(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】絶縁抵抗検出部の保護機能付モータ制御装置及びその保護方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20231116BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20231116BHJP
【FI】
H02P27/06
G01R31/34 A
G01R31/34 B
(21)【出願番号】P 2020170348
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019216287
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 勇治
(72)【発明者】
【氏名】菊地 敬吾
(72)【発明者】
【氏名】北原 通生
(72)【発明者】
【氏名】平出 敏雄
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-177695(JP,A)
【文献】特開2018-038114(JP,A)
【文献】特開2015-129704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
H02P 6/00-6/34
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、を備えたモータ制御装置であって、
前記母線に接続された第2電源部に一端が接続され、他端が接地可能な第2スイッチと、
前記モータの巻線と負側母線との間の電流値を検出する電流検出部と、
前記第1スイッチにより電力供給がオフにされ、前記第2スイッチの開時及び閉時における前記電流検出部によってそれぞれ検出された電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値が算出される絶縁抵抗算出部と、
前記第1スイッチにより電力供給をオンとされ、かつ前記第2スイッチが短絡状態にあることを検出して前記第1スイッチをオフにする漏洩電流保護部と、
を備えたモータ制御装置。
【請求項2】
第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、一端が負側母線に接続され、他端が接地された接地コンデンサと、を備えたモータ制御装置であって、
前記母線に接続された第2電源部に一端が接続され、他端が接地可能な第2スイッチと、
所定時間オンにすることにより前記負側母線を接地可能であり、前記母線に接続された前記接地コンデンサの電荷を放電する第3スイッチと、
前記第1スイッチにより電力供給がオフにされ、所定時間前記第3スイッチをオンとした後に、前記第2スイッチの開時及び閉時における前記電流検出部によってそれぞれ検出された電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値が算出される絶縁抵抗算出部と、
前記第1スイッチにより電力供給をオンとされ、かつ前記第2スイッチ又は前記第3スイッチのうち少なくともいずれか一方が短絡状態にあることを検出して前記第1スイッチをオフにする漏洩電流保護部と、
を備えたモータ制御装置。
【請求項3】
第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、一端が負側母線に接続され、他端が接地された接地コンデンサと、を備えたモータ制御装置であって、
一端が接地可能であり、他端が第3スイッチに接続可能な第2スイッチと、
少なくとも前記母線に一端が接続された第2電源部の他端を接続する第1接点に接続する状態と前記母線に接続する第2接点に接続する状態とのいずれか一方を選択して、前記第2スイッチの前記他端に接続可能である前記第3スイッチと、
前記第1スイッチにより電力供給がオフにされ、所定時間前記第3スイッチの前記第2接点を選択した状態としかつ前記第2スイッチをオンにすることにより前記負側母線を前記接地点に接続して前記母線に接続された前記接地コンデンサの電荷を放電した後に、前記第3スイッチの前記第1接点を選択した状態で前記第2スイッチの開時及び閉時における前記電流検出部によってそれぞれ検出された電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値が算出される絶縁抵抗算出部
と、
前記第1スイッチにより電力供給をオンとされ、かつ前記第2スイッチが短絡状態にあることを検出して前記第1スイッチをオフにする漏洩電流保護部と、
を備えたモータ制御装置。
【請求項4】
前記漏洩電流保護部は、前記負側母線と前記第2電源部との間、前記負側母線と前記第2スイッチとの間、前記第3スイッチと前記第2スイッチとの間又は前記第2スイッチとそれが設置される部分との間の少なくともいずれかの1つの間に設けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記漏洩電流保護部は、
前記第1スイッチのオン状態を検出する電源オン検出部と、
前記第2スイッチ又は前記3スイッチの少なくともいずれか一方の短絡状態を検出する漏洩電流検出部と、
前記電源オン検出部及び前記漏洩電流検出部の出力に基づいて前記第1スイッチをオフにする電磁接触器制御部と、
を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記漏洩電流検出部は、漏洩電流の流れる経路の電流値のうち、少なくとも1つの前記電流値が零でない場合又は所定値より大きい場合に、漏洩電流が生じていることを示す信号を前記電磁接触制御部に出力する、請求項5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記漏洩電流検出部は、漏洩電流の流れる経路に設けられた降下電圧を発生する抵抗の降下電圧と所定の基準電圧との比較に基づいて前記漏洩電流が生じていると判別する、請求項5または6に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記抵抗は、前記負側母線と第2電源部との間、前記負側母線と前記第2スイッチとの間、前記第3スイッチと前記第2スイッチとの間又は前記第2スイッチと前記接地点との間の少なくともいずれか1つに設けられる、請求項7に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記漏洩電流の電流値は、トランスデユーサを介して前記漏洩電流検出部に伝達される、請求項5~8のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項10】
第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換してモータを駆動制御するスイッチング素子と、を備えたモータ制御装置であって、
前記第1スイッチにより電力供給をオフにし、
前記母線に一端を接続し、他端を第2スイッチを介して接地した第2電源部において、前記第2スイッチを開とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第1の電流値を電流検出部により検出し、
前記第2スイッチを閉とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第2の電流値を前記電流検出部により検出し、
検出された前記第1の電流値及び前記第2の電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値を算出し、
前記モータの絶縁抵抗値を算出した後に前記第1スイッチをオンにして電力を供給した場合に、前記第2スイッチが短絡していることを検出したときは、前記第1スイッチをオフにする
モータ制御装置の絶縁抵抗検出方法。
【請求項11】
第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換してモータを駆動制御するスイッチング素子と、負側母線に接続された接地コンデンサと、を備えたモータ制御装置であって、
前記第1スイッチにより電力供給をオフにし、
前記母線に一端を接続し、他端を接地した第3スイッチを、所定時間オンとして前記母線に接続された前記接地コンデンサの電荷を放電し、
前記母線に一端を接続し、他端を第2スイッチを介して接地可能した第2電源部において、前記第2スイッチを開とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第1の電流値を電流検出部により検出し、
前記第2スイッチを閉とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第2の電流値を前記電流検出部により検出し、
検出された前記第1の電流値及び前記第2の電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値を算出し、
前記モータの絶縁抵抗値を算出した後に前記第1スイッチをオンにして電力を供給した場合に、前記第2スイッチ又は前記第3スイッチが短絡していることを検出したときは、前記第1スイッチをオフにする、
モータ制御装置の絶縁抵抗検出方法。
【請求項12】
第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換してモータを駆動制御するスイッチング素子と、負側母線に接続された接地コンデンサと、を備えたモータ制御装置であって、
前記第1スイッチにより電力供給をオフにし、
一端が接地可能であり、他端が第3スイッチに接続可能な第2スイッチと、少なくとも前記母線に一端が接続された第2電源部の他端を接続する第1接点に接続する状態と前記母線に接続する第2接点に接続する状態とのいずれか一方を選択可能に前記第2スイッチの前記他端に接続可能である前記第3スイッチとを、所定時間前記母線が接地されるように前記第2スイッチをオンとしかつ前記第3スイッチを前記第2接点に接続した状態として前記母線に接続された前記接地コンデンサの電荷を放電した後に、前記第3スイッチの前記第1接点を選択した状態で他端を前記第2スイッチを介して接地可能とした第2電源部において、前記第2スイッチを開とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第1の電流値を電流検出部により検出し、
前記第2スイッチを閉とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第2の電流値を前記電流検出部により検出し、
検出された前記第1の電流値及び前記第2の電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値を算出し、
前記モータの絶縁抵抗値を算出した後に前記第1スイッチをオンにして電力を供給した場合に、前記第2スイッチ又は前記第3スイッチが短絡していることを検出したときは、前記第1スイッチをオフにする、
モータ制御装置の絶縁抵抗検出方法。
【請求項13】
前記第2電源部は、前記母線に接続されて蓄電された前記コンデンサであり、前記第2電源部の電圧値は前記コンデンサの電圧値である、請求項10~12のいずれか1項に記載のモータ制御装置の絶縁抵抗検出方法。
【請求項14】
前記第2電源部は、前記母線に一端が接続された直流電源部であり、前記第2電源部の電圧値は前記第2電源部の出力する電圧値である、請求項10~12のいずれか1項に記載のモータ制御装置の絶縁抵抗検出方法。
【請求項15】
前記絶縁抵抗値の算出は、前記第2スイッチの開時及び閉時における前記電流検出部によってそれぞれ検出された電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記直流電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値を算出する、請求項14に記載のモータ制御装置の絶縁抵抗検出方法。
【請求項16】
前記直流電源部は、その負側の一端が前記負側母線に接続され、
前記直流電源部の出力する電圧は、前記コンデンサの電圧より低く設定される、請求項14または15に記載のモータ制御装置の絶縁抵抗検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの絶縁抵抗検出機能を備えたモータ制御装置及びモータ制御装置の絶縁抵抗検出方法に関し、特に、絶縁抵抗検出部の接地用スイッチの短絡故障等が発生したときのモータ制御装置の絶縁抵抗検出部等の保護機能を向上させるものである。
【背景技術】
【0002】
サーボモータなどのモータは、インバータで構成されるモータ制御装置により駆動され、工作機械などに用いられる。工作機械など、切削液を用いて加工を行う機械では、切削液がモータに付着し、切削液によっては、モータ内部に入り込み、モータの絶縁を劣化させるという問題がある。
【0003】
また、工作機械以外に用いられる場合であっても、長期間にわたって用いられる場合や、使用環境によっては、同様の問題が生じ得る。
【0004】
モータの絶縁劣化は徐々に進行し、最終的には地絡に至る。モータが地絡すると、漏電ブレーカをトリップさせたり、モータ制御装置を破損させたりして、システムダウンに至る。システムダウンは、工場の製造ラインに多大な影響を及ぼす。そのため、予防保全の観点から、モータの絶縁抵抗を検出できる装置が望まれている。
【0005】
このような、モータの絶縁抵抗の検出方法としては、特許文献1が知られている。特許文献1には、第1のスイッチを介して交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、整流回路によって整流された直流電圧をコンデンサで平滑化する電源部と、電源部によって平滑化された直流電圧を半導体スイッチング素子のスイッチング動作により交流電圧に変換してモータを駆動するインバータ部と、モータのコイルに一端を接続し、コンデンサの一方の端子に他端を接続した抵抗器に流れる電流値を測定する電流検出部と、コンデンサの両端の電圧値を測定する電圧検出部と、コンデンサの他方の端子を接地する第2のスイッチと、モータの運転を停止し第1のスイッチをオフしかつ第2のスイッチをオフした状態とオンした状態の2つの状態において測定された2組の電流値及び電圧値を用いてモータのコイルと大地との間の抵抗であるモータの絶縁抵抗値を検出する絶縁抵抗検出部と、を有することを特徴とするモータ駆動装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献2(
図1)では、特許文献1と同様に、モータの絶縁抵抗値を検出する絶縁抵抗検出部を備えるモータ駆動装置が記載されている。このモータ駆動装置においては、接地可能な第2のスイッチと母線の間に抵抗が挿入されて、そこを流れる電流が制限され、過電流等に起因する故障に対して一定の保護を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-129704号公報
【文献】特開2015-204709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1は、モータの絶縁抵抗値の検出が終了し、通常のモータ駆動を行う場合は、第2のスイッチを遮断し、第1のスイッチをオンにし、インバータによりモータを駆動する。このモータ駆動時に、第2のスイッチが短絡故障して導通していると、交流電源から正側母線を通してアースに電流が流れてしまい、漏電が発生してしまう。漏電は
火災や感電の原因になるため防止しなければならない。
【0009】
この漏電を止めるものとしては、一般に、漏電ブレーカの利用が考えられる。交流電源の入力部に漏電ブレーカが設置されていれば、漏電ブレーカがトリップして、交流電源からアースに流れる電流を止めることができる。しかし、特許文献1のように漏電ブレーカが設置されていなければ漏電を止めることができず、漏電に対する保護ができないという課題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載されたものの場合には、接地可能な第2のスイッチと母線の間に抵抗が挿入されていることから、そこを流れる電流が制限される。しかし、通常のモータ駆動を行う場合に、第2のスイッチが故障して導通していると、交流電源から正側母線と抵抗を通してアースに電流が流れ、その際、交流電源の入力部に漏電ブレーカが設置されていても、抵抗により漏洩電流が制限されて小さくなっているため、漏洩電流が漏電ブレーカの漏電検出値より小さいと、漏電ブレーカがトリップせず、交流電源からアースに流れる電流を止めることができないという課題があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、その目的は、絶縁抵抗検出機能を備えたモータ制御装置において、漏電ブレーカを用いることなく、絶縁抵抗検出回路を構成する接地用スイッチの短絡故障による漏電を防止し、モータの絶縁抵抗を精度良く検出できるモータ制御装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための本発明の物としての一の態様は、第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、を備えたモータ制御装置であって、前記母線に接続された第2電源部に一端が接続され、他端が接地可能な第2スイッチと、前記モータの巻線と負側母線との間の電流値を検出する電流検出部と、前記第1スイッチにより電力供給がオフにされ、前記第2スイッチの開時及び閉時における前記電流検出部によってそれぞれ検出された電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値が算出される絶縁抵抗算出部と、前記第1スイッチにより電力供給をオンとされ、かつ前記第2スイッチが短絡状態にあることを検出して前記第1スイッチをオフにする漏洩電流保護部と、を備えたモータ制御装置、である。
また、別の態様は、第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、一端が負側母線に接続され、他端が接地された接地コンデンサと、を備えたモータ制御装置であって、前記母線に接続された第2電源部に一端が接続され、他端が接地可能な第2スイッチと、所定時間オンにすることにより前記負側母線を接地可能であり、前記母線に接続された前記接地コンデンサの電荷を放電する第3スイッチと、前記第1スイッチにより電力供給がオフにされ、所定時間前記第3スイッチをオンとした後に、前記第2スイッチの開時及び閉時における前記電流検出部によってそれぞれ検出された電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値が算出される絶縁抵抗算出部と、前記第1スイッチにより電力供給をオンとされ、かつ前記第2スイッチ又は前記第3スイッチのうち少なくともいずれか一方が短絡状態にあることを検出して前記第1スイッチをオフにする漏洩電流保護部と、を備えたモータ制御装置、である。
さらに、別の態様は、第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記
母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、一端が負側母線に接続され、他端が接地された接地コンデンサと、を備えたモータ制御装置であって、一端が接地可能であり、他端が第3スイッチに接続可能な第2スイッチと、少なくとも前記母線に一端が接続された第2電源部の他端を接続する第1接点に接続する状態と前記母線に接続する第2接点に接続する状態とのいずれか一方を選択して、前記第2スイッチの前記他端に接続可能である前記第3スイッチと、前記第1スイッチにより電力供給がオフにされ、所定時間前記第3スイッチの前記第2接点を選択した状態としかつ前記第2スイッチをオンにすることにより前記負側母線を前記接地点に接続して前記母線に接続された前記接地コンデンサの電荷を放電した後に、前記第3スイッチの前記第1接点を選択した状態で前記第2スイッチの開時及び閉時における前記電流検出部によってそれぞれ検出された電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値が算出される絶縁抵抗算出部と、前記第1スイッチにより電力供給をオンとされ、かつ前記第2スイッチが短絡状態にあることを検出して前記第1スイッチをオフにする漏洩電流保護部と、を備えたモータ制御装置、である。
【0013】
前記課題を解決するための本発明の方法としての一の態様は、第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、を備えたモータ制御装置であって、前記第1スイッチにより電力供給をオフにし、前記母線に一端を接続し、他端を第2スイッチを介して接地した第2電源部において、前記第2スイッチを開とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第1の電流値を電流検出部により検出し、前記第2スイッチを閉とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第2の電流値を前記電流検出部により検出し、検出された前記第1の電流値及び前記第2の電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値を算出し、前記モータの絶縁抵抗値を算出した後に前記第1スイッチをオンにして電力を供給した場合に、前記第2スイッチが短絡していることを検出したときは、前記第1スイッチをオフにする、モータ制御装置の絶縁抵抗検出方法、である。
また、別の態様は、第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、負側母線に接続された接地コンデンサと、を備えたモータ制御装置であって、前記第1スイッチにより電力供給をオフにし、前記母線に一端を接続し、他端を接地した第3スイッチを、所定時間オンとして前記母線に接続された前記接地コンデンサの電荷を放電し、前記母線に一端を接続し、他端を第2スイッチを介して接地可能した第2電源部において、前記第2スイッチを開とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第1の電流値を電流検出部により検出し、
前記第2スイッチを閉とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第2の電流値を前記電流検出部により検出し、検出された前記第1の電流値及び前記第2の電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値を算出し、前記モータの絶縁抵抗値を算出した後に前記第1スイッチをオンにして電力を供給した場合に、前記第2スイッチ又は前記第3スイッチが短絡していることを検出したときは、前記第1スイッチをオフにする、モータ制御装置の絶縁抵抗検出方法、である。
さらに、別の態様は、第1電源部と、前記第1電源部からの電力供給をオフすることができる第1スイッチと、前記第1電源部からの電力を母線に出力する直流供給部と、前記母線に接続されたコンデンサと、前記母線に供給された直流を交流に変換して前記モータを駆動制御するスイッチング素子と、負側母線に接続された接地コンデンサと、を備えた
モータ制御装置であって、前記第1スイッチにより電力供給をオフにし、一端が接地可能であり、他端が第3スイッチに接続可能な第2スイッチと、少なくとも前記母線に一端が接続された第2電源部の他端を接続する第1接点に接続する状態と前記母線に接続する第2接点に接続する状態とのいずれか一方を選択可能に前記第2スイッチの前記他端に接続可能である前記第3スイッチとを、所定時間前記母線が接地されるように前記第2スイッチをオンとしかつ前記第3スイッチを前記第2接点に接続した状態として前記母線に接続された前記接地コンデンサの電荷を放電した後に、前記第3スイッチの前記第1接点を選択した状態で他端を前記第2スイッチを介して接地可能とした第2電源部において、前記第2スイッチを開とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第1の電流値を電流検出部により検出し、
前記第2スイッチを閉とし、前記モータの巻線と前記第2電源部が接続された前記母線との間の第2の電流値を前記電流検出部により検出し、検出された前記第1の電流値及び前記第2の電流値と前記コンデンサの電圧値及び前記第2電源部の電圧値とに基づいて、前記モータの絶縁抵抗値を算出し、前記モータの絶縁抵抗値を算出した後に前記第1スイッチをオンにして電力を供給した場合に、前記第2スイッチ又は前記第3スイッチが短絡していることを検出したときは、前記第1スイッチをオフにする、モータ制御装置の絶縁抵抗検出方法、である。
【0014】
本発明のその他の態様は、後述する発明を実施するための形態の実施例の説明から明らかである。
【0015】
本発明によれば、モータの絶縁抵抗値を算出する際には、第1スイッチにより電力供給をオフすることにより、第1電源部からの電力供給が停止される。そして、第2スイッチを開とした状態で、コンデンサの電圧のみによりスイッチング素子を介する漏れ電流が流れ、第1の電流値が電流検出部によって検出される。他方、同様に第1電源部からの電力供給が停止された状態で、第2スイッチを閉とした状態で、第2電源部の電圧のみによるモータの巻線を通る電流の大部分(余部は負側のスイッチング素子の微小な漏れ電流である。)が加わった第2の電流値が電流検出部によって検出される。電流検出部によって検出された両電流値すなわち第1の電流値及び第2の電流値と、コンデンサの電圧値及び第2電源部の電圧値とに基づいて演算を行うことにより、モータの絶縁抵抗値を精度よく算出する。
【0016】
このようなモータの絶縁抵抗値を算出した後に、モータ制御装置は通常に運転が行われることになるが、その際には、まず前記第1スイッチがオンとされて電力が供給されるが、溶着その他の理由から第2スイッチが閉のままとなる所謂短絡故障を生じていると、前記漏洩電流保護部がそれを検出し、前記第1スイッチをオフにして、モータ制御装置への電力の供給を停止する。
【0017】
なお、ここで、「第1スイッチ」は、遮断器を含めてあらゆるスイッチを含み、電源の端子と接触する端子や接点であっても、電源からの電力供給をオフすることができる構造であればすべて含むものとする。また、「直流供給部」は、交流から直流に変換する電力変換器等が用いられる。その他、「スイッチ」と称する場合には、前記の「スイッチ」を含み、電流を止め又は流すことができれば如何なるものでもよく、機械的なスイッチ、リレー、半導体スイッチなども含む。
【0018】
また、接地コンデンサを用いる場合など電荷放出のためにさらに第3スイッチである接地スイッチが設けられているときには、それら接地スイッチの短絡故障に対しても、第2スイッチの短絡故障が生じているときと同じように対応することができるものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、絶縁抵抗検出機能を備えたモータ制御装置において、漏電ブレーカを用いることなく、絶縁抵抗検出回路を構成する接地用スイッチの短絡故障による漏電を防止し、モータの絶縁抵抗を精度良く検出することができる。
【0020】
本発明のその他の作用や効果については、後述する発明を実施するための形態の実施例の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明が適用されるモータ制御装置の一の態様の回路図を示す図
【
図2】本発明を適用されるモータ制御装置の別の態様の回路図を示す図
【
図3】本発明が適用されるモータ制御装置のさらに別の態様の回路図を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に本発明が適用されるモータ制御装置の1態様の回路図を示す。
【0023】
なお、以下の説明においては、電流は電流値を、電圧は電圧値を、インピーダンスはインピーダンス値を、また抵抗は抵抗値を含み得るものとし、当業者の技術常識にしたがって、解釈されるものとする。
【0024】
初めに、モータ制御装置Cont1の基本構成について説明する。
【0025】
モータ制御装置Cont1は、整流回路(直流供給部)SDCと、正側の母線ML+と負側の母線ML-からなる母線MLと、平滑コンデンサ(コンデンサ)C1と、半導体スイッチング素子TR1~TR6により構成されるインバータと、絶縁抵抗算出部31とから構成される。
【0026】
モータ制御装置Cont1は、電力供給をオフすることができる第1スイッチである電磁接触器MSを介して三相交流電源(第1電源部)S1から供給される三相交流電圧を整流回路(直流供給部)SDCにより全波整流して直流電圧を母線MLに出力する。
【0027】
出力された直流電圧は、母線MLの正側の母線ML+と負側の母線ML-との間に接続された平滑コンデンサ(コンデンサ)C1により平滑化される。
【0028】
平滑化された母線ML+、ML-に供給されている直流電圧は、正側の母線ML+と負側の母線ML-との間に接続された半導体スイッチング素子TR1~TR6により構成されるインバータに供給され、母線ML+、ML-に供給された直流を逆変換した交流によりモータ1が駆動される。
【0029】
モータ制御装置Cont1の絶縁抵抗算出部31は、母線MLのうちの負側母線ML-とアースEの間に設けられた直流電源(第2電源部)S2と、スイッチSW1(第2スイッチ)と、負側母線ML-とモータ1の巻線Lに接続された電流検出抵抗R1と、電流検出抵抗R1の電圧から電流を検出するとともに、絶縁抵抗の検出動作を制御し、また、絶縁抵抗値を演算する検出制御部41とから構成されている。
【0030】
電流検出抵抗R1はモータ1のU相、V相、W相の各相のうちの1相の巻線Lのみに接続すればよく、モータ1の巻線Lの抵抗は非常に小さいため、いずれの相でも検出が可能である。
【0031】
直流電源S2は、平滑コンデンサC1の電圧より低い電圧の範囲で、できるだけ高い電圧の電源を、アースE側の電位が負側母線ML-より高い状態になるようにして用いる。
また、計測に必要な程度で微小な電流容量の電源を用いている。
【0032】
平滑コンデンサC1の電圧より直流電源S2の電圧を低く設定するのは、計測時にモータ1の絶縁抵抗Rm1からインバータ部の上アーム(正側)の半導体スイッチング素子TR1~TR3のフリーホイールダイオードDfを通して平滑コンデンサC1を充電する方向に電流が流れて、絶縁抵抗Rm1の検出精度が低下するのを防ぐためである。
【0033】
前記したモータ制御装置Cont1の作動について以下説明をする。
【0034】
通常のモータ制御時は、第2スイッチSW1はオフのまま電磁接触器MSをオンとし、インバータにより各軸のモータ制御が行われる。絶縁抵抗検出時は、モータ制御装置Cont1を以下のとおり作動させる。
【0035】
モータ制御動作を停止させ、半導体スイッチング素子TR1~TR6をオフにし、電磁接触器MSを遮断する。次いで、第2スイッチSW1をオフとして、インバータの直流電圧VPNと電流検出抵抗R1の電圧VR1Aを計測する。
【0036】
平滑コンデンサC1の電圧がインバータを構成する半導体スイッチング素子TR1~TR6に印加されているので、インバータの直流電圧VPNは、実質的に平滑コンデンサC1の電圧に等しい。かかる電圧により、半導体スイッチング素子TR1からTR4に電流が流れ、また、電流検出抵抗R1に電流(第1の電流(値))が流れる。
【0037】
正側の半導体スイッチング素子TR1からTR4へと流れる電流は、半導体スイッチング素子の漏れ電流である。全ての相に同様に漏れ電流が流れるが、電流検出抵抗R1が接続されている一相に着目することによりモータの絶縁抵抗を求めることができる。
【0038】
TR1、TR4の半導体スイッチング素子の等価漏れ抵抗をそれぞれRtr1とすると以下の式(1-1)が成り立つ。
【0039】
(VPN-VR1A)/Rtr1=VR1A/Rtr1+VR1A/R1 ・・・(1-1)
【0040】
次に第2スイッチSW1をオンにして、負側母線ML-に対してアースEに直流電源S2の電圧VDCを印加し、電流検出抵抗R1の電圧VR1Bを計測する。これらの電流検出抵抗R1と電圧VR1Bからそこを流れる電流(第2の電流(値))を取得できる。
【0041】
モータ1に絶縁劣化がある場合は、直流電源S2の電圧がモータの絶縁抵抗Rm1を通して半導体スイッチング素子TR4に印加され、電流検出抵抗R1と半導体スイッチング素子TR4に電流が流れる。
【0042】
また、平滑コンデンサC1の電圧、すなわちインバータの直流電圧VPNが半導体スイッチング素子TR1、TR4に印加された状態のため、半導体スイッチング素子TR1からTR4へと電流が流れ、また、電流検出抵抗R1にも電流が流れる。
【0043】
これらの半導体スイッチング素子TR1からTR4へと流れる電流は、これらの半導体スイッチング素子の漏れ電流である。しかし、これら半導体スイッチング素子の漏れ電流は、一般にモータの絶縁抵抗の低下により流れる電流と比較すると小さいので、平滑コンデンサの電圧C1はほとんど低下しないと想定することができる。
【0044】
この時、以下の式(2-1)が成り立つ。
【0045】
(VPN-VR1B)/Rtr1+(VDC-VR1B)/Rm1=VR1B/Rtr1+VR1B/R1・・・(2-1)
【0046】
モータ1の絶縁抵抗Rm1は、前記式(1-1)と式(2-1)の連立方程式を解くことにより、以下の式で求めることができる。
【0047】
Rm1=R1(VDC-VR1B)(VPN-2VR1A)/{(VR1B-VR1A)VPN}・・・(3-1)
【0048】
これらの演算は、検出制御部41で行われている。なお、電流検出抵抗R1の電圧VR1Aの検出は、それぞれ1回ずつ検出することにより絶縁抵抗値Rm1を算出することができることはいうまでもないが、両電圧VR1Aを複数回測定し、測定した電圧の各種平均値を採用しても差支えない。
【0049】
このような各種平均値を用いた場合には、ノイズ等により生じる異常値の影響を軽減できることのほか、より精度の高い絶縁抵抗値Rm1を得ることができる。
【0050】
そして、算出した絶縁抵抗値Rm1をユーザ装置に情報として伝達する。絶縁抵抗値Rm1の伝達は、いかなる手段に依っても良く、有線送信でも、無線送信でも差支えない。
【0051】
絶縁抵抗値Rm1を知得したユーザは、かかる絶縁抵抗値が低い場合に絶縁抵抗の劣化が生じていると判断し、モータを交換するなど、予め、モータが地絡してシステムダウンすることを予測し、そのような不都合の発生を防止することができる。
【0052】
絶縁抵抗が劣化しているか否かの判断は、実験や経験的に知られている値と比較することや、正常製品を用いて最初にモータ制御装置を設置した時に測定し、記録又は記憶させた初期値と比較することや、安全基準その他の設定値と比較することなど、適宜の判断手段を用いることができる。
【0053】
モータ1の絶縁抵抗Rm1が非常に小さく、半導体スイッチング素子TR1~TR6の負側の半導体スイッチング素子TR4~TR6が短絡破損しているような場合は、直流電源S2からモータ1の絶縁劣化部を通して負側の半導体スイッチング素子TR4~TR6に電流が流れるが、直流電源S2の電流容量は、平滑コンデンサC1と比較すると非常に小さくすることができるため、流れる電流を僅かなものにとどめることができる。
【0054】
したがって、負側の半導体スイッチング素子TR4~TR6の2次破損や、さらなるモータ1の絶縁劣化を生じさせるおそれはない。
【0055】
前述の態様では、1つのモータ1を使用する1軸のモータ制御装置における本発明の態様について説明したが、2軸あるいは3軸以上の場合においても、同様に本発明を適用することが可能である。前述の態様がそうであるように、2軸以上の場合であっても、直流電源S2は少なくとも1軸にのみに設ければ足りる。
【0056】
前記態様では、第1電源部として三相交流電源S1を用いているが、第1電源部としては、三相交流電源ではなく、単相交流電源を用いても良い。また、前記態様では、直流供給部として整流回路を用いているが、PWMコンバータなどの電源に回生できる回路でも良い。その場合には、PWMコンバータを停止させて計測する。
【0057】
なお、第1電源部からの電力供給は、電磁接触器により通電・遮断するものだけでなく、スイッチを用いるものであっても良い。
【0058】
さらに、前記態様では、モータ制御装置Cont1として、半導体スイッチング素子からなる三相インバータを用いているが、単相モータを駆動する場合には単相インバータを用いても良い。なお、インバータ方式は、前記態様のものに限定されるものではなく、フルブリッジであってもハーフブリッジであっても良い。
【0059】
加えて、前記態様では、半導体スイッチング素子TR1~TR6のゲートドライブ電源は、通常の絶縁電源(図示せず)を用いているが、必要に応じて、ブートストラップ電源、高耐圧IC、その他各種電源の組み合わせなど、任意のゲートドライブ電源を選択し得る。
【0060】
次に、本発明の中核をなす、絶縁抵抗検出回路を構成する接地用スイッチの短絡故障による漏電を防止しするための漏洩電流保護部5について説明する。
【0061】
図1において、負側母線ML
-と直流電源S
2との間には、漏洩電流保護部5が配置さ
れている。
【0062】
絶縁抵抗値の算出・検出が終了すると、通常のモータ制御を行うため、第2スイッチSW1をオフにし、第1スイッチである電磁接触器MSをオンにし、半導体スイッチング素子TR1~TR6により構成されるインバータと、インバータにより各軸のモータ制御を行う。
【0063】
この時に溶着、機械的故障その他の理由により、第2スイッチSW1が短絡故障している場合は、三相交流電源S1から負側母線ML-を通してアースEに漏洩電流が流れてしまう。
【0064】
このような漏洩電流が大きくなると、漏洩電流の通電路に配置された機器が故障するおそれがあるため、本態様においては、漏洩電流保護部5が設けられている。
【0065】
この漏洩電流保護部5は、負側母線ML-と直流電源S2との間の電流により降下電圧を生じさせる電流検出抵抗R3と、第2スイッチSW1に流れる電流を電流検出抵抗R3の降下電圧により検出する漏洩電流検出部6と、モータ制御装置に第1スイッチである電磁接触器MSから電力が印加されていることを検出する電源オン検出部7と、電磁接触器MSの導通及び遮断を行うことが可能な電磁接触器制御部8とから構成されている。
【0066】
漏洩電流検出部6は、第2スイッチSW1に流れる電流が規定値以上流れているか否かを検出するものである。漏洩電流検出部6は、負側母線ML-と直流電源S2との間に介在された漏洩電流を検出する電流検出抵抗R3の降下電圧と、所定の基準電圧Refとを比較して、漏洩電流の状態を電磁接触器制御部8に出力する。
【0067】
電源オン検出部7では、第1スイッチである電磁接触器MSがオンすると、三相交流電源S1の電圧がモータ制御装置に印加されているか否かを検出して、三相交流電源S1の電圧の印加状態を電磁接触器制御部8に出力する。
【0068】
電磁接触器制御部8は、漏洩電流検出部6の出力と電源オン検出部7の出力とに基づいて電磁接触器MSの導通・遮断を制御する。
【0069】
電源オン検出部7が三相交流電源S1の電圧が印加されているオン状態を出力し、かつ漏洩電流検出部6の出力が、所定値以上の漏洩電流が流れている状態を出力した場合には、電磁接触器制御部8は、第2スイッチSW1の短絡故障による漏洩電流が生じていると
判別し、電磁接触器MSを速やかにオフにする。
【0070】
本態様では、電流検出抵抗R3が負側母線ML-と直流電源S2との間に介在されているが、電流検出抵抗R3の設置個所は、第2スイッチSW1を流れる漏洩電流が通る箇所であれば如何なる箇所でもよく、例えば、直流電源S2とアースEとの間に設けても良い。
【0071】
本態様では、第2スイッチSW1を流れる漏洩電流の検出は、電流検出抵抗R3の降下電圧を用いて行われているが、漏洩電流の検出は、ホール素子を用いる電流検出器等、およそ電流を検出することができる手段であれば如何なる電流検出手段を用いても良い。
【0072】
また、漏洩電流検出部6は、第2スイッチSW1に流れる電流が規定値以上流れているか否かを検出するものであれば足り、本態様のように、負側母線ML-と直流電源S2との間に介在された漏洩電流を検出する電流検出抵抗R3の降下電圧と、所定の基準電圧Refとを比較するといったように、漏洩電流の状態を絶縁せずに電気的に直接接続した回路で検出するだけでなく、絶縁可能なトランスデユーサを介して漏洩電流値を評価するための信号を伝達するものであっても良い。
【0073】
図2は、本発明を適用されるモータ制御装置の別の態様を示す回路図を示す。
【0074】
図1では、1つのモータ1を使用する1軸のモータ制御装置における本発明の態様について説明したが、
図2では、2つのモータ1、2を使用する2軸の場合において、本発明を適用した例を示す。さらに、モータ制御装置C
ont1、C
ont2の負側母線ML
-に、ノイズ対策のため、それぞれ接地コンデンサC
3、C
4を介して接地された例も合わせ示している。
図1と同様の部分については、説明を簡略化している。
【0075】
モータ制御装置Cont2は、正側の母線ML+と負側の母線ML-からなる母線MLと、平滑コンデンサ(コンデンサ)C2と、半導体スイッチング素子TR7~TR12により構成されるインバータと、絶縁抵抗算出部32とから構成される。
【0076】
モータ制御装置Cont2は、電力供給をオフすることができる第1スイッチである電磁接触器MSを介して三相交流電源(第1電源部)S1から供給される三相交流電圧を整流回路(直流供給部)SDCにより全波整流して直流電圧を母線MLに出力する。
【0077】
出力された直流電圧は、母線MLの正側の母線ML+と負側の母線ML-との間に接続された平滑コンデンサ(コンデンサ)C2により平滑化される。
【0078】
モータ制御装置Cont2は、モータ制御装置Cont1とほぼ同様の構成である。正側の母線ML+と負側の母線ML-からなる母線MLと、平滑コンデンサ(コンデンサ)C2と、半導体スイッチング素子TR7~TR12により構成されるインバータと、絶縁抵抗算出部32とから構成される。
【0079】
モータ制御装置Cont2は、モータ制御装置Cont1とともに整流回路SDからの直流電圧が供給され、半導体スイッチング素子TR7~TR12により構成されるインバータにより母線MLに供給された直流を交流に逆変換してモータ2を駆動するように構成されている。
【0080】
モータ制御装置Cont1、Cont2の負側母線ML-は、ノイズ対策のため、それぞれ接地コンデンサC3、C4を介して接地されている。
【0081】
ここでは、さらに、負側母線ML-に、接地スイッチである第3スイッチSW2が設けられている。
【0082】
モータ制御装置2の絶縁抵抗算出部32は、母線MLのうちの負側母線ML-とモータ2の巻線Lに接続された電流検出抵抗R2、電流検出抵抗R2の電圧から電流を検出し、また、絶縁抵抗値を演算する検出制御部42から構成されている。
【0083】
直流電源S2は、平滑コンデンサC1、C2の電圧より低い電圧の範囲で、できるだけ高い電圧の電源を、アースE側の電位が負側母線ML-より高い状態になるようにして用いる。また、計測に必要な程度で微小な電流容量の電源を用いている。
【0084】
平滑コンデンサC1、C2の電圧より直流電源S2の電圧を低く設定するのは、計測時にモータ1、2の絶縁抵抗Rm1、Rm2からインバータ部の上アーム(正側)の半導体スイッチング素子TR1~TR3、TR7~TR9のフリーホイールダイオードDfを通して平滑コンデンサC1、C2を充電する方向に電流が流れて、絶縁抵抗Rm1、Rm2の検出精度が低下するのを防ぐためである。
【0085】
前記したモータ制御装置Cont1、Cont2の作動について以下説明をする。
【0086】
通常のモータ制御時は、第2スイッチSW1及び第3スイッチSW2はオフのまま電磁接触器MSをオンとし、インバータにより各軸のモータ制御が行われる。絶縁抵抗検出時は、モータ制御装置Cont1、Cont2を以下のとおり作動させる。
【0087】
全軸のモータ制御動作を停止させ、半導体スイッチング素子TR1~TR12をオフにし、電磁接触器MSを遮断する。そして、第2スイッチSW1はオフのまま第3スイッチSW2をオンにして、所定時間の間に、接地コンデンサC3、C4の電荷を放電し、負側母線とアース間の電位差を0Vにする。次いで、第3スイッチSW2をオフとして、インバータの直流電圧VPNと電流検出抵抗R1の電圧VR1A、電流検出抵抗R2の電圧VR2Aを計測する。
【0088】
この際、接地コンデンサC3、C4を有しない構成である場合には、それらの電荷を放電する工程は省略できる。
【0089】
接地コンデンサC3、C4の電圧が0Vになっているため、接地コンデンサC3、C4からモータ1、2の絶縁抵抗Rm1、Rm2を通して計測回路に電流は流れない。
【0090】
平滑コンデンサC1、C2の電圧がインバータを構成する半導体スイッチング素子TR1~TR12に印加されているので、インバータの直流電圧VPNは、実質的に平滑コンデンサC1、C2の電圧に等しい。かかる電圧により、半導体スイッチング素子TR1からTR4に電流が流れ、また、電流検出抵抗R1に電流(第1の電流(値))が流れる。同様に半導体スイッチング素子TR7からTR10に電流が流れ、また、電流検出抵抗R2に電流(第1の電流(値))が流れる。
【0091】
正側の半導体スイッチング素子TR1からTR4へと流れる電流及びTR7からTR10へと流れる電流は、半導体スイッチング素子の漏れ電流である。全ての相に同様に漏れ電流が流れるが、電流検出抵抗R1、R2が接続されている一相に着目することによりモータの絶縁抵抗を求めることができる。
【0092】
TR1、TR4の半導体スイッチング素子の等価漏れ抵抗をそれぞれRtr1とし、また、TR7、TR10の半導体スイッチング素子の等価漏れ抵抗をそれぞれRtr2とす
ると以下の式(1-1)、(1-2)が成り立つ。なお、式(1-1)は前掲の式(1-1)と同じである。
【0093】
(VPN-VR1A)/Rtr1=VR1A/Rtr1+VR1A/R1・・・(1-1)
(VPN-VR2A)/Rtr2=VR2A/Rtr2+VR2A/R2・・・(1-2)
【0094】
次に第2スイッチSW1をオンにして、負側母線ML-に対してアースEに直流電源S2の電圧VDCを印加し、電流検出抵抗R1の電圧VR1Bおよび電流検出抵抗R2の電圧VR2Bを計測する。これらの電流検出抵抗R1、R2と電圧VR1B、VR2Bからそこを流れる電流(第2の電流(値))を取得できる。
【0095】
モータ1に絶縁劣化がある場合は、直流電源S2の電圧がモータの絶縁抵抗Rm1を通して半導体スイッチング素子TR4に印加され、電流検出抵抗R1と半導体スイッチング素子TR4に電流が流れる。
【0096】
同様にモータ2に絶縁劣化がある場合は、直流電源S2の電圧がモータの絶縁抵抗Rm2を通して半導体スイッチング素子TR10に印加され、電流検出抵抗R2と半導体スイッチング素子TR10に電流が流れる。
【0097】
また、平滑コンデンサC1、C2の電圧、すなわちインバータの直流電圧VPNが半導体スイッチング素子TR1、TR4に印加された状態のため、半導体スイッチング素子TR1からTR4へと電流が流れ、また、電流検出抵抗R1にも電流が流れる。
【0098】
同様に、半導体スイッチング素子TR7からTR10へと電流が流れ、また、電流検出抵抗R2にも電流が流れる。
【0099】
これらの半導体スイッチング素子TR1からTR4へと流れる電流及びTR7からTR10へと流れる電流は、これらの半導体スイッチング素子の漏れ電流である。しかし、これら半導体スイッチング素子の漏れ電流は、一般にモータの絶縁抵抗の低下により流れる電流と比較すると小さいので、平滑コンデンサの電圧C1、C2はほとんど低下しないと想定することができる。
【0100】
この時、以下の式(2-1)、(2-2)が成り立つ。なお、式(2-1)は前掲の式(2-1)と同じである。
【0101】
(VPN-VR1B)/Rtr1+(VDC-VR1B)/Rm1=VR1B/Rtr1+VR1B/R1・・・(2-1)
(VPN-VR2B)/Rtr2+(VDC-VR2B)/Rm2=VR2B/Rtr2+VR2B/R2・・・(2-2)
【0102】
モータ1の絶縁抵抗Rm1は、前記式(1-1)と式(2-1)の連立方程式を解くことにより、以下の式で求めることができる。なお、次式(3-1)は前掲の式(3-1)と同じである。
【0103】
Rm1=R1(VDC-VR1B)(VPN-2VR1A)/{(VR1B-VR1A)VPN}・・・(3-1)
【0104】
また、モータ2の絶縁抵抗Rm2は、前記式(1-2)と式(2-2)の連立方程式を解くことにより、以下の式で求めることができる。
【0105】
Rm2=R2(VDC-VR2B)(VPN-2VR2A)/{(VR2B-VR2A)VPN}・・・(3-2)
【0106】
これらの演算は、検出制御部41、42で行われている。なお、電流検出抵抗R1、R2の電圧VR1A、VR2Aの検出は、それぞれ1回ずつ検出することにより絶縁抵抗値Rm1、Rm2を算出することができることはいうまでもないが、両電圧VR1A、VR2Aのいずれか一方又は両方を複数回測定し、測定した電圧の各種平均値を採用しても差支えない。
【0107】
このような各種平均値を用いた場合には、ノイズ等により生じる異常値の影響を軽減できることのほか、より精度の高い絶縁抵抗値Rm1、Rm2を得ることができる。
【0108】
モータ1、2の絶縁抵抗Rm1、Rm2が非常に小さく、半導体スイッチング素子TR1~TR12の負側の半導体スイッチング素子TR4~TR6、TR10~TR12が短絡破損しているような場合は、直流電源S2からモータ1、2の絶縁劣化部を通して負側の半導体スイッチング素子TR4~TR6、TR10~TR12に電流が流れるが、直流電源S2の電流容量は、平滑コンデンサC1、C2と比較すると非常に小さくすることができるため、流れる電流を僅かなものにとどめることができる。
【0109】
したがって、負側の半導体スイッチング素子TR4~TR6、TR10~TR12の2次破損や、さらなるモータ1、2の絶縁劣化を生じさせるおそれはない。
【0110】
本態様では、2つのモータ1、2を使用する2軸のモータ制御装置における本発明の態様について説明したが、3軸以上の場合においても、同様に本発明を適用することが可能である。本前記態様がそうであるように、3軸以上の場合であっても、直流電源S2は少なくとも1軸にのみに設ければ足りる。
【0111】
さらに、本態様では、モータ制御装置Cont1、Cont2として、半導体スイッチング素子からなる三相インバータを用いているが、単相モータを駆動する場合には単相インバータを用いても良い。なお、インバータ方式は、前記態様のものに限定されるものではなく、フルブリッジであってもハーフブリッジであっても良い。
【0112】
加えて、前記態様では、半導体スイッチング素子TR1~TR12のゲートドライブ電源は、通常の絶縁電源(図示せず)を用いているが、必要に応じて、ブートストラップ電源、高耐圧IC、その他各種電源の組み合わせなど、任意のゲートドライブ電源を選択し得る。
【0113】
これらの構成は、モータ制御装置Cont1とモータ制御装置Cont2とで同じでなくてはならないというものはなく、異なるものを組み合わせるなど、本発明の目的を実現できるものであれば、任意の態様が採用可能である。
【0114】
次に、
図2における、絶縁抵抗検出回路を構成する接地用スイッチの短絡故障による漏電を防止しするための漏洩電流保護部5について説明する。
【0115】
図1に示したようなモータ制御装置において、負側母線ML
-と直流電源S
2との間に漏洩電流保護部5を配置していたが、
図2に示したようなモータ制御装置においては、負側母線ML
-と第3スイッチSW
2との間にも、もう一つの漏洩電流保護部5を配置している。漏洩電流保護部5の構成や作用について説明すると、電源オン検出部が三相交流電源S1の電圧が印加されているオン状態を出力し、かつSW1側とSW2側のどちらかの漏洩電流検出部5の出力が、所定値以上の漏洩電流が流れている状態を出力した場合には
、電磁接触器制御部は、第2スイッチSW1もしくは第3スイッチSW2のいずれかの短絡故障による漏洩電流が生じていると判別し、電磁接触器MSを速やかにオフにする。
【0116】
図2に示したようなモータ制御装置においては、接地コンデンサC
3、C
4に蓄積した電荷を放電させるための第3スイッチSW
2についても、漏洩電流の保護を行うことができる。
【0117】
図3には、本発明が適用されるモータ制御装置のさらに別の態様を示す。
【0118】
図3に示すモータ制御装置C
ont1とモータ制御装置C
ont2との構成は、
図2に示した態様と基本的構成は同じであるが、第2スイッチSW
1と第3スイッチSW
2との複合(連携)スイッチを採用している点で相違している。ここでは、第3スイッチSW
2は、開閉スイッチではなく、少なくとも直流母線ML
-に通じる接点aに接続する状態と第2電源S2に通じる接点bに接続する状態とのいずれか一方にのみ接触することが可能な選択スイッチとして構成されている。
【0119】
この場合のモータ制御装置Cont1、Cont2の作動について以下説明をする。
【0120】
通常のモータ制御時は、第3スイッチSW2は接点aと接続された状態で、第2スイッチSW1はオフのまま、電磁接触器MSをオンとし、インバータにより各軸のモータ制御が行われる。その際、第3スイッチSW2接点aと接続された状態のままである。
【0121】
絶縁抵抗検出時は、モータ制御装置Cont1、Cont2を以下のとおり作動させる。
【0122】
全軸のモータ制御動作を停止させ、半導体スイッチング素子TR1~TR12をオフにし、電磁接触器MSを遮断する。そして、第3スイッチSW2が負側母線ML-に通じる接点aを選択している状態として、第2スイッチSW1をオフからオンに切り替えて接地回路を構成する。次いで、所定時間後に、第2スイッチSW1をオンからオフに切り替えて接地回路を遮断して、インバータの直流電圧VPNと電流検出抵抗R1の電圧VR1A、電流検出抵抗R2の電圧VR2Aを計測する。
【0123】
次に第3スイッチSW2を第2電源部S2に通じる接点bを選択している状態とし、第2スイッチSW1をオフからオンに切り替えて接地回路を構成する。次いで、負側母線ML-に対してアースEに直流電源S2の電圧VDCを印加し、電流検出抵抗R1の電圧VR1Bおよび電流検出抵抗R2の電圧VR2Bを計測する。これらの電流検出抵抗R1、R2と電圧VR1B、VR2Bからそこを流れる電流(第2の電流(値))を取得できる。
【0124】
その余の動作やモータ1、2の絶縁抵抗Rm1、Rm2の測定・算出方法は、前記した本発明が適用されるモータ制御装置の1態様と同じである。
【0125】
前記した本発明が適用されるモータ制御装置の各態様は、第2スイッチSW1と第3スイッチSW2の構成が異なっているが、要は、モータ1、2の絶縁抵抗Rm1、Rm2を測定する際に、接地コンデンサC3、C4に蓄積した電荷を放電させてから、直流電圧S2の印加による電流検出を行えるようにするため、第2スイッチSW1と第3スイッチSW2と同じ機能を有するスイッチである限り、どのような構成のスイッチであっても差し支えない。
【0126】
次に、
図3における、絶縁抵抗検出回路を構成する接地用スイッチの短絡故障による漏電を防止しするための漏洩電流保護部5について説明する。
【0127】
漏洩電流検出部5は、第2スイッチSW1と第3スイッチSW2とが複合(連携)スイッチとされており、第2スイッチSW1のスイッチの短絡故障を検出するために、第3スイッチSW2と第2スイッチSW1との間に一つ設けられている。
【0128】
漏洩電流保護部5の構成や作用について説明すると、電源オン検出部が三相交流電源S1の電圧が印加されているオン状態を出力し、かつ漏洩電流検出部5の出力が、所定値以上の漏洩電流が流れている状態を出力した場合には、電磁接触器制御部は、第2スイッチSW1の短絡故障による漏洩電流が生じていると判別し、電磁接触器MSを速やかにオフにする。
なお、漏洩電流検出部5は、前記
図1、2のような位置に設けても良く、また、第2スイッチSW
1と接地点Eとの間に設けてもよい。
【0129】
以上、本発明の態様について縷々説明したが、本発明の技術的範囲は、これまでの説明において具体的に明示したものに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項によって包含される態様はすべて含まれるものである。また、個々の用語や説明は、その技術的範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0130】
モータ 1、2
アース E
絶縁抵抗 Rm1、Rm2
モータ制御装置1 Cont1
モータ制御装置2 Cont2
三相交流電源(第1電源部) S1
電磁接触器(第1スイッチ) MS
整流回路(直流供給部) SDC
母線 ML
正側母線 ML+
負側母線 ML-
平滑コンデンサ(コンデンサ) C(C1、C2)
接地コンデンサ C3、C4
インバータの直流電圧 VPN
半導体スイッチング素子 TR1~TR12
半導体スイッチング素子の等価漏れ抵抗 Rtr1、Rtr2
フリーホイールダイオード Df
絶縁抵抗算出部 3(31、32)
直流電源(第2電源部) S2
直流電源の電圧 VDC
第2スイッチ SW1
検出制御部(電流検出部) 4(41、42)
電流検出抵抗 R1、R2
電流検出抵抗R1の電圧 VR1A
電流検出抵抗R2の電圧 VR2A
第3スイッチ SW2
漏洩電流検出抵抗 R3
漏洩電流保護部 5
漏洩電流検出部 6
電源オン検出部 7
電磁接触器制御部 8