(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電極アレイ
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20231116BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231116BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231116BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20231116BHJP
C23C 16/503 20060101ALI20231116BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/302 101B
H01L21/31 C
H01L21/316 X
C23C16/503
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2021518480
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 GB2019052763
(87)【国際公開番号】W WO2020070482
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-07-06
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】プラウドフット ゲーリー
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターズ ガレス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター アニカ
(72)【発明者】
【氏名】クーク マイク
(72)【発明者】
【氏名】オマホニー アイリーン
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0337657(US,A1)
【文献】特開平09-213684(JP,A)
【文献】特開平05-129094(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0255575(US,A1)
【文献】特開2000-031121(JP,A)
【文献】特開2004-006211(JP,A)
【文献】特開2002-292273(JP,A)
【文献】特開2003-024772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/316
C23C 16/503
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理ツー
ルであって、
処理チャンバと、
材料がその上に堆積される及び/又はエッチングされることになる基板を使用時に支持するために該処理チャンバ
内にある基板台と、
使用時にプラズマ発生のためのガスを前記処理チャンバに送出するように構成された少なくとも1つのガスサプライと、
プラズマ発生電極アレイと、を含み、
前記プラズマ発生電極アレイが、複数の接地電極と少なくとも1つの活性電極とを含み、
前記複数の接地電極は、前記少なくとも1つの活性電極と電気接触しておらず、かつ該接地電極と該活性電極が使用時に前記基板台に対し
て平行である第1の平面内で第1の方向に沿って互いに交互するように配置され、
前記接地電極及び前記活性電極は、前記第1の方向に沿って互いに離間し、
前記接地電極及び前記活性電極の各々が、そのベースからその遠位端まで前記第1の平面に対し
て垂直である第2の方向に延び、
前記接地電極及び前記少なくとも1つの活性電極は、該接地電極の前記遠位端が該少なくとも1つの活性電極の前記遠位端よりも前記第2の方向に沿ってより遠くに位置決めされ、使用中に該接地電極の該遠位端が該少なくとも1つの活性電極の該遠位端よりも該第2の方向に前記基板台により近いように配置されて
おり、
前記プラズマ発生電極アレイは、少なくともその前記接地電極及び前記活性電極が前記処理チャンバの内側にあるように配置され、かつ前記接地電極の前記遠位端が前記少なくとも1つの活性電極の前記遠位端よりも前記第2の方向に前記基板台により近いように配置されており、
前記プラズマ処理ツールが、前記少なくとも1つの活性電極に接続された電源をさらに含み、
各接地電極(i)が、隣接する活性電極(j)から前記第1の方向に沿って距離B
ij
だけ隔てられ、各接地電極の前記遠位端と前記基板台の間の前記第2の方向に沿う距離は、それぞれの距離B
ij
よりも大きい、プラズマ
処理ツール。
【請求項2】
各接地電極(i)の前記遠位端は、隣接する活性電極(j)の前記遠位端よりも前記第2の方向に沿って距離A
ijだけ遠くに位置決めされ
、
A
ijは、B
ij/3よりも大きいか又はそれに等し
い、請求項1に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項3】
距離B
ijは、隣接する接地電極及び活性電極の各対に関し
て等し
い、請求項2に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項4】
各接地電極(i)が、隣接する活性電極(j)から前記第1の方向に沿って距離B
ijだけ隔てられ、各活性電極(j)の前記ベースとそれぞれの前記遠位端の間の前記第2の方向に沿う距離が、C
jであり、
C
jは、1.5B
ijよりも大きいか又はそれに等し
い、請求項1~3のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項5】
前記少なくとも1つの活性電極の各々の前記第1の方向に沿う幅が、該活性電極とそれぞれの隣接する接地電極との間の該第1の方向に沿う間隔の1.1倍よりも小さい、請求項1~4のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項6】
各接地電極のその前記ベースからその前記遠位端までの長さが、前記活性電極又は各活性電極のその前記ベースからその前記遠位端までの長さよりも大きい、請求項1~5のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項7】
複数の活性電極を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項8】
前記活性電極の少なくとも2
つが、その前記ベースが前記第1の平面に対し
て平行である第2の平面内
で共面であるように配置されている、請求項7に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項9】
前記接地電極は、その前記ベースが前記第1の平面に対し
て平行である第3の平面内
で共面であるように配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項10】
前記第1の平面内の前記接地電極及び/又は前記少なくとも1つの活性電極のうちの各々の断面が、閉ルー
プである、請求項1~9のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項11】
前記接地電極及び前記少なくとも1つの活性電極は、前記第1の平面内で同心状に配置されている、請求項10に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項12】
使用時にプラズマ処理ツール内の処理チャンバの壁の全て又は一部を形成するパネルを更に含み、
前記パネルは、前記接地電極及び前記少なくとも1つの活性電極がその上に支持される第1の側を有し、該接地電極は、該パネルと電気接触しており、該少なくとも1つの活性電極は、該パネルと電気接触しておらず、
ボアが、前記パネルの前記第1の側から該パネルの第2の側まで延び、それによって前記少なくとも1つの活性電極は、該パネルの該第2の側からアクセスすることができる、請求項1~11のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項13】
前記ボアを通って延びるフィードスルーを更に含み、前記フィードスルーは、前記パネルと電気接触しておらず、かつ前記少なくとも1つの活性電極と電気接触している、請求項12に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項14】
前記フィードスルーは、
前記パネルの前記第1の側で前記少なくとも1つの活性電極と接触している第1の端部と、
前記第1の端部から前記パネルの前記第2の側の第2の端部まで前記ボアを通って延びる導電シャフトと、
を含む、請求項13に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項15】
前記フィードスルーの前記第2の端部は、前記ボアが前記パネルの前記第2の側で開口する場所での該ボアよりも大きい幅を有するフランジ付き部分を含み、
前記フィードスルーの前記第2の端部の前記フランジ付き部分と前記パネルの前記第2の側の面の一部分との間に位置決めされ
た第1の電気絶縁要素を更に含む、請求項14に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項16】
前記第1の電気絶縁要素は、前記第2の端部の前記フランジ付き部分と前記パネルの前記第2の側の前記面との間の前記フィードスルーの前記
導電シャフトの部分
を取り囲む、請求項15に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項17】
前記ボアの内側の前記フィードスルーの部分
を取り
囲む第2の電気絶縁要素を更に含む、請求項
15~16のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項18】
前記第1の電気絶縁要素及び前記第2の電気絶縁要素は、互いに一体的に形成されている、請求項17に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項19】
前記フィードスルーの外面が、前記ボアの内面から前記第1の方向に距離Eだけ隔てられ、
前記ボアは、前記第2の方向に沿って距離Dだけ延び、
Dは、10Eよりも大きいか又はそれに等し
い、請求項13~18のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項20】
前記距離Eは、0.5ミリメートル(mm)から2.5mmの範囲にある、請求項19に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項21】
前記接地電極は、前記パネルに一体的に接続されている、請求項12~20のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項22】
前記接地電極を加熱させるために前記パネルを加熱するように構成された第1の加熱要素を更に含む、請求項21に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項23】
前記少なくとも1つの活性電極を加熱する少なくとも1つの第2の加熱要素を更に含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項24】
各第2の加熱要素が、それぞれの活性電極の内側に配置された抵抗要素を含む、請求項23に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項25】
ガスを接地電極と活性電極の間の少なくとも1つの隙間に使用時に送出する導管を更に含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項26】
前記導管は、前記活性電極の少なくとも1つに形成されたチャネルを含む、請求項25に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項27】
前記電源は、無線周波数(RF)電源である、請求項
1~26のいずれか1項に記載の
プラズマ処理ツール。
【請求項28】
前記
基板台に電気的に接続されたRF電圧ソースを更に含む、請求項
1~27のいずれか1項に記載のプラズマ処理ツール。
【請求項29】
プラズマ処理ツールのためのプラズマ発生電極アレイであって、
前記プラズマ処理ツールは、処理チャンバと、材料がその上に堆積される及び/又はエッチングされることになる基板を使用時に支持するために該処理チャンバにある基板台と、を含み、
電極アレイが、複数の接地電極と少なくとも1つの活性電極とを含み、
前記複数の接地電極は、前記少なくとも1つの活性電極と電気接触しておらず、かつ該接地電極と該活性電極が使用時に前記基板台に対し
て平行である第1の平面内で第1の方向に沿って互いに交互するように配置され、
前記接地電極及び前記活性電極は、前記第1の方向に沿って互いに離間し、
前記接地電極及び前記活性電極の各々が、そのベースからその遠位端まで前記第1の平面に対し
て垂直である第2の方向に延び、
前記接地電極及び前記少なくとも1つの活性電極は、該接地電極の前記遠位端が該少なくとも1つの活性電極の前記遠位端よりも前記第2の方向に沿ってより遠くに位置決めされ、使用中に該接地電極の該遠位端が該少なくとも1つの活性電極の該遠位端よりも該第2の方向に前記基板台により近いように配置されて
おり、
使用時にプラズマ処理ツール内の処理チャンバの壁の全て又は一部を形成するパネルを更に含み、
前記パネルは、前記接地電極及び前記少なくとも1つの活性電極がその上に支持される第1の側を有し、該接地電極は、該パネルと電気接触しており、該少なくとも1つの活性電極は、該パネルと電気接触しておらず、
ボアが、前記パネルの前記第1の側から該パネルの第2の側まで延び、それによって前記少なくとも1つの活性電極は、該パネルの該第2の側からアクセスすることができる、プラズマ発生電極アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極アレイ、特に、プラズマ処理ツール内でプラズマを発生させるための電極アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の面上の材料堆積又はエッチングのような面処理技術は、プラズマ処理ツールを用いて実行することができる。
【0003】
プラズマ処理ツールは、典型的にチャンバを含み、チャンバは、いくつかのガスサプライからのガス、例えば、プラズマ助長堆積工程に使用するための前駆体ガス、プラズマエッチング工程に使用するためのエッチングガス、プラズマ発生のためのガス、及びチャンバからプラズマ励起ガスを除去するためのパージガスを受け入れるように構成される。ガスの1又は2以上をプラズマに変換するためのプラズマソースが提供される。処理されることになる基板は、チャンバの内側の基板台上に置かれてプラズマソースに露出される。
【0004】
電離化学種と中性ラジカルの両方が、典型的にプラズマソースに発生される。これは、基板に向かうイオン及びラジカルの流束をもたらす。一部のプラズマ工程、例えば、プラズマ助長原子層堆積では、基板と衝突する電離化学種は、堆積層及び/又は基板面を破損する場合があり、一方で中性ラジカルは、例えば、基板面上に吸着された化学種(例えば、前駆体ガスによって堆積された)と反応することによって堆積工程に寄与することができる。更に、多くのエッチング工程が基板から材料を取り除くのにイオン衝撃を使用するが、一部は、ラジカルのみを用いて実行することができる。従って、面処理技術では基板と衝突するイオン流束を低減する機能が望ましい。基板の広がりにわたって均等な処理程度を達成するために、基板面を横切るラジカル及びイオンの流束が可能な限り均一であることも望ましい。
【0005】
従来からプラズマ処理ツールに使用されるプラズマソースの中に誘導結合プラズマ(ICP)がある。ICPを使用するプラズマ処理ツールでは、AC電流がチャンバを取り囲むコイルを通過する。AC電流は、コイルを通して時変磁場を生じ、これは、次に、プラズマ発生に至る電流をチャンバ内側のガス内に誘導する。この種類のICPを使用すると、プラズマがチャンバを通して発生されるので、比較的均一なラジカル流束を基板面にわたって送出することができる。しかし、チャンバを通してイオンも発生されることになり、ラジカル流束も低減することなくこれらから基板を遮蔽することが望ましいことがある。
【0006】
コイルがチャンバを取り囲むICPに対する代替として、いわゆる管状又は「遠隔」ICPは、基板に面するチャンバ壁内の開口部に向けて延びる細いチューブの周りに形成されたコイルを含む。チューブ内側のガスにプラズマ発生電流が生じるように、AC電流がコイルを通過させられ、プラズマは、基板に向けて開口部を通って漏出する。典型的にチャンバに給送する細いチューブ内にプラズマが形成されるこの及び類似のプラズマソースは、一部のラジカルを送出しながらイオンを実質的に低減することができる。チューブ内側で発生されるイオンは、チューブ壁と衝突してそれらが基板に到達する前に止められる比較的高い可能性を有するが、ラジカルは、壁との衝突を切り抜け、従って、基板に到達する可能性がより高い。しかし、管状ICPの欠点は、プラズマソースが必然的に比較的細く、基板面にわたって均一なラジカル流束を提供するのに更に別の手段を必要とすることである。
【0007】
容量結合プラズマ(CCP)は、ICPに対する代替プラズマソースである。CCPは、典型的に電極対又は電極アレイを含み、それによって隣接電極間に印加される電圧は、プラズマへのガスの分解を引き起こす。米国特許第8636871号は、プラズマ発生のための電極を含むプラズマソースの一部の例を与えている。CCPでの電極アレイは、いずれかの選択区域にわたって延びるように構成することができ(単に、望ましい区域に適切な個数の電極を含めることにより)、従って、基板にわたってイオン及びラジカルの均一な流束を提供することができる。CCPを使用するプラズマツールでは、電流は、電極と基板台の間に生じることができる。これは、プラズマ発生に向けて電極が給電される時に基板台と電極の間に不可避に生じる電圧の結果であり、かつ基板の近くにイオンを発生させてその面及び堆積層を破損する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ある一定の面処理技術でのイオン衝撃の悪影響を踏まえて、基板にわたって均一な処理を達成しながら基板面に高いラジカル流束及び最小限のイオン流束を提供するプラズマソースに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、プラズマ処理ツールのためのプラズマ発生電極アレイを提供し、プラズマ処理ツールは、処理チャンバと、材料がその上に堆積される及び/又はエッチングされることになる基板を使用時に支持するために処理チャンバにある基板台とを含み、電極アレイは、複数の接地電極と少なくとも1つの活性電極とを含み、複数の接地電極は、少なくとも1つの活性電極と電気接触しておらず、かつ使用時に接地電極と活性電極が基板台に対して実質的に平行である第1の平面内で第1の方向に沿って互いに交互するように配置され、接地電極と活性電極は、第1の方向に沿って互いに離間し、接地及び活性電極の各々は、そのベースからその遠位端まで第1の平面に対して実質的に垂直である第2の方向に延び、接地電極及び少なくとも1つの活性電極は、接地電極の遠位端が少なくとも1つの活性電極の遠位端よりも第2の方向に沿って遠くに位置決めされ、そのために使用時に接地電極の遠位端が少なくとも1つの活性電極の遠位端よりも第2の方向に基板台により近いように配置される。
【0011】
本明細書での用語「接地電極」は、使用時に電気的に接地されることになる電極を意味し、用語「活性電極」は、例えば、活性電極を無線周波数(RF)電源のような電源に接続することにより、使用中に接地に対する電圧がそれに印加されることになる電極を意味する。基板台も接地される場合があり、又はその独自の電源に接続することができると考えられる。接地電極と活性電極は交互に配置され、従って、隣接電極間に電圧が生じることになり、これは、電極間の空間に位置付けられたガスからプラズマの発生を引き起こすことができる。本明細書での第1の平面は、接地電極及び活性電極の各々によって交差されるいずれかの概念上の平面であり、かつ使用時に基板台に対して実質的に平行である。
【0012】
接地電極の遠位端は、活性電極のものよりも第1の平面から第2の方向に更に遠く(どの概念上の第1の平面が選択されても)、その結果、使用時に、接地電極の遠位端は、活性電極の遠位端よりも基板台により近いことになる。これは、接地電極を活性電極よりも長くすること(及び任意的に接地及び活性電極のベースを使用時に基板台と平行である方向に共面であるように配置すること)によるような、又は接地及び活性電極が、同じ又は類似の長さを有し、かつ接地電極のベースが使用時に活性電極のものよりも基板台に対して垂直な方向に沿って基板台により近いように配置されることによるようないくつかの方法で達成することができる。この後者の配置では、接地電極は、それらの遠位端が活性電極のものよりも第2の方向に沿って依然としてより遠くに位置決めされる限り、活性電極よりも短いことが更に可能であると考えられる。
【0013】
接地電極の遠位端は、活性電極の遠位端よりも使用時に第2の方向に沿って基板台により近いので、活性及び接地電極の遠位端が基板台に等しく近い配置と比較して、活性電極で始まる(使用時に活性電極が給電される結果として)電気力線は、基板台ではなく接地電極で終端する増大する傾向を有することになる。これは、活性及び接地電極の遠位端が基板台に等しく近い配置と比較して、比較的弱い電流が活性電極と基板台の間に生じることに至り、それによって基板の近くで発生されるイオンの個数を低減する。更に、電極の近くで発生されたイオンは、それらが活性電極に関連付けられた電界に沿って進行するので(電界のより大きい分量が活性から接地電極に至るので)電極と衝突する可能性がより高く、これは、電極間で発生されて基板に到達するイオン流束を低減する。
【0014】
本発明の開示のプラズマ発生電極アレイはまた、遠隔/管状ICPのような従来のプラズマソースに対して基板を処理する速度に有意な改善を提供することができる。これは、(1)遠隔チューブ内と比較してプラズマを基板面の近くで発生させることができること(本発明の開示の電極アレイは、下記で説明する好ましい限度内で望むだけ基板の近くに位置決めすることができる)、及び(2)基板の全面積にわたってプラズマ発生を広げることがラジカルを分散させるための追加のハードウエア又は追加のチャンバ容積に対する必要性を回避することの結果として基板に到達するより高いラジカル流束に起因する。これらのファクタは、本発明の開示の配置が、基板に対して望ましい効果を達成するある一定のラジカル投与量を従来の遠隔ICPが同じ投与量を送出することができると考えられる期間よりも短い期間に送出することができるという効果を有する。
【0015】
好ましい実施形態では、各接地電極(i)の遠位端は、隣接活性電極(j)の遠位端よりも第2の方向に沿って距離Aijだけ遠くに位置決めされ、各接地電極(i)は、第1の方向に沿って隣接活性電極(j)から距離Bijだけ分離され、Aijは、Bij/3(すなわち、距離Bijの3分の1)よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、Bij/2(すなわち、距離Bijの半分)よりも大きいか又はそれに等しい。本明細書での隣接活性電極は、電極の交互シーケンス内で接地電極の直ぐ隣にあり、すなわち、接地電極と当該活性電極の間に他の電極を持たない活性電極を意味する。この特徴は、活性電極の遠位端よりも特定の接地電極の遠位端の方が基板台に近い(基板台に対して垂直な方向に沿って)程度と隣接活性電極からの接地電極の分離(基板台に対して垂直な方向に沿う)との間の好ましいアスペクト比を定める。寸法Aij及びBijの実際の値は、隣接する接地電極と活性電極との様々な対に関して同じであってもなくてもよく、重要なのは、これらの値の間の比である。Aij、すなわち、隣接活性電極よりも特定の接地電極の遠位端の方が基板に向けて遠くに延びる(基板台に対して垂直な方向に沿って)距離が、基板台と平行な方向に沿う特定の接地電極と隣接活性電極の間の分離又は間隔Bijの少なくとも3分の1である時に活性電極と基板台の間の放電電流を低減する効果が特に際立つことが見出されている。この効果は、距離AijがBijの少なくとも半分である時に更に際立つ。
【0016】
しかし、RFプラズマソース内の活性電極と接地電極の間の全面積の差は、活性電極の望ましくないスパッタエッチングをもたらす可能性があるDCオフセット電位を発生させる場合もある。この理由から、接地電極の遠位端が活性電極の遠位端を過度に大きい距離にわたって超えないことが好ましく、従って、特に好ましい実施形態では、距離Aij(第2の方向に沿う各接地電極(i)の遠位端と隣接活性電極(j)の遠位端の間の)は、距離Bij(第1の方向に沿って接地電極(i)が隣接活性電極(j)からそれによって分離される)よりも小さい。Bijよりも小さいAijの好ましい上限は、上述の好ましい下限のいずれかと組み合わせてアスペクト比に対する好ましい範囲を定めることができる。
【0017】
特に好ましい実施形態では、距離Bijは、隣接接地電極と活性電極との各対に関して実質的に同じであり、好ましくは、距離Aijも、隣接接地電極と活性電極との各対に関して実質的に同じである。そのような実施形態では、第1の方向(使用時に基板台と平行)に沿う各接地電極とその隣接活性電極の間の分離は実質的に同じであり、使用時に活性電極の遠位端よりも接地電極の遠位端の方が第2の方向(使用時に基板台に対して垂直)に沿って基板台にそれによって近い距離も好ましくは実質的に同じである。好ましくは、これは、全体の電極アレイにわたって適用される。これは、特に均一なプラズマを達成する。区域にわたって電極サイズを調節することによっていずれの残存不均一性も補償することができる。
【0018】
好ましい実施形態では、各接地電極(i)は、第1の方向に沿って隣接活性電極(j)から距離Bijだけ分離され、第2の方向に沿う各活性電極(j)のベースとそれぞれの遠位端の間の距離はCjであり、Cjは、1.5Bijよりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、更に4Bijよりも小さいか又はそれに等しい。これは、活性電極の長さCj(基板台に対して垂直な方向に沿う活性電極のベースと遠位端の間の)と、隣接接地電極からのこの活性電極の分離Bij(基板台と平行な方向に沿う)の比を制限する。プラズマ内の面へのイオン流束は、面に近いプラズマ密度(単位容積当たりの電子数又はイオン数)によって決定される。この好ましい設計は、最も強いプラズマがアレイの活性電極と接地電極の間の横方向空間内を延びることを規定する。一方、中性ラジカルは、電界による影響を受けず、プラズマがより密な領域内でより高速に達成される。強いプラズマから基板へのラジカルの脱出は、プラズマが提供される空間のアスペクト比によって制限される。深めで狭めの空間及びより高いアスペクト比(すなわち、Cj≫Bij)の場合に、ラジカルは、プラズマの外に拡散する時に壁に遭遇して消失する可能性がかなり高い。浅めで広めの凹部(すなわち、Cj≦Bij)の場合に、ラジカルが漏出する可能性がかなり高い。しかし、アスペクト比が過度に低い場合に、RF電流がその局限性を失う。従って、上記で提示した好ましい比は、BijがCjと比べて相当量のラジカル流束が活性電極と接地電極の間の空間を出ることを可能にするほど十分に大きいが、活性電極と基板台の間に不適切に高い電流が発生するほどには活性電極が露出されないように比較的大きくはないことを保証する。更に、イオンの運動は、プラズマソース内の電極間の電界による影響を受けることになり、それに対して中性ラジカルは影響を受けないことになる。電界によって電極に向けて付勢されたイオンは、電極と衝突し、それによって止められる場合があり、従って、間隔BijをCjと比べて減幅することにより、脱出して基板に到達するイオン流束を低減することができる。
【0019】
好ましくは、第1の方向に沿う少なくとも1つの活性電極の各々の幅は、第1の方向に沿う当該活性電極とそれぞれの隣接接地電極の間の分離の1.1倍よりも小さい。活性電極が過度に幅広である場合に、隣接接地電極は、活性電極の全幅にわたる場所からの放電電流が基板台に到達することを実質的に防止することを保証することができなくなる。隣接接地電極までの第1の方向に沿う距離よりも幅狭である活性電極は、使用時に活性電極と基板台の間に電流が発生することを防止することによる接地電極の有効性を改善する。
【0020】
好ましい実施形態では、各接地電極のベースから遠位端までの長さは、当該活性電極又は各活性電極のベースから遠位端までの長さよりも大きい。上述のように、これは必須ではない。しかし、これは、接地電極及び活性電極をそのベース間が概念上の第1の平面内でほぼ共面であるように配置することを可能にし、それによって電極アレイの構造が簡素化される。
【0021】
好ましくは、電極アレイは、複数の活性電極を含む。これは、いずれかの選択区域にわたって交互配置された活性電極と接地電極とを用いて電極アレイを構成することを可能にし、それによってこの区域にわたってより均一なプラズマを発生させることを可能にする(更に基板面にわたって均一なラジカル流束を保証する)。
【0022】
複数の活性電極を含む実施形態では、好ましくは、活性電極のうちの少なくとも2つ、特に好ましくは、全ては、そのベースが第1の平面に対して実質的に平行である第2の平面内で実質的に共面であるように配置される。これは、電極アレイの均一性を強化し、従って、使用時に電極アレイにわたる均一なプラズマの形成が促進される。
【0023】
好ましくは、接地電極は、これらの電極のベースが第1の平面に対して実質的に平行である第3の平面内で実質的に共面であるように配置される。これも電極アレイの均一性を強化し、従って、使用時に電極アレイにわたる均一なプラズマの形成が促進される。多くの実施形態では第2の平面と第3の平面とは第2の方向に互いに離間していることになるが、この離間は、接地電極と活性電極の間の電気絶縁をもたらすのに十分な僅かな量だけの離間とすることができる。
【0024】
電極は、処理ツールの幾何学形状に適するいずれかの横方向配置を取ることができる。例えば、接地電極と活性電極は、それぞれの交互嵌合櫛歯として構成することができる。しかし、好ましい実施形態では、第1の平面内の接地電極及び/又は少なくとも1つの活性電極の断面は、閉ループ、好ましくは、環状である(正方形、矩形、又は楕円形のような他のループ形状を使用することもできるが)。特に好ましい実施形態では、接地電極と少なくとも1つの活性電極は、第1の平面内で同心状に配置される。電極アレイの均一性が高まり、従って、使用時に電極アレイにわたる均一なプラズマの形成が促進される。好ましくは、接地電極又は活性電極の一方は、アレイの中心に位置付けられる。この電極は、ループとして構成されるのではなく「点」電極とすることができる。
【0025】
好ましい実施形態では、電極アレイは、使用時にプラズマ処理ツール内の処理チャンバの壁の全て又は一部を形成するようになって接地電極及び少なくとも1つの活性電極を支持する第1の側を有するパネルを更に含み、接地電極は、パネルと電気接触しており、少なくとも1つの活性電極は、パネルとの電気接触状態になく、パネルの第1の側からパネルの第2の側までボアが延び、それによって少なくとも1つの活性電極にパネルの第2の側からアクセス可能である。好ましい例では、1よりも多いそのようなボア(及び下記で議論する対応するフィードスルー)を設けることができる。
【0026】
パネルは、接地電極及び活性電極を支持する第1の側がチャンバ内に存在するようにプラズマ処理ツール内の処理チャンバの壁の全て又は一部を形成する(例えば、チャンバの蓋を形成する)ことができる。パネルは、使用時にプラズマ処理に必要とされる条件、例えば、(部分)真空をチャンバ内でサポートすることを可能にするように適応させることができる。パネルを通って延びるボアは、活性電極へのアクセスを可能にし、すなわち、活性電極は、例えばチャンバの外部に置かれたRF電源のような電源に接続することができる。接地電極は、パネルと電気接触しており、従って、使用時にパネル自体が電気的に接地される場合に接地電極は電気的に接地されることになる。
【0027】
特に好ましい実施形態では、ボアを通って延び、パネルとの電気接触状態になく、少なくとも1つの活性電極との電気接触にあるフィードスルーが設けられる。フィードスルーは、使用時に活性電極をチャンバの外部にある電源に電気接続することができ、接地されたパネルとの電気接触状態にはないので、接地電極は、使用時にそのような電源との電気接触状態にはないままに留まる。
【0028】
上述のように、1よりも多いそのようなフィードスルーを設けることができ、各フィードスルーは、パネルを通る対応するボア内に位置付けられる。フィードスルーとボアとの各組合せは、下記で議論する好ましい特徴のうちのいずれかを有することができる。追加のフィードスルーは、より確実な機械支持、熱伝達のための追加の断面積を与え、かつ電極アレイの様々な部分への電力提供を変化させるオプションをもたらす。
【0029】
好ましくは、フィードスルーは、パネルの第1の側で少なくとも1つの活性電極と接触している第1の端部と、ボアを通って第1の端部からパネルの第2の側にある第2の端部まで延びる導電シャフトとを含む。フィードスルーは、必要に応じて1又は2以上の活性電極と一体形成することができる。
【0030】
特に好ましい実施形態では、フィードスルーの第2の端部は、ボアがパネルの第2の側で開く場所にボアよりも大きい幅を有するフランジ付き部分を含み、フィードスルーの第2の端部のフランジ付き部分とパネルの第2の側の面の一部分の間に第1の電気絶縁要素が配置され、第1の電気絶縁要素は、好ましくは、誘電材料を含む。絶縁要素は、フィードスルーのフランジ付き部分をパネルから物理的かつ電気的に分離し、それによってフィードスルーとパネルが接触しないことを保証する(更にそれによってパネル、従って、接地電極が、使用時に活性電極に接続される電源と電気接触しないことを保証する)。この目的のためにあらゆる電気絶縁材料を使用することができるが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、又はアルミナのようなセラミックのような誘電材料が好ましい。
【0031】
好ましくは、第1の電気絶縁要素は、第2の端部のフランジ付き部分とパネルの第2の側の面の間にあるフィードスルーのシャフトの部分を実質的に取り囲む。これは、第1の電気絶縁要素がフランジ付き部分とパネルの面の間にあるフィードスルーの部分の円周全体(又はほぼ全体)を取り囲むことを意味する。これは、第1の電気絶縁要素がボアを密封し、その結果、例えば、パネルが使用中にチャンバの壁を形成している時に空気がチャンバの外部からボアを通って侵入することを防止することを可能にする。この密封は、弾力性Oリングのような1又は2以上の密封要素を第1の電気絶縁要素の上面及び/又は下面上に装着することによって改善することができる。
【0032】
電極アレイは、ボア内のフィードスルーの部分を実質的に取り囲む第2の電気絶縁要素を更に含むことができ、第2の電気絶縁要素は、好ましくは、誘電材料を含む。第2の電気絶縁要素は、プラズマがフィードスルーとボアの内面の間にある空間の部分の中に進入することを防止する。これは、電極アレイが使用されている時に発生したプラズマがそのような空間に入り、導電材料を周囲の面上に堆積させる可能性があるので有利である。導電性層が形成されてフィードスルーをボアの内面に接合させた場合に接地電極と活性電極が電気接触することができ、プラズマを発生させる電極アレイの機能が阻害されると考えられる。プラズマがこの空間に侵入することを防止することにより、そのような導電性層が形成される可能性が低減される。特に好ましい実施形態では、第1の電気絶縁要素と第2の電気絶縁要素は互いに一体的に形成される。これは、電極アレイの構造を簡素化する。有利なことに、第2の電気絶縁要素は、フィードスルーとパネルを通るボアの壁の間の空間の少なくとも半分を埋めるようにサイズが決定される。第2の電気絶縁要素は、フィードスルーをボア内で位置的に中心に位置付けるのに役立たせることができる。
【0033】
好ましくは、フィードスルーの外面は、ボアの内面から第1の方向に距離Eだけ分離され、ボアは、第2の方向に距離Dだけ延び、Dは、10Eよりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、50Eよりも大きいか又はそれに等しい。距離Eは、ボア内のフィードスルーとボアの内面の間の第1の方向の幅に対応し、Dは、第2の方向に沿うボアの広がりである。これらの制限は、使用時にボアの広がりに沿って進行するプラズマの量を有意に低減するのに幅Eがボアの広がりDと比べて十分に狭いことを保証し、それによって導電性層がボア内に蓄積される可能性が低減される。間隙Eは、誘電絶縁面上に最小限の堆積しか発生しないようにプラズマを抑制し、ラジカルに対して複数回の壁との遭遇を可能にする。特に好ましい実施形態では、距離Eは、0.5ミリメートル(mm)から2.5mmの範囲にある。フィードスルーは、活性電極と電気接触しており、それに対してボアの内面は、接地電極と電気接触している。グローを持続させるためには活性電極と接地電極の間に最小分離を必要とすることはプラズマの特性である。距離Eは、プラズマが所与のガス圧で衝突することになるか否かを決定する。上述の範囲の間隙は、約5Torrよりも低い圧力でプラズマをボア内の幅狭の同軸空間内に抑制することになる(そのような圧力ではプラズマは他の場所に延びることになるが)。フィードスルーの外寸は好ましくは十分に小さく、従って、フィードスルー本体の熱膨張は好ましくは十分に小さく、従って、フィードスルー本体の熱膨張は、使用中にフィードスルーとパネルの間隙Eを損なうことにはならない。
【0034】
必要に応じてパネルを通る複数のそのようなボア及びそれぞれのフィードスルーを設けることができることに注意しなければならない。
【0035】
好ましい実施形態では、接地電極は、パネルに一体的に接続される。接地電極とパネルは両方共に使用時に電気的に接地されるので、この一体的な接続は、望ましい電気構成をもたらしながら電極アレイの構造を簡素化する。特に好ましい実施形態では、電極アレイは、接地電極を加熱させるためにパネルを加熱するように構成された第1の加熱要素を更に含む。接地電極を加熱することにより、使用時に材料が接地電極上に堆積される速度を低減することができ、それによって電極アレイの保守及び洗浄を必要とする頻度が低減する。電極アレイは、少なくとも1つの活性電極を加熱するようになった少なくとも1つの第2の加熱要素を更に含むことができる。これは、使用時に材料が活性電極上に堆積される速度を低減し、アセンブリの頻繁な洗浄の必要性を防ぐことができる。好ましくは、各第2の加熱要素は、それぞれの活性電極の内側に配置された抵抗要素を含む。抵抗要素には、使用時に活性電極の内側に熱を発生させるように給電することができ、それによってかなり複雑な加熱手段(加熱流体のような)を使用する必要性を回避しながら活性電極を一様に加熱することを可能にする。
【0036】
好ましい実施形態では、電極アレイは、使用時に接地電極と活性電極の間の少なくとも1つの隙間にガスを送出するようになった導管を更に含み、ガスは、好ましくは、パージガス及びプラズマ発生のためのガスのうちの一方を含む。使用時にプラズマ発生のためのガスを活性電極と接地電極の間の空間に直接送出することができることにより、基板が処理されている間にこのガスの十分な提供が存在することを保証する。パージガスをこれらの空間に送出することができることにより、プラズマの提供を迅速に停止することを可能にし、これは、例えば、循環プラズマ工程を実施することができる速度及び効率を高めることができる。好ましくは、導管は、接地及び/又は活性電極の少なくとも一方を通るように形成されたチャネルを含む。
【0037】
本発明の第2の態様により、本発明の第1の態様によるプラズマ発生電極アレイと、少なくとも1つの活性電極に接続された電源とを含むプラズマ発生装置を提供する。好ましい実施形態では、電源はRF電源である。プラズマ発生装置は、プラズマ発生に向けて活性電極に電力信号を印加するようにRF電源を制御するように構成されたコントローラを含むことができる。
【0038】
本発明の第3の態様により、処理チャンバと、処理チャンバに置かれた基板台と、本発明の第2の態様によるプラズマ発生装置とを含むプラズマ処理ツールを提供し、プラズマ発生装置のプラズマ発生電極アレイが、少なくともその接地電極及び活性電極が処理チャンバ内に存在するように位置付けられ、かつ少なくとも1つの活性電極の遠位端よりも接地電極の遠位端の方が第2の方向に基板台に近いように位置決めされ、少なくとも1つのガスサプライが、使用時に処理チャンバにプラズマ発生のためのガスを送出するように構成される。
【0039】
本発明の第2及び第3の態様では、プラズマ発生電極アレイは、本発明の第1の態様に関して上記で議論した好ましい特徴のうちのいずれかを有することができる。
【0040】
好ましくは、プラズマ処理ツールは、サンプル台に電気接続されたRF電圧ソースを更に含む。これは、使用時に面の近くの電界を操作することを可能にし、その結果、基板付近のイオンのエネルギ分布を制御することを可能にする。これは、例えば、基板台上の基板面上の堆積層の特性をイオン衝撃によって調整することができる。例えば、単一周波数(例えば、13.56MHz)又はそれと他の周波数との組合せのバイアスを台に印加することができる。イオン衝撃エネルギの分布を変更することのような目的に合うようになった適切なRF波形も公知である。これに代えて及び/又はこれに加えて、RF電圧ソースは、工程のある一定の段階でイオンを発生させてプラズマから基板に加速することを必要とする場合にそれを行うのに使用することができる。上記で議論したように電極が基板へのイオン流束を最小にするように構成された設計にも関わらず、この構成を選択的に無視し、そうすることで、基板台に適用される追加の電源を用いてプラズマソースから基板にイオンを引き寄せることができる。このオプションは、膜特性を修正するためにエッチング工程及び/又は堆積工程において(原子層堆積との組合せで)使用することができる。例えば、循環のごく一部分にわたってイオン衝撃を使用する循環工程において原子層エッチングを達成することができる。
【0041】
好ましい実施形態では、第2の方向に沿う各接地電極の遠位端と基板台の間の距離は、第1の方向に沿う各接地電極とそれぞれの隣接活性電極の間の分離Bijよりも大きい。これは、活性電極と基板台の間に放電電流が生じる可能性を更に低減する。
【0042】
ここで、添付図面を参照して、本発明の態様によるプラズマ発生電極アレイ、装置、及びプラズマ処理ツールの例を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の実施形態によるプラズマ発生装置との併用に適する例示的プラズマ処理ツールを示す概略図である。
【
図2】例示的プラズマ発生電極アレイを含む本発明によるプラズマ発生装置の実施形態を示す略断面図である。
【
図3】本発明によるプラズマ発生装置の実施形態を含むプラズマ処理ツールの実施形態の断面図である。
【
図4】
図3のプラズマ発生装置の一部分の拡大詳細図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(d)は
図3に示す種類のプラズマ処理ツールを用いて実行された試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の実施形態によるプラズマ発生装置300との併用に適する例示的プラズマ処理ツール101を示している。プラズマ処理ツール101は、真空ポンピングシステム(図示せず)によって確立される近真空を一般的に含むことになる処理チャンバ102を含む。チャンバ102内には基板台111があり、その上にプラズマ処理ツール101を用いて処理される基板104を配置することができる。任意的に、基板台111は信号発生器112に電気接続され、信号発生器112は、後に下記で説明するように基板台111をRF波形で電気的にバイアスするように構成される。これに代えて、台111は接地することができる。基板台111は、リフト113によって支持することができ、リフト113は、基板台111をチャンバ102内の選択高さに上昇又は下降させるように制御することができる。リフト113は、例えば、台111を基板装填位置と基板処理位置の間で移動するのに使用することができ、基板処理位置は、循環工程においてガスタイプの高速な入れ替えに向けてより小さい容積の内側チャンバを生成する。チャンバ102には、真空を中断することなく基板104を台111上に装填及びそこから脱装填するための手段も設けられることになる。
【0045】
チャンバ102内で基板台103の上方に電極アレイ200が支持される。電極アレイ200は、プラズマチャンバ102の上部壁の一部又は全てを形成するパネル(番号ラベル付けしていないが、後に
図3及び
図4を参照して説明する)を含むことができる。電極アレイ200は、一連の交互配置された接地電極(すなわち、図示していない電気的に接地された電極)と、RF電源270に電気接続された1又は2以上の活性電極(図示せず)とを含む。RF電源270は、活性電極と接地電極の間に電圧を発生させるために活性電極に給電するように構成される。使用時に、プラズマ発生のためのガスを電極アレイ200に提供することができ、活性電極と接地電極の間の電圧がガスをプラズマに分解する。電極アレイ200及びRF電源270は、プラズマ発生装置300の一部である。電極アレイ200及びプラズマ発生装置300の好ましい実施に関しては、後に
図2、
図3、及び
図4を参照して詳細に説明する。
【0046】
プラズマ処理ツール101は、105a、105bの場所に示すような1又は2以上のガスソースを含む。設けられるガスソースの個数及びタイプは、実施されるプラズマ処理の性質に依存することになる。例えば、材料が堆積される場合(例えば、原子層堆積工程において)には、ガスソースは、該当する化学反応のための1又は2以上の前駆体ガスを含むことになる。工程がエッチング材料を必要とする場合に、ガスソースは、1又は2以上のエッチャントガスを含むことになる。Boschエッチング工程のような一部の工程は、堆積とエッチングの両方を必要とし、従って、両方のタイプのガスが利用可能になる。これらの反応性ガスは、装置300によってプラズマに変換することができる。しかし、一部の場合にプラズマ発生に特化した追加のガスを提供することができる。プラズマ発生に適するガスの例は、希ガス(例えば、ネオンNe及びキセノンXe)、酸化ガス(例えば、酸素O2及び亜酸化窒素N2O)、還元ガス(例えば、水素H2)、及び窒素含有ガス(例えば、分子窒素N2及びアンモニアNH3)を含む。ガスソースのうちの1又は2以上は、他のガスの侵入を制限するための及び/又は以前のガス環境をチャンバ102から排出するためのパージガスを提供することができる。パージガスは、例えば、N2又はアルゴン(Ar)のような安定したガスとすることができる。
【0047】
具体的な例として、典型的な循環的プラズマ助長原子層堆積(ALD)工程は、各循環において以下の段階を有する。
-前駆体ガスの投与
-前駆体ガスをチャンバから除去し、吸着化学種を基板面上に残すポンプ段階又はパージ段階
-吸着化学種と反応して基板上に固体薄膜を生成するプラズマによって励起されたガスへの露出
-プラズマ励起ガスをチャンバから除去するための任意的なポンピング又はパージング段階
【0048】
循環時間が可能な限り短い場合が有利である。プラズマ露出時間は、全循環時間のかなりの割合である場合があり、最小にする必要がある。この工程では、典型的に1mbar絶対圧までの低い圧力が使用される。処理チャンバの最内側面が基板と同時に被覆される場合であってもプラズマへの結合力は信頼性の高いものでなければならず、堆積層は、導電性とすることができる。多くのALD工程に使用される前駆体ガスは、全ての面が通常は100℃から200℃の範囲に加熱されない限り容易に凝縮する傾向を有する蒸気である。本発明の開示のプラズマ発生装置300は、これらの要件を考慮に入れる。
【0049】
図1に示す例示的装置では、プラズマ発生ガスソース105aは、ガスをチャンバ102の中にその壁を通して直接送出するものとして示しており、それに対してガスソース105bは、電極アレイ200を通してガスを送出するものとして示しているが、実際には様々なガスに対していずれか又は両方のオプションを使用することができる。例えば、プラズマ処理段階のための反応性ガスは、チャンバの壁を通して送出することができるが(すなわち、ガスソース105aのように)、後に下記で議論するように、プラズマ処理段階と段階の間にパージガスを提供するために電極アレイ200を通る送出導管(すなわち、ガスソース105bのような)を使用することができる。同様に、望ましい場合に、各ガスソースに対して処理チャンバへの複数のガス導入点が存在することも可能である。ガスソース105a、105bからチャンバ102への前駆体ガス及びプラズマ発生のためのガスの提供は、それぞれのバルブ106a、106bを用いて制御することができる。これらのバルブは、好ましくは、短いガスパルスの注入に関して調整される。
【0050】
プラズマ処理ツール101は、プロセッサ122が指令することができる制御ユニット121に接続される。制御ユニット121は、基板上で実行される工程に従って例えばRF電源270、信号発生器112、バルブ106a、106b、及びリフト113を制御することができる。
【0051】
図2は、プラズマ発生装置300の実施形態を示している。プラズマ発生装置300は、この図では断面に示す電極アレイ200を含む。プラズマ発生装置の機能を示すことを補うために更に示すのは、使用時に該当することになるプラズマ発生装置300に対して配置された例示的な基板台111及び基板104である。基板台111に対して実質的に平行である第1の方向を矢印Xに示しており、第1の方向Xに対して垂直な第2の方向を矢印Zに示している。
【0052】
この実施形態では、電極アレイ200は、電気的に接地された複数の接地電極201、211、221、231、241、251、261と、RF電源270に電気接続された複数の活性電極212、222、232、242、252、262とを含む。接地電極及び活性電極は、いずれの導電材料からも形成することができるが、金属又は合金、特にアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。この例では、活性電極212、222、232は、それぞれ活性電極242、252、262と電気接触している。従って、活性電極242、252、262とRF電源270の間の接続しか示していないが、活性電極212、222、232もRF電源270と電気接触している。同様に、接地電極211、221、231の接地への接続しか示していないが、接地電極241、251、261は、接地電極211、221、231それぞれと電気接触しており、従って、同じく接地される。
【0053】
開示する方式での複数の活性電極及び接地電極の使用が、選択電極の個数及び位置によって電極アレイがあらゆる選択区域にわたって延びるように電極アレイを構成することを可能にすることは理解されるであろう。望ましくは、電極アレイは、その横方向の広がりが第1の方向Xの基板104又は基板台111と少なくとも等しいように構成される。これは、均一なプラズマ流束を全体の基板104にわたって同時にプラズマソースと基板の間に追加のハードウエアを必要とすることなく送出することができることを保証し、従って、基板面の全ての部分が処理されることを保証するまで基板をプラズマに露出するのに要する時間の量が低減される。ウェーハへのプラズマソースの隣接度も、従来の遠隔プラズマソースと比較して必要な露出時間を短縮する。
【0054】
活性電極対(例えば、212と242、222と252、232と262)の間及び接地電極対(例えば、211と241、221と251、231と261)の間の電気接触は、各電極対を第2の方向Zに対して垂直な平面に横たわるループ又はリングとして成形されたそれぞれの電極、例えば、環状電極の一部として形成することによって達成することができる。そのような例では、中心接地電極201は、第2の方向Zに沿って位置合わせされた対称軸を有する円筒形状を有することができる。例えば、活性電極212、242は、半径r1を有して接地電極201の軸線と同心の単一環状活性電極の異なる部分とすることができる。同様に、接地電極211、241は、同じく中心接地電極201と同心の半径r2を有する単一環状接地電極の異なる部分とすることができる。正方形、矩形、又は楕円形のループ電極のような他の形状の電極をこれに代えて使用することができるが、環状電極は、全ての方向に最も均一なプラズマを提供することになることで好ましい。
【0055】
接地電極と活性電極は、第1の方向Xに沿って交互に配置される。RF電源270が活性電極212、222、232、242、252、262に給電すると、各活性電極とそれに隣接する接地電極の間に電圧が生じる。例えば、活性電極212、222、232、242、252、262がRF電源270による給電されると、活性電極212と接地電極201及び211の間に電圧が存在することになる。RF電源270は、隣接活性電極と接地電極の間でプラズマ発生のためのガス(
図1を参照して上記に列記した例のような)をプラズマに分解し、プラズマ発生のためのガスの定常的で持続的な電離速度に到達するほど十分な電圧を発生させるように構成される。
【0056】
各接地電極201、211、221、231、241、251、261及び各活性電極212、222、232、242、252、262は、ベースと遠位端を有する。例えば、接地電極251は、ベース端253と遠位端255を有し、活性電極252は、ベース端254と遠位端256を有する。この例では、接地電極201、211、221、231、241、251、261のベース203、213、223、233、243、253、263と活性電極のベース214、224、234、244、254、264とは平面XY1内で位置合わせする。この平面は、使用基板台111と平行であり、第2の方向Zに対して垂直な概念上の第1の平面の例である。(全ての実施形態は、接地電極及び活性電極の全てが交わるそのような第1の平面を少なくとも1つ有することになるが、この平面は、必ずしも電極の全てのベース端が配置される平面になるとは限らない。)
【0057】
活性電極212、222、232、242、252、262の遠位端216、226、236、246、256、266よりも接地電極201、211、221、231、241、251、261の遠位端205、215、225、235、245、255、265の方が第2の方向Zに沿って第1の平面XY1から遠く、従って、基板台111に近い。これは、電気力線の大部分が接地電極上で終端し、少数が基板104で終端するように電界分布を修正する。その結果、最も強いプラズマは、活性電極と接地電極の間の横方向空間内を延びることになる。更に、これは、活性電極212、222、232、242、252、262と基板台111の間に電流が発生する傾向を低減し(活性電極の遠位端よりも接地電極の遠位端の方が基板台111に近いわけではない従来の配置と比較して)、これは、基板台111上の基板104の近くでイオンが発生する可能性を低減し、従って、イオン衝撃によって基板104の面に引き起こされる破損を軽減する。
【0058】
各接地電極には、少なくとも1つの活性電極が隣接する。例えば、活性電極212は、接地電極211に隣接する。活性電極212の遠位端216よりも接地電極211の遠位端215の方が第2の方向Zに沿って距離a1だけ基板台111に近い。同様に、活性電極232と接地電極231とが互いに隣接し、活性電極232の遠位端233よりも接地電極231の遠位端235の方が第2の方向Zに沿って距離a3だけ基板台に近い。
【0059】
この例では、接地電極201、211、221、231、241、251、261の各々の遠位端205、215、225、235、245、255、265は平面XY3内で位置合わせされ、活性電極212、222、232、242、252、262の遠位端216、226、236、246、256、266は平面XY2内で位置合わせされる。平面XY2及びXY3は第2の方向Zに対して垂直である。従って、この実施形態では、全ての活性電極212、222、232、242、252、262の遠位端よりも接地電極201、211、221、231、241、251、261の全ての遠位端の方が第2の方向Zに沿って基板台111に近い。しかし、これは必須ではなく、一部の実施形態では、電極のベースと遠位端とは、この例のように一様に位置合わせされなくてもよく、重要な点は、各接地電極の遠位端の方が隣接活性電極(好ましくは、1よりも多い隣接活性電極が存在する場合は全ての隣接活性電極)よりも第2の方向Zに沿って基板台111に近いということである。
【0060】
隣接接地電極対は、接地電極(i)と隣接(すなわち、直近の)活性電極(j)とを含む。一般的に、活性電極の遠位端と接地電極の遠位端の間のz方向距離をaijと呼ぶ場合があり、この場合、iは、当該対の接地電極であり、jは、この対の活性電極である。例えば、接地電極211と活性電極212は、隣接する接地電極と活性電極との対210を構成する。接地電極211の遠位端215は、活性電極212の遠位端216よりも第2の方向Zに沿って距離a1だけ基板台111に近い場所に配置される。
【0061】
隣接する接地電極と活性電極との各対210、220、230、240、250、260の接地電極(i)と活性電極(j)が、活性電極の遠位端よりも接地電極の遠位端の方が第2の方向Zに沿って基板台111に近い差の距離aijの3倍よりも大きくない距離bijだけ第1の方向Xに沿って分離されるように各隣接電極対が配置される場合に特に有利であることが見出されている。例えば、隣接電極対210では、接地電極211と活性電極212が、第1の方向に沿って距離b1だけ分離され、b1は、活性電極212の遠位端216よりも接地電極211の遠位端215の方が第2の方向Zに沿って基板台111にそれだけより近い距離a1の2倍に等しい。
【0062】
この例では、隣接する接地電極と活性電極との各対210、220、230、240、250、260は、接地電極の遠位端が活性電極の遠位端よりも第2の方向Zに沿って基板台111に同じ距離だけ近い場所に配置されるように配置される。すなわち、距離a1、a2、a3、a4、a5、及びa6は全てが互いに等しい。同様に、隣接する接地電極と活性電極との各対210、220、230、240、250、260内の接地電極と活性電極は、第1の方向Xに沿って同じ距離だけ分離される。すなわち、この例では、距離b1、b2、b3、b4、b5、及びb6は全てが互いに等しい。その結果、距離b1は距離a1の2倍であり、距離b2は距離a2の2倍であり、以降同じく続く。しかし、他の実施形態では、これらの寸法は、隣接する接地電極と活性電極との各対が、隣接活性電極(j)の遠位端よりも接地電極(i)の遠位端の方が第2の方向Zに沿って基板台111に近い(好ましくは、第1の方向Xに沿う接地電極と隣接活性電極の分離bijの少なくとも3分の1、好ましくは、少なくとも半分である距離aijだけ)という要件を満たすように配置される限り、様々な値のあらゆる組合せを採用することができる。
【0063】
各活性電極212、222、232、242、252、262は、第2の方向Zに沿うそのベースと遠位端との間にそれぞれの長さc1、c2、c3、c4、c5、c6を有する。活性電極212、222、232、242、252、262が給電される結果として発生するプラズマの大部分は、活性電極212、222、232、242、252、262と接地電極201、211、221、231、241、251、261の間の空間、すなわち、寸法b1、b2、b3、b4、b5、b6とc1、c2、c3、c4、c5、c6とによって境界がそれぞれ定められた複数の空間内で形成される。これらの空間を「集中プラズマ領域」と呼ぶ場合がある。例えば、接地電極211と活性電極212の間の集中プラズマ領域は、第1の方向Xに沿う幅b1と第2の方向Zに沿う長さc1とを有する。一般的に、接地電極(i)と隣接活性電極(j)の間隙bijがそれぞれの活性電極の長さcjに対して小さくなると、寸法bijとcjによって境界が定められた集中プラズマ領域内で発生するイオンの大部分は、この空間を出る前に衰勢する。しかし、それによってラジカルが集中プラズマ領域の外に拡散する前に接地電極及び活性電極との衝突によって排除される傾向も高まる。接地電極と活性電極との所与の対に関して、基板台に漏出するイオン流束は、cjが少なくとも1.5bijである時に特に好ましい分量だけ低減され、cjがbijの4倍よりも大きくない時に特に好ましいラジカル流束が得られることが見出されている。従って、好ましくは、電極アレイ200は、c1がb1の1.5倍と4倍の間にあり、c2がb2の1.5倍と4倍の間にあり、以降同じく続くように配置される。
【0064】
この例では、活性電極212、222、232、242、252、262の各々は、他と同じ長さを有する。すなわち、寸法c1、c2、c3、c4、c5、c6は全てが互いに等しい。上述のように、隣接する接地電極と活性電極との分離b1、b2、b3、b4、b5、b6も互いに等しい。従って、この例では、隣接する接地電極と活性電極との各対210、220、230、240、250、260では、第1の方向Xに沿う接地電極(i)と活性電極(j)の分離bijと第2の方向Zに沿う活性電極の長さcjとの比は同じである(かつcjがbijの2倍と4倍の間にあるようなものである)。この例では、特に、寸法b1、b2、b3、b4、b5、b6の各々は、約15mmの大きさを有し、長さc1、c2、c3、c4、c5、c6の各々は、約30mmの大きさを有する。従って、隣接する活性電極と接地電極との各対210、220、230、240、250、260は、cijがbijの約2倍である集中プラズマ領域を有する。しかし、他の例では、個々の寸法b1、b2、b3、b4、b5、b6及びc1、c2、c3、c4、c5、c6は、隣接する接地電極と活性電極との各対210、220、230、240、250、260をそれに対してcjがbijの1.5倍と4倍の間にあるように配置することを依然として可能にしながら異なる値の範囲に及ぶことができる。
【0065】
この例では、各活性電極は、第1の方向Xに沿って約16mmの幅wを有する。より一般的には、幅wは、活性電極(i)と隣接接地電極(j)の間の分離bijの1.1倍よりも小さいことが好ましい。上記で議論した特徴に加えて、この特徴は、活性電極212、222、232、242、252、262と基板台111の間に放電電流が発達する傾向を更に低減する。この例では、全ての活性電極が互いに同じ幅wを有するが、これは必須ではない。
【0066】
この実施形態では、電極アレイ200は、プラズマソースが広い区域にわたって均一なプラズマを発生させることを可能にするのに好ましいように複数の活性電極を含むが、これは必須ではないことにも注意しなければならない。最少時に、電極アレイ200は、単一活性電極と2つの接地電極とを含むことができ(活性電極のいずれの側にも1つ)、従って、2つの隣接対を形成する。電極の幾何学形状に関して上記で議論した全ての要件がここでも適用される。
【0067】
任意的に、しかし、好ましくは、基板台111は、第2のRF電源112に接続される。この電源は、基板台を電気的に対してバイアスし、それによって基板へのイオン流束を更に修正するのに使用することができる。例えば、イオンエネルギ分布を制御するように調整された波形を台に印加することができる。この波形は、基板に衝突するイオンエネルギの分布を制御するために、イオン衝撃によって又は波形を相応に変化させることによって基板面を修正するのに利用することができる。例えば、この種の制御式イオン衝撃は、ある一定の堆積工程中に膜特性を修正するのに適切とすることができ、及び/又はエッチング段階中に使用することができる。
【0068】
図3は、
図1に示すプラズマ処理ツール101に使用することができるプラズマ発生装置300及び処理チャンバ102の別の実施形態の断面図を示している。電極アレイ200の配置、特に接地電極と活性電極との相対構成は、
図2を参照して上述したものと実質的に同じであり、従って、ここで再度説明することはしない。しかし、この場合、接地電極のベースと活性電極のベースとは共面ではなく、接地電極201、211、211...のベースは平面XY1内に横たわり、それに対して活性電極212、222、232...のベースは、平面XY
1と平行であるが、電気分離を保証するためにそこから離間した平面XY
1’内に横たわる。
【0069】
基板台111は、チャンバ102に置かれ、第2の方向Zに沿って基板台111の位置を調節するように制御することができるリフト113によって支持される。第2の方向Zに沿う基板台111の位置はリフト113を用いて変化させることができるが、基板台111は、第1の方向Xに沿う隣接する活性電極と接地電極の間の分離bijよりも大きい第2の方向Zに沿う活性電極212、222、232、242、252、262の遠位端からの距離Dの場所に常に配置される。これは、電流が活性電極212、222、232、242、252、262と基板台111の間に発生する可能性を更に低減する。
【0070】
プラズマ発生装置300の電極アレイ200は、チャンバ102の上部壁を形成するパネル301を含む。接地電極201、211、221、231、241、251、261は、パネル301と一体的に接続され、それと電気接触している。接地電極201、211、221、231、241、251、261は、第2の方向Zに対して垂直な平面に横たわる単一の一体形成導電ユニットの各部分である。同様に、活性電極212、222、232、242、252、262も、リング形状を有して第2の方向Zに対して垂直な平面に横たわる単一導電ユニットの一部分である。パネル301の第1の面331とパネル301の第2の面332との間で第2の方向Zに沿ってパネル301を通るボア302が延びる。
【0071】
パネル301は電気的に接地され、従って、接地電極201、211、221、231、241、251、261も、パネル301と電気接触している結果として電気的に接地される。活性電極212、222、232、242、252、262は、パネル301によって支持されるが、そこから電気的に遮断される。パネル301内のボア302を通って導電性フィードスルー310が延び、活性電極212、222、232、242、252、262と電気接触している。フィードスルー310は、RF電源270にも電気接続され、従って、活性電極212、222、232、242、252、262は、フィードスルー310を通してRF電源270と電気接触している。フィードスルー310及びボア302に関しては、下記で
図4を参照して説明する。実際に、パネルを通して活性電極への複数の接続を与えるために1よりも多いそのようなフィードスルー310及び対応するボア302を設けることができる。
【0072】
プラズマ発生電極アレイ200内には導管303が形成される。導管303は、パネル301を通って延び、複数の分枝303a、303b、303c、303dを有し、これらの分枝は、接地電極201、241、251、及び261それぞれを通って延びてこれらの電極の側面上で開く。電極アレイ200内の電極間の集中プラズマ領域にガスを送出することを可能にするために、導管303は、例えば、プラズマ発生のためのガスソース、前駆体ガスソース、又はパージガスソース(
図1に示すガスソース105bのような)に接続することができる。
【0073】
電極アレイ200は、好ましくは、第1の方向Xに基板台111と少なくとも同じ幅を有する。この幅は、プラズマ発生装置300が使用状態でプラズマを発生させる時に、均一なラジカル流束が基板台111の最大の広がりのいたるとこで受け入れられることを保証することを支援する。更に、この幅は、基板の全面が、実質的に同じ最大プラズマ流束を同時に受け入れることになるので、基板をプラズマに露出するのに要する時間の量を低減する。必要な露出時間は、基板への電極アレイの隣接度によっても遠隔ICPプラズマソースに必要とされるものと比較して低減される。
【0074】
パネル301は、その第2の面332で外部熱ソース(図示せず)によって加熱することができる。パネル301は、その第2の側332からパネル301が一体的に形成された接地電極201、211、221、231、241、251、261に熱を実質的に伝達し、従って、パネル301の第2の側332が加熱された時に接地電極201、211、221、231、241、251、261も同じく加熱されることになるように形成される。活性電極212、222、232、242、252、262の各々は、それを加熱するために給電することができる抵抗要素(図示せず)を含む。接地電極201、211、221、231、241、251、261及び活性電極212、222、232、242、252、262を加熱することにより、プラズマによって材料が電極アレイ200上に堆積されることになる速度が低減され、それによってプラズマ発生装置300が洗浄及び/又は保守を必要とする頻度が低減される。一般的に、これらの構成要素は、その面上への材料の凝結を低減するために100℃から200℃の範囲の温度まで加熱することができる。
【0075】
図4は、パネル301内に形成されたボア302及びボア302を通って延びるフィードスルー310を含む
図3に示すプラズマ発生装置300の部分の拡大詳細断面図を示している。上述のように、実際には複数のそのようなフィードスルー及びボアが存在することが可能である。フィードスルー310は、活性電極222と接触している第1の端部311と、ボア302を通って延びるシャフト314と、第1の方向Xにボア302よりも幅広のフランジ313を含むように成形された第2の端部312とを有する。電気絶縁要素320は、フランジ313とパネル301の第2の面332の間にあるシャフトの部分を実質的に取り囲み、それによってフィードスルー310とパネル301とが互いに電気接触状態になるのが防止される。電気絶縁要素320は、あらゆる適切な電気絶縁材料で形成することができるが、好ましくは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、又はアルミナのようなセラミックのような誘電材料で形成される。第1のOリング321は、フランジ313と電気絶縁要素320の間にあるフィードスルーのシャフト314の部分を取り囲み、第2のOリング322は、絶縁要素320とパネル301の第2の面322の間にあるシャフト314の部分を取り囲む。Oリング321、322は、プラズマ処理に必要とされる条件、例えば、部分真空をチャンバ102内で持続することを可能にするためにパネル301の第2の面331上でボア302の開口部を密封するように構成される。
【0076】
電気絶縁要素320は、ボア302の中に延びてボア302内のシャフト314の部分を実質的に取り囲む延長部分323を有することができる。延長部分323は、プラズマ発生装置300が発生させたプラズマが、延長部分323が置かれたボア302の領域に侵入することを防止し、それによってこの領域内のフィードスルー310及びボア302の面上にプラズマによって材料が堆積されることを防止する。好ましくは、延長部分323は、フィードスルーシャフト314とボア302の壁の間に残る空間の少なくとも半分を埋める。この例では、電気絶縁要素320の延長部分323は、電気絶縁要素の一体部分323であるが、他の実施形態では、延長部分323は、実質的に同じ効果を達成する個別の第2の電気絶縁要素で置換することができる。
【0077】
ボア302は、第2の方向Zに沿って長さdを有し、ボアの内側のシャフト314とボア302の内面の間に幅eの間隙が存在する。フィードスルー310及びボア302は、ボアの長さdがフィードスルー310とボア302の内面の間隙の幅eの少なくとも10倍であるように形成される。これは、プラズマがフィードスルー310とボア302の内面の間の空間に沿って進行するのを阻止する。この効果は、ボアの長さdが間隙の幅eの50倍大きい場合に更に高まる。この例では、幅eは、0.5mmと2.5mmの間にあるとすることができる。
図3により完全に示す好ましい設計は、互いに密に組み合う電極板によって形成された入り組んだ経路の結果として更にボアと集中プラズマ領域の間の全ての視線を取り除く。これは、プラズマがボア領域の中に侵入することを防止することを更に支援する。距離eは、プラズマが所与のガス圧で衝突するか否かを決定する。0.5mmから2.5mmの範囲の幅を有する間隙は、約5Torrよりも低い圧力ではボア302内の幅狭の同軸空間内にプラズマを抑制することになる(そのような圧力ではプラズマは他の場所に延びることになるが)。そのような寸法を使用すると、チャンバ圧が約5Torrであった場合に、ボア間隙内でプラズマが発生する可能性があり、これは望ましくないと考えられる。従って、この発生を回避するために最大の好ましいチャンバ圧を相応に制限することができる。
【0078】
本発明の開示の電極アレイの有効性を示すために、
図3及び
図4に関して上述した種類のプラズマ処理ツールを用いて試験を実行した。用いた実施例では、2つの活性電極リング及び2つの接地電極リング(
図3に示すような各タイプ3つのものではなく)に加えて中心接地電極が存在した。接地電極の遠位端は、活性電極を超えて6.5mmから8.5mmまで延びるものであった。電極の間隔及び活性電極の長さ及び幅は、
図3の例において上記で提示したものであった。フィードスルーでのボア間隙は1.5mmであり、フィードスルー寸法の比d:eは約50であった。最初に、アルゴン雰囲気に対して、プラズマを衝突させるためにRF電源270によって印加されるプラズマソース電力レベルRの範囲にわたって、更にガス圧Pの範囲にわたって基板台111へのイオン流束を測定した。この測定は、ラングミュアプローブを用いて基板台でのイオン電流密度を測定することによって実施した。その結果は、(a)0.5Torrのアルゴン圧でのイオン電流密度I対RF電力R、(b)200WのRF電力でのイオン電流密度I対アルゴン圧Pを示す
図5(a)及び
図5(b)それぞれに示している。イオン電流密度測定値は、mAcm
-2の単位で示したものである。第2の同じ試験を酸素雰囲気に対して繰り返した。その結果は、(a)0.5Torrの酸素圧でのイオン電流密度I対RF電力R、(b)200WのRF電力でのイオン電流密度I対酸素圧Pを示す
図5(a)及び
図5(b)それぞれに示している。イオン電流密度測定値は、ここでもまたmAcm
-2の単位で示したものである。0.1~1Torrの圧力範囲及び600Wまでのプラズマソース電力の全ての条件にわたって、ウェーハでのイオン流束は、アルゴンでは0.2mAcm
-2よりも低く、酸素では0.1mAcm
-2よりも低いことは理解されるであろう。比較すると、類似の寸法の従来の平行板プラズマチャンバでは、ウェーハでのイオン電流密度は、類似の条件下では、典型的に1mAcm
-2よりも高いと推測される。
【0079】
十分なラジカルの発生を確認するために、次いで、同じプラズマ処理ツールをポリメチルメタクリレート(PMMA)の薄膜を酸素エッチングするための工程に対して用いた。エッチング速度は、原子酸素ラジカルの流束を示すことになる。3分間エッチング試験での100Wのプラズマソース電力(R)、100mTorrの圧力、100sccm酸素の流量では、20nm/分のエッチング速度を測定した。この速度は、イオン衝撃によってエッチング速度が高まる標準のプラズマエッチングチャンバ内の同等の条件下で測定した70nm/分から90nm/分よりも小さいが、ウェーハ面への有意なラジカル流束を示している。
【0080】
更に別の試験では、本発明の開示のプラズマ処理ツールは、プラズマ助長原子層堆積を用いて堆積した薄膜に対して以下の堆積速度をもたらした(従来の遠隔ICPプラズマソースを用いてこれまでに得られたより低い速度と比較して):
Al2O3:8.3nm/分(これまでは1.5nm/分)
TiN:1.5nm/分(これまでは0.1nm/分)
【0081】
速度改善は、実質的に循環時間の短縮に帰するものである。これらの工程の各々に関して200mm径の基板上で得られた均一性は、±2%よりも優れており、大面積プラズマソースの均一性を明らかにした。
【符号の説明】
【0082】
104 基板
111 基板台
200 電極アレイ
270 RF電源
300 プラズマ発生装置