(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 87/08 20060101AFI20231116BHJP
A01K 87/06 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A01K87/08 B
A01K87/06 B
(21)【出願番号】P 2020196719
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛之濱 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】中畑 美徳
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-201570(JP,A)
【文献】特開2019-097508(JP,A)
【文献】特開2016-086710(JP,A)
【文献】特開2020-031581(JP,A)
【文献】特開2007-029052(JP,A)
【文献】特開2007-116993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00-87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールが着脱されるリールシート、柔軟部材で形成されたグリップ及び前記リールシートと前記グリップとの間に配設されるリング部材に竿杆が挿入された釣竿であって、
前記リング部材は、円筒状の筒部と、前記筒部の外周面から外側に張り出すフランジ部と、を有し、前記グリップよりも硬い材料で形成されており、
前記筒部は、前記フランジ部より竿先側に延設された竿先側筒部と、前記フランジ部より竿元側に延設された竿元側筒部と、を有し、
前記フランジ部は、前記リールシートの端面及び前記グリップの端面にそれぞれ対向し接着されており、
前記竿先側筒部の外周面は前記リールシートの内周面に嵌合され接着されているとともに、前記竿元側筒部の外周面は前記グリップの内周面に嵌合され接着されて
おり、
同一心となる前記リールシート、前記グリップ及び前記リング部材の軸心C2に対して、前記竿杆の軸心C1が下方にずれて配設されており、
前記竿元側筒部の内周面の一部が、前記竿杆の外周面の一部に当接していることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記竿元側筒部の外周面、前記竿先側筒部の外周面、前記フランジ部の一端面及び前記フランジ部の他端面の少なくとも一つに、溝部が形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記竿先側筒部、前記竿元側筒部及び前記フランジ部の少なくとも一つに、貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記竿先側筒部の長さ寸法と、前記竿元側筒部の長さ寸法とが異なっていることを特徴とする請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リールが着脱されるリールシート、柔軟部材で形成されたグリップ及びリールシートとグリップとの間に配設される環状部材に竿杆が挿入された釣竿が開示されている。グリップは、大径部と、大径部の竿先側に形成され環状部材が挿入された小径部とを備えている。当該釣竿は、リールシートの竿元側の内周面に、前記環状部材が挿入されたグリップの小径部を嵌め合わせて(もぐり込ませて)接着により固定されている。
【0003】
また、当該釣竿は、リールシート及びグリップの軸心と、竿杆の軸心とがずれて固定された偏心構造となっている(オフセンター構造)。つまり、竿杆の軸心が、リールシート及びグリップの軸心よりも下方に位置するように形成されている。これにより、利用者は、リール、リールシート及びグリップを包むように握り込むパーミングがし易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グリップは、コルクや、発泡性樹脂のEVA(ethylene vinyl acetate copolymer)等の柔軟部材で形成されているため加工精度が低く、環状部材とグリップとの間に隙間が発生するという問題がある。また、従来の釣竿は、グリップの小径部をリールシートの内周面にもぐり込ませて接着する構造になっている。したがって、例えば、経年劣化などにより、環状部材とグリップとの隙間から水が浸入すると、当該水がリールシート内に浸入し易いという問題がある。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、内部への水の浸入を防ぐことができる釣竿を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、リールが着脱されるリールシート、柔軟部材で形成されたグリップ及び前記リールシートと前記グリップとの間に配設されるリング部材に竿杆が挿入された釣竿であって、前記リング部材は、円筒状の筒部と、前記筒部の外周面から外側に張り出すフランジ部と、を有し、前記グリップよりも硬い材料で形成されており、前記筒部は、前記フランジ部より竿先側に延設された竿先側筒部と、前記フランジ部より竿元側に延設された竿元側筒部と、を有し、前記フランジ部は、前記リールシートの端面及び前記グリップの端面にそれぞれ対向し接着されており、前記竿先側筒部の外周面は前記リールシートの内周面に嵌合され接着されているとともに、前記竿元側筒部の外周面は前記グリップの内周面に嵌合され接着されており、同一心となる前記リールシート、前記グリップ及び前記リング部材の軸心C2に対して、前記竿杆の軸心C1が下方にずれて配設されており、前記竿元側筒部の内周面の一部が、前記竿杆の外周面の一部に当接していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、リールシート及びグリップを、フランジ部を挟んで竿先側筒部及び竿元側筒部にそれぞれ嵌め合わせつつ、それぞれ接着する構造になっているため、接着強度を高めることができる。これにより、釣竿内への水の浸入を防ぐことができる。
【0010】
ここで、当該構成のように、オフセンター構造になっていると、各部材を組み付ける際に、リールシート、グリップ及びリング部材の芯ずれが発生し易くなるという問題がある。また、柔軟部材で形成されたグリップの加工精度が低いことも芯ずれの要因となり得る。芯ずれが発生すると、把持性や外観が悪化するという問題がある。
これに対し、本発明によれば、竿元側筒部の内周面の一部を、竿杆の外周面の一部に当接させることでリールシート、グリップ及びリング部材の位置決めがし易くなり芯ずれを防ぐことができる。また、オフセンター構造とすることで、リールと手の距離を短くすることができ、パーミング性が向上する。
【0011】
また、前記竿元側筒部の外周面、前記竿先側筒部の外周面、前記フランジ部の一端面及び前記フランジ部の他端面の少なくとも一つに、溝部が形成されていることが好ましい。本発明によれば、溝部に接着剤が入り込むため、接着強度を高めることができる。
【0012】
また、前記竿先側筒部、前記竿元側筒部及び前記フランジ部の少なくとも一つに、貫通孔が形成されていることが好ましい。本発明によれば、貫通孔に接着剤が入り込むため、接着強度を高めることができる。
【0013】
また、前記竿先側筒部の長さ寸法と、前記竿元側筒部の長さ寸法とが異なっていることが好ましい。例えば、竿先側筒部及び竿元側筒部のうち、長い方がグリップ側と決めておくことにより、リング部材の配置方向を明確にすることができ、組み付けの際の作業性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内部への水の浸入を防ぐことができる釣竿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る釣竿を示す側断面図である。
【
図2】本実施形態のリング部材を示す斜視図である。
【
図3】
図1のリング部材周りの拡大側断面図である。
【
図4】本実施形態のグリップ及びリング部材に竿杆を挿入した状態を示す側断面図である。
【
図5】第一変形例に係るリング部材を示す斜視図である。
【
図6】第二変形例に係るリング部材を示す斜視図である。
【
図7】第三変形例に係るリング部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る釣竿について、図面を参照して説明する。実施形態において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、「上下」、「竿先側」、「竿元側」については
図1の矢印に従う。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る釣竿1は、リールシート2と、グリップ3と、リング部材4と、竿杆5とを備えている。釣竿1は、リールシート2、グリップ3及びリング部材4の内部に竿杆5が挿入されている。
【0018】
リールシート2は、リール(図示省略)が固定される筒状の部材である。リールシート2の材料は特に制限されないが、本実施形態では軽量化を考慮して樹脂で形成されている。リールシート2は、リールシート本体11と、可動フード12と、ナット13と、固定フード14と、トリガー15と、内筒16とを備えている。リールシート本体11の上部には、リールの脚部を固定するための可動フード12及び固定フード14が形成されている。可動フード12は、ナット13を軸心C1周りに回転させることで軸心C1方向(竿先側又は竿元側)に移動可能になっている。リールの脚部の竿元側を固定フード14に挿入した後、可動フード12を竿元側に移動させることで、リールを固定することができる。
【0019】
リールシート2の竿元側の端部には、円形の開口部が形成されており、竿元側に向けて開放されている。当該開口部に、後記するリング部材4の竿先側筒部32が挿入される。
【0020】
トリガー15は、リールシート本体11の下部から下方に突出する部位である。例えば、トリガー15を中指と薬指とで挟んで把持することで操作性を向上させることができる。内筒16は、リールシート本体11の内部に形成された筒状の中空部である。
図3にも示すように、内筒16の内部に竿杆5が挿入されている。内筒16の内周面16cと竿杆5の外周面5bとは接着剤により接着されている。
【0021】
なお、リールシート2は、内筒16を除いて中実の部材としてもよいが、本実施形態では軽量化を目的として竿元側に中空部17が形成されている。また、リールシート2は、デザイン性を高めるために透明な材料で形成してもよい。また、リールシート2は、本実施形態では一部材で形成されているが、複数の部材を組み合わせて形成してもよい。
【0022】
図1に示すように、グリップ3は、柔軟部材で形成され利用者が把持する部位である。グリップ3は、例えば、天然コルク、人工コルク、発泡性樹脂のEVA(ethylene vinyl acetate copolymer)等の柔軟部材で形成されている。グリップ3は、竿元側に向けて緩やかに縮径する円筒状を呈する。グリップ3の竿先側の端部の外径は、リールシート2の竿元側の端部の外径と概ね同じ寸法になっている。グリップ3の内部には、断面円形の中空部が形成されており、当該中空部に竿杆5が挿入されている。
図3にも示すように、グリップ3の中空部の内周面3cと竿杆5の外周面5bとは接着剤により接着されている。
【0023】
図3にも示すように、グリップ3の竿先側の端部は、円形の開口部が形成されており、竿先側に向けて開放されている。当該端部には、後記するリング部材4の竿元側筒部33が挿入される段差部21が形成されている。段差部21は、軸心C1と直交する段差底面21aと、段差底面21aに対して垂直となる段差側面(内周面)21bとを備えている。
【0024】
図2に示すように、リング部材4は、筒部30と、筒部30の外周面から外側に張り出すフランジ部31とを備えている。リング部材4は、グリップ3よりも硬い材料で形成されている。リング部材4は、本実施形態では、例えば金属で形成されている。筒部30は、フランジ部31より竿先側に延設された竿先側筒部32と、フランジ部31より竿元側に延設された竿元側筒部33とを備えている。
【0025】
フランジ部31は、面内方向が軸心C1と直交するように配置されている。フランジ部31の外径は、リールシート2の竿元側の端部の外径及びグリップ3の竿先側の端部の外径と同じ寸法か、これらよりも若干小さくなっている。
【0026】
竿先側筒部32は、フランジ31の一端面(竿先側の面)31aに対して垂直に延設された円筒部位である。竿元側筒部33は、フランジ部31の他端面(竿元側の面)31bに対して垂直に延設された円筒部位である。
【0027】
竿先側筒部32の長さ寸法(軸心C1方向の長さ)は、竿元側筒部33の長さ寸法よりも短くなっている。竿先側筒部32及び竿元側筒部33の長さ寸法は、例えば、3~10mmの範囲で適宜設定すればよい。竿先側筒部32の内周面32bの内径は、竿元側筒部33の内周面33bの内径寸法よりも若干大きくなっている。また、竿元側筒部33の外周面33aには、溝部33cが形成されている。溝部33cは、溝加工によって微細な溝が周方向に亘って複数条形成された部位である。
【0028】
図3に示すように、フランジ部31の一端面31aは、リールシート本体11の竿元側の端面11aに周方向に亘って対向するとともに周方向に亘って接着剤で接着されている。また、竿先側筒部32は、リールシート2の竿元側の開口部に嵌め合わされるとともに、接着剤で接着されている。より詳しくは、竿先側筒部32の外周面32aは、リールシート本体11の竿元側の内周面11cに周方向に亘って対向するとともに周方向に亘って接着剤で接着されている。竿先側筒部32の内周面32bと、竿杆5とは微細な隙間をあけて離間している。
【0029】
図3に示すように、フランジ部31の他端面31bは、グリップ3の端面3aに周方向に亘って対向するとともに周方向に亘って接着剤で接着されている。また、竿元側筒部33は、グリップ3の竿先側の段差部21に嵌め合わされるとともに、接着剤で接着されている。より詳しくは、竿元側筒部33の外周面33aは、グリップ3の段差側面(内周面)21bに周方向に亘って対向するとともに、接着剤で接着されている。また、竿元側筒部33の内周面33bの一部は、竿杆5の外周面5bの一部に当接し、接着剤で接着されている。
【0030】
図3に示すように、リールシート2、グリップ3及びリング部材4の軸心は、軸心C2で同心になっている。竿杆5の軸心C1は、軸心C2よりも下方に位置している。つまり、本実施形態に係る釣竿1は、オフセンター構造になっている。
【0031】
次に、本実施形態に係る釣竿の組付け方法について説明する。本実施形態に係る釣竿の組付け方法では、アッセンブリ工程と、第一挿入工程と、第二挿入工程とを行う。
【0032】
アッセンブリ工程は、
図4に示すように、グリップ3とリング部材4とを一体化させる工程である。アッセンブリ工程では、グリップ3及びリング部材4の少なくとも一方に接着剤を塗布し、グリップ3の段差部21にリング部材4を接着する。より詳しくは、例えば、グリップ3の端面3a及び段差側面21bに接着剤を塗布した後、フランジ部31の他端面31b及び竿元側筒部33の外周面33aをそれぞれ接着する。これにより、グリップ3とリング部材4とで構成されたアッセンブリが形成される。
【0033】
第一挿入工程は、グリップ3に竿杆5を挿入する工程である。第一挿入工程では、竿杆5の外周面5b及びグリップ3の内周面3cの少なくとも一方に接着剤を塗布した後、グリップ3の内周面3cに竿杆5を挿入し、両者を接着する。この時、竿杆5の外周面5bの一部と、竿元側筒部33の内周面33bの一部とを当接させつつ、接着させる。
【0034】
第二挿入工程は、
図3に示すように、竿杆5にリールシート2を挿入する工程である。第二挿入工程では、竿杆5の外周面5b及びリールシート2の内筒16の内周面の少なくとも一方に接着剤を塗布し、竿杆5に竿先からリールシート2を挿入し両者を接着する。
【0035】
また、第二挿入工程では、リールシート本体11の内周面11c及びリング部材4の少なくとも一方に接着剤を塗布し、リールシート本体11とリング部材4とを接着する。より詳しくは、例えば、リールシート本体11の端面11a及び内周面11cに接着剤を塗布し、リールシート本体11の開口部を竿先側筒部32に嵌め合わせ、フランジ部31の一端面31a及び竿先側筒部32の外周面32aに、リールシート本体11の端面3a及び内周面11cをそれぞれ接着する。これにより、釣竿1を形成することができる。
【0036】
なお、前記した釣竿の組付け方法は、一例であって、他の方法、他の順番で組み付けてもよい。
【0037】
<作用効果>
ここで、前記した従来の釣竿であると、リールシートの竿元側の内周面に、環状部材が挿入されたグリップの小径部を嵌め合わせて(もぐり込ませて)接着により固定していた。しかし、柔軟部材で形成されたグリップの加工精度が低いため、例えば、経年劣化などにより、環状部材とグリップとの隙間から水が浸入すると、当該水がリールシート内にも浸入するという問題があった。また、本実施形態のようにリールシート2の内部に中空部17を設ける形態であると、水が入ると異音がするという問題がある。また、例えば、リールシート2を透明部材で形成すると、水が目立ってしまいデザイン性が悪化する。
【0038】
この点、本実施形態に係る釣竿1によれば、リールシート2及びグリップ3を、フランジ部31を挟んで竿先側筒部32及び竿元側筒部33にそれぞれ嵌め合わせつつ、それぞれ接着する構造になっているため、接着強度を高めることができる。より詳しくは、フランジ部31を挟んで竿先側筒部32の外周面32a及び竿元側筒部33の外周面33aが、それぞれリールシート本体11の内周面11c、グリップ3の段差側面(内周面)21bに接着するため、接着強度を高めることができる。また、フランジ部31もリールシート本体11の端面11a及びグリップ3の端面3aにそれぞれ対向し、接着されているため、接着強度をより高めることができる。これにより、釣竿1内への水の浸入を防ぐことができる。
【0039】
またここで、前記した従来の釣竿のようにオフセンター構造になっていると、各部材を組み付ける際に、リールシート2、グリップ3及びリング部材4の周方向の位置決めが困難となり、芯ずれが発生し易くなるという問題がある。芯ずれが発生すると、把持性や外観が悪化するという問題がある。特に、柔軟部材で形成されたグリップ3の加工精度が低いため、より芯ずれが発生し易くなるという問題がある。
【0040】
この点、本実施形態に係る釣竿1によれば、第一挿入工程において、竿元側筒部33の内周面33bの一部を、竿杆5の外周面5bの一部に当接させることでリールシート2、グリップ3及びリング部材4の周方向の位置決めがし易くなり、芯ずれを防ぐことができる。また、オフセンター構造とすることで、リールと手の距離を短くすることができ、パーミング性が向上する。
【0041】
より詳しくは、前記した第一挿入工程においてグリップ3、リング部材4及び竿杆5の位置が決まる。また、グリップ3の内周面3cに竿杆5の外周面5bが当接することで、グリップ3と竿杆5との位置が決まる。さらに、竿杆5の外周面5bの一部を、竿元側筒部33の内周面33bの一部に当接させることで、グリップ3、リング部材4及び竿杆5の位置が決まる。そして、これらの部材の位置が決まったら、竿先からリールシート2を挿入し、リールシート2の竿元側の開口部を、竿先側筒部32に嵌め合わせるだけでよい。これにより、オフセンター構造を採用した場合であっても、竿杆5とリング部材4との芯ずれ、リング部材4とリールシート2との芯ずれ、及び、リング部材4とグリップ3との芯ずれをいずれも簡易に防ぐことができる。
【0042】
また、リールシート2(樹脂)及びリング部材4(金属)は加工精度が比較的良好であるため、両者間の芯ずれを防ぐとともに防水効果も向上させることができる。また、リング部材4の竿元側に竿元側筒部33を設けつつ、グリップ3に段差部21を設けることで、両者が好適な位置にガイドされるため芯ずれをより防ぐことができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、竿元側筒部33の外周面33aに、溝部33cが形成されているため、リング部材4の配置方向を明確にすることができる。つまり、組み付け作業者は、例えば、リング部材4の向きを正確に把握できるため、作業性を高めることができる。また、溝部33cに接着剤が入り込むため、接着性を高めることができる。なお、溝部33cは、竿先側筒部32の外周面32aに設けてもよいが、グリップ3の加工精度が低いため、本実施形態のように竿元側筒部33の外周面33aに設けたが方がグリップ3とリング部材4との接着性を高めることができ、より効果的である。
【0044】
なお、溝部33cを設ける場合は、竿先側筒部32の外周面32a、竿元側筒部33の外周面33a、フランジ部31の一端面31a及びフランジ部31の他端面31bの少なくとも一つに設けるようにすればよい。また、溝部33cは、本実施形態では周方向に刻設された複数条の溝としたが、単一の溝としてもよいし、単一又は複数の窪み(凹部)としてもよい。また、溝部33cは、各面の一部又は全部に粗面化処理を施して形成してもよい。つまり、接着強度や組み付け時の作業性を考慮して、溝の形状や大きさを適宜選択すればよいし、溝部33cを形成する面を適宜選択すればよい。
【0045】
また、本実施形態によれば、竿先側筒部32の長さ寸法と、竿元側筒部33の長さ寸法とが異なっている。これにより、例えば、竿先側筒部32及び竿元側筒部33のうち、寸法の長い竿元側筒部33がグリップ3側と決めておくことにより、リング部材4の配置方向を明確にすることができる。竿元側筒部33よりも竿先側筒部32を長くしてもよいが、柔軟部材で形成されたグリップ3の加工精度が低いため、本実施形態のように竿先側筒部32よりも竿元側筒部33を長くした方が好ましい。これにより、グリップ3と竿元側筒部33との接着面積を大きくすることができるため、接着強度を高めることができるとともに、異音の防止(鳴き防止)を図ることができる。また、寸法の長い方となる竿元側筒部33に溝部33cを設けることで、リング部材4の配置方向をより明確にすることができる。
【0046】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態の釣竿1は、オフセンター構造を例示したが、リールシート2、グリップ3、リング部材4及び竿杆5の軸心が全て同心である構造で本発明を適用してもよい。また、本実施形態では、竿先側筒部32の内周面32bの内径を、竿元側筒部33の内周面33bの内径よりも若干大きく形成したが、両者は同一寸法であってもよい。
【0047】
<変形例>
図5は、第一変形例に係るリング部材を示す斜視図である。
図5に示すように、第一変形例に係るリング部材4Aは、竿先側筒部32に貫通する長丸状の貫通孔41を備えている。本変形例では、長丸状を呈する貫通孔41を等間隔に3つ設けているが、形状、間隔及び個数は適宜変更してもよい。
【0048】
図6は、第二変形例に係るリング部材を示す斜視図である。
図6に示すように、第二変形例に係るリング部材4Bは、フランジ部31に貫通する長丸状の貫通孔41を備えている。本変形例では、長丸状を呈する貫通孔41を等間隔に3つ設けているが、形状、間隔及び個数は適宜変更してもよい。
【0049】
図7は、第三変形例に係るリング部材を示す斜視図である。
図7に示すように、第三変形例に係るリング部材4Cは、竿元側筒部33に貫通する長丸状の貫通孔41を備えている。本変形例では、長丸状を呈する貫通孔41を等間隔に3つ設けているが、形状、間隔及び個数は適宜変更してもよい。
【0050】
貫通孔41を設けることでリング部材4(釣竿1)の軽量化を図ることができる。また、貫通孔41に接着剤が入り込むことで接着面積が大きくなるため接着強度を高めることができる。貫通孔41を設ける場合、竿先側筒部32、竿元側筒部33及びフランジ部31の少なくとも一つに設けるようにすればよい。つまり、接着強度や組み付け時の作業性を考慮して、貫通孔41の形状や間隔等を適宜選択すればよいし、貫通孔41を形成する部位を適宜選択すればよい。
【符号の説明】
【0051】
1 釣竿
2 リールシート
3 グリップ
4 リング部材
5 竿杆
21 段差部
21a 段差底面
21b 段差側面(内周面)
30 筒部
31 フランジ部
32 竿先側筒部
33 竿元側筒部
33c 溝部
41 貫通孔
C1 軸心
C2 軸心