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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】水素製造システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20231116BHJP
   C01B 3/06 20060101ALI20231116BHJP
   F24S 20/00 20180101ALI20231116BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20231116BHJP
【FI】
C01B3/00 A
C01B3/06
F24S20/00 010
H01M8/0606
H01M8/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021136409
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023030977
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2023-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄基
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 俊太朗
(72)【発明者】
【氏名】松原 亘
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0321244(US,A1)
【文献】特開2018-118892(JP,A)
【文献】特開2013-126948(JP,A)
【文献】特開2002-080202(JP,A)
【文献】特表2009-536604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0138675(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0100356(US,A1)
【文献】特開2010-017700(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074518(WO,A1)
【文献】Nishino H et al,Formation and Characterization of Hydrogen Borides Sheets Derived from MgB2 by Cation Exchange,Journal of the American Chemical Society,139,米国,2017年06月13日,pp13761-13769,https://www.science-academy.jp/showcase/18/pdf/P-047_showcase2019.pdf
【文献】近藤 剛弘,水素とホウ素で構成される新しい二次元物質ボロファンの生成,JXTG Technical Review,2018年,第60巻 第2号,p.49-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
F24S 20/00
H01M 8/00-8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化合物部材を収容する少なくとも1つの容器と、
前記少なくとも1つの容器内を熱媒体によって加熱する加熱装置と、
前記少なくとも1つの容器内を冷却する冷却装置と、
前記少なくとも1つの容器内に水を供給し、前記水素化合物部材に水素を吸蔵させる水供給装置と
を備え、
前記加熱装置は、太陽光を集光して前記熱媒体に照射することによって前記熱媒体を加熱する太陽光集光装置を備え、
前記水素化合物部材は、水素以外の元素をXとしたときに、化学式Xで表される水素化合物を含有し、化学量論比m:nは1:1~3:4であり、
前記元素Xはホウ素である水素製造システム。
【請求項2】
蓄熱部をさらに備え、
前記蓄熱部は、前記熱媒体の熱の一部を蓄熱し、前記蓄熱部に蓄熱された熱を前記熱媒体に放熱する、請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項3】
前記熱媒体は、
前記太陽光集光装置によって太陽光が照射される第1熱媒体と、
前記第1熱媒体と熱交換されることで加熱される第2熱媒体であって、前記少なくとも1つの容器内を加熱する第2熱媒体と
を含み、
前記水素製造システムは、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体とが熱交換する第1熱交換器を含み、
前記蓄熱部は、
蓄熱媒体を収容する蓄熱媒体収容部と、
前記第1熱媒体と前記蓄熱媒体とが熱交換する第2熱交換器と
を備える、請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの容器は複数の容器を備え、
前記水素製造システムは、
前記熱媒体が循環する熱媒体循環ラインと、
前記熱媒体循環ラインから分岐して各容器を通り再び前記熱媒体循環ラインに合流する分岐ラインと、
各分岐ラインに設けられ、前記分岐ラインに前記熱媒体を流通させることと前記熱媒体を流通させないこととを切り替える切替部と
を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記複数の容器のうち、少なくとも2つの容器のそれぞれに収容された前記水素化合物部材の質量が異なる、請求項4に記載の水素製造システム。
【請求項6】
前記水素化合物部材は二次元配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の水素製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽光発電装置が発電した直流電流を用いて海水を電気分解して水素ガスを発生させるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/159817号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、太陽光発電装置が発電した直流電流を用いて海水を電気分解する方法では、水素製造の熱効率が低いという課題があった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、熱効率良く水素を製造可能な水素製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る水素製造システムは、水素化合物部材を収容する少なくとも1つの容器と、前記少なくとも1つの容器内を熱媒体によって加熱する加熱装置と、前記少なくとも1つの容器内を冷却する冷却装置と、前記少なくとも1つの容器内に水を供給し、前記水素化合物部材に水素を吸蔵させる水供給装置とを備え、前記加熱装置は、太陽光を集光して前記熱媒体に照射することによって前記熱媒体を加熱する太陽光集光装置を備え、前記水素化合物部材は、水素以外の元素をXとしたときに、化学式Xで表される水素化合物を含有し、化学量論比m:nは1:1~3:4であり、前記元素Xはホウ素である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の水素製造システムによれば、集光された太陽光を照射することによって加熱された熱媒体が、容器内に収容された水素化合物部材を加熱するので、熱効率良く水素を製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態1に係る水素製造システムの構成模式図である。
図2】本開示の実施形態2に係る水素製造システムの構成模式図である。
図3】本開示の実施形態3に係る水素製造システムの構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態による水素製造システムについて、図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(実施形態1)
<本開示の実施形態1に係る水素製造システムの構成>
図1に示されるように、本開示の実施形態1に係る水素製造システム1は、水素化合物部材3を収容する容器2と、容器2内を加熱する加熱装置4と、容器2内を冷却する冷却装置5と、容器2内に水を供給する水供給装置6とを備えている。後述する動作で説明するように、容器2内で水素又は酸素が発生するが、水素及び酸素のそれぞれが容器2から放出される水素放出部7及び酸素放出部8が容器2に設けられている。
【0011】
水素化合物部材3は、水素(H)以外の元素をXとしたときに、化学式Xで表される水素化合物の二次元的な配列を含有するものであり、化学量論比m:nは1:1~3:4(例えば、XH、XH、XH、XH、X、X)である。限定はしないが、元素Xは例えばホウ素(B)である。
【0012】
加熱装置4は、容器2の内部すなわち容器2内に収容される水素化合物部材3を加熱するためのものである。加熱装置4は、容器2内に熱媒体を供給することによって熱媒体が水素化合物部材3に直接接触する構成のものであってもよいが、以下では、容器2の外面を覆うように設けられたジャケット又は通路のような熱媒体通路9に熱媒体を流通させて、熱媒体と容器2内のガスとを熱交換させることによって、容器2内に収容される水素化合物部材3を加熱する構成を有するものとして説明する。尚、熱媒体としては特に限定しないが、水やオイル等の液体状のものを使用することが好ましい。
【0013】
加熱装置4は、一端が熱媒体通路9の入口に接続されるとともに他端が熱媒体通路9の出口に接続されて熱媒体が循環する熱媒体循環ライン10と、熱媒体循環ライン10を循環する熱媒体に太陽光を集光して照射することによって熱媒体を加熱する太陽光集光装置11とを備えている。太陽光集光装置11の構成は特に限定するものではなく、例えば、放物面トラフ、太陽光発電タワー、パラボラディッシュのいずれのタイプの装置を使用できるが、最高加熱温度やコスト等を考慮すると、放物面トラフのタイプの装置が好ましい。
【0014】
冷却装置5は、容器2の内部すなわち容器2内に収容される水素化合物部材3を冷却するためのものである。冷却装置5の構成は特に限定しないが、例えば、エアクーラーや水クーラーのような冷媒式のものを使用することができる。冷却装置5が冷媒式の場合、冷却空気や水等の冷媒は熱媒体通路9を流通するようにしてもよいし、容器2内に供給されるようにしてもよい。また、容器2の内部の加熱を終了した直後は、容器2の内部の温度よりも容器2の外部の温度の方が低いので、容器2の内部を容器2の外部へ開放すれば、容器2の内部を冷却することができる。このため、容器2の内部を容器2の外部へ開閉可能な開閉弁を冷却装置5とすることもできる。
【0015】
水供給装置6は、液体の水又は蒸気若しくは水又は蒸気の少なくとも一方を主成分として含む流体(以下では、これらのいずれをも意味するものとして単に「水」という)を容器2内に供給するためのものである。水の温度が冷却装置5による冷却温度に近ければ、供給する水で容器2の内部を冷却できるので、この場合には、水供給装置6は冷却装置5を兼ねることができる。
【0016】
<本開示の実施形態1に係る水素製造システムの動作>
次に、本開示の実施形態1に係る水素製造システム1の動作について説明する。水素製造システム1は、加熱装置4を駆動させるとともに冷却装置5及び水供給装置6を停止させて水素を放出する動作(水素放出動作)と、加熱装置4を停止させるとともに冷却装置5及び水供給装置6を駆動させて水素を貯蔵する動作(水素貯蔵動作)とを交互に切り替えるように動作する。
【0017】
まず、水素放出動作について説明する。容器2内に収容される水素化合物部材3は水素を貯蔵した状態となっている。水素を放出させるためには、加熱装置4を駆動させる。図示しないポンプ等によって熱媒体循環ライン10を循環する熱媒体に、太陽光集光装置11が集光した太陽光を照射することによって、熱媒体が加熱される。加熱された熱媒体は、熱媒体通路9を流通する際に容器2内のガスと熱交換することによって、容器2内に収容される水素化合物部材3が加熱される。水素化合物部材3の温度が約150℃~約300℃の範囲になると、水素化合物部材3から水素が放出される。水素化合物部材3から放出された水素を、水素放出部7を介して容器2から流出させることによって、水素を回収することができる。
【0018】
次に、水素貯蔵動作について説明する。加熱装置4は停止した状態で冷却装置5を駆動させることによって、容器2内の温度を約150℃未満、好ましくは約80℃以上約150℃未満となるように制御する。この状態で水供給装置6が容器2内に水を供給すると、水素化合物部材3の存在下で水が水素と酸素とに分解して、水素が水素化合物部材3に吸蔵される。これにより、水素化合物部材3は水素を貯蔵した状態となる。酸素は容器2内に滞留するが、酸素放出部8を介して容器2から酸素を流出させることによって、酸素を回収することができる。
【0019】
このように、本開示の水素製造システム1において、集光された太陽光を照射することによって加熱された熱媒体が、容器2内に収容された水素化合物部材3を加熱するので、熱効率良く水素を製造可能となる。
【0020】
<本開示の実施形態1に係る水素製造システムの変形例>
実施形態1では、水素及び酸素のそれぞれを、別々の放出部、すなわち水素放出部7及び酸素放出部8を介して容器2から放出させているが、この形態に限定するものではない。水素放出部7及び酸素放出部8を1つの共通の放出口に変更し、この放出口と水素及び酸素の供給先とを繋ぎ変えるようにしてもよい。
【0021】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る水素製造システムについて説明する。実施形態2に係る水素製造システムは、実施形態1に対して、太陽光によって加熱された熱媒体の熱の一部を蓄熱する蓄熱部を付加したものである。尚、実施形態2において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0022】
<本開示の実施形態2に係る水素製造システムの構成>
図2に示されるように、本開示の実施形態2に係る水素製造システム1では、熱媒体は、太陽光集光装置11によって太陽光が照射される第1熱媒体と、容器2内を加熱する第2熱媒体とから構成されている。第1熱媒体と第2熱媒体とはそれぞれ同じ流体でもよいし、異なる流体でもよい。
【0023】
熱媒体循環ライン10は、第1熱媒体が循環する第1熱媒体循環ライン21と、第2熱媒体が循環する第2熱媒体循環ライン22とを備えている。水素製造システム1は、第1熱媒体循環ライン21を循環する第1熱媒体と、第2熱媒体循環ライン22を循環する第2熱媒体とを熱交換する第1熱交換器20を備えている。また、水素製造システム1は、第1熱媒体の熱の一部を蓄熱することと蓄熱された熱を第1熱媒体に放熱することとが可能な蓄熱部23を備えている。蓄熱部23は、蓄熱媒体を収容する蓄熱媒体収容部24と、第1熱媒体が第1熱交換器20をバイパスするバイパスライン26を流通する第1熱媒体と蓄熱媒体とが熱交換する第2熱交換器25とを備えている。蓄熱媒体は、第1熱媒体又は第2熱媒体と同じ流体でもよいし、異なる流体でもよい。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0024】
<本開示の実施形態2に係る水素製造システムの動作>
次に、本開示の実施形態2に係る水素製造システム1の動作について説明する。第1熱媒体循環ライン21を循環する第1熱媒体に、太陽光集光装置11が集光した太陽光を照射することによって、第1熱媒体が加熱される。第1熱交換器20において、第1熱媒体と第2熱媒体とが熱交換することにより、第2熱媒体が加熱される。第2熱媒体循環ライン22を循環する第2熱媒体は、熱媒体通路9を流れる際に、容器2内のガスと熱交換することにより容器2内を加熱し、それにより、水素を貯蔵した状態の水素化合物部材3が加熱されて、水素化合物部材3から水素が放出される。水素化合物部材3から放出された水素を回収する動作は実施形態1と同じである。
【0025】
第1熱媒体が第1熱媒体循環ライン21を循環する間、第1熱媒体の一部は第1熱交換器20をバイパスするようにバイパスライン26を流通する。バイパスライン26を流通する第1熱媒体は、第2熱交換器25において蓄熱媒体と熱交換することにより、第1熱媒体の熱の一部が蓄熱媒体に移動する。日没までの間にこの動作を継続することにより、第1熱媒体の熱の一部を蓄熱した蓄熱媒体が蓄熱媒体収容部24に貯蔵される。
【0026】
実施形態1では、日没後の夜間は熱媒体の加熱が行えないため、水素放出動作を行うことができない。しかしながら、実施形態2では夜間も、第2熱交換器25において蓄熱媒体と第1熱媒体とが熱交換することにより、蓄熱媒体に蓄熱されている熱が第1熱媒体に移動して第1熱媒体を加熱することができる。加熱された第1熱媒体と第2熱媒体とが第1熱交換器20において熱交換することにより、第2熱媒体が加熱され、第2熱媒体によって水素化合物部材3が加熱されて、水素化合物部材3から水素を放出することができる。尚、このような水素放出動作は、夜間に限定されず、蓄熱部23に熱が蓄熱されていれば、天候が曇り又は雨のときのように、太陽光の強度が弱いときも実施可能である。
【0027】
水素貯蔵動作は、加熱装置4を停止させるとともに冷却装置5及び水供給装置6を駆動させることにより、実施形態1と同様の動作で行われる。
【0028】
このように、天候が曇り又は雨のときや夜間であっても、蓄熱部23に蓄熱された熱を第1熱媒体に放熱することで第1熱媒体及び第2熱媒体を加熱できるので、天候や時刻によらずに熱効率良く水素を製造可能となる。
【0029】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る水素製造システムについて説明する。実施形態3に係る水素製造システムは、実施形態1又は2に対して、水素化合物部材3を収容した複数の容器2を設け、太陽光からの熱量に応じて、水素放出動作を行う容器2の個数を調整できるように変更したものである。以下では、実施形態2に対してこのような変更をした形態を実施形態3として説明するが、実施形態1に対してこのような変更をすることにより実施形態3を構成することもできる。尚、実施形態2において、実施形態3の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0030】
<本開示の実施形態3に係る水素製造システムの構成>
図3に示されるように、本開示の実施形態3に係る水素製造システム1では、複数の容器2、一例として3つの容器2a,2b,2cが設けられ、それぞれの容器に水素化合物部材3が収容されている。容器2a,2b,2cのそれぞれの熱媒体通路9a,9b,9cのそれぞれの入口及び出口に接続される分岐ライン30a,30b,30cが第2熱媒体循環ライン22に連通するように設けられている。詳細には、分岐ライン30a,30b,30cはそれぞれ、第2熱媒体循環ライン22から一端が分岐して熱媒体通路9a,9b,9cのそれぞれの入口に他端が接続される熱媒体供給ライン31a,31b,31cと、熱媒体通路9a,9b,9cのそれぞれの出口に一端が接続され第2熱媒体循環ライン22に他端が合流する熱媒体戻りライン32a,32b,32cとを備えている。
【0031】
熱媒体供給ライン31a,31b,31cのそれぞれには第1開閉弁33a,33b,33cが設けられ、熱媒体戻りライン32a,32b,32cのそれぞれには第2開閉弁34a,34b,34cが設けられている。後述する動作で具体的に説明するが、第1開閉弁33a,33b,33c及び第2開閉弁34a,34b,34cを開閉することにより、第2熱媒体循環ライン22を循環する第2熱媒体が分岐ライン30a,30b,30cを流通することと流通しないこととを切り替えることができるので、第1開閉弁33a,33b,33c及び第2開閉弁34a,34b,34cは切替部を構成する。尚、切替部は、第1開閉弁33a,33b,33cのみ又は第2開閉弁34a,34b,34cのみであってもよい。その他の構成は実施形態2と同じである。
【0032】
<本開示の実施形態3に係る水素製造システムの動作>
太陽光集光装置11によって集光された太陽光で第1熱媒体を加熱する動作と、第1熱媒体の熱で第2熱媒体を加熱する動作と、蓄熱部23が第1熱媒体の熱の一部を蓄熱する動作とについては、実施形態2と同じである。第2熱媒体循環ライン22を循環する第2熱媒体は、第1開閉弁33a及び第2開閉弁34aを開くことにより、容器2aの熱媒体通路9aを流れ、容器2aに収容された水素化合物部材3を加熱して水素を放出させることができる。同様にして、第1開閉弁33b及び第2開閉弁34bを開くことにより、容器2bに収容された水素化合物部材3から水素を放出させることができ、第1開閉弁33c及び第2開閉弁34cを開くことにより、容器2cに収容された水素化合物部材3から水素を放出させることができる。
【0033】
第1開閉弁33a,33b,33c及び第2開閉弁34a,34b,34cの開閉を調整することにより、3つの容器のうちの1つの容器に収容された水素化合物部材3から水素を放出させることと、3つの容器のうちの2つの容器のそれぞれに収容された水素化合物部材3から水素を放出させることと、3つの容器のそれぞれに収容された水素化合物部材3から水素を放出させることとを切り替えることができる。すなわち、水素の放出量を3段階に調整することができる。この調整は、太陽光からの熱量に応じて行うことができる。その他の動作は実施形態2と同じである。
【0034】
このように、太陽光集光装置11によって集光された太陽熱の熱量に応じて、第2熱媒体を供給する容器2a,2b,2cの数を調整できるので、水素製造システム1の稼働効率を向上させることができる。
【0035】
<本開示の実施形態3に係る水素製造システムの変形例>
容器2a,2b,2cのうち、少なくとも2つの容器のそれぞれに収容された水素化合物部材3の質量を異なるようにしてもよい。好ましくは、容器2a,2b,2cのそれぞれに収容される水素化合物部材3の質量を異なるようにしてもよい。実施形態3では水素の放出量は3段階の調整が可能であったが、このような変形例によれば、集光された太陽熱の熱量に応じて、水素製造量を3段階よりも多くの段階に細かく調整することができる。
【0036】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0037】
[1]一の態様に係る水素製造システムは、
水素化合物部材(3)を収容する少なくとも1つの容器(2)と、
前記少なくとも1つの容器(2)内を熱媒体によって加熱する加熱装置(4)と、
前記少なくとも1つの容器(2)内を冷却する冷却装置(5)と、
前記少なくとも1つの容器(2)内に水を供給する水供給装置(6)と
を備え、
前記加熱装置(4)は、太陽光を集光して前記熱媒体に照射することによって前記熱媒体を加熱する太陽光集光装置(11)を備える。
【0038】
本開示の水素製造システムによれば、集光された太陽光を照射することによって加熱された熱媒体が、容器内に収容された水素化合物部材を加熱するので、熱効率良く水素を製造可能となる。
【0039】
[2]別の態様に係る水素製造システムは、[1]の水素製造システムであって、
蓄熱部(23)をさらに備え、
前記蓄熱部(23)は、前記熱媒体の熱の一部を蓄熱し、前記蓄熱部に蓄熱された熱を前記熱媒体に放熱する。
【0040】
このような構成によれば、天候が曇り又は雨のときや夜間であっても、蓄熱部に蓄熱された熱を熱媒体に放熱することで熱媒体を加熱できるので、天候や時刻によらずに熱効率良く水素を製造可能となる。
【0041】
[3]さらに別の態様に係る水素製造システムは、[2]の水素製造システムであって、
前記熱媒体は、
前記太陽光集光装置(11)によって太陽光が照射される第1熱媒体と、
前記第1熱媒体と熱交換されることで加熱される第2熱媒体であって、前記少なくとも1つの容器(2)内を加熱する第2熱媒体と
を含み、
前記水素製造システム(1)は、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体とが熱交換する第1熱交換器(20)を含み、
前記蓄熱部(23)は、
蓄熱媒体を収容する蓄熱媒体収容部(24)と、
前記第1熱媒体と前記蓄熱媒体とが熱交換する第2熱交換器(25)と
を備える。
【0042】
このような構成によれば、天候が曇り又は雨のときや夜間であっても、蓄熱部に蓄熱された熱を第1熱媒体に放熱することで第1熱媒体及び第2熱媒体を加熱できるので、天候や時刻によらずに熱効率良く水素を製造可能となる。
【0043】
[4]さらに別の態様に係る水素製造システムは、[1]~[3]のいずれかの水素製造システムであって、
前記少なくとも1つの容器(2)は複数の容器(2a,2b,2c)を備え、
前記水素製造システム(1)は、
前記熱媒体が流通する熱媒体循環ライン(10)と、
前記熱媒体循環ライン(10)から分岐して各容器(2a,2b,2c)を通り再び前記熱媒体循環ライン(10)に合流する分岐ライン(30a,30b,30c)と、
各分岐ライン(30a,30b,30c)に設けられ、前記分岐ライン(30a,30b,30c)に前記熱媒体を流通させることと前記熱媒体を流通させないこととを切り替える切替部(第1開閉弁33a,33b,33c/第2開閉弁34a,34b,34c)と
を備える。
【0044】
このような構成によれば、太陽光集光装置によって集光された太陽熱の熱量に応じて、熱媒体を供給する容器の数を調整できるので、水素製造システムの稼働効率を向上させることができる。
【0045】
[5]さらに別の態様に係る水素製造システムは、[4]の水素製造システムであって、
前記複数の容器(2a,2b,2c)のうち、少なくとも2つの容器のそれぞれに収容された前記水素化合物部材(3)の質量が異なる。
【0046】
このような構成によれば、集光された太陽熱の熱量に応じて、水素製造量を細かく調整することができる。
【0047】
[6]さらに別の態様に係る水素製造システムは、[1]~[5]のいずれかの水素製造システムであって、
前記水素化合物部材(3)は、水素以外の元素をXとしたときに、化学式Xで表される水素化合物の二次元的な配列を含有するものであり、化学量論比m:nは1:1~3:4である。
【0048】
このような構成によれば、水素の貯蔵及び放出が可能となる。
【0049】
[7]さらに別の態様に係る水素製造システムは、[6]の水素製造システムであって、
前記元素Xはホウ素である。
【0050】
このような構成によれば、水素の貯蔵及び放出が可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 水素製造システム
2,2a,2b,2c 容器
3 水素化合物部材
4 加熱装置
5 冷却装置
6 水供給装置
10 熱媒体循環ライン
11 太陽光集光装置
20 第1熱交換器
23 蓄熱部
24 蓄熱媒体収容部
25 第2熱交換器
30a,30b,30c 分岐ライン
33a,33b,33c 第1開閉弁(切替部)
34a,34b,34c 第2開閉弁(切替部)
図1
図2
図3