(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ヒト網膜色素上皮(RPE)細胞および視細胞前駆細胞の能力に関する改善されたアッセイ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20231116BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20231116BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20231116BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/48 M
G01N33/483 C
G01N21/64 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021102569
(22)【出願日】2021-06-21
(62)【分割の表示】P 2017550191の分割
【原出願日】2016-03-23
【審査請求日】2021-07-21
(32)【優先日】2015-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509236520
【氏名又は名称】アステラス インスティテュート フォー リジェネレイティブ メディシン
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】クリマンスカヤ,イリーナ,ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】カーソン,ジュリー,キャスリン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイ,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】イワノバ,ヨルダンカ,ジコバ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533289(JP,A)
【文献】大熊勝治,エンドサイトーシスとpHおよびH+ポンプ,生物物理,1984年,Vol.24, No.3,P.119-127
【文献】NATALIYA V GORDIYENKO; ET AL,SILENCING OF THE CHM GENE ALTERS PHAGOCYTIC AND SECRETORY PATHWAYS IN THE RETINAL PIGMENT EPITHELIUM,INVESTIGATIVE OPHTHALMOLOGY & VISUAL SCIENCE,米国,2010年02月01日,VOL.51,P1143-1150,http://dx.doi.org/10.1167/iovs.09-4117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
G01N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集団が網膜変性疾患を処置するために好適であるかを決定する方法であって、
a)細胞集団および視細胞外節(POS)を含むファゴサイトーシスアッセイを実施すること;および
b)細胞集団によるPOSの貪食率を分析すること、
ここで、
(i)細胞集団によるPOSの貪食率が、成人の眼球から単離された同等数のRPEまたは視細胞前駆細胞によるPOSの貪食率よりも少なくとも50パーセント高い
場合、細胞集団が、網膜変性疾患を処置するために好適であり、
ここで細胞集団が、多能性幹細胞のインビトロ分化により生産された網膜色素上皮(RPE)細胞集団または視細胞前駆細胞集団である、
を含
み、
ファゴサイトーシスアッセイが、以下のステップ:
細胞集団中の細胞がPOSを貪食するのに十分な時間と温度で、細胞集団をPOSとインキュベートすること、ここで、POSは、より高いpHよりも酸性pHにおいてより強く蛍光を発する、蛍光標識により標識される、および
インキュベーション後に細胞集団の蛍光強度を検出すること、
ここで、コントロールと比較した蛍光強度の増加は、細胞集団によるPOSのファゴサイトーシスを示す、
ここで、細胞集団が25~40℃、または34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃で、POSとインキュベートされ、および
ここで、コントロールは10~16℃、または12~15℃の範囲の温度でPOSとインキュベートされる細胞である、
を含む、前記方法。
【請求項2】
POSの貪食率が、成人の眼球から単離された同等数のRPE細胞または視細胞前駆細胞についてのPOSの貪食率よりも少なくとも75、100、150または200パーセント高いときに、細胞集団が、網膜変性疾患を処置するために好適である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞集団が網膜変性疾患を処置するために好適であるかを決定する方法であって、
a)細胞集団および視細胞外節(POS)を含むファゴサイトーシスアッセイを実施すること;および
b)細胞集団によるPOSの貪食率を分析すること、
ここで、
(ii)細胞集
団が、24時間後
にPOSの総濃度の少なくとも20パーセント
を貪食する場合、細胞集団が、網膜変性疾患を処置するのに好適であり、
ここで細胞集団が、多能性幹細胞のインビトロ分化により生産された網膜色素上皮(RPE)細胞集団または視細胞前駆細胞集団である、
を含
み、
ファゴサイトーシスアッセイが、以下のステップ:
細胞集団中の細胞がPOSを貪食するのに十分な時間と温度で、細胞集団をPOSとインキュベートすること、ここで、POSは、より高いpHよりも酸性pHにおいてより強く蛍光を発する、蛍光標識により標識される、および
インキュベーション後に細胞集団の蛍光強度を検出すること、
ここで、コントロールと比較した蛍光強度の増加は、細胞集団によるPOSのファゴサイトーシスを示す、
ここで、細胞集団が25~40℃、または34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃で、POSとインキュベートされ、および
ここで、コントロールは10~16℃、または12~15℃の範囲の温度でPOSとインキュベートされる細胞である、
を含む、前記方法。
【請求項4】
細胞集
団が、24時間後
にPOSの総濃度の少なくとも25、30、40または50パーセント
を貪食する場合、細胞集団が、網膜変性疾患を処置するのに好適である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
POSが、細胞外に存在するときのその蛍光シグナルと比較して、細胞内の低pHコンパートメントにファゴサイトーシスにより取り込まれたときに増大する蛍光シグナルを有する蛍光標識で標識されている;および
ここで、方法が、標識されたPOSとのインキュベーション後の細胞集団における蛍光をコントロールと比較して検出すること、および細胞集団のファゴサイトーシス活性を定量化することを含む、
請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
蛍光が、フローサイトメトリーにより、またはプレートリーダーを用いて検出される、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
細胞集団が、34~40℃の範囲の温度、または約37℃で、POSとインキュベートされる、請求項
1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コントロールが、12~15℃の範囲の温度で、POSとインキュベートされる細胞である、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
細胞集団およびコントロール細胞が、約16~20時間、POSとインキュベートされる、請求項
1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
細胞集団が、OCT-4、NANOG、Rex-1、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、およびTRA-1-81からなる群から選択される、1種以上の胚性幹細胞マーカーの発現を欠いている、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞集団が、RPE65、CRALBP、PEDF、ベストロフィン、MITF、Otx2、PAX2、PAX6、ZO-1、およびチロシナーゼからなる群から選択される、1種以上のRPE細胞マーカーを発現するRPE細胞集団である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
網膜変性疾患が、網膜剥離、網膜異形成、網膜色素線条症、網膜萎縮、先天性脈絡膜欠如、糖尿病性網膜症、黄斑変性、加齢性黄斑変性、近視性黄斑変性、網膜色素変性症およびスタルガルト病(黄色斑眼底)からなる群から選択される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
POSが、断片化されたPOS、または超音波処理されたPOSである、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
POSが、pHrodo(登録商標)Red色素により標識されている、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
RPE細胞がヒトRPE細胞であるか、または視細胞前駆細胞がヒト視細胞前駆細胞である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
細胞集団が網膜変性疾患を処置するために好適であるかを決定する方法であって、
細胞集団中の細胞が視細胞外節(POS)を貪食するのに十分な時間と温度で、細胞集団をPOSとインキュベートすること、ここで、POSは、より高いpHよりも酸性pHにおいてより強く蛍光を発する、蛍光標識により標識される、および
インキュベーション後に細胞集団の蛍光強度を検出すること、ここで、コントロールと比較した蛍光強度の増加は、細胞によるPOSのファゴサイトーシスを示し、さらに、細胞集団が網膜変性疾患を処置するために好適であることを示す、
ここで、細胞集団が25~40℃、または34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃で、POSとインキュベートされ、および
ここで、コントロールは10~16℃、または12~15℃の範囲の温度でPOSとインキュベートされる細胞である、
を含む、前記方法。
【請求項17】
細胞集団の増殖能を評価することをさらに含む、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
眼球ドナー由来の細胞の増殖能よりも高い増殖能が、細胞集団が移植に好適であることを示す、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年3月23日に出願された「IMPROVED ASSAYS FOR POTENCY OF HUMAN RPE CELLS AND PHOTORECEPTOR PROGENITORS(ヒトRPE細胞および視細胞前駆細胞の能力に関する改善されたアッセイ)」と題する米国仮特許出願第62/136,660号の米国特許法119条(e)に基づく利益を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
技術分野
【0002】
本発明は、視細胞桿体外節のファゴサイトーシス(phagocytosis)を測定するためのインビトロでの細胞に基づいた方法の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
網膜色素上皮(retinal pigment epithelium)(RPE)は、下層の脈絡膜(網膜背後の血管層)と、それに重なる網膜視細胞(visual cell)(例えば、視細胞(photoreceptor)の桿体および錐体)の間の、神経感覚網膜の外部にある色素性(pigmented)細胞層である。RPEは、視細胞の機能と健康および網膜にとって重要である。RPEは、光色素を再循環させ、ビタミンAを送達、代謝および貯蔵し、桿体視細胞外節を貪食し、網膜と脈絡膜の間で鉄および小型分子を輸送し、ブルッフ膜を維持し、ならびに迷光を吸収して、より良い画像分解能を可能にすることにより、視細胞機能を維持する。例えば、WO2009/051671;Engelmann and Valtink (2004)”RPE Cell Cultivation.” Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 242(1):65-67;Irina Klimanskaya, Retinal Pigment Epithelium Derived From Embryonic Stem Cells, STEM CELL ANTHOLOGY 335-346 (Bruce Carlson ed., 2009)を参照。
【0004】
RPEの変性は、先天性脈絡膜欠如(choroideremia)、糖尿病性網膜症、(加齢性黄斑変性、AMDを含む)黄斑変性、およびスタルガルト黄斑変性(SMD)などの視細胞損傷と失明をもたらす、視覚を変化させる数々の疾患と関連付けられている、網膜剥離、網膜異形成、または網膜萎縮を引き起こし得るが、後者の2つは、それぞれ世界的に成人および若年性失明原因のトップ2である。どちらも現在は治療不可能であるが、黄斑変性の前臨床モデルにおいては、hESC由来RPEの移植が、視細胞を救済して視力喪失を阻止し得ることが証明されている(Lund RD, Wang S, Klimanskaya I, et al. Human embryonic stem cell-derived cells rescue visual function in dystrophic rats. Cloning and Stem Cells 2006; 8,189-199; Lu B, Malcuit C, Wang S, et al. Long-term safety and function of RPE from human embryonic stem cells in preclinical models of macular degeneration. Stem Cells 2009; 21, 2125-2135)。
【0005】
また、有糸分裂後(post-mitotic)神経細胞のさらなる喪失も、上記疾患の一部に関与している。これらの網膜疾患には、桿体もしくは錐体ジストロフィー、網膜変性、網膜色素変性症(RP)、糖尿病性網膜症、黄斑変性、レーバー先天性黒内障およびスタルガルト病(黄色斑眼底)が挙げられる。網膜変性の多くの症例においては、細胞の喪失は主に、桿体および錐体視細胞を含む外核層(ONL)に生じる。
【0006】
視細胞(photoreceptor cell)の潜在的な代替ソースとしては幹細胞が含まれる。初期の研究では、失われた視細胞に対する代替細胞の可能なソースとして、マウス細胞、マウス幹細胞、または網膜前駆細胞の異種集団が評価されていた。これらの初期研究は、生後1日のマウス網膜由来の視細胞前駆細胞(photoreceptor precursor cell)の移植(Maclaren et al. Nature 444(9):203-207, 2006)、マウス胚性幹細胞からのインビトロにおける網膜前駆細胞の作製(Ikeda et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 102(32):11331-11336, 2005)、生後1日のマウス網膜からの網膜前駆細胞の作製(Klassen et al. Invest. Ophthal. Vis. Sci. 45(11):4167-4175, 2004)、網膜変性RCSラットモデルにおける骨髄間葉幹細胞の移植(Inoue et al. Exp. Eye Res. 8(2):234-241, 2007)、H1ヒト胚性幹細胞株からの、神経節細胞、アマクリン細胞、全細胞中の0.01%がS-オプシンもしくはロドプシンを発現する視細胞、双極細胞および水平細胞を含む、網膜前駆細胞の産生(Lamba et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 10(34):12769-12774, 2006)、ならびにヒト繊維芽細胞から誘導された多能性幹細胞(iPS)の、網膜前駆細胞を産生するための誘導(Lamba et al. PLoS ONE 5(1):e8763. doi:10.1371/ journal.pone.0008763)について記載されていた。
【0007】
これらアプローチのいずれも、移植のために均一集団の視細胞前駆細胞または視細胞を産生していない。これらアプローチのいずれも、均一集団の、インビボにおける(例えば、視力の改善をもたらすことにより検出できる)桿体もしくは錐体機能を示す視細胞前駆細胞または視細胞を産生していない。視細胞や視細胞前駆細胞が単離され得るドナー由来の組織の供給(死体や胎児組織および生存動物などの)は限られている。
【0008】
幹細胞は、増殖させて、インビトロで無限に拡大することが可能であり、ヒトの治療のための非ドナー由来細胞の潜在的非枯渇性ソースを提供する。均一集団の視細胞前駆細胞や視細胞への幹細胞の分化は、網膜疾患の移植および処置のための非ドナー由来細胞の十分な供給を提供し得る。視細胞前駆細胞は貪食活性を持っていてもよい。
【0009】
RPE細胞を作製する方法、RPE細胞組成物、およびRPE細胞に関する(ファゴサイトーシスアッセイを含む)リリースアッセイを含む特定の主題は、2010年11月17日に出願された、共有の米国特許出願第13/510,426号およびPCT US2012/65091に開示されており、かかる教示は参照により本明細書に組み込まれる。視細胞前駆細胞を作製する方法、ならびに、視細胞前駆細胞組成物および機能を試験する方法(ファゴサイトーシスアッセイを含む)を含む特定の主題は、共有のPCT US2014/029790に開示されており、かかる教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0010】
要約
FITC標識された視細胞外節(Photoreceptor Outer Segment)(OS)(通常、ウシまたはブタ)は、インビトロにおける網膜色素上皮(RPE)によるファゴサイトーシスを研究するために用いられてきた。しかしながら、ファゴサイトーシスの評価(FACS、蛍光プレートリーダー)に用いられる定量的方法の多くは、表面に結合した粒子と取り込まれた粒子とを区別しないため、ファゴサイトーシスにおける表面受容体の結合および取り込みの段階に関与するメカニズムに具体的に対処することを可能にしない。加えて、リソソームおよびリソソームに融合したファゴソームのpHが5未満である一方で、FITC蛍光はpH感受性であり、pH6未満で顕著に減少する。したがって、FITC標識されたOSは、取り込まれたOSの量を正確には表さないかもしれない。
【0011】
本明細書においては、視細胞外節が取り込まれるファゴサイトーシスの検出、RPE細胞および視細胞前駆細胞の重要な機能測定、ならびに、結果として桿体もしくは錐体ジストロフィー、網膜変性、網膜色素変性症、先天性脈絡膜欠如、糖尿病性網膜症、黄斑変性(加齢性黄斑変性および近視性黄斑変性を含む)、レーバー先天性黒内障およびスタルガルト病(黄色斑眼底)などの網膜疾患を処置するのに用いられる、RPE細胞および視細胞前駆細胞についての重要なリリース基準のための、より感受性かつ正確なアッセイが提供される。例えば、WO2009/051671を参照。
【0012】
本明細書において記載されるRPE細胞は、移植後も機能性である。この目的を達成するため、RPE細胞は、移植細胞を受け取る対象(または患者)における感覚神経網膜と脈絡膜の間の単層を形成する。RPE細胞はまた、隣接する視細胞に栄養を供給してもよく、ファゴサイトーシスにより脱落した視細胞外節を処理してもよい。
【0013】
移植に適したRPE細胞は、ファゴサイトーシス活性に限定されないがこれを含む、数々の機能的および/または表現型特性に基づき選択されてもよい。例えば、移植に適したRPE細胞は、そのファゴサイトーシス活性およびその増殖能にしたがって評価されてもよい。例えば、RPE細胞は、眼球ドナー(eye donor)由来の細胞よりも優れた増殖能を有してもよい(例えば、RPE細胞は、眼球ドナーのRPE細胞よりも「若い」)。これにより、本明細書に記載されているRPE細胞は、眼球ドナー由来の細胞よりも長い有用な寿命を有することが可能になる。
【0014】
臨床的状況におけるPRE細胞の有効性に対する重要なパラメータの一つは、RPE細胞の医薬製剤の視細胞外節ファゴサイトーシス活性の定量的測定である。外節のファゴサイトーシスは、RPE細胞中の低pHコンパートメントにおける貪食された細胞断片の蓄積をもたらす。本発明は、分光光度シグナルを提供するように分光光度法で検出可能である検出可能なマーカーに関連付け(すなわち、共有結合的にまたは非共有結合的に)されている視細胞外節を提供し、検出可能なマーカーは、中性pHまたは生理学的pH、すなわちpH7~7.5において存在するときは第一の分光光度シグナルを、およびリソソーム、ファゴソーム、エンドソームなどの、低pH環境の細胞内コンパートメントに存在するときは第二の分光光度シグナルを、有するように選択性である。第一および第二の分光光度シグナル間の違いは、蛍光発光の程度の一種以上(中性pHに対して相対的な低pHにおける増加した強度)、中性pHおよび低pH間の蛍光発光波長における変化、中性pHおよび低pH間の蛍光励起波長における変化などであってもよい。
【0015】
特定の態様においては、検出可能なマーカーは蛍光色素(fluorescent dye)などの蛍光pHセンサーであり得る。本発明において用いることが可能な典型的な蛍光色素は、pH感受性インジケーター(indicator)部分としてアミノ基(脂肪族または芳香族)を有する蛍光色素部分、すなわち、RPE細胞と外節とが一緒にインキュベートされる培養培地のpH(すなわち、中性または生理学的pH)において非プロトン化され、ファゴサイトーシスによりRPE細胞などの細胞によって外節が吸収される細胞内コンパートメントのpHにおいてプロトン化されるアミンであり得る。このような色素が光子を吸収すると、励起電子状態を生じ、アミノ基の非共有電子対が励起により空になった軌道に移動する。光誘起電子移動(PET)と呼ばれるこのような電子移動は、励起された分子が発光遷移することを阻み、したがって、色素の蛍光が消光する。アミノ基のプロトン化は、電子対の軌道の性質およびエネルギーを変化させ、PETを停止させる。結果として、蛍光レポーター部分は、pHの変化に反応する。アミノ基のプロトン化は、消光を打ち消すため、PETに基づくセンサーは、pHが減少するにつれより蛍光を発する。
【0016】
特定の態様においては、蛍光色素は、WO2005/098437に記載されているような、ローダミンに基づいたpH感受性色素である。このような色素は、キサンテン部分に対するオルト位が-OHもしくは-SH(またはその脱プロトン化形態)により置換されたベンゼン環を有する。このような色素は、アミンPETインジケーターに類似したpH依存性を示すが、pHが6未満である細胞コンパートメントを標的とするpHセンサーに対する認識された必要性に基づいて、6未満のpKa値を有するように設計されている。
【0017】
他の典型的態様においては、蛍光マーカーは、pH感受性蛍光ナノ粒子である。pH感受性蛍光ナノ粒子は、主に、小分子pH感受性色素に結合したポリマー(Srikun, D., J. Chem. Sci. 2011, 2, 1156; Benjaminsen, R. V., ACS Nano 2011, 5, 5864; Albertazzi, L., J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 18158; Urano, Y., Nat. Med. 2009, 15, 104)、またはpH非感受性色素に結合したpH感受性リンカーの使用(Li, C, Adv. Fund. Mater. 2010, 20, 2222; Almutairi, J. Am. Chem. Soc. 2007, 130, 444.)を採用している。さらに説明すると、WO2013152059は、本アッセイにおける使用に適用可能な、pH可変性の(pH-tunable)高度に活性化可能な多色蛍光ナノプラットフォーム(nanoplatform)を記載している。
【0018】
したがって、本明細書では、一つの側面において、ファゴサイトーシス活性を評価するための方法であって、細胞が視細胞外節(POS)を貪食するのに十分な時間と温度で、細胞をPOSとインキュベートすること、ここで、POSは、より高いpHよりも酸性pHにおいてより強く蛍光を発する、および、インキュベーション後に細胞の蛍光強度を検出すること、ここで、コントロールと比較した蛍光の増加は、細胞によるPOSのファゴサイトーシスを示す、を含む前記方法が提供される。
【0019】
いくつかの態様においては、細胞は、およそ室温~約37℃、またはおよそ室温~約40℃の範囲の温度で、POSとインキュベートされる。いくつかの態様においては、細胞は、およそ室温、およそ生理学的温度、または約37℃で、POSとインキュベートされる。
いくつかの態様においては、コントロールは、室温未満でPOSとインキュベートされた細胞である。いくつかの態様においては、コントロールは、4℃でPOSとインキュベートされた細胞である。
【0020】
また、本明細書においては、付着細胞集団(adherent cell population)のファゴサイトーシス活性を評価するための方法であって、細胞集団中の細胞が視細胞外節(POS)を貪食するのに十分な時間と温度で、付着細胞集団をPOSとインキュベートすること、ここで、POSは、より高いpHよりも酸性pHにおいてより強く蛍光を発する、および、インキュベーション後に細胞集団の蛍光強度を検出すること、ここで、コントロールと比較した蛍光の増加は、細胞によるPOSのファゴサイトーシスを示す、を含む前記方法も提供される。
【0021】
いくつかの態様において、付着細胞集団は、約17~40℃、または約25~40℃、または約34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃の温度で、POSとインキュベートされる。いくつかの態様において、コントロールは、約10~16℃の温度でPOSとインキュベートされた細胞集団である。いくつかの態様において、コントロールは、約12~15℃の温度でPOSとインキュベートされた細胞集団である。
【0022】
また、本明細書においては、ファゴサイトーシス活性を評価するための方法であって、細胞内の低pHコンパートメントへファゴサイトーシスにより取り込まれたときに、細胞外に存在するときの蛍光シグナルに対して相対的に変化した蛍光シグナル(altered fluorescence signal)を有する、蛍光標識により、標識された視細胞外節(POS)を提供すること;試験細胞を、標識されたPOSのファゴサイトーシスが可能な条件下で、標識されたPOSとインキュベートすること;ならびに、標識されたPOSとのインキュベーション後に試験細胞において変化した蛍光があれば検出すること、およびそこから試験細胞のファゴサイトーシス活性を定量化すること、を含む前記方法も提供される。
【0023】
いくつかの態様において、(標識が、低pHコンパートメントへファゴサイトーシスにより取り込まれたときに)変化した蛍光シグナルは、蛍光標識が細胞外に存在するときに対して相対的な、蛍光シグナル強度の増加である。いくつかの態様において、(標識が、低pHコンパートメントへファゴサイトーシスにより取り込まれたときに)変化した蛍光シグナルは、フローサイトメトリーにより検出可能である。いくつかの態様においては、変化した蛍光シグナルは、ファゴサイトーシスにより取り込まれた標識されたPOSと、試験細胞の表面に結合しているが取り込まれていない標識されたPOSとを区別する。いくつかの態様においては、試験細胞中で検出される変化した蛍光シグナルが、試験細胞のファゴサイトーシス活性を定量化するために、標識されたPOSとインキュベートされたコントロール細胞集団と比較される。
【0024】
いくつかの態様において、試験細胞は、およそ室温で、およそ生理学的温度で、約37℃で、約15~40℃で、あるいは室温~37℃の間で、または室温~40℃の間で、標識されたPOSとインキュベートされる。
いくつかの態様においては、コントロール細胞集団は、約4℃を含む室温未満で、標識されたPOSとインキュベートされる。
【0025】
ファゴサイトーシス活性を評価するための方法であって、細胞内の低pHコンパートメントへファゴサイトーシスにより取り込まれたときに、細胞外に存在するときの蛍光シグナルに対して相対的に変化した蛍光シグナルを有する、蛍光標識により、標識された視細胞外節(POS)を提供すること;付着試験細胞を、標識されたPOSのファゴサイトーシスが可能な条件下で、標識されたPOSとインキュベートすること;ならびに、標識されたPOSとのインキュベーション後に付着試験細胞において変化した蛍光があれば検出すること、およびそこから付着試験細胞のファゴサイトーシス活性を定量化すること、を含む前記方法もまた、提供される。
【0026】
いくつかの態様において、試験細胞は、約17~40℃、または約25~40℃、または約34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃の温度で、POSとインキュベートされる。いくつかの態様において、付着試験細胞中で検出される変化した蛍光シグナルは、試験細胞のファゴサイトーシス活性を定量化するために、細胞の生存能力は維持されるがファゴサイトーシスを低い程度に惹起するかもしくは全く惹起しない温度(任意に、そのような温度は、約12~15℃の範囲であってもよい)で、標識されたPOSとインキュベートされたコントロール細胞集団と比較される。いくつかの態様において、コントロール細胞集団は、約10~16℃の温度でPOSとインキュベートされる。
【0027】
本明細書においては、試験細胞集団のファゴサイトーシス活性を評価するための、標識された視細胞外節(POS)調製物であって、POSが蛍光標識により標識されており、該蛍光標識が、細胞内の低pHコンパートメントへファゴサイトーシスにより取り込まれたときに、蛍光標識が細胞外に存在するときの蛍光シグナルに対して相対的に変化した蛍光シグナルを有する、前記調製物もまた提供される。いくつかの態様において、(標識が、低pHコンパートメントへファゴサイトーシスにより取り込まれたときに)変化した蛍光シグナルは、細胞外に存在するときに対して相対的な、蛍光シグナル強度の増加である。いくつかの態様において、(標識が、低pHコンパートメントへファゴサイトーシスにより取り込まれたときに)変化した蛍光シグナルは、フローサイトメトリーにより検出可能である。いくつかの態様において、蛍光標識は、pHrodo(登録商標)Redである。いくつかの態様において、POSは、pHrodo(登録商標)RedおよびpHrodo(登録商標)Red E.coli BioParticlesにより標識されている。
【0028】
また本明細書においては、細胞集団中のファゴサイトーシス活性を測定するための方法であって、非FITC蛍光標識された視細胞外節(POS)と接触した試験細胞集団における試験蛍光を測定すること、および測定された試験蛍光をコントロール蛍光と比較すること、を含み、ここで、非FITC蛍光標識されたPOSは、酸性pHにおいて蛍光を発するが、より高いpHにおいては、蛍光を発しないか最小限の蛍光を発する、前記方法も提供される。
【0029】
いくつかの態様において、試験細胞集団は、例えば37℃を含むおよそ室温~およそ生理学的温度(すなわち、およそ室温~約37℃)、またはおよそ室温~約40℃の範囲の温度で、非FITC蛍光標識されたPOSと接触する。いくつかの態様において、試験細胞集団は、例えば約37℃を含む、約15~40℃の間の温度またはおよそ生理学的温度で、非FITC蛍光標識されたPOSと接触する。いくつかの態様において、コントロール蛍光は、室温未満で、非FITC蛍光標識されたPOSと接触した細胞集団の蛍光である。いくつかの態様において、コントロール蛍光は、4℃で、非FITC蛍光標識されたPOSと接触した細胞集団の蛍光である。
【0030】
本明細書においてはまた、付着細胞集団中のファゴサイトーシス活性を測定するための方法であって、非FITC蛍光標識された視細胞外節(POS)と接触した付着試験細胞集団における試験蛍光を測定すること、および測定された試験蛍光をコントロール蛍光と比較すること、を含み、ここで、非FITC蛍光標識されたPOSは、酸性pHにおいて蛍光を発するが、より高いpHにおいては、蛍光を発しないか最小限の蛍光を発する、前記方法も提供される。
【0031】
いくつかの態様において、試験細胞集団は、約17~40℃、または約25~40℃、または約34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃の温度で、非FITC蛍光標識されたPOSと接触する。いくつかの態様において、コントロール蛍光は、約12~15℃の温度で、非FITC蛍光標識されたPOSと接触した付着細胞集団の蛍光である。いくつかの態様において、コントロール蛍光は、約10~16℃の温度で、非FITC蛍光標識されたPOSと接触した付着細胞集団の蛍光である。
【0032】
本明細書においてはまた、ファゴサイトーシス活性を測定するための方法であって、(1)pHrodo(登録商標)Red色素で標識された、蛍光標識された視細胞外節(POS)と、例えば37℃を含むおよそ室温~およそ生理学的温度、またはおよそ室温~約40℃の範囲の温度で、インキュベートされた細胞集団の、第一の分割量(first aliquot)における試験蛍光を測定すること、および(2)pHrodo(登録商標)Red色素で標識された、蛍光標識されたPOSと、室温未満でインキュベートされた細胞集団の、第二の分割量(second aliquot)におけるコントロール蛍光を測定すること、を含み、ここで、コントロール蛍光よりも強い試験蛍光は、細胞集団のファゴサイトーシス活性を示す、前記方法も提供される。
【0033】
本明細書においては、ファゴサイトーシス活性を測定するための方法であって、(1)pHrodo(登録商標)Red色素で標識された、蛍光標識された視細胞外節(POS)と、インキュベートされた付着細胞集団の、第一の分割量における試験蛍光を測定すること、および(2)pHrodo(登録商標)Red色素で標識された、蛍光標識されたPOSと、インキュベートされた付着細胞集団の、第二の分割量におけるコントロール蛍光を測定すること、を含み、ここで、コントロール蛍光よりも強い試験蛍光は、細胞集団のファゴサイトーシス活性を示す、前記方法もまた提供される。
【0034】
いくつかの態様において、付着細胞集団の第一の分割量は、約17~40℃、または約25~40℃、または約34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃の温度で、標識されたPOSと接触する。いくつかの態様において、付着細胞集団の第二の分割量は、約10~16℃または約12~15℃の範囲の温度で、標識されたPOSとインキュベートされる。
【0035】
本明細書においては、ファゴサイトーシス活性を測定するための方法であって、(1)pHrodo(登録商標)Redで標識された視細胞外節(POS)単独と、もしくはpHrodo(登録商標)Red E.coli BioParticlesと共にpHrodo(登録商標)Redで標識された視細胞外節(POS)と、37℃を含むおよそ室温~およそ生理学的温度、またはおよそ室温~約40℃の範囲の温度で、インキュベートされた細胞集団の、第一の分割量における試験蛍光を測定すること、および(2)pHrodo(登録商標)Redで標識された視細胞外節(POS)単独と、もしくはpHrodo(登録商標)Red E.coli BioParticlesと共にpHrodo(登録商標)Redで標識された視細胞外節(POS)と、4℃を含む室温未満でインキュベートされた細胞集団の、第二の分割量におけるコントロール蛍光を測定すること、を含み、ここで、コントロール蛍光よりも強い試験蛍光は、細胞集団のファゴサイトーシス活性を示す、前記方法もまた提供される。
【0036】
また本明細書においては、ファゴサイトーシス活性を測定するための方法であって、(1)pHrodo(登録商標)Redで標識された視細胞外節(POS)単独と、もしくはpHrodo(登録商標)Red E.coli BioParticlesと共にpHrodo(登録商標)Redで標識された視細胞外節(POS)と、約17~40℃、または約25~40℃、または約34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃の温度で、インキュベートされた付着細胞集団の、第一の分割量における試験蛍光を測定すること、および(2)pHrodo(登録商標)Redで標識された視細胞外節(POS)単独と、もしくはpHrodo(登録商標)Red E.coli BioParticlesと共にpHrodo(登録商標)Redで標識された視細胞外節(POS)と、約10~16℃または約12~15℃の範囲の温度で、インキュベートされた付着細胞集団の、第二の分割量におけるコントロール蛍光を測定すること、を含み、ここで、コントロール蛍光よりも強い試験蛍光は、細胞集団のファゴサイトーシス活性を示す、前記方法も提供される。
【0037】
種々の態様は、上記側面のいずれかおよび全てに対して均等に適用される。これは下記に列挙される。
いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、POSと、およそ室温で、およそ生理学的温度で、約37℃で、またはおよそ室温~40℃、またはおよそ室温~37℃、または約15~40℃で、インキュベートされる。いくつかの態様においては、コントロール細胞集団は、約4℃を含む室温未満で、標識されたPOSとインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、約17~40℃、または約25~40℃、または約34~40℃の範囲の温度で、あるいは約37℃の温度で、標識されたPOSとインキュベートされる。
【0038】
いくつかの態様において、コントロール細胞、コントロール細胞集団、コントロール試験細胞、またはコントロール試験細胞集団は、POSと、室温未満で、約10~16℃、もしくは約12~15℃の範囲の温度で、または約4℃の温度で、インキュベートされる。
【0039】
いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、網膜色素上皮(RPE)細胞を含む。いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、視細胞前駆細胞を含む。いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、ヒト細胞である。
いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、多能性幹細胞のインビトロ分化により産生される。
いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、凍結保存され、使用前に解凍される。
【0040】
いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、コンフルエントな単層として提供される。
いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、使用前に酵素で消化されている。
いくつかの態様において、細胞、細胞集団、試験細胞、または試験細胞集団は、付着細胞集団として提供される。
いくつかの態様において、POSは、断片化されたPOSである。いくつかの態様において、POSは、超音波処理されたPOSである。
【0041】
いくつかの態様において、蛍光標識は、pHrodo(登録商標)Redである。したがって、いくつかの態様においては、POSは、pHrodo(登録商標)Red色素により標識される。いくつかの態様において、POSは、pHrodo(登録商標)RedおよびpHrodo(登録商標)Red E.coli BioParticlesにより標識される。いくつかの態様において、細胞は、pHrodo(登録商標)Redで標識されたPOSおよびpHrodo(登録商標)Red E.coli BioParticlesとインキュベートされる。
【0042】
いくつかの態様において、蛍光は、フローサイトメトリーにより検出される。いくつかの態様において、蛍光は、プレートリーダーを用いて検出される。
いくつかの態様において、細胞は、POSと、約15~30時間、または16~20時間、または20~28時間の間インキュベートされる。
いくつかの態様において、細胞は、細胞培養として提供される。いくつかの態様において、細胞は、コンフルエントな細胞培養である。
試験およびコントロール細胞は、同じ細胞集団の異なる分割量(aliquot)であり得ることが理解されるべきである。
【0043】
他の側面において、本開示は、同等数の初代細胞のPOSの貪食率よりも少なくとも50%高い、視細胞外節(POS)の貪食率を有することとして特徴づけられる、単離された細胞集団を提供する。いくつかの態様において、細胞集団はRPE細胞集団である。いくつかの態様において、細胞集団は、多能性幹細胞のインビトロ分化により得られるRPE細胞集団であり、初代細胞は、単離された成人眼球由来のRPE細胞である。いくつかの態様において、細胞集団は、視細胞前駆細胞である。
これらおよび種々の他の側面および態様は、本明細書においてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1A-C】RPEによるファゴサイトーシスのFACS解析(A)FITCで標識されたROS。(B)pHrodo(登録商標)で標識されたROS。ROSが加えられていないコントロール、ROSが加えられ細胞が4℃でインキュベートされたコントロール、およびROSが加えられ細胞が37℃でインキュベートされた試験(test)のプロットが示される。(C)pHrodo(登録商標)で標識されたBioParticles(バクテリア断片)。粒子が加えられていないコントロール、粒子が加えられ細胞が4℃でインキュベートされたコントロール、および粒子が加えられ細胞が37℃でインキュベートされた試験のプロットが示される。本明細書においては、POSとROSは、視細胞桿体外節を言及するのに交換可能に用いられることが理解されるべきである。
【0045】
【
図2A-B】FITC(A)およびpHrodo(登録商標)(B)で標識されたROSの蛍光のpH依存性。中性pHと酸性pHにおける蛍光がプロットされている。
【0046】
【
図3A-F】単層のARPE19細胞による蛍光標識されたROSのファゴサイトーシスのFACS解析。細胞単層において、24時間、ARPE-19と、異なる濃度の蛍光標識されたROSをインキュベートしたときは、用量依存的なファゴサイトーシス反応は観察されなかった。(A)37℃で、6x10
6個のpHrodo(登録商標)Redで標識されたROSとインキュベートされたARPE-19。(B)37℃で、3x10
6個のpHrodo(登録商標)Redで標識されたROSとインキュベートされたARPE-19。(C)37℃で、1.5x10
6個のpHrodo(登録商標)Redで標識されたROSとインキュベートされたARPE-19。(D)15℃で、6x10
6個のpHrodo(登録商標)Redで標識されたROSとインキュベートされたARPE-19。(E)15℃で、3x10
6個のpHrodo(登録商標)Redで標識されたROSとインキュベートされたARPE-19。(F)15℃で、1.5x10
6個のpHrodo(登録商標)Redで標識されたROSとインキュベートされたARPE-19。それぞれにおいて、ROSなしでインキュベートされた細胞およびROSとインキュベートされた細胞のプロットが示される。
【0047】
【
図4A-F】hESC由来RPE細胞による蛍光標識されたROSのファゴサイトーシスのFACS解析。細胞単層において、37℃で24時間、RPE細胞と、異なる濃度の蛍光標識されたROSをインキュベートしたときは、用量依存的なファゴサイトーシス反応は観察されなかった。再構成(reconstitution)の間の蛍光標識されたROSのパルス超音波処理(pulse sonication)によりファゴサイトーシスが約10%増加した。(A)超音波処理なしで再構成された3.75x10
6個のpHrodo(登録商標)Redにより標識されたROSと、インキュベートされたRPE細胞。(B)超音波処理なしで再構成された5x10
6個のpHrodo(登録商標)Redにより標識されたROSと、インキュベートされたRPE細胞。(C)超音波処理なしで再構成された7.5x10
6個のpHrodo(登録商標)Redにより標識されたROSと、インキュベートされたRPE細胞。(D)超音波処理なしで再構成された10x10
6個のpHrodo(登録商標)Redにより標識されたROSと、インキュベートされたRPE細胞。(E)超音波処理で再構成された10x10
6個のpHrodo(登録商標)Redにより標識されたROSと、インキュベートされたRPE細胞。(F)超音波処理で再構成された13.5x10
6個のpHrodo(登録商標)Redにより標識されたROSと、インキュベートされたRPE細胞。
【0048】
詳細な説明
ファゴサイトーシス(能力アッセイ)は、pHrodo(登録商標)Red色素(Life Technologies, Molecular Probes)により標識された視細胞外節(POS)に暴露されたRPE培養物の、定量的蛍光活性化セルソーティング(cell sorting)(FACS)解析により評価されてもよい。
ファゴサイトーシスは、pHrodo(登録商標)Red色素(Life Technologies, Molecular Probes)により標識されたPOSを用いたFACSに基づくアッセイにより評価されてもよい。そのように標識された色素およびPOSは、細胞内ファゴソームの減少したpH環境に取り込まれたときに蛍光を発する。POSは、本明細書において記載されたように標識されてもよい。
【0049】
いくつかの態様において、RPE細胞培養は、コンフルエントである。例として、コンフルエントなRPEは、マルチウェルプレート中で培養されてもよく、任意にCO2非依存性培地(Invitrogen)の存在下で、pHrodo(登録商標)Red色素で標識されたPOSとインキュベートされてもよい。インキュベーションは、RPE細胞が、POSを貪食するのに十分なあらゆる時間で行われ得る。例としては、インキュベーションは、16~20時間行われてもよい。アッセイは、RPE細胞が、POSを貪食するのに十分な温度で行われる。いくつかの態様において、アッセイは、およそ生理学的温度または約37℃で行われる。いくつかの態様において、アッセイは、室温で行われる。いくつかの態様において、コントロール(またはネガティブコントロール(negative control))プレートは、4℃でインキュベートされる。細胞は、顕微鏡下で観察されてもよく、蛍光はプレートリーダーを用いて測定されてもよく、ならびに/または、細胞は酵素消化(例えば、トリプシン消化)の後に回収されてもよく、およびフローサイトメトリーにより解析されてもよい
【0050】
非限定的な典型的アッセイは以下のとおりである:
すでに記載されているとおり多能性幹細胞(ES細胞およびiPS細胞などであるが、これらに限定されない)から作製されたRPEを、その貪食能力について試験する。凍結保存されたRPEは、あらかじめ凍結されていて、使用前に解凍してもよい。RPE細胞のファゴソームの酸性環境における取り込みの際に蛍光を発する、pHrodo(登録商標)Red色素で標識されたPOSを貪食する能力を試験する前に、RPE細胞は、適切な培地中での培養下で播種し、コンフルエントになるまで増殖させて、培養下で維持する。RPE細胞は、ファゴサイトーシスが可能となるように37℃で、またはネガティブコントロールとして4℃で、標識されたPOSとインキュベートされる。蛍光強度のシフトは、37℃でインキュベートされた細胞についてフローサイトメトリーにより検出してもよく、これは標識されたPOSのファゴサイトーシスを示す。ピークの統計的統合は、各ロットのRPE細胞とインキュベーション温度についてのファゴサイトーシス陽性細胞の割合をもたらす。
【0051】
本開示により理解されるとおり、ファゴサイトーシスは、酸性ファゴソーム環境下で赤色スペクトルにおいて蛍光を発する標識されたPOSと、RPE細胞をインキュベートすることにより検出される。ファゴサイトーシス陽性細胞の割合は、フローサイトメトリーにより検出されるように、37℃または4℃(ネガティブコントロール)でインキュベートされた細胞について示される。
【0052】
得られたRPE細胞集団は、本明細書において提供される方法によりそのファゴサイトーシス活性に基づいて特徴づけられてもよい。貪食率を決定し、それによってRPE細胞を特徴づけし得る。例えば、RPE細胞は、単離された成人眼球の同等数のRPE細胞についての視細胞外節(POS)の貪食率よりも少なくとも50%高い、あるいは、単離された成人眼球の同等数のRPE細胞についてのPOSの貪食率よりも少なくとも75、100、150または200%高い、POSの貪食率を有することとして特徴づけられ得る。代替的にまたは加えて、RPE細胞は、24時間後において視細胞外節(POS)の総濃度の少なくとも20%である、あるいは、24時間後においてPOSの総濃度の少なくとも25、30、25、40または50%である、POSの貪食率により特徴づけられ得る。
【0053】
したがって、本明細書に記載の方法を用いることにより、単離された成人眼球(すなわち、25~80歳のヒト成人患者、より好ましくは、50~80歳の成人)の同等数のRPE細胞についての視細胞外節(POS)の貪食率よりも少なくとも50%高い、およびより好ましくは、少なくとも75、100、150または200%高い、POSの貪食率を有するRPE細胞集団が実現された。
【0054】
本明細書に記載の方法を用いることにより、24時間後において視細胞外節(POS)の総濃度の少なくとも20%である、およびより好ましくは、24時間後においてPOSの総濃度の少なくとも25、30、25、40または50%である、POSの貪食率を有するRPE細胞集団が実現された。
【0055】
このように、本開示は、一つの側面において、非FITC蛍光標識された、蛍光標識された視細胞外節(POS)と接触したRPE細胞(またはRPE細胞集団)中の蛍光(試験蛍光または一般的に「試験」とみなされる)を検出または測定すること、ならびに検出または測定された蛍光をコントロール(コントロール蛍光または一般的に「コントロール」とみなされる)と比較することを含む方法を提供する。試験は、およそ室温、または約15~40℃の温度、またはおよそ生理学的温度(例えば、約37℃)である温度で行われ得る。コントロールは、4℃で行われ得る。したがって、コントロール蛍光は、非FITC標識されたPOSとの4℃でのRPE細胞のインキュベーションに続いて検出または測定された蛍光であり得る。非FITC蛍光標識されたPOSは、FITCでない蛍光色素分子(fluorophore)で標識されたPOSである。非FITC蛍光標識は、ファゴソーム、および特にRPE細胞のファゴソームのpHなどの酸性pHで蛍光を発する標識であり、特に中性pH(または細胞外環境pH)などのより高いpHにおいては、蛍光を発しないか最小限の蛍光を発する。非FITC蛍光標識は、表面の標識と取り込まれた標識とを区別するのに有用である。かかる蛍光色素分子の例は、pHrodo(登録商標)Red色素(Life Technologies, Molecular Probes)である。試験におけるより高い程度のファゴサイトーシスは、コントロールと比べてより強い蛍光により示される。
【0056】
したがって、他の側面においては、本開示は、
(1)pHrodo(登録商標)Red色素で標識された、蛍光標識された視細胞外節(POS)と、37℃で、接触した(およびインキュベートされた)RPE細胞(またはRPE細胞集団)の、第一の分割量における蛍光(試験蛍光、または一般的に「試験」とみなされる)を検出または測定すること、および
(2)pHrodo(登録商標)Red色素で標識された、蛍光標識されたPOSと、4℃で、接触した(およびインキュベートされた)RPE細胞(またはRPE細胞集団)付着細胞集団の、第二の分割量における蛍光(コントロール蛍光、または一般的に「コントロール」とみなされる)を検出または測定すること、および
(3)任意に、試験およびコントロール蛍光を比較、決定および/または定量化すること、ここで、コントロール蛍光よりも強い試験蛍光は、RPE細胞(または細胞集団)のファゴサイトーシス活性の指標である、
を含む方法を開示する。
【0057】
本明細書において記載される方法は、視細胞前駆(progenitor(またはprecursor))細胞におけるファゴサイトーシス活性をアッセイするのにもまた用いられ得ることが理解されるべきである。
ある態様においては、RPEおよび視細胞前駆細胞は、単独のpHrodo(登録商標)Red視細胞外節、pHrodo(登録商標)Red E.coli BioParticlesまたはその両方を貪食する能力といった、ファゴサイトーシス活性を有しており、本明細書において提供される方法は、これらの機能の1種以上をアッセイする。
【0058】
本開示は、一側面において、複数の網膜色素上皮(RPE)細胞または視細胞前駆細胞;および薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物の能力を決定するアッセイを提供する。一つの態様において、前記複数のRPE細胞の平均メラニン含量は、8pg/細胞未満である。前記RPE細胞または視細胞前駆細胞は、懸濁液、ゲル、コロイド、マトリックス、基質、足場(scaffold)、または移植片中に含有されてもよい。
【0059】
前記薬学的に許容し得る担体は、約290mOsm/kg~約320mOsm/kg、または約300mOsm/kg~310mOsm/kgまたは約305mOsm/kgの浸透圧を有する無菌溶液を含み得る。前記薬学的に許容し得る担体は、緩衝塩溶液(balanced salt solution)を含んでもよい。前記緩衝塩溶液は、1mLあたり、水中に、塩化ナトリウム7.14mg、塩化カリウム0.38mg、塩化カルシウム二水和物0.154mg、塩化マグネシウム六水和物0.2mg、二塩基性リン酸ナトリウム0.42mg、炭酸水素ナトリウム2.1mg、デキストロース0.92mg、グルタチオンジスルフィド(酸化型グルタチオン)0.184mg、および(pHを約7.4に調節するための)塩酸および/または水酸化ナトリウムを含んでもよく、これらからなってもよく、またはこれらから本質的になってもよい。
【0060】
前記医薬組成物の体積は、約100μL~1000μLであってもよく、または少なくとも約150μLであってもよい。前記医薬組成物は、約1,000~約1×109の生存RPE細胞を含み得る。前記医薬組成物は、約333生存RPE細胞/μL~約2,000生存RPE細胞/μL、約444生存RPE細胞/μL~約1766生存RPE細胞/μL、約333生存RPE細胞/μL、約444生存RPE細胞/μL、約666生存RPE細胞/μL、約888生存RPE細胞/μL、約999生存RPE細胞/μL、または約1,333生存RPE細胞/μLで含んでいてもよい。
【0061】
前記医薬組成物中のRPE細胞濃度は、前記RPE細胞の約30%以下が60分以内に生存能力を喪失し、および任意に前記RPE細胞の約10%以下が4時間以内で生存能力を喪失する程度に十分に高くてもよい。前記RPE細胞濃度は、少なくとも約1,000細胞/μL、少なくとも約2,000細胞/μL、約1,000~10,000細胞/μL、または約2,000~5,000個の細胞/μLであってもよい。
医薬品は、約25%、20%、15%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%、0.01%、0.001%、または0.0001%未満の、RPE細胞でなくてもよい細胞を含み得る。
【0062】
前記RPE細胞の平均メラニン含量は、8pg/細胞未満、7pg/細胞未満、6pg/細胞未満、5pg/細胞未満、4pg/細胞未満、3pg/細胞未満、2pg/細胞未満、および少なくとも0.1pg/細胞、および任意に少なくとも0.5pg/細胞または1pg/細胞;0.1~8pg/細胞、0.1~7pg/細胞,0.1~6pg/細胞,0.1~5pg/細胞、0.1~4pg/細胞、0.1~3pg/細胞、0.1~2pg/細胞、0.1~1pg/細胞、1~7pg/細胞、0.5~6pg-細胞、または1~5pg/細胞であってもよい。
【0063】
前記医薬組成物中の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%の細胞は、ベストロフィン+であってもよい。前記医薬組成物中の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の細胞は、PAX6+および/またはMITF+であってもよい。前記医薬組成物中の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の細胞は、PAX6+および/またはベストロフィン+であってもよい。前記医薬組成物中の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の細胞は、ZO-1+であってもよい。医薬組成物中の少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%の細胞は、PAX6+およびベストロフィン+であってもよい。前記医薬組成物中の少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の細胞は、PAX6+であってもよい。
【0064】
典型的な態様において、前記医薬組成物中の細胞100万個あたり約1個以下の細胞、および任意選に細胞900万個あたり2個以下の細胞は、OCT-4およびアルカリホスファターゼ(AP)発現の両方が陽性であってもよい。
【0065】
針または注射カニューレは、前記RPE細胞の少なくとも一部を含有し得る。前記RPE細胞の濃度は、前記針または注射カニューレへロードする(loading)際に、約444生存細胞/μL~約1,766生存細胞/μLであり得る。前記針または注射カニューレから送達される生存RPE細胞の濃度は、約333生存細胞/μL~約1,333生存細胞/μLであり得る。前記針または注射カニューレの直径は、約0.3mm~約0.9であり得る。前記針または注射カニューレの直径は、約0.5~約0.6mmであり得る。前記針または注射カニューレは、約0.09mm~約0.15mmの直径を有するチップ(tip)を含んでいてもよい。前記カニューレは、MEDONE POLYTIP(登録商標)カニューレ25/38g(0.12mm(38g)×5mmチップが付いた0.50mm(25g)×28mmカニューレ)またはSynergetics Angled 39g注射カニューレであってもよい。
【0066】
前記RPE細胞は、冷凍保存されて解凍されたRPE細胞を含んでもよい。
前記RPE細胞は、ヒトのものであってもよい。
ヒトRPE細胞などの前記RPE細胞は、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)などの多能性細胞、ならびに成人ドナー組織もしくは胎児組織を含む、あらゆるソースから産生され得る。前記多能性幹細胞は、OCT-4、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、および/またはTRA-1-80を含み得る、1種以上のマーカーの発現について陽性であってもよい。前記多能性細胞は、培養中で色素性上皮細胞が出現するのに十分な時間、多層集団または胚様体中において培養されてもよい、ヒト多能性細胞であり得る。前記培養中に色素性上皮細胞が出現するのに十分な前記時間は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、または少なくとも約7週間、少なくとも約8週間を含み得る。
【0067】
前記多層集団または胚様体は、DMEMを含んでもよい培地中で培養され得る。前記培地は、EB-DMを含んでいてもよく、それから本質的になってもよく、またはそれからなってもよい。前記色素性上皮細胞は単離して培養してもよく、それによりRPE細胞集団を産生してもよい。前記単離は、培養から細胞または細胞塊を、酵素的、化学的、または物理的に分離すること、および色素性上皮細胞または色素性上皮細胞を含んでいてもよい細胞塊を選択することを含み得る。前記胚様体は、懸濁状態で、および/または付着培養として、培養されてもよい(例えば懸濁状態とそれに続く付着培養)。付着培養として培養される前記胚様体は、色素性上皮細胞を含む1種以上の生成物(outgrowth)を産生し得る。前記多能性幹細胞は、HLA抗原多様性(complexity)が減少している。RPE形成に先立ち、前記多能性細胞は、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、コラーゲンVIII、ヘパラン硫酸、Matrigel(商標)(Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞由来の可溶性調製物)、CellStart、ヒト基底膜抽出物、およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択されてもよいマトリックス上で培養され得る。前記マトリックスは、Matrigel(商標)(Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞由来の可溶性調製物)を含み得る。
【0068】
医薬組成物は、1種以上の胚性幹細胞マーカーの実質的発現が欠損している細胞を含んでもよい。前記1種以上の胚性幹細胞マーカーには、OCT-4、NANOG、Rex-1、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、および/またはTRA-1-80が含まれ得る。
前記RPE細胞は、1種以上のRPE細胞マーカーの発現について陽性であってもよい。前記1種以上のRPE細胞マーカーには、RPE65、CRALBP、PEDF、ベストロフィン、MITF、Otx2、PAX2、PAX6、ZO-1、および/またはチロシナーゼが含まれ得る。
【0069】
前記RPE細胞は、前記平均メラニン含量に達するのに十分な時間、RPE細
胞を静止細胞として維持することを含む方法により産生されてもよい。前記RPE細胞は、前記RPE細胞の少なくとも50%においてベストロフィン発現を確立するのに十分な時間、RPE細胞を静止細胞として維持することを含む方法により産生されてもよい。
前記医薬組成物は、マウス胚性支持細胞(feeder cell)(MEF)およびヒト胚性幹細胞(hES)を実質的に含まなくてもよい。
【0070】
RPE細胞は、表1に列挙された基準の少なくとも1つを満たしてもよく、および/または、適正製造基準(Good Manufacturing Practices)(GMP)にしたがって製造されてもよい。
前記の凍結保存された網膜色素上皮(RPE)細胞または視細胞前駆細胞は、凍結保存組成物として提供されてもよい。
【0071】
前記RPE細胞は、単離された成人眼球由来の同等数のRPE細胞についての視細胞外節(POS)の貪食率よりも少なくとも50%速くてもよい、または、単離された成人眼球由来の同等数のRPE細胞についてのPOSの貪食率よりも少なくとも75、100、150もしくは200%速くてもよい、POSの貪食率;あるいは、24時間後において視細胞外節(POS)の総濃度の少なくとも20%であってもよい、または、24時間後においてPOSの総濃度の少なくとも25、30、25、40もしくは50%であってもよい、POSの貪食率を示し得る。前記視細胞前駆細胞は、単離された成人眼球由来の同等数の視細胞前駆細胞についての視細胞外節(POS)の貪食率よりも少なくとも50%速くてもよい、または、単離された成人眼球由来の同等数の視細胞前駆細胞についてのPOSの貪食率よりも少なくとも75、100、150もしくは200%速くてもよい、POSの貪食率;あるいは、24時間後において視細胞外節(POS)の総濃度の少なくとも20%であってもよい、または、24時間後においてPOSの総濃度の少なくとも25、30、25、40もしくは50%であってもよい、POSの貪食率を示し得る。貪食率および貪食の程度は、インキュベーション時間および細胞の成熟度に依存し得る。POSの結合率および取り込み率は、細胞の成熟度および色素形成に基づいて異なり得る。ファゴサイトーシスが可能な細胞の割合は、細胞培養の成熟度に基づいて異なることもあり得る。
【0072】
視細胞外節を、中性pHでは非蛍光性であるかもしくは弱い蛍光を発するが酸性化に伴ってより強い蛍光を発するようになる色素で標識することにより、ファゴサイトーシスアッセイでの、RPE細胞または視細胞前駆細胞における取り込まれたPOSのより感受性の高い測定が可能である。ファゴサイトーシスの評価に用いられる定量的方法の多く(FACS、蛍光プレートリーダー)は、取り込まれた蛍光粒子と表面に結合した蛍光粒子とを区別しない。加えて、FITC蛍光は、pH感受性であって、リソソームおよびリソソームに融合したファゴソームのpHが5未満であるのにpH6未満で顕著に減少する。したがって、FITC標識されたOSの蛍光が、取り込まれたOSの実際の量を表さない場合がある。その製造者(Life Technologies, Molecular Probes)によれば、pH感受性ローダミンベースの(rhodamine-based)pHrodo(登録商標)Red色素は、中性pHでは非蛍光性であり、酸性化に伴って明るい赤色になる。色素は、蛍光性でありかつpH感受性でもあり、したがって、ファゴサイトーシスに続くファゴソームの酸性化が赤色蛍光により示されることによって、ファゴサイトーシス事象の特異的センサーとして用いることが可能である。
【0073】
視細胞外節を標識するために、pHrodo(登録商標)およびCypHer5ERed(これもまた酸性環境下で最大蛍光を発する)、Life Technologiesの色素によるLysoSensorなどの、中性pHでは非蛍光性であるかもしくは弱い蛍光を発するが酸性化に伴ってより強い蛍光を発するようになる色素を用いることで、従来技術の方法および試薬を顕著に改善する。我々は、取り込まれた粒子を具体的に測定するためのウシOSを標識するのに、このpH感受性ローダミンベースのpHrodo(登録商標)Red色素を用いた。
【0074】
FITC標識された視細胞外節、pHrodo(登録商標)-BioParticlesおよびpHrodo(登録商標)標識された視細胞外節を比較すると、4℃と比べて37℃でのファゴサイトーシスアッセイにおいては、全て顕著な蛍光の増加を示した(
図1A-C)。しかしながら、定量的解析により、ファゴサイトーシスアッセイにおいては、FITC標識された粒子とインキュベートされたとき、37℃ではRPE細胞集団の約半分だけが、4℃のコントロールよりも蛍光の増加を示すこと、および、4℃のコントロールにおいてもまた、RPE細胞集団の約半分が顕著な蛍光の増加を示すことが明らかになったが、これは恐らく、細胞表面に結合しているが取り込まれていない粒子の存在を示している。細胞表面のそのような粒子は、特異的および非特異的結合の両方を表している可能性がある。加えて、FITC標識された視細胞外節FACSデータは、FITC蛍光の一部が低pHで失われ得るために、あまり正確ではなく(
図2)、つまり、一旦、粒子が取り込まれてファゴソームがリソソームと融合すると、最終的な低pH(4.5~5.5)では、FITC蛍光の一部が失われる。したがって、測定されたとおりの蛍光は、取り込まれた粒子由来の一部のシグナルの喪失と細胞表面に非特異的に結合した粒子由来の付加的なシグナルとを含んでいる。pHrodo(登録商標)標識されたBioParticlesおよびpHrodo(登録商標)標識された視細胞外節の両者は、4℃では全く蛍光の増加を示さないが(
図1Bおよび1C)、37℃では増加を示し、したがって、リソソームと融合している取り込まれた粒子のみの特異的測定を可能にする。
【0075】
本明細書において記載されるとおり、pHrodo(登録商標)標識されたROSは、低pHで蛍光性であり、そのため、観察された蛍光のシフトは、取り込まれる粒子の指標となる。FITCまたは他の非pH感受性色素で標識されたROSの使用は、細胞表面に非特異的に結合した粒子、特異的に結合しているが取り込まれていないPOS、および/または取り込まれているがリソソームと融合していないPOSを示す傾向にある。その蛍光が酸性度に対して逆相関を示す、従来用いられてきたFITCの代わりに、pHrodo(登録商標)または他のpH感受性色素で視細胞外節を標識することで、あるいは、他のpH感受性および/または非感受性色素と組み合わせてpHrodo(登録商標)標識されたPOSを用いることで、ファゴサイトーシスアッセイの正確さが改善し、それにより、生理学的に関連した標的のファゴサイトーシスの測定が可能になり、ファゴサイトーシスメカニズムの詳細な解析が可能になる。
【0076】
いくつかの態様においては、POSは、目的の細胞と共に、使用前に断片化される。POSは、例えば、超音波処理またはせん断、あるいは当該技術分野の他の方法を用いて断片化され得る。断片化されたPOSは、細胞からのより高いファゴサイトーシス測定値をもたらす場合があることが見出されている。これは、コントロール活性から陽性活性を区別するのに有用であり得る。
【0077】
ファゴサイトーシスアッセイは、単一の細胞懸濁液の細胞を用いて行ってもよく、単層の細胞を用いて行ってもよい。したがって、細胞は、細胞懸濁液として提供されてもよく、培養された単層を含む、単層として提供されてもよい。この後者の態様は、細胞が通常、単層として増殖する場合に特に有用であり、細胞が通常そのように存在する際に細胞のファゴサイトーシス活性を決定することを可能にする。細胞は、単層などの付着層として、標識されたPOSとインキュベートされてもよく、次いで例えばフローサイトメトリーを用いて解析することが可能である単一の細胞集団にするために、その後酵素で消化されてもよい(トリプシン消化)。
【0078】
いくつかの態様においては、細胞は、17℃以上の、または18℃以上、または19℃以上、または20℃以上の温度でPOSとインキュベートされてもよい。温度範囲の上限は、42℃以下、または41℃以下、または40℃以下、または39℃以下、または38℃以下、または37℃以下であってもよい。試験ファゴサイトーシス活性は、これらの温度で測定されてもよい。細胞は、培養された単層を含む、単層として提供されてもよい。
【0079】
いくつかの態様においては、試験細胞または試験細胞集団は、17~40℃、または20~40℃、または25~40℃、または30~40℃、または35~40℃の範囲の温度で、あるいは37℃の温度で、POSとインキュベートされる。ネガティブコントロールは、約4~16℃、5~16℃、6~16℃、7~16℃、8~16℃、9~16℃、10~16℃、11~16℃、または12~16℃の範囲の温度で、POSとインキュベートされた細胞に対応し得る。ネガティブコントロールは、約4~15℃、5~15℃、6~15℃、7~15℃、8~15℃、9~15℃、10~15℃、11~15℃、または12~15℃の範囲の温度で、POSとインキュベートされた細胞に対応し得る。細胞は、培養された単層を含む、単層として提供されてもよい。
【0080】
いくつかの態様においては、細胞は、あらかじめ凍結保存し、解凍して、単層を確立するために簡単に培養される。一旦、単層になれば、細胞のファゴサイトーシス活性は、本明細書において記載されたとおりに試験することができる。
いくつかの態様において、細胞は、一定時間、標識されていないPOSに暴露し、次いで、蛍光標識されたPOSに暴露して後者のPOSについてファゴサイトーシスを測定する。このようにして、標識されたPOSの導入に先だって、細胞を準備してもよい。
【0081】
定義
本明細書に記載される本発明が十分に理解され得るよう、以下の詳細な説明を記載する。本発明の様々な態様が詳細に記載され、そして提供される例によってさらに例証されることもあり得る。
別に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似のまたは同等の方法および材料を、本発明でまたは本発明の試験において使用し得るが、適切な方法および材料は下記に記載されている。材料、方法、および例は、例示に過ぎず、限定することは意図されていない。本明細書においては、以下の用語および定義が提供される。
【0082】
本明細書の記載およびそれに続く特許請求の範囲全体で用いられるとおり、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈が別に明確に指示しない限り、複数への言及を含む。また、本明細書の記載において用いられるとおり、文脈が別に明確に指示しない限り、「in」の意味は、「in」および「on」を含む。
本明細書全体を通じて「含む(comprise)」なる語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのバリエーションは、記述される整数または整数群の包含を示唆するが、あらゆるその他の整数または整数群の排除を示唆しないと理解される。
【0083】
「胚性幹細胞」(ES細胞)は、本明細書で用いられるとおり、細胞株として連続的に継代されている胚盤胞または桑実胚の内部細胞集団に由来する細胞について広く言及する。ES細胞は、精子による卵細胞の受精、もしくはDNA、核移植、単為生殖から得られてもよく、またはHLA領域のホモ接合性があるES細胞を作製する手段によって得られてもよい。ES細胞はまた、精子と卵細胞の融合によって生じる接合子、割球、もしくは胚盤胞段階の哺乳類胚、核移植、単為発生、またはクロマチンの再プログラミングと引き続く細胞産生のための再プログラムされたクロマチンの細胞膜への組み込みに由来する細胞にも言及し得る。胚性幹細胞は、それらのソースまたはそれらを産生するために用いられた特定の方法にかかわりなく、(i)全ての三胚葉層の細胞へ分化させる能力、(ii)少なくともOct-4およびアルカリホスファターゼの発現、および(iii)免疫不全動物に移植すると奇形腫を生じる能力、に基づいて同定することが可能である。
【0084】
本用語はまた、好ましくは残りの胚を破壊することなく、胚の1つ以上の割球から単離される細胞も含む(例えば、Chung et al., Cell Stem Cell.2008 Feb 7;2(2):113-7;米国特許第20060206953号明細書(付与前公表);米国特許第2008/0057041号明細書(付与前公表)を参照。これらの各々は、内容全体が参照により組み込まれる)。この用語はまた、非胚細胞がプロセスにおいて用いられる場合であっても、体細胞核移植によって産生される細胞をも含む。ES細胞は、精子による卵細胞の受精、もしくはDNA、核移植、単為生殖から得られてもよく、またはHLA領域のホモ接合性があるES細胞を作製する手段によって得られてもよい。ES細胞はまた、精子と卵細胞の融合によって生じる接合子、割球、もしくは胚盤胞段階の哺乳類胚、核移植、単為発生、またはクロマチンの再プログラミングと引き続く細胞産生のための再プログラムされたクロマチンの細胞膜への組み込みに由来する細胞でもある。本開示のヒト胚性幹細胞としては、限定することなくMA01、MA09、ACT-4、No.3、H1、H7、H9、H14、およびACT30胚性幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様においては、RPE細胞を産生するのに用いられるヒトES細胞は、GMP基準にしたがって誘導され維持される。
【0085】
「黄斑変性」は、本明細書において用いられるとおり、ブルッフ膜、神経網膜、および膜色素上皮の異常と関連付けられる、中心視野の進行性喪失によって特徴づけられる疾患について広く言及する。黄斑変性疾患としては、加齢性黄斑変性、ノースカロライナ黄斑ジストロフィー、ソースビー眼底ジストロフィー、スタルガルト病、パターンジストロフィー、ベスト病、マラチアレベンティニーズ、ドイン蜂巣状脈絡膜症、優性ドルーゼン、および放射状ドルーゼンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0086】
「多能性幹細胞」は、本明細書において用いられるとおり、それらの未分化状態を保ちながら長期的なまたは実質的に無限のインビトロでの増殖が可能であり、安定した(好ましくは正常な)核型を示し、適切な条件下で全ての三胚葉層(すなわち外胚葉、中胚葉、および内胚葉)に分化する能力を有する細胞について広く言及する。
【0087】
「RPE細胞」、「分化RPE細胞」、「ES由来RPE細胞」は、本明細書において用いられるとおり、例えば本明細書で開示される方法を用いて、多能性幹細胞から分化させたRPE細胞について広く言及するために全体を通じて交換可能に用いられ得る。用語は細胞成熟度のレベルにかかわりなく、分化RPE細胞について一般的に言及するのに用いられ、したがって様々な成熟度レベルのRPE細胞を包含し得る。RPE細胞は、それらの敷石状形態と初期の色素出現によって、視覚的に認識することが可能である。RPE細胞はまた、Oct-4およびNANOGなどの胚性幹細胞マーカー発現の実質的欠損に基づいて、ならびにRPE65、PEDF、CRALBP、およびベストロフィンなどのRPEマーカー発現に基づいて、分子的に同定することができる。例えば、細胞は、例えば核内に局在するPAX6、(細胞周辺の明確な線で、局在するベストロフィン染色を示す)多角形パターンで細胞膜に局在するベストロフィン、多角形パターンで細胞の輪郭を描く密着結合に存在するZO-1染色、および核限定で検出されるMITF染色などの予測された染色パターンが観察されれば、あるマーカーについて陽性と見なしてもよい。別に特定されない限り、本明細書において用いられるとおり、RPE細胞は、多能性幹細胞からインビトロで分化されたRPE細胞について言及する。
【0088】
「成熟RPE細胞」および「成熟分化RPE細胞」は、本明細書において用いられるとおり、RPE細胞の初期分化に続いて生じる変化について広く言及するために、全体を通じて交換可能に用いられ得る。具体的には、RPE細胞は、色素の初期出現に基づいてある程度認識され得るが、分化後には、成熟RPE細胞は、高度な色素形成に基づいて認識され得る。
【0089】
「色素」は、本明細書において用いられるとおり、例えばRPE細胞がES細胞から分化する際における初期に生じる色素形成などの、あらゆるレベルの色素形成について広く言及する。色素形成は、分化RPE細胞の細胞密度と成熟度によって変動することがある。RPE細胞の色素形成は、RPE細胞の最終分化後において、平均的RPE細胞と同様であってもよい。RPE細胞の色素形成は、RPE細胞の最終分化後において、平均的RPE細胞より強く色素形成されていてもよい。RPE細胞の色素形成は、最終分化後に、平均的RPE細胞より弱く色素形成されていてもよい。
【0090】
「視細胞前駆細胞(photoreceptor progenitor)」は、胚性幹細胞から分化し得るか、または多能性幹細胞から誘導され得る、および、マーカーPAX6を発現する一方でマーカーCHX10を発現しない(すなわち、CHX10(-))、神経網膜の細胞について言及する。これらの細胞は、網膜神経前駆細胞の段階では一過性にCHX10を発現するが、細胞が視細胞前駆細胞の段階へ分化する際には、CHX10発現は消失する。視細胞前駆細胞により発現される他のマーカーには、Pax6、Nr2e3、Trβ2、Mash1、RORβ、およびNRLが含まれ得る。また、「視細胞(photoreceptor)」は、胚性幹細胞から分化するか、または多能性幹細胞から誘導される、ならびに、細胞マーカーであるロドプシンもしくは3種の錐体オプシンのいずれかを発現し、および任意に桿体もしくは錐体cGMPホスホジエステラーゼを発現する、有糸分裂後の細胞についても言及してもよい。視細胞はまた、視細胞で見出される、マーカーであるリカバリンを発現していてもよい。視細胞は、桿体および/または錐体視細胞であり得る。
【0091】
細胞マーカー:発現について評価し得る典型的細胞マーカーは、下記:PAX6、RX1、SIX3、SIX6、LHX2、TBX3、SOX2、CHX10、ネスチン、TRβ2、NR2E3、NRL、MASH1、RORβ、リカバリン、オプシン、ロドプシン、桿体および錐体cGMPホスホジエステラーゼを含み、これらは、タンパク質および/またはmRNAで評価してもよい(Fischer AJ, Reh TA, Dev Neurosci. 2001;23(4-5):268-76; Baumer et al., Development. 2003 Jul;130(13):2903-15, Swaroop et al., Nat Rev Neurosci. 2010 Aug;11(8):563-76, Agathocleous and Harris, Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 2009. 25:45-69を参照。これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)。前記マーカー識別名は、文献および当該技術分野において、特に、遺伝子識別名が本明細書において列挙される文脈に関連した技術分野において、通常用いられ、これには、視細胞、桿体、錐体、視細胞分化、視細胞前駆細胞、神経分化、神経幹細胞、多能性幹細胞、および文脈により指示される他の分野に関連する文献が含まれ得る。加えて、例えば、文脈が別にそうでないと指示する場合を除き、マーカーは通常、ヒトのものである。細胞マーカーは、当業者に周知の技術である、標準的な免疫細胞化学的方法または標準的なPCR法を用いて同定することが可能である。
【0092】
疾患の「徴候」は、本明細書において用いられるとおり、患者の検査において発見可能な、疾患を示すあらゆる異常;疾患の主観的指標である症状とは対照的な、疾患の客観的指標について、広く言及する。
疾患の「症状」は、本明細書において用いられるとおり、患者によって経験されて、疾患の指標である、あらゆる病的現象、または構造、機能、もしくは知覚における正常からの逸脱について、広く言及する。
【0093】
「治療(therapy)」、「治療的(therapeutic)」、「処置する(treating)」、「処置する(treat)」、または「処置(treatment)」は、本明細書において用いられるとおり、疾患またはその臨床症状の軽減を引き起こす、疾患の処置、疾患またはその臨床症状の進行の抑止または低減、および/または疾患の緩和について、広く言及する。治療は、疾患の、予防、抑制、処置、治癒、療法、低減、緩和、ならびに/または、疾患、徴候、および/もしくは症状の緩和の提供を包含する。治療は、進行中の疾患徴候および/または症状(例えば失明、網膜悪化)がある患者における、徴候および/または症状の緩和を包含する。治療はまた、「予防」および「抑制」も包含する。予防は、患者における疾患の処置に引き続いて生じる疾患を抑制すること、または、患者における疾患の発生率もしくは重症度を低減することを含む。用語「軽減された」は、治療目的で、徴候および/または症状における、臨床的に顕著な低減について広く言及する。治療は、再発または、再発性の徴候および/もしくは症状(例えば網膜変性、視力喪失)を処置することを含む。治療は、あらゆる時点における徴候および/または症状の出現を排除すること、ならびに、既存の徴候および/または症状を低減することおよび既存の徴候および/または症状を消失させることを包含するが、これらに限定されない。治療は、慢性疾患の処置(「維持」)および急性疾患の処置を含む。例えば、処置は、再発または徴候および/もしくは症状(例えば失明、網膜変性)の再現を、処置あるいは抑制することを含む。
【0094】
調製物におけるRPEまたは視細胞前駆細胞は、単離された成人眼球(すなわち、年齢25~80歳のヒト成人患者、より好ましくは年齢50~80歳の成人)由来の同等数のRPE細胞についての視細胞外節(POS)の貪食率よりも、少なくとも50%高い、およびより好ましくは、少なくとも75、100、150もしくはさらに200%高い、POSの貪食率を有してもよい。調製物における視細胞前駆細胞は、単離された成人眼球(すなわち、年齢25~80歳のヒト成人患者、より好ましくは年齢50~80歳の成人)由来の同等数の視細胞前駆細胞についての視細胞外節(POS)の貪食率よりも、少なくとも50%高い、およびより好ましくは、少なくとも75、100、150もしくはさらに200%高い、POSの貪食率を有してもよい。
【0095】
調製物におけるRPEまたは視細胞前駆細胞は、24時間後において視細胞外節(POS)の総濃度の少なくとも20%である、およびより好ましくは、24時間後においてPOSの総濃度の少なくとも25、30、25、40もしくはさらに50%でる、POSの貪食率を示し得る。POSファゴサイトーシスは、Bergmann et al. FASEB Journal March 2004 vol.18, 562-564頁に記載のプロトコールを用い、本明細書において記載されている非FITC標識されたPOSにより、例示的かつ非限定的な一例のように、測定することができる。
【0096】
RPEまたは視細胞前駆細胞集団は、様々な成熟度レベルの分化したRPE細胞を含んでもよく、または、特定の成熟度レベルの分化したRPE細胞に関して実質的に純粋であってもよい。RPE細胞は、様々な成熟度/色素形成レベルのRPE細胞を含む、実質的に精製された調製物であってもよい。
【0097】
RPE細胞の凍結保存調製物
RPE細胞または視細胞前駆細胞は、当該技術分野で公知のあらゆる適切な方法(例えば低温凍結)によって保存されてもよく、細胞の保存に適切ないずれの温度で凍結されてもよい。これらの細胞を使用する前に、これらは、本発明のアッセイにおいて試験されてもよく、細胞のファゴサイトーシス活性および/または能力を決定する。
本発明のファゴサイトーシスアッセイにおいて能力を示す、RPE細胞または視細胞前駆細胞は、網膜剥離、網膜異形成、網膜色素線条症、近視性黄斑変性または網膜萎縮による網膜変性疾患、あるいは、先天性脈絡膜欠如、糖尿病性網膜症、黄斑変性(例えば、加齢性黄斑変性)、網膜色素変性症およびスタルガルト病(黄色斑眼底)などの視細胞損傷と失明をもたらす、視覚を変化させる多くの疾患と関連付けられている網膜変性疾患を処置するために用いることができる。
【0098】
本明細書で提供されるRPEまたは視細胞前駆細胞は、ヒトRPEまたは視細胞前駆細胞であってもよい。しかしながら、ヒト細胞は、ヒト患者と同様に動物モデルまたは動物患者においても用いることができることを言及しておく。例えば、ヒト細胞は、網膜変性のマウス、ラット、ネコ、イヌまたは非ヒト霊長類モデルにおいて試験され得る。加えて、ヒト細胞は、獣医学などのようにその必要がある動物を処置するために、治療的に用いることもできる。
【0099】
スクリーニングアッセイ
本開示は、RPE細胞または視細胞前駆細胞の貪食活性を調節する薬剤を同定するための方法を提供する。
【0100】
例
ここで本発明を一般的に記載しているが、下記例(これは、本発明の特定の側面および態様を単に例証する目的で含まれるものであって、本発明を限定することは意図していない)を参照することによって、より容易に理解される。
【0101】
RPE細胞は、先に記載されているとおり(Klimanskaya et al, 2004)、ヒト胚性幹細胞に由来し、色素性クラスターの分化培養から単離した継代2~5代目で用いた。細胞は、コンフルエントに達するまでEGM-2培地(Lonza)中で培養し、その後は、RPE維持培地(Klimanskaya et al, 2004)で培養した。実験で用いられる細胞は、六角形形態、様々なレベルの茶色色素、立方体状の細胞外観、極性形成および密着結合により特徴づけられる、分化RPE表現型を確立していた。代替的には、細胞は、コンフルエントになった後、完全に成熟する前に実験で用いた。
InVision Bioresourcesから入手したウシ桿体外節(catalog # 98740)。Life Technologiesから入手したFITC異性体(catalog # F1906)I。Life Technologiesから入手したpHrodo(登録商標)Red Phagocytosis Particle Labeling Kit(catalog # A10026)。
【0102】
FITCによるPOSの標識
1バイアルのFITC異性体I 10mgを0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)中に2mg/mLで再懸濁した。3000gで10分間遠沈し、希釈されなかった粒子を除いて、上清のみをウシROSを標識するのに用いた。ROSとして有効な25個のウシ眼球を解凍し、5mLの洗浄用緩衝液(5mMタウリンを含む、10%スクロース含有20mMリン酸塩緩衝液、pH7.2)中に再懸濁した。2mg/mLのFITC上清1.5mLを、再懸濁したROSに加え、暗所で揺らしながら室温にて1時間インキュベートした。インキュベーション後、ROS-FITC分画を3000gで遠沈し、10mLの洗浄用緩衝液中に再懸濁した。この洗浄ステップを全部で2回繰り返した。洗浄後、2.5%スクロース含有DMEM(Gibco # 11960)10mL中に再懸濁し、再度3000gで10分間遠沈した。最後に、細胞を2.5%スクロース含有DMEM10mL中に再懸濁し、血球計算板を用いてROS-FITC粒子を係数して、2.5%スクロース含有DMEM中、1×108粒子/mLの濃度に調整し、粒子を-80℃で凍結した。
【0103】
pHrodo(登録商標)によるPOSの標識
ROSとして有効な25個のウシ眼球を、pHrodo(登録商標)Red phagocytosis Particle Labeling kitの0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液4.165mL中に再懸濁した。ROSをマイクロ遠心チューブ中へ750μLずつ4つに分注した。チューブを10000RPMで1分間遠心し、次いで再度、0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液750μL中に再懸濁した。pHrodo(登録商標)色素は、DMSO中10mMの最終濃度になるように再懸濁した。0.5mMの最終濃度になるようにpHrodo(登録商標)色素を重炭酸ナトリウム緩衝液中のROSに加え、暗所で45分間インキュベートした。(キットの)「コンポーネントC」500μLを加え、10000RPMで1分間遠心した。上清を吸引し、100%メタノール1mLに再懸濁した。チューブを30秒間ボルテックスし、10000RPMで1分間遠心した。メタノールを吸引し、(キットの洗浄用緩衝液)「コンポーネントC」1mLに再懸濁して、再度10000RPMで1分間遠心した。この洗浄ステップを全部で2回繰り返した。全粒子を総量20mLの(キットの)「バッファーB」に再懸濁した。ROS-pHrodo(登録商標)を3000RPMで10分間遠沈して、2.5%スクロース含有DMEMに再懸濁し、2.5%スクロース含有DMEM中、1×108粒子/mLの濃度に調整し、粒子を-80℃で凍結した。
【0104】
RPE細胞は、pHrodo(登録商標)結合BioParticlesあるいは、FITCまたはpHrodo(登録商標)のどちらかで標識したウシ外節のいずれかと、37℃で2~24時間、インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、トリプシン/解離緩衝液(1:1)を用いて回収して、遠心し、フローサイトメトリーにより解析した。ネガティブコントロールとして、細胞は、4℃で同一時間インキュベートした。
【0105】
加えて、FITC標識されたROS FACSデータの解釈は、FITC蛍光の一部が低pHで失われ得るため、あまり正確ではなく(
図2AおよびB)、つまり、一旦、粒子が取り込まれてファゴソームがリソソームと融合すると、最終的な低pH(4.5~5.5)では、FITC蛍光の一部が失われる。したがって、測定されたとおりの蛍光は、取り込まれた粒子由来の一部のシグナルの喪失と細胞表面に非特異的に結合した粒子由来の付加的なシグナルとを含んでいる。
【0106】
pHrodo(登録商標)は、pH感受性蛍光色素であり、pHrodo(登録商標)標識されたBioParticlesおよびROSの両者は、4℃では全く蛍光の増加を示さない(
図1Bおよび1C)ので、リソソームと融合している取り込まれた粒子のみの特異的測定を可能にする。
pHrodo(登録商標)によるROSの標識は、ファゴサイトーシスアッセイの正確さを改善し、ファゴサイトーシスの複雑なメカニズムを詳細に解析するために、FITC標識されたROSの代わりにまたはこれを補完するものとして、用いることができる。
【0107】
pHrodo(登録商標)E.coli蛍光生体粒子による標識
細胞内ファゴソームの低下したpH環境に取り込まれたとき蛍光を発する、pHrodo(登録商標) E.coli蛍光生体粒子(Invitrogen)を用いて、ファゴサイトーシスをFACSベースのアッセイにより評価する。生体粒子は製造者の使用説明書にしたがって調製した。コンフルエントなRPEは、CO2非依存性培地(Invitrogen)中で16~20時間、37℃にて、4ウェルプレートの1ウェルあたり生体粒子50~200μLとインキュベートした。ネガティブコントロールプレートは、4℃にてインキュベートした。細胞は、顕微鏡下で観察し、トリプシンにより回収して、C6フローサイトメーターで10,000イベントをカウントするFACSにより解析した。
【0108】
【0109】
RPE細胞によるpHrodo(登録商標)Red標識されたROSのファゴサイトーシス
hESC由来RPEおよびARPE-19細胞は、内皮細胞増殖培地(Endothelial Cell Growth Medium)(Lonza, cat# CC-3162, CC-3156)からなるRPE増殖培地(RPE-GM)中で培養した。
【0110】
ファゴサイトーシスアッセイのために、RPE細胞を、96ウェルプレート(Becton-Dickinson)に5x105細胞/cm2の密度で播種し、加湿インキュベーター中で37℃、5%CO2に維持した。最適なアッセイ測定値となるよう、RPE細胞は、ファゴサイトーシス能力の評価に先立ってRPE-GM中で3~5日間培養した。細胞が5日より長く培養される場合は、RPE-GMは、10%ウシ胎仔血清、GlutaMaxおよびNormocinを補充したDMEMからなる、RPE維持培地(RPE Maintenance Medium)(RPE-MM)に切り替えた。培地は、十分な栄養が提供できるように2~3日毎に交換した。RPE細胞のファゴサイトーシス活性の決定には、pH感受性ローダミンベースのpHrodo(登録商標)Red標識された桿体外節(Rod Outer Segments)(ROS)(InVision Bioresources, cat.# 98740)を用いた。pHrodo(登録商標)Red Microscale Labeling Kit(Thermo Fisher Scientific, cat. # P35363)によるROSの標識は、既述されている。各ウェルのコンフルエントなRPE細胞は、10%FBSおよびNormocinを含有するDMEM培地0.1mLと、10%FBSおよびNormocinを補充されたDMEM中で再構成された0.1mLの標識されたROSと一緒に、播種した。
【0111】
RPE細胞の最適ファゴサイトーシス能力を評価するため、96ウェルプレートにおいて1.5x106、3x106、3.75x106、5x106、6x106、7.5x106、10x106および13.5x106ROS/ウェルの異なるROS濃度について試験した。ROSの凝集を減らし、ファゴサイトーシス効率を増加させるため、桿体外節の再構成の間、直接的パルス超音波処理ステップを導入した。RPE細胞およびROSは、5%CO2および95%空気雰囲気下で20~28時間、試験サンプルについては37℃で、ネガティブコントロールについては12~15℃で、インキュベートした。翌日、ROSをRPE細胞の単層と20~28時間インキュベートした後、培養培地を吸引し、各ウェルを0.2mLのCa/Mg非含有PBS(Gibco/Invitrogen #14190-250)で3回洗浄した。細胞解離緩衝液(Cell Dissociation Buffer)(Gibco/Invitrogen, cat. # 13151)をプラスした0.25%トリプシン/EDTA(Sigma, cat. # T4049)0.2mLを、それぞれのウェルに1:1の比で加え、各細胞懸濁液が可視化するまで(10~20分)室温でインキュベートした。各サンプルの細胞懸濁液は、10%FBSをプラスしたDMEM2mLを含有する、適切にラベルされた丸底ポリスチレンチューブに移して反応を中和させ、160gで5分間遠心した。約0.2~0.25mLの液体を残して上清を静かに移した。サンプルチューブをボルテックスし、RPE細胞によるROSの取り込みを既述したとおりBD Accuri C6 Flow Cytometerを用いて評価した。
【0112】
ファゴサイトーシス能力をさらに増加させるためには、単層中にある元来の(naive)RPE細胞を、上記記載の手順に続いてpHrodo(登録商標)Red標識されたROSのファゴサイトーシスを実施する前に、回収(recovery)ステップを伴ってもしくは伴わずに、規定の期間にわたり非標識ROSに暴露することにより「コンピテント(competent)」にすることも可能である。
【0113】
参考文献
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【0114】
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