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  • -樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/10 20060101AFI20231116BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20231116BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C08L33/10
C08K3/34
B29C45/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020532412
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 JP2019028877
(87)【国際公開番号】W WO2020022339
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2018140474
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】小西 翔太
(72)【発明者】
【氏名】安東 博幸
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-009362(JP,A)
【文献】特開2009-244623(JP,A)
【文献】特開2004-149782(JP,A)
【文献】特開2004-223794(JP,A)
【文献】国際公開第2009/025127(WO,A1)
【文献】特開2017-222803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B29C 45/00- 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)及びシリカ複合酸化物粒子(B)を含む樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂(A)は、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルに由来する単量体単位を85質量%以上100質量%未満と、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルに由来する単量体単位と共重合可能な他のビニル単量体に由来する単量体単位を0質量%を超えて15質量%以下有するメタクリル共重合体であり、
前記シリカ複合酸化物は、シリカ中のケイ素元素の一部が他の元素に置き換わった材料であり、
前記他の元素は、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、セリウム、ホウ素、鉄、インジウム、及びスズから選ばれる元素であり、
前記樹脂組成物中の前記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.001質量部以上5質量部以下であり、
前記樹脂組成物のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、以下の式1~式3:
(式1) x<8
(式2) y<12
(式3) y<12x-0.75
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)であり、
yは、スチールウール擦傷試験後にJIS K 7136に従って測定される前記平板のヘイズ(%)の前記初期ヘイズ(%)に対する変化量である。
前記スチールウール擦傷試験は、前記平板表面に#0000のスチールウールを14kPaの圧力で押し付け、スチールウールの繊維方向と垂直の方向に15cm/秒の速さで11往復擦る試験である。]
を全て満たす樹脂組成物。
【請求項2】
前記シリカ複合酸化物粒子(B)と前記熱可塑性樹脂(A)とのそれぞれに波長589nmの光線を25℃において照射したときの屈折率の差は、0.03以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリカ複合酸化物は、シリカ-チタニア複合酸化物、シリカ-ジルコニア複合酸化物、又はシリカ-アルミナ複合酸化物である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリカ複合酸化物は、シリカ複合酸化物の全原子100mol%に対し、チタン原子を0.01~10mol%含有するシリカ-チタニア複合酸化物であり、
樹脂組成物中の前記シリカ-チタニア複合酸化物の含有量は、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記シリカ複合酸化物は、シリカ複合酸化物の全原子100mol%に対し、ジルコニウム原子を0.01~10mol%含有するシリカ-ジルコニア複合酸化物であり、
樹脂組成物中の前記シリカ-ジルコニア複合酸化物の含有量は、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物中のシリカ複合酸化物粒子(B)は、前記シリカ複合酸化物粒子(B)を、TEM-EDXを用いて視野広さ310nm×310nmで撮影した10個の画像のうち少なくとも1つの画像において、直径10nmの円を完全に内包する凝集体の像を含まない、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物中のシリカ複合酸化物粒子(B)の一部または全部は、シリカ-チタニア複合酸化物であり、
前記樹脂組成物中の前記シリカ-チタニア複合酸化物は、TiのK吸収端のXAFSスペクトルにおいて、0.5以上の吸収強度を有し、
ここに、前記吸収強度は、入射X線エネルギーが5128.0eVにおける吸収強度を1.0として規格化した際の、入射X線エネルギーが4967.5eVにおける吸収強度である、
請求項1~4および請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
熱可塑性樹脂(A)及びシリカ複合酸化物粒子(B)を含む樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂(A)は、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルに由来する単量体単位を85質量%以上100質量%未満と、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルに由来する単量体単位と共重合可能な他のビニル単量体に由来する単量体単位を0質量%を超えて15質量%以下有するメタクリル共重合体であり、
前記シリカ複合酸化物は、シリカ中のケイ素元素の一部が他の元素に置き換わった材料であり、
前記他の元素は、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、セリウム、ホウ素、鉄、インジウム、及びスズから選ばれる元素であり、
前記樹脂組成物中の前記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.001質量部以上5質量部以下であり、
前記シリカ複合酸化物粒子(B)と前記熱可塑性樹脂(A)の25℃で測定した波長589nmの屈折率の差は、0.03以下である、
樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載に記載の樹脂組成物を含む層と、
熱可塑性樹脂(C)を含む層と
を含む積層体であって、前記熱可塑性樹脂(C)のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、
以下の式1’:
(式1’) x≦2
を満たし、かつ、
以下の式2~3:
(式2) y<12
(式3) y<12x-0.75
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)であり、
yは、スチールウール擦傷試験後にJIS K 7136に従って測定される前記平板のヘイズ(%)の前記初期ヘイズ(%)に対する変化量である。
前記スチールウール擦傷試験は、前記平板表面に#0000のスチールウールを14kPaの圧力で押し付け、スチールウールの繊維方向と垂直の方向に15cm/秒の速さで11往復擦る試験である。]
の少なくともいずれか1つを満たさない、積層体。
【請求項11】
請求項8に記載の樹脂組成物を含む層と、
熱可塑性樹脂(C)を含む層と
を含む積層体であって、前記熱可塑性樹脂(C)のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、
以下の式1’:
(式1’) x≦2
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)である。]
を満たし、
前記熱可塑性樹脂(C)を含む層の前記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、前記熱可塑性樹脂(C)100質量部に対し、0.001質量部未満である、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、優れた透明性、機械的特性及び成形加工性を有し得ることから、様々な用途に用いられている。
【0003】
上記熱可塑性樹脂は、用途に応じて他の成分と混合して、熱可塑性樹脂組成物として用いられる。例えば特許文献1には、透明な熱可塑性樹脂組成物として、透明熱可塑性樹脂にチタニア粒子を分散内包しているシリカフレークを混合した組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-342211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性樹脂組成物は、用途に応じて、例えば車両用ヘッドランプ等の車両用部材に用いる場合に、透明性と耐擦傷性の両立が求められる。しかしながら、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂組成物は、透明性と耐擦傷性の両立の観点からは、十分であるとは言えない。
【0006】
従って、本開示は、優れた透明性及び耐擦傷性を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 熱可塑性樹脂(A)を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、以下の式1~式3:
(式1) x<8
(式2) y<12
(式3) y<12x-0.75
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)であり、
yは、スチールウール擦傷試験後にJIS K 7136に従って測定される前記平板のヘイズ(%)の前記初期ヘイズ(%)に対する変化量である。
前記スチールウール擦傷試験は、前記平板表面に#0000のスチールウールを14kPaの圧力で押し付け、スチールウールの繊維方向と垂直の方向に15cm/秒の速さで11往復擦る試験である。]
を全て満たす樹脂組成物。
[2] 熱可塑性樹脂(A)及びシリカ複合酸化物粒子(B)を含む、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 樹脂組成物中の前記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.001質量部以上5質量部以下である、上記[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記シリカ複合酸化物粒子(B)と前記熱可塑性樹脂(A)とのそれぞれに波長589nmの光線を25℃において照射したときの屈折率の差は、0.03以下である、上記[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5] 前記シリカ複合酸化物は、シリカ-チタニア複合酸化物、シリカ-ジルコニア複合酸化物、又はシリカ-アルミナ複合酸化物である、上記[2]~[4]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[6] 前記熱可塑性樹脂(A)は、メタクリル樹脂である、上記[2]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[7] 前記熱可塑性樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位を85~100質量%含有するメタクリル樹脂であり、
前記シリカ複合酸化物は、シリカ複合酸化物の全原子100mol%に対し、チタン原子を0.01~10mol%含有するシリカ-チタニア複合酸化物であり、
樹脂組成物中の前記シリカ-チタニア複合酸化物の含有量は、前記メタクリル樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下である、上記[2]~[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[8] 前記熱可塑性樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位を85~100質量%含有するメタクリル樹脂であり、
前記シリカ複合酸化物は、シリカ複合酸化物の全原子100mol%に対し、ジルコニウム原子を0.01~10mol%含有するシリカ-ジルコニア複合酸化物であり、
樹脂組成物中の前記シリカ-ジルコニア複合酸化物の含有量は、前記メタクリル樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下である、上記[2]~[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[9] 前記樹脂組成物中のシリカ複合酸化物粒子(B)は、前記シリカ複合酸化物粒子(B)を、TEM-EDXを用いて視野広さ310nm×310nmで撮影した10個の画像のうち少なくとも1つの画像において、直径10nmの円を完全に内包する凝集体の像を含まない、上記[2]~[8]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[10] 前記樹脂組成物中のシリカ複合酸化物粒子(B)の一部または全部は、シリカ-チタニア複合酸化物であり、
前記樹脂組成物中の前記シリカ-チタニア複合酸化物は、TiのK吸収端のXAFSスペクトルにおいて、0.5以上の吸収強度を有し、
ここに、前記吸収強度は、入射X線エネルギーが5128.0eVにおける吸収強度を1.0として規格化した際の、入射X線エネルギーが4967.5eVにおける吸収強度である、
上記[2]~[7]および上記[9]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[11] 熱可塑性樹脂(A)及びシリカ複合酸化物粒子(B)を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物中の前記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.001質量部以上5質量部以下であり、
前記シリカ複合酸化物粒子(B)と前記熱可塑性樹脂(A)の25℃で測定した波長589nmの屈折率の差は、0.03以下である、
樹脂組成物。
[12] 上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む成形体。
[13] 上記[1]~[10]のいずれか1つに記載に記載の樹脂組成物を含む層と、
熱可塑性樹脂(C)を含む層と
を含む積層体であって、前記熱可塑性樹脂(C)のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、
以下の式1’:
(式1’) x≦2
を満たし、かつ、
以下の式2~3:
(式2) y<12
(式3) y<12x-0.75
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)であり、
yは、スチールウール擦傷試験後にJIS K 7136に従って測定される前記平板のヘイズ(%)の前記初期ヘイズ(%)に対する変化量である。
前記スチールウール擦傷試験は、前記平板表面に#0000のスチールウールを14kPaの圧力で押し付け、スチールウールの繊維方向と垂直の方向に15cm/秒の速さで11往復擦る試験である。]
の少なくともいずれか1つを満たさない、積層体。
[14] 上記[11]に記載の樹脂組成物を含む層と、
熱可塑性樹脂(C)を含む層と
を含む積層体であって、前記熱可塑性樹脂(C)のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、
以下の式1’:
(式1’) x≦2
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)である。]
を満たし、
前記熱可塑性樹脂(C)を含む層の前記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、前記熱可塑性樹脂(C)100質量部に対し、0.001質量部未満である、積層体。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、優れた透明性及び耐擦傷性を有する樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、JIS K 7136を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の発明について、詳細に説明する。
【0011】
本開示の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)を含む。
【0012】
上記熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステル樹脂等、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素系樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル及びポリオレフィン樹脂が挙げられる。使用する熱可塑性樹脂は、所望の特性に応じて適宜選択され得る。上記熱可塑性樹脂は、1種であってもよく、又は2種以上の混合物であってもよい。透明性及び耐擦傷性の点からは(メタ)アクリル樹脂が好ましく、メタクリル樹脂がより好ましい。これらは、1種で用いても、2種以上で用いてもよい。
【0013】
本明細書において、用語「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を包含する。
【0014】
上記メタクリル樹脂は、メタクリル基を有するモノマーに由来する単量体単位を有する重合体である。
【0015】
メタクリル樹脂としては、例えば、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルに由来する単量体単位のみを含むメタクリル単独重合体;炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルに由来する単量体単位を、85質量%以上100質量%未満と、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルに由来する単量体単位と共重合可能な他のビニル単量体に由来する単量体単位を、0質量%を超えて15質量%以下有するメタクリル共重合体が挙げられる。
【0016】
上記「炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル」とは、CH=CH(CH)COOR(Rは炭素数1~4のアルキル基)で表される化合物である。炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと共重合可能なビニル単量体とは、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと共重合可能であり、且つビニル基を有する単量体である。
【0017】
上記炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、及びメタクリル酸イソブチルが挙げられる。上記炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルは、好ましくはメタクリル酸メチルである。上記のメタクリル酸アルキルは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
上記炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと共重合可能なビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールなどのメタクリル酸エステル(但し、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルを除く);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール等のアクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸又はこれらの酸無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。
【0019】
メタクリル樹脂の製造方法としては、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと、必要に応じて、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと共重合可能なビニル単量体とを、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法で重合する方法が挙げられる。
【0020】
(ポリカーボネート樹脂)
本明細書において、「ポリカーボネート樹脂」とは、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。本開示において熱可塑性樹脂として用いることができるポリカーボネート樹脂としては、例えば、二価フェノールやイソソルバイドなどのジヒドロキシ化合物とカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られたもの;カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させることにより得られたもの;及び、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られたものが挙げられる。
【0021】
二価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(3-イソプロピル-4-ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-フェニル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}フルオレン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-o-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、及び4,4'-ジヒドロキシジフェニルエステルが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
これらの二価フェノールの中でも、ビスフェノールA、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、及びα,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンが好ましい。特に、ビスフェノールAの単独使用や、ビスフェノールAと、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、及びα,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種との併用が好ましい。
【0023】
カルボニル化剤としては、例えばカルボニルハライド(ホスゲンなど)、カーボネートエステル(ジフェニルカーボネートなど)、及びハロホルメート(二価フェノールのジハロホルメートなど)が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
一の態様において、本開示の樹脂組成物は、シリカ複合酸化物粒子(B)を含む。
【0025】
上記シリカ複合酸化物とは、シリカ中のケイ素(Si)元素の一部が他の元素に置き換わった材料、即ち、ケイ素と他の元素とが均一な構造の酸化物を共に形成している材料を意味する。かかるシリカ複合酸化物の構造は、X線吸収微細構造(XAFS)スペクトルにより解析することができる。
【0026】
上記他の元素は、ケイ素及び酸素以外の元素であって、ケイ素と共に均一な構造の酸化物を形成できるものであれば特に限定されない。上記他の元素としては、例えば、2族から14族までの元素、好ましくは、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、セリウム、ホウ素、鉄、インジウム、及びスズが挙げられる。より好ましい態様において、上記他の元素は、チタン、ジルコニウム又はアルミニウムであり、より好ましくはチタンである。
【0027】
即ち、一の態様において、上記シリカ複合酸化物は、シリカ-チタニア複合酸化物、シリカ-ジルコニア複合酸化物、又はシリカ-アルミナ複合酸化物であり得、好ましくは、シリカ-チタニア複合酸化物、又はシリカ-ジルコニア複合酸化物であり、より好ましくはシリカ-チタニア複合酸化物である。
【0028】
上記シリカ複合酸化物粒子とは、上記シリカ複合酸化物を含む。かかるシリカ複合酸化物粒子は、実質的にシリカ複合酸化物から成ることが好ましいが、例えば、シリカ複合酸化物以外の、上記他の元素を含む物質の凝集体(以下、単に「凝集体」ともいう。)を含んでいてもよい。尚、上記したように、他の元素は、ケイ素及び酸素以外の元素であり得るが、「他の元素を含む物質の凝集体」は、少なくともケイ素及び酸素以外の元素を含む凝集体を意味し、ケイ素及び酸素を含むことを除外するものではない。即ち、換言すれば、シリカ複合酸化物粒子は、シリカ複合酸化物を含み、さらに凝集体を含んでもよく、当該凝集体は、少なくともケイ素及び酸素以外の元素を含む。
【0029】
シリカ複合酸化物粒子(B)中に上記凝集体が含まれる場合、上記シリカ複合酸化物粒子(B)を、TEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy dispersive X-ray spectrometry)を用いて視野広さ310nm×310nmで撮影した10個の画像のうち少なくとも1つの画像において、撮影された凝集体の像のうち、直径10nmの円を完全に内包する凝集体の像は存在しない。即ち、上記少なくとも1つの画像において、撮影された凝集体の像は、すべて直径10nmの円を完全に内包しない像である。なお、シリカ複合酸化物粒子(B)のTEM-EDXは、シリカ複合酸化物粒子(B)を直接測定しても良く、樹脂組成物を、クロロホルムなどの熱可塑性樹脂(A)を溶解することができる溶媒に浸した際の不溶成分を回収したものを測定しても良い。上記樹脂組成物中の凝集体のTEM-EDXによる像が内包し得る円の直径を10nm未満とすることにより、より高い透明性を有する成形体を得ることができる。
【0030】
一の態様において、上記シリカ複合酸化物粒子(B)に含まれる他の元素の含有量は、シリカ複合酸化物の全原子に対して、好ましくは0.01~10mol%であり、より好ましくは0.1~5mol%、さらに好ましくは1~5mol%、例えば1.5~3mol%である。シリカ複合酸化物に含まれる他の元素の含有量は、ICP-AES法、SEM-EDX法、TEM-EDX法などにより測定することができる。
【0031】
上記シリカ複合酸化物粒子(B)の形状は、略球状、直方体状や、複数の角を有した粉砕状などの形状であり得る。上記シリカ複合酸化物粒子の形状は、好ましくは略球状であり、より好ましくは真球状である。
【0032】
本開示に用いるシリカ複合酸化物粒子(B)の平均一次粒子径は、0.1μm以上2μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上1.5μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以上1.0μm以下である。平均一次粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。シリカ複合酸化物粒子の平均一次粒子径を上記の範囲にすることで、耐擦傷性と透明性の両方に優れる成形体を与え得る。ここに、一次粒子とは、シリカ複合酸化物粒子を構成する最小単位の粒子を意味する。
【0033】
上記シリカ複合酸化物粒子(B)が真球状である場合、シリカ複合酸化物粒子の平均粒径(直径)は、好ましくは0.1μm以上2μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上1.5μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以上1.0μm以下である。シリカ複合酸化物粒子が真球状でない場合、シリカ複合酸化物粒子の平均長径は、好ましくは0.1μm以上2μm以下であり、より好ましくは0.2μmを超えて1.5μm以下である。ここに、「長径」とは、粒子の直線距離で最も長い部分の長さを意味する。平均長径及び平均粒径は、走査電子顕微鏡による粒子の観測画像から読み取ることによって測定することができる。シリカ複合酸化物粒子の平均長径又は平均粒径を上記の範囲にすることにより、耐擦傷性と透明性の両方に優れる成形体を与え得る。ここに、本明細書において、平均粒径とは、メジアン径(d50)を意味する。
【0034】
上記シリカ複合酸化物粒子(B)は、好ましくは1.47以上1.60以下、より好ましくは1.48以上1.52以下、さらに好ましくは1.49以上1.51以下の屈折率を有する。上記シリカ複合酸化物粒子の屈折率をかかる範囲とすることにより、高い透明性を有する樹脂組成物の成形体を得ることができる。ここに、本明細書において、屈折率とは25℃で測定した波長589nmの光線の屈折率を意味する。
【0035】
波長589nmの光線を25℃において照射したときの、上記熱可塑性樹脂(A)の屈折率と、上記シリカ複合酸化物粒子(B)の屈折率の差は、好ましくは0.03以下、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下である。特に好ましくは、両者の屈折率は同じである。両者の屈折率の差を0.03以下とすることにより、高い透明性を有する樹脂組成物の成形体を得ることができる。両者の屈折率の差をより小さくすることにより、より高い透明性を有する成形体を得ることができる。
【0036】
上記熱可塑性樹脂(A)の屈折率は臨界角法、Vブロック法及び液浸法等を用いて測定することができる。また、上記シリカ複合酸化物粒子(B)の屈折率は、液浸法等を用いて測定することができる。
【0037】
上記シリカ複合酸化物粒子(B)は、火炎溶融法、火炎加水分解法、ゾル-ゲル法等、公知の方法によって得ることができる。
【0038】
上記シリカ複合酸化物粒子(B)は、例えば、シリカ-チタニア SiTi0449(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.49)、シリカ-チタニア SiTi0448(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.48)、シリカ-チタニア SiTi0450(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.50)、シリカ-チタニア SiTi0451(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.51)、シリカ-チタニア SiTi0452(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.52)、シリカ-チタニア SiTi0349(平均粒子径:0.3μm、屈折率:1.49)、シリカ-チタニア SiTi0849(平均粒子径:0.8μm、屈折率:1.49)、シリカ-ジルコニア SiZr0452(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.52)等を用いることができる。
【0039】
本開示の樹脂組成物が熱可塑性樹脂(A)及びシリカ複合酸化物粒子(B)を含む場合、樹脂組成物に含まれるシリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、上記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.001質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上5質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以上1質量部以下である。樹脂組成物中のシリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、ICP-AES法を用いて測定することができる。また、熱可塑性樹脂(A)及びシリカ複合酸化物粒子(B)を溶融混錬する際のシリカ複合酸化物粒子(B)の供給濃度を含有量としてもよい。両者の値は概ね同じだが、正確性の観点からICP-AES法で測定することが好ましい。上記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量を、0.001質量部以上とすることにより、高い耐擦傷性を有する樹脂組成物の成形体を得ることができる。また、上記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量を、5質量部以下とすることにより、高い透明性を有する樹脂組成物の成形体を得ることができる。
【0040】
本開示の樹脂組成物は、好ましくは、本開示の樹脂組成物のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、以下の式1~式3を全て満たす。
(式1) x<8
(式2) y<12
(式3) y<12x-0.75
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)であり、
yは、スチールウール擦傷試験後にJIS K 7136に従って測定される前記平板のヘイズ(%)の前記初期ヘイズ(%)に対する変化量である。
上記スチールウール擦傷試験は、前記平板表面に#0000のスチールウールを14kPaの圧力で押し付け、スチールウールの繊維方向と垂直の方向に15cm/秒の速さで11往復擦る試験である。]
【0041】
xは、好ましくはx<5、より好ましくはx<2である。
yは、好ましくはy<10、より好ましくはy<6である。
xとyの関係は、好ましくはy<10x-0.75、より好ましくはy<6x-0.75である。
【0042】
上記式(1)~(3)を満たすことにより、より高い透明性及び耐擦傷性を有する成形体を得ることができる。
【0043】
上記JIS K 7136によるヘイズの測定方法は、以下の通りである。
【0044】
(序文)
この規格は、1999年に第1版として発行されたISO14782、Plastics-Determination of haze for transparent materialsを翻訳し、技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
1.適用範囲
この規格は、透明で基本的には無色のプラスチックについて、光線の広角散乱に関する特定の光学的性質であるヘイズの求め方について規定する。この試験方法は、この方法によって測定したヘイズ値40%以下の材料に適用できる。
2.定義
ヘイズ(haze)とは、試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率をいう。
3.装置
3-1.装置は、安定した光源、接続光学系、開口部を備えた積分球及び測光器から構成し、測光器は、受光器、信号処理装置及び表示装置又は記録計から構成される(図1参照)。
3-2.使用する光源及び測光器は、フィルターを通ってその組合せの特性が、ISO/CIE10527による等色関数y(λ)と等しい明所視標準視感効率V(λ)(IEC60050-845で定義)と、ISO/CIE10526に規定するCIE標準の光D65の組合せに相当する出力を与えるものでなければならない。測光器の出力は、使用する光束の範囲で、入射光束に1%以内で比例しなければならない。光源及び測光器の分光特性並びに測光特性は、測定の間は一定に保たれることが望ましい。
3-3.光源は、光学系と組み合わされて平行な光束を作るものとする。この光束に含まれるどの光線も光軸との間の最大角が0.05rad(3°)を超えてはならない。この光束は、積分球のどちらの開口部においても不鮮明であってはならない。
3-4.装置は、光束がない場合に読取り値が一定になるように設計されている必要がある。
3-5.透過光束を集めるには、積分球を用いる。積分球の直径は、全開口部の面積が積分球の内面積の3.0%を超えない限りどのような値でもよい。積分球の直径は、大きな試料を測定できるように150mm以上であることが望ましい。
3-6.積分球には、入口開口、出口開口、補償開口及び受光開口がある(図1参照)。入口及び出口開口の中心は、球の同一大円上にあって、それらの開口の中心間に対応する大円上の円弧の中心角は、3.14rad±0.03rad(180±2°)とする。出口開口の直径が、入口開口の中心に対して作る角度は、0.140rad±0.002rad(8±0.1°)とする。出口開口及び補償開口は、同じ大きさとする。入口開口、補償開口及び受光開口は、積分球の同一大円上にあってはならない。補償開口は、入口開口との中心角が1.57rad(90°)以内となる位置に設ける。
3-7.入口開口に試料を置いていない場合、出口開口での光束の断面は、ほぼ円形で明りょう(瞭)であり、出口開口と同心円で、出口開口のまわりに環状部が残らなければならない。その環状部が入口開口の中心に対して作る角度は0.023rad±0.002rad(1.3°±0.1°)になる。
3-8.積分球には、遮光板を取り付けて、試料を通過した光を受光器が直接検出しないようにする。受光器は、積分球上で入口開口から1.57rad±0.26rad(90°±15°)の中心角をなすものとする。出口開口及び補償開口に置く光トラップは、試料がないときに光を完全に吸収するものであるか又は、装置が出口開口及び補償開口に光トラップを必要としないように設計されていなければならない。
3-9.ISO772-2によって求めた、積分球の内面、遮光板及び参照白板(通常、これは装置製作者から供給される。)の三刺激値のY10は90%以上及びその変動は±3%の範囲に入っていなければならない。積分球内面の反射率を直接測定することが難しい場合には、内面と同じ材料及び条件で別に作成した面を測定してもよい。
3-10.試験片ホルダーは、試験片を光束に±2°以内で直角に固定し、拡散光を含む全透過光を捕足できるように、試験片をできる限り積分球の近くに取り付けられるものとする。また、ホルダーは、柔軟性のある試験片を平たんに保持できるものとする。薄くて柔軟性のあるフィルムは、その端を二重のリング状ホルダーに挟むか、両面接着テープを用いてホルダーの端に取り付けるのがよい。後者の方法は、二重のリング状ホルダーに取り付けできない厚い試験片にも用いられる。真空ポンプや真空吸着板を用いて、試験片を試料台に取り付けてもよい。
4.試験片
4-1.試験片は、フィルム、シート又は射出成形や圧縮成形による成型品から切り出す。
4-2.試験片は、欠陥、ほこり、グリース、保護材料からの接着剤、かき傷、ごみなどがなく、目で見えるような空げきや異物があってはならない。
4-3.試験片は、積分球の入口開口及び補償開口を覆うのに十分な大きさとする。直径50mmの円板又は一辺50mmの正方形のものがよい。
4-4.試験片は、特に規定がない場合には、試験材料の各試料ごとに3個作製する。
5.状態調節
5-1.必要に応じて、試験片は、試験の前に、ISO291によって温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%の条件で40時間以上状態調節する。
5-2.必要に応じて、試験装置は、温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%に保った雰囲気に設置する。
6.手順
6-1.試験装置は、試験前に十分に時間をおき、熱平衡に到達させる。
6-2.試験片ホルダーに試験片を取り付ける。
6-3.下記表に示す4個の値(τ1、τ2、τ3及びτ4)を計器から読み取る。
6-4.試験片の厚さを3か所で測定し、シートの場合0.02mm、フィルムの場合は1μmまで正確に測定する。
6-5.3個の試験片について前述の手順を順次行う。
7.計算
ヘイズ(%)は、次の式によって算出する。
ヘイズ=[(τ4/τ2)-τ3(τ2/τ1)]×100
ここに、τ1:入射光の光束
τ2:試験片を透過した全光束
τ3:装置で拡散した光束
τ4:装置及び試験片で拡散した光束
参考 シングルビーム装置を用いて正確に全光線透過率を求めるためには、(ISO13468-1に規定しているように)補償開口には光トラップの代わりに試験片を置く必要がある。これは積分球の効率が変化するのを打ち消すためである。もう一つの方法として、ダブルビーム装置で校正した標準試験片を用いて、測定値を補正して求めることができる。しかし、得られるヘイズ値に差はほとんどないので、補正開口には試験片の代わりに光トラップを置いて得られるτ1を用いれば実用上十分である。
【0045】
上記「本開示の樹脂組成物のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板」の成形に用いられる射出形成機及び条件は、特に限定されない。例えば、射出成形は、東芝機械株式会社製EC130SXII-4Aを用いて行うことができる。例えば、成形条件は、以下の条件であり得る。
スクリュー温度:原料投入口から出口までの5つのヒーターについて、原料投入口側から、それぞれ60℃、230℃、240℃、250℃、250℃に設定した。
射出速度:90mm/秒
最大射出圧力:200MPa
保圧:80MPa
金型温度:60℃
冷却タイマー:45秒
【0046】
一の態様において、本開示の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)及びシリカ複合酸化物粒子(B)を含む樹脂組成物であって、上記樹脂組成物中のシリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.001質量部以上5質量部以下であり、前記シリカ複合酸化物粒子(B)と前記熱可塑性樹脂(A)の25℃で測定した波長589nmの屈折率の差は、0.03以下である。かかる樹脂組成物は、耐擦傷性と透明性の両方に優れる成形体を与え得る。
【0047】
本開示の樹脂組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤等を含有していてもよい。例えば、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤等が挙げられ、酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられ、離型剤としては、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、脂肪酸誘導体等が挙げられ、帯電防止剤としては、導電性無機粒子、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、カチオン系アクリル酸エステル誘導体、カチオン系ビニルエーテル誘導体等が挙げられ、難燃剤としては環状窒素化合物、リン系難燃剤、シリコン系難燃剤、籠状シルセスキオキサン又はその部分開裂構造体、シリカ系難燃剤等が挙げられる。
【0048】
本開示の樹脂組成物は、成形して所定の形状を付与される。従って、本開示は、本開示の樹脂組成物を成形して得られる成形体を含む。
【0049】
本開示の成形体の製造方法としては、例えば、本開示の樹脂組成物を、成形機を用いて成形する方法が挙げられる。具体的には、成形機として射出成形機を用い、成形機の金型内に樹脂組成物を射出して成形する射出成形法が、複雑な形状の成形体を得ることができて好ましい。
【0050】
射出成形時のシリンダーの温度として、好ましくは230℃以上であり、通常290℃以下である。
【0051】
本開示の成形体の厚みとして、好ましくは0.5mm以上8mm以下であり、より好ましくは、1mm以上6mm以下であり、さらに好ましくは、1mm以上3mm以下である。成形体の厚みを上記範囲にすることで、透明性に優れる成形体が得られ、例えば車両用ランプカバーとして好適に用いることができる。
【0052】
また、本開示の樹脂組成物は、積層体の層を構成し得る。従って、本開示は、本開示の樹脂組成物を含む層を含む積層体を含む。
【0053】
一の態様において、上記積層体は、本開示の樹脂組成物を含む層と、
熱可塑性樹脂(C)を含む層とを含む。本開示の積層体は、本開示の樹脂組成物を含む層単体および熱可塑性樹脂(C)を含む層単体と比較して、耐擦傷性と透明性のバランスに優れる。
【0054】
上記熱可塑性樹脂(C)は、熱可塑性樹脂(A)に関して挙げた樹脂と同様のもの、即ち、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステル樹脂等、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素系樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル及びポリオレフィン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種であってもよく、又は2種以上の混合物であってもよい。上記熱可塑性樹脂(C)は、好ましくは、上記本開示の樹脂組成物を含む層に用いられる熱可塑性樹脂、即ち熱可塑性樹脂(A)と同じ樹脂である。
【0055】
一の態様において、本開示の積層体は、上記本開示の樹脂組成物を含む層と、熱可塑性樹脂(C)を含む層とを含む積層体であって、前記熱可塑性樹脂(C)のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、
以下の式1’:
(式1’) x≦2
を満たし、かつ、
以下の式2~3:
(式2) y<12
(式3) y<12x-0.75
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)であり、
yは、スチールウール擦傷試験後にJIS K 7136に従って測定される前記平板のヘイズ(%)の前記初期ヘイズ(%)に対する変化量である。
上記スチールウール擦傷試験は、前記平板表面に#0000のスチールウールを14kPaの圧力で押し付け、スチールウールの繊維方向と垂直の方向に15cm/秒の速さで11往復擦る試験である。]
の少なくともいずれか1つを満たさない。
【0056】
一の態様において、本開示の積層体は、上記本開示の樹脂組成物を含む層と、熱可塑性樹脂(C)を含む層とを含む積層体であって、前記熱可塑性樹脂(C)のみを原料として射出成形により得られる厚さ3mmの平板において、
以下の式1’:
(式1’) x≦2
[式中、xは、スチールウール擦傷試験前にJIS K 7136に従って測定される前記平板の初期ヘイズ(%)である。]
を満たし、
前記熱可塑性樹脂(C)を含む層の前記シリカ複合酸化物粒子(B)の含有量は、前記熱可塑性樹脂(C)100質量部に対し、0.001質量部未満である。
【0057】
上記積層体において、本開示の樹脂組成物を含む層の厚みは、好ましくは、0.1mm以上8mm以下であり、より好ましくは、0.5mm以上6mm以下であり、さらに好ましくは、0.8mm以上3mm以下である。
【0058】
上記積層体において、熱可塑性樹脂(C)を含む層の厚みは、好ましくは0.5mm以上8mm以下であり、より好ましくは、1mm以上6mm以下であり、さらに好ましくは、1mm以上3mm以下である。
【0059】
本開示の成形体及び積層体は、高い透明性及び耐擦傷性を有するので、例えば車両用ランプカバーとして好適に用いられる。従って、本開示は、本開示の成形体又は積層体を含むランプカバー、特に車両用ランプカバーを含む。
【0060】
上記車両用ランプカバーとしては、前照灯(ヘッドランプ)、尾灯(テールランプ)、制動灯(ストップランプ)、方向指示灯(ウインカー)、霧灯(フォグランプ)、車幅灯、後退灯のカバー等が挙げられる。本開示の成形体および積層体は、砂利等で擦れる頻度が高く、より優れた耐擦傷性が求められる前照灯(ヘッドランプ)のカバー、すなわちヘッドランプカバーとして、好適に用いることができる。
【0061】
本開示の成形体及び積層体は、擦傷以外による表面傷、例えば砂などの粒子の衝突によって生じる傷を抑制することができる。
【実施例
【0062】
以下、実施例により本開示の樹脂組成物を説明するが、本開示の内容はこれらの実施例に特に限定されるものではない。
【0063】
(透明性)
スチールウール擦傷試験前にJIS K7136に従い、得られた成形体又は積層体の初期ヘイズを測定した(単位:%)。初期ヘイズが小さいほど透明性が優れ、特に、初期ヘイズが8%未満である場合、透明性に優れると言える。
【0064】
(耐擦傷性)
得られた成形体又は積層体の表面に対して、スチールウールによる擦傷試験を行った。具体的には、#0000のスチールウールを用いて、成形体の表面又は積層体の表面を、荷重14kPaで押し付け、スチールウールの繊維方向と垂直の方向に15cm/秒の速度で11往復擦った。JIS K7136に従って、摩耗試験前後の成形体又は積層体のヘイズを測定し、試験前後のヘイズの変化(Δヘイズ(単位:%))を算出した。なお、積層体の場合、特記しない限りは熱可塑性樹脂組成物及びシリカ複合酸化物を含む熱可塑性樹脂組成物からなる面を擦った。特に、Δヘイズが12%未満である場合、耐擦傷性に優れていると言える。
【0065】
初期ヘイズがx%の際の12x-0.75をΔヘイズ閾値(単位:%)として定義する。特に、ΔヘイズがΔヘイズ閾値より低い場合、透明性と耐擦傷性のバランスに優れると言える。
【0066】
(使用した無機粒子)
シリカ-チタニア SiTi0449(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.49)
シリカ-チタニア SiTi0448(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.48)
シリカ-チタニア SiTi0450(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.50)
シリカ-チタニア SiTi0451(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.51)
シリカ-チタニア SiTi0452(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.52)
シリカ-チタニア SiTi0349(平均粒子径:0.3μm、屈折率:1.49)
シリカ-チタニア SiTi0849(平均粒子径:0.8μm、屈折率:1.49)
シリカ-ジルコニア SiZr0452(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.52)
日本フリット株式会社製 ガラスフィラー CF0093-P5(T4)(平均粒子径:0.5μm、屈折率:1.495)
水澤化学工業株式会社製 アルミノケイ酸ナトリウム シルトン(登録商標)AMT-08L(平均粒子径:0.9μm、屈折率:1.50)
株式会社トクヤマ製 シリカ サンシール(登録商標)SS-04(平均粒子径:0.4μm、屈折率:1.46)
株式会社アドマテックス製 シリカ アドマファイン(登録商標)S0-C2(平均粒子径:0.5μm、屈折率1.46)
テイカ株式会社製 酸化チタン MT-01(平均粒子径:10nm)
【0067】
<メタクリル樹脂Aの製造>
撹拌器を備えた重合反応器に、メタクリル酸メチル97.5質量部及びアクリル酸メチル2.5質量部の混合物と、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.016質量部と、n-オクチルメルカプタン0.16質量部とを、それぞれ連続的に供給し、175℃、平均滞留時間43分で重合反応を行った。次いで、重合反応器から出る反応液(部分重合体)を予熱した後、脱揮押出機に供給し、未反応の単量体成分を気化して回収するとともに、ペレット状のメタクリル樹脂Aを得た。得られたメタクリル樹脂Aの、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位が97.5質量%であり、アクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が2.5質量%であり、MFRは2g/10分であった。また、屈折率は1.49であった。
【0068】
[実施例1]
<溶融混練>
メタクリル樹脂A100質量部にSiTi0449を0.06質量部加えて混合した後、日本製鋼所製二軸押出機(型式:TEX30SS-30AW-2V)を使用し、以下の混練条件で溶融混練してストランド状に押出し、水冷してストランドカッターでカッティングすることにより、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。
(混練条件)
押出機温度:原料投入口から出口までの8つのヒーターについて、原料投入口側から、それぞれ200℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、240℃、250℃に設定した。
回転数:200rpm
原料の投入速度:12kg/時
【0069】
<射出成形>
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械株式会社製EC130SXII-4A)を用いて、以下の成形条件で150mm×90mm×3.0mm厚の平板形状に成形し、成形体を得た。
(成形条件)
スクリュー温度:原料投入口から出口までの5つのヒーターについて、原料投入口側から、それぞれ60℃、230℃、240℃、250℃、250℃に設定した。
射出速度:90mm/秒
最大射出圧力:200MPa
保圧:80MPa
金型温度:60℃
冷却タイマー:45秒
【0070】
得られた成形体を80℃のオーブン内で16時間静置し、その後4時間かけて40℃まで徐冷して、透明性および耐擦傷性についての評価を行った。結果を表2に示す。
【0071】
[実施例2~18]
SiTi0449を0.06質量部添加するのを、下記表1に記載の無機粒子と添加量とした以外は実施例1と同様にして成形体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表2に示す。
【0072】
[比較例1~14]
SiTi0449を0.06質量部添加するのを下記表1に記載の無機粒子と添加量とした以外は実施例1と同様にして成形体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表2に示す。
【0073】
[比較例15]
無機粒子を添加せずにメタクリル樹脂Aを材料として射出成形に用いた以外は実施例1と同様にして成形体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
[実施例19]
<射出成形>
実施例1で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械株式会社製EC130SXII-4A)を用いて、以下の成形条件で150mm×90mm×1.0mm厚の平板形状に成形し、成形体を得た。
(成形条件)
スクリュー温度:原料投入口から出口までの5つのヒーターについて、原料投入口側から、それぞれ60℃、230℃、240℃、250℃、250℃に設定した。
射出速度:90mm/秒
最大射出圧力:200MPa
保圧:80MPa
金型温度:60℃
冷却タイマー:45秒
【0077】
<多層成形>
次いで、得られた成形体を、150mm×90mm×3.0mm厚の金型に貼り付け、メタクリル樹脂Aを、射出成形機(東芝機械株式会社製EC130SXII-4A)を用いて、以下の成形条件で150mm×90mm×3.0mm厚の平板形状に成形し、メタクリル樹脂組成物を含む1.0mm厚の層と、メタクリル樹脂Aを含む2.0mm厚の層からなる積層体を得た。ここで、メタクリル樹脂Aからなる3.0mm厚の層単体の初期ヘイズは0.35%、Δヘイズは、19.60%であった。
(成形条件)
スクリュー温度:原料投入口から出口までの5つのヒーターについて、原料投入口側から、それぞれ60℃、230℃、240℃、250℃、250℃に設定した。
射出速度:90mm/秒
最大射出圧力:200MPa
保圧:80MPa
金型温度:60℃
冷却タイマー:45秒
【0078】
得られた積層体を80℃のオーブン内で16時間静置し、その後4時間かけて40℃まで徐冷して、透明性および耐擦傷性についての評価を行った。結果を表3に示す。
【0079】
[実施例20]
実施例1で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の代わりに実施例2で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を用いた以外は実施例19と同様にして積層体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表3に示す。
【0080】
[実施例21]
実施例1で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の代わりに実施例3で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を用いた以外は実施例19と同様にして積層体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表3に示す。
【0081】
[実施例22]
実施例1で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の代わりに実施例4で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を用いた以外は実施例19と同様にして積層体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表3に示す。
【0082】
[実施例23]
実施例1で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の代わりに実施例8で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を用いた以外は実施例19と同様にして積層体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表3に示す。
【0083】
[実施例24]
実施例1で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物の代わりに実施例12で得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を用いた以外は実施例19と同様にして積層体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
[実施例25]
実施例19で得られた1.0mm厚の成形体を80℃のオーブン内で16時間静置し、その後4時間かけて40℃まで徐冷して、透明性および耐擦傷性についての評価を行った。結果を表4に示す。
【0086】
[実施例26]
実施例19で得られた1.0mm厚の成形体の代わりに実施例20で得られた1.0mm厚の成形体を用いた以外は実施例25と同様にして透明性および耐擦傷性について評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0087】
[実施例27]
実施例19で得られた1.0mm厚の成形体の代わりに実施例21で得られた1.0mm厚の成形体を用いた以外は実施例25と同様にして透明性および耐擦傷性について評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0088】
[実施例28]
実施例19で得られた1.0mm厚の成形体の代わりに実施例22で得られた1.0mm厚の成形体を用いた以外は実施例25と同様にして透明性および耐擦傷性について評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0089】
[実施例29]
実施例19で得られた1.0mm厚の成形体の代わりに実施例23で得られた1.0mm厚の成形体を用いた以外は実施例25と同様にして透明性および耐擦傷性について評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0090】
[実施例30]
実施例19で得られた1.0mm厚の成形体の代わりに実施例24で得られた1.0mm厚の成形体を用いた以外は実施例25と同様にして透明性および耐擦傷性について評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
[実施例31~35]
SiTi0449を0.06質量部添加するのを、下記表5に記載の無機粒子と添加量とした以外は実施例1と同様にして成形体を得た。透明性および耐擦傷性についての評価結果を下記表6に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
<X線吸収微細構造(XAFS)スペクトルの測定及び解析>
7mmΦの内筒をセットした日本分光株式会社製IR用錠剤成形機に、測定する無機粒子を充填し、1トンの力で油圧プレスすることにより7mmΦのペレットを作製した。
【0096】
測定するペレット中のTi濃度を測定に好適なものとするため、窒化ホウ素を加えても良い。その場合、測定する無機粒子と窒化ホウ素を乳鉢で粉砕混合した後にペレット化すれば良い。なお、窒化ホウ素はTi元素を含まないため、下記の方法で測定されるTiのK吸収端のXAFSスペクトルに影響を与えない。
【0097】
ペレットを試験管に入れ、三方コックを有する栓で密封した。その後、真空下、350℃で二時間加熱することにより水分を除去した。試験管内部が減圧された状態で水分及び酸素濃度がいずれも0.1ppm未満に管理されたグローブボックスに入れ、ペレットを試験管から取り出した。その後、テドラーバッグAにペレットを入れ、ヒートシールにより封入した。さらに、そのテドラーバックAごと別のテドラーバッグBに入れ、ヒートシールにより封入した。その後、アルミジップ袋CにテドラーバッグBごと入れ、ヒートシールにより封入し、別のアルミジップ袋Dにアルミジップ袋Cごと入れて、ヒートシールにより封入した。これによりペレットを二重のテドラーバックと二重のアルミジップ袋に封入した。この状態でグローブボックスから取出し、密封できる容器Eにいれて減圧し、運搬した。
【0098】
無機粒子に含まれるTiのK吸収端のXAFSスペクトルの測定は、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光科学研究施設ビームラインBL-12CのXAFS測定装置を用いてQuickXAFS法にて行った。測定直前に容器Eからサンプルを取出し、アルミジップ袋D及びCを開封した。中からテドラーバックBを取出し、テドラーバックBの状態で測定した。X線の単色化にはSi(111)のモノクロメータを用い、Niコートミラーを用いて高調波をカットした。入射X線強度(I)は、ガスとしてN(30体積%)+He(70体積%)を使用したイオンチェンバーを用いて常温下で測定し、透過X線強度(I)は、ガスとしてNを使用したイオンチェンバーを用いて常温下で測定した。測定したエネルギー範囲、間隔、及び測定点1点当りの積算時間は、次のように設定した。なお、エネルギーの校正はルチル型酸化チタンを用い、そのK吸収端のXANESスペクトルにおける1回微分係数が最大となるピーク位置を4981.6eVとした。
【0099】
・入射X線のエネルギー範囲:4459.5~6064.5eV
・データ点数:3977点
・スキャン時間:300秒
・積算:1回
【0100】
上記により、各入射X線エネルギー(E、x軸)において、I、Iを測定し、次式により、X線吸光度(y軸)を求め、x軸-y軸でプロットすることにより、X線吸収スペクトルを得た。
X線吸光度μt=-ln(I/I
【0101】
X線吸収スペクトルから、次のようにして、TiのK吸収端のXAFSスペクトルを得た。具体的には、得られたQuickXAFS法によるX線吸収スペクトルデータを高エネルギー加速器研究機構が提供している「Multi File Converter」にて(株)リガク製EXAFS解析ソフト形式へと変換した後、解析ソフト((株)リガク製REX2000)を用いてXAFSスペクトルの解析を行った。TiのK吸収端のエネルギーE0(x軸)は、X線吸収スペクトルにおけるTiのK吸収端付近のスペクトルにおいて、その一階微分係数が最大となるエネルギー値(x軸)とした。スペクトルのバックグランドは、前記のTiのK吸収端よりも低エネルギー域のスペクトルにVictoreenの式(Aλ-Bλ+C;λは入射X線の波長、A,B,Cは任意の定数)を最小自乗法で当てはめて決定され、スペクトルからバックグランドを差し引いた。5128.0eVの吸収強度を1.0として規格を行い、4967.5eVの吸収強度を算出した。
【0102】
4配位しているTi元素は4967.5eVに吸収を持つ。チタニアのTi元素は6配位しているため、4967.5eVの吸収強度は0.3未満となる。一方、Si元素とTi元素が原子レベルで混ざっているシリカ-チタニア複合酸化物中のTi元素は4配位のため、4967.5eVの吸収強度は0.5以上になる。
【0103】
SiTi0449、SiTi0448、SiTi0450、SiTi0452、及びMT-01のXAFSスペクトルから得られた4967.5eVの吸収強度は表7に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
<TEM-EDXの測定>
無機粒子をTEM-EDXを用いて測定した。50万倍に拡大し、310nm×310nmの視野広さにおいてTi元素についてマッピングを行った。直径10nmの円を完全に内包するTi元素を含む凝集体の有無を調査した。結果を表8に示す。
【0106】
【表8】
【0107】
<SEM-EDXの測定>
無機粒子をSEM-EDXを用いて、2万倍に拡大し6.4μm×4.8μmの視野広さにおいて元素濃度を測定した。結果を表9に示す。
【0108】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示の樹脂組成物は、透明性と耐擦傷性が要求される用途、例えば車両用ランプカバー、バイザー、フロントグリルなどの車両用外装材、メーターカバーや車載ディスプレー前面板などの車両用内装材、窓や遮音壁などの建築材料、看板、テーブルトップなどの家具、展示用の棚、カーポートなどのエクステリア、ディスプレーの前面板、カバーやグローブなどの照明器具部材などに好適に用いることができる。
図1