IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20231116BHJP
   A61F 2/04 20130101ALI20231116BHJP
【FI】
A61B17/11
A61F2/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021509679
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014298
(87)【国際公開番号】W WO2020196887
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2019065058
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 直希
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 美穂
(72)【発明者】
【氏名】藤井 杏梨
(72)【発明者】
【氏名】内富 研介
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-015966(JP,A)
【文献】特開2013-123643(JP,A)
【文献】特開2006-255411(JP,A)
【文献】特開2013-154166(JP,A)
【文献】特表2009-508610(JP,A)
【文献】特表2016-540615(JP,A)
【文献】特表2013-526342(JP,A)
【文献】特表2008-516669(JP,A)
【文献】特表2007-505708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0214201(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0035629(US,A1)
【文献】米国特許第05534010(US,A)
【文献】特表2003-533326(JP,A)
【文献】特表2013-525070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/11
A61F 2/04
A61B 17/08
A61B 17/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体器官の一方の被接合部位の生体組織と前記生体器官の他方の被接合部位の生体組織の癒合を促進する癒合促進部を備える癒合促進シートと、
前記癒合促進シートを接合対象となる前記一方の被接合部位の切断面よりも外方側に配置して前記一方の被接合部位に引っ掛けて保持可能とする保持部と、を有し、
前記保持部は、前記一方の被接合部位と前記他方の被接合部位とが接合される際、前記癒合促進部を、前記切断面に接触させつつ、前記一方の被接合部位と前記他方の被接合部位との間に挟み込まれた状態で、弾性力によって前記癒合促進シートを前記生体器官に対して保持する、医療デバイス。
【請求項2】
前記保持部は、前記癒合促進シートに対して一体的に取り付けられている、請求項1記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記保持部は、前記癒合促進シートの周方向に沿う一部のみに配置されている、請求項1または請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
生体器官の一方の被接合部位の生体組織と前記生体器官の他方の被接合部位の生体組織の癒合を促進する癒合促進部を備える癒合促進シートと、
前記癒合促進シートを接合対象となる前記一方の被接合部位の切断面よりも外方側に配置して前記一方の被接合部位に引っ掛けて保持可能とする保持部と、
前記保持部が配置された位置と対向する側へ向けて前記癒合促進シートの牽引操作を可能にする牽引部と、を有し、
前記保持部は、前記一方の被接合部位と前記他方の被接合部位とが接合される際、前記癒合促進部を、前記切断面に接触させつつ、前記一方の被接合部位と前記他方の被接合部位との間に挟み込まれた状態で保持する、医療デバイス。
【請求項5】
前記保持部が配置された位置と対向する側へ向けて前記癒合促進シートの牽引操作を可能にする牽引部を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記癒合促進シートは、生分解性樹脂からなる繊維を用いたメッシュ形状のシートである、請求項4または請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記牽引部は、前記癒合促進シートに接続された紐状の部材または帯状の部材である、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、生体器官を外科的手術により接合する手技(例えば、消化管の吻合術)が知られている。上記のような手技が行われた場合、生体器官同士が接合された接合部における癒合の遅延が生じないことが術後の予後決定因子として重要であることも知られている。
【0003】
生体器官を接合する手技では種々の方法や医療器具が用いられるが、例えば、生分解性の縫合糸により生体器官を縫合する方法や、ステープラーによる吻合を行う機械式の接合装置(特許文献1を参照)を利用する方法が提案されている。特に、機械式の接合装置を利用して吻合術を行う場合、縫合糸を用いた方法と比較して接合部における生体器官同士の接合力を高めることができるため、縫合不全のリスクを低減させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2007-505708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接合部における癒合の進行の程度は、患者の接合対象部位(被接合部位)における生体組織の状態等にも依存する。そのため、例えば、特許文献1に記載されているような接合装置を使用した場合においても、患者の生体組織の状態如何によっては、縫合不全のリスクを十分に低減させることができない可能性もある。
【0006】
そこで本発明は、外科手術等の術後における縫合不全のリスクを低減させることができる医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る医療デバイスは、生体器官の一方の被接合部位の生体組織と前記生体器官の他方の被接合部位の生体組織の癒合を促進する癒合促進部を備える癒合促進シートと、前記癒合促進シートを接合対象となる前記一方の被接合部位の切断面よりも外方側に配置して前記一方の被接合部位に引っ掛けて保持可能とする保持部と、を有し、前記保持部は、前記一方の被接合部位と前記他方の被接合部位が接合される際、前記癒合促進部を、前記切断面に接触させつつ、前記一方の被接合部位と前記他方の被接合部位との間に挟み込まれた状態で、弾性力によって前記癒合促進シートを前記生体器官に対して保持する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療デバイスによれば、接合対象となる生体器官の被接合部位の間に癒合促進シートを挟み込ませることにより、生体器官の生体組織の癒合を促進することができる。また、術者は、保持部により癒合促進シートを接合対象となる生体器官の一部に引っ掛けて保持することができる。そのため、術者は、手技を実施している間、癒合促進シートが生体器官から脱落することを抑制できる。したがって、生体器官の縫合不全のリスクを効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の医療デバイスの一形態を示す斜視図である。
図1B図1Aの医療デバイスの使用例を説明するための図である。
図2図1Aの2A-2A線に沿う断面の一部を拡大して示す断面図である。
図3A】本発明の医療デバイスの変形例1を示す斜視図である。
図3B図3Aの医療デバイスの使用例を説明するための図である。
図4A】本発明の医療デバイスの変形例2を示す斜視図である。
図4B図4Aの医療デバイスの使用例を説明するための図である。
図5】本発明の医療デバイスの変形例3を説明するための図である。
図6】医療デバイスを用いた処置方法の各手順を示すフローチャートである。
図7】処置方法の実施形態(膵実質-空腸吻合術)の手順を示すフローチャートである。
図8】膵実質-空腸吻合術を説明するための模式的な斜視図である。
図9】膵実質-空腸吻合術を説明するための模式的な斜視図である。
図10】膵実質-空腸吻合術を説明するための模式的な斜視図である。
図11】膵実質-空腸吻合術を説明するための模式的な斜視図である。
図12】膵実質-空腸吻合術を説明するための模式的な断面図である。
図13】膵実質-空腸吻合術を説明するための模式的な斜視図である。
図14】膵実質-空腸吻合術を説明するための模式的な斜視図である。
図15】膵実質-空腸吻合術を説明するための模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張され、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1Aは、医療デバイス100の一形態を示す斜視図である。図1Bは、図1Aの医療デバイス100の使用例を示す図であり、膵実質B1の切断面B1aを正面から視た図である。図2は、図1Aの2A-2A線に沿う断面の一部を拡大して示す断面図である。
【0012】
<医療デバイス100>
図1Aに示すように、医療デバイス100は、接合対象となる生体器官の間に配置される癒合促進シート110と、癒合促進シート110を接合対象となる生体器官(膵実質B1)に引っ掛けて保持可能とする保持部120と、を有する。
【0013】
医療デバイス100は、図8図15に示すように、所定の生体器官同士を接合する手技(例えば、消化管の吻合術)に適用することができる。後述するように、本明細書の説明では、医療デバイス100を使用した手技例として膵実質-空腸吻合術を説明する。
【0014】
<癒合促進シート110>
図1Aに示すように、癒合促進シート110は、複数の貫通孔112を有する生分解性シートから形成された生体組織の癒合を促進する癒合促進部110Aを有する。癒合促進部110Aは、癒合促進シート110の面方向の中心部Cを含む所定の範囲に形成されている。
【0015】
癒合促進シート110は、癒合促進部110Aよりも癒合促進シート110の面方向の外方側に設けられた枠部110Bを有する。枠部110Bは、癒合促進部110Aの周囲を囲むように、癒合促進シート110の外周縁Oを含む一定の範囲に形成されている。本実施形態では、枠部110Bには貫通孔112が形成されていない。
【0016】
<癒合促進部110A>
癒合促進部110Aに形成された貫通孔112は、図1Aに示すように、癒合促進シート110の面方向において規則的かつ周期的に設けられている。ただし、各貫通孔112は、癒合促進シート110の面方向の各部においてランダムに設けられていてもよい。
【0017】
各貫通孔112は、図2に示すように、癒合促進シート110の厚み方向(図2の上下方向)に沿って表面113と裏面114との間で略垂直に延びている。なお、各貫通孔112は、癒合促進シート110の厚み方向に沿う断面において、表面113と裏面114との間でジグザグ状に屈曲していたり、湾曲していたりしてもよい。
【0018】
各貫通孔112は、略円形の平面形状(癒合促進シート110の表面113又は癒合促進シート110の裏面114を平面視した際の形状)を有する。ただし、各貫通孔112の平面形状は、特に限定されず、例えば、楕円形や多角形(矩形や三角形等)であってもよい。また、貫通孔112ごとに平面形状や断面形状が異なっていてもよい。
【0019】
癒合促進シート110は、略円形の平面形状を有する。ただし、癒合促進シート110の平面形状は、特に限定されず、例えば、楕円形や多角形(矩形や三角形等)であってもよい。
【0020】
癒合促進シート110の厚み(図2に示す寸法T)は特に制限されないが、好ましくは0.05~0.3mmであり、より好ましくは0.1~0.2mmである。癒合促進シート110の厚みが0.05mm以上である場合(特に0.1mm以上である場合)、癒合促進シート110の取り扱い時に癒合促進部110Aが破損しない程度の強度を備えさせることができる。一方、癒合促進シート110の厚みが0.3mm以下である場合(特に0.2mm以下である場合)、癒合促進シート110が適用される生体組織に癒合促進部110Aが密着して生体組織に追随するのに十分な柔軟性を備えさせることができる。
【0021】
癒合促進部110Aは、貫通孔112のピッチP(図2に示す距離Pであり、隣接する貫通孔112の間の距離)に対する貫通孔112の孔径D(図2に示す距離D)の比の値が、0.25以上40未満であることが好ましい。なお、貫通孔112の平面形状が真円である場合、貫通孔112の孔径Dは真円の直径に等しくなる。一方、貫通孔112の平面形状が真円ではない場合には、貫通孔112の開口部(貫通孔112において表面113又は裏面114に面した部分)の面積と同じ面積を有する真円の直径(円相当径)を当該貫通孔112の孔径Dとすることができる。
【0022】
癒合促進部110Aは、複数の貫通孔112を有するため、各貫通孔112に対応する孔径Dの値が複数存在する。そこで、本実施形態では、上述した比の値を算出するにあたっては、複数の貫通孔112にそれぞれ対応する孔径Dの値の2点以上の算術平均値を孔径Dの代表値として用いるものとする。一方、複数の貫通孔112のピッチPは、2つの貫通孔112の開口部同士の最短距離で定義する。ただし、ピッチPの値についても隣接する貫通孔112の組み合わせに対応するピッチPの値が複数存在する。したがって、本実施形態では、上述した比の値を算出するにあたっては、隣接する貫通孔112の組み合わせにそれぞれ対応するピッチPの値の2点以上の算術平均値をピッチPの代表値として用いるものとする。
【0023】
なお、上記の貫通孔112のピッチP、孔径D、ピッチPに対する孔径Dの比等は、一例であり、これに限定されることはない。
【0024】
癒合促進部110Aは、生分解性の材料で構成することができる。癒合促進部110Aの構成材料について特に制限はなく、例えば、生分解性樹脂が挙げられる。生分解性樹脂としては、例えば、特表2011-528275号公報、特表2008-514719号公報、国際公報第2008-1952号、特表2004-509205号公報等に記載されるものなどの公知の生分解性(共)重合体が使用できる。具体的には、(1)脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体;(2)上記(1)を構成する一以上の単量体から構成される共重合体などが挙げられる。すなわち、生分解性シートは、脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体、ならびに前記重合体を構成する一以上の単量体から構成される共重合体からなる群より選択される少なくとも一種の生分解性樹脂を含むことが好ましい。
【0025】
癒合促進部110Aの製造方法は特に限定されないが、例えば、上述した生分解性樹脂からなる繊維を作製し、当該繊維を用いてメッシュ形状のシートを製造する方法が挙げられる。生分解性樹脂からなる繊維を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、エレクトロスピニング法(電界紡糸法・静電紡糸法)や、メルトブロー法等が挙げられる。癒合促進部110Aは、上記の方法のうち1種のみを選択して用いてもよいし、2種以上を選択し適宜組み合わせてもよい。なお、癒合促進部110Aの製造方法のさらに別の例として、上述した生分解性樹脂からなる繊維を常法に従って紡糸し、得られた繊維をメッシュ状に編むことによって本発明に係る生分解性シートを製造してもよい。
【0026】
癒合促進部110Aは、癒合促進部110Aを構成する生分解性樹脂等の構成材料によって生体反応を惹起させる。癒合促進部110Aは、この作用により、フィブリン等の生体成分の発現を誘導する。このようにして誘導された生体成分は、癒合促進部110Aの貫通孔112を貫通するようにして集積することで、癒合を促進することができる。したがって、接合対象となる生体器官同士の間に癒合促進部110Aを配置することにより、上記のメカニズムによる癒合の促進が生じる。
【0027】
なお、癒合促進部110Aの材質は、生体器官の癒合を促進させることが可能であれば、生分解性でなくてもよい。また、癒合促進部110Aは、生体器官の癒合を促進させることが可能であれば、材質に関わらず、貫通孔112が形成されていなくてもよい。
【0028】
<枠部110B>
図1Aに示すように、枠部110Bは、癒合促進部110Aの周囲を取り囲むように癒合促進シート110に形成されている。枠部110Bは、外力付加時の変形が容易に生じないように、癒合促進部110Aよりも大きな剛性を備えるように形成されていることが好ましい。枠部110Bは、例えば、貫通孔112のような孔部が形成されていない生分解性シート、癒合促進部110Aよりも高い剛性を備える樹脂製のシートや不織布で構成することができる。
【0029】
また、癒合促進部110Aの構成材料となる生分解性シートの外周縁Oを含む一定の領域に貫通孔112を形成しないことにより、癒合促進シート110に枠部110Bを設けてもよい。また、癒合促進部110Aの構成材料となる生分解性シートの外周縁Oを含む一定の領域に貫通孔112を形成した後、当該領域のみを厚み方向に圧縮したり加熱したりして、貫通孔112を押し潰すことにより、生分解性シートの構成材料が密に集合した部分を形成して、当該部分を枠部110Bとしてもよい。
【0030】
また、枠部110Bは、その少なくとも一部に、生体器官との癒着を抑制する抑制部を備えていてもよい。抑制部を構成する材料としては、生体器官との癒着を抑制できる限りにおいて特に限定されないが、例えば、不織布を用いることができる。また、抑制部は、癒合促進部110Aと同様に、生分解性の材料で構成することができる。
【0031】
なお、癒合促進シート110は、癒合促進シート110全体が癒合促進部110Aで構成されていてもよい。つまり、癒合促進シート110には枠部110Bが設けられていなくてもよい。
【0032】
<保持部120>
癒合促進シート110の枠部110Bには保持部120が配置されている。
【0033】
保持部120は、一端部121aと、他端部121bと、一端部121aと他端部121bの間に延びる中間部122と、を有する。本実施形態では、保持部120は、略C字状の平面形状を有する。保持部120は、癒合促進シート110の周方向に沿う一部のみに配置されている。
【0034】
保持部120は、癒合促進シート110に対して一体的に取り付けられている。保持部120は、例えば、癒合促進シート110の表面113、裏面114、または癒合促進シート110の内部に配置及び固定することができる。固定は、例えば、接着剤や癒合促進シート110の成形時に保持部120を一体成形することにより構成することができる。
【0035】
保持部120は、弾性力によって癒合促進シート110を膵実質B1に対して保持するように構成することができる。保持部120を構成する材料は特に限定されないが、例えば、チタンとニッケルの合金などの超弾性合金によって構成することができる。ただし、弾性力を付与可能なその他の金属材料や樹脂材料を使用してもよい。
【0036】
また、保持部120は、例えば、癒合促進シート110と分離可能に構成してもよい。このように構成する場合、癒合促進シート110を膵実質B1の一部を覆うように配置した状態で、癒合促進シート110の外表面側から保持部120を取り付けることにより、保持部120により癒合促進シート110を膵実質B1に対して保持させることができる。
【0037】
また、保持部120の形状、大きさ、癒合促進シート110に取り付ける位置等は特に限定されない。
【0038】
<牽引部140>
図1Aに示すように、医療デバイス100は、保持部120が配置された位置と対向する側へ向けて癒合促進シート110の牽引操作を可能にする牽引部140を有する。「保持部120が配置された位置と対向する側」とは、癒合促進シート110において中心部Cを間に挟んで対向する位置である。
【0039】
牽引部140は、癒合促進シート110に接続された紐状の部材または帯状の部材で構成することができる。なお、帯状の部材とは、一定の幅を有するものであり、例えば、断面形状に長辺と短辺が形成されたものを挙げることができる。本実施形態では、所定の長さを有する紐状の部材を枠部110Bに接続している。なお、図1Aでは、牽引部140の一部を保持部120に近接させて配置した形態を示しているが、牽引部140の具体的な配置形態は特に限定されない。
【0040】
牽引部140は、例えば、塩化ビニル、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、スチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン共重合体(SEPS)などの熱可塑性エラストマー、ナイロン、PETなどの熱可塑性樹脂、又はゴム、シリコーンエラストマー、繊維素材、SUS線、銅線、チタン線、ナイチノール線などの金属等で構成することができる。また、牽引部140は、例えば、癒合促進部110Aと同様の材料で構成することもできる。癒合促進部110Aと同様の材料で構成することにより、癒合促進部110Aと同一の製造現場で製造することが可能になるため、製造作業が容易なものとなる。
【0041】
なお、牽引部140の設置は省略してもよい。また、牽引部140を癒合促進シート110に配置する位置も特に限定されない。また、牽引部140の長さ、断面形状、太さ、設置数等も特に限定されない。
【0042】
図1Bには、保持部120により癒合促進シート110を膵実質B1に引っ掛けて保持した際の正面図(膵実質B1の切断面B1a側から見た正面図)を示している。術者は、例えば、保持部120を膵実質B1の後壁B1c(膵実質B1の周方向の背側の部分)に引っ掛けるように配置することができる。これにより、癒合促進シート110にシワなどが生じることを防止しつつ、膵実質B1に対して癒合促進部110Aを保持させることができる。特に、保持部120が弾性力を付与可能な材料で構成されている場合、膵実質B1に対して保持部120を嵌め込むように配置することにより、癒合促進シート110の脱落をより確実に防止することが可能になる。また、術者は、膵実質B1の前壁B1d(膵実質B1の周方向の腹側の部分)側で牽引部140を牽引することにより、癒合促進シート110を引き伸ばすことができる。これにより、癒合促進シート110にシワが生じることを防止することができる。なお、術者は、膵実質B1の前壁B1d側で牽引部140を結ぶことにより、術者が牽引部140から手指を離した状態においても、牽引部140が癒合促進シート110に対して牽引力を付与した状態を維持することが可能になる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る医療デバイス100は、生体組織の癒合を促進する癒合促進部110Aを備える癒合促進シート110と、癒合促進シート110を接合対象となる生体器官に引っ掛けて保持可能とする保持部120と、を有する。
【0044】
上記のように構成された医療デバイス100によれば、接合対象となる生体器官の被接合部位の間に癒合促進シート110を挟み込ませることにより、生体器官の生体組織の癒合を促進することができる。また、術者は、保持部120により癒合促進シート110を接合対象となる生体器官(例えば、膵実質B1)の一部に引っ掛けて保持することができる。そのため、術者は、手技を実施している間、癒合促進シート110が生体器官から脱落することを抑制できる。したがって、生体器官の縫合不全のリスクを効果的に低減させることができる。
【0045】
また、保持部120は、弾性力によって癒合促進シート110を生体器官に対して保持可能に構成されている。そのため、術者は、保持部120の弾性力によって癒合促進シート110をより確実に生体器官に対して保持することが可能になる。
【0046】
また、保持部120は、癒合促進シート110に対して一体的に取り付けられている。したがって、癒合促進シート110から保持部120が分離されることを防止でき、癒合促進シート110を生体器官に対して保持した状態をより安定的に維持することができる。
【0047】
また、保持部120は、癒合促進シート110の周方向に沿う一部のみに配置されている。そのため、生体器官の外周面の一部(例えば、膵実質B1の後壁B1cの一部)に対して保持部120を引っ掛けるように配置することで、癒合促進シート110にシワなどが生じることを防止しつつ、生体器官に適切に癒合促進部110Aを配置することができる。
【0048】
医療デバイス100は、保持部120が配置された位置と対向する側へ向けて癒合促進シート110の牽引操作を可能にする牽引部140を有する。そのため、術者は、牽引部140を牽引することにより、癒合促進シート110にシワが生じることをより確実に防止することができる。
【0049】
また、牽引部140は、癒合促進シート110に接続された紐状の部材または帯状の部材で構成することができる。術者は、牽引部140を手指で把持等して牽引することにより、癒合促進シート110にシワが生じることを防止することができる。
【0050】
また、枠部110Bは、生体器官との癒着を抑制する抑制部により、接合される生体器官以外の生体器官に、枠部110Bが癒着することを防止することができる。
【0051】
次に、上述した実施形態の変形例を説明する。変形例の説明では、前述した実施形態で既に説明した構成部材等についての詳細な説明は省略する。また、変形例の説明で特に説明がない内容については、前述した実施形態と同一のものとすることができる。
【0052】
<変形例1>
図3Aは、変形例1に係る医療デバイス200の斜視図、図3Bは、変形例1に係る医療デバイス200の使用例を説明するための図である。
【0053】
保持部220は、例えば、連続した一つの部材で構成されていなくてもよい。変形例1に係る医療デバイス200では、図3A図3Bに示すように、保持部220は、保持部220の配置方向(癒合促進シート110の周方向)に3つに分割された分割片221、222、223で構成されている。変形例1に係る保持部220は、図3Bに示すように、前述した実施形態に係る保持部120と同様に、生体器官に対して癒合促進シート110を保持する機能を発揮する。なお、保持部220を複数の分割片で構成する場合、分割片の個数、各分割片の長さ、形状、材質等は特に限定されない。
【0054】
<変形例2>
図4Aは、変形例2に係る医療デバイス300の斜視図、図4Bは、変形例2に係る医療デバイス300の使用例を説明するための図である。
【0055】
牽引部340は、例えば、癒合促進シート110の一部で構成してもよい。変形例2に係る医療デバイス300では、癒合促進シート110の一部が突出した凸部により牽引部340が構成されている。図4Bに示すように、癒合促進シート110を膵実質B1に対して保持させる際、牽引部340を保持部120が設けられた側と対向する側(図面の上側)へ持ち上げることにより、癒合促進シート110にシワが生じることを防止することができる。なお、牽引部340の具体的な形状、大きさ、個数等は特に限定されない。
【0056】
<変形例3>
図5は、変形例3に係る医療デバイスの使用例を説明するための図である。
【0057】
変形例3に係る医療デバイスでは、保持部420の形状が前述した実施形態の保持部120と異なる。保持部420は、図5に示すように、膵実質B1に引っ掛けた際に、膵実質B1と接触(癒合促進シート110を間に挟んだ間接的な接触)するように配置される複数の第1部位422aと、膵実質B1との間に隙間を隔てて配置される複数の第2部位422bと、を有する。第1部位422aと第2部位422bは、癒合促進シート110の周方向に交互に配置されている。保持部420は、前述したC字形状(図1Bを参照)に形成された保持部120と比較して、膵実質B1と接触する面積を小さくすることができる。そのため、保持部420により膵実質B1に癒合促進シート110を保持している間に患者に掛かる負担を軽減することができる。
【0058】
<処置方法の実施形態(生体器官吻合術)>
次に、医療デバイスを用いた処置方法を説明する。
【0059】
図6は、医療デバイスを用いた処置方法の各手順を示すフローチャートである。
【0060】
処置方法は、保持部が設けられた癒合促進シートを備える医療デバイスを準備すること(S11)、癒合促進シートを一方の被接合部位に配置すること(S12)、保持部を被接合部位に引っ掛けること(S13)、癒合促進シートを一方の被接合部位に固定すること(S14)、一方の被接合部位と他方の被接合部位との間に癒合促進シートの少なくとも一部を配置した状態で一方の被接合部位と他方の被接合部位とを接合すること(S15)、を含む。
【0061】
処置方法により接合される生体器官および生体器官における被接合部位は特に限定されず、任意に選択することができる。以下の説明では、膵実質-空腸吻合術を例に挙げて説明する。ただし、上記処置方法は、大腸吻合術や胃管吻合術に適用されてもよい。また、以下に説明する各手技において使用される医療デバイスとしては、例えば、前述した医療デバイスの中から任意のものを選択することが可能である。ただし、以下の説明では、各手技に好適に用いることができる代表的な例として、特定の医療デバイスの使用例を説明する。また、以下に説明する各手技において、公知の手技手順や公知の医療装置・医療器具等については詳細な説明を適宜省略する。
【0062】
以下、本明細書の説明において「生体器官の間に癒合促進シートを配置する」とは、生体器官に癒合促進シートが直接的にまたは間接的に接触した状態で配置されること、生体器官との間に空間的な隙間が形成された状態で癒合促進シートが配置されること、またはその両方の状態で癒合促進シートが配置されること(例えば、一方の生体器官に癒合促進シートが接触し、他方の生体器官には癒合促進シートが接触していない状態で配置されること)の少なくとも一つを意味する。また、本明細書の説明において「周辺」とは、厳密な範囲(領域)を規定するものではなく、処置の目的(生体器官同士の接合)を達成し得る限りにおいて、所定の範囲(領域)を意味する。また、各処置方法において説明する手技手順は、処置の目的を達成し得る限りにおいて、順番を適宜入れ替えることが可能である。
【0063】
<処置方法の実施形態(膵実質-空腸吻合術)>
図7は、処置方法の実施形態(膵実質-空腸吻合術)の手順を示すフローチャートであり、図8図15は、膵実質-空腸吻合術の説明に供する図である。
【0064】
本実施形態に係る処置方法において、接合対象となる生体器官は、膵頭十二指腸切除後の膵実質B1と、空腸B2である。以下の説明では、切断した膵実質B1の切断面B1a周辺(一方の被接合部位)と空腸B2の腸壁の任意の部位(他方の被接合部位)を接合する手順を説明する。また、本実施形態では、図1Aに示した医療デバイス100の使用例を説明する。
【0065】
図7に示すように、本実施形態に係る処置方法は、保持部120が設けられた癒合促進シート110を備える医療デバイス100を準備すること(S101)、癒合促進シート110を膵実質B1の切断面B1a上に配置すること(S102)、保持部120を膵実質B1に引っ掛けること(S103)、癒合促進シート110を固定部材で固定すること(S104)、膵実質B1と空腸B2の間に癒合促進シート110を挟み込むこと(S105)、膵実質B1と空腸B2の間に癒合促進シート110を挟み込んだ状態で接合すること(S106)、膵実質B1と空腸B2の間に癒合促進シート110を留置すること(S107)、を含む。
【0066】
次に、図8図15を参照して、本実施形態に係る処置方法の一例を具体的に説明する。なお、図13では、後述する複数の両端針920a~920eを省略している。
【0067】
図8に示すように、術者は、癒合促進シート110の裏面114(又は表面113)を膵実質B1の切断面B1aに対向させる。術者は、面方向において、保持部120が、切断面B1aよりも外方側になるように配置する。この際、術者は、保持部120を膵実質B1の後壁B1c(膵実質B1の周方向の背側の部分)に引っ掛けるように配置することにより、膵実質B1に対して癒合促進シート110を保持することができる。また、牽引部140を牽引することにより、癒合促進シート110にシワが生じることを防止しつつ、癒合促進部110Aを膵実質B1の切断面B1aに密着させることができる(図1Bを参照)。
【0068】
癒合促進シート110を膵実質B1の切断面B1aに配置する際、術者は、以下の作業手順を採用することができる。まず、術者は、膵管チューブ910の端部911(または端部912)を癒合促進シート110に押し付けることによって癒合促進シート110に孔部130を形成する。また、術者は、膵管チューブ910の端部911が空腸B2の吻合予定部位の貫通孔B2aから空腸B2の内部を通り、空腸B2の貫通孔B2bから空腸B2の外部に出るように、膵管チューブ910を空腸B2に挿通させる。
【0069】
次に、術者は、膵管チューブ910が癒合促進シート110の孔部130を挿通して癒合促進シート110を保持した状態で、膵管チューブ910の端部912を膵実質B1の膵管B1bに仮挿入する。
【0070】
なお、膵管チューブ910としては、例えば、端部912に抜け防止用のコブ(凸部)が形成された樹脂製の公知のものを利用することができる。膵管B1bに仮挿入された膵管チューブ910は、手技中に膵管B1bから膵液等の体液が漏出することを抑制する。このような手順によれば、術者は、癒合促進シート110の配置及び膵管チューブ910の仮挿入を一度に行うことができる。
【0071】
また、術者は、膵管チューブ910を挿通させるための孔部130を形成する際に、膵管チューブ910ではなく他のデバイスを用いてもよい。また、膵管チューブ910を挿通させるための孔部130は、使用前の状態で予め癒合促進シート110に形成されていてもよい。また、術者は、膵実質B1の切断面B1aに癒合促進シート110を配置した後に、膵管チューブ910を膵管B1bに仮挿入してもよい。
【0072】
次に、術者は、癒合促進シート110を固定部材で膵実質B1に固定する。なお、以下の説明では、縫合糸付きの複数の両端針920a~920eを固定部材として用いて癒合促進シート110を膵実質B1に固定する手順の一例を説明する。両端針920a~920eとしては、生体吸収性を備える吸収糸(縫合糸)と、吸収糸の両端に取り付けられた生体適合性を備える針部と、を有する公知のものを用いることができる。なお、後述する両端針930、940a~940eについても、吸収糸および針部を備えるように構成している。
【0073】
まず、術者は、図9に示すように、膵実質B1に対して癒合促進シート110を保持した状態で、膵実質B1の後壁B1c(膵実質B1の周方向の背側の部分)および癒合促進シート110において後壁B1c上に配置された部分から、膵実質B1の前壁B1dおよび癒合促進シート110において前壁B1d上に配置された部分に向かって、両端針920aを運針する。次に、術者は、空腸B2の吻合予定部位(貫通孔B2aの周辺)の空腸漿膜筋層を挿通するように両端針920aを運針する。術者は、このような操作を繰り返し、図10に示すように、癒合促進シート110、膵実質B1、および空腸B2の空腸漿膜筋層に複数の両端針920a~920eに複数の両端針920a~920eを挿通させる。このように、術者は、膵実質B1と空腸B2を縫合する複数の両端針920a~920eを利用して、癒合促進シート110を膵実質B1に固定できる。
【0074】
術者は、癒合促進シート110を膵実質B1の切断面B1aに固定した後、保持部120による保持及び牽引部140による牽引操作を中断してもよい。なお、保持部120及び牽引部140は癒合促進シート110の一部を切除するなどして、癒合促進シート110から適宜分離させてもよい。術者は、癒合促進シート110を膵実質B1の切断面B1aに固定するまでの間、保持部120による保持及び牽引部140による牽引を実施することにより、癒合促進シート110が膵実質B1の切断面B1aからズレたり、癒合促進シート110にシワが発生したりすることを防止できる。
【0075】
なお、膵実質B1及び空腸B2の空腸漿膜筋層に挿通させる両端針の本数や両端針を挿通させる位置は特に限定されない。また、術者は、複数の両端針920a~920eではなく、生分解性のステープル等を固定部材として、癒合促進シート110を膵実質B1に固定してもよい。
【0076】
次に、術者は、図10に示すように、膵管チューブ910の端部912を膵管B1bから抜去する。
【0077】
次に、術者は、図10に示すように、膵管B1bの内腔側から膵実質B1の切断面B1aの前壁B1d側の部分に向かって、両端針930を通す。両端針930は、空腸B2を挿通させない状態でピンセット等の把持器具(図示省略)で手技の邪魔にならないように保持される。
【0078】
次に、術者は、図10および図12に示すように、膵管B1bの内腔側から膵実質B1の切断面B1aに向かって、両端針940aの一端を運針する。次に、術者は、図11および図12に示すように、両端針940aの他端を空腸B2の貫通孔B2aに挿入し、空腸B2の内部から空腸B2の外部に向かって両端針940aの他端を運針する。そして、術者は、図13に示すように、膵管B1bの周方向の異なる部位および空腸B2に、複数の両端針940a~940eを挿通させる。なお、図12は、吻合される前の膵実質B1と空腸B2の一部をも模式的に示す断面図である。
【0079】
次に、術者は、図13に示すように、膵実質B1の後壁B1cおよび膵管B1bを空腸B2の吻合予定部位に密着させる。そして、複数の両端針940a~940eのうち、膵管B1bの周方向の背側(後壁B1c側)を挿通する両端針940c~940eを結紮する。
【0080】
次に、術者は、図14に示すように、膵管チューブ910の端部912を膵管B1bに再挿入する。次に、術者は、両端針930において膵管B1bの内側から延びる針部931を、空腸B2に形成した貫通孔B2bに挿入し、空腸B2の内部から空腸B2の外部に向かって針部931運針する。
【0081】
次に、術者は、両端針930、940a、940bを結紮する(図示省略)。なお、膵管B1bおよび空腸B2に挿通させる両端針の本数や両端針を挿通させる位置は特に限定
されない。
【0082】
次に、術者は、図15に示すように、術者の指を以って空腸B2を膵実質B1に対して押さえつけながら両端針920a~920eを結紮する。これによって、膵実質B1と空腸B2が癒合促進シート110を挟み込んだ状態で縫合される。空腸B2は、縫合時に生じる張力により、膵実質B1の切断面B1aおよび癒合促進シート110の癒合促進部110Aを包み込むように変形する。
【0083】
術者は、膵実質B1の切断面B1aと空腸B2の腸壁との間に癒合促進シート110の癒合促進部110Aが挟み込まれた状態で癒合促進シート110を留置する。癒合促進シート110の癒合促進部110Aは、膵実質B1の切断面B1aと空腸B2の腸壁とに接触しつつ、膵実質B1の切断面B1aと空腸B2の腸壁との間に留置されることにより、膵実質B1の生体組織と空腸B2の腸壁の生体組織の癒合を促進する。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る処置方法は、膵実質B1および空腸B2を接合する手技に適用される。また、上記の処置方法では、切断された膵実質B1の切断面B1a周辺と空腸B2の腸壁(空腸漿膜筋層)を接合する。この処置方法によれば、膵実質B1の切断面B1aと空腸B2の腸壁の間に挟み込んだ癒合促進シート110の癒合促進部110Aにより、膵実質B1の生体組織と空腸B2の腸壁の生体組織の癒合を促進することができ、膵実質-空腸吻合術後の縫合不全のリスクを低減させることができる。
【0085】
また、保持部120により癒合促進シート110を膵実質B1に対して保持することにより、手技の最中、癒合促進シート110が膵実質B1からズレたり、脱落したりすることを防止できる。また、牽引部140を牽引して癒合促進シート110に牽引力を付与することにより、癒合促進シート110にシワが生じるのを防止しつつ、癒合促進シート110を膵実質B1に対して保持することが可能になる。
【0086】
本出願は、2019年3月28日に出願された日本国特許出願第2019-065058号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0087】
100、200、300、 医療デバイス、
110 癒合促進シート、
110A 癒合促進部、
110B 枠部、
112 貫通孔、
120、220、420 保持部、
140、340 牽引部、
B1 膵実質、
B2 空腸。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15