が短い部分であればよい。
【0093】
したがって、本実施形態の電子時計の支持構造及び電子時計100においては、規制部材で変位が規制されるFPC30の部分は、例えば
図9に示すように、長手方向Lの他端部32だけでなく、FPC30の、水晶発振器40の近傍(水晶発振器40からの距離が一端部31(半田60で回路基板に固定されている部分)よりも近い範囲)の、幅方向Wの両側端部33,34などであってもよい。
【0094】
図10はFPC30の長手方向Lと水晶発振器40の長手方向との関係を示す平面図である。上述した各実施形態の電子時計の支持構造及び電子時計100は、電子部品として水晶発振器40を適用したものであるが、水晶発振器40の長手方向を、
図10に示すように、FPC30の長手方向Lに直交する幅方向Wに沿った姿勢で配置した構造とするのが好ましい。
【0095】
FPC30は長手方向Lよりも幅方向Wが撓み難い。したがって、水晶発振器40の長手方向が、FPC30の幅方向Wに沿った姿勢で配置されている構造によれば、水晶発振器40に、FPC30の長手方向Lに沿った撓みによる機械的な負荷が作用し難くなり、水晶発振器40の特性に与える影響をさらに低減することができる。
【0096】
また、
図10に示すように、水晶発振器40の内部に配置される水晶振動子41の長手方向についても、FPC30の長手方向Lに直交する幅方向Wに沿った姿勢で配置されていることが好ましい。つまり、水晶発振器40の長手方向に、水晶振動子41の長手方向が沿うように、水晶振動子41が配置された構成であることが好ましい。
【0097】
このような構成によって、FPC30の長手方向Lに沿った撓みによる機械的な負荷が水晶振動子41に作用し難くなり、水晶振動子41の特性に与える影響をさらに低減することができる。
【0098】
上述した各実施形態の電子時計の支持構造及び電子時計100は、地板10や基板押え50が、FPC30と所定の間隔を以て対向して配置されることで。FPC30の変位を所定の寸法に規制する規制部材として機能する。
【0099】
しかし、本発明の電子時計の支持構造及び電子時計における規制部材は、地板10や基板押え50に限定されるものではなく、ステップモータ91等の電子部品に対する外部磁界の影響を抑制するために用いられる耐磁板や、歯車輪列92等の位置を規定するために用いられる輪列押さえ部材や、電池93の位置を保持するために用いられる電池押さえ部材等を、規制部材として適用することもできる。
【0100】
また、電子時計100が、ソーラーセルを有する光発電時計である場合は、ソーラーセルの支持枠等を、規制部材として適用することができる。
【0101】
なお、本発明の電子時計の支持構造及び電子時計における規制部材は、可撓性基板が接合している回路基板とは別の部材であり、規制部材に回路基板を含まない。
【0102】
上述した各実施形態の電子時計の支持構造及び電子時計100は、FPC30を回路基板20に接合した接合部材として半田60を適用し、水晶発振器40をFPC30に接合した接合部材として導電性シリコーン接着剤70を適用している。
【0103】
ここで、導電性シリコーン接着剤70は半田60に比べて、接合後の硬度が軟らかいため、FPC30を回路基板20に半田60で強固に固定した状態であっても、FPC30に作用する機械的な負荷を、軟らかい導電性シリコーン接着剤70の変形で吸収することができ、水晶発振器40に機械的な負荷が作用するのを一層低減することができる。
【0104】
なお、本発明の電子時計の支持構造及び電子時計は、可撓性基板と回路基板との接合を半田による接合に限定するものではなく種々の接合構造で接合することができ、また、電子部品と可撓性基板との接合も、導電性シリコーン接着剤による接合に限定するものではなく種々の接合構造で接合することができる。
【0105】
本発明における可撓性基板と回路基板との接合及び電子部品と可撓性基板との接合を、いずれも熱硬化性の接合部材を用いた接合としたものでは、可撓性基板と回路基板とを接合する第1の接合部材が硬化する温度が、電子部品と可撓性基板とを接合する第2の接合部材が硬化する温度よりも低いものを適用することが好ましい。
【0106】
本発明に係る電子部品の支持構造を製造する工程は、一例として、可撓性基板を回路基板に接合するのに先立って、電子部品を可撓性基板に接合することがある。この工程の場合、電子部品が第2の接合部材で可撓性基板に接合される際に、加熱されて第2の接合部材が硬化して接合し、冷却される。この工程により、電子部品は可撓性基板に接合して固定される。
【0107】
その後、電子部品の固定された可撓性基板が、第1の接合部材で回路基板に接合される際に、加熱されて第1の接合部材が硬化して接合するが、第1の接合部材が硬化する温度が第2の接合部材の硬化する温度よりも高いと、第1の接合部材を硬化させるときの温度によって、第2の接合部材が再度、硬化してしまう。この結果、第2の接合部材の硬化が進展し、電子部品が可撓性基板に接合されたときの第2の接合部材の軟らかさが失われることがある。
【0108】
しかし、第1の接合部材が硬化する温度が、第2の接合部材が硬化する温度よりも低い場合には、電子部品の固定された可撓性基板が第1の接合部材で回路基板に接合される際の加熱温度を、第2の接合部材の硬化する温度よりも低くすることができるため、第2の接合部材が再度、硬化するのを防ぎ、第2の接合部材の軟らかさが保つことができる。
【0109】
なお、本発明に係る電子部品の支持構造及び電子時計における、可撓性基板と回路基板とは、接着剤や半田等で接合するものの他、例えばコネクタ等の機械的な部材を用いて接合してもよい。機械的な部材を用いた接合は、可撓性基板と回路基板との接合の際に加熱及び冷却という熱的な負荷を与えることがないため、好ましい。この機械的な部材には、可撓性基板と回路基板とを電気的に導通させる配線が施されていることが好ましい。
【0110】
また、電子部品と可撓性基板との接合についても、機械的な部材を用いることもできるが、機械的な負荷を吸収する効果を得られる観点から、接着剤等を用いた接合が好ましい。
【0111】
図11はFPC30の裏面30Bに、金属やセラミックによるベタパターン80が固定されているものを示す、
図2,8相当の断面図である。上述した各実施形態の電子時計の支持構造及び電子時計100は、
図11に示すように、FPC30の一方の面(例えば、回路基板20に接合する半田60に接する裏面30B)に、金属やセラミックによるベタパターン(切り欠きや孔の無い、全面が均一に形成された面のパターン)80が固定されていてもよい。
【0112】
このように、一面にベタパターン80が形成されたFPC30は、FPC30が加熱による膨張や冷却による収縮をしようとしても、FPC30よりも線膨張係数の小さい金属やセラミックのベタパターン80が、FPC30の伸縮を妨げるため、水晶発振器40への熱的な負荷を低減することができる。
【0113】
上述した各実施形態の電子部品の支持構造及び電子時計100は、FPC30に固定された電子部品として、水晶発振器40を適用したものであるが、本発明に係る電子部品の支持構造及び電子時計は、可撓性基板に支持する電子部品が水晶発振器であるものに限定されない。したがって、本発明に係る電子部品の支持構造及び電子時計は、可撓性基板に支持する電子部品としては、水晶発振器以外の制御ICチップやその他の電子部品を適用することができる。
【0114】
また、各実施形態の電子部品の支持構造及び電子時計100は、電子部品を固定した可撓性基板としてFPC30を適用したが、FPC30の材質は特定の物質に限定されない。また、FPC30の形状も、上述した実施形態のものに限定されない。したがって、本発明に係る電子部品の支持構造及び電子時計における可撓性基板は、可撓性という物理的な特性を有する限り、矩形状以外の他の形状、例えば正方形、その他の多角形、円形、楕円形、その他の種々の形状であってもよい。
【0115】
また、各実施形態の電子部品の支持構造及び電子時計100は、FPC30に固定済の水晶発振器40の動作の特性を検査するための検査機器を電気的に導通させる電気接点が、FPC30に設けられていることが好ましい。
【0116】
FPC30に固定された状態で、水晶発振器40の特性を検査機器で検査することができるため、FPC30に固定された状態で水晶発振器40の特性の良いものを予め選別することができ、水晶発振器40が固定されたFPC30を回路基板20に固定した後でしか水晶発振器40の特性を検査することができないものに比べて、電子時計100の歩留まりを向上させることができる。
【0117】
各実施形態の電子時計100は、主に腕に装着されて形態される腕時計を想定したものであるが、本発明に係る電子時計は腕時計に限定されるものではなく、懐中時計等の携帯又は装着される時計であってもよいし、置時計や掛け時計であってもよい。
【符号の説明】
【0118】
10 地板(規制部材の一例)
20 回路基板
30 FPC(可撓性基板)
31 一端部
32 他端部
40 水晶発振器(電子部品の一例)
50 基板押え(規制部材の一例)
60 半田(接合部材の一例)
70 導電性シリコーン接着剤(接合部材の一例)
100 電子時計
L 長手方向
W 幅方向