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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】零点クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20231116BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B23Q3/06 304F
F16B2/06 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020040893
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2020189397
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】19175365
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596007164
【氏名又は名称】エスエムヴェー アウトブローク シュパンジステーメ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SMW-Autoblok Spannsysteme GmbH
【住所又は居所原語表記】Wiesentalstrasse 28, D-88074 Meckenbeuren, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ダンネッカー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン マルクヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト マウラー
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130822(JP,A)
【文献】特開昭60-161043(JP,A)
【文献】特開2002-326128(JP,A)
【文献】特開2003-266260(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03482872(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00、3/06
F16B 2/06
B25B 1/02,1/08、5/02、5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ハウジング(4)、
-クランプ工程中に対象物(2)が整列されるセンタリング軸(6)を有する、前記ハウジング(4)に加工された収容開口(5)、及び
-2つの対向するクランプスライド(7,8)であって、そのそれぞれが、前記ハウジング(4)に設けられた穴(9)に軸方向に移動可能に設置され、クランプ状態の間前記収容開口(5)に開口していて、それにより前記対象物(2)又はキャリア部品(32)に作用し、それを心出しするクランプスライド(7,8)を有する、
繰り返し精度をもって、対象物(2)、特に工作物、工具又はパレットを心出しロックするための零点クランプ装置(1)において、
-作動要素(11)が前記ハウジング(4)に回転可能に設置され、当該作動要素(11)の回転軸(12)が前記クランプスライド(7,8)と平行に延び、
-前記クランプスライド(7,8)の長手軸(10)と垂直に整列された通り穴(13)が、それぞれのクランプスライド(7,8)に組み込まれ、
-ピボットピン(14,15)がそれぞれの通り穴(13)に挿入され、当該ピボットピン(14,15)の一方の自由端(16)が前記作動要素(11)に組み込まれた案内溝(18)に係合し、駆動的に当該案内溝(18)と接続し、前記ピボットピン(14,15)の反対側の第2自由端(17)が、前記ハウジング(4)に関連する接合部(21)に挿入され、傾斜配置で前記接合部に保持される、ことを特徴とする零点クランプ装置。
【請求項2】
前記作動要素(11)が円柱又は菅として設計され、前記作動要素(11)の外装表面にアクティブに結合する前記ピボットピン(14,15)のそれぞれのための前記案内溝(18)が前記外装表面に加工され、前記ピボットピン(14,15)の前記自由端(16)が当該案内溝(18)内で案内され、保持される、ことを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記案内溝(18)が、前記作動要素(11)の前記回転軸(12)に関して傾斜しており、前記作動要素(11)の外装表面の外周の一部にわたって実質的にらせん状に延びる、ことを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記作動要素(11)の外側表面に加工された前記案内溝(18)が、互いから離間した2つのストッパ(22,23)を有し、それらにより前記ピボットピン(14,15)の前記自由端(16)がそれらの運動の自由度を制限され、前記ピボットピン(14,15)のための接触表面として機能する、ことを特徴とする請求項3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記ハウジング(4)の接合部(21)に配置された、それぞれのピボットピン(14,15)の前記自由端(17)が、ボール頭として設計され又は湾曲した外側輪郭を備えて設計され、
それぞれの接合部(21)が、それぞれのピボットピン(14,15)の前記自由端(17)の外側輪郭に合う内側輪郭を有し、それにより前記ピボットピン(14,15)は、それら自体の長手軸(19)周りに移動できるように保持される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記クランプスライド(7,8)に組み込まれた前記通り穴(13)は、外側に湾曲した内側輪郭を有し、その直径は前記クランプスライド(7,8)の中央におけるよりも外側領域において大きく、
前記通り穴(13)の中央における直径は前記ピボットピン(14,15)の直径又は幅に適合され、それにより前記ピボットピン(14,15)がそれぞれのクランプスライド(7,8)の前記長手軸(10)の領域における前記通り穴(13)の内壁に当接し、それらによって案内される、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項7】
傾斜運動が、前記作動要素(11)の回転によってそれぞれのピボットピン(14,15)に加えられ、
前記ピボットピン(14,15)の前記傾斜運動によって、それぞれのクランプスライド(7,8)が前記収容開口(5)の中心の方向に又はそれとは反対方向に半径方向に移動できる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記作動要素(11)は外側から自由にアクセス可能であり、
前記作動要素(11)は手動で及び/又は電気モータ(25)によって作動される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項9】
電気モータ(25)が前記クランプ装置(1)の前記ハウジング(4)の内部に設けられ、当該電気モータ(25)は前記作動要素(11)に駆動的に接続し、
前記電気モータ(25)は、電気ケーブル(27)を介して又は誘導インターフェース(28)を介して電力を供給され、又は、バッテリー(26)が前記クランプ装置(1)の前記ハウジング(4)内に設けられ、当該バッテリー(26)はそれぞれの電気モータ(25)に電気的に接続し、前記電気モータ(25)に電力を供給する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項10】
多数のクランプ装置(1)が駆動的に互いに結合され、好ましくは、前記クランプ装置(1)の1つのそれぞれの作動要素(11)が、隣接する作動要素(11)に作動的に接続している、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項11】
水平面又は垂直面に対して傾斜した斜め平面が、クランプ状態の間前記収容開口(5)に係合する前記クランプスライド(7,8)の自由端に一体に形成され、
クランプスリーブ(32)の形状のキャリア部品が前記収容開口(5)に挿入でき、その外側表面に心出しレセプタクル(33)が組み込まれ、当該レセプタクルは、クランプ状態において、前記クランプスライド(7,8)の前記斜め平面(34)と相互作用し、よって前記クランプスリーブ(32)を半径方向及び軸方向に固定する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項12】
前記接合部(21)がねじ込みピンとして設計され、それぞれのピボットピン(14,15)と関連するその自由端は、それぞれのピボットピン(14,15)のボール頭が挿入されるカップ状の凹部を有し、
前記接合部(21)が前記ハウジング(4)に作られたねじ穴(35)にねじ込まれる、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項13】
前記クランプスライド(7,8)、前記作動要素(11)及び前記ピボットピン(14,15)が共通の平面上に配置される、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項14】
前記作動要素(11)に設けられた前記案内溝(18)が前記ピボットピン(14,15)を支持するアキシャルベアリングとして機能し、
外側から前記ハウジング(4)にねじ込まれたベアリングピン(37)が前記ピボットピン(14,15)に係合する、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項15】
前記案内溝(18)が少なくとも2つの異なる傾斜角又はピッチ角(q1,q2)を有し、それによって前記クランプスライド(7,8)の送り速度及び作動力を予め設定し又は予め決定することができる、ことを特徴とする請求項14に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプレアンブル部分に従う零点クランプ装置(零点締め付け装置)に関し、それにより対象物が高い再現性で空間にセンタリングされ(心出しされ)、固定される。
【背景技術】
【0002】
このようなクランプ装置は、機械加工すべき対象物、特に回転可能に対称的な工作物を支持するために工作機械にて必要とされ、というのもこれら工作物は連続して加工されなければならず、ゆえに時間のロスなしに交換できるからである。いわゆる零点と定義される基準値に対する工作物の特定の加工位置は、工作物位置を再び測定する必要を避けるために維持されるべきである。従って、零点は工作機械又はその工具テーブル(tool table)に関して定義され、クランプされる工作物の空間的位置はこの零点に対して決定される。ゆえに零点は工作物の加工位置のための基準値として機能する。工作物を交換する際、ゆえに特定の基準値(零点)まで同一の距離があるべきである。
【0003】
このような零点クランプ装置は、例えば特許文献1に発見できる。そのクランプ装置は、収容開口が組み込まれているハウジングから成る。保持ボルトが収容開口に挿入でき、それはハウジング内に横に配置された複数のクランプスライドによって固定される。クランプスライドは、保持ボルトの芯出し軸(センタリング軸)と垂直に配置され、従って、半径方向に収容開口の内部に移動し、それを解放するために外側に移動する。クランプスライドは保持ボルトと摩擦接触し、それをクランプ状態で固定する。
【0004】
クランプスライドは軸方向に作動される設定ピストンによって同期して作動される。傾斜表面又は斜め平面が、リング又は円柱として設計される設定ピストンの端面と、それぞれのクランプスライドの間に設けられ、それにより設定ピストンの軸方向送り運動が傾斜表面又は斜め平面の幾何学形状を介してクランプスライドのための半径方向送り運動に変換される。
【0005】
このようなクランプ装置の不都合は、設定ピストンの軸方向送り運動がハウジング内で支持されなければならないため、それらクランプ装置が非常に大きな構造寸法を必要とすることであると判明している。加えて、クランプスライドの送り込み経路(infeed path)は極めて小さい、というのも設定ピストンとそれぞれのクランプスライドの間の傾斜表面がこの運動可能性を制限するからである。同時に、設定ピストンとクランプスライドの摩擦接続は、クランプスライドのための対応する半径方向運動可能性を与えるために、ハウジングの外径がかなり拡大されなければならないことを意味する。結局、公知のクランプ装置のハウジングは、その高さとその外周の両方が対応的に大きくなるように構成される。しかしながら、しばしば、工作機械における利用可能なスペース又は空間的条件は制限され、それによりこのような零点クランプ装置は全く使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP1886751B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゆえに、本発明の課題は、一方で、零点クランプ装置が多数の工作物、工具、パレット又は他の対象物の確実で永続的で再現可能な固定を可能にし、他方で、クランプ装置のハウジングが極めてコンパクトであるように、すなわちその外側寸法が高さ及び直径において極めて小さく維持されるように、前述したタイプの零点クランプ装置をさらに発展させることである。
【0008】
加えて、1つの手動、電気、空気圧又は油圧駆動部だけがこのような幾つかのクランプ装置のために必要となることを保証し又は実現するために、このように設計されたクランプ装置の幾つかは異なる平面上で駆動的に互いに組み合わせることができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、特許請求項1の特徴部分の構成によって解決される。
【0010】
本発明の別な有利な実施形態は従属請求項に由来する。
【0011】
作動要素が前記ハウジングに回転可能に設置され、その回転軸は前記クランプスライドと平行に延び、通り穴(貫通口)がそれぞれのクランプスライドに加工され、前記通り穴は前記クランプスライドの長手軸と垂直に整列され、ピボットピン(pivot pin)がそれぞれの通り穴に挿入され、その一方の自由端が前記作動要素に組み込まれた案内溝に係合し、駆動的にそれに接続し、その反対側の第2自由端が前記ハウジングに関連する(結合する)接合部に挿入され、この接合部(端面支持部:abutment)に傾斜可能に保持されるという事実のため、クランプスライドを移動させるのに必要とされる全ての機械構成部品が共通平面内にあるので、極めてコンパクトな全高が創出される。
【0012】
作動要素はまた外側からアクセス可能であり、それでそれを時計回り又は反時計回りに適切に回転させるために、スクリュードライバ又は四角スパナによって手動で、又は電気モータによって駆動的に(駆動により)作動される。作動要素の回転のために、作動要素に駆動的に接続したピボットピンが移動する、というのも作動要素に組み込まれた案内溝がらせん状に延び、すなわちそれが作動要素の回転軸に関して傾斜しているからである。従って、ピボットピンは作動要素の回転軸に対して円形路で又は外側に又は内側に移動する。それにより、作動要素が例えば時計回りに回転した時、半径方向送り運動がクランプスライドに作用し、作動要素が反時計回りに回転した時、送り運動が外側に生成される。
【0013】
ピボットピンは、ハウジングへの架台・ベアリングのための接合部に挿入され、適合する内面輪郭を備えたカップに挿入される球形外側輪郭を有する。従って、作動要素が回転するとすぐに、ピボットピンは、ボール頭の支持部と接合部のカップ状接触表面の間に形成されるベアリングの周りを回動する。これにより、作動要素におけるそれぞれの案内溝の傾斜及び設計が同一であるため、クランプスライドの同期した半径方向送り運動が生成される。
【0014】
加えて、本発明に従うクランプ装置の1つの既存の作動要素の幾つかは互いに駆動的に結合してもよく、それにより1つの手動、電気、空気圧又は油圧駆動部だけがそれぞれの作動要素の回転のために必要となる。このようなクランプ装置は有利には異なる平面に配置されてもよく、それにより対象物は複数の空間的に分離した位置に固定され得る。
【0015】
図面は本発明に従って構成された零点クランプ装置を示し、その詳細を以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】収容開口が設けられたハウジングと、互いに対向する2つのクランプスライドであって、それにより収容開口に挿入され得るクランプスリーブが中央に固定されるクランプスライドと、ハウジング内に回転可能に設置された作動要素と、作動要素及びクランプスライドと駆動的に相互作用する2つのピボットピンであって、それぞれがハウジングと関連する接合部に傾斜可能に設置されたピボットピンとを備えた零点クランプ装置を分解図にて示す図である。
図2】交差線II-IIに沿う図1に従うクランプ装置を示す図であり、対象物がハウジングの中央に保持され、キャリア部品の形式のねじ込みピン(threaded pin)によってクランプスリーブに取り付けられている。
図3a図1に従うクランプ装置の平面図であり、クランプスライドは開いている。
図3b】クランプ状態における、図3aに従うクランプ装置を示す図である。
図4a図3bに従うクランプ装置の拡大部分と、クランプスライド、ピボットピン及び作動要素の間の連結を示す図である。
図4b】2つのピボットピンの自由端を収容するために作動要素に加工された2つの案内溝の拡大部分を示す図である。
図5】クランプスライドのうちの1つ及び作動要素及び接合部と係合している、ピボットピンの1つの拡大部分を示す図である。
図6】斜視図にて、駆動式に2つ一組になって接続している6つの図1に従うクランプ装置を示す図である。
図7】電気モータと図1に従うクランプ装置の間の駆動接続の拡大図である。
図8図1に従うクランプ装置を示す図であり、そのハウジング内に電気モータが配され、駆動的に作動要素に結合している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、零点クランプ装置1の構成部品の配置を示し、それにより対象物2が高い再現性でセンタリングされ(心出しされ)、それに固定される。対象物2は工具と、加工すべき工作物と又は平坦な構成部品と考えられる。しかしながら、クランプ装置1はまた、互いに離間した多数のパレットや他の構造物、支持フレームなどを支持するために使用されてもよい。
【0018】
クランプすべきそれぞれの対象物2は、対象物2のクランプ状態において、ハウジング4に設けられた丸い収容開口5の中心点を形成するセンタリング軸6に整列されなければならない。対象物2は収容開口5に直接挿入されてもよく、又はクランプスリーブの形状のキャリア部品が挿入されてもよく、対称軸3を有する。回転可能に対称的なクランプスリーブ32が使用されるとき、対象物2はそこにプレアセンブルされ(予め組み立てられ)、クランプ状態が達成されるとすぐに対称軸3はセンタリング軸6と同軸に延びる。
【0019】
クランプ装置1はハウジング4から成り、その中央には収容開口5が組み込まれている。クランプスリーブ32を固定するために、2つの対向するクランプスライド7,8が設置され、それらは穴9にハウジング4に軸方向に移動可能な配置で設けられる。クランプ状態では、クランプスライド7,8はクランプスリーブ32に作用し、それを固定する。このように、クランプスライド7,8はハウジング4に組み込まれた穴9に挿入され、クランプスライド7,8及び穴9の長手軸10は互いに同軸である。収容開口5のセンタリング軸6と長手軸10は、互いに直角であり、2つの軸6と10の中心点で交差する。
【0020】
長手軸10と平行であって、従ってクランプスライド7,8と平行であってそれらから離間して、作動要素11が具備されており、作動要素はハウジング4に加工された穴9に回転可能に設置されている。互いに対向して配置された作動要素11の2つの自由端は、外側から自由にアクセス可能であり、それにより作動要素11は手動で、例えばスクリュードライバによって又は電気モータによって機械的に駆動され又は回転される。作動要素11は従って、長手軸10と平行に延びそれから離間した回転軸12を有する。2つの駆動開口20が、作動要素11の自由端の領域にハウジング4に設けられている。
【0021】
同期して移動させるべき作動要素11とクランプスライド7,8の間の駆動接続を実現するために、それぞれ長手軸10及び回転軸12に対して本質的に垂直である2つのピボットピン14,15がハウジング4内に設置される。作動要素11の回転運動を伝達するために、2つのらせん状に整列された案内溝18が作動要素11の外装表面に加工され、そこにピボットピン14及び15のそれぞれの第1自由端16が挿入され、こうしてそれらの間の駆動接続が形成される。この力伝達位置から距離を置いて、ピボットピン14及び15の第2自由端17がハウジング4に割り当てられた接合部21に挿入される。従って、ピボットピン14,15は作動要素11とそれぞれの接合部21の間に挿入され、これら構成部品によって特定される距離を繋ぐ(橋渡しする)。
【0022】
加えて、クランプスライド7,8はそれぞれ、それぞれのピボットピン14,15が通過する通り穴(貫通口)13を有する。
【0023】
例示の実施形態では、通り穴13は完全に閉じている。しかしながら、それは、U形チャネル又は案内溝として設計されてもよい。
【0024】
図2は、どのようにして対象物2がねじ込みピン(止めねじ)31によりクランプスリーブ32にまず固定されるかを示す。ねじ穴35がクランプスリーブ32に組み込まれており、そこにねじ込みピン31がねじ込まれ、これによりそれは対象物2をクランプスリーブ32に連結する。対象物2をクランプスリーブ32にセンタリング(心出し)するために、スリーブはリング形センタリング表面36を有し、それに対象物2が遊び無しで当接する。このようにして、クランプ装置1上の対象物2の最も早い可能な交換又は取り替えを補償するために、非常に多数の同一又は異なって構成された対象物2が同一のクランプスリーブ32に予め組み立てられる。
【0025】
さらに、外周心出しレセプタクル33がクランプ装置32に加工され、それは、示されたその下側領域に傾斜平面又は斜め平面34を有し、該平面はクランプ工程中に2つのクランプスライド7,8と相互作用する。クランプスライド7,8とクランプスリーブ32のセンタリング表面36の間のクランプ状態においてセルフロッキング(自己ロック)を実現するために、斜め平面34は水平面に対して特定の角度で傾斜している。同時に、斜め平面34の水平傾斜はさらに、クランプスライド7,8の半径方向クランプ力を軸方向力成分に変換し、それによりクランプスリーブ32及びしたがって対象物2はハウジング4の内部に押し付けられ又は引っ張られる。クランプスライド7,8は、センタリング表面34の傾斜とは反対方向に整列されたクランプ表面を有する。加えて、収容開口5はその入口領域において断面が円錐形であり、従ってクランプスリーブ32のための別なセンタリング表面40を形成し、それに対してクランプスリーブがクランプ工程中遊び無しで押し付けられる。
【0026】
図3a及び3bは、クランプ工程及びロック解除の移動シーケンスをそれぞれ示す。作動要素11が所定方向、例えば時計回りに回転されるとすぐに、ピボットピン14,15の第1自由端16が、案内溝18のらせん状設計のために収容開口5の方向に、すなわちハウジング4の中心の方向に移動する。この移動はピッチ円に対応する。ピボットピン14,15の傾斜運動(傾斜移動)は、ピボットピン14,15とクランプスライド7,8の駆動結合によってそれぞれのクランプスライド7又は8に直接伝達される。ピボットピン14,15は、クランプスライド7,8に加工された通り穴13と係合し、その場合、クランプスライド7,8は収容開口5の方向に同期して半径方向に移動され、これは、クランプスライド7,8がクランプスリーブ32と対応的にクランプ接触してこれ(クランプスリーブ)をハウジング4の内部に引き込んで、従って遊び無しで収容開口5のセンタリング表面40に押し付けられるまで生じる。
【0027】
接合部21は、作動要素11に対向するピボットピン14,15の傾斜又は回動運動を支持するために設けられる。接合部21は、ハウジング4に加工されたねじ穴35にねじ込まれるベアリングピン37から成る。それぞれのピボットピン14,15に面するベアリングピン37の自由端は、カップ形状の内側輪郭を有し、ピボットピン14,15の第2自由端17はボール頭(ball head, spherical head)として設計されている。ピボットピン14,15が作動要素11の領域でそれぞれの長手軸19周りに移動できるように、自由端17とベアリングピン37の内側輪郭のそれぞれの幾何学的寸法は互いに適合される。したがって、ベアリングピン37とピボットピン14,15の第2自由端17は、回転中心であって、その周りをピボットピン14,15の第1自由端16の回動運動が円経路上で生じる回転中心を形成する。
【0028】
作動要素11は、2つの止め輪24aによってハウジング4内に固定される。止め輪はそれぞれ、収容開口20の領域に位置し、止め輪によって作動要素が軸方向に回転できるように保持される。
【0029】
ピボットピン14,15及び4つのピン37がハウジング4に設置されるとすぐに、ゴミがハウジング4の内部に入るのを防止するために、ベアリングピン37の挿入のためのそれぞれの開口はシーリングブッシュ38によって水密又は気密な状態で閉じられてもよい。
【0030】
力及び運動の伝達のための幾何学的構造が図4aに示されている。作動要素11に組み込まれた2つの案内溝18は、互いに角度aで傾斜している。案内溝18の中心線の交差点は純粋に仮想であり、ハウジング4の外側に位置する。本発明に本質的である複数の構成部品のこの概略的配置によって、作動要素11の回転運動の、クランプスライド7,8の同期した半径方向送り運動への変換が、ピボットピン14,15の円運動と接合部21でのそれらの支持によって説明される。
【0031】
図4bは、作動要素11における2つの案内溝18の構成を示す。案内溝18は2つの異なる傾斜又はピッチを有する、というものクランプスライド7,8の送り運動がそれらの送りの間高速で生じるべきだからである。小さな作動力がこのために必要とされ、それにより基準軸に対する案内溝18のピッチ又は傾斜はクランプ工程中のピッチ又は傾斜よりも大きくてもよい。
【0032】
第1傾斜角は図4bで概略的にq1として描かれ、第2傾斜角はq2として描かれる。それぞれの開始点は参照番号29で記され、転移点は参照番号30で記される。転位点30は、クランプスリーブ32のセンタリング表面34へのクランプスライド7,8の接触位置に割り当てられている。クランプスライド7,8の完全に開いた状態から出発して、それらスライドはまず、クランプスリーブ32の方向に傾斜角q1で開始点29まで移動する。小さな作動力だけがこの場合に必要とされる。クランプスライド7,8がクランプスリーブ32とアクティブに接触(作用接触)するとすぐに、ピボットピン14,15の第1自由端16は第2傾斜角q2の領域-転位点-にあり、それは送り速度を減少させ、同時に第1傾斜角q1と比較して伝達される作動力を相当増大させる。
【0033】
図5は、作動要素11とピボットピン14,15のうちの1つの間の駆動接続、ピボットピン14,15の1つのその設置及び接合部21での支持を示す。ピボットピン14,15がクランプスライド7,8において傾斜したり詰まったりするのを防止するため、ピボットピン14,15が挿通される通り穴13は広くなっている。長手軸10の領域に設けられた通り穴13の直径D1は、それぞれのクランプスライド7,8の外側に設けられた直径D2より小さい。ピボットピン14,15の幅Bは内径D1に一致する。よって、それぞれのピボットピン14,15は、その位置にかかわらず通り穴13の内径D1に環状接触し、回転中に作動要素11で生成される作動力によってクランプスライド7,8に伝達される。
【0034】
図6は、本発明に従う複数のクランプ装置1のアセンブリを示す。この場合、4つのクランプ装置1が対象物2を支持する。2つの隣接するクランプ装置1はシャフト39を介して互いに結合でき、それによりそれぞれの作動要素11はシャフト39を介して駆動アクティブ接続している。これによって、複数のクランプ装置1を、例えば電気モータ25によって同時に駆動することが可能となる。2つの更なるクランプ装置1は対象物2を固定しない。しかしながら、それらはドライブトレインの一部である。したがって、動力伝達が直径D1の領域でリング表面に沿って生じる。
【0035】
図7は、どのようにして外部電気モータ25が作動要素11に接続されるかを示す。電気モータ25はバッテリー29によって又は電気ケーブル27を介して図示しない電源に接続でき、作動要素11の移動のための必要なエネルギーを供給することができる。
【0036】
図8は、電気モータ25及びバッテリー又は誘導エネルギー転移装置28がクランプ装置1のハウジング4の内側に取り付けられることを示す。図8に従って設計されたクランプハウジング4が電気モータ25を必要としない複数のクランプ装置1を駆動させられる点で、図8及び図6に示される装置は組み合わされる。結局、ユーザは、独立した電気駆動部を使用せずに複数のクランプ装置1の複数のモジュールを相互に連結でき、この一連のクランプ装置1におけるモジュールの1つは1つの電気モータ25を有する。電気モータ25を装備したクランプ装置1のモジュールは、ドライブトレインのどの位置に位置してもよい。
【0037】
既存の説明において、クランプスリーブ32が収容開口5に挿入されていて、クランプ状態の間センタリング位置に固定されている例示の実施形態を参照されたい。ゆえに、クランプスリーブ32は、対象物2、例えば工作物2、工具又はパレットのためのキャリア部品である。どの当業者も、それぞれの対象物2が収容開口5に直接挿入できて、位置を指向された及びセンタリングされた配置でそこに保持され得るように、クランプスリーブ32に合うように整形された保持輪郭がそれぞれの対象物2に加工されなければならないことを理解する。
【符号の説明】
【0038】
2 対象物
4 ハウジング
5 収容開口
6 センタリング軸
7,8 クランプスライド
10 長手軸
11 作動要素
12 回転軸
13 通り穴
14,15 ピボットピン
18 案内溝
21 接合部
32 キャリア部品
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8