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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】子宮摘出術モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20231116BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20231116BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G09B23/30
G09B9/00 Z
G09B19/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020518414
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 US2018060926
(87)【国際公開番号】W WO2019099448
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】62/586,059
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ホフステッター グレゴリー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス アニーザ
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0148356(US,A1)
【文献】国際公開第2017/059417(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28-23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科訓練のための手術シミュレータであって、
基部、上壁及び2つの側壁を有するフレームであって、該フレームの長手方向軸に沿って延びる内腔を定め、該内腔は、近位開口部及び遠位開口部の少なくとも一方を有し、前記2つの側壁の少なくとも一方は複数のアパーチャを有し、該複数のアパーチャが少なくとも2つの横並びのアパーチャを備えている、フレームと、
前記内腔内に連結され懸架される少なくとも1つの人工組織構造物と、を備え、該少なくとも1つの人工組織構造物が複数の模擬血管系を含み、
該複数の模擬血管系の少なくとも1つの模擬血管系は、前記少なくとも2つのアパーチャのうちの第1のアパーチャを貫通して前記フレームから外に出て、前記第1のアパーチャの隣にある前記少なくとも2つのアパーチャのうちの第2のアパーチャを通って前記フレームに再導入される自由端を有し、これによって前記少なくとも2つのアパーチャの間の中に取り囲まれる前記フレームの部分とともループを形成し、前記複数の模擬血管系の少なくとも1つによって形成された前記形成されたループが、それ自身および前記フレームに固定され、前記フレームの部分を前記形成されたループ内に位置決めし、前記フレームと前記複数の模擬血管系のうちの少なくとも1つとの間の摩擦を最小化する、
ことを特徴とする手術シミュレータ。
【請求項2】
前記複数の模擬血管系の少なくとも1つの模擬血管系の前記自由端は、前記フレームの前記内腔内の前記複数の模擬血管系の前記少なくとも1つの模擬血管系の一部に接着されて前記形成されたループを形成する、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項3】
前記複数の模擬血管系の前記少なくとも1つの模擬血管系は第1の材料で形成され、前記フレームの前記2つの側壁の少なくとも一方は、前記複数の模擬血管系のうちの前記少なくとも1つの模擬血管系の前記第1の材料よりも剛性の高い第2の材料で形成される、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項4】
前記複数のアパーチャは、前記基部に隣接する少なくとも1つのアパーチャを有し、前記手術シミュレータは、前記基部に隣接する前記少なくとも1つのアパーチャを通じて延びて前記2つの側壁の前記少なくとも一方を前記基部に固定する少なくとも1つの締結具をさらに備える、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項5】
前記複数のアパーチャは、前記上壁に隣接する少なくとも1つのアパーチャを含み、前記手術シミュレータは、前記上壁に隣接する前記少なくとも1つのアパーチャを通じて延びて前記2つの側壁の前記少なくとも一方を前記上壁に固定する少なくとも1つの締結具をさらに備える、
請求項4に記載の手術シミュレータ。
【請求項6】
模擬子宮、膣管、頸部、卵管、膀胱、直腸及び腹膜の少なくとも1つから成る群から選択された1又は2以上の人工組織構造物をさらに備える、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項7】
トップカバーと、該トップカバーとの間に空洞を定める基部とを有する腹腔鏡練習機をさらに備え、該練習機は、前記トップカバーと前記基部との間に少なくとも1つのアパーチャを有し、前記アパーチャは、前記少なくとも1つの人工組織構造物を取り付けて該少なくとも1つの人工組織構造物へのアクセスを可能にするように構成される、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項8】
前記フレームの一部に直接、接続され、かつ前記少なくとも1つの人工組織構造物の底部に直接接続された少なくとも1枚のシリコーンシートをさらに備えている、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項9】
前記フレームが、第1の高さと、第2の上昇した高さを備えている、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項10】
前記複数の模擬血管系の1または2以上が管形状である、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項11】
前記複数の模擬血管系がシリコーンで作られている、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項12】
前記複数の模擬血管系の1または2以上が、自由端に、前記フレームに取付けられるように構成されたリベットを有している、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項13】
前記複数の模擬血管系の少なくとも1つの前記形成されたループを前記フレームに固定するために、前記複数の模擬血管系の少なくとも1つの前記形成されたループへの接着剤として付けられた未硬化シリコーンをさらに有し、
前記未硬化シリコーンが前記少なくとも1の模擬血管系が引き裂かれないように構成されている、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項14】
前記複数の模擬血管系の1または2以上が、前記フレームの管腔内で少なくとも1つの前記人工組織構造物の懸架に対して調整可能な張力を有するように構成されている、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項15】
前記複数の模擬血管系の少なくとも1本の調整可能な張力が、前記フレーム内で前記複数の模擬血管系の少なくとも1本が有している弛みの量に基づいている、
請求項14に記載の手術シミュレータ。
【請求項16】
前記複数の模擬血管系の少なくとも1本の調整可能な張力が、前記人工組織構造物の揺れを許容する程度に対応する、
請求項14に記載の手術シミュレータ。
【請求項17】
前記フレームが、相互連結部材によって取り外し自在に連結された2または3以上の構造物を備えている、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項18】
前記基部が、前記フレームと前記少なくとも1つの人工組織構造物との間のシリコーン間接着を提供するようにシリコーンのシートを備え、該シリコーンのシートが、前記フレームの基部に着脱自在に連結されている、
請求項1に記載の手術シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2017年11月14日に出願された米国仮特許出願第62/586,059号の利益を主張するものであり、この文献の開示はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般に外科訓練ツールに関し、具体的には、限定されるわけではないが、腹腔鏡、内視鏡及び低侵襲手術に関連する様々な外科的手術及び処置の指導及び練習のための模擬組織構造物及びモデルに関する。
【背景技術】
【0003】
医学生及び新たな外科手術を学ぶ熟練医師は、人間の患者に手術を行う資格を有する前に幅広い訓練を受けなければならない。この訓練では、様々な医療装置を使用して様々な組織タイプの切断、穿通、締め付け、把持、ステープリング、焼灼及び縫合を行う正しい技法を学ばなければならない。訓練生が遭遇し得る可能性の幅は広い。例えば、異なる器官、並びに患者の生体構造及び疾病が提示される。様々な組織層の厚み及び一貫性も身体部位毎及び患者毎に異なる。異なる処置には異なるスキルが必要である。さらに、訓練生は、患者の体格及び状態、標的組織のタイプ及び隣接する解剖学的景観、並びにこれらの組織に容易にアクセス可能であるか、それとも比較的アクセスが困難であるか、などの要因によって影響される様々な解剖学的環境で技術を磨かなければならない。
【0004】
1又は2以上の外科訓練的側面のために、数多くの補助教材、訓練機、シミュレータ及びモデル器官を利用することができる。しかしながら、内視鏡外科手術、腹腔鏡外科手術、低侵襲外科手術及び経腔的外科手術の練習に使用できる、遭遇する可能性の高いモデル又は模擬組織要素が必要とされている。腹腔鏡手術では、トロカール又はカニューレを挿入して体腔にアクセスし、腹腔鏡などのカメラを挿入するためのチャネルを形成する。カメラは、画像を取り込んだライブ配信動画を提供し、これらの画像が1又は2以上のモニタ上で外科医に表示される。別のトロカール/カニューレを挿入する少なくとも1つのさらなる小切開部を形成して経路を形成し、ここを通じて手術器具を通して、モニタ上で観察される処置を実行することができる。通常は、二酸化炭素ガスを送出することによって腹部などの標的組織部位を広げて体腔に吹き入れ、外科医が使用するスコープ及び器具を収容できるほど十分に広い作業空間を形成する。組織空洞内の送気圧は、特殊なトロカールを使用することによって維持される。腹腔鏡手術には、開腹手術と比べると多くの利点がある。これらの利点としては、切開部が小さくなることによって痛みが少なく、出血が少なく、回復期間が短いことが挙げられる。
【0005】
腹腔鏡又は内視鏡による低侵襲手術では、臨床医が直接標的組織を観察しないので、開腹術と比べて高いスキルレベルが求められる。標的組織は、小開口部を通じてアクセスされた手術部位の一部を表示するモニタ上で観察される。従って、臨床医は、2次元観察面における組織平面、3次元的奥行き知覚の視覚的判断、手作業による器具の移動、縫合、正確な切断、並びに組織及び器具の操作を練習する必要がある。通常、特定の生体構造又は処置をシミュレートするモデルは、開業医による直接可視化から解剖学的モデルを隠す模擬骨盤訓練機内に配置される。この訓練機では、直接可視化から隠れた解剖学的モデル上で技術を磨くように、器具を通すためのポートが使用される。模擬骨盤訓練機は、把持、操作、切断、糸結び、縫合、ステープリング、焼灼、及びこれらの基本スキルを利用する特殊な外科的処置の実行方法などの、腹腔鏡手術において使用される外科医及び研修医の基本スキル及び典型的技術を訓練するための機能的で安価で実用的な手段を提供する。模擬骨盤訓練機は、これらの腹腔鏡手術を実行するために必要な医療装置を示すのに効果的な販売ツールでもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2013/248,449号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
手術の1つに、子宮を取り除く子宮摘出術がある。子宮摘出術は、膣管を通じて経膣的に子宮を抽出することによって、或いは腹部の小切開部を通じて経腹的に抽出することによって実行することができる。膣式子宮摘出術は視野が限られているため、従来訓練が困難である。腹腔鏡手術とは異なり、画面上に手術を投影するカメラは存在せず、開腹手術とは異なり、複数の人々が見ることができる広い切開部は存在しない。従って、膣式子宮摘出術を学ばせる最良の方法は、シミュレーションモデルを通じた方法である。従って、子宮摘出術を訓練するためのモデルが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の様々な実施形態によれば、手術シミュレータが提供される。手術シミュレータはフレームを含み、フレームは、フレームの長手方向軸に沿って延びる内腔を定める基部及びトップカバーを含み、内腔は、近位開口部及び遠位開口部の少なくとも一方を有し、トップカバーは基部に接続され、基部は第1の材料で覆われる。手術シミュレータは、内腔内に接続されて懸架された少なくとも1つの人工組織構造物をさらに含み、少なくとも1つの人工組織構造物は、第2の材料で形成されて基部の第1の材料と直接接触する底部を有する。
【0009】
様々な実施形態によれば、手術シミュレータが、フレームと、少なくとも1つの人工組織構造物とを含む。フレームは、基部、上壁及び2つの側壁を含む。フレームは、フレームの長手方向軸に沿って延びる内腔を定め、内腔は、近位開口部及び遠位開口部の少なくとも一方を有する。2つの側壁の少なくとも一方は、複数のアパーチャを有する。少なくとも1つの人工組織構造物は、内腔内に接続されて懸架されるとともに、複数の模擬血管系を含む。複数の模擬血管系のうちの少なくとも1つの模擬血管系は、複数のアパーチャのうちの第1のアパーチャと、第1のアパーチャに隣接する第2のアパーチャとを通じて外向きに延びる自由端を有する。
【0010】
様々な実施形態によれば、外科訓練のための手術シミュレータが、基部、上壁及び2つの側壁を含むフレームを含む。フレームは、フレームの長手方向軸に沿って延びる内腔を定め、内腔は、近位開口部及び遠位開口部の少なくとも一方を有する。手術シミュレータは、人工子宮と、近位端に開口部が定められて遠位端が人工子宮に接続された人工膣管と、近位開口部を定める内腔を有する人工直腸と、人工膀胱と、頂面及び底面を有するシリコーンシートとをさらに含む。様々な実施形態では、人工子宮及び人工膀胱がシリコーンシートの底面に接続され、人工膣管及び人工直腸がシリコーンシートの頂面に接続される。
【0011】
本発明のこれらの及びその他の特徴は、関連図面を参照した実施形態の説明と共にさらに明らかになるであろう。
【0012】
本発明は、全体を通じて参照番号が同じ部品を指定する添付図面に関連して行う以下の説明を参照することによって理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の様々な実施形態による外科訓練装置の上面斜視図である。
図2】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータ又はモデルの背面斜視図である。
図3】本発明の様々な実施形態によるモデルの上面斜視図である。
図4】本発明の様々な実施形態によるモデルの側面斜視図である。
図5】本発明の様々な実施形態によるフレームの側面斜視図である。
図6】本発明の様々な実施形態によるフレームの背面斜視図である。
図7】本発明の様々な実施形態によるフレームの正面斜視図である。
図8】本発明の様々な実施形態によるフレームの基部の側面斜視図である。
図9】本発明の様々な実施形態によるフレームの基部の底面斜視図である。
図10】本発明の様々な実施形態によるフレームの頂部又は上壁部の上面斜視図である。
図11】本発明の様々な実施形態によるフレームの頂部の側面図である。
図12】本発明の様々な実施形態による子宮摘出術モデルの概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、腹部などの患者の胴部を模倣するように構成された外科訓練装置10を示す。外科訓練装置10は、本発明で説明するような模擬的な又は生きた組織、或いはモデル器官又は訓練モデルを受け取るための、実質的にユーザから隠された体腔12を提供する。体腔12へのアクセスは、体腔12内に位置することが判明している組織又は実践モデルに対する外科技術を磨くために装置を使用するユーザが穿通する組織シミュレーション領域14を通じて行われる。体腔12は、組織シミュレーション領域を通じてアクセスできるように示しているが、代わりに用手補助アクセス装置(hand-assisted access device)又は単一部位ポート装置(single-site port device)を使用して体腔12にアクセスすることもできる。例示的な外科訓練装置は、2011年9月29日に出願された「ポータブル腹腔鏡訓練機(Portable Laparoscopic Trainer)」という名称の米国特許出願第13/248,449号に記載されており、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。外科訓練装置10は、腹腔鏡外科手術又はその他の低侵襲外科手術の練習に特に適している。
【0015】
引き続き図1を参照すると、外科訓練装置10は、少なくとも1つの脚部20によって基部18に接続されて基部18から離間したトップカバー16を含む。図1には、複数の脚部20を示す。外科訓練装置10は、腹部などの患者の胴部を模倣するように構成される。トップカバー16は、患者の前面を表し、トップカバー16と基部18との間の空間12は、器官が存在する患者の体内又は体腔を表す。外科訓練機10は、外科手術を受けている患者のシミュレーションにおける様々な外科手術及びその関連器具の指導、練習及び実演に有用なツールである。手術器具は、組織シミュレーション領域14、及びトップカバー16に予め設定されたアパーチャ22を通じて空洞12内に挿入される。様々なツール及び技術を使用してトップカバー16を穿通して、トップカバー16と基部18との間に配置された模擬器官又は練習モデルに対して疑似的な処置を行うことができる。基部18は、模擬組織モデル又は生きた組織を多段化又は保持するためのモデル受け取り領域24又はトレイを含む。基部18のモデル受け取り領域24は、モデル(図示せず)を適所に保持するためのフレーム様要素を含む。基部18上に模擬組織モデル又は生きた器官を保持するのに役立つように、位置26には、伸縮ワイヤに取り付けられたクリップが設けられる。伸縮ワイヤは、組織模擬領域14の十分に下方の位置に組織モデルを保持するように、延ばされた後にクリップ留めされる。他の組織モデル保持手段としては、モデルに取り付けられた相補的な面ファスナ式締結材料(VELCRO(登録商標))片に取り外し可能に接続されるように基部18のモデル受け取り領域24に取り付けられた面ファスナ式締結材料(VELCRO(登録商標))のパッチが挙げられる。
【0016】
図1には、トップカバー16にヒンジ連結されたビデオ表示モニタ28を閉じた配向で示す。ビデオモニタ28は、モニタに画像を提供するための様々な視覚システムに接続することができる。例えば、予め設定されたアパーチャ22のうちの1つを通じて挿入された腹腔鏡、又は空洞内に位置して模擬手術を観察するために使用されるウェブカメラをビデオモニタ28及び/又はモバイルコンピュータ装置に接続して、ユーザに画像を提供することができる。また、録音手段又は配信手段を設けて訓練機10と一体化してオーディオビジュアル能力を提供することもできる。フラッシュドライブ、スマートホン、デジタルオーディオ又はビデオプレーヤ、或いはその他のデジタルモバイル装置などの、ポータブルメモリ記憶装置を接続する手段を設けて訓練手術を記録し、及び/又は予め録画されたビデオをデモンストレーション目的でモニタ上で再生することもできる。当然ながら、モニタよりも大きな画面にオーディオビジュアル出力を提供する手段も設けられる。別の変形例では、トップカバー10が、ビデオディスプレイを含まずに、ラップトップコンピュータ、モバイルデジタル装置又はタブレットに接続してこれらを有線又は無線で訓練機に接続する手段を含む。
【0017】
トップカバー16は、組み立てられると基部18の真上に位置決めされ、トップカバー16と基部18との間に相互接続された脚部20が周辺部を実質的に取り囲んで配置される。トップカバー16及び基部18は、実質的に同じ形状及びサイズであり、実質的に同じ周辺輪郭を有する。内部空洞は、視界から部分的に又は完全に隠される。図1に示す変形例では、脚部が、可能な限りの周囲光が内部空洞を照らし出せるようにするとともに、便利な可搬性のためにできる限りの軽量化を有利に実現する開口部を含む。トップカバー16は、脚部20から取り外し可能であり、脚部20も、ヒンジなどを介して基部18に対して取り外し可能又は折り畳み可能である。従って、組み立て前の訓練機10は、容易な可搬性を促す低い高さを有する。基本的に、外科訓練機10は、ユーザから隠された模擬体腔12を提供する。体腔12は、トップカバー16内の少なくとも1つの組織シミュレーション領域14及び/又はアパーチャ22を介してアクセスできる少なくとも1つの手術モデルを受け取るように構成され、ユーザは、この組織シミュレーション領域14及び/又はアパーチャ22を通じてモデルにアクセスして、腹腔鏡又は内視鏡の低侵襲外科技術を練習することができる。
【0018】
次に、図2図7に、子宮摘出術モデル200を示す。モデル200は、フレーム204に接続されてその内部に位置する複数の模擬器官構造物202を含む。フレーム204は、骨盤をシミュレートして複数の模擬器官構造物202を収容するボックス状の筺体(box-like encasement)として機能するように構成される。フレーム204は、2又は3以上の半剛性プラスチック片を含む。フレーム204は、締結具210によって側部フレーム又は底部フレーム部分208に接続されて、2つの直立側壁によって相互接続された頂部平面及び底部平面を形成する頂部フレーム部分206を含む。図6に示すように、頂部平面及び底部平面は互いに平行であって側壁と共に隅部を形成し、側壁はこの隅部から外向きに曲がる。2つの直立側壁によって相互接続された基部及び頂部を有する組み立てられたフレーム204は、開放近位端及び開放遠位端を有する中心内腔を定める。長手方向軸に対して垂直に切り取った断面における中心内腔の面積は、近位端から遠位端に向かって距離が増すと共に次第に増加する。フレーム204の外形は、中心内腔の形状とは異なることができる。側壁は、近位端では側壁間の距離が近く、側壁が互いにさらに離れる遠位端に向かって距離が増すと共に次第に増加するように互いに向かって傾斜する。様々な実施形態では、フレームが、隅部を有していない広い面積の中心内腔を有するように、テーパ付けされて切頭円錐形を有する。フレームの外形も、中心内腔のテーパ形状と一致することができる。フレーム204は、平面上への配置及び直立を可能にする平坦な基部を有する。
【0019】
様々な実施形態では、底部フレーム部分208が、第1の高さと、様々な実施形態においてモデルを腹腔鏡訓練機10に接続するために使用される経膣アダプタ(図示せず)と一直線になるようにフレーム204内のモデルの高さを上昇させる上昇した第2の床209とを含む。フレーム204は、締結具210を通すための、及び/又は血管系274などの組織構造物を通してその周囲でループさせてフレーム204内に懸架することによってこれらの組織構造物を接続するためのアパーチャ212を含むことができる。フレーム204は、透明及び/又は半透明の折り畳まれたプラスチックで構成される。フレーム204のプラスチック要素を折り畳むと、骨盤を表す隅部が得られ、これらは解剖学的に正確ではないが、解剖学的に正確な骨盤のリアルさと引き換えに腹腔鏡手術のシミュレーションに必要な利点をもたらす。これらの利点としては、最も小さな内腔断面積を有するテーパ状の近位端に位置する器官の機械的収縮が挙げられる。内部に位置する器官がそれほど収縮せず、より自由に動揺し、手術器具を用いた操作に対してより流体的に応答する遠位端に比べて、近位端における器官の物理的収縮は、手術器具によって操作した時にさらに固い器官の応答をもたらす。様々な実施形態によるフレーム204は、中心内腔の長手方向軸の長さに沿って器官の可変抵抗を組み合わせて骨盤を意図的に単純化したものである。フレームの近位端における中心内腔への小さい方の開口部は、フレームの内部に器官を配置した時に膣管への開口部が位置する場所である。フレームの近位端は、接続のために経膣又は経肛門アダプタの方にも向けられる。フレーム204の遠位端は、人工子宮216の場所である。フレームの中心内腔は、遠位端に向かって外向きに膨張し、拡大して角度をなす。このボックス状フレームのテーパ部の広がりは、内部に位置する器官の弛緩を拡大し、狭い近位端は、器官を収縮させ、密接に閉じ込めて器官を支持する結果、器官の可動域を比較的大きく制限する。
【0020】
フレーム204は、一般に2又は3以上の構造から成る。これらの構造は、頂部、右側壁、左側壁及び底面プラットフォームの何らかの変形を含むことができ、これらは全て1又は2以上の構成要素で形成される。基部構造は、様々な締結具及び/又は接着剤を利用して組み立てることができる。頂部及び側壁は、エンドユーザにとって有益な狭い作業エリアをもたらすが、製造が困難になる恐れもある。側壁から独立した頂部を利用することで、製造工程中の組み立てが容易になる。器官モデルは、底部フレーム部分208上に、或いは採用する場合には上昇した第2の床209上に配置して組み立てることができ、組み立てが完了した時点で頂部を締結することができる。さらに、メーカー及び/又はエンドユーザは、他のあらゆる材料に恒久的に接着されないあらゆるフレーム要素を再利用することもできる。従って、2又は3以上の構造から成るフレームは、製造中及び/又は使用中に損傷を受けていないフレーム要素の回収及び再利用を促す。フレーム要素は分解が容易であるため、エンドユーザは、フレーム要素に接続された器官構造物を調整するために、必要に応じてフレーム要素を除去することができ、或いはユーザが器官構造物上で模擬手術訓練を完了した後に、評価のために1又は2以上の器官構造物を除去することもできる。様々な実施形態では、フレーム204が、フレーム204を形成するように連動する上部又は頂部211と、2つの側壁と、2つの底部要素208、209とを含む5つの構成要素又は構造から形成される。頂部211及び側壁は、モデルの使用のために長手方向軸に沿って可変的に収縮する作業空間を形成する。
【0021】
特に、図8図9に、基部をさらに詳細に示す。基部又は底部208は、第1のデッキ207の上方に位置する第2のデッキなどの1又は2以上のレベルを含む。締結具210を使用してシリコーンシート205が締結される。締結具210は、シート205を貫通して、フレーム204の基部208のアパーチャ212に嵌め込まれる。シリコーンシート205は、モデルの組み立てを支援するために使用される。具体的に言えば、シリコーンシート205は、シリコーン同士の取り付けが容易であり、シリコーンとプラスチックとの取り付けを行う方が困難な箇所としての役割を果たす。シリコーンは、容易にシリコーンに付着し、シリコーンシート205を使用するとフレーム204からのシリコーン器官構造物の除去が単純化され、取り外してモデルを交換することができる。シリコーンシート205は、解剖学的に正確な人体構造の要素ではない。従って、このモデルは、人体構造を正確に再現したものではない。それでもなお、このモデルの外観は、腹腔鏡手術手技を使用する手術訓練中のユーザのために解剖学的完全性を維持する。シリコーンシート205は、ユーザのための背景を形成する。この背景は、シリコーンシート205の背景上に配置されて取り付けられた模擬器官などの、ユーザにとって重要なリアルさを損なわない。図8には、シリコーンシート205に取り付けられた模擬結腸220を示す。様々な実施形態における模擬結腸は、シリコーン、又はシリコーンに対する付着に対応する材料、或いはプラスチックとは異なる同様の材料で形成される。様々な実施形態では、模擬結腸220がシリコーンなどの第2の材料で形成され、或いはその少なくとも底部及びシート205が第1の材料で形成される。様々な実施形態では、第1の材料と第2の材料とが同じものであり、及び/又はシリコーンで形成される。図9には、外科訓練機10の基部にモデルを接続するための面ファスナ式締結具などの2片の締結具材料を有する底部208の下側を示す。様々な実施形態では、第1のデッキ207及び/又は第2のデッキ209が、シリコーンなどの第1の材料とは異なるプラスチックなどの第3の材料で形成される。
【0022】
特許に図10図12を参照すると、様々な実施形態によれば、上壁又は頂部211は側壁から取り外し可能であり、これによって頂部211を取り付ける前に基部208、209上にシリコーンモデルを配置することができる。締結具210による側壁への取り付けには、頂部211のアパーチャが使用される。シリコーン器官とフレーム204及び/又は上壁211との相互連結には他のアパーチャ212が使用される。上壁は、剛性プラスチックなどの第6の材料で形成され、様々な実施形態では第6の材料とは異なるシリコーンなどの第4の材料で形成された層と重なりあい、又はこのような層で覆われる。様々な実施形態では、上壁の上面が、シリコーンなどの第4の材料で形成された層で覆われ、底面が、第4の材料と同じではあるが第6の材料とは異なる第5の材料で形成された層で覆われる。具体的に言えば、シリコーン層302、304は、シリコーン302、304の2つの層が上壁のアパーチャなどを通じて互いに一点で直接接続されて上壁を層間に挟み込むように上壁の剛性プラスチックを覆う。様々な実施形態では、シリコーン302の第1の層を硬化させ、硬化した第1の層302上に、複数のアパーチャ212が形成された頂部211を配置し、その後に頂部211の反対側に第2の層304を鋳造して、第2の層などの未硬化シリコーンがアパーチャ212を貫通してシリコーンの第1の層302と接触するようにすることによって頂部211を形成することにより、第2の層304が硬化した後には、第1の層302及び第2の層304が、2つの層302、304間にしっかりと挟み込まれた頂部211と共に結合されるようになる。例えば図11では、頂部211のアパーチャ212を貫通するシリコーンのフィンガ306が分かる。第2の層304は、隣接する第1の層302と連動して頂部211を埋め込むように未硬化中に適用される。頂部211は、結果として得られるフレーム204に構造的剛性を与える。2つの層302、304は、アパーチャ212が形成された選択領域において取り付けることにより、頂部211の穴を通じて隣接する未硬化シリコーン層302を適用して、アパーチャ212の位置によって定められる選択領域において隣接する層304に取り付けられるようにすることができる。
【0023】
次に、図12及び再び図2図4を参照しながら、複数の模擬器官構造物202及びそのフレーム204への接続について説明する。複数の模擬器官構造物202は、模擬膀胱214、模擬子宮216、模擬膣管218、模擬直腸/結腸220、第1のシート222、第2のシート224、及び第3のシート226のうちの1つ又は2つ以上を含む。複数の器官構造物202は、図12に示すように相互接続され、さらにフレーム204にも接続される。このモデルには、身体の同じ又は異なる解剖学的部位の解剖学的に正確な又は解剖学的に同様の配置で、本明細書で言及していない他の模擬器官構造物に加えて、管状形状血管系、ダクト及び動脈274などを含めることもできる。
【0024】
模擬膀胱214は、ピンク色のシリコーンで形成された外膜によって、閉じたレセプタクルを形成する。模擬膀胱214の内部には、その形状を維持するようにポリフィル又はその他の材料を満たすことができる。模擬膀胱214は、近位端240及び遠位端242を有する。模擬子宮216もシリコーンで形成される。模擬子宮216は、近位端260及び遠位端262を含む。模擬膣管218は、シリコーン製の管状構造であり、埋め込みメッシュ層を任意に含むことができる。模擬膣管218は、近位端256及び遠位端258を有する。模擬直腸220は、成形された横ひだを有するシリコーン製の管状構造である。模擬直腸220は、近位端244及び遠位端246を有する。第1のシート222及び第2のシート224の各々は、シリコーン材料の広い平らな平面層を含む。両シート222、224は腹膜を表す。第1のシート222は、第1の表面232及び第2の表面234と、近位端248及び遠位端250とを有する。第2のシート224は、第1の表面236及び第2の表面238と、近位端252及び遠位端254とを有する。
【0025】
以下、引き続き図12を参照して、複数の模擬器官構造物202の組み立て、構成及び接続について説明する。膀胱の遠位端242は、第1のシート222が模擬膀胱214の遠位端242に模擬膀胱の底部から模擬膀胱214の頂部まで巻き付くように、接着剤によって第1のシート222の第1の表面232に取り付けられる。第2の表面234は、接着剤によって第1のシート222の遠位端248付近において第1のシリコーン層302に取り付けられる。第1のシート222は、概ねU字形に折り畳まれることにより、第1のシート222の遠位端250、具体的には第1のシート222の第2の表面234が、接着剤を使用して解離層(dissecting layer)226を介して模擬子宮216及び模擬膣管218に取り付けられるようになる。第1のシート222は、膀胱214の縁部242の周囲でポーチを形成する。第1のシート222は、それ自体に付着して頂部211の上端に巻き回されるとともに、接着剤によって第1のシリコーン層302に接着される。
【0026】
解離層226は、繊維層を含むことができるシリコーン層を含む構造物である。このような変形例では、シリコーン解離層226が未硬化の間に繊維層を埋め込んで解離層226を形成する。解離層226は、模擬膣管218に取り付けられる。解離層226については同じ参照番号で示しているが、図示のように模擬膣管218の両側に2つの解離層226を設けることができる。解離層226は、第3のシートと呼ぶこともできる。両シート222、224は腹膜を表し、第3のシート226は膀胱フラップ又は腹膜反転部(peritoneal reflection)を表す。また、解離層226は、模擬膣管218の遠位端258にも取り付けられる。解離層226は、子宮摘出術にとって重要な接続部である。1つの変形例では、第1のシート222が模擬子宮216に至るまで接着され、別の変形例では、第2のシート224が膀胱214を満たすまで接着される。
【0027】
第2のシート224は、図12に示すように模擬子宮216と模擬直腸220との間に取り付けられる。具体的には、第2のシート224の遠位端252における第1の表面236が、模擬子宮216の遠位端262付近に取り付けられる。第2のシート224は、接着剤を使用して、模擬子宮216の長さに沿って近位端260に向かって取り付けられる。第2のシート224は、解離層226に取り付けられる。具体的には、接着剤を使用して、第2のシート224の第1の表面236が解離層226のシリコーン層228に取り付けられる。第2のシート224は、点線で示すように上向きに延びるように模擬子宮216を通すために、スリットを含む。この時、第2のシート224は、表面236が模擬直腸220に付着するように、近位に延びた後で遠位に向きを変える。その後、模擬直腸220がシリコーンシート205に接着される。様々な実施形態では、組織構造物が、支持構造への接着を介して基部に接続される。様々な実施形態におけるフレーム204上のアパーチャ212は、アパーチャを通る機械的リンクとしての組織シート及びシリコーンを利用して組織構造物と基部との間の機械的接続部を形成するために使用される。この接続に関与する組織シートは、解剖学的に正確なものではなく、構造的及び/又は美的目的のためにのみ使用される。
【0028】
複数の模擬器官構造物202は、懸架された形でフレーム204に接続される。相互接続された複数の模擬器官構造物202は、頂部フレーム204から懸架されている間に共にリアルな形で有利に動揺して動き、器具などとの接点は、器具との接点から離れたほとんどの模擬器官をそれよりも少ない程度に動かす。模擬直腸220の底部側は、フレーム204の底部208に巻き回されたシリコーンシート205に接着剤で取り付けられる。従って、複数の模擬器官構造物は、第1のシート222、第2のシート222及び第3のシート226と共にフレーム202の中心開口部/内腔にわたって相互接続ウェビングを形成する。模擬子宮216の近位端260は、模擬膣管218の遠位端258に挿入されて接着剤で接合される。シリコーン製の模擬頸部が設けられ、模擬子宮216内部の近位端260に配置される。
【0029】
模擬器官構造物は、人体構造を最も厳密に再現する配向で懸架及び支持を行うように、上述したフレームに接続される。これまで、器官構造物は、接着剤又は締結具で直接フレームに接着されていた。しかしながら、締結具及び接着剤は、モデルの使用中に分解を防ぐほど十分に強い結合を行わない場合もある。モデル内に接着剤及び締結具が配置されると、関連する生体構造を表さない要素の存在に起因して使用中にユーザが混乱することもある。解剖学的完全性を維持するために、器官構造物は、シリコーンなどの器官構造物と外観及び機能性が同一又は同様の材料で形成された支持構造を介して基部に接続される。シリコーンは、容易にシリコーンに付着し、従ってシリコーンなどで形成された器官構造物がシリコーン又は同様の互換接着剤で形成された支持構造に直接付着できるようにするとともに、機能的及び構造的材料が模擬手術訓練中に器官構造物に加わる力に耐えることができる強力な結合をもたらす界面を形成する。このシリコーン間接着を実装するために、第1のシリコーン層302、第2のシリコーン層304及びシリコーンシート205などの支持構造は、手術訓練中にユーザの視覚的混乱又は注意散漫を引き起こさないように、支持構造及びフレーム要素に組み込まれた時に器官構造物又はその他のフレーム要素の下方に位置することができる接着剤又は締結具を使用してフレーム204に接着することができる。従って、支持構造302、304及び205は、重要な視覚的背景としての役割を果たすだけでなく、接着剤を使用するか否かにかかわらず模擬器官をシリコーン間取り付けの形で剛性プラスチックフレームに接続するための強力な方法としての役割も果たす。この時、模擬器官構造物は、シリコーン、シリコーン糊又は接着剤を使用して支持構造に接着される。別の変形例では、支持構造が、シリコーンの硬化後にシリコーン層間の機械的リンクをもたらす基部上のアパーチャを通じて、シリコーンを接着剤として使用して剛性又はプラスチックフレーム要素を組み込むことができる。支持構造は、模擬器官構造物の解剖学的完全性を維持すると思われるような配向で設計され配置される。これにより、模擬手術訓練中に支持構造がユーザに視覚的混乱又は注意散漫を引き起こすことが防がれる。しかしながら、支持構造は、手術訓練のリアルな可視化に必要ないずれかの解剖学的構造を表すものではない。従って、これらの支持構造は、リアルな模擬器官の環境に非リアルな構造支持層302、304、205を融合させる固有機能を果たす。この時、模擬器官構造物は、シリコーン、シリコーン糊又は接着剤を使用して支持構造に接着される。これまで、プラスチックフレーム要素は、例えばユーザに骨又は軟骨などが観察されていると勘違いさせる恐れがある色、質感及び硬度によって、手術訓練中にユーザに混乱及び/又は注意散漫を引き起こす恐れがあった。従って、基部要素を隠すために追加の支持構造も使用する。支持構造を追加すると、使用中にモデルの解剖学的完全性を維持しない視覚要素の数を最小化してフレーム要素に対する器官構造物の付着強度を高める視覚的及び機能的改善がもたらされる。上記では少なくとも3つの支持構造302、304及び205について説明したが、フレームの周囲には、側壁上などの様々な位置と同様にあらゆる数の支持構造を使用することができる。
【0030】
このモデルには、身体の同じ又は異なる解剖学的部位の解剖学的に正確な又は解剖学的に同様の配置で、本明細書で言及していない他の模擬器官構造物に加えて、管状形状血管系、ダクト及び動脈など274を含めることもできる。通常はシリコーン製である管形状/円筒形状を有する模擬血管系274、ダクト、卵管、尿管又はその他の解剖学的又は非解剖学的構造は、取り付け時に図7図8に示すように適切なサイズのアパーチャ212を通じて引き出され、接続された模擬組織構造物をさらに支持して正しい配向/位置に維持する。これらの管状構造は、自由端と、他の模擬組織構造物に取り付けられたもう一方の端部とを有する。自由端は、フレーム側壁のアパーチャ212を貫通し、調整可能な長さで固定されて、接続先の模擬組織構造物に加わる張力を調整することができる。例えば、フレームと他の模擬組織構造物との間の緩みを多くして管状構造を固定することによって、緩い張力をもたらすことができる。或いは、フレームに対して管状構造を引っ張ることによって模擬組織に加わる張力を高めて、比較的動揺の少ない模擬組織構造物物をフレーム内に形成することもできる。管状のロープ様構造をその長さに沿って結んで結び目を形成して張力を調整することもできる。より大きな組織構造物をフレームに固定するために、結び目の直径はフレーム内のアパーチャ212よりも大きくされる。結び目275は、模擬組織構造物を除去するためにほどくことも、或いは異なる張力レベルをもたらすように結び直すこともできる。
【0031】
様々な実施形態では、管状のロープ様構造を基部上の1又は2以上のアパーチャに通してそれ自体に接続し、リングを形成してさらなる強度をもたらす。様々な実施形態では、管形状/円筒形状を有する管状シリコーン模擬血管系274、ダクト、卵管、尿管又はその他の解剖学的又は非解剖学的構造が、その遠位端にリベットを備える。これらのリベットは、フレームに接続される遠位端と、シリコーン管状構造の端部に埋め込まれ又は据込み加工されて機械的接続を行う近位部分とを含む。リベット様締結具210は、模擬組織構造物の柔軟でしなやかなシリコーンと剛性プラスチックフレームとの間の相互接続部としての役割を果たす。模擬組織構造物はしばしば脆弱であり、補強しない場合には容易に裂けることがある。このため、このような人工組織構造物をフレームに接続することは困難である。
【0032】
図3で分かるように、左側の模擬血管系274はアパーチャ212を貫通して、上述したようなフレーム204の外側に結ばれた結び目275で締結される。後述するように、右側の模擬血管系274は2つのアパーチャ212を貫通する。図3に示す異なる取り付け法は例示を目的とするものである。輸送中、及び/又は固く尖ったプラスチックフレームと柔軟なシリコーンとの間に生じる摩擦中には、シリコーン血管が分断される恐れがあることが発見されたため、2つのアパーチャ212は血管系274の固定に使用される。フレーム274には、2つの横並びのアパーチャ212が形成される。模擬シリコーン血管系274を両方の穴に通し、それ自体に接着してループを形成する。血管系274の取り付けには、シリコーン、シリコーン糊及び瞬間接着剤を使用することができる。シリコーンの使用が有用である理由は、余分なシリコーンが、血管系274の分断を防ぐのに役立つ緩衝材をもたらすからである。このループは、横並びのアパーチャ212が互いに上下に位置する図4ではっきりと見える。紐状の血管系274は、一方のアパーチャ212を貫通してU字形ループを形成し、隣接するアパーチャ212を通じてフレーム204の内腔に戻る。未硬化シリコーンを接着剤として適用して硬化させることができる。余分なシリコーンは、血管系274をフレーム204にさらに固定する。
【0033】
模擬血管274をフレーム204の穴に通して、人体構造を最も厳密に再現する配向でシリコーン要素を懸架する。その後、模擬血管を結んで適切な位置に固定し、懸架された模擬組織の移動を防ぐ。この固く尖ったフレーム要素を通じた固定方法は、モデルの使用中及び輸送中に、正確にシミュレートされた器官構造物の懸架を損なう模擬血管274の分断を引き起こし、従ってユーザのリアルな手術訓練を妨げる恐れがある。解剖学的完全性を維持しながら輸送中の血管の分断又は移動を防ぐために、血管274を2つのアパーチャ12に通し、及び/又はシリコーンで補強して、各血管/側壁接合部にリング又はループを形成する。このループ固定法は、使用中及び輸送中の血管/側壁接合部における不必要な摩擦を防いて血管の分断を防ぐとともに、正確なモデルの懸架を可能にする。さらに、ユーザは、このループ固定による補強により、手術訓練中にモデルの構造的完全性を危うくすることなく模擬生体構造に大きな力を加えることができる。
【0034】
使用中、モデル200は、腹腔鏡訓練機10の内部に配置され、経膣アダプタなどを介して訓練機10に接続される。経膣アダプタは、訓練機10のトップカバー16を支持するように構成された脚部として形成される。経膣アダプタは、経膣子宮摘出術を含む経膣手術をシミュレートするように構成される。経膣アダプタは、訓練機の内部に面した内面と、ユーザに向かって外側に面した外面とを有する平板を含む。この平板は矩形形状を有し、プレートを内面から外面に貫通するアパーチャを含む。様々な実施形態では、アパーチャの形状が円形である。他の様々な実施形態では、アパーチャの形状が細長い楕円形、卵形であり、アダプタの長手方向軸に沿って垂直に配向される。他の様々な実施形態では、アパーチャの形状が細長い楕円形、卵形であり、アダプタの長手方向軸に対して垂直に配向される。経膣アダプタは、トップカバー16と基部18との間に位置し、訓練機10の側方の、又はトップカバー16及び基部18に対して実質的に垂直な側面アクセスアパーチャを提供する。アクセスアパーチャは、上述したような予め引っ込んだ膣管をシミュレートするように特に大型である。模擬膣管218の近位端256は、アクセスアパーチャにわたって伸びて模擬膣管218をアダプタに接続する。様々な実施形態におけるアダプタは、モデルを訓練機10に固定する。
【0035】
モデルのユーザは、手術器具及び開創器を使用して経膣アダプタを通じて模擬子宮216にアプローチして経膣子宮摘出術を実行することができる。或いは、訓練機10のトップカバー16の模擬腹壁を通じて模擬子宮216にアプローチすることもできる。ユーザは、トロカール及びスコープを使用して生体構造の観察及び外科的子宮摘出シミュレーションを実行して腹腔鏡外科スキルを練習する。手術では、主要切開部を形成して子宮を分離し、その後に除去する。具体的に言えば、モデル200は、模擬子宮216の切開及び分離をリアルなものにする第1のシート222、第2のシート224及び第3のシート226及び/又はシリコーンウェビングを提供する。また、KEVLAR(登録商標)合成繊維メッシュで補強された模擬頸部は、引っ張られた時にシリコーンの引裂を防ぐ。ユーザは、模擬子宮216の除去後に、模擬膣管218の縫合をさらに練習することができる。この目的のために、模擬膣管218は、シリコーンが容易に裂けることなく縫合糸を保持できるようにする埋め込みメッシュを備える。使用後には、モデル200を訓練機10から取り外し、複数の模擬器官構造物202をモデル200から取り外す。その後、新たな複数の模擬器官構造物202をフレーム204に接続し、訓練機10に挿入して継続練習を行う。
【0036】
モデルの様々な実施形態による様々な部分は、以下に限定するわけではないが、ヒドロゲル、単一ポリマーヒドロゲル、多重ポリマーヒドロゲル、ゴム、ラテックス、ニトリル、タンパク質、ゼラチン、コラーゲン、大豆、熱プラスチックエラストマーなどの非有機ベースポリマー、KRATON(登録商標)、シリコーン、発泡体、シリコーン系発泡体、ウレタン系発泡体及びエチレンビニル酢酸発泡体などを含む1又は2以上の有機ベースポリマーで形成することができる。あらゆるベースポリマー内には、織物、織又は不織繊維、ポリエステル、ナイロン、綿及びシルク、黒鉛、白金、銀、金、銅、種々雑多な添加剤、ゲル、油、コーンスターチ、ガラス、ドロマイト、炭酸塩鉱物、アルコール、デッドナー、シリコーン油、色素、発泡体、ポロクサマー、コラーゲン及びゼラチンなどの伝導性充填材などの1又は2以上の充填材を使用することができる。使用する接着剤は、以下に限定するわけではないが、シアノクリレート、シリコーン、エポキシ、スプレー接着剤及びゴム接着剤などを含むことができる。
【0037】
上記の説明は、当業者による本発明の実施及び使用、並びに本明細書で説明した方法の実行を可能にするように行ったものであり、本発明を行う発明者らが検討する最良の形態を記載したものである。しかしながら、当業者には様々な修正が明らかなままであろう。これらの修正は、本開示の範囲に含まれるように企図される。本明細書全体を通じて、異なる実施形態又はこのような実施形態の態様を様々な図に示して説明することができる。しかしながら、単独で図示又は説明した各実施形態及びその態様は、別途明示していない限り、他の実施形態及びその態様のうちの1つ又は2つ以上と組み合わせることもできる。各組み合わせを明示していないのは、本明細書の可読性を容易にするためにすぎない。
【0038】
いくつかの特定の態様において本発明を説明したが、当業者には多くのさらなる修正及び変形が明らかであろう。従って、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、サイズ、形状及び材料の様々な変更を含む具体的に説明したもの以外の形で本発明を実施することもできると理解されたい。従って、本発明の実施形態は、全ての態様が例示的なものであって限定的なものではでないと見なすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12