(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】施工機械に計測器を設置するための防振架台、当該防振架台を備えた施工機械、および、計測器の防振方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20231116BHJP
G01D 11/30 20060101ALI20231116BHJP
E21D 9/11 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G01C15/00 105R
G01D11/30 B
E21D9/11 E
(21)【出願番号】P 2020038854
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 誠
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-031529(JP,A)
【文献】特開2004-138422(JP,A)
【文献】特開平09-033255(JP,A)
【文献】特開平03-282305(JP,A)
【文献】特開2011-209093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01D 11/00-13/28
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工機械に計測器を設置するための防振架台であって、
前記施工機械に固定された架台本体部と、
前記架台本体部に載置されると共に前記計測器を保持する計測器保持部と、
前記架台本体部と接触しないように前記計測器保持部から下方に垂設され、鉛直上下方向に沿って伸縮自在な複数の支持脚部と、
を備え、
前記計測器を使用する際に前記複数の支持脚部を伸長し、前記複数の支持脚部を接地させると共に前記計測器保持部を前記架台本体部から上方に持ち上げた状態で前記計測器保持部を前記複数の支持脚部に保持させ
、
前記計測器保持部は、前記複数の支持脚部とは別に、当該計測器保持部から下方に垂設されたロッド部材を有し、
前記架台本体部は、前記ロッド部材の側周面を上下方向に摺動させるガイド面を有すると共に前記ロッド部材の水平方向の移動を規制するガイド部を備える、
防振架台。
【請求項2】
前記計測器保持部は、前記架台本体部に対する前記計測器保持部の固定と、前記計測器保持部の固定状態の解除を切り替え可能な固定機構を有する、
請求項1に記載の防振架台。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の防振架台を備えた施工機械。
【請求項4】
施工機械に防振架台を介して設置された計測器の防振方法であって、
前記防振架台は、
前記施工機械に固定された架台本体部と、
前記架台本体部に載置されると共に前記計測器を保持する計測器保持部と、
前記架台本体部と接触しないように前記計測器保持部から下方に垂設され、鉛直上下方向に沿って伸縮自在な複数の支持脚部と、を備え、
前記計測器保持部は、前記複数の支持脚部とは別に、当該計測器保持部から下方に垂設されたロッド部材を有し、
前記架台本体部は、前記ロッド部材の側周面を上下方向に摺動させるガイド面を有す
ると共に前記ロッド部材の水平方向の移動を規制するガイド部を備え、
前記防振方法は、
前記施工機械を所定の施工位置に移動した後に前記複数の支持脚部を伸長し、前記複数の支持脚部を接地させると共に前記計測器保持部を前記架台本体部から上方に持ち上げた状態で前記計測器保持部を前記複数の支持脚部に保持させ
、
前記複数の支持脚部を伸長させる際には、前記ガイド部を用いて前記架台本体部に対する前記計測器保持部の水平方向の相対移動を規制する、
計測器の防振方法。
【請求項5】
前記計測器保持部は、前記架台本体部に対する前記計測器保持部の固定と、前記計測器保持部の固定状態の解除を切り替え可能な固定機構を有し、
前記施工機械を、前記固定機構によって前記計測器保持部を前記架台本体部に固定した状態で、前記施工位置とは異なる所定の準備位置から当該施工位置に移動させ、前記施工機械を前記施工位置に移動させた後に、前記固定機構による前記計測器保持部の固定状態を解除した後、前記複数の支持脚部を伸長させる、
請求項
4に記載の計測器の防振方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工機械に計測器を設置するための防振架台、当該防振架台を備えた施工機械、および、計測器の防振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する工法として、NATM工法(New Austrian Tunneling Method)が知
られている。NATM工法は、地山が有する支保能力、強度を有効に利用してトンネルの安定を保つという考え方のもとに、吹付けコンクリート、ロックボルト、H型鋼等からなるアーチ状の鋼製支保工を適宜に用いて、地山と一体化したトンネル構造物を建設する工法である。
【0003】
トンネルの施工管理においては、計測器によって得られた計測結果に基づいて種々の管理を行っている。例えば、切羽掘削により発生したズリを搬出した後、その後の覆工に支障を生じる出っ張り(アタリ)箇所を把握する目的で、三次元スキャナやトータルステーション等の計測器を用いて切羽掘削後のトンネル掘削素掘面の形状を計測する場合がある(例えば、特許文献1等を参照)。
【0004】
また、吹付けコンクリート工の施工管理において吹付けコンクリートの厚み(吹付け厚)を管理する目的で、三次元スキャナやトータルステーション等の計測器によってトンネル内壁面の形状を計測することも行われている(例えば、特許文献2等を参照)。
【0005】
ここで、トンネル切羽面やトンネル周壁面を計測するための計測器を三脚上に設置する場合、人手により設置・撤去を行う必要があり、作業に多くの労力と時間を要する問題があった。一方、切羽後方の坑壁面に架設した架台上に計測器を設置する場合、施工機械等が計測の邪魔になってしまう場合がある。
【0006】
これに対して、近年では、掘削機やエレクター搭載型吹付け機等の施工機械に計測器を設置する技術も提案されている(例えば、特許文献1、2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-158637号公報
【文献】特開2019-167678号公報
【文献】特開2016-200521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、施工機械に計測器を直接搭載する場合、施工機械の振動が計測器に伝わり、計測が困難になったり計測精度が低下するという課題があった。これに関連して、特許文献1には、施工機械に計測器を設置する架台を免振架台とする技術が開示されている。このような免振架台においては、施工機械の振動の伝達を低減することはできるものの、免振架台で除去しきれなかった施工振動が計測器に伝達されてしまう虞がある。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、施工機械に計測器を搭載するための防振架台であって、計測器に伝わる施工機械振動を従来に比べて抑制可能な防振架台に関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、施工機械に計測器を設置するための防振架台であって、前記施工機械に固定された架台本体部と、前記架台本体部に載置されると共に前記計測器を保持する計測器保持部と、前記架台本体部と接触しないように前記計測器保持部から下方に垂設され、鉛直上下方向に沿って伸縮自在な複数の支持脚部と、を備え、前記計測器を使用する際に前記複数の支持脚部を伸長し、前記複数の支持脚部を接地させると共に前記計測器保持部を前記架台本体部から上方に持ち上げた状態で前記計測器保持部を前記複数の支持脚部に保持させる。
【0011】
また、本発明に係る防振架台において、前記計測器保持部は、前記架台本体部に対する前記計測器保持部の固定と、前記計測器保持部の固定状態の解除を切り替え可能な固定機構を有していてもよい。
【0012】
また、本発明に係る防振架台は、前記架台本体部に対する前記計測器保持部の上下方向の相対移動を許容しつつ、水平方向の相対移動を規制するガイド部を、更に備えていてもよい。
【0013】
また、本発明は、上述までの何れかの防振架台を備えた施工機械として特定することができる。また、本発明は、上述までの何れかの防振架台と、当該防振架台における前記計測器保持部に保持された計測器と、を備えた計測ユニットとして特定することができる。
【0014】
また、本発明は、計測器の防振方法として特定することもできる。すなわち、本発明は、施工機械に防振架台を介して設置された計測器の防振方法であって、前記防振架台は、前記施工機械に固定された架台本体部と、前記架台本体部に載置されると共に前記計測器を保持する計測器保持部と、前記架台本体部と接触しないように前記計測器保持部から下方に垂設され、鉛直上下方向に沿って伸縮自在な複数の支持脚部と、を備え、前記防振方法は、前記施工機械を所定の施工位置に移動した後に前記複数の支持脚部を伸長し、前記複数の支持脚部を接地させると共に前記計測器保持部を前記架台本体部から上方に持ち上げた状態で前記計測器保持部を前記複数の支持脚部に保持させる。
【0015】
また、本発明に係る防振方法において、前記計測器保持部は、前記架台本体部に対する前記計測器保持部の固定と、前記計測器保持部の固定状態の解除を切り替え可能な固定機構を有し、前記施工機械を、前記固定機構によって前記計測器保持部を前記架台本体部に固定した状態で、前記施工位置とは異なる所定の準備位置から当該施工位置に移動させ、前記施工機械を前記施工位置に移動させた後に、前記固定機構による前記計測器保持部の固定状態を解除した後、前記複数の支持脚部を伸長させてもよい。
【0016】
また、前記防振架台は、前記架台本体部に対する前記計測器保持部の上下方向の相対移動を許容しつつ、水平方向の相対移動を規制するガイド部を、更に備え、前記複数の支持脚部を伸長させる際には、前記ガイド部を用いて前記架台本体部に対する前記計測器保持部の水平方向の相対移動を規制してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、施工機械に計測器を搭載するための防振架台であって、計測器に伝わる施工機械振動を従来に比べて抑制可能な防振架台に関する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るエレクタ搭載型吹付け機を用いた施工状況を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るエレクタ搭載型吹付け機によって施工されるトンネルの縦断面を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るエレクタ搭載型吹付け機の側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係るエレクタ搭載型吹付け機の上面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る施工管理システムの概略構成図である。
【
図6】
図6は、三次元スキャナが搭載された防振架台の正面図である。
【
図7】
図7は、三次元スキャナが搭載された防振架台の側面図である。
【
図8】
図8は、三次元スキャナが搭載された防振架台の上面図である。
【
図9】
図9は、三次元スキャナが搭載された防振架台の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0020】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る施工機械の一例であるエレクタ搭載型吹付け機1を用いた施工状況を示す図である。エレクタ搭載型吹付け機1は、NATM工法によるトンネルの施工機械である。
図1は、トンネルの掘進方向と直交する横断面を示している。
図2は、実施形態1に係るエレクタ搭載型吹付け機1によって施工されるトンネルの掘進方向に沿った縦断面を示す図である。
【0021】
符号2は、トンネルの掘進方向における最前線の掘削面であり「切羽」と呼ばれる。トンネルは、例えば、(1)切羽2を発破又は機械によって掘削→(2)掘削した土砂等(掘削ズリ)の搬出→(3)一次吹付けコンクリート3の吹付け、トンネル支保工4の建て込み、二次吹付けコンクリート5の吹付け→(4)ロックボルト(図示せず)の打設を1サイクルとして繰り返すことで、トンネル掘進方向(トンネル軸方向)に延伸される。
図1に示す施工状況は、切羽2の掘削および掘削ズリの搬出を行った後、エレクタ搭載型吹付け機1を切羽2近傍まで自走させた後、切羽2および地山7に対して一次コンクリート3の吹付け施工を実施している状況を示している。
【0022】
図3は、実施形態1に係るエレクタ搭載型吹付け機1の側面図である。
図4は、実施形態1に係るエレクタ搭載型吹付け機1の上面図である。エレクタ搭載型吹付け機1は、自走可能な重機であり、エレクタ装置10、吹付け装置20、防振架台30、計測器の一例としての三次元(3D)スキャナ40等を備えている。エレクタ搭載型吹付け機1の計測器は、エレクタ搭載型吹付け機1を用いたトンネルの施工管理に用いる種々のデータを取得するための機器である。
図3および
図4には、エレクタ搭載型吹付け機1の前方、後方の位置関係を示す。
【0023】
また、エレクタ装置10は、同一構成の一対のエレクタブーム11L,11Rを備えている。エレクタ装置10における一対のエレクタブーム11L,11Rは、エレクタ搭載型吹付け機1の前方に向かって伸びている。一対のエレクタブーム11L,11Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって伸縮動作、傾動動作、揺動動作、回動動作が自在である。また、各エレクタブーム11L,11Rの先端には、同一構成ある一対のハン
ド(把持機構)12L,12Rが連結されている。一対のハンド12L,12Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって回転動作及び揺動動作が自在であり、アーチ状のトンネル支保工4が2分割された一対の支保工ピースをそれぞれ着脱自在に挟圧把持(保持)する把持機構として構成されている。一対の支保工ピースは、例えば、エレクタ装置10における各ハンド12L,12Rによって所定の建て込み位置に建て込まれた状態で天端(上端)同士が一体に連結されることで、アーチ状のトンネル支保工4を形成する。
【0024】
吹付け装置20は、上述した一次吹付けコンクリート3、二次吹付けコンクリート5の吹付けの吹付けを行うための装置である。吹付け装置20は、エレクタ搭載型吹付け機1における幅方向中央且つ前部位置からエレクタ搭載型吹付け機1の前方に向かって延びるアーム21と、アーム21に支持される吹付けロボット22と、吹付けロボット22の先端側に設けられる吹付けノズル23等を備えている。アーム21は、例えば伸縮動作、傾動動作等が可能である。また、吹付けロボット22は、例えば吹付けノズル23の傾動動作、回動動作等が可能である。その他、吹付け装置20は、コンクリートポンプ、急結剤供給装置、コンプレッサ、高圧水ポンプ等を備えている。吹付けロボット22は、コンクリートポンプから供給された吹付けコンクリートを吹付けノズル23から吐出させることで、吹付けコンクリートを切羽2に吹付けることができる。
【0025】
図3、
図4に示すようにエレクタ搭載型吹付け機1は、更に、三次元スキャナ40を搭載する防振架台30を備えている。三次元スキャナ40は、レーザー光を照射してから、当該レーザー光が対象物において反射して再び戻ってくるまでの時間を計測することで、対象物までの距離に換算する。また、三次元スキャナ40は、例えばレーザー光の照射角度も計測し、換算した距離および計測した照射角度に基づいて、三次元スキャナ40に対する計測対象の相対位置の座標を算出することができる。ここでいう相対位置の座標とは、三次元スキャナ40の座標を原点とした場合の計測対象の三次元座標である。本実施形態においては、例えば、掘削後における切羽2の掘削面を計測対象とすることで、切羽2に対する吹付けコンクリートの吹付け厚さを三次元スキャナ40によってモニタリングすることで、切羽2への吹付け厚さをリアルタイムで管理する。また、例えば、切羽2近傍の地山7(坑壁面)を計測対象とすることで、地山7(坑壁面)に対する吹付けコンクリートの吹付け厚さをモニタリングすることで、地山7への吹付け厚さをリアルタイムで管理する。防振架台30は、計測器の一例としての三次元スキャナ40とエレクタ搭載型吹付け機1との間に介在し、三次元スキャナ40を用いて計測作業を行う際に、エレクタ搭載型吹付け機1の振動が三次元スキャナ40に伝達することを抑制するための架台である。防振架台30の詳細については後述する。
【0026】
図5は、実施形態1に係る施工管理システムSの概略構成図である。エレクタ搭載型吹付け機1は、操縦席に搭載されたディスプレイ装置であるモニタ101、制御コンピュータ102、アンテナ103、操作盤104、キーボード105、ポンティングデバイス106等を有する。
【0027】
また、
図5における符号70はレーザ光による測距・測角儀(測量機)である自動追尾型トータルステーション、符号71はトータルステーション70を制御するトータルステーションコントローラ、符号72はトータルステーションコントローラ71と無線による送受信を可能とするトータルステーション側アンテナである。トータルステーションコントローラ71は、例えば携帯可能なコンピュータを有し、当該コンピュータに組み込まれたソフトウェアによってトータルステーション70の各種の機構を自動制御すると共に、トータルステーション70の測量データを処理する。更に、トータルステーションコントローラ71は、エレクタ搭載型吹付け機1のアンテナ103との無線通信によりデータの送受信が可能であり、且つ、制御コンピュータ102からの指令によりトータルステーション70の各種の機構を無線遠隔操作することが可能である。勿論、制御コンピュータ1
02とトータルステーションコントローラ71における相互の通信は、有線による通信であっても良い。
【0028】
トータルステーション70は、レーザ光を照射してプリズム等といったターゲット9を自動追尾し、その測距・測角を行うことで、ターゲット9の位置を測定(測量)する測量機であり、トンネル内において座標が既知の地点(座標既知地点)に設置される。本実施形態では、例えば、切羽2近傍の地山7に沿って新規に建て込むトンネル支保工4における一対の支保工ピース4L,4Rの適所に支保工ターゲット9Aが取り付けられる。トンネル支保工4の建て込みを行う際、一対のハンド12L,12Rにそれぞれ把持した支保工ピース4L,4Rを連結したり、所定の建て込み位置に設置する際に、各支保工ピース4L,4Rに取り付けた支保工ターゲット9Aを自動追尾することで各支保工ピース4L,4Rの位置をリアルタイムに取得することができる。なお、支保工ピース4L,4Rに取り付ける支保工ターゲット9Aの位置、数等は適宜変更することができる。
【0029】
また、エレクタ搭載型吹付け機1の後部における左側部、右側部、中央部に、それぞれ機体ターゲット9Bが設置されている。トータルステーション70を用いてエレクタ搭載型吹付け機1に取り付けた各機体ターゲット9Bの位置を測定することで、エレクタ搭載型吹付け機1が配置されている位置や、その向き等をリアルタイムに取得することができる。なお、トータルステーション70は、エレクタ搭載型吹付け機1の後部に取り付けた機体ターゲット9Bや、各支保工ピース4L,4Rに取り付けた支保工ターゲット9Aを自動追尾することから、そのようなターゲット9A,9Bの視準に障害が無い適所、例えば、切羽2から適度に離れたトンネルの天井部や壁面に設けられた架台等に設置しても良い。
【0030】
次に、エレクタ搭載型吹付け機1が備える防振架台30の詳細について
図6~
図15を参照して説明する。
図6は、三次元スキャナ40が搭載された防振架台30の正面図である。防振架台30の正面は、前方からエレクタ搭載型吹付け機1を眺めたときに視認される方の面であり、
図4における矢視A方向から眺めた防振架台30が
図6に示されている。
図7は、三次元スキャナ40が搭載された防振架台30の側面図である。防振架台30の側面は、側方からエレクタ搭載型吹付け機1を眺めたときに視認される方の面であり、
図4における矢視B方向から眺めた防振架台30が
図7に示されている。
図8は、三次元スキャナ40が搭載された防振架台30の上面図である。
図9は、三次元スキャナ40が搭載された防振架台30の底面図である。
図10は、正面側から防振架台30を眺めたときの防振架台30の内部構造を説明する図である。
図11は、側面側から防振架台30を眺めたときの防振架台30の内部構造を説明する図である。
【0031】
防振架台30は、エレクタ搭載型吹付け機1の架台固定用フレーム13(
図3、
図4を参照)に固定された架台本体部31、架台本体部31に載置されると共に三次元スキャナ40を保持する計測器保持部32、計測器保持部32から下方に垂設された複数の支持脚部50等を備えている。架台本体部31は、例えば鋼製板を溶接加工することで形成された箱型フレームであり、上部が開放されている。また、架台本体部31は、取付ブラケット14を介してエレクタ搭載型吹付け機1の架台固定用フレーム13に固定されている。
【0032】
防振架台30の架台本体部31は、矩形の底板311と、当該底板311から垂直上方に立設する側板312によって形成されている。本実施形態において、側板312は、平面視ロの字形状を有している。また、架台本体部31における側板312の上端は開放端となっており、矩形状の開口部313が形成されている。
【0033】
計測器保持部32は、平面視矩形状の平板部材であるベース板33、ベース板33の底面から下方に垂設された係止用エアシリンダ34、載置用脚部35等を有する。ベース板
33の外形は、架台本体部31の開口部313に比べて一回り小さな大きさに形成されており、開口部313を通じてベース板33は架台本体部31における側板312に囲まれた内側空間に進入(収容)可能になっている。なお、架台本体部31およびベース板33の形状、大きさ等は特に限定されない。
【0034】
ここで、符号33Aはベース板33の上面、符号33Bはベース板33の下面である。計測器保持部32が架台本体部31の底板311に載置された状態において、ベース板33の下面33Bが底板311の上面と対向するように底板311に対してベース板33が対向配置されている。
【0035】
また、ベース板33における上面33Aには、防振ゴム36、取付プレート37等を介して三次元スキャナ40が設置されている。例えば、ベース板33と取付プレート37との間の複数個所に防振ゴム36を挟み込み、圧縮した状態で取付プレート37がベース板33と平行となるようにネジ止め等によって固定されている。また、三次元スキャナ40は、その底部が取付プレート37の上面37Aにネジ止め等によって固定されている。以上のようにして、計測器保持部32のベース板33に、防振ゴム36、取付プレート37等を介して三次元スキャナ40が固定されることで、計測器保持部32が三次元スキャナ40を一体に保持している。なお、本実施形態においては、三次元スキャナ40は、ベース板33の平面中央に配置されている。また、
図7、
図8等に示すように、ベース板33における上面33Aには、2軸傾斜計60が設けられており、ベース板33の水平測定が可能となっている。なお、2軸傾斜系60を設置する位置、数等は特に限定されない。
【0036】
次に、ベース板33の下面33Bから下方に垂設された係止用エアシリンダ34、および載置用脚部35について説明する。本実施形態においては、単一の係止用エアシリンダ34がベース板33の平面中央部に設けられている(平面位置については
図8を参照)。また、ベース板33の下面33Bには、4本の載置用脚部35が下方に垂設されている。本実施形態において、ベース板33から下方に垂設された4本の載置用脚部35は何れも同一構造である。各載置用脚部35は、ベース板33の下面33Bにおいて、取付プレート37の四隅の近傍位置に配置されている(平面位置については
図8を参照)。
【0037】
ここで、載置用脚部35は、空圧式の直線作動機であるエアシリンダによって形成されており、ベース板33に対して垂直に延在する軸方向に沿って伸縮自在となっている。載置用脚部35は、ベース板33の下面33Bに固定されたシリンダチューブ351、シリンダチューブ351の内周面に沿って摺動自在に配設されたピストン(図示せず)、ピストンに接続されたピストンロッド352、ピストンロッド352の先端側に取り付けられた載置板353等を含んで構成されている。
図10に示すように、シリンダチューブ351の上端には取付板351Aが設けられており、取付板351Aを介してシリンダチューブ351がベース板33に固定されている。また、ピストンロッド352の先端側に取り付けられた載置板353の形状、大きさ等は特に限定されないが、本実施形態においては円盤形状を有している。各載置用脚部35は、制御コンピュータ102からの制御信号に基づき、シリンダチューブ351内に供給される圧縮空気が制御される。その結果、シリンダチューブ351の軸方向に沿ってピストンロッド352に接続されたピストンが動くことにより、ピストンロッド352が伸縮する。
【0038】
図10に示すように、架台本体部31における底板311の上面311Aには、各載置用脚部35における載置板353をガイドする第1のガイド部38が垂直に立設している。第1のガイド部38は、ピストンロッド352の先端に設けられた載置板353の直径と等しい寸法の内径を有する円筒部材であり、その内周面が載置板353をガイドするガイド面38Aとして構成されている。第1のガイド部38は、各載置用脚部35に対応する位置に設けられており、本実施形態では第1のガイド部38が4カ所に設けられている
。例えば、第1のガイド部38の各々は、各載置用脚部35におけるピストンロッド352および載置板353と同軸に配置されている。各載置用脚部35のピストンロッド352が伸縮する際には、ピストンロッド352の先端に取り付けられた載置板353の側周面が第1のガイド部38におけるガイド面38Aに沿って上下方向に摺動する。これにより、各載置用脚部35におけるピストンロッド352の伸縮時にピストンロッド352の水平方向の移動が第1のガイド部38によって規制される。
【0039】
次に、係止用エアシリンダ34について説明する。係止用エアシリンダ34は、載置用脚部35と基本的に同一構造のエアシリンダであり、ベース板33の下面33Bに固定されたシリンダチューブ341、シリンダチューブ341の内周面に沿って摺動自在に配設されたピストン(図示せず)、ピストンに接続されたピストンロッド342、ピストンロッド342の先端側に取り付けられた係止板343等を含んで構成されている。係止用エアシリンダ34におけるシリンダチューブ341は、その上端に取付板341Aが設けられており、この取付板341Aを介してシリンダチューブ341がベース板33に固定されている。係止用エアシリンダ34においても、制御コンピュータ102からの制御信号に基づいて作動する。係止用エアシリンダ34のシリンダチューブ341内に供給される圧縮空気が制御されることで、シリンダチューブ341の軸方向に沿ってピストンロッド342に接続されたピストンが動くことにより、ピストンロッド342が伸縮する。
【0040】
また、
図10、
図11に示すように、架台本体部31における底板311には、係止用エアシリンダ34のピストンロッド342を挿通可能な挿通口311Cが開口している。架台本体部31における底板311の挿通口311Cは、底板311の中央位置に形成されており、ピストンロッド342が挿通口311Cを挿通した状態で係止板343が底板311の下面311B側に位置付けられている。係止用エアシリンダ34における係止板343の形状、大きさ等は特に限定されないが、本実施形態においては円盤形状を有している。なお、架台本体部31における底板311に開口する挿通口311Cの横断面積は係止板343の横断面積に比べて小さい。そのため、係止用エアシリンダ34における係止板343が底板311の挿通口311C内に進入することはできないようになっている。つまり、係止用エアシリンダ34のピストンロッド342が引き動作、すなわちピストンロッド342が縮小する際には、ピストンロッド342の係止板343が架台本体部31における底板311の下面311B(挿通口311Cの周囲に形成される縁面)に当接した時点で、それ以上のピストンロッド342の引き動作が規制されることになる。
【0041】
更に、本実施形態においては、
図10、
図11に示すように、架台本体部31における底板311の下面311Bには、係止用エアシリンダ34におけるピストンロッド342の先端に設けられた係止板343をガイドする第2のガイド部39が垂設されている。第2のガイド部39は、係止用エアシリンダ34におけるピストンロッド352の先端に設けられた係止板343の直径と等しい寸法の内径を有する円筒部材であり、その内周面が係止板343をガイドするガイド面39Aとして構成されている。第2のガイド部39は、係止用エアシリンダ34に対応する位置に設けられており、係止用エアシリンダ34におけるピストンロッド342および係止板343と同軸に配置されている。係止用エアシリンダ34のピストンロッド342が伸縮する際には、ピストンロッド342の先端に取り付けられた係止板343の側周面が第2のガイド部39におけるガイド面39Aに沿って上下方向に摺動する。これにより、係止用エアシリンダ34におけるピストンロッド342の伸縮時にピストンロッド342の水平方向への移動が第2のガイド部39によって規制される。
【0042】
次に、防振架台30の支持脚部50について説明する。本実施形態に係る防振架台30は4本の支持脚部50を備え、各支持脚部50は計測器保持部32におけるベース板33から下方に向かって垂設されている。各支持脚部50は、電動式の直線作動機であるパワ
ーシリンダによって構成されている。パワーシリンダの構成自体は周知であるため詳しい説明は省略するが、支持脚部50は、ベース板33の下面33Bに固定されたケース51、ケース51に保持された支持ロッド52、支持ロッド52の先端側に取り付けられた接地板53、ケース51内に収容されると共に支持ロッド52と一体に設けられたボールねじ(図示せず)を回転駆動するためのモータ54等を有している。モータ54は、例えばケース51の上端に設けられたサーボモータであり、ボールねじを正逆方向に回転駆動することで、ケース51に対して支持ロッド52を伸縮させることができる。なお、本実施形態においてケース51は円筒形状を有しているが、その形状は特に限定されない。また、各支持脚部50にモータ54はエレクタ搭載型吹付け機1の制御コンピュータ102によって制御されるようになっており、制御コンピュータ102からの制御信号に基づいて支持ロッド52の伸縮動作が制御される。なお、各支持脚部50におけるモータ54は、制御コンピュータ102による制御だけでなく、例えば手動パルス発生器を用いても制御することができるようになっている。また、制御コンピュータ102の制御信号に基づいて各支持脚部50のモータ54が作動する際のモータトルクはリアルタイムに検出されるように構成されており、例えばモータ54のトルクに関する検出データは逐次、制御コンピュータ102に入力されるようになっていても良い。
【0043】
ここで、
図8、
図9等に示すように、各支持脚部50は、ベース板33における四隅の近傍位置にそれぞれ配置されている。また、
図10、
図11に示すように、支持脚部50におけるケース51の上端には取付板51Aが設けられており、取付板51Aを介してケース51がベース板33の下面33Bに固定されている。また、ベース板33の四隅には、支持脚部50におけるモータ54がベース板33と干渉することを抑制するための開口部33が形成されており、ベース板33の開口部33を通じて支持脚部50におけるモータ54がベース板33の上面33A側に突出している。
【0044】
また、架台本体部31の底板311には、支持脚部50のケース51を挿通可能な開口311Dが設けられている。架台本体部31の底板311に形成された開口311Dは、支持脚部50のケース51の横断面よりも大きく、ケース51と開口311Dとの間には所定のクリアランスが形成されている。また、底板311における開口311Dは、各支持脚部50に対応する位置にそれぞれ開口している。そして、ベース板33に垂設された各支持脚部50のケース51は、対応する開口311Dを通じて架台本体部31における底板311の下方側に延設されている。
【0045】
次に、防振架台30に搭載された三次元スキャナ40を用いて計測作業を行う際の三次元スキャナ40の防振方法について説明する。ここでは、エレクタ搭載型吹付け機1の吹付け装置20を用いて地山7に吹付ける吹付けコンクリートの吹付け厚さを三次元スキャナ40によって計測管理する際の動作例を説明する。
【0046】
例えば、支保構造を新設するための新設区間における切羽2を掘削し、ズリ出し後、所定の待機場所に待機していたエレクタ搭載型吹付け機1を自走させて切羽2近傍の施工位置に配置する。その際、エレクタ装置10における一対のハンド12L,12Rには、それぞれ一対の支保工ピースを把持した状態で、エレクタ搭載型吹付け機1を待機場所から切羽2近傍の施工位置に移動させる。ここで、上記の待機場所は、切羽2近傍の施工位置と異なる所定の準備位置の一例である。
【0047】
本実施形態においては、エレクタ搭載型吹付け機1を切羽2近傍の施工位置に移動させる際、エレクタ搭載型吹付け機1の走行時における振動等に起因する三次元スキャナ40への衝撃等を緩和するために、防振架台30における計測器保持部32を架台本体部31に固定する。本実施形態においては、係止用エアシリンダ34に引き動作をさせる一方、各載置用脚部35に押し動作をさせることにより、計測器保持部32を架台本体部31に
固定する。これにより、各載置用脚部35おけるピストンロッド352が伸長すると共に、係止用エアシリンダ34におけるピストンロッド342が縮小する。
【0048】
その結果、
図12に示すように、各載置用脚部35におけるピストンロッド352の先端に取り付けられた載置板353と、係止用エアシリンダ34におけるピストンロッド342の先端に取り付けられた係止板343によって架台本体部31の底板311が挟まれた状態となり、各載置用脚部35および係止用エアシリンダ34に供給される空気圧によって、架台本体部31の底板311に載置されている計測器保持部32が当該底板311に対して固定される。以下、
図12に示すように、架台本体部31の底板311に対して計測器保持部32が固定された状態を「固定状態」という。上記のように、架台本体部31に対して計測器保持部32が固定されることで、エレクタ搭載型吹付け機1の走行時に架台本体部31の底板311に載置される計測器保持部32がバタつくことがない。その結果、計測器保持部32に保持されている三次元スキャナ40に作用する衝撃、振動等を緩和することができる。
【0049】
更に、本実施形態における防振架台30によれば、計測器保持部32におけるベース板33と、三次元スキャナ40が設置される取付プレート37との間に防振ゴム36が配置されているため、エレクタ搭載型吹付け機1の走行等に起因する振動が三次元スキャナ40に伝達することを好適に抑制できる。
【0050】
上記のように、防振架台30における架台本体部31の底板311に計測器保持部32を固定した状態でエレクタ搭載型吹付け機1を待機場所から切羽2近傍の施工位置に移動させた後、制御コンピュータ102は、係止用エアシリンダ34を押し動作させる。その結果、
図13に示すように、係止用エアシリンダ34のピストンロッド342が伸長し、ピストンロッド342の先端に取り付けられた係止板343が架台本体部31の底板311から離間する。これにより、係止用エアシリンダ34の係止板343による底板311の係止が解除される結果、架台本体部31に対する計測器保持部32の固定状態が解除される。
【0051】
上記のように、架台本体部31に対する計測器保持部32の固定を解除した後、制御コンピュータ102は4本の支持脚部50における支持ロッド52を伸長させる。そして、各支持脚部50における支持ロッド52の接地板53が地盤Gに接地した時点で、接地板53が接地した支持脚部50のモータ54を一旦停止させる。なお、各支持脚部50の支持ロッド52を伸長させている最中、各モータ54のトルク変動がリアルタイムで検出される。制御コンピュータ102は、各支持脚部50の支持ロッド52の伸長時におけるモータ54のトルク変動の検出結果に基づいて支持ロッド52の接地板53が地盤Gに接地したことを検知することができる。また、別の態様として、各支持ロッド52の先端に設けられた接地板53が地盤Gに接地したことを検知するための接触センサーを各接地板53の下面に設置し、当該接触センサーによる検出信号が制御コンピュータ102にリアルタイムに送信されるように構成されても良い。この態様においては、制御コンピュータ102は接触センサーからの検出信号に基づいて各支持脚部50における接地板53の接地タイミングを検知することができる。上記のようにして、制御コンピュータ102は、防振架台30における全ての支持脚部50における接地板53を地盤Gに接地させる。なお、各支持脚部50におけるモータ54によって回転駆動されるボールねじ(支持ロッド52)の軸方向の移動量は、エレクタ搭載型吹付け機1のモニタ101に表示されるようになっていてもよい。制御コンピュータ102は、各支持脚部50における接地板53の接地を検知した時点で、その時点における支持脚部50の高さを原点「0」にセットする。
【0052】
図14は、防振架台30における支持脚部50の支持ロッド52における接地板53を地盤Gに接地させた状態を示している。このように、防振架台30における全ての支持脚
部50における接地板53を地盤Gに接地させた後、例えば、ベース板33に設けられた2軸傾斜計60を目視によって確認し、適宜、手動パルス発生器(図示せず)を用いて各支持脚部50の高さを調整することで、ベース板33を水平にする。また、ベース板33の水平合わせをする際、例えば、4本の支持脚部50のうち最も高い支持脚部50を基準として、他の支持脚部50の高さを調整してもよい。なお、本実施形態における三次元スキャナ40には、三次元スキャナ40の取付プレート37が水平になるように自動で調整する公知のオートレベリング装置が備え付けられていてもよい。このように、三次元スキャナ40にオートレベリング装置を備える場合には、2軸傾斜計60を省略してもよいし、また、2軸傾斜計60を用いてベース板33の水平合わせを行うにしても大まかな水平合わせに留め、三次元スキャナ40の詳細な水平合わせをオートレベリング装置によって行うようにしてもよい。また、2軸傾斜計60の代わりに、簡易的な気泡型水平器を設置し、当該気泡型水平器を用いてベース板33の水平合わせを行ってもよい。
【0053】
上記のように計測器保持部32におけるベース板33の水平合わせを行った後、制御コンピュータ102は、全ての支持脚部50のモータ54を一斉に駆動し、予め定めておいた所定高さ(例えば、数センチ程度)だけ、各支持脚部50の支持ロッド52を同時に伸長させる。その結果、
図15に示すように、各支持脚部50の接地板53が地盤Gから離間し、地盤Gの上方に浮上した状態となる。また、各支持脚部50は、計測器保持部32のベース板33に固定されているため、上記のように各支持脚部50の接地板53が地盤Gに接地した状態で各支持脚部50(支持ロッド52)を伸長させることで、各支持脚部50によって計測器保持部32が上方に持ち上げられる。すなわち、架台本体部31の底板311に載置されていた計測器保持部32が各支持脚部50によって上方に持ち上げられることで、架台本体部31に対して計測器保持部32が接触しない状態となる。
【0054】
上記のように、防振架台30における計測器保持部32を架台本体部31から上方に持ち上げた状態で計測器保持部32を各支持脚部50に保持させると、三次元スキャナ40による計測を開始する準備が完了する。このようにして、三次元スキャナ40による計測を開始する準備が整った後、トータルステーション70を用いてエレクタ搭載型吹付け機1の各機体ターゲット9Bの位置を測定することで、三次元スキャナ40が配置されている位置(三次元座標)を取得する。その後、三次元スキャナ40による計測を開始すると共に、吹付け装置20を用いて切羽2および地山7(坑壁面)への一次吹付けコンクリート3の吹付けを開始する。なお、ここでは、三次元スキャナ40を用いて、切羽2とその近傍における地山7(坑壁面)の形状を計測することで、吹付けコンクリートの吹付け厚さをモニタリングする。また、切羽2および地山7に対する吹付けコンクリートの吹付け厚さのモニタリング結果は、モニタ101にリアルタイムで表示されるようになっている。
【0055】
ここで、吹付け装置20による吹付けコンクリートの吹付け作業が開始されると、エレクタ搭載型吹付け機1が振動することになる。これに対して、本実施形態においては、架台本体部31の底板311に対して計測器保持部32が各支持脚部50によって上方に持ち上げられているため、エレクタ搭載型吹付け機1の機械振動が、架台固定用フレーム13および架台本体部31を介して計測器保持部32に搭載された三次元スキャナ40に伝達されることを抑制できる。これにより、エレクタ搭載型吹付け機1を作動させながらも、エレクタ搭載型吹付け機1に搭載された三次元スキャナ40を用いて精度の良い計測を行うことができる。すなわち、吹付けコンクリートの吹付け厚さの管理を精度よく行うことができる。これに伴い、吹付けコンクリートの吹付けむらが発生しにくくなり、また、必要以上に吹付けコンクリートを過剰に吹付けることも回避できるため、施工時間の短縮や材料の無駄(コスト低減)を図ることができる。
【0056】
吹付け装置20によって一次吹付けコンクリート3が設計通りに吹付けられたことを確
認した後は、例えば、吹付け装置20の作動を一旦停止し、エレクタ装置10を用いてトンネル支保工4を所定の建て込み位置に建て込む。例えば、一対のハンド12L,12Rに把持した支保工ピース4L,4Rをそれぞれ所定の建て込み位置にセットし、その状態で各支保工ピース4L,4Rの上端(天端)同士を接合することで、アーチ状のトンネル支保工4を形成する。なお、各支保工ピース4L,4Rの連結構造は特に限定されないのは勿論である。各支保工ピース4L,4Rの上端(天端)にそれぞれ設けられた継手板同士をボルト接合してもよいし、上記継手板同士をワンタッチで接合するためのワンタッチ継手を用いて各支保工ピース4L,4Rを連結してもよい。また、上記のように、新設区間における地山7に対する一次吹付けコンクリート3の吹付けが完了した後にトンネル支保工4の建て込みを行ってもよいし、一次吹付けコンクリート3の吹付け作業と支保工ピース4L,4Rの建て込み作業の一部を重複して行ってもよい。なお、トンネル支保工4の建て込みに際しては、一対の支保工ピース4L,4Rに取り付けられた各支保工ターゲット9Aをトータルステーション70によって視準し、リアルタイムで取得する各支保工ターゲット9Aの位置に基づいて一対のハンド12L,12Rを操作することで行うことができる。
【0057】
トンネル支保工4の建て込みが完了した後は、再び吹付け装置20を作動させて地山7に対する二次吹付けコンクリート5の吹付け作業を行う。なお、三次元スキャナ40による計測は、トンネル支保工4の建て込みを行う際にも継続していてもよい。或いは、トンネル支保工4の建て込み中は三次元スキャナ40による計測を中断し、二次吹付けコンクリート5の吹付けの開始と同時に開始してもよい。地山7に対する二次吹付けコンクリート5の吹付け作業中も、三次元スキャナ40による計測結果はモニタ101にリアルタイムで表示される。そして、地山7に対する吹付けコンクリートのトータルの吹付け厚さ(一次吹付けコンクリート3の吹付け厚さと二次吹付けコンクリート5の吹付け厚さの合計)が規定の厚さ以上に到達したことを確認できた時点で、吹付け装置20による吹付けコンクリートの吹付け作業を終了すると共に三次元スキャナ40による計測作業を終了する。その後、適宜、地山7に対してロックボルト(図示せず)の打設作業を行うことで、トンネル掘進の1サイクルが終了する。
【0058】
上記のようにロックボルトの打設が完了した後は、次のサイクルにおける切羽2を掘削するために、エレクタ搭載型吹付け機1を待機場所に退避させる。切羽2近傍の施工位置から待機場所にエレクタ搭載型吹付け機1を移動させる際には、待機場所から施工位置にエレクタ搭載型吹付け機1を移動させる際と同様、防振架台30における架台本体部31の底板311に対して計測器保持部32が固定された固定状態に移行させる。
【0059】
すなわち、各支持脚部50の支持ロッド52に設けられた接地板53が地盤Gから十分に離間するまで支持ロッド52を縮めてゆく。これにより、防振架台30は、
図15に示す状態から
図13に示す状態に移行し、計測器保持部32における各載置用脚部35の載置板353が架台本体部31における底板311の上面311Aに当接した状態で、底板311に計測器保持部32が載置された状態となる。この状態から、係止用エアシリンダ34に引き動作をさせ、係止用エアシリンダ34におけるピストンロッド342を縮める。これにより、
図12に示す状態に移行し、各載置用脚部35におけるピストンロッド352の載置板353と、係止用エアシリンダ34におけるピストンロッド342の係止板343とによって架台本体部31の底板311が挟まれる結果、計測器保持部32が架台本体部31の底板311に固定される。このように、計測器保持部32を固定状態に移行させた後、エレクタ搭載型吹付け機1を施工位置から待機場所に移動させる。これにより、エレクタ搭載型吹付け機1の走行時に計測器保持部32に保持されている三次元スキャナ40へと伝達される衝撃、振動等を緩和できる。本実施形態においては、係止用エアシリンダ34が、架台本体部31に対する計測器保持部32の固定と、計測器保持部32の固定状態の解除を切り替え可能な固定機構を構成する。
【0060】
また、本実施形態における防振架台30によれば、架台本体部31における底板311に第1のガイド部38が設けられているため、各載置用脚部35におけるピストンロッド352の伸縮時にピストンロッド352の水平方向の移動を規制できる。また、架台本体部31における底板311には、更に、第2のガイド部39が設けられているため、係止用エアシリンダ34のピストンロッド342の伸縮時にピストンロッド342の水平方向の移動を規制できる。これにより、架台本体部31に対する計測器保持部32の上下方向の相対移動を許容しつつ、水平方向の相対移動を規制することができる。これにより、架台本体部31に対して計測器保持部32を昇降させる際に、計測器保持部32(三次元スキャナ40)の水平方向の位置がずれることを抑制できる。本実施形態においては、第1のガイド部38および第2のガイド部39がガイド部に相当する。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係る防振架台、これを備えた施工機械、および防振架台を用いた計測器の防振方法は、これらに限られない。例えば、本実施形態における防振架台30において、計測器保持部32に設けられる係止用エアシリンダ34および載置用脚部35の位置、数は特に限定されない。また、計測器保持部32のベース板33に固定される支持脚部50の位置、数も特に限定されない。
【0062】
また、本実施形態においては、防振架台30に搭載する計測器として三次元スキャナ40を例に説明したが、計測器の種類は特に限定されない。例えば、三次元スキャナ40の代わりに、トータルステーション(測量機)や、ミリ波レーダー装置等を計測器保持部32に設置してもよい。
【0063】
また、本実施形態においては、防振架台30を搭載する施工機械としてエレクタ搭載型吹付け機を例に説明したが、他の施工機械に防振架台30を搭載してもよい。例えば、トンネルの切羽2を掘削するドリルジャンボやブレーカ等といった施工機械に防振架台30を搭載してもよい。この場合、例えば三次元スキャナ40を用いてトンネル掘削素掘面の形状を計測し、その後の覆工に支障を生じるアタリ箇所を把握するために用いてもよい。また、本発明は、上述した実施形態に係る防振架台30と、当該防振架台30における計測器保持部32に保持された計測器(例えば、三次元スキャナ40等)を備えた計測ユニットとして特定することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・エレクタ搭載型吹付け機
2・・・切羽
3・・・一次吹付けコンクリート
4・・・トンネル支保工
5・・・二次吹付けコンクリート
7・・・地山
10・・・エレクタ装置
20・・・吹付け装置
30・・・防振架台
31・・・架台本体部
32・・・計測器保持部
33・・・ベース板
34・・・係止用エアシリンダ
35・・・載置用脚部
40・・・三次元スキャナ
50・・・支持脚部