(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】グロー放電発光分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/67 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
G01N21/67 C
(21)【出願番号】P 2020541087
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2019031494
(87)【国際公開番号】W WO2020049952
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018164838
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】藤本 明良
(72)【発明者】
【氏名】西村 智椰
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍人
(72)【発明者】
【氏名】山田 紘子
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-195292(JP,A)
【文献】特開2016-225281(JP,A)
【文献】特開2017-091804(JP,A)
【文献】特開2013-167612(JP,A)
【文献】高原晃里 他,グロー放電発光分析法によるリチウムイオン二次電池電極の表面分析、深さ方向分析,第51 回電池討論会 講演要旨集,2010年11月08日,p.78
【文献】No.0100 グロー放電発光分析装置(GD-OES)による深さ方向元素分析,株式会 社東レリサーチセンター [オンライン],2014年09月26日,https://cs2.toray.co.jp/news/trc/news_rd01.nsf/0/72555BF8F80A9DAB49257D5F002957DE
【文献】TAKAHARA, Hikari,Analysis of Solid Electrolyte Interphase in Mn-Based Cathode/Graphite Li-Ion Battery with Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy,Journal of The Electrochemical Society,2014年,Vol.161 No.10,pp.A1716-A1722
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/74
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liを含む全固体電池の固体電解質を含む試料をグロー放電発光分析装置に固定し、
不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを供給して前記試料の深さ方向の分析を行う
ことを特徴とするグロー放電発光分析方法。
【請求項2】
前記不活性ガスはアルゴンガス又はネオンガスであり、前記反応性ガスは酸素ガスである
ことを特徴とする請求項
1に記載のグロー放電発光分析方法。
【請求項3】
Liを含む全固体電池
の固体電解質を含む試料をグロー放電発光分析装置に固定し、
不活性ガスと酸素ガスを含む反応性ガスとの混合ガスを供給し、Liと酸素とを結合させた上で、前記試料の深さ方向の分析を行う
ことを特徴とするグロー放電発光分析方法。
【請求項4】
前記試料は成分の分布が深さ方向で一様であり、深さ方向の分析結果において、前記試料の測定値は、前記不活性ガス若しくは前記反応性ガス、又は前記試料の主成分若しくは副成分に関する測定値を基準として、変動幅が20%以内である
ことを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載のグロー放電発光分析方法。
【請求項5】
前記試料に含まれるLiの測定値は、深さ方向1μmから5μmの範囲において、前記不活性ガスであるアルゴンガスを基準値として、変動幅が20%以内である
ことを特徴とする請求項
4に記載のグロー放電発光分析方法。
【請求項6】
前記反応性ガスに含む酸素ガスが、前記混合ガスに占める割合は、0.05%から20%の範囲である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のグロー放電発光分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロー放電により試料に含まれる成分を分析するグロー放電発光分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に含まれる成分の深さ方向の分布を分析するために、グロー放電を利用して成分の分析を行うグロー放電発光分析が行われている。分析対象として、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を有する窒化物、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を有する酸化物を含む試料の分析のニーズが高まっている。
【0003】
特に、電気自動車等に使用する全固定電池の固体電解質の分析が求められている。固体電解質の分析では、Liの深さ分析が不可欠である。特許文献1には、リチウム電池素材を分析するために、不活性ガス雰囲気中でのグロー放電発光分析方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の分析方法のように不活性ガス雰囲気中での分析ではLiの深さ分析は困難である。Liはイオン化しやすく、イオン半径が小さいため、グロー放電発光分析におけるスパッタに伴い、試料内部で動いてしまうと考えられるからである。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を有する窒化物、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を有する酸化物を含む試料の深さ分析が可能なグロー放電発光分析方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグロー放電発光分析方法は、Liを含む全固体電池の固体電解質を含む試料をグロー放電発光分析装置に固定し、不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを供給して前記試料の深さ方向の分析を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、Liを含む全固体電池の固体電解質を含む試料の深さ分析が可能となる。
【0013】
本発明に係るグロー放電発光分析方法は、前記不活性ガスはアルゴンガス又はネオンガスであり、前記反応性ガスは酸素ガスであることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を有する窒化物、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を有する酸化物を含む試料の深さ分析が可能となる。
【0015】
本発明に係るグロー放電発光分析方法は、Liを含む全固体電池の固体電解質を含む試料をグロー放電発光分析装置に固定し、不活性ガスと酸素ガスを含む反応性ガスとの混合ガスを供給し、Liと酸素とを結合させた上で、前記試料の深さ方向の分析を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、Liが酸素と結合することにより、Liが試料内部で動くことを抑止するので、深さ分析が可能となる。
【0017】
本発明に係るグロー放電発光分析方法は、前記試料は成分の分布が深さ方向で一様であり、深さ方向の分析結果において、前記試料の測定値は、前記不活性ガス若しくは前記反応性ガス、又は前記試料の主成分若しくは副成分に関する測定値を基準として、変動幅が20%以内であることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、Liを含む試料の深さ分析が可能となる。
【0019】
本発明に係るグロー放電発光分析方法は、前記試料に含まれるLiの測定値は、深さ方向1μmから5μmの範囲において、前記不活性ガスであるアルゴンガスを基準値として、変動幅が20%以内であることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、Liを含む試料の深さ分析が可能となる。
【0021】
本発明に係るグロー放電発光分析方法において、前記反応性ガスに含む酸素ガスが、前記混合ガスに占める割合は、0.05%から20%の範囲であることを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、Li原子等は、酸化物に変化しLi原子のままの状態と比較して移動し難くなるため、深さ方向での分析が精度良く行えるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にあっては、Liを含む全固体電池の固体電解質を含む試料の深さ分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】グロー放電発光分析装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】グロー放電発光分析の手順を示すフローチャートである。
【
図4A】Arの測定値を基準とした場合の測定値を示すグラフである。
【
図4B】Arの測定値を基準とした場合の測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、グロー放電発光分析装置10の構成を示すブロック図である。グロー放電発光分析装置10は、グロー放電管1、制御部21、光測定器22、電源部23、押圧電極24、減圧部25及びガス供給部26を備えている。グロー放電管1はグロー放電を発生させる。グロー放電管1は、分析対象である試料3に対してグロー放電を発生させる。グロー放電管1は、陽極11及びOリング12を含む。制御部21はグロー放電発光分析装置の全体的な制御を行う。光測定器22は分光器221及び検出器222を含む。分光器221はグロー放電により発生する光を分光する。検出器222は分光器221で分光した光の強度を測定する。電源部23はグロー放電を発生させるための高周波電圧を発生させる。押圧電極24は試料3をグロー放電管1に押圧して配置する。押圧電極24は電源部23に接続されている。減圧部25はグロー放電管1の内部を減圧する真空ポンプ等を含む。ガス供給部26は減圧後にグロー放電管1の内部へ混合ガスを供給する。減圧部25とグロー放電管1との間には、減圧用の配管が配置されている。
【0026】
ここで、対象とする試料は全固体電池の構成材料である。構成材料のうち、主としてLiを含む無機固体電解質を対象とする。無機固体電解質の例としては、超イオン伝導体Li-Sn-Si-PS(LSSPS):Li10.35[Sn0.27Si1.08]P1.65S12(Li3.45[Sn0.09Si0.36]P0.55S4)、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Li0.34La0.51TiO2.94、Li7La3Zr2O12、50Li4SiO4・50Li2BO3、90Li3BO3・10Li2SO4、Li2.9PO3.3・N0.46(LIPON)、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3等の酸化物がある。なお、LIPONはLi3PO4を窒化したもので、窒化物の例である。
【0027】
ガス供給部26は、アルゴンガスボンベ261、酸素ガスボンベ262、2つのMFC263、ミキサー264及びMFC265を含む。アルゴンガスボンベ261には、不活性ガスであるアルゴンガスが封入されている。酸素ガスボンベ262には、反応性ガスである酸素ガスが封入されている。なお、アルゴンガスボンベ261及び酸素ガスボンベ262は、グロー放電発光分析装置10の構成部に含めなくてもよい。
【0028】
2つのMFC(マスフローコントローラ)263が、夫々アルゴンガスボンベ261及び酸素ガスボンベ262と配管により接続されている。また、1つのMFC265がミキサー264とグロー放電管1とを接続する供給配管SPの間に配置されている。2つのMFC263及び1つのMFC265は、夫々制御部21と接続されている。アルゴンガスボンベ261及び酸素ガスボンベ262の夫々に接続されているMFC263は、夫々アルゴンガスと酸素ガスとの質量流量を制御部21から指定された混合比に応じて制御する。MFC265は、混合ガスの質量流量を制御する。なお、MFC263、MFC265の代わりに、流体の体積流量を制御する体積流量制御装置を用いてもよい。かかる場合、体積流量制御装置は、アルゴンガス及び酸素ガス並びに混合ガスの体積流量を制御する。
【0029】
ミキサー264は、2つのMFC263及び1つのMFC265と夫々配管及び供給配管SPにより接続されている。ミキサー264は、アルゴンガスボンベ261及び酸素ガスボンベ262の夫々に接続された2つのMFC263が夫々流量を制御したアルゴンガス及び酸素ガスを均一に混合する。ミキサー264は、均一に混合した混合ガスを、供給配管SPを通して1つのMFC265に流す。そして、1つのMFC265は、流量制御を施した混合ガスをグロー放電管1に供給する。グロー放電管1には、ミキサー264に接続された供給配管SPと空間Kとの間を貫通するガス供給孔が設けられている。つまり、ミキサー264は、1つのMFC265、供給配管SP及びガス供給孔を介して空間Kに混合ガスを供給する。なお、混合ガスにおける酸素ガスの割合は、0.05%から20%程度である。酸素濃度が高いと酸素とLiを良好に結合できるが、スパッタを妨げる。そのため、酸素ガスの割合は、0.05%から20%の範囲で、試料毎に最適な割合を適宜定める。
【0030】
制御部21は、コンピュータを用いてなり、演算を行う演算部、メモリ、データを記憶する記憶部、及び情報を表示する表示部を備えている。光測定器22、電源部23及びガス供給部26は、制御部21に接続されている。制御部21は、光測定器22、電源部23及びガス供給部26の動作を制御する。
【0031】
本実施の形態におけるグロー放電発光分析装置10を用いたグロー放電発光分析方法について説明する。
図2はグロー放電発光分析の手順を示すフローチャートである。グロー放電発光分析を行うために、試料3をグロー放電管1に固定する(ステップS1)。試料3の一面をOリング12に接触させた後、押圧電極24を試料の他面を押圧するように移動させる。このようにして、試料3をOリング12と押圧電極24との間に固定する。グロー放電管1の内部を減圧部25で減圧する(ステップS2)。次に、ガス供給部26がグロー放電管1の内部へ混合ガスを供給する。制御部21は、予め設定された混合比に応じてアルゴンガス及び酸素ガスの流量を制御するように各MFC263に指示を出力する。ミキサー264は、各MFC263が制御した流量に係るアルゴンガス及び酸素ガスを均一に混合し、均一に混合した初期設定の混合比の混合ガスをグロー放電管の内部へ供給する(ステップS3)。次に、制御部21の制御に従って、電源部23は押圧電極24に高周波電圧を供給する。空間Kには混合ガスが随時供給される。押圧電極24に高周波電圧が供給されることにより、陽極11と試料3との間に電圧が印加され、混合ガスの雰囲気中で陽極11と試料3との間でグロー放電が発生する(ステップS4)。グロー放電が発生することにより、アルゴンイオン、酸素イオン及び酸素ラジカルを含んだプラズマが生成される。試料表面は、プラズマ中の酸素ガス、酸素イオン及び酸素ラジカルに触れ、Li原子等は酸素と結合し(ステップS5)、酸化物に変化すると同時に、アルゴンイオンによるスパッタリングにて、試料構成物質と共に飛び出す。飛び出した構成物質は、グロー放電によって励起され、粒子に含まれる元素に固有の波長の光を放出する。放出された光は光測定器22の分光器221へ入射される。分光器221は入射された光を分光する。検出器222は各波長の光の強度を検出し、検出結果を制御部21へ出力する。制御部21は、検出器222から入力された電気信号に基づいて、試料3に含まれる成分の元素組成を分析する(ステップS6)。このようにして、試料3に対するグロー放電発光分析が行われる。光測定器22は例えば測定した光の強度を電圧に変換し、制御部21へ出力する。光の強度を電流に変換してもよい。
【0032】
上述したように、Li原子等は、酸化物に変化しLi原子のままの状態と比較して移動し難くなるため、深さ方向での分析が精度良く行えるようになる。
【0033】
次に、グロー放電発光分析の結果例を示す。
図3A及び
図3Bは分析結果の例を示すグラフである。
図3Aは比較方法での分析結果を示すグラフである。ここで、試料は分析の深さ方向において、成分は一様であるとする。
図3Bは本実施の形態における方法での分析結果を示すグラフである。
図3Aの比較方法はグロー放電を行う際に空間Kに供給するガスがアルゴンガスのみの場合である。
図3A及び
図3Bにおいて、横軸は試料の深さである。単位はμmである。縦軸は光の強度を示す。ここでは、光の強度を電圧に変換しているので、単位はVである。
図3A及び
図3Bにおいて、グラフ31はLiの測定結果である。グラフ32はArの測定結果である。グラフ33はOの測定結果である。グラフ34はCaの測定結果である。グラフ35はPの測定結果である。グラフ36はTiの測定結果である。グラフ37はSiの測定結果である。グラフ38はAlの測定結果である。グラフ31で示されるようにLiは、深さ方向に対して単調増加を示す電圧値となっている。特に深さ方向1μmから5μmの範囲は顕著に増加している。しかし、試料が静的な状態で、Liの分布がグラフ31で示すような分布となることは想定できない。他の元素と同じように、ほぼ一定となることが想定されている。したがって、グロー放電によるスパッタリングに伴い、Liが試料内部へ移動していると考えられる。なお、試料の表面近傍(深さ0~1μm)を検討対象から外したのは、表面近傍では構成材料が安定していないからである。
【0034】
図3Bのグラフで31に示すように、本実施の形態における分析方法では、深さ方向に対するLiの測定結果である電圧値はほぼ一定であり、他の元素と同じような結果となっている。特に深さ方向1μmから5μmの範囲でも、ほぼ一定である。すなわち、Liの移動が抑止できたことを示している。
【0035】
次に、Liの測定結果の変動幅について示す。
図4A及び
図4Bは不活性ガスであるArの測定値を基準とした場合の測定値を示すグラフである。
図4Aは比較方法での測定値を示すグラフである。
図4Bは本実施の形態における方法での測定値を示すグラフである。
図4A及び
図4Bはそれぞれ
図3A、
図3Bに示したAr以外の各元素の測定値を、Arの測定値で除算した値を示すグラフである。
図4A及び
図4Bにおいて、横軸は試料の深さである。単位はμmである。縦軸は比率である。単位は任意単位(a.u.)である。
図4A及び
図4Bにおいて、グラフ41はLiの測定結果である。グラフ43はOの測定結果である。グラフ44はCaの測定結果である。グラフ45はPの測定結果である。グラフ46はTiの測定結果である。グラフ47はSiの測定結果である。グラフ48はAlの測定結果である。
【0036】
図4Aに示すグラフにおいて、深さ方向1μmのLiの測定値0.6と、深さ方向5μmのLiの測定値2.7との平均値1.65を基準値とする。深さ方向1μmから5μmの範囲における測定値と基準値との差分は1.05から1.15となっている。変動幅は基準値1.65のプラスマイナス20%以内に収まっていない。一方、
図4Bに示すグラフにおいて、深さ方向1μmのLiの測定値1.07と、深さ方向5μmのLiの測定値1.07との平均値1.07を基準値とする。深さ方向1μmから5μmの範囲における測定値と基準値との差分は0.03から0.04となっている。本実施の形態において、Liの測定値は、Arの測定値を基準として、深さ方向1μmから5μmの範囲において、変動幅が20%以内である。
【0037】
なお、測定値の比率を求める際、不活性ガスArを基準としたが、それに限らない。活性ガスO2を基準としてもよい。また、分析対象である試料の主成分や副成分を基準としてもよい。
【0038】
上述においては、Liに着目したがそれに限らない。Liと同様にイオン化傾向が高い元素や、イオン半径が小さい元素など、試料内部へ移動しやすい元素を分析する場合においても、本実施の形態の分析方法を用いてもよい。例えば、リチウムイオン二次電池の正極の活物質である。リチウムイオン二次電池の正極の活物質は、LiMPO4 、LiMSiO4 、LiMBO3 (MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種以上の遷移金属元素)、LiMO2 (MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種以上の遷移金属元素)等である。例えばガラスに含まれるLi2O,Na2O、K2O等の深さ分析を行う場合である。その他のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む試料の深さ分析をする場合である。
【0039】
不活性ガスはアルゴンガスとしたが、他のガス、例えばネオンガスやヘリウムガスでもよい。無機固体電解質として酸化化合物を示したが、硫化化合物を分析対象としてもよい。硫化化合物は例えば、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li10GeP2S12(LGPS)、Li3.25Ge0.25P0.75S4、Li6PS5Cl、30Li2S・26B2S3・44Lil、50Li2S・17P2S5・33LiBH4、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P2S5、Li7P3S11、Li3.25P0.95S4などである。
【0040】
上述の実施の形態では、分析対象の試料3をOリング12と押圧電極24との間に固定するとしたが、それに限らない。特許文献1に示されているような、試料3を空気に晒すことなくグロー放電発光分析装置10に固定可能な容器、いわゆるトランスファーベッセルに収容して、分析を行ってもよい。
【0041】
また、上述の実施の形態において、グロー放電発光分析装置10に冷却機構を設け、分析時、スパッタリングにより発生する熱で試料3が溶解しないように、試料を冷却してもよい。さらに、トランスファーベッセルに収容した試料を冷却する冷却機構をグロー放電発光分析装置10に設けてもよい。
【0042】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
10 グロー放電発光分析装置
1 グロー放電管
11 陽極
12 Oリング
21 制御部
22 光測定器
23 電源部
24 押圧電極
25 減圧部
26 ガス供給部
261 アルゴンガスボンベ
262 酸素ガスボンベ