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特許7386115インクジェットインクセット、プリント物の製造方法およびプリント物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】インクジェットインクセット、プリント物の製造方法およびプリント物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20231116BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C09D11/40
B41M5/00 100
B41M5/00 120
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020051497
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147572
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 明広
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227812(JP,A)
【文献】特開2018-080263(JP,A)
【文献】特開2021-095533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/00
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクとして、黄色インク、赤色インクおよび青色インクを含み、
前記黄色インク、前記赤色インクおよび前記青色インクは、それぞれ、顔料と、バインダー樹脂と、分散剤と、溶剤とを含み、
前記顔料の平均粒子径は、120~250nmであり、
前記黄色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Yellow 138、150、151、154および184からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含み、
前記赤色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Red 122、179、202、254、264およびC.I.Pigment Violet 19からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含み、
前記青色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Blue 15:3を含む、インクジェットインクセット。
【請求項2】
前記黄色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長530~580nmにおける平均光透過率が50~90%であり、
前記赤色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長630~680nmにおける平均光透過率が50~90%であり、
前記青色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長780~830nmにおける平均光透過率が50~90%である、請求項1記載のインクジェットインクセット。
【請求項3】
前記黄色インク、前記赤色インクおよび前記青色インクは、それぞれ、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長280~380nmにおける平均光透過率が20%以下である、請求項1または2記載のインクジェットインクセット。
【請求項4】
前記黄色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてb*≧65を満たし、
前記赤色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてa*≧40を満たし、
前記青色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてb*≦-35を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェットインクセット。
【請求項5】
前記バインダー樹脂は、フッ素樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載のインクジェットインクセット。
【請求項6】
前記フッ素樹脂は、フルオロエチレンとビニルモノマーとの共重合体である、請求項5記載のインクジェットインクセット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェットインクセットを用いて、インクジェット方式により基材にインクを付与する印刷工程と、
前記インクを乾燥させる乾燥工程とを含む、プリント物の製造方法。
【請求項8】
基材と、インクセットを構成するインクが前記基材上に付与されたインクジェット画像層とを含み、
前記インクジェット画像層は、黄色インク、赤色インクおよび青色インクを含み、
前記黄色インク、前記赤色インクおよび前記青色インクは、それぞれ、顔料と、バインダー樹脂と、分散剤とを含み、
前記顔料の平均粒子径は、120~250nmであり、
前記黄色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Yellow 138、150、151、154および184からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含み、
前記赤色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Red 122、179、202、254、264およびC.I.Pigment Violet 19からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含み、
前記青色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Blue 15:3を含む、プリント物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインクセット、プリント物の製造方法およびプリント物に関する。より詳細には、本発明は、表現し得る色域が広く、インクジェット画像層の透明性が優れ、基材に形成された意匠を損ないにくく、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすいプリント物を作製し得るインクジェットインクセット、プリント物の製造方法およびプリント物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐候性の優れたプリント物を作製するためのインクジェットインクを含むインクジェットインクセットが種々開発されている。特許文献1には、無機顔料を用いたインクジェットインクセットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6366669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインクジェットインクセットは、無機顔料を含む。しかしながら、無機顔料を含むインクジェットインクセットは、表現し得る色域が狭く、広範な色域のプリント物を作製することが難しい。これに対し、有機顔料を用いて得られるプリント物は、経時的に、所定の色相(たとえば黄色や赤色)が退色しやすい。その結果、プリント物は、長期間にわたって所望の意匠が維持されにくい。また、たとえば、インクジェットインクは、シルバー系やパール系の意匠が表現されたプリント物を作製する用途においても多用されている。シルバー系の意匠は、微細なアルミ箔を含む塗料を塗工し、その上にインクジェットインクで加飾することにより形成され得る。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、所定の顔料を用いることにより広範な色域の意匠を表現することができ、インクジェット画像層の透明性が優れ、基材に形成された意匠を損ないにくく、かつ、得られた意匠から所定の色相のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすいインクジェットインクセット、プリント物の製造方法およびプリント物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のインクジェットインクセット、プリント物の製造方法およびプリント物には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)インクとして、黄色インク、赤色インクおよび青色インクを含み、前記黄色インク、前記赤色インクおよび前記青色インクは、それぞれ、顔料と、バインダー樹脂と、分散剤と、溶剤とを含み、前記顔料の平均粒子径は、120~250nmであり、前記黄色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Yellow 138、150、151、154および184からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含み、前記赤色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Red 122、179、202、254、264およびC.I.Pigment Violet 19からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含み、前記青色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Blue 15:3および15:4のうち少なくともいずれか1種を含む、インクジェットインクセット。
【0008】
このような構成によれば、黄色インク、赤色インクおよび青色インクは、顔料として、所定の顔料が選択されている。このようなインクを含むインクセットは、広範な色域の意匠を表現することができる。また、選択された所定の顔料は、それぞれの色相(黄色、赤色、青色)の耐候性が同程度である。その結果、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【0009】
(2)前記黄色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長530~580nmにおける平均光透過率が50~90%であり、前記赤色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長630~680nmにおける平均光透過率が50~90%であり、前記青色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長780~830nmにおける平均光透過率が50~90%である、(1)記載のインクジェットインクセット。
【0010】
このような構成によれば、得られるインクジェット画像層は、透明性が高い。その結果、得られるプリント物は、基材に形成された意匠を損ないにくい。
【0011】
(3)前記黄色インク、前記赤色インクおよび前記青色インクは、それぞれ、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長280~380nmにおける平均光透過率が20%以下である、(1)または(2)記載のインクジェットインクセット。
【0012】
このような構成によれば、得られるインクジェット画像層は、紫外光域の透過率が低く抑えられている。その結果、得られるプリント物は、インクジェット画像層中の顔料がより損傷されにくく、耐候性が優れる。
【0013】
(4)前記黄色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてb*≧65を満たし、前記赤色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてa*≧40を満たし、前記青色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてb*≦-35を満たす、(1)~(3)のいずれかに記載のインクジェットインクセット。
【0014】
このような構成によれば、インクセットは、得られるプリント物の発色性に優れるという利点がある。
【0015】
(5)前記バインダー樹脂は、フッ素樹脂である、(1)~(4)のいずれかに記載のインクジェットインクセット。
【0016】
このような構成によれば、得られるプリント物は、より優れた耐候性を示す。
【0017】
(6)前記フッ素樹脂は、フルオロエチレンとビニルモノマーとの共重合体である、(5)記載のインクジェットインクセット。
【0018】
このような構成によれば、得られるプリント物は、より優れた耐候性を示す。
【0019】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載のインクジェットインクセットを用いて、インクジェット方式により基材にインクを付与する印刷工程と、前記インクを乾燥させる乾燥工程とを含む、プリント物の製造方法。
【0020】
このような構成によれば、得られるプリント物は、広範な色域の意匠が表現され得る。また、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【0021】
(8)基材と、インクセットを構成するインクが前記基材上に付与されたインクジェット画像層とを含み、前記インクジェット画像層は、黄色インク、赤色インクおよび青色インクを含み、前記黄色インク、前記赤色インクおよび前記青色インクは、それぞれ、顔料と、バインダー樹脂と、分散剤とを含み、前記顔料の平均粒子径は、120~250nmであり、前記黄色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Yellow 138、150、151、154および184からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含み、前記赤色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Red 122、179、202、254、264およびC.I.Pigment Violet 19からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含み、前記青色インクにおける前記顔料は、C.I.Pigment Blue 15:3および15:4のうち少なくともいずれか1種を含む、プリント物。
【0022】
このような構成によれば、プリント物は、広範な色域の意匠が表現され得る。また、プリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、所定の顔料を用いることにより広範な色域の意匠を表現することができ、かつ、得られた意匠から所定の色相のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすいインクジェットインクセット、プリント物の製造方法およびプリント物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<インクジェットインクセット>
本発明の一実施形態のインクジェットインクセット(以下、インクセットという)は、インクとして、黄色インク、赤色インクおよび青色インクを含む。黄色インク、赤色インクおよび青色インクは、それぞれ、顔料と、バインダー樹脂と、分散剤と、溶剤とを含む。顔料の平均粒子径は、120~250nmである。黄色インクにおける顔料は、C.I.Pigment Yellow 138、150、151、154および184からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含む。赤色インクにおける顔料は、C.I.Pigment Red 122、179、202、254、264およびC.I.Pigment Violet 19からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含む。青色インクにおける顔料は、C.I.Pigment Blue 15:3および15:4のうち少なくともいずれか1種を含む。本実施形態のインクセットは、黄色インク、赤色インクおよび青色インクにおいて、顔料として、所定の顔料が選択されている。このようなインクを含むインクセットは、広範な色域の意匠を表現することができる。また、選択された所定の顔料は、それぞれの色相(黄色、赤色、青色)の耐候性が同程度である。その結果、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。以下、それぞれについて説明する。
【0025】
本実施形態のインクセットは、インクとして、黄色インク、赤色インクおよび青色インクを含む。なお、インクセットは、他の色相のインク(たとえば黒色インクや彩色系インクなど)を含んでもよい。
【0026】
(黄色インク)
黄色インクは、顔料(黄色顔料)と、バインダー樹脂と、分散剤と、溶剤とを含む。
【0027】
・黄色顔料
黄色顔料は、C.I.Pigment Yellow 138、150、151、154および184からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含む。これらの中でも、黄色顔料は、より退色しにくく、他のインクとの退色の程度、すなわち耐候性の程度が近い点から、C.I.Pigment Yellow 150、151および184からなる群れから選択される少なくともいずれか1種の黄色顔料を含むことが好ましい。黄色顔料は併用されてもよい。
【0028】
黄色インク中の黄色顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、黄色顔料の含有量は、黄色インク中、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。また、黄色顔料の含有量は、黄色インク中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。黄色顔料の含有量が上記範囲内であることにより、得られるインクセットは、より広範な色域の意匠を表現しやすい。加えて、選択された黄色顔料は、他のインクの顔料と耐候性が同程度である。その結果、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【0029】
・バインダー樹脂
バインダー樹脂は、たとえば、インクの粘度を調整したり、得られるプリント物の硬度の調整や形状を制御するために含有される。
【0030】
バインダー樹脂の種類は特に限定されない。一例を挙げると、バインダー樹脂は、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アイオノマー樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、アクリロニトリルアクリレートスチレン共重合樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレンスチレン共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリスチレンマレイン酸共重合樹脂、ポリスチレンアクリル酸共重合樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート樹脂、ブチラール樹脂、ホルマール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、およびこれらの共重合樹脂等が例示される。バインダー樹脂は、膜強度、粘度、インクジェットインクの残部粘度、顔料の分散安定性、熱安定性、非着色性、耐水性、耐薬品性を考慮し、適宜選択され得る。バインダー樹脂は、併用されてもよい。
【0031】
これらの中でも、バインダー樹脂は耐熱性および耐候性に優れているという観点から、フッ素樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂であることが好ましく、より耐熱性の優れたインクが得られ、かつ、得られるプリント物の耐候性がより優れる観点から、フッ素樹脂であることが好ましい。
【0032】
・フッ素樹脂
フッ素樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、フッ素樹脂は、各種含フッ素モノマーと、ビニルモノマーとの共重合体であることが好ましい。また、フッ素樹脂は、ビニルモノマーの中でも、ビニルエーテルモノマーとの共重合体であることがより好ましい。
【0033】
含フッ素モノマーとしては、フルオロエチレンであることが好ましく、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等が例示される。これらの中でも、優れた耐候性を示すプリント物が得られる点から、含フッ素モノマーは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンであることがより好ましい。
【0034】
ビニルモノマーは、非イオン性モノエチレン不飽和モノマー、二官能性ビニルモノマー等が例示される。非イオン性モノエチレン不飽和モノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。(メタ)アクリル酸エステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が例示される。二官能性ビニルモノマーは、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタン-ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が例示される。
【0035】
ビニルエーテルは、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が例示される。
【0036】
含フッ素モノマーと、ビニルモノマーとの共重合割合は特に限定されない。一例を挙げると、共重合割合は、含フッ素モノマー:ビニルモノマー=3~1:1~2(重量比)である。共重合割合がこのような範囲内である場合、得られるプリント物は、優れた耐候性を示しやすい。なお、重合方法は特に限定されない。一例を挙げると、重合方法は、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等である。
【0037】
得られるフッ素樹脂は、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。これらの中でも、フッ素樹脂は、フルオロエチレンとビニルモノマーとの交互共重合体であることが好ましい。このようなフッ素樹脂を含むプリント物は、耐候性がさらに優れる。なお、本実施形態において、「交互共重合体」とは、フルオロエチレン単位と、ビニルモノマー単位との結合が、フルオロエチレン単位とフルオロエチレン単位との結合、および、ビニルモノマー単位とビニルモノマー単位との結合の合計よりも、はるかに多く含まれる共重合体を意味する。具体的には、本実施形態の交互共重合体は、フルオロエチレン単位と、ビニルモノマー単位との結合を、90~100モル%含むことが好ましい。なお、本実施形態において、交互共重合体は、少数のランダム結合部分やブロック結合部分を含んでいてもよい。また、上記結合は、たとえば1H NMR測定および29Si NMR測定等により区別し得る。また、交互共重合性の分析方法については、たとえば、Journal of Applied Polymer Science, Vol. 106, 1007-1013 (2007)等を参照し得る。
【0038】
本実施形態のフッ素樹脂は、固形分換算で、ジエチレングリコールジエチルエーテルに対する溶解度が500(g/L)以上であることが好ましく、1000(g/L)以上であることがより好ましい。インクは、ジエチレングリコールジエチルエーテルに対する溶解度が上記範囲内である場合、長期的にフッ素樹脂の再析出が起こりにくく、インクジェットプリント時における吐出安定性がより優れる。
【0039】
本実施形態のフッ素樹脂は、水酸基価が20mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、フッ素樹脂は、水酸基価が100mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以下であることがより好ましい。水酸基価が上記範囲内である場合、インクは、硬化性が優れ、かつ、インクジェットプリント時における吐出安定性がより優れる。水酸基価が20mgKOH/g未満である場合、硬化剤と反応しにくい傾向がある。一方、水酸基価が100mgKOH/gを超える場合、インクの分散系が不安定となりやすく、吐出安定性が低下しやすい傾向がある。なお、本実施形態において、水酸基価とは、試料(樹脂の固形分)1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を表し、JIS K 0070に記載の方法に準ずる方法により測定される値である。
【0040】
フッ素樹脂は、酸価が5mgKOH/g以下であることが好ましく、4mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が5mgKOH/g以下である場合、インクは、分散系が安定しやすく、吐出安定性が優れる。一方、酸価が5mgKOH/gを超える場合、インクは、分散系が不安定となりやすく、吐出安定性が低下しやすい傾向がある。なお、本実施形態において、酸価とは、試料(樹脂の固形分)1g中に含まれる酸性成分を中和するために要する水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 0070に記載の方法に準ずる方法により測定される値である。
【0041】
フッ素樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されない。一例を挙げると、Mwは、5000以上であることが好ましく、8000以上であることがより好ましい。Mwは、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましい。Mwが上記範囲内である場合、フッ素樹脂は、溶媒に溶解しやすい。また、インクは、乾燥性が改善されており、インクジェットプリント時における吐出安定性が優れている。さらに、得られるプリント物は、表面のベタツキが少なく、ブロッキング防止性が優れている。Mwが5000未満である場合、得られるプリント物は、ベタツキが生じやすく、ブロッキング防止性が低下する傾向がある。一方、Mwが50000を超える場合、フッ素樹脂の溶解性が低下したり、インクジェットプリント時におけるインクの吐出安定性が低下する傾向がある。なお、本実施形態において、Mwは、たとえばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値であり、高速GPC装置(東ソー(株)製、HLC-8120GPC)を用いて測定し得る。
【0042】
・アクリル樹脂
アクリル樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル樹脂は、アクリル酸エステル(アクリレート)またはメタクリル酸エステル(メタクリレート)の重合体が例示される。より具体的には、アクリル樹脂は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルへキシル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル等のヒドロキシ基含有アクリル酸エステル類;メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル等のヒドロキシ基含有メタクリル酸エステル類などの重合体が例示される。これらは併用されてもよい。
【0043】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されない。一例を挙げると、Mwは、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。Mwは、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましい。Mwが上記範囲内である場合、このようなアクリル樹脂を含むインクは、インクジェットプリント時における吐出安定性が優れている。
【0044】
・塩化ビニル樹脂
塩化ビニル樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルと、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、マレイン酸、ビニルアルコール等の他のモノマーとの共重合体等が例示される。これらの中でも、塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルおよび酢酸ビニルに由来する構成単位を含む共重合体(塩ビ酢ビ共重合体)であることが好ましい。
【0045】
塩ビ酢ビ共重合体は、たとえば懸濁重合によって得ることができる。塩ビ酢ビ共重合体は、塩化ビニル単位を70~90質量%含有することが好ましい。上記範囲であれば、塩ビ酢ビ共重合体は、インク中に安定して溶解するため長期の保存安定性が優れる。また、インクは、吐出安定性が優れる。
【0046】
塩ビ酢ビ共重合体は、塩化ビニル単位および酢酸ビニル単位のほかに、必要に応じて、その他の構成単位を備えていてもよい。一例を挙げると、その他の構成単位は、カルボン酸単位、ビニルアルコール単位、ヒドロキシアルキルアクリレート単位等が例示される。これらの中でも、その他の構成単位は、ビニルアルコール単位であることが好ましい。
【0047】
塩化ビニル樹脂の数平均分子量(Mn)は特に限定されない。一例を挙げると、塩化ビニル樹脂のMnは、10000以上であることが好ましく、12000以上であることがより好ましい。また、Mnは、50000以下であることが好ましく、42000以下であることがより好ましい。なお、Mnは、GPCによって測定することが可能であり、ポリスチレン換算とした相対値として求めることができる。
【0048】
・シリコーン樹脂
シリコーン樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、シリコーン樹脂は、メチル系ストレートシリコーンレジン(ポリジメチルシロキサン)、メチルフェニル系ストレートシリコーンレジン(メチル基の一部をフェニル基に置換したポリジメチルシロキサン)、アクリル樹脂変性シリコーンレジン、ポリエステル樹脂変性シリコーンレジン、エポキシ樹脂変性シリコーンレジン、アルキッド樹脂変性シリコーンレジンおよびゴム系のシリコーンレジン等が例示される。これらは併用されてもよい。これらの中でも、シリコーン樹脂は、メチル系ストレートシリコーンレジン、メチルフェニル系ストレートシリコーンレジン、アクリル樹脂変性シリコーンレジンが好ましい。
【0049】
シリコーン樹脂は、有機溶媒等に溶解されたものであってもよい。有機溶媒は、キシレン、トルエン等が例示される。
【0050】
シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)は特に限定されない。一例を挙げると、シリコーン樹脂のMnは、10000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましい。また、Mnは、5000000以下であることが好ましく、3000000以下であることがより好ましい。なお、Mnは、GPCによって測定することが可能であり、ポリスチレン換算とした相対値として求めることができる。
【0051】
バインダー樹脂全体の説明に戻り、インク中におけるバインダー樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、バインダー樹脂は、固形分換算で、インク中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、バインダー樹脂は、インク中、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。バインダー樹脂の含有量が1質量%未満である場合、バインダーとしての所望の性能が得られにくく、基材への画像密着性などが低下する傾向がある。一方、バインダー樹脂の含有量が40質量%を超える場合、インクの粘度が高くなり、インクジェットプリント時における吐出安定性が低下する傾向がある。
【0052】
中でも、バインダー樹脂としてフッ素樹脂が含まれる場合には、インク中におけるフッ素樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、固形分換算で、フッ素樹脂は、インク中、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、フッ素樹脂は、インク中、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。フッ素樹脂の含有量が2質量%以上である場合、インクは、インクジェットプリント時における吐出安定性が優れる傾向がある。一方、フッ素樹脂の含有量が40質量%を超える場合、インクの粘度が高くなり、インクジェットプリント時における吐出安定性が低下する傾向がある。
【0053】
・分散剤
分散剤は、上記顔料を分散させるために配合される。分散剤は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高分子分散剤等である。分散剤は併用されてもよい。
【0054】
アニオン系界面活性剤は、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩およびこれらの置換誘導体等が例示される。
【0055】
ノニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーおよびこれらの置換誘導体等が例示される。
【0056】
高分子分散剤は、酸価と塩基価を両方持ち、かつ、酸価が塩基価より大きいものが、より安定な分散特性が得られる観点から好ましい。一例を挙げると、高分子分散剤は、味の素ファインテクノ(株)製のPBシリーズ、川研ファインケミカル(株)製のヒノアクトシリーズ、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ、楠本化成(株)製のDISPARLONシリーズ、BASFジャパン(株)製のEfka(登録商標)シリーズ等が例示される。
【0057】
分散剤の含有量は、分散すべき顔料の種類および含有量によって適宜決定される。一例を挙げると、分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、150質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。分散剤の含有量が5質量部未満である場合、顔料が分散されにくい傾向がある。一方、分散剤の含有量が150質量部を超える場合、原料コストが上がったり、顔料の分散が阻害される傾向がある。
【0058】
・溶剤
溶剤は、インクにおいて、バインダー樹脂を溶解するために配合される。溶剤の種類は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤は、水、グリコールエーテル系溶剤、アセテート系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、脂肪酸エステル系溶剤、芳香族系溶剤等である。溶剤は併用されてもよい。本実施形態の溶剤は、これらの中でも、グリコールエーテル系溶剤およびアセテート系溶剤のうち、少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。グリコールエーテル系溶剤およびアセテート系溶剤は、いずれも低粘度であり、かつ、比較的沸点が高い。そのため、これらを溶剤として含むインクは、乾燥性がより改善されており、インクジェットプリント時における吐出安定性がより優れている。
【0059】
グリコールエーテル系溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等が例示される。
【0060】
アセテート系溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-sec-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-sec-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-エトキシブチルアセテート、3-メチル-3-プロポキシブチルアセテート、3-メチル-3-イソプロポキシブチルアセテート、3-メチル-3-n-ブトキシエチルアセテート、3-メチル-3-イソブトキシブチルアセテート、3-メチル-3-sec-ブトキシブチルアセテート、3-メチル-3-tert-ブトキシブチルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート等が例示される。
【0061】
本実施形態の溶剤は、沸点が150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。また、溶剤は、沸点が300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。沸点が上記範囲内である場合、得られるインクは、乾燥性がより改善されており、インクジェットプリント時における吐出安定性がより優れている。また、インクによれば、滲みの少ない鮮明なプリント物が形成されやすい。溶剤の沸点が150℃未満である場合、インクがヘッドノズル付近で乾燥しやすくなり、吐出安定性が低下する傾向がある。一方、溶剤の沸点が300℃を超える場合、インクは乾燥しにくくなり、プリント物の形成時における乾燥工程に時間がかかりやすい。また、得られるプリント物は、画像が滲みやすい。
【0062】
溶剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤は、インク中、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤は、インク中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。溶剤の含有量が25質量%未満である場合、インクの粘度が高くなり、インクジェットプリント時における吐出安定性が低下する傾向がある。一方、溶剤の含有量が95質量%を超える場合、インク中に添加できる顔料やバインダー樹脂の割合が低くなり、所望の発色性や性能が得られにくい傾向がある。
【0063】
・任意成分
インクは、上記した顔料(黄色顔料)、バインダー樹脂、分散剤および溶剤のほか、インクジェットインクの分野において周知な任意成分を含有することができる。一例を挙げると、任意成分は、硬化剤、硬化触媒、耐候性向上剤(たとえば紫外線吸収剤、光安定剤等)、スリップ剤(レベリング剤)、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤等である。
【0064】
・硬化剤
硬化剤は、インクを硬化させるために配合され得る。硬化剤は特に限定されない。一例を挙げると、硬化剤は、カルボジイミド系硬化剤、アジリジン系硬化剤、金属キレート系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、メラミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、尿素系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリエチレンイミン系硬化剤、アクリルアミド系硬化剤等である。硬化剤は、併用されてもよい。これらの中でも、硬化剤は、イソシアネート系硬化剤を含んでいることが好ましい。これにより、このようなインクを用いて得られるプリント物は、耐候性がより優れる。
【0065】
イソシアネート系硬化剤を構成するイソシアネート樹脂は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する化合物であればよく、汎用型、難黄変型、無黄変型等のいずれも使用し得る。汎用型としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、TDIの3量化物であるイソシアヌレート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)が例示される。難黄変型としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が例示される。無黄変型としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDIおよび水添MDI等が例示される。これらの中でも、硬化剤は、無黄変型のブロックイソシアネートを含むことが好ましく、イソシアヌレート構造を有する無黄変型のブロックイソシアネートであることがより好ましい。このような硬化剤が配合されたインクは、より硬化性が優れる。また、このようなインクが用いられることにより、得られるプリント物は、耐候性がさらに優れる。そのため、プリント物は、さらに長期にわたり、所望の色彩を示しやすい。
【0066】
硬化剤の含有量は特に限定されない。バインダー樹脂の添加量などによっても変動するため、一義的には決定されない。一例を挙げると、硬化剤の含有量は、インク中、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、硬化剤の含有量は、インク中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。硬化剤の含有量が0.1質量%未満である場合、バインダー樹脂と充分に反応できず、所望の性能が得られない傾向がある。一方、硬化剤の含有量が20質量%を超える場合、バインダー樹脂に対して過剰添加のおそれがあり、得られるプリント物の耐候性が逆に低下する傾向がある。
【0067】
・硬化触媒
硬化触媒は、スズ、チタン、ジルコニウム、鉄、アンチモン、ビスマス、マンガン、亜鉛、アルミニウム等の金属の有機酸塩、アルコラートおよびキレート化合物;ヘキシルアミン、ドデシルアミンのようなアミン;酢酸ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミンのようなアミン塩;ベンジルトリメチルアンモニウムアセテートのような第4級アンモニウム塩;酢酸カリウムのようなアルカリ金属の塩等が例示される。より具体的には、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジオクチル酸ジブチルスズ、ジネオデカン酸ジメチルスズ、スタナスオクトエートなどの有機スズ化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトン)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンなどの有機チタン化合物等が例示される。これらは併用されてもよい。本実施形態では、硬化触媒は、スズ系の化合物であることが好ましく、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジネオデカン酸ジメチルスズ等のジアルキルスズ系化合物であることがより好ましく、ジラウリル酸ジブチルスズであることがさらに好ましい。硬化触媒としてジラウリル酸ジブチルスズが含まれる場合、得られるインクは、硬化性が優れる。
【0068】
硬化触媒が配合される場合の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、硬化触媒の含有量は、インク中、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。また、硬化触媒の含有量は、インク中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。硬化触媒の含有量が0.001質量%未満である場合、硬化触媒としての性能が充分に発揮されない傾向がある。一方、硬化触媒の含有量が5質量%を超える場合、インクの硬化性が高くなり、インクジェットプリント時における吐出安定性が低下する傾向がある。
【0069】
・耐候性向上剤
耐候性向上剤(たとえば紫外線吸収剤、光安定剤等)は、プリント物の耐候性を向上させるために好適に含有される。
【0070】
紫外線吸収剤は特に限定されない。一例を挙げると、紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン誘導体、サリチル酸誘導体等である。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’、5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾ-ル、2-{(2’-ヒドロキシ-3’,3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール等が例示される。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン等が例示される。トリアジン誘導体は、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル-4,6-{ビス(2,4-ジメチルフェニル)}-1,3,5-トリアジン、トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]]-1,3,5-トリアジン等が例示される。サリチル酸誘導体は、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニルサリシレート等が例示される。紫外線吸収剤は、併用されてもよい。
【0071】
紫外線吸収剤が配合される場合の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、紫外線吸収剤の含有量は、インク中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、紫外線吸収剤の含有量は、インク中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であることにより、プリント物は、耐候性が向上しやすい。
【0072】
光安定剤は特に限定されない。一例を挙げると、光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤等である。ヒンダードアミン系光安定剤は、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)カーボネート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノウンデカン、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-デカンジオアート等である。光安定剤は、併用されてもよい。
【0073】
光安定剤が配合される場合の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光安定剤の含有量は、インク中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、光安定剤の含有量は、インク中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。光安定剤の含有量が上記範囲内であることにより、プリント物は、耐候性が向上しやすい。
【0074】
インク全体の説明に戻り、インクの粘度は特に限定されない。一例を挙げると、インクの粘度は、2mPa・s以上であることが好ましく、5mPa・s以上であることがより好ましい。また、粘度は、50mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましい。粘度が上記範囲内であることにより、インクは、インクジェットヘッドからの吐出不良を生じにくく、吐出安定性が優れる。本実施形態において、インクの粘度は、B型粘度計(東機産業(株)製、TVB-20LT、ロータ回転数60rpm)を用いて測定することができる。なお、粘度を上記範囲内に調整する方法は特に限定されない。一例を挙げると、粘度は、各成分の添加量や、溶剤の種類および添加量によって調整され得る。粘度は、必要に応じて増粘剤等の粘度調整剤が使用されることにより調整されてもよい。
【0075】
インクの表面張力は特に限定されない。インクの表面張力は、25℃において、20dyne/cm以上であることが好ましく、22dyne/cm以上であることがより好ましい。また、インクの表面張力は、25℃において、40dyne/cm以下であることが好ましく、35dyne/cm以下であることがより好ましい。表面張力が上記範囲内である場合、インクは、吐出安定性が優れる。なお、本実施形態において、表面張力は、静的表面張力計(プレート法)(協和界面科学(株)製、CBVP-A3)を用いて測定することができる。
【0076】
(赤色インク)
赤色インクは、顔料(赤色顔料)と、バインダー樹脂と、分散剤と、溶剤とを含む。
【0077】
・赤色顔料
赤色顔料は、C.I.Pigment Red 122、179、202、254、264およびC.I.Pigment Violet 19からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含む。これらの中でも、赤色顔料は、より退色しにくく、他のインクとの退色の程度、すなわち耐候性の程度が近い点から、C.I.Pigment Red 254、264を含むことが好ましい。赤色顔料は併用されてもよい。
【0078】
赤色インク中の赤色顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、赤色顔料の含有量は、赤色インク中、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。また、赤色顔料の含有量は、赤色インク中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。赤色顔料の含有量が上記範囲内であることにより、得られるインクセットは、より広範な色域の意匠を表現しやすい。加えて、選択された赤色顔料は、他のインクの顔料と耐候性が同程度である。その結果、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【0079】
なお、赤色インクに含まれるバインダー樹脂、分散剤、溶剤および任意成分は、黄色インクに関連して上記したものと同様である。そのため、これらの成分に関する説明は省略する。また、赤色インクの物性は、黄色インクに関連して上記したインクの物性と同様である。
【0080】
(青色インク)
青色インクは、顔料(青色顔料)と、バインダー樹脂と、分散剤と、溶剤とを含む。
【0081】
青色顔料は、C.I.Pigment Blue 15:3および15:4のうち少なくともいずれか1種を含む。これらの中でも、青色顔料は、より退色しにくく、他のインクとの退色の程度、すなわち耐候性の程度が近い点から、C.I.Pigment Blue 15:4を含むことが好ましい。青色顔料は併用されてもよい。
【0082】
青色インク中の青色顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、青色顔料の含有量は、青色インク中、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。また、青色顔料の含有量は、青色インク中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。青色顔料の含有量が上記範囲内であることにより、得られるインクセットは、より広範な色域の意匠を表現しやすい。加えて、選択された青色顔料は、他のインクの顔料と耐候性が同程度である。その結果、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【0083】
なお、青色インクに含まれるバインダー樹脂、分散剤、溶剤および任意成分は、黄色インクに関連して上記したものと同様である。そのため、これらの成分に関する説明は省略する。また、青色インクの物性は、黄色インクに関連して上記したインクの物性と同様である。
【0084】
(黒色インク)
黒色インクは、本実施形態のインクセットにおいて、好適に含まれる。黒色インクは、顔料(黒色顔料)と、バインダー樹脂と、分散剤と、溶剤とを含む。
【0085】
黒色顔料は特に限定されない。一例を挙げると、黒色顔料は、カーボン系顔料(C.I.Pigment Black 7)、ビスマスマンガン系顔料、イットリウムマンガン系顔料、銅クロム系顔料(C.I.Pigment Black 28)、銅鉄マンガン系顔料(C.I.Pigment Black 26)、コバルト鉄クロム系顔料(C.I.Pigment Black 27)、酸化ルテニウム、コバルトマンガン系顔料、チタンマンガン系顔料等である。黒色顔料は併用されてもよい。これらの中でも、黒色顔料は、より退色しにくく、他のインクとの退色の程度、すなわち耐候性の程度が近い点から、カーボン系顔料を含むことが好ましい。黒色顔料は併用されてもよい。
【0086】
黒色インクが含まれる場合、黒色インク中の黒色顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、黒色顔料の含有量は、黒色インク中、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。また、黒色顔料の含有量は、黒色インク中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。黒色顔料の含有量が上記範囲内であることにより、得られるインクセットは、より広範な色域の意匠を表現しやすい。加えて、選択された黒色顔料は、他のインクの顔料と耐候性が同程度である。その結果、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【0087】
なお、黒色インクに含まれるバインダー樹脂、分散剤、溶剤および任意成分は、黄色インクに関連して上記したものと同様である。そのため、これらの成分に関する説明は省略する。また、黒色インクの物性は、黄色インクに関連して上記したインクの物性と同様である。
【0088】
インク全体の説明に戻り、それぞれのインクに含まれる上記黄色顔料、赤色顔料、青色顔料および好適に含まれる黒色顔料の平均粒子径は、120nm以上であればよく、130nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましい。また、平均粒子径は、250nm以下であればよく、245nm以下であることが好ましく、240nm以下であることがより好ましい。平均粒子径が120nm未満である場合、得られるプリント物は、インクジェット画像層の退色の程度、すなわち耐候性が劣りやすい。一方、平均粒子径が250nmを超える場合、インクは、インクジェット方式により基材に付与される際に、ノズル等に詰まりやすくなり、吐出安定性が低下しやすい。また、平均粒子径が250nmを超える場合、インクは、基材に形成された意匠の視認性を低下させやすい。したがって、平均粒子径が上記範囲内であることにより、得られるプリント物は、インクジェット画像層の透明性が優れる。そのため、基材に形成された意匠が損なわれにくい。また、インクの顔料として、上記所定の顔料が選択されている。このようなインクからなるインクセットは、広範な色域の意匠を表現することができる。加えて、選択された上記所定の顔料は、それぞれの色相(黄色、赤色、青色(および黒色))の耐候性が同程度である。その結果、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。なお、本実施形態において、平均粒子径は、Malvern Instruments社製のゼータサイザーナノシリーズを用いて、動的光散乱法により測定され得る。
【0089】
本実施形態のインク(黄色インク、青色インクおよび赤色インク)は、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層(膜厚20μm)の波長280~380nmにおける平均光透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。なお、インクの平均光透過率の下限は特に限定されない。なお、本実施形態において、平均光透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(UV-3600plus、(株)島津製作所製)を用いて、JIS R 3106に準じ、300~2500nmの波長域の光透過率(%)を1nm毎に測定することにより算出され得る。本実施形態のインクセットに含まれるインクは、得られるインクジェット画像層が上記平均光透過率の範囲内であることにより、インクジェット画像層における紫外光域の透過率が低く抑えられている。その結果、得られるプリント物は、インクジェット画像層中の顔料が損傷されにくく耐候性が優れる。
【0090】
また、本実施形態のインクセットに含まれるインクのうち、黄色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長530~580nmにおける平均光透過率が50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。また、黄色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長530~580nmにおける平均光透過率が90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。波長530~580nmにおける黄色インクからなるインクジェット画像層の平均光透過率が上記範囲内となる黄色インクが含まれていることにより、得られるプリント物は、黄色の可視光が透過されやすい。その結果、得られるプリント物は、基材に形成された意匠を損ないにくい。
【0091】
本実施形態のインクセットに含まれるインクのうち、赤色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長630~680nmにおける平均光透過率が50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。また、赤色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長630~680nmにおける平均光透過率が90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。波長630~680nmにおける赤色インクからなるインクジェット画像層の平均光透過率が上記範囲内となる赤色インクが含まれていることにより、得られるプリント物は、赤色の可視光が透過されやすい。その結果、得られるプリント物は、基材に形成された意匠を損ないにくい。
【0092】
本実施形態のインクセットに含まれるインクのうち、青色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長780~830nmにおける平均光透過率が50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。また、青色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層の、波長780~830nmにおける平均光透過率が90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。波長780~830nmにおける青色インクからなるインクジェット画像層の平均光透過率が上記範囲内となる青色インクが含まれていることにより、得られるプリント物は、青色の可視光が透過されやすい。その結果、得られるプリント物は、基材に形成された意匠を損ないにくい。
【0093】
本実施形態のインクセットに含まれるインクのうち、黄色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてb*≧65を満たし、赤色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてa*≧40を満たし、青色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてb*≦-35を満たすことが好ましい。このようなインクセットは、黄色インク、赤色インクおよび青色インクが、いずれも上記範囲を満たしていることにより、得られるプリント物の発色性に優れる。なお、本実施形態において、上記L*a*b*表色系におけるa*およびb*は、たとえば、分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM-3700)を用いて測定することができる。
【0094】
黄色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてb*≧65を満たすことが好ましく、b*≧70を満たすことがより好ましい。
【0095】
赤色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてa*≧40を満たすことが好ましく、a*≧45を満たすことがより好ましい。
【0096】
青色インクは、膜厚20μmとなるよう塗布して得られるインクジェット画像層がL*a*b*表色系においてb*≦-35を満たすことが好ましく、b*≦-40を満たすことがより好ましい。
【0097】
本実施形態のインクセットは、インクジェット方式を採用したインクジェット装置を用いて基材に吐出することにより、基材上にインク画像を形成し、次いで、インクを硬化(乾燥)させることにより、プリント物を製造することができる。インクセットを構成するそれぞれのインクは、特定の顔料を含み、かつ、顔料の平均粒子径が120~250nmである。このように、本実施形態のインクにおいて使用される顔料は、平均粒子径が小さく、インクジェット画像層の透明性が優れる。そのため、基材に形成された意匠を損ないにくい。また、それぞれのインクの顔料として、所定の顔料が選択されている。このようなインクを含むインクセットは、広範な色域の意匠を表現することができる。加えて、選択された所定の顔料は、それぞれの色相(黄色、赤色、青色)の耐候性が同程度である。その結果、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【0098】
<プリント物の製造方法およびプリント物>
本発明の一実施形態のプリント物の製造方法は、インクジェットインクセットを用いて、インクジェット方式により基材にインクを付与する印刷工程と、インクを乾燥させる乾燥工程とを含む。本実施形態のプリント物の製造方法は、これら印刷工程および乾燥工程を含んでいればよく、他の工程は特に限定されない。以下、それぞれについて説明する。
【0099】
・印刷工程
印刷工程は、上記したインクを、インクジェット方式により基材上に付与する工程である。
【0100】
インクジェット方式によりインクセットを構成するインクを基材に付与する方式は特に限定されない。このような方式は、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式等の連続方式、ピエゾ方式、パルスジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電吸引方式等のオン・デマンド方式等が例示される。
【0101】
インクが付与される基材は特に限定されない。一例を挙げると、基材は、鋼板、アルミ、ステンレス等の金属板、アクリル、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル等のプラスチック板またはフィルム、窯業板、コンクリート、木材、ガラス等である。これらの基材は、プリント前に、前処理剤により処理されてもよい。前処理剤は、フッ素系塗料、シリコーン系塗料、アクリルシリコーン系塗料、アクリル系塗料、エポキシ系塗料、ウレタン系塗料等が例示される。これら前処理剤を基材に付与する方法は、スプレー法、ロールコーター法、カーテンフローコーター法、ハケ塗り法、ヘラ塗り法、浸漬法、インクジェット法等が例示される。また、本実施形態の基材は、表面に塗料が付与されることにより、各種意匠(たとえばシルバー系、パール系の意匠)が表現されていてもよい。本実施形態のプリント物の製造方法によれば、上記したインクセットに含まれるインクが付与される。インクは、顔料の平均粒子径が小さく、インクジェット画像層の透明性が優れる。そのため、基材にシルバー系の意匠等が形成されている場合であっても、それらの意匠が損なわれにくい。
【0102】
・乾燥工程
乾燥工程は、上記したインクを乾燥させる工程である。乾燥条件は特に限定されない。一例を挙げると、乾燥は、50~250℃で1~60分間の熱処理を行う。このような乾燥により、インク中の溶媒が取り除かれる。乾燥は、インクジェット画像層の滲みを防止するために、インクが基材に付与されたのと同時もしくは直後に行われることが好ましい。
【0103】
得られるプリント物は、基材と、インクセットを構成するインクが基材上に付与されたインクジェット画像層とを含む。インクジェット画像層は、黄色インク、赤色インクおよび青色インクを含む。なお、それぞれのインクは、上記した乾燥工程によって、溶剤が除去されている。そのため、付与された黄色インク、赤色インクおよび青色インクは、それぞれ、顔料と、バインダー樹脂と、分散剤とを含む。上記のとおり、顔料の平均粒子径は、120~250nmである。黄色インクにおける顔料は、C.I.Pigment Yellow 138、150、151、154および184からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含む。赤色インクにおける顔料は、C.I.Pigment Red 122、179、202、254、264およびC.I.Pigment Violet 19からなる群れから選択される少なくともいずれか1種を含む。青色インクにおける顔料は、C.I.Pigment Blue 15:3および15:4のうち少なくともいずれか1種を含む。
【0104】
以上、本実施形態のプリント物の製造方法によれば、得られるプリント物は、上記したインクセットに含まれるインクが付与された、プリント物である。このようなプリント物は、広範な色域の意匠が表現され得る。また、得られるプリント物は、所定の色相(たとえば黄色や赤色)のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすい。
【実施例
【0105】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0106】
使用した原料を以下に示す。
(顔料)
黄色顔料1:C.I.Pigment Yellow 138、Sicopal Yellow D1080J、BASFジャパン(株)製
黄色顔料2:C.I.Pigment Yellow 150、Cromophtal Yellow D1085J、BASFジャパン(株)製
黄色顔料3:C.I.Pigment Yellow 151、Ink Jet Yellow H4G、クラリアントジャパン(株)製
黄色顔料4:C.I.Pigment Yellow 154、Cromophtal Yellow L 1084 HD、BASFジャパン(株)製
黄色顔料5:C.I.Pigment Yellow 184、Sicopal Yellow L 1130、BASFジャパン(株)製
黄色顔料6:C.I.Pigment Yellow 180、PVFast Yellow HG01 VP2657、クラリアントジャパン(株)製
黄色顔料7:C.I.Pigment Yellow 42、HY-100、チタン工業(株)製
赤色顔料1:C.I.Pigment Red 122、Ink Jet Magenta E02、クラリアントジャパン(株)製
赤色顔料2:C.I.Pigment Red 179、Paliogen Red L3885、BASFジャパン(株)製
赤色顔料3:C.I.Pigment Red 202、Cinquasi Magenta L4540、BASFジャパン(株)製
赤色顔料4:C.I.Pigment Red 254、Iragazin Red L3630、BASFジャパン(株)製
赤色顔料5:C.I.Pigment Red 264、Iragazin Red L4025、BASFジャパン(株)製
赤色顔料6:C.I.Pigment Violet 19、InkJet Magenta E5B 02、クラリアントジャパン(株)製
赤色顔料7:C.I.Pigment Red 112、Irgalite Red L3865HD、BASFジャパン(株)製
赤色顔料8:C.I.Pigment Red 101、R-516P、チタン工業(株)製
青色顔料1:C.I.Pigment Blue 15:3、Hostaperm Blue B4G、クラリアントジャパン(株)製
青色顔料2:C.I.Pigment Blue 15:4、CHROMO FINE BLUE 6332 JC、大日精化工業(株)製
青色顔料3:C.I.Pigment Blue 28、ダイピロキサイドブルー#9410、大日精化工業(株)製
黒色顔料1:C.I.Pigment Black 7、NIPEX35、オリオン エンジニアドカーボンズ(株)製
黒色顔料2:C.I.Pigment Black 28、NF-800 BLACK、日研(株)製
(樹脂)
樹脂1:フッ素樹脂、LF-200F、三フッ化エチレン/ビニルモノマー交互共重合体、旭硝子(株)製、水酸基価:50mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、Mw:20000、ジエチレングリコールジエチルエーテルに対する溶解度:1000(g/L)以上、水に対する溶解度:6(g/L)、不揮発分:100%
(分散剤)
分散剤1:塩基性ポリエステル系分散剤、Solsperse33000、日本ルーブリゾール(株)製
(溶剤)
溶剤1:DEDG(ジエチレングリコールジエチルエーテル)、グリコールエーテル系溶剤、沸点:189℃、SP値:8.6、日本乳化剤(株)製
(その他)
硬化剤:SBN-70D、ブロックイソシアネート、旭化成ケミカルズ(株)製
硬化触媒:ジラウリル酸ジブチルスズ
UVA:Tinuvin479、BASFジャパン(株)製
HALS:Tinuvin123、BASFジャパン(株)製
【0107】
<インクジェットインクセット>
以下の表1に示される処方(単位は質量部)にしたがって、それぞれのインクを調製し、各色インクを表2に記載の処方で組み合わせて実施例1~13、比較例1~6の各色インクからなるインクセットを作製した。具体的には、各成分を樹脂にミキサー混合し、濾過することにより、各色インクを調製し、組み合わせてそれぞれのインクセットを作製した。得られたインクセットを用いて、以下のインクジェット条件にて基材(電着塗装を行った鋼板にデュフロン100シルバー(日本ペイント(株)製)をエアスプレーにてDRY膜厚25μm塗布し、30℃雰囲気下で1時間乾燥して作製した基材)に対してインクジェットプリントを行い、プリント物を作製し、意匠性と耐候性の評価を行った。なお、発色性、可視光域光透過性、紫外光域光透過性に関しては、基材をコロナ処理したETFE(厚み250μm、AGC(株)製)にし、同様な条件にてプリント物を作製した。
【0108】
<インクジェット条件>
シングルパス方式
ドットサイズ:40pl
ノズル径:40μm
駆動電圧:80V
パルス幅:10μm
周波数:10kHz
解像度:400×800dpi
塗布量:20g/m2
基材温度:50℃(加温)
柄:各色インクのベタ柄
<乾燥条件>
加熱乾燥(110℃環境下、30分間)
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
上記プリント物の作製に際し、それぞれのインクの粘度、顔料の平均粒子径、インクジェット画像層の光透過性(インク可視光域光透過性、インク紫外光域光透過性)、基材の意匠性、を下記の評価基準にしたがって確認した。また、上記プリント物に関して、基材の発色性、インクジェット画像層の耐候性を測定した。結果を表1または表2に示す。
【0112】
物性値の測定方法を以下に示す。
<インクの粘度>
調製後のインクを30℃に調整し、B型粘度計(東機産業(株)製、TVB-20LT、ロータ回転数60rpm)を用いて粘度(mPa・s)を測定した。
【0113】
<顔料の平均粒子径>
作製したインクをシクロヘキサノンで2500倍に希釈し、Malvern Instruments社製のゼータサイザーナノSを用いて、動的光散乱法により平均粒子径(nm)を測定した。
【0114】
<インクジェット画像層の可視光域光透過性>
それぞれのプリント物(インク塗布膜厚:20μm)に対し、紫外可視近赤外分光光度計(UV-3600plus、(株)島津製作所製)を使用し、JIS R 3106に準じ、300~2500nmの波長域の光透過率(%)を1nm毎に測定した。黄色インク部分のインクジェット画像層は530~580nmにおける平均光透過率を、赤色インク部分のインクジェット画像層は630~680nmにおける平均光透過率を、青色インク部分のインクジェット画像層は780~830nmにおける平均光透過率の確認を行った。
【0115】
<インクジェット画像層の紫外光域光透過性>
それぞれのプリント物(インク塗布膜厚:20μm)に対し、紫外可視近赤外分光光度計(UV-3600plus、(株)島津製作所製)を使用し、JIS R 3106に準じ、300~2500nmの波長域の光透過率(%)を1nm毎に測定した。それぞれの色インクのインクジェット画像層の280~380nmにおける平均光透過率の確認を行った。
【0116】
<基材の意匠性>
それぞれのプリント物に対し、基材の意匠性を目視で確認した。
○:基材のシルバー感が感じられる
△:基材のシルバー感がやや感じられる
×:基材のシルバー感が全く感じられない
【0117】
<発色性>
それぞれのプリント物を分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM-3700)を用いて、測定した。
○:結果1(黄色インクが65≦b*であり、赤色インクが40≦a*であり、かつ、青色インクがb*≦-35である)に該当した。
△:黄色インク、赤色インク、青色インクのうち、1色または2色が結果1に該当しなかった。
×:いずれの色も結果1に該当しなかった。
【0118】
<インクジェット画像層の耐候性>
それぞれのプリント物に対し、キセノンウェザーメータ(スガ試験機(株)製、SUV-W161)を用いて、促進耐候試験として照度60W/m2にて750MJ/m2照射実施後、照射前のプリント物に対する色差の測定を行った。
(色差測定方法)
プリント物の促進耐候試験前に対する試験後のΔEを色差とした。色差は分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM-3700)を用いて、測定した。
(評価基準)
○:いずれかの色インクの色差もΔE≦3であった。
△:いずれかの色インクの色差が3<ΔE≦5であった。
×:いずれかの色インクの色差がΔE>5であった。
【0119】
表1~表2に示されるように、実施例1~13において得られたプリント物は、いずれも基材の意匠が損なわれにくく、優れた発色性を示し、広範な色域の意匠を表現することができると考えられた。また、これらの実施例1~13のプリント物は、得られた意匠から所定の色相のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすいと考えられた。一方、各色インクのうち、本発明の顔料の組み合わせを採用しなかった比較例1~6において得られたプリント物は、耐候性が劣るか、または、基材の意匠が損なわれたり、発色性が劣ったことから、「広範な色域の意匠を表現することができ、インクジェット画像層の透明性が優れ、基材に形成された意匠を損ないにくく、かつ、得られた意匠から所定の色相のみが退色することが防がれ、長期間にわたって所望の意匠が維持されやすいプリント物を得る」という課題を満足するものではなかった。