IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-リード線の接続構造 図1
  • 特許-リード線の接続構造 図2
  • 特許-リード線の接続構造 図3
  • 特許-リード線の接続構造 図4
  • 特許-リード線の接続構造 図5
  • 特許-リード線の接続構造 図6
  • 特許-リード線の接続構造 図7
  • 特許-リード線の接続構造 図8
  • 特許-リード線の接続構造 図9
  • 特許-リード線の接続構造 図10
  • 特許-リード線の接続構造 図11
  • 特許-リード線の接続構造 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】リード線の接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H01R4/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021509313
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012310
(87)【国際公開番号】W WO2020196268
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019064717
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 拓也
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 大
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-325803(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01M 2/10
H01R 4/64
H01M 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、この金属板の表面に接続されてなるリード線とを備えるリード線の接続構造であって、
前記金属板の表面に突出して、
前記リード線の少なくとも2カ所を挟着して定位置に配置する一対の保持凸部を設けており、
前記保持凸部は、
圧入された前記リード線を挟着して保持する保持隙間を有すると共に、
一対の前記保持凸部の間には、前記リード線と前記金属板との接続スペースを設けており、
前記リード線が、
一対の前記保持凸部で前記金属板の表面に保持されて、
前記接続スペースにおいて、前記リード線が前記金属板の表面に接続されてなり、
前記リード線が、
芯線の表面を絶縁被覆で被覆してなる被覆線で、前記絶縁被覆の一部が除去されて前記芯線の露出部を設けており、
前記芯線の露出部が前記金属板に接続されて、
前記絶縁被覆が、一対の前記保持凸部で定位置に保持されてなることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載するリード線の接続構造であって、
前記保持凸部が、
前記リード線が案内される挿入隙間と、
前記挿入隙間から案内される前記リード線を挟着して保持する保持隙間とを有し、
前記保持隙間の隙間が前記挿入隙間よりも狭く、
前記リード線が、前記保持隙間で挟着されることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項3】
請求項に記載するリード線の接続構造であって、
前記保持凸部が、
互いに接近して平行姿勢に配置されてなる一対の突出ロッドで、
前記突出ロッドの間に前記挿入隙間と前記保持隙間を設けてなることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載するリード線の接続構造であって、
一対の前記保持凸部が、
前記リード線の接続部を接続スペースにおいて直線状に保持することを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載するリード線の接続構造であって、
前記接続スペースの間隔(L)が、
リード線の太さの2倍よりも広くて、15倍よりも狭いことを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載するリード線の接続構造であって、
前記金属板の裏面に固定してなる保持体を備え、
前記保持体が、一対の前記保持凸部を有し、
前記保持体が前記金属板に固定されて、前記保持凸部を前記金属板の表面に設けてなることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項7】
請求項に記載するリード線の接続構造であって、
前記保持体が、前記金属板の裏面に積層して固定してなる樹脂成形体で、
前記樹脂成形体が、一対の前記保持凸部を一体的に成形して設けており、
前記金属板が、前記保持凸部を貫通して突出させる貫通穴を有し、
前記保持凸部が前記金属板を貫通して、前記保持凸部を前記金属板の表面に突出して設けてなることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項8】
請求項に記載するリード線の接続構造であって、
前記樹脂成形体が、
複数の電池を定位置に配置する電池ホルダーであることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載するリード線の接続構造であって、
前記金属板が、
電池の電極端子に接続されて電池を直列又は並列に接続してなるリード板であることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれかに記載するリード線の接続構造であって、
一対の前記保持凸部が、前記金属板をプレス加工して設けてなることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項11】
請求項10に記載するリード線の接続構造であって、
前記金属板が車両のシャシーで、
前記リード線が前記シャシーに接続してなるアース線であることを特徴とするリード線の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板にリード線を電気接続してなるリード線の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板にリード線を電気的に接続する構造は種々の用途で多く使用される。この接続構造は、リード線の先端を金属板にハンダ付け又は溶接し、あるいはリード線の先端に圧着端子をカシメ構造で連結して、この圧着端子を金属板にネジ止めしている。
【0003】
リード線の先端を金属板にハンダ付けし、あるいは溶接して電気接続するとき、銅線先端部の接続部を金属板表面の定位置に配置して保持することが大切である。銅線先端部と金属板との間に隙間があると、先端部を確実に接続できないからである。リード線の先端部を定位置に保持してハンダ付けする構造は開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2018/168982号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の接続構造は、図12に示すように、金属板91にリード線92を接続している。金属板91は、リード線92の固定部に、リード線92を係止して連結する係止連結部93を設けている。係止連結部93は、リード線92を案内する一対のスリット94を側縁に開口して設けている。リード線92は、途中をU曲して一対のスリット94に案内して定位置に保持し、芯線92aの先端を金属板92に溶接して固定している。
【0006】
以上の接続構造は、リード線の途中を定位置に保持できるが、この保持姿勢は、U曲されたリード線に対して、芯線や絶縁被覆の復元力が、芯線先端を金属板の表面から離す方向に作用するので、係止状態で芯線先端を確実に安定して金属板の表面に密接するのが難しく、このことが確実な接続を阻害する原因となる。また、芯線先端の離れた位置でリード線を保持するので、保持される状態にあってもリード線の芯線先端が移動しやすく、接続部に移動しない状態で配置するのが難しい弊害もある。
【0007】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的は、極めて簡単な構造としながら、リード線の接続部を、金属板の表面に接近させて、正確な位置に保持し、かつ移動し難い状態で保持して、金属板に確実に安定して電気接続できるリード線の接続構造を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、金属板に接続されたリード線を振動や衝撃で外れない状態に保持できるリード線の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリード線の接続構造は、金属板1と、この金属板1の表面に接続されてなるリード線2とを備えるリード線の接続構造であって、金属板1の表面に突出して、リード線2の少なくとも2カ所を挟着して定位置に配置する一対の保持凸部3を設けており、保持凸部3は、圧入されたリード線2を挟着して保持する保持隙間3aを有すると共に、一対の保持凸部3の間には、リード線2と金属板1との接続スペース4を設けており、リード線2が、一対の保持凸部3Aで金属板1の表面に保持されて、接続スペース4において、リード線2が金属板1の表面に接続されている。リード線は、芯線の表面を絶縁被覆で被覆してなる被覆線で、絶縁被覆の一部が除去されて芯線の露出部を設けており、芯線の露出部が金属板に接続されて、絶縁被覆が、一対の保持凸部で定位置に保持されている。
【発明の効果】
【0009】
以上のリード線の接続構造は、極めて簡単な構造としながら、リード線の接続部を、金属板の表面に接近させて、正確な位置に保持し、かつ移動し難い状態で保持して、金属板に確実に安定して電気接続できる。また、金属板に接続されたリード線が振動や衝撃で外れない状態に保持できる特徴も実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係るリード線の接続構造を使用する電源装置の概略平面図である。
図2図1に示す電源装置のリード線の接続構造を示す拡大断面斜視図である。
図3図2に示すリード線の接続構造の保持凸部を示す垂直横断面図である。
図4】リード線の接続構造の他の一例を示す拡大平面図である。
図5図4に示すリード線の接続構造の保持凸部を示す垂直横断面図である。
図6】本発明の実施形態2に係るリード線の接続構造を示す拡大斜視図である。
図7図6に示すリード線の接続構造の保持凸部を示す垂直横断面図である。
図8図6に示す接続構造でリード線を金属板に溶接する状態を示す垂直縦断面図である。
図9図6に示す接続構造でリード線を金属板に接続する状態を示す平面図である。
図10】リード線の接続構造の他の一例を示す垂直横断面図である。
図11図10に示すリード線の接続構造の垂直縦断面図である。
図12】従来のリード線の接続構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0012】
本発明の第1の発明のリード線の接続構造は、金属板と、この金属板の表面に接続されてなるリード線とを備えるリード線の接続構造であって、金属板の表面に突出して、リード線の少なくとも2カ所を挟着して定位置に配置する一対の保持凸部を設けており、保持凸部は、圧入されたリード線を挟着して保持する保持隙間を有すると共に、一対の保持凸部の間には、リード線と金属板との接続スペースを設けており、リード線が、一対の保持凸部で金属板の表面に保持されて、接続スペースにおいて、リード線が金属板の表面に接続されている。
【0013】
以上の接続構造は、一対の保持凸部で2カ所を挟着してリード線を保持し、2カ所を保持しているリード線を、保持部の間の接続スペースで金属板に接続するので、金属板に接続されるリード線の接続部を定位置に配置して接続できる。とくに、リード線が接続部の両側で保持されて金属板の表面に配置されるので、リード線を金属板に溶接し、またはハンダ付けするときにリード線が位置ずれするのを抑制できる。この状態で接続されるリード線は、金属板の表面に理想的な状態で接続される。また、金属板の2カ所を一対の保持凸部に圧入して保持して、接続部を定位置に配置するので、極めて簡単な構造としながら、リード線の接続部を、正確な位置に、移動し難い状態で、しかも金属板に接近する位置に配置でき、この状態で接続部を溶接し、又はハンダ付けして、確実に安定して電気接続できる特徴がある。
【0014】
両側が保持凸部で保持されたリード線の接続部は、図12に示す従来の接続構造のように、リード線の復元性で、芯線先端部が金属板から離れ、さらに位置ずれすることがなく、接続部を金属板の理想的な位置に配置して確実に接続できる。さらに、金属板に接続された状態においては、接続部の両側が保持凸部で金属板に連結された状態に維持されるので、振動や衝撃で接続部が金属板から離れるのを防止できる。このため、以上の接続構造は、接続部を確実に金属板に接続しながら、長期間にわたって安定して理想的な接続状態を維持できる特徴がある。
【0015】
本発明の第2の発明のリード線の接続構造は、保持凸部が、リード線が案内される挿入隙間と、挿入隙間から案内されるリード線を挟着して保持する保持隙間とを有し、保持隙間の隙間が挿入隙間よりも狭く、リード線を、保持隙間で挟着している。
【0016】
以上の電源装置は、リード線をスムーズに保持凸部に圧入しながら、より位置ずれしない状態に保持できる特徴がある。
【0017】
本発明の第3の発明のリード線の接続構造は、一対の保持凸部が、リード線の接続部を接続スペースにおいて直線状に保持している。
以上のリード線の接続構造は、リード線の接続部を直線状に配置して、金属板に確実に接続できる特徴がある。
【0018】
本発明の第4の発明のリード線の接続構造は、接続スペースの間隔(L)を、リード線の太さの2倍よりも広く、15倍よりも狭くしている。
以上のリード線の接続構造は、リード線の接続部を最適な状態に保持して、金属板の表面に確実に接続できる。
【0019】
本発明の第5の発明のリード線の接続構造は、保持凸部が、互いに接近して平行姿勢に配置されてなる一対の突出ロッドで、突出ロッドの間に挿入隙間と保持隙間を設けている。
以上のリード線の接続構造は、リード板をスムーズに挿入隙間から保持隙間に圧入してリード線を定位置に保持できる特徴がある。
【0020】
本発明の第6の発明のリード線の接続構造は、リード線が、芯線の表面を絶縁被覆で被覆してなる被覆線で、リード線は、絶縁被覆の一部が除去されて芯線の露出部を設けており、芯線の露出部が金属板に接続されて、絶縁被覆が、一対の保持凸部で定位置に保持されている。
以上のリード線の接続構造は、絶縁被覆のあるリード線をスムーズに保持隙間に圧入しながら、圧入された状態では、絶縁被覆の復元性でリード線が保持隙間から抜けないように保持できる特徴がある。
【0021】
本発明の第7の発明のリード線の接続構造は、金属板の裏面に固定してなる保持体を備え、保持体が、一対の保持凸部を有し、保持体が金属板に固定されて、保持凸部を金属板の表面に設けている。
以上のリード線の接続構造は、保持凸部と金属板とを別部材とするので、保持凸部を簡単かつ容易に多量生産して、金属板に配置して保持凸部を設けることができる特徴がある。
【0022】
本発明の第8の発明のリード線の接続構造は、保持体が、金属板の裏面に積層して固定してなる樹脂成形体で、樹脂成形体が、一対の保持凸部を一体的に成形して設けており、金属板が、保持凸部を貫通して突出させる貫通穴を有し、保持凸部が金属板を貫通して、保持凸部を金属板の表面に突出して設けている。
【0023】
以上のリード線の接続構造は、保持凸部を安価に多量生産できる樹脂成形体で構成し、さらに、樹脂成形体に設けた保持凸部を金属板に貫通させて、金属板の表面に保持凸部を設けるので、保持凸部を安価に多量生産できる樹脂成形体で構成しながら、保持凸部と金属板とを簡単に定位置に連結して、リード線を接続できる特徴がある。
【0024】
本発明の第9の発明のリード線の接続構造は、樹脂成形体を、複数の電池を定位置に配置する電池ホルダーとしている。
以上のリード線の接続構造は、電池を定位置に配置する電池ホルダーに保持凸部を設けて、リード線を定位置に配置するので、保持凸部を設けたために専用のパーツを設ける必要がなく、組み立てコストと部品コストの両方を低減して、安価にリード線を確実にリード板に接続できる特徴がある。
【0025】
本発明の第10の発明のリード線の接続構造は、金属板を、電池の電極端子に接続されて電池を直列又は並列に接続してなるリード板としている。
以上のリード線の接続構造は、リード板にリード線を簡単かつ容易に、しかも確実に電気接続できる特徴がある。
【0026】
本発明の第11の発明のリード線の接続構造は、金属板をプレス加工して一対の保持凸部を設けている。
以上のリード線の接続構造は、リード線を接続する金属板を加工して保持凸部を設けるので、保持凸部を設けるために専用の部材を必要とせず、部品コストと組み立てコストを低減して、リード線を確実にリード板に接続できる特徴がある。
【0027】
本発明の第12の発明のリード線の接続構造は、金属板が車両のシャシーで、リード線をシャシーに接続してなるアース線としている。
以上のリード線の接続構造は、車両のアース線を、小さい接触抵抗で、確実に安定して、しかも振動や衝撃で外れないように車両のシャシーに接続できる特徴がある。
【0028】
本発明の第13の発明のリード線の接続構造は、シャシーの表面に固定してなる保持体を備え、保持体が、一対の保持凸部を有し、保持体がシャシーに固定されて、保持凸部をシャシーの表面に設けている。
以上のリード線の接続構造は、保持凸部を別部材の保持体で設けて、これをシャシーに固定して保持凸部を設けるので、車両のシャシーを特別な形状に加工する必要がなく、全ての車両に簡単で確実にアース線を接続できる特徴がある。
【0029】
(実施の形態1)
本実施形態にかかるリード線の接続構造は、複数の電池を直列に接続している電源装置において、電池を直列に接続するリード板にリード線を接続する用途に適している。以下、電池の電極に接続しているリード板を金属板とし、リード板に接続されて電池の電圧を検出する電圧検出線をリード線とする電源装置を実施形態として詳述する。
【0030】
図1の概略平面図に示す電源装置10は、電池11を直列に接続しているリード板1Aの金属板1に、電池11の電圧を検出して電圧検出回路15に入力する電圧検出線2Aであるリード線2を接続している。この電源装置10は、複数の電池11を金属板1で並列に接続して電池のコアモジュール12とし、さらに複数のコアモジュール12を金属板1で直列に接続して電池ブロック13として、電池ブロック13を電池ケース14に収納している。リード線2は、一端を電池11の電極に固定している金属板1に接続して、他端を電圧検出回路15の入力側に接続して、電池11の電圧を電圧検出回路15に入力する。
【0031】
リード線2と金属板1との接続領域には、図2に示すように、金属板1の表面に突出する一対の保持凸部3を設けている。一対の保持凸部3は、リード線2の2カ所を挟着して定位置に配置する。保持凸部3は、リード線2を挟着する保持隙間3aを有し、保持隙間3aにリード線2を圧入して挟着する。一対の保持凸部3の間に、リード線2と金属板1を接続する接続スペース4を設けている。接続スペース4に配置されるリード線2は、両側の2カ所が保持凸部3で挟着される。接続スペース4のリード線2は、両側が保持凸部3で挟着されて、位置ずれすることなく金属板1の表面に配置される。この状態で、リード線2の接続部2xは金属板1の表面に溶接され、またはハンダ付けされる。リード線2は、絶縁被覆2bの中心に芯線2aを設けたビニール線や、銅線等の芯線の表面に薄い絶縁皮膜を設けたエナメル線、あるいは表面に絶縁被覆のない裸銅線等が使用できる。エナメル線は、薄いワニスの絶縁皮膜を焼き付けしたもので、絶縁皮膜にはポリビニルホルマール、ポリウレタン、ポアミドイミド、ポリエステル、ナイロン等が使用される。
【0032】
保持凸部3は、リード線2を速やかに案内する挿入隙間3bと、挿入隙間3bに案内されるリード線2を挟着して確実に保持する保持隙間3aとを設けている。保持凸部3は、保持隙間3aの間隔を挿入隙間3bよりも狭くして、リード線2をスムーズに保持隙間3aに圧入できる。挿入隙間3bは、好ましくはリード線2の直径にほぼ等しく、あるいは僅かに広くしてスムーズに案内できる形状とし、保持隙間3aはリード線2の直径よりも僅かに狭くして強固に挟着できるようにする。
【0033】
図2に示す一対の保持凸部3は、リード線2の2カ所を挟着して、接続部2xを接続スペース4で直線状に配置する。この構造は、リード線2の接続部2xを最も位置ずれしない状態で、しかも変形し難い状態に保持する。このため、接続部2xに溶接電極を押圧して溶接するときに接続部2xが位置ずれすることがなく、またハンダ付けするときにも接続部2xが位置ずれせず、理想的な状態で溶接し、またハンダ付けして確実に接続できる。
【0034】
一対の保持凸部3の間隔(L)、すなわち接続スペース4は、狭くしてリード線2を接続部2xで位置ずれしないように保持でき、長くして溶接やハンダ付けを容易にできる。ただ、接続スペース4の間隔(L)が狭すぎると、溶接やハンダ付け作業が難しくなり、広すぎると接続部2xの位置ずれを抑制しての保持が難しくなるので、この間隔(L)は、たとえばリード線2の太さの2倍よりも広くて、15倍よりも狭くする。したがって、接続スペース4の間隔(L)は、たとえば、接続されるリード線2の直径を1mmないし2mmにおいて、4mmよりも広くて、30mmよりも狭くする。
【0035】
図2及び図3の保持凸部3は、互いに接近して平行姿勢に配置している一対の突出ロッド3Aで構成され、一対の突出ロッド3Aの間に保持隙間3aを設けている。この図の保持凸部3は、突出ロッド3Aを円柱状として、リード線2をスムーズに圧入して挟着できるようにしている。円柱状の突出ロッド3Aは、先端に向かって僅かに細くなるテーパー状として、リード線2を両側で挟んで固定できる隙間としている。
【0036】
ビニール線を挟着する保持凸部3は、図4の拡大平面図に示すように、保持隙間3aに圧入されるリード線2の絶縁被覆2bを押し潰して確実に挟着できる。ビニール線は、絶縁被覆2bが挟着されて変形する。したがって、ビニール線を挟着する保持凸部3は、図5の断面図に示すように、全体を同じ太さとして、絶縁被覆2bを変形させてスムーズに保持隙間3aに圧入できる。ただ、保持凸部3は、保持隙間3aよりも広い挿入隙間3bを突出ロッド3Aの先端部に設けて、よりスムーズに圧入できる形状とすることもできる。さらに、保持凸部3は、突出ロッド3Aを角柱状として、リード線2を広い面積で押圧して挟着することもできる。
【0037】
ビニール線やエナメル線のリード線2は、絶縁被覆2bの途中の一部を除去して芯線2aを露出させて、芯線2aの露出部を接続部2xとして金属板1に接続する。リード線2の保持隙間3aに圧入される領域は、芯線2aを露出させることなく、絶縁被覆2bを保持凸部3で挟着して定位置に配置する。したがって、保持隙間3aはリード線2の絶縁被覆2bの直径よりも僅かに狭くしている。ビニール線は、絶縁被覆2bが保持隙間3aに圧入されると、絶縁被覆2bが保持凸部3で押し潰してされて変形する。変形した絶縁被覆2bは、復元力で保持凸部3を押圧して位置ずれを阻止する。したがって、ビニール線は、絶縁被覆2bを変形させてスムーズに保持隙間3aに圧入しながら、圧入された状態で、接続部2xの位置ずれをより効果的に防止して、定位置に配置できる。
【0038】
図2図3のリード線2の接続構造は、金属板1と保持凸部3とを別部材で構成している。保持凸部3は、金属板1の裏面に固定している保持体5に設けて、保持体5を金属板1に固定して、保持凸部3を金属板1の表面に設けている。さらに、図のリード線2の接続構造は、保持体5を金属板1の裏面に積層して固定している樹脂成形体とし、この樹脂成形体を電池を定位置に配置している電池ホルダー5Aとしている。樹脂成形体の電池ホルダー5Aは、一対の保持凸部3を一体的に成形して設けている。金属板1は、保持凸部3を貫通して突出させる貫通穴1aを設けている。保持凸部3は金属板1の貫通穴1aに挿通されて、保持凸部3を金属板1の表面に突出している。
【0039】
保持体5を電池ホルダー5Aとして、保持凸部3を電池ホルダー5Aに一体的に成形する構造は、保持凸部3を設けるために専用の部材を必要としない。また、電池ホルダー5Aを成形する金型で保持凸部3を成形するので、保持凸部3を設けるためのコストを削減しながら、保持凸部3を正確な位置に配置できる。電池ホルダー5Aは、電池の電極に接続するリード板1Aの金属板1を嵌合構造で定位置に配置するので、保持凸部3を電池ホルダー5Aに一体的に成形して、保持凸部3を金属板1の貫通穴1aに挿入する構造は、金属板1と保持凸部3を別部材としながら、両者を相対位置をずらせることなく正確な位置に配置してリード線2を金属板1に確実に接続できる。さらに、複数の電池11を備える電源装置10は、電池11を直列に接続するために複数の金属板1と、複数の金属板1に接続する複数のリード線2を備えるので、簡単で確実にリード板1Aを金属板1に接続できる構造は、この種の電源装置に理想的な接続構造を実現する。とくに、多数の金属板1とリード線2を備える電源装置10に最適である。それは、多数のリード板1Aを接続するにもかかわらず、リード線2を定位置に配置するためのコストを削減でき、しかもリード線2の接続部2xを正確にリード板1Aの定位置に接続できるからである。
【0040】
電池ホルダー5Aに設けた保持凸部3で、金属板1の表面の正確な位置に配置されたリード線2の接続部2xは、溶接電極を押圧して溶接し、あるいはハンダ付けして確実に金属板1に接続できる。さらに、接続された状態では、リード線2が接続部2xの両側で定位置に保持されるので、リード線2とリード板1Aとの接続が振動や衝撃で外れることがなく、長期間にわたってリード線2を確実にリード板1Aに接続できる特徴がある。さらにまた、リード板1Aとリード線2が理想的な状態で接続されるので、両者を理想的な接続状態、すなわち低抵抗な状態で確実に安定して接続できるので、リード線2を電池11の電圧検出線2Aに利用する用途において、電池11の電圧を長期間にわたって正確に検出できる特徴を実現する。このことは、電源装置10にとって極めて大切な特徴である。それは、電池11の電圧を検出して電池11の充放電をコントロールする電源装置10は、電池11の電圧が正常に検出できない状態では、電池11の充放電を禁止して安全性を確保するので、リード線2の接続不良は、電源装置10を使用できなくするからである。
【0041】
金属板1を、電池11を接続するリード板1Aとして、リード線2を電圧検出線2Aとする電源装置10は、図1に示すように、電圧検出回路15と制御部16と充放電スイッチ(図示せず)を備える。電圧検出回路15は、リード線2と金属板1を介して各電池11の正負の電極に接続されて、電池11の電圧を検出する。電圧検出回路15は、各電池11の電圧を検出すると共に、検出された各電池11の電圧を制御部16に出力している。制御部16は、充放電スイッチを制御して、電池11の充放電をコントロールする。充放電スイッチは、互いに直接に接続された電池11の出力側であって、出力端子(図示せず)との間に直列に接続されている。充放電スイッチは、例えば、FETやトランジスタ等の半導体スイッチング素子である。充放電スイッチは、制御部16によってオンオフが制御される。
【0042】
制御部16は、各電池11の過充電と過放電を防止するように、充放電の電流をコントロールする。たとえば、充電状態において、何れかの電池の電圧が最大電圧まで上昇すると充電電流を遮断し、あるいは制限して過充電を防止し、放電状態において、何れかの電池の電圧が最適電圧まで低下すると、放電電流を遮断し、あるいは制限して過放電を防止する。
【0043】
電圧検出回路15は、均等化回路を設けて、各電池の電圧のアンバランスを解消することもできる。均等化回路は、電池の電圧を検出し、検出する電圧を均等化して電圧のアンバランスを解消する。均等化回路は、各々の電池の電圧を検出して、電圧の高い電池を放電してアンバランスを解消する。
【0044】
以上の実施形態は、金属板1をリード板1Aとして、リード線2を電圧検出線2Aとする電源装置10を示しているで、本発明のリード線の接続構造は、金属板1とリード線2を以上に特定するものでない。たとえば、金属板を車両のシャシーとして、リード線をシャシーに接続するアース線とすることもできる。
【0045】
この用途は、図6図7に示すように、シャシー1Bである金属板1をプレス加工して一対の保持凸部3を設けている。図の保持凸部3は、互いに接近して突出する一対の凸部3Bで構成され、一対の凸部3Bの間に保持隙間3aを設けている。図の凸部3Bは、先端に向かって次第に断面積が小さくなる略円錐台形状であって、先端側に向かって間隔を広くして挿入隙間3bを形成している。各々の保持凸部3は、アース線2Bとなるリード線2の2カ所を保持隙間3aで挟着して保持している。リード線2は、一対の保持凸部3の間に設けた接続スペース4に配置される領域を接続部2xとして、芯線2aを露出させている。芯線2aの露出部は、絶縁被覆2bを除去して銅線を露出させている。保持凸部3は、絶縁被覆2bを挟着してリード線2を挟着する。絶縁被覆2bは、保持凸部3に挟着されて変形する絶縁材、好ましくは絶縁プラスチック被覆である。リード線2は、芯線2aの露出部を、一対の保持凸部3の間でシャシー1Bの表面に配置される。芯線2aは、図8に示すように、溶接電極20でシャシー1Bに押圧されて溶接される。この溶接は、図9の平面図に示すように、第1の電極20Aで芯線2aを金属板1に押圧し、第2の電極20Bを金属板1に押圧して、第1の電極20Aと第2の電極20Bの間に通電して、芯線2aを金属板1に溶接する。絶縁被覆2bを保持凸部3で金属板1の表面に配置されるリード線2は、接続部2xの芯線2aと金属板1の表面との間に、絶縁被覆2bの膜厚に相当する微細な隙間ができるが、第1の電極20Aで押圧されることで、金属板1に密着して溶接される。
【0046】
また、芯線2aがシャシーに接触し、あるいは接近する状態でハンダ付けして接続される。シャシー1Bに接続されてアース線2Bは、芯線2aの両側が保持凸部3に挟着されて、定位置に配置される。したがって、アース線2Bは、溶接やハンダ付けでシャシー1Bの表面に接続され、さらに一対の保持凸部3でシャシー1Bの定位置に保持される。アース線2Bは、芯線2aがシャシー1Bの表面に配置されて溶接され、あるいはハンダ付けされるので、アース線2Bとシャシー1Bは、小さい電気抵抗で接続され、しかも長期間にわたって振動や衝撃で外れない状態で連結される。したがって、金属板1を車両のシャシー1Bとし、リード線2をアース線2Bとする車両の接続構造で理想的な特性を実現する。
【0047】
さらに、図10図11に示す接続構造は、金属板1を車両のシャシー1Bとし、リード線2をアース線2Bとする実施形態で、保持凸部3を金属板1と別部材の保持体5としている。保持体5は、図10図11の断面図に示すように、一対の柱状凸部3Cらなる保持凸部3を金属板1に設けた貫通穴1bに挿入して、金属板1の定位置に配置している。保持体5は、金属板1の裏面に積層されるベース部5Bと一対の柱状凸部3Cとを一体的に成形している。各柱状凸部3Cは、金属板1の貫通穴1bに挿入して抜けないように、付け根には側面に突出する弾性アーム3cを一体的に成形して設けている。図の保持凸部3は、両側に弾性アーム3cを設けている。弾性アーム3cは、貫通穴1bに挿入されるときに、細くなるように弾性変形して、柱状凸部3Cを貫通穴1bに挿通させる。貫通穴1bを通過した柱状凸部3Cは、弾性アーム3cが復元して、金属板1の表面に係止されて抜けるのが防止される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のリード線の接続構造は、金属板にリード線を溶接やハンダ付け等により電気接続する接続構造であって、複数の電池を備える電源装置の電圧検出線をリード板に接続する用途や、自動車のシャシーにアース線を接続する用途のように、種々の金属板に対してリード線を接続するあらゆる用途に採用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…金属板
1A…リード板
1B…シャシー
1a、1b…貫通穴
2…リード線
2A…電圧検出線
2B…アース線
2a…芯線
2b…絶縁被覆
2x…接続部
3…保持凸部
3A…突出ロッド
3B…凸部
3C…柱状凸部
3a…保持隙間
3b…挿入隙間
3c…弾性アーム
4…接続スペース
5…保持体
5A…電池ホルダー
5B…ベース部
10…電源装置
11…電池
12…コアモジュール
13…電池ブロック
14…電池ケース
15…電圧検出回路
16…制御部
20…溶接電極
20A…第1の電極
20B…第2の電極
91…金属板
92…リード線
92a…芯線
93…係止連結部
94…スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12