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特許7386181針‐縫合糸結合体、針ホルダー及び手術用縫合装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】針‐縫合糸結合体、針ホルダー及び手術用縫合装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/06 20060101AFI20231116BHJP
   A61B 17/062 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A61B17/06 510
A61B17/062 100
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020559483
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 NL2019050242
(87)【国際公開番号】W WO2019209108
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】2020824
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】516326450
【氏名又は名称】メロン メディカル ビー ブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】フランケン ペーテルス、マルク-ポール フランシスカス マリア
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05690652(US,A)
【文献】特開昭59-095038(JP,A)
【文献】国際公開第2014/030544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/06
A61B 17/062
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1針端部と、前記第1針端部の反対側の第2針端部を有する針と、
前記第1針端部と前記第2針端部の間で前記針に連結された縫合糸
を有する針‐縫合糸結合体を保持する針ホルダーであって、前記針ホルダーは、
前記第1針端部または前記第2針端部を受けるように配置された針チャネルであって、それぞれの前記針端部を前記針チャネル内に導入する入口を有する前記針チャネルと、
それぞれの前記針端部を前記針チャネルにロックするための針ロック要素を有するものであって、
前記針チャネルは、前記針‐縫合糸結合体の針端部側停止表面と協働する針チャネル側停止表面を有
前記針チャネルは、第1直径を有する、内部に前記針チャネル側停止表面を備えた針保持部と、前記針保持部と前記針チャネルの前記入口の間に、第2直径を有する組織受取チャネル部を有するものであって、前記第2直径は前記第1直径よりも大きい、針ホルダー。
【請求項2】
前記針チャネル側停止表面は、実質的に円錐形である、請求項1に記載の針ホルダー。
【請求項3】
前記針チャネル側停止表面が前記針端部側停止表面に係合している時は、前記針チャネルが前記針先と接触しないように構成されている、請求項1または2のいずれかに記載の針ホルダー。
【請求項4】
前記針チャネルは、前記入口に、前記針端部と前記針チャネルの位置を揃えるためのアラインメント漏斗を有する、請求項13のいずれかに記載の針ホルダー。
【請求項5】
前記アラインメント漏斗は、前記針チャネルの縦軸に対して鋭角の漏斗表面角度で、漏斗表面を有するものであって、前記鋭角の漏斗表面角度は、前記針先の前記針先部表面の前記第1鋭角と実質的に同じまたはこれより小さい、請求項4に記載の針ホルダー。
【請求項6】
前記組織受取チャネル部の長さは、前記第2直径の少なくとも1倍、例えば前記第2直径の少なくとも1.3倍、例えば前記第2直径の少なくとも1.5倍である、請求項1~5のいずれかに記載の針ホルダー。
【請求項7】
前記第2直径は、前記第1直径の1.2~2.5倍の範囲、例えば前記第1直径の1.3~1.8倍の範囲である、請求項1~6のいずれかに記載の針ホルダー。
【請求項8】
両頭の手術用針‐縫合糸結合体を順送り及び逆送りに受け渡しするための手術用縫合装置であって、前記手術用装置は、
前記針の第1針端部を保持する請求項17のいずれかに記載の針ホルダーとして構成される第1針ホルダーを有する第1顎要素と、
前記針の第2針端部を保持する請求項17のいずれかに記載の針ホルダーとして構成される第2針ホルダーを有する第2顎要素と、
前記第1針ホルダーによる前記第1針端部の保持と前記第2針ホルダーによる前記第2針端部の保持を交互に行うように前記第1針ホルダーと前記第2針ホルダーを操作する操作装置を有する、手術用装置。
【請求項9】
針‐縫合糸結合体を保持する請求項1~8のいずれかに記載の針ホルダーであって、
前記針‐縫合糸結合体は、
第1針端部と、前記第1針端部の反対側の第2針端部を有する針と、
前記第1針端部と前記第2針端部の間で前記針に連結された縫合糸を有するものであって、
前記第1針端部と前記第2針端部の各々が、針先と、針ホルダーのロック要素を受けるロック用溝を有しており、
前記第1針端部と前記第2針端部の各々が前記ロック用溝と前記針先の間に針端部側停止表面を有して、前記針端部側停止表面が、針ホルダーの針チャネルの針チャネル側停止表面と協働するように配置されており、
各針先が、前記針の縦軸に対して第1鋭角で延びる針先部表面を有し、
各針端部側停止表面が、前記針の前記縦軸に対して第2鋭角で延びており、
前記第1鋭角は前記鋭角第2角度よりも大きい、針ホルダー。
【請求項10】
前記針先部表面は、前記針の前記縦軸に対して15°~40°の範囲の、例えば前記針の前記縦軸に対して20°~30°の範囲の第1鋭角で配置されていてもよく、前記針端部側停止表面は、前記針の前記縦軸に対して5°~20°の範囲の、例えば前記針の前記縦軸に対して8°~15°の範囲の第2鋭角で配置されていてもよい、請求項9に記載の針ホルダー。
【請求項11】
前記針先部表面は、少なくとも部分的に円錐形である、請求項9または10に記載の針ホルダー。
【請求項12】
前記針端部側停止表面は、少なくとも部分的に円錐形である、請求項9~11のいずれかに記載の針ホルダー。
【請求項13】
前記針は直針である、請求項9~12のいずれかに記載の針ホルダー。
【請求項14】
前記ロック用溝は、前記針の全周を囲んで延びる、請求項9~13のいずれかに記載の針ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針‐縫合糸結合体、そのような針‐縫合糸結合体と協働する針ホルダー及び針ホルダーを組み込んだ手術用縫合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
針‐縫合糸結合体の両頭の(double-ended)手術用針を順送り及び逆送り(forwards and backwords)に受け渡しするための手術用縫合装置が先行技術から知られている。
【0003】
そのような手術用装置の例は、国際公開公報WO2017/155406号から知られるが、その内容は、参照することにより全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
この既知の手術用装置は、第1顎要素と第2顎要素を有する。第1顎要素は、手術用針‐縫合糸結合体の第1針端部を保持する第1針ホルダーを有し、第2顎要素は、手術用針‐縫合糸結合体の第2針端部を保持する第2針ホルダーを有する。
【0005】
操作装置が備えられ、第1針ホルダーによる第1針端部の保持と第2針ホルダーによる第2針端部の保持を交互に行うように第1針ホルダーと第2針ホルダーを操作する。
【0006】
第1顎要素と第2顎要素は、手術用針が第1針ホルダーと第2針ホルダーの間で受け渡しされ得る引継位置(take-over position)と、第1針ホルダーと第2針ホルダーが互いから遠くに距離をあけて配置される全開位置(open position)の間で、互いに対して可動である。
【0007】
国際公開公報WO2017/155406号の手術用装置では、第1顎要素と第2顎要素が引継位置から互いに向かって移動されて、操作装置を起動する。引継位置から互いに向かう第1顎要素と第2顎要素のこの起動動作は、特に、操作表面または操作要素が第1顎要素と第2顎要素上に挟む力を加えるように備えられる第1顎要素と第2顎要素の部分において起こる。これらの操作表面ないし操作要素は、例えば、第1顎要素と第2顎要素の中間部に、即ち、第1顎要素と第2顎要素のそれぞれの遠位端と近位端の間に備えられる。
【0008】
この起動動作を可能にするために、第1顎要素及び/または第2顎要素は、曲げることができてもよい。代替的に、第1顎要素及び/または第2顎要素は、第2顎部に対する第1顎部の回転のためのそれぞれの顎要素内に回転点を備えていてもよい。第1顎要素及び/または第2顎要素のこの曲げまたは内部回転によって、第1顎要素と第2顎要素の近位端と遠位端を実質的に同じ位置に留めながら、第1顎要素と第2顎要素をその中間部において、互いに向かって移動させることができる。
【0009】
起動動作の開始時は、第1顎要素と第2顎要素は、針‐縫合糸結合体の針端部が第1針ホルダーと第2針ホルダーに既に配置されている引継位置にある。したがって、第1顎要素と第2顎要素の起動動作中は、第1顎要素と第2顎要素が、第1針ホルダーと第2針ホルダーに配置されたそれぞれの針端部の針先の周りを回転するように構成されている。
【0010】
手術用縫合装置のこの構成の欠点、及び、特に、第1顎要素と第2顎要素の起動動作の欠点は、それぞれの針端部の針先の周りの第1顎要素と第2顎要素の回転が、針端部の形状及び/または状態に悪影響を及ぼし得ることである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、針‐縫合糸結合体及び/または上述のタイプの手術用縫合装置において針‐縫合糸結合体の使用を容易にする針ホルダーを提供することである。一般的には、本発明の目的は、手術用縫合装置、特に、国際公開公報WO2017/155406号に開示される手術用縫合装置のための改良された針‐縫合糸結合体及び/または針ホルダーを提供することである。
【0012】
本発明は、請求項1に記載する針‐縫合糸結合体を提供する。
【0013】
針‐縫合糸結合体は、針と、針に連結された縫合糸を有する。縫合糸は、第1針端部と第2針端部の間で針に連結されている。針は、第1針端部と、第1針端部の反対側の第2針端部を有する。第1針端部と第2針端部の各々は、針先と、針ホルダーのロック要素を受けるロック用溝を有する。
【0014】
本発明に従えば、第1針端部と第2針端部は、各々がロック用溝と針先の間に針端部側停止表面を有しており、針端部側停止表面は、針ホルダーの針チャネルの針チャネル側停止表面と協働するように配置されている。針上に、針先から分離した、針ホルダーの針チャネル側停止表面と協働する特定の針端部側停止表面を設けることで、第1顎要素と第2顎要素がそれぞれの針端部の周りを回転するために、針端部側停止表面と針チャネル側停止表面との間の接触部(contact)が最適化され得る。さらにまた、針先それ自体が針チャネルと接触する必要がないので、これにより、針先の損傷を回避する。
【0015】
針端部側停止表面は、針チャネル側停止表面に対する針端部側停止表面の回転のために最適化されていてもよい。例えば、針端部側停止表面の形状は、そのために改変されていてもよく、例えば、針端部側停止表面は硬化されていてもよい。
【0016】
針端部側停止表面は、例えば、針チャネル側停止表面上で針端部側停止表面が動き易くする潤滑コーティングまたは針端部側停止表面の摩耗を減らす耐摩耗性コーティングで、被覆されていてもよい。
【0017】
針端部側停止表面を配置して針と針チャネルの間に接触部を提供し、第1顎要素と第2顎要素がそれぞれの針端部の周りを回転するのを容易にするので、もはや針先が針と針チャネルの間の係合を提供する必要がない。その結果、第1針端部と第2針端部の各々の針先は、組織の穿刺のために最適化され得る。
【0018】
ある実施態様において、各針先は針の縦軸に対して第1鋭角で延びる針先部表面を有するものであって、各針端部側停止表面が針の縦軸に対して第2鋭角で延び、第1鋭角は第2鋭角よりも大きい。
【0019】
針先部表面は、針先を規定する単数または複数の表面である。
【0020】
針端部側停止表面が針先の針先部表面よりも針の縦軸に平行であると、第1顎要素と第2顎要素による針端部の周りの回転に有利なことが分かった。針端部側停止表面は針先から分離しているので、針の針先部表面の角度を針の縦軸に対してより大きい角度で提供しつつ、針端部側停止表面の角度を針の縦軸により平行にすることができる。
【0021】
ある実施態様において、針先部表面は、針の縦軸に対して15°~40°の範囲の、例えば、針の縦軸に対して20°~30°の範囲の第1鋭角で配置されていてもよい。
【0022】
ある実施態様において、針端部側停止表面は、針の縦軸に対して5°~20°の範囲の、例えば、針の縦軸に対して8°~15°の範囲の第2鋭角で配置されていてもよい。
【0023】
ある実施態様において、針先の針先部表面は、少なくとも部分的に円錐形である。各針端部の針先の針先部表面は、尖った先端で終了する実質的に円錐形の形状を有していてもよい。また、針先部表面は、他の任意の形状、例えば尖った先端で終了する3つのカット面を有していてもよい。
【0024】
ある実施態様において、針端部側停止表面は、少なくとも部分的に円錐形である。各針端部の針端部側停止表面は、実質的に円錐形であってもよい。円錐形の表面は、第1顎要素と第2顎要素の回転表面として適していることが分かった。さらにまた、針端部側停止表面の円錐形状は、針端部側停止表面と針チャネル側停止表面の間に適切な係合を保ちつつ、針を針チャネルにおいて任意の回転位置に配置できるようにする。また、針端部側停止表面は、他の任意の形状、例えば球形であってもよい。針端部側停止表面は、概して針の縦軸に対してゼロでない角度の表面を有する。針端部側停止表面は、針の縦軸に対して対称であってもよい。
【0025】
ある実施態様において、実質的に円錐形の針端部側停止表面は、僅かに凸状である。「僅かに凸状」とは、針端部側停止表面の主な形状は実質的に円錐形であるが、この主な円錐形状において、表面が凸状であることを意味する。そのような凸状の形状は、針端部の周りの第1顎要素と第2顎要素の回転を改善し得る。
【0026】
ある実施態様において、針は直針である。直針の利点は、特に、針の直径が小さい場合、第1顎要素と第2顎要素を互いに向かって押すことで針端部にかかる縦の圧縮力に針が耐えるのにより適していることである。さらにまた、直針は、その回転位置と独立に針チャネル内に配置することができる。
【0027】
ある実施態様において、ロック用溝は、針の全周を囲んで延びる。直針と、外周のロック用溝を備えることで、針は、針の回転位置と独立に手術用縫合装置の針チャネル内に適切に配置され得る。これは、針を針ホルダーにセットする前に針チャネルに対して針の回転位置の位置を揃える必要がなくなるため、有利である。また、例えば、針ホルダーから一時的に開放した後に、針の再セットを行う場合は、針を針ホルダーに再セットするための針の回転位置をユーザーが適用する必要がないので、針ホルダーへの針の再セットが難しくなくなる。
【0028】
回転位置と独立の針の他の利点は、針を針ホルダー内の異なる回転位置に配置することで、特定の場所の摩耗を減らすことである。
【0029】
さらに、本発明は、針‐縫合糸結合体を保持する針ホルダーを提供し、該針ホルダーは、
第1針端部または第2針端部を受けるように配置された針チャネルであって、それぞれの針端部を針チャネルに導入するための入口を有する針チャネルと、
それぞれの針端部を針チャネルにロックするための針ロック要素を有するものであって、
該針チャネルは、針‐縫合糸結合体の針端部側停止表面と協働する針チャネル側停止表面を有する。
【0030】
本発明の針‐縫合糸結合体は、針ホルダー、特に、針端部側のそれぞれの停止表面と協働するように設計された針チャネル側停止表面を備える針チャネルを有する針ホルダーにおいて有利に使用し得る。針端部側停止表面と針チャネル側停止表面は、実質的にあわせ面であってもよい。
【0031】
針端部側停止表面と針チャネル側停止表面は、互いに協働して針チャネル側停止表面が針端部側停止表面に対して動くことができるようにして、手術用縫合装置の第1顎要素と第2顎要素が針‐縫合糸結合体のそれぞれの針端部の周りを回転運動するのを容易にする、ベアリング構造を形成する。
【0032】
針チャネル側停止表面は、この回転運動のために最適化されていてもよい。例えば、針チャネル側停止表面の形状は改変されていてもよく、例えば、針チャネル側停止表面は硬化されていてもよい。
【0033】
針チャネル側停止表面は、例えば、針チャネル側停止表面上を針端部側停止表面が動き易くする潤滑コーティングまたは針チャネル側停止表面の摩耗を減らす耐摩耗性コーティングで、被覆されていてもよい。
【0034】
ロック要素は、ロック位置と非ロック位置の間で可動である。ロック位置において、ロック要素は、針チャネルに導入された針の針端部のロック用溝に延び、また、非ロック位置においては、ロック要素は針チャネルから外に移動して、針が針チャネル内外に自由に動くようにする。
【0035】
針が外周のロック用溝を有する場合、ロック要素は、針チャネルの縦軸に対して半径方向に、したがって、針チャネルに配置された針の縦軸に対して半径方向に、動かすことができる。
【0036】
ある実施態様において、針チャネル側停止表面は、実質的に円錐形である。針チャネル側停止表面の角度が実質的に針端部側停止表面の角度と対応して、針端部側停止表面と針チャネルの針チャネル側停止表面の間に、接触線(contact line)ではなく接触面(contact plane)が存在するようにしてもよい。他の実施態様において、針チャネル接触表面は、他の任意の形状、例えば、針端部の周りを顎要素が回転するのを容易にする球形であってもよい。
【0037】
ある実施態様において、実質的に円錐形の針チャネル側停止表面は、僅かに凹状である。「僅かに凹状」とは、針チャネル側停止表面の主な形状は実質的に円錐形であるが、この主な円錐形状において、表面が凹状であることを意味する。そのような凹状の形状は、針端部の周りの第1顎要素と第2顎要素の回転を改善し得る。
【0038】
ある実施態様において、針チャネル側停止表面が針端部側停止表面に係合している時は、針チャネルは針先と接触しないように構成されている。針端部側停止表面と針チャネル側停止表面は、針と針ホルダーの間に接触面を提供するように配置されているので、針先は、針が針チャネルに配置されている時は、もはや針チャネル表面と直接接触することはない。これは、即ち、針が針チャネルに配置されている時は、針チャネルと針の接触による針先の損傷が起こりえないことを意味する。
【0039】
ある実施態様において、針チャネルは、入口に、針端部と針チャネルの位置を揃える(align)ためのアラインメント漏斗を有する。顎要素が針端部に対して回転できるようにするために、針の縦軸には針チャネルの縦軸に対していくらかの遊びを設けなければならない。その結果、第1顎要素と第2顎要素が、針端部の一方だけが対応する針ホルダーの針チャネルに配置される全開位置から、針端部の両方が針ホルダーに配置される引継位置に移動された時、針の位置が必ずしも完全に針チャネルの位置に揃わないことがある。確実に針端部を針チャネル内に適切に導くために、アラインメント漏斗が針チャネルの入口に備えられていてもよい。アラインメント漏斗は、針の縦軸と針チャネルの縦軸の位置を揃えつつ、針端部を受けて針チャネルに向けてガイドするために配置される。アラインメント漏斗は、典型的には、例えば、実質的に円錐形の表面であって、針チャネルに向かう方向に狭くなる漏斗表面を有する。アラインメント漏斗の幅広の端部は、針の直径の少なくとも2倍(例えば、針の直径の少なくとも3倍)の直径の断面を有していてもよい。
【0040】
アラインメント漏斗は、任意の手術用針‐縫合糸結合体の針の位置を揃えるために使用されてよいことが留意される。したがって、手術用針‐縫合糸結合体を保持するための針ホルダーもまた提供され、該針ホルダーにおいて、該針ホルダーは、針‐縫合糸結合体の針の針端部を受けるように配置される針チャネルを有し、該針チャネルは、それぞれの針端部を針チャネルに導くための入口を有し、該針チャネルは、入口に、針端部と針チャネルの位置を揃えて配置するためのアラインメント漏斗を有する。そのような針ホルダーは、両頭の手術用針‐縫合糸結合体を順送り及び逆送りに受け渡しするための手術用縫合装置に備えられていてもよく、該手術用装置は、
各々がそのような針ホルダーを有する第1顎要素と第2顎要素と、
針ホルダーの一方による第1針端部の保持と針ホルダーの他方による第2針端部の保持を交互に行うように針ホルダーを操作する操作装置を有するものであって、第1顎要素と第2顎要素は、針‐縫合糸結合体が針ホルダーの間で受渡しされ得る引継位置と、第1針ホルダーと第2針ホルダーが互いから遠くに距離をあけて配置される全開位置の間で、互いに対して可動である。
【0041】
ある実施態様において、アラインメント漏斗は、針チャネルの縦軸に対して鋭角の漏斗表面角度で、漏斗表面を有するものであって、該鋭角の漏斗表面角度は、針先の針先部表面の第1鋭角と実質的に同じまたはこれより小さい。針先の針先部表面と同じまたは小さい角度で漏斗表面を備えることにより、針端部が漏斗表面上に押された時に、針先が漏斗表面を穿刺するのを防止する。
【0042】
ある実施態様において、針チャネルは、第1直径を有する、内部に針チャネル側停止表面を備えた針保持部と、針保持部と針チャネルの入口の間に、第2直径を有する組織受取チャネル部を有するものであって、該第2直径は第1直径よりも大きい。
【0043】
針端部が組織を穿刺して針チャネル内に到達した時に、組織が針チャネル内に引き込まれることがあるということが分かった。この組織が、典型的には針よりも僅かに大きい直径を有する針チャネルの針保持部内に引き込まれると、針チャネル内で針及び/または組織を固定したり詰まらせたりすることがあり、結果として組織による妨害につながる。この発生を回避するために、または、少なくとも、針端部と一緒に針チャネル内に引き込まれる組織に起因して針チャネル内で針が詰まったり固定されたりするリスクを減らすために、針には、入口と針保持部の間に、針保持部よりも大きい直径を有する組織受取チャネル部が備えられる。組織受取チャネル部の第2直径は、組織受取チャネル部内で針の周りを囲む周方向の空間が存在して、組織が針チャネル内に引き込まれた場合はその中に収容できるように選択される。
【0044】
組織受取チャネル部は、針が詰まったり固定されたりするのを防ぐためだけでなく、組織の損傷をさらに減らすために、針チャネルに引き込まれた組織が、組織受取チャネル部全体を通り抜けて針保持部内に引き込まれるのを防ぐのに十分な長さを有するべきである。
【0045】
ある実施態様において、組織受取チャネル部の長さは、第2直径(即ち、組織受取チャネル部の直径)の、例えば少なくとも1倍、例えば少なくとも1.3倍、例えば少なくとも1.5倍である。
【0046】
ある実施態様において、第2直径は、第1直径の1.2~2.5倍の範囲であり、例えば第1直径の1.3~1.8倍の範囲であり、例えば第1直径の約1.5倍である。針チャネルに引き込まれた組織を収容するためには、組織受取チャネル部の直径を大きくしたほうが有益であることが分かった。組織が針チャネル内で針を固定したり詰まらせたりするのを回避するためには、直径は小さすぎてはいけないが、大量の組織が針チャネルに引き込まれるのを回避するためには、大きすぎてもいけない。
【0047】
第2直径は、組織受取チャネル部の長さに沿って、入口から針保持部の方向に減少していてもよい。ある実施態様において、組織受取チャネル部の第2直径は段階的に減少して、第2直径における段差が、針チャネル内のより奥に組織が引き込まれるのを効果的に止められるようにする。
【0048】
組織受取チャネル部は、任意の針ホルダーの針チャネルにおいて使用されてよいことが留意される。したがって、手術用針‐縫合糸結合体を保持するための針ホルダーもまた提供され、該針ホルダーにおいて、該針ホルダーは、針‐縫合糸結合体の針の針端部を受けるように配置される針チャネルを有し、該針チャネルは、それぞれの針端部を針チャネルに導くための入口と、第1直径を有する針保持部と、針保持部と針チャネルの入口の間に、第2直径を有する組織受取チャネル部を有するものであって、該第2直径は第1直径よりも大きい。そのような針ホルダーは、両頭の手術用針‐縫合糸結合体を順送り及び逆送りに受け渡しするための手術用縫合装置に備えられていてもよく、該手術用装置において、該手術用装置は、
各々がそのような針ホルダーを有する第1顎要素と第2顎要素と、
針ホルダーの一方による第1針端部の保持と針ホルダーの他方による第2針端部の保持を交互に行うように針ホルダーを操作する操作装置を有するものであって、第1顎要素と第2顎要素は、針‐縫合糸結合体が針ホルダーの間で受渡しされ得る引継位置と、第1針ホルダーと第2針ホルダーが互いから遠くに距離をあけて配置される全開位置の間で、互いに対して可動である。
【0049】
本発明は、さらに、両頭の手術用針‐縫合糸結合体を順送り及び逆送りに受け渡しするための手術用縫合装置を提供し、該手術用装置において、該手術用装置は、
針の第1針端部を保持する請求項8~15のいずれかに記載の針ホルダーとして構成される第1針ホルダーを有する第1顎要素と、
針の第2針端部を保持する請求項8~15のいずれかに記載の針ホルダーとして構成される第2針ホルダーを有する第2顎要素と、
第1針ホルダーによる第1針端部の保持と第2針ホルダーによる第2針端部の保持を交互に行うように第1針ホルダーと第2針ホルダーを操作する操作装置を有する。
【0050】
上述の通り、針‐縫合糸結合体及び針は、手術用縫合装置において使用されると有利である。特に、針上の針端部側停止表面と針チャネル内の針チャネル側停止表面の組合せの提供は、国際公開公報WO2017/155406号に開示されるような、操作装置の起動のために引継位置から互いに向けて顎要素を部分的に移動させるように顎要素が曲がるまたは内部回転を有する、手術用縫合装置において有利である。
【0051】
本発明の実施態様のさらなる特徴や構成要素を添付の以下の図面を参照しつつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、本発明に従う手術用縫合装置の実施態様を示す斜視図である。
図2図2は、図1の実施態様の遠位端をより詳細に示す図である。
図3図3は、本発明の実施態様に従う針‐縫合糸結合体の実施態様を示す図である。
図4図4は、図3の針‐縫合糸結合体の実施態様の詳細を示す図である。
図5図5は、本発明の実施態様に従う針ホルダーの断面図である。
図6図6は、図1の手術用縫合装置の針ホルダーに配置された図3及び図4の針を示す図である。
図7図7図8及び図9は、本発明の実施態様に従う針‐縫合糸結合体において使用される針の第2の実施態様を示す図である。
図8図7図8及び図9は、本発明の実施態様に従う針‐縫合糸結合体において使用される針の第2の実施態様を示す図である。
図9図7図8及び図9は、本発明の実施態様に従う針‐縫合糸結合体において使用される針の第2の実施態様を示す図である。
図10図10は、図7図8及び図9の針の第1針端部をより詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、本発明の手術用装置の実施態様を模式的に示している。手術用装置は、概して参照番号1で示す。図2は、手術用装置の遠位端をより詳細に示している。
【0054】
手術用装置1は、第1顎要素2と第2顎要素3を有する。第1顎要素2は、針100の針端部を保持するように構成された第1針ホルダー4を有し、第2顎要素3は、針100の反対側の針端部を保持するように構成された第2針ホルダー5を有する。
【0055】
手術用装置1は、両頭の手術用針100を順送り及び逆送りに受け渡しするように構成されているので、手術用装置を人または動物の体組織への縫合糸の適用に使用することができる。手術用装置1は、(非毒性の及び/または生体適合性)プラスチックまたは金属、またはこれらの組合せ等の任意の適切な材料で作られていてもよい。
【0056】
第1顎要素2と第2顎要素3のそれぞれの近位端は、装置1の近位端6において互いに連結されている。
【0057】
第1顎要素2と第2顎要素3は、手術用針100が第1針ホルダー4と第2針ホルダー5の間で受け渡しされ得る引継位置と、第1針ホルダー4と第2針ホルダー5が互いから遠くに距離をあけて配置される全開位置の間で、互いに対して可動である。図1において、手術用装置1は全開位置に示されている。この全開位置において、体組織は、針100と、第1顎要素2と第2顎要素3のうち針100を保持しない方との間に配置され得る。
【0058】
第1顎要素2と第2顎要素3の間に、手術用装置の本体7が備えられる。この本体7には操作装置8が配置されており、この操作装置8は、第1針ホルダー4による針100の第1針端部の保持と第2針ホルダー5による第2針端部の保持を交互に行うように第1針ホルダー4と第2針ホルダー5を操作するように、構成されている。
【0059】
手術用縫合装置1は、この特許出願に特に記載し及び/または示さない限り、参照することにより内容の全体が本明細書に組み込まれる国際公開公報WO2017/155406号に記載される及び示される通りに構成される。
【0060】
図1は、通常の、非作動の状態の縫合装置1を示す。第1顎要素2と第2顎要素3は、全開位置に配置されている。針100の第1針端部は第1針ホルダー4に保持され、第2針ホルダー5は、反対側の第2針端部から距離をあけて配置されている。装置のこの非作動位置において、針100は、針100に取り付けられた縫合糸を使用し、体組織を穿刺して縫合糸を配置する。
【0061】
針100が組織を通って正しく配置されたら、第1顎要素2と第2顎要素3は、例えば、第1顎要素2上の第1操作表面29と第2顎要素3上の第2操作表面30のそれぞれの上の、親指と他の指で挟む力をかけて全開位置から引継位置に移動させてもよい。引継位置において、第1針端部は第1針ホルダー4に保持されたままであるが、第2針端部は第2針ホルダー5に配置される。
【0062】
引継位置においても、針100が組織に正しく配置されたか否かをチェックすることができる。針の位置を修正したい場合は、第1操作表面29と第2操作表面30に対する挟む力を解放すればよく、そうすると第1顎要素2と第2顎要素3が移動して全開位置に戻る。針100の位置の修正をしたくない場合は、操作装置8を起動すればよく、そうすると第1針ホルダー4の第1針端部を解放すると同時に、第2針ホルダー5に第2針端部をロックする。
【0063】
操作装置8を起動するには、引継位置から互いの方に向かう起動動作において、第1顎要素2と第2顎要素3を移動させればよい。なお、第1顎要素2と第2顎要素3は、両者の近位端が互いに連結されており、かつ、針100が第1顎要素2と第2顎要素3のそれぞれの遠位端が互いの方に向かってさらに移動しないようにするので、起動動作中は第1顎要素2と第2顎要素3の中間の部分(即ち、第1操作表面29と第2操作表面30の位置)だけが互いに向かって移動することが留意される。
【0064】
これは、起動動作中は、第1顎要素2と第2顎要素3の回転のためのヒンジとして針100が使用されることを意味する。さらにまた、起動動作は、第1操作表面29と第2操作表面30を互いに向かって移動させるために、第1顎要素2と第2顎要素3の曲げを必要とする。第1顎要素2と第2顎要素3の曲げを容易にするために、第1顎要素2と第2顎要素3は、装置1の近位端6付近に柔らかい部分31(図1参照)を備えていてもよいが、第1顎要素2と第2顎要素3もそれぞれの延長上の他の部分にわたって曲がるように構成されて、第1操作表面29と第2操作表面30が引継位置から互いに向かって移動できるようにする。
【0065】
第1顎要素2と第2顎要素3が解放されると、第1顎要素2と第2顎要素3は移動して図1に示す全開位置に戻るが、この時、針は第2針ホルダー5に保持されている。
【0066】
そして、第1顎要素2と第2顎要素3が全開位置から引継位置に再び移動され、その後起動動作において少なくとも両者の部分が互いに向かってさらに移動されると、操作装置8が再び起動されて第2針ホルダー5の第2針端部を解放すると同時に、第1針ホルダー4に第1針端部をロックする。
【0067】
その後さらに装置1を作動させれば、組織を通って縫合糸を適用するために、針を第1針ホルダー4と第2針ホルダー5の間で順送り及び逆送りに受け渡しできることが明らかになるであろう。
【0068】
図3は、図1及び図2の手術用装置の実施態様において使用されるように構成されている、本発明の実施態様に従う針‐縫合糸結合体101を示す。
【0069】
針‐縫合糸結合体101は、針100と縫合糸150を有する。縫合糸150は、連結ループ151と、部分的にのみ図示する1本の縫合糸152と、1本の縫合糸152を連結ループ151に連結するコネクタ153を有する。連結ループ151は、1本の縫合糸152よりも直径の小さいワイヤまたは糸で作られている。
【0070】
針100は、第1針端部103と第2針端部104を有する直針本体102を有する。第1針端部103と第2針端部104の中間地点には、貫通孔109が設けられており、ここを通って、縫合糸150の連結ループ151が配置されて縫合糸150を針100に連結する。
【0071】
第1針端部103と第2針端部104の各々は、針先105と、針端部側停止表面106と、周囲のロック用溝107を有する。
【0072】
針先105は針100の尖った先端であり、縫合糸150が通って配置されるべき組織その他の材料の穿刺に使用し得る。
【0073】
針端部側停止表面106は、針ホルダー4,5の針チャネルの針チャネル側停止表面と協働するように配置されている(図5及び図6参照)。針100上に、針先105から分離した、針ホルダーの針チャネル側停止表面と協働する特定の針端部側停止表面106を設けることで、第1顎要素2と第2顎要素3のそれぞれの針端部103,104の周りの回転のために、針端部側停止表面106と針チャネル側停止表面の間の接触部が最適化され得る。操作装置8の起動動作のためには、この回転が必要である。
【0074】
針端部側停止表面106を配置して針100と針チャネルの間に接触部を提供し、第1顎要素2と第2顎要素3のそれぞれの針端部103,104の周りの回転を容易にするので、もはや針先105が針100とこれに対応する針チャネルの間の係合を提供する必要がない。その結果、第1針端部103と第2針端部104の各々の針先105は、組織の穿刺のために最適化され得る。
【0075】
周囲のロック用溝107は、針本体102の全周を囲んで延びる溝である。このロック用溝107が設けられて針ホルダーの針ロック要素を受けて、針ホルダー4,5の針チャネルに針100をロックする。
【0076】
針本体102は、直径約0.4mmである。また、針本体は、その他の任意の適切な直径であってもよい。針100の全長は、例えばおよそ10mmである。針の長さは、7mm~12mmの範囲であってもよい。針100は、ステンレス鋼等の任意の適切な材料で作られていてもよい。
【0077】
図4は、第1針端部103をより詳細に示す。第2針端部104も同じ構成と寸法である。
【0078】
針先105は、針の縦軸110に対して第1鋭角αで延びる実質的に円錐形の針先部表面を有する。針端部側停止表面106もまた、針の縦軸110に対して第2鋭角βで延びる実質的に円錐形の表面である。第1鋭角αは、第2鋭角βよりも大きい。針端部側停止表面が針先105の針先部表面108よりも針の縦軸110に対してより平行な場合、第1針端部103と第2針端部104の周りの第1顎要素4と第2顎5の回転に有利である。
【0079】
図3及び図4に示す実施態様において、針先部表面の第1鋭角αは、針100の縦軸110に対しておよそ26°であり、針端部側停止表面106の円錐形の表面の第2鋭角βは、針100の縦軸110に対しておよそ11°である。
【0080】
より一般的には、第1鋭角αは、針100の縦軸110に対して15°~40°の範囲、例えば針100の縦軸110に対して20°~30°の範囲であってもよく、針端部側停止表面106の第2鋭角βは、針100の縦軸110に対して5°~20°の範囲、例えば針100の縦軸110に対して8°~15°の範囲であってもよい。
【0081】
図1及び図2の手術用縫合装置1の第1針ホルダー4と第2針ホルダー5は、図3及び図4に示す針100と協働するように設計されている。
【0082】
図5は、針ホルダー4の断面を示す。針ホルダー4は、針100の第1針端部103または第2針端部104を受けるように配置される針チャネル10を有する。針チャネル10は、第1針端部103または第2針端部104を針チャネル10に導入するための入口11を有する。
【0083】
針チャネル10の入口11には、アラインメント漏斗13が配置される。このアラインメント漏斗13は、針100が針チャネル10に導入されている時に針100と針チャネル10の位置を揃えるために備えられている。アラインメント漏斗13は、針チャネル10の縦軸15に対して鋭角の漏斗表面角度γで漏斗表面14を有している。鋭角の漏斗表面角度γは、針先10の針先部表面の第1鋭角αと実質的に同じまたはこれより小さくてもよい。
【0084】
針100が針チャネル10に導入されている時に、針チャネル10に位置が完全に揃えられていない場合、即ち、針の縦軸110が針チャネル10の縦軸15と一致していない場合は、漏斗表面14は、漏斗表面14に押し付けられている第1針端部103または第2針端部104を針チャネル10の方に向けてガイドする。このガイドが、針100と針チャネル10の位置を適切に揃えて針チャネル10に入るように確実にする。針の第1鋭角αとだいたい同じまたはこれより小さい鋭角の漏斗表面角度γを作ることで、針100の針先105が、漏斗表面14を穿刺して第1顎要素2と第2顎要素3が引継位置にさらに移動するのを妨害したり及び/または漏斗表面14を損傷したりするのを防ぐ。
【0085】
アラインメント漏斗13の幅広の端部は、例えば針の直径の少なくとも2倍(例えば、針の直径の少なくとも3倍)の直径の断面を有する。
【0086】
図2は、第2針ホルダー5の入口11とアラインメント漏斗13の斜視図を示すことが留意される。
【0087】
針チャネル10は、第1直径を有する針保持部16と、針保持部16と針チャネル10の入口11の間の組織受取チャネル部17を有する。
【0088】
組織受取チャネル部17は、針保持部16の第1直径よりも大きい第2直径を有する。図に示す実施態様において、針保持部16の第1直径はおよそ0.4mm、即ち、針100の直径とほぼ同じであり、第2直径はおよそ0.6mmである。その結果、第2直径は、第1直径のおよそ1.5倍である。組織受取チャネル部17の長さは、およそ1mmである。よって、組織受取チャネル部17の長さは、組織受取チャネル部17の第2直径のおよそ1.7倍である。第2直径が針100の直径よりも大きいので、針100が針チャネル10に配置されると、組織受取チャネル部17に針の周りを囲むスペース(図6も参照)が形成される。この周囲のスペースは、針100と一緒に針チャネル10に引き込まれた組織を受けるように使用し得る。周囲にスペースを設けることにより、針チャネルで針100及び/または組織が固定されたり詰まったりするのを回避する。針100が固定されたり詰まったりすると、針100の受け渡しに誤りを生じ得る。組織の固定や詰まりは、手術用縫合装置1がまだ組織を保持している間に外科医が手術用縫合装置1を引き離すと、組織の損傷につながり得る。
【0089】
組織受取チャネル部17の上記の寸法は、針チャネル10に固定させたり詰まらせたりすることなく組織を組織受取チャネル部17内で受けるのに適切であるが、これに加えて、組織が針チャネル10内(特に、針保持部16内)にさらに侵入するのを防ぐことが分かった。これにより、縫合装置1が適切に機能することを確実にするとともに、それぞれの針ホルダー3,4に保持される組織を不注意に引っ張ることで起こる組織の損傷を回避する。
【0090】
針チャネル10の針保持部16は、針100を実際に保持するように構成されている。針保持部16は、針100の針端部側停止表面106と協働するように構成された針チャネル側停止表面18を有する。針チャネル側停止表面18は、針端部側停止表面106の第2鋭角βに実質的に対応する、針チャネル15の縦軸に対して鋭角θで配置された円錐形の表面である。よって、針100が針チャネル10内にもたらされると、針端部側停止表面106と針チャネル側停止表面18が互いに向き合って配置され、互いに協働して針端部側停止表面106に対する針チャネル側停止表面18の移動を可能にするベアリング構造を形成し、手術用縫合装置1の第1顎要素2と第2顎要素3のそれぞれの針端部103,104の周りの回転運動を容易にする。
【0091】
針チャネル10は、円錐形の針チャネル側停止表面18の小さい方の側に配置されたチャネル終了部19をさらに有する。チャネル終了部19は、針100が針チャネル10内に導入されると針先105を受けるように配置されており、針先が針チャネル10に一旦配置されると、針チャネル10の壁に接触しないようにする。これは、針チャネル10の壁が針100にかける圧力のために、針先105の形状または表面が損傷することを回避する。チャネル終了部19は解放端のチャネルであり、針100がチャネル終了部19内に押し込んでしまった組織または破片をチャネル終了部19の解放端から排出できるようにする。
【0092】
針ホルダー4は、針ロック要素用チャネル21に配置された針ロック要素20をさらに有する。針ロック要素20は、図5に示す非ロック位置と、針ロック要素20が針チャネル10内に移動されるロック位置の間で可動であり、これにより、針100が針チャネル10に配置されている時に、針ロック要素20が針100のロック用溝107に配置されるようにする。ロック位置と非ロック位置の間の針ロック要素20の移動は、本技術分野で知られるように、操作装置8によって操作される。針ロック要素用チャネル21もまた解放端のチャネルであり、針チャネル10に存在する組織や破片も針ロック要素用チャネル21の解放端を通って排出できることが留意される。
【0093】
図6は、引継位置における第1顎要素2と第2顎要素3を示し、ここで、針100は、第1針端部103を第1針ホルダー4の針チャネル10に、そして第2針端部104を第2針ホルダー5の針チャネル10に有して配置されている。
【0094】
それぞれの針端部103,104の各々の針端部側停止表面106は、各針チャネル10の針チャネル側停止表面18と向き合って配置される。その結果、第1針ホルダー4は、第2針ホルダー5に向かってさらに移動され得ない。第1針ホルダー4の針ロック要素20は、針ロック要素20が第1針端部103の針ロック用溝107内に延びるロック位置にある。第2針ホルダー5の針ロック要素20は、針ロック要素20が第2針端部104の針ロック用溝107内に延びない非ロック位置にある。
【0095】
第1針ホルダー4から第2針ホルダー5に針100を渡すには、操作装置8を起動して、第1針ホルダー4の針ロック要素20を非ロック位置に移動させるとともに、第2針ホルダー5の針ロック要素20をロック位置に移動させる必要がある。
【0096】
上述の通り、操作装置8を起動するには、第1顎要素3上の第1操作表面29と第2顎要素4上の第2操作表面30を互いに向かって移動させる必要がある。第1針ホルダー4と第2ホルダー5は、針100が存在するために、互いに向かって移動できないので、第1操作表面29と第2操作表面30が互いに向かって移動すると、第1針端部103の周りに第1顎要素2の回転R1と、第2針端部104の周りに第2顎要素3の回転R2を生ずる。
【0097】
回転R1の間、第1針端部103の針端部側停止表面106と第1針ホルダー4の針チャネル側停止表面18は、互いに協働してベアリング構造を形成し、第1針端部103の周りの第1顎要素3の回転運動を容易にする。同様に、回転R2の間、第2針端部104の針端部側停止表面106と第2針ホルダー5の針チャネル側停止表面18は、互いに協働してベアリング構造を形成し、第2針端部104の周りの第2顎要素4の回転運動を容易にする。針先105は、これらの回転R1,R2の影響を全く受けない。
【0098】
さらに、直針100と周囲のロック用溝107を備えることにより、縦軸110の周りの針100のの回転位置と独立に、針100を針チャネル10に適切に配置できることが留意される。これにより、それぞれの針ホルダー4,5内に針100をセットする前に、針100の回転位置を針チャネル10に対して揃える必要がもはやなくなるので、有利である。
【0099】
図7図8及び図9は、本発明の実施態様に従う針‐縫合糸結合体において使用される針100の第2の実施態様を示す。図7及び図8は、図9に示す針110の縦軸110に垂直な第1の観察方向x及び針110の縦軸110に垂直な第2の観察方向yにおける、針100の側面図を示す。図8の第2の観察方向yは、図7の第1観察方向xに対して90°回転させたものである。図9は、図8に示す観察方向zから見た針10の縦軸110に平行な側面図である。
【0100】
針100は、図1及び図2の概略図に示す手術用装置のある実施態様において使用されるように構成されている。第1針ホルダー4と第2針ホルダー5は、図7図8及び図9に示す針100の形状と寸法に適応されていてもよい。
【0101】
針100は、第1針端部103と第2針端部104を有する直針本体102を有する。第1針端部103と第2針端部104の中間地点には、貫通孔109が設けられており、ここを通って縫合糸の連結ループが配置されて縫合糸を針100に連結する。縫合糸は、例えば図3に示す、連結ループと、1本の縫合糸と、1本の縫合糸を連結ループに連結するコネクタを含む縫合糸として構成されていてもよい。
【0102】
図4の実施態様に対応して、第1針端部103と第2針端部104の各々は、針先105と、針端部側停止表面106と、周囲のロック用溝107を有する。
【0103】
針先105は針100の尖った先端であり、縫合糸が通って配置されるべき組織その他の材料の穿刺に使用し得る。
【0104】
針端部側停止表面106は、図4の実施態様と同様に、針ホルダー4,5の針チャネルの針チャネル側停止表面と協働するように配置されている(図5及び図6参照)。針チャネル側停止表面の形状と寸法は、針端部側停止表面106の形状と寸法に適応されていてもよい。
【0105】
針端部側停止表面106は、針100と針チャネルの間に接触部を提供して、第1顎要素2と第2顎要素3のそれぞれの針端部103,104の周りの回転を容易にするように配置されるので、もはや針先105が針100とこれに対応する針チャネルの間の係合を提供する必要がない。その結果、第1針端部103と第2針端部104の各々の針先105は、組織の穿刺のために最適化され得る。
【0106】
周囲のロック用溝107は、針本体102の全周を囲んで延びる溝である。このロック用溝107が設けられて針ホルダーの針ロック要素を受けて、針ホルダー4,5の針チャネルに針100をロックする。図7図8及び図9の実施態様の針100のロック用溝107は、円錐形のベース表面を有する。ロック用溝107のベース表面は、縦軸110に対して半径方向外向きの貫通孔109の方向に先細りである。第1針ホルダー4と第2針ホルダー5の針ロック要素20の形状は、ロック用溝107のこの形状に適応されていてもよい。ロック用溝107のベース表面の角度は、針100の縦軸110に対して、例えば2°~15°、例えば4°~10°であってもよい。ロック用溝のそのような円錐形のベース表面は、針のその他の実施態様、例えば図3及び図4に示す実施態様にも適用可能である。
【0107】
針本体102は、直径約0.4mmである。また、針本体は、その他の任意の適切な直径であってもよい。針100の全長は、例えばおよそ9mmである。針の長さは、例えば7mm~12mmの範囲である。針100は、ステンレス鋼等の任意の適切な材料で作られていてもよい。
【0108】
図10は、図7図8及び図9の針100の第1針端部103をより詳細に示す。第2針端部104も同じ構成と寸法である。
【0109】
図7図8及び図9の実施態様において、針先105は、それぞれの針端部103,104の周囲にわたって均等に配分された3つのカット面111によって形成される、3つのカット面の針先部表面を有する。針先部表面は、針先を規定する表面である。3つのカット面111は、例えば、図3及び図4の実施態様に示す2つの円錐形の表面を有する針に、マシニングされてもよい。
【0110】
3つのカット面111は、各々が針の縦軸110に対してカット面角度φで配置されている。カット面111は、針の縦軸110に対して第1鋭角αで配置される3つの針先のエッジ112を規定する。
【0111】
針端部側停止表面106は、針の縦軸110に対して第2鋭角βの、実質的に円錐形の表面である。第1鋭角αとカット面角度φの各々は、第2鋭角βよりも大きい。
【0112】
図7図8及び図9に示す実施態様において、針100の縦軸110に対して、カット面角度φはおよそ17.5°であり、第1鋭角αはおよそ30°である。針端部側停止表面106の円錐形の表面の第2鋭角βは、針100の縦軸110に対しておよそ9.4°である。
【0113】
より一般的に、カット面角度φと第1鋭角αは、例えば針100の縦軸110に対して15°~40°の範囲であってもよく、針端部側停止表面106の第2鋭角βは、針100の縦軸110に対して5°~20°の範囲、例えば針100の縦軸110に対して8°~13°の範囲であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10