(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20231116BHJP
B60N 2/30 20060101ALI20231116BHJP
B60N 2/06 20060101ALN20231116BHJP
B60N 2/22 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/30
B60N2/06
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2021105931
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】柴山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】福岡 耕平
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129017(JP,A)
【文献】実開平05-001345(JP,U)
【文献】実開平04-057432(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に対して回動可能に取り付けられるシートクッションと、
該シートクッションの骨格を形成するシートクッションフレームと
該シートクッションフレームの前後に渡って取り付けられるパンフレームと、
該パンフレームの下部に取り付けられ、前記パンフレームを補強する補強ブラケットと、
該補強ブラケットに設けられ、前記床面に対する前記シートクッションの回動をロックするロック部材と、を備え
、
前記補強ブラケットは、上下方向に延びる壁部と、該壁部の上端において前記パンフレームと接合する接合部と、を有し、
前記ロック部材は、前記補強ブラケットの前記壁部に取り付けられることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記補強ブラケットは断面が略L字形状に形成されており、前記パンフレームの前後に渡って配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記補強ブラケットは、前記パンフレームの外側周囲に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記補強ブラケットは、前記パンフレームの左右方向の両側部において互いに対向配置される一対の部材から構成され
、
前記ロック部材は、前記一対の部材からなる前記補強ブラケットのそれぞれに設けられており、一対の前記ロック部材は、前記補強ブラケットにおいて互いに対向する同じ前後方向の位置に取り付けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記補強ブラケットの前記壁部において外側に取り付けられることを特徴とする請求項
1から4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記ロック部材は、前記壁部の下辺の一部が切り欠かれた部位に取り付けられることを特徴とする請求項
1から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記補強ブラケットは、前記シートクッションフレームの前後にある連結フレームに固定されることを特徴とする請求項
1から6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートクッションは、前記シートクッションの前方に設けられたリンク機構を介して前記床面に対して回動可能に取り付けられており、
前記ロック部材は、前記補強ブラケットの後方に配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記一対の部材からなる前記補強ブラケットは、シート幅方向に延びるブラケット連結部材によって連結されており、
前記ブラケット連結部材は、前記ロック部材を前記補強ブラケットに取り付けるロック部材取付部の付近に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに係り、特にシートクッションにおいて乗員を下方から支持するパンフレームを有する乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シート本体を前方に跳ね上げ折り畳むことができるようにしたものがある。跳ね上げ式の車両用シートでは、不用意にシート本体が跳ね上がらないようロック部材により車体フロアに固定されている。乗員がレバー等を用いてシートバックの下端部に設けられたロック部材を解除することで、シート本体を前方に跳ね上げることができるよう構成されている。特許文献1に記載の車両用シートでは、ロック部材(特許文献1ではロック装置と呼ばれる)が、線状に形成されたシートクッションフレームに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線状のフレームにロック部材を取り付けた場合、強度が不足してロック部材と共に線状のフレームが折曲がり、車体フロアへの固定が不完全になる虞があった。また、近年ではシートクッションフレームに、乗員を支持する受圧部材としてパンフレームが設けられるようになってきたが、ロック部材の取り付けに、パンフレームを利用した場合でも強度が不足して折れ曲がる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、シートクッションフレームに受圧部材として取り付けるパンフレームの剛性を向上させることをことである。更に、パンフレームの剛性を向上させることで、ロック部材をパンフレームに取り付けてロック部材の部品点数の増加を抑制し、コンパクトな空間にロック部材を取り付けられるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、乗物用シートであって、床面に対して回動可能に取り付けられるシートクッションと、該シートクッションの骨格を形成するシートクッションフレームと該シートクッションフレームの前後に渡って取り付けられるパンフレームと、該パンフレームの下部に取り付けられ、前記パンフレームを補強する補強ブラケットと、該補強ブラケットに設けられ、前記床面に対する前記シートクッションの回動をロックするロック部材と、を備え、前記補強ブラケットは、上下方向に延びる壁部と、該壁部の上端において前記パンフレームと接合する接合部と、を有し、前記ロック部材は、前記補強ブラケットの前記壁部に取り付けられることにより解決される。
【0007】
上記の乗物用シートによれば、パンフレームの下部に補強ブラケットが設けられることで、パンフレームの剛性が向上する。それにより着座する乗員を安定して支持することができと共にロック部材等を強固に取り付けることができる。
また、接合部をパンフレームに接合することで、乗物用シートに着座する乗員の支持力を向上させることができる。
また、上記構成により、ロック部材をコンパクトな空間に取り付けることができる。
【0008】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記補強ブラケットは断面が略L字形状に形成されており、前記パンフレームの前後に渡って配置されるとよい。
断面が略L字形状の補強ブラケットをパンフレームの前後に渡って配置することで、パンフレームの前後方向の剛性を向上させることができる。
【0009】
また、上記の乗物用シートにおいて、記補強ブラケットは、前記パンフレームの外側周囲に配置されるとよい。
補強ブラケットをパンフレームの外側周囲に配置することで、パンフレームの剛性を確保しつつ、乗り心地を向上させる。
【0010】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記補強ブラケットは、前記パンフレームの左右方向の両側部において互いに対向配置される一対の部材から構成され、前記ロック部材は、前記一対の部材からなる前記補強ブラケットのそれぞれに設けられており、一対の前記ロック部材は、前記補強ブラケットにおいて互いに対向する同じ前後方向の位置に取り付けられるとよい。
左右外側の側部に対向配置された一対の部材とすることで、更にパンフレームの剛性を向上させることができる。
また、ロック部材が、一対の部材からなる補強ブラケットのそれぞれに設けられ、一対のロック部材が互いに対向する同じ前後方向の位置に取り付けられることで、バランスよく乗員の支持とクッションシートの固定とを実施することができる。
【0013】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記ロック部材は、前記補強ブラケットの前記壁部において外側に取り付けられるとよい。
ロック部材を外側に取り付けることで、着座する乗員を安定して支持すると共に、シートクッションを床面に安定して固定することができる。
【0014】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記ロック部材は、前記壁部の下辺の一部が切り欠かれた部位に取り付けられるとよい。
壁部の下辺の一部が切り欠かれた部位にロック部材を取り付けることで、壁部によるロック動作の阻害を抑制しつつ、強度を確保してロック部材を固定することができる。また、補強ブラケットの壁部の一部を切り欠くことで軽量化を図ることができる。
【0016】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記補強ブラケットは、前記シートクッションフレームの前後にある連結フレームに固定されるとよい。
補強ブラケットをシートクッションフレームに固定することで、シートクッションフレームの剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パンフレームの下部に補強ブラケットが設けられることで、パンフレームの剛性が向上し、それにより下側から着座する乗員を保持することができる。
また、断面が略L字形状の補強ブラケットをパンフレームの前後に渡って配置することで、パンフレームの前後方向の剛性を向上させることができる。
また、補強ブラケットをパンフレームの外側周囲に配置することで、パンフレームの剛性を確保しつつ、乗り心地を向上させる。
また、左右外側の側部に対向配置された一対の部材とすることで、更にパンフレームの剛性を向上させることができる。
また、パンフレームに接合する接合部を壁部より外側に配置することで、乗物用シートに着座する乗員の支持力を向上させる。
また、ロック部材を補強ブラケットの壁部に取り付けることで、コンパクトな空間に取り付けることができる。
また、ロック部材を壁部の外側に取り付けることで、乗員を安定して支持すると共に、クッションを床面に安定して固定することができる。
壁部の下辺の一部が切り欠かれた部位にロック部材を取り付けることで、壁部によるロック動作の阻害を抑制しつつ、強度を確保してロック部材を固定することができる。また、補強ブラケットの壁部の一部を切り欠くことで軽量化を図ることができる。
また、ロック部材が、一対の部材からなる補強ブラケットのそれぞれに設けられ、一対のロック部材が互いに対向する同じ前後方向の位置に取り付けられることで、バランスよく乗員の支持とクッションシートの固定とを実施することができる。
また、補強ブラケットをシートクッションフレームに固定することで、シートクッションフレームの剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】車両用シートのシートフレームを示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】車両用シートのシートフレームを示す上面図である。
【
図4】車両用シートのシートフレームを示す底面図である。
【
図5】ロック部材のロックを解除してシートクッションを前方に跳ね上げた状態を示す図であり、
図3及び
図4のV-V線に沿った断面図である。
【
図6】補強ブラケットとロック部材が取り付けられたパンフレームの斜視図である。
【
図7】補強ブラケットとロック部材が取り付けられたパンフレームの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0020】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0021】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両用シート単体の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両用シート単体の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
【0022】
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが後述する着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0023】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、車両用シートSの斜視図であり、
図1中車両用シートSの一部については、図示の都合上、クッショントリムカバーTやパッドPを外した構成にて図示している。
【0024】
車両用シートSは、車体フロアBFの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の後部座席に相当するリアシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、前席シートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
また、車両用シートSは、跳ね上げ式のシートであり、着座状態とシートの後部を跳ね上げたヒップアップ状態との間で形態及び姿勢が変化するが、特に明記しない限り、着座状態を基準として各構成の形状を説明する。
【0025】
図1に図示の構成では、車両用シートSは、右側に配置された右シートSa、左側に配置された左シートSb及びそれらの間に設けられる中央シートScを有する。左シートSbと中央シートScとはそれらのシートバック1は個別に前方に倒伏するよう構成されている。また、シートクッション2については一体となって車体フロアBFに対して前方に回動可能に設けられており、左シートSbと中央シートScとを一体として跳ね上げることが可能になっている。
【0026】
右シートSaは、
図1に示すように、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とはリクライニング機構7を挟み込むように連結されている。シートバック1は、シートクッション2に対して回動して、角度調整可能に連結されている。リクライニング機構7は、シートバック1の傾斜角度を調整する。
また、シートクッション2は、シートクッション2の前方に設けられたリンク機構を介して車体フロアBFに対して回動可能な状態で取り付けられている。
【0027】
なお、左シートSb、中央シートScのそれぞれも
図1に示すようにシートバック1、シートクッション2、ヘッドレスト3を主な構成要素とし、左シートSb及び中央シートScのシートバック1及びシートクッション2はリクライニング機構7を挟み込むように連結されている。上述したように左シートSbと中央シートScのシートバック1は一体的に倒伏させることができる。左シートSb及び中央シートScのシートクッション2は、シートクッション2の前方に設けられたリンク機構を介して車体フロアBFに対して一体的に回動するよう取り付けられている。
【0028】
右シートSa、左シートSb及び中央シートScの中には、
図2~
図4に示すように、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1の骨格を形成するシートバックフレーム10と、シートクッション2の骨格を形成するシートクッションフレーム20とから構成される。
【0029】
シートバックフレーム10は全体として方形枠状に形成されており、シートバックフレーム10は、両サイドに配置されるバックサイドフレーム11と、その間に配置されるバックパネル16とを備える。
【0030】
シートクッションフレーム20も方形枠状に形成され、その側部にはクッションサイドフレーム21が設けられている。また、クッションサイドフレーム21を前方で連結する前方連結フレーム22と、後方で連結する後方連結フレーム23とを有する。車両用シートSの前後にある前方連結フレーム22及び後方連結フレーム23は丸パイプにより構成されている。また、受圧部材として、前方連結フレーム22と後方連結フレーム23とを架け渡してパンフレーム25A、25B、25Cが取り付けられている。パンフレーム25A、25B、25Cは着座した乗員の臀部を下方から支持する。
【0031】
シートバックフレーム10及びシートクッションフレーム20の外側には、パッドP及びクッショントリムカバーT(クッションカバー)が設けられることで、シートバック1及びシートクッション2が構成される。パッドPは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、クッショントリムカバーTは、例えばクロス、合成皮革又は本革等の表皮材からなる。
【0032】
また、シートクッション2の後端部とシートバック1の下端部との間にはリクライニング機構7が設けられている。より詳細には、リクライニング機構7は、シートバック1のシートバックフレーム10と、シートクッション2のシートクッションフレーム20と、を連結している。リクライニング機構7は、シートクッション2(シートクッションフレーム20)に対するシートバック1(シートバックフレーム10)の角度を調節可能にしている。リクライニング機構7により、シートバック1を所定の角度でロックして傾斜した状態を維持することができる。また、そのロックを解除することによりシートバック1を前方又は後方に倒伏したりすることができる。
【0033】
また、車両用シートSの下部には、
図2及び
図4に示すようにスライドレール4が設置されている。このスライドレール4により、車両用シートSは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアBFに取り付けられる。
【0034】
スライドレール4は、前後方向に沿って右シートSa又は左シートSb及び中央シートScをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。スライドレール4は、車体フロアBF上に固定されるロアレール、及びロアレールに対してスライド移動可能なアッパーレールを有する。車体に固定されたロアレールに対してアッパーレールが摺動可能となっている。
【0035】
<パンフレーム>
本実施形態の車両用シートSには、上述したように乗員を下方から支持するパンフレーム25A~25Cが設けられている。パンフレーム25A~25Cは金属製の板状部材であり、
図2、
図3、
図6に示すように前後方向に延びるよう配置されている。パンフレーム25A~25Cはその前端が、シートクッションフレーム20の前方連結フレーム22に固定されており、後端が後方連結フレーム23に固定されている。また、パンフレーム25A~25Cは、シートクッション2のクッションパッドを受ける底面部28を有し、それぞれの底面部28はその後端部が後方に向かうにつれて徐々にせり上がり、また、その前端部が前方に向かうにつれて徐々にせり上がるようにして形成されてる。すなわち、パンフレーム25A~25cにおける底面部28は、クッションパッドを受けやすい形状に形成されている。
【0036】
底面部28はパンフレーム25A~25Cの後側に位置しており、底面部28には貫通孔26が形成され、軽量化が図られている。また、パンフレーム25A~25Cのそれぞれの中央部には、前後方向に延びる2本の補強ビード27A、27Bが形成されていてる。補強ビード27A及び27Bは、その後端部において貫通孔26を挟んでいる。また、前端部には凹部29が形成されており、パンフレーム25A~25Cの前端部が補強される。また、補強ビード27A、27B及び凹部29を下方に突出するよう形成することにより着座した乗員に与える違和感を抑制している。
【0037】
<ロック部材>
車両用シートSには、
図5~
図7に示すように、シートクッション2(シートクッションフレーム20)を車体フロアBFに固定するロック部材40A、40B(以下まとめてロック部材40と称する場合がある)が設けられている。ロック部材40には操作レバーと連動して回転する爪部41が設けられており、車体フロアBFに設けられたストライカ(図示せず)にロック部材40の爪部41を掛けることによりシートクッション2を車体フロアBFに固定している。乗員は、車両用シートSに設けられたレバーを操作することにより、ロック部材40の爪部41によるロックを解除して、
図5の矢印A方向に車両用シートSを回動させ、シートクッション2を跳ね上げる。ロック部材40は公知の構造であるため詳細な説明は省略する。
【0038】
<補強ブラケット>
本実施形態において、右シートSaのパンフレーム25Aの下部に補強ブラケット30A、30Bが取り付けられており、左シートSbのパンフレーム25Bの下部に補強ブラケット30Cが取り付けられている。補強ブラケット30A、30B、30Cは、ロック部材40をパンフレーム25A、25Bに取り付けて支持するロック支持ブラケットとしての機能も有する。
パンフレーム25Bに設けられた補強ブラケット30Cは、パンフレーム25Aの補強ブラケット30Bと略同様の形状・機能を有する。そのため、以下では、主に
図6~
図9を用いて、右シートSaのパンフレーム25Aに取り付けられた補強ブラケット30A、30B(以下、まとめて補強ブラケット30と称する場合がある)ついて説明する。
【0039】
補強ブラケット30は、パンフレーム25Aの下方に取り付けられることにより、パンフレーム25Aを補強する部材である。補強ブラケット30は、上下方向に延びる壁部31と、壁部31の上端部においてフランジ状に形成された接合部32とを有する。接合部32は、パンフレーム25Aの下面と当接して接合する部分である。補強ブラケット30は、パンフレーム25Aの下面と接合部32とが溶接により接合される。パンフレーム25Aと補強ブラケット30とはボルト等の締結部材により接合されてもよい。補強ブラケット30の壁部31及び接合部32は、パンフレーム25Aの下面に沿うよう形成されている。また、補強ブラケット30の壁部31は、正面視でパンフレーム25Aの下面に対して略直交するように設置される。このように補強ブラケット30をパンフレーム25Aにとりつけることで、パンフレーム25Aの剛性を向上させる。
【0040】
図8に示すように、補強ブラケット30A、30Bそれぞれの接合部32は、右シートSaの内側に向けて折れ曲がるよう形成されていて、補強ブラケット30はその断面が略L字形状になっている。言い換えれば、パンフレーム25Aと接合する接合部32は、壁部31よりも幅方向において内側に配置されている。補強ブラケット30は、パンフレーム25Aの前後に渡って配置されている。補強ブラケット30を取り付けることにより、パンフレーム25Aの剛性が向上する。パンフレーム25Aの剛性が向上することにより、乗員の臀部を安定して支持することができると共に、後述するロック部材40を取り付けることが可能となる。
【0041】
なお、
図6に示すようにパンフレーム25Aは、前方連結フレーム22と接続する前端部分25Aaの幅L1と、後方連結フレーム23と接続する後端部分25Abの幅L2の大きさが異なっている。後端部分25Abの幅L2が、前端部分25Aaの幅L1より小さくなるよう、言い換えれば幅が狭くなるように形成されている。そのため、補強ブラケット30A、30Bの一部が露出し、一対の補強ブラケット30A、30Bの間にパンフレーム25Aがあるように構成される。補強ブラケット30A、30Bの前端は、前方連結フレーム22に接続し、後端は後方連結フレーム23に接続することによっても固定される。補強ブラケット30が前方連結フレーム22及び後方連結フレーム23に接続することで、シートクッションフレーム20の剛性が向上するようになる。
【0042】
なお、
図8に示す補強ブラケット30Aの接合部32は内側に向けて折れ曲がるよう形成されているが、接合部32は外側に向けて折れ曲がるよう形成されてもよい。言い換えれば、接合部32は壁部31よりも幅方向において外側に配置されてもよい。接合部32を外側に配置することにより支持する幅方向の長さが広がることから、着座する乗員の支持力を向上させることができる。
【0043】
補強ブラケット30A、30Bは、
図6に示すように、パンフレーム25Aの外側周囲である左右方向の側部に配置されている。より具体的に述べると、補強ブラケット30Aと補強ブラケット30Bは、パンフレーム25Aの幅方向(左右方向)の両側部において前後方向に延びる中心線Cを対象軸とし互いに対向配置される一対の部材として構成されている。
【0044】
パンフレーム25Aには、
図6に示すように、補強ブラケット30を介して二つのロック部材40A、40Bが取り付けられている。ロック部材40A、40Bは、補強ブラケット30の壁部31に取り付けられている。より詳細には、ロック部材40Aは、補強ブラケット30Aの壁部31において外側に取り付けられ、ロック部材40Bは、補強ブラケット30Bの壁部31において外側に取り付けられている。ロック部材40を補強ブラケット30に取り付けることで、ロック部材40をコンパクトな空間に取り付けることができる。また、ロック部材40を壁部31の外側に取り付けることで、着座する乗員を安定して支持すると共に、シートクッション2を床面に安定して固定することができる。
【0045】
また、ロック部材40は、壁部31の下辺の一部が切り欠かれた部位(ロック部材取付部35)に取り付けられている。より詳細に述べると、
図8及び
図9に示すように、壁部31の下辺の一部が、側面視で略L字形状の切り欠き35aにより切り欠かれており、それにより、取付片35b、35cが形成されている。ロック部材取付部35には、ロック部材40をボルト等の締結部材で固定するための貫通孔36が三つ形成されている。その内の一つが壁部31に形成され、他の二つが取付片35b、35cに形成される。
壁部31を切り欠き35aにより切り欠き、その部位にロック部材40を取り付けることにより、壁部31によるロック部材40のロック動作の阻害を抑制しつつ、強度を確保してロック部材40を固定することができる。また、補強ブラケット30を略L字形状に切り欠くことにより軽量化を図ることができる。なお、本実形態では略L字形状に切り欠くことでロック部材取付部35を実現しているが、切り欠きの形状は任意であり、例えば壁部31を側面視で略C字形状又は略V字形状に切り欠いてもよい。
【0046】
一対のロック部材40A、40Bは、一対の補強ブラケット30A、30Bのそれぞれに設けられている。そして、一対のロック部材40A、40Bは、一対の補強ブラケット30A、30Bにおいて互いに対向する同じ前後方向の位置に取り付けられる。すなわち、一対のロック部材40A、40Bは側面視で重なる位置に配置されている。このように、一対のロック部材40A、40Bを配置することで、バランスよく乗員の支持とシートの固定とを実施することができる。
【0047】
対向配置される補強ブラケット30A、30Bは、パンフレーム25Aだけでなく、
図8に示すように、幅方向に延びる二つのブラケット連結部材37、38によって連結されている。ブラケット連結部材37、38は丸パイプであり、ブラケット連結部材37は前方に、ブラケット連結部材38は後方に配置され、補強ブラケット30A、30Bを補強している。特にブラケット連結部材38は、ロック部材40を取り付けるロック部材取付部35付近に配置されており、ロック部材40の位置ずれを抑制している。
【0048】
また、補強ブラケット30A、30Bの前方端部から、線状部材42が延びていて、シートクッションフレーム20の後方連結フレーム23に接続している(
図3参照)。線状部材42によりシートクッション2のパッドPを支持している。
【0049】
以上、図を用いて本実施形態の車両用シートSについて説明した。なお、車両用シートSの右シートSaに設けられたパンフレーム25A及びそれに取り付けられる補強ブラケット30A、30Bについて説明したが、左シートSbに設けれられたパンフレーム25Bにも補強ブラケット30Cが取り付けられている。このように補強ブラケット30は、パンフレーム25Aの両側部になくてもよく、いずれか一方の補強ブラケット30A、30Bが一方の側部に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0050】
S 車両用シート(乗物用シート)
Sa 右シート
Sb 左シート
Sc 中央シート
F シートフレーム
BF 車体フロア
T クッショントリムカバー
P パッド
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
7 リクライニング機構
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
16 バックパネル
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 前方連結フレーム
23 後方連結フレーム
25A、25B、25C パンフレーム
26 貫通孔
27A、27B 補強ビード
28 底面部
29 凹部
30、30A、30B、30C 補強ブラケット
31 壁部
32 接合部
35 ロック部材取付部
35a 切り欠き
35b、35c 取付片
37 ブラケット連結部材
38 ブラケット連結部材
40、40A、40B ロック部材
41 爪部
42 線状部材