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特許7386245ワークピースを機械加工する工作機械及びワークピースを機械加工する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ワークピースを機械加工する工作機械及びワークピースを機械加工する方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20231116BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231116BHJP
   B23Q 3/157 20060101ALI20231116BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B23Q3/155 F
B23Q3/155 G
B23Q11/00 N
B23Q11/00 Q
B23Q3/157 C
B23Q11/08 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021531531
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2019081788
(87)【国際公開番号】W WO2020114765
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】102018220866.2
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505377326
【氏名又は名称】ディッケル マホ ゼーバッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ エンゲル
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074654(JP,A)
【文献】特開2017-064867(JP,A)
【文献】特開2015-009306(JP,A)
【文献】特開2013-063488(JP,A)
【文献】特開2012-148382(JP,A)
【文献】特開2010-125596(JP,A)
【文献】特開2008-105173(JP,A)
【文献】特開2006-095627(JP,A)
【文献】特開2004-243513(JP,A)
【文献】実開昭57-053841(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02965862(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/047301(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/017825(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108237432(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-1/76
B23Q 3/155-3/157
B23Q 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを機械加工する工作機械(100)であって、
前記ワークピースをクランプする工作台(10)と、
前記ワークピースを機械加工するための工具を収納するワークスピンドル(20)と、
前記工作台(10)及び少なくとも1つの第1のカバー(30)によって画定される初期作業空間と、
前記初期作業空間の外側に配置され、かつ前記ワークスピンドル(20)内に収納された前記工具を交換するように構成された工具交換装置(50)と、
を備え、
該工作機械(100)は、
前記第1のカバー(30)が移動され、その結果、前記工作機械(100)の前記初期作業空間が工具交換領域(80)によって拡張作業空間に拡張されるとともに、前記工具交換装置(50)が通って前記工具交換領域(80)へ移動可能であるアクセス表面(42)が露出され、
前記ワークスピンドル(20)が前記工具交換領域(80)内に位置決めされ、これにより前記工具交換装置(50)は、前記ワークスピンドル(20)によって収納された前記工具を、前記工具交換領域(80)内で交換することができるように、
具交換を実行するように構成され、
前記工具交換は、前記初期作業空間の外側で実行される、工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械(100)であって、前記工作機械(100)の前記初期作業空間は、前記工作台(10)、前記第1のカバー(30)及び第2のカバー(40)によって画定されることを特徴とする、工作機械。
【請求項3】
請求項2に記載の工作機械(100)であって、前記露出されたアクセス表面(42)は、前記第2のカバー(40)に対して垂直に延びることを特徴とする、工作機械。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の工作機械(100)であって、前記露出されたアクセス表面(42)は、前記工作台(10)に対して垂直に延びることを特徴とする、工作機械。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の工作機械(100)であって、前記ワークピースが機械加工されているとき、前記アクセス表面(42)は、前記第1のカバー(30)及び前記第2のカバー(40)によって前記工作機械(100)の前記初期作業空間から分離され、前記第1のカバー(30)及び前記第2のカバー(40)は、前記ワークピースが機械加工されているとき互いに同一平面に配置され、前記工具交換領域(80)を前記初期作業空間から分離することを特徴とする、工作機械。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の工作機械(100)であって、少なくとも前記第1のカバー(30)は、前記工作機械の前記初期作業空間を前記工具交換領域(80)によって拡張するために、前記初期作業空間から出る方向に移動されることを特徴とする、工作機械。
【請求項7】
請求項6に記載の工作機械(100)であって、少なくとも前記第1のカバー(30)は、前記ワークスピンドル(20)を移動させる駆動装置と無関係に、別個の駆動装置(35)によって移動されることを特徴とする、工作機械。
【請求項8】
請求項2~5のいずれか1項に記載の工作機械(100)であって、前記ワークスピンドル(20)は、前記第1のカバー(30)の開口部(32)を通って長手方向において移動する、移動可能なキャリア(22)の端部上に配置されることを特徴とする、工作機械。
【請求項9】
請求項8に記載の工作機械(100)であって、前記工作台(10)のクランプ表面がx-y平面に広がり、前記第1のカバー(30)はx-z平面に広がることを特徴とする、工作機械。
【請求項10】
請求項9に記載の工作機械(100)であって、前記ワークスピンドル(20)をy軸の方向において位置決めするために、前記キャリア(22)をその長手方向に沿って移動させることによって、前記ワークスピンドル(20)は前記工具交換領域(80)内に位置決めされることを特徴とする、工作機械。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の工作機械(100)であって、前記工具交換装置(50)は、x方向において前記キャリア(22)に隣接して離間された工具マガジン(60)上に配置されることを特徴とする、工作機械。
【請求項12】
請求項11に記載の工作機械(100)であって、前記工具マガジン(60)は、前記ワークピースが機械加工されているとき、前記第1のカバー(30)及び前記第2のカバー(40)によって前記工作機械(100)の前記初期作業空間から分離され、前記第1のカバー(30)と前記第2のカバー(40)とは、前記ワークピースが機械加工されているとき、互いに同一平面に配置されることを特徴とする、工作機械。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の工作機械(100)であって、前記キャリア(22)がx方向に移動されているとき、前記工具マガジン(60)及び前記工具交換装置(50)は、前記キャリア(22)と平行に移動されることを特徴とする、工作機械。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか1項に記載の工作機械(100)であって、前記工具マガジン(60)は、前記工具交換装置(50)を、前記アクセス表面(42)を通して前記工具交換領域(80)へ移動させるリニア軸(62)を備え、前記工作機械(100)の前記初期作業空間が前記工具交換領域(80)によって拡張されていることを特徴とする、工作機械。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の工作機械(100)であって、前記工具交換装置(50)は二重グリッパーとして構成されることを特徴とする、工作機械。
【請求項16】
請求項8に記載の工作機械(100)であって、前記キャリア(22)が通って延びる前記第1のカバー(30)内の前記開口部(32)は、少なくとも1つのスクレーパー(33)を備え、該スクレーパー(33)は、前記ワークスピンドル(20)が前記第1のカバー(30)の方向において移動されるとき、前記キャリア(22)上に存在する材料チップ及び/又は冷却潤滑剤を該キャリア(22)からこすり落とすことを特徴とする、工作機械。
【請求項17】
請求項16に記載の工作機械(100)であって、該工作機械(100)は、前記第1のカバー(30)の下方に排水プレート(90)を更に備え、該排水プレート(90)は、前記工具交換中に前記第1のカバー(30)から流れ去る冷却潤滑剤及び材料チップを捕らえ、それらを収集領域へ進路を変えることを特徴とする、工作機械。
【請求項18】
ワークピースを工作機械(100)上においてNCプログラムに従って機械加工する方法であって、前記工作機械(100)は、前記ワークピースをクランプする工作台(10)と、前記ワークピースを機械加工するための工具を収納するワークスピンドル(20)と、前記工作台(10)及び少なくとも1つの第1のカバー(30)によって画定される初期作業空間と、前記初期作業空間の外側に配置され、かつ前記ワークスピンドル(20)内に収納された工具を交換するように構成された工具交換装置(50)とを備え、
前記ワークピースを機械加工する該方法は、
前記ワークピースを前記工作機械の前記工作台(10)上でクランプするステップと、
前記ワークピースを機械加工するための前記工具を前記ワークスピンドル(20)内に収納するステップと、
前記ワークピースを前記NCプログラムに従って機械加工するステップと、
を含み、
工具交換の間に、
前記第1のカバー(30)を移動させ、その結果、前記工作機械(100)の前記初期作業空間が工具交換領域(80)によって拡張作業空間に拡張されるとともに、前記工具交換装置(50)が通って前記工具交換領域(80)へ移動可能であるアクセス表面(42)が露出されるステップと、
前記工具交換装置(50)を、前記露出したアクセス表面(42)を通して前記工具交換領域(80)へ移動させるステップと、
前記ワークスピンドル(20)を前記工具交換領域(80)内に位置決めし、これにより前記工具交換装置(50)が前記ワークスピンドル(20)によって収納された前記工具を前記工具交換領域(80)内で交換することができるステップと、
が実施され
前記工具交換は、前記初期作業空間の外側で実行される、方法。
【請求項19】
前記工具交換装置(50)は、前記ワークスピンドル(20)を前記工具交換領域(80)内に位置決めする前記ステップと無関係に、前記露出したアクセス表面(42)を通して前記工具交換領域(80)へ移動されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ワークスピンドル(20)は、前記初期作業空間を前記工具交換領域(80)によって拡張する前記第1のカバー(30)の前記移動と無関係に、前記第1のカバー(30)の方向において移動されることを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを機械加工する工作機械に関する。本発明は、工作機械上のワークピースを機械加工する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
今日、トラベリングコラム機械(travelling column machine)は、大量の及び/又は非常に重いワークピースを機械加工に関しては最先端のものである。機械は、開くべきカバーの背後に位置しかつワークピースを機械加工する工具を保持する、工具交換装置を有することができる。工具を交換すべき場合、カバーが開き、工具交換装置は、ワークスピンドルへ移動しそこで工具交換を実施することができる。
【0003】
公知の工作機械において、ワークスピンドルは、工具交換中、工作機械の作業空間内に実質的に残ることが多い。しかしながら、ここで、ワークスピンドルの移動中及び/又は工具交換自体の最中に、工具交換装置がワークピーステーブル上にクランプされたワークピースと衝突し、これにより工具交換装置及び/又はワークピースが損傷する可能性があるという大きな危険がある。
【0004】
さらに、公知の工作機械は、多くの場合、そのような工具交換を工作機械内の特定位置、すなわち通常工作機械上に固定された工具マガジンの近傍で行う必要があるように構成される。これは、各工具交換作業についてワークスピンドルを特定位置に移動する必要があり、結果的にそれぞれのワークピースの処理時間の増大をもたらすことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、上述の課題を回避することを可能にする、ワークピースを機械加工する工作機械を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の更なる目的は、ワークピースを工作機械上で機械加工する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、請求項1に記載の工作機械、及び請求項18に記載の方法によって達成される。従属請求項は、本発明による工作機械及び本発明による方法の、有利なかつ例示的な実施形態に関する。
【0008】
本発明によるワークピースを機械加工する工作機械は、ワークピースをクランプする工作台と、ワークピースを機械加工するための工具を収納するワークスピンドルと、工作台及び少なくとも1つの第1のカバーによって実質的に画定される作業空間と、作業空間の外側に配置され、かつワークスピンドル内に収納された工具を交換するように構成された工具交換装置とを備え、工作機械は、工具交換中に、第1のカバーが移動され、それにより、工作機械の作業空間が工具交換領域によって拡張されるとともに、工具交換装置が通って工具交換領域へ移動可能であるアクセス表面が露出され、ワークスピンドルが工具交換領域内に位置決めされ、これにより工具交換装置は、ワークスピンドルによって収納された工具を、工具交換領域内で交換することができるように更に構成される。
【0009】
本発明による工作機械により、工具交換を作業空間の外側で実行することが可能になり
、その一方で工作機械が依然としてできるだけコンパクトな構造を有することが保証される。今や工具交換装置がワークピース又はワークピースの任意選択のクランプ手段と衝突する危険を回避することができ、その理由は、ワークスピンドルの部品又は工具交換装置には作業空間と干渉する輪郭がないためである。
【0010】
さらに、本発明による工作機械は、第1のカバーの移動だけが必要であるため、工具交換領域による作業空間の拡張、及び工具交換装置が通って工具交換領域へ移動可能な、工具交換装置のためのアクセス又はアクセス表面の露出が同時に行われるように構成される。
【0011】
したがって、第1のカバー用の別個の駆動装置を使用することによって、2つのステップを並行に行うことができ、結果として工具交換時間及び機械加工から機械加工までの時間の削減をもたらす。
【0012】
さらに、本発明による工作機械により、ワークスピンドルがその端部セクション上に設けられる、キャリアのZ軸又は長さの突出を縮小することが可能になった。これにより、機械動特性の向上及び工作機械の精密性の最適化が可能になった。
【0013】
さらに、本発明による工作機械により、機械加工中にキャリア上に堆積する材料チップ及び冷却潤滑剤がスクレーパーを設けることによってキャリアから除去することが可能になり、その結果、材料チップは、キャリア上に堆積することもなく、ワークスピンドルの供給機構に到達する(x軸、y軸及びz軸に沿って)こともできない。これにより、工作機械の信頼性も向上する。
【0014】
さらに、キャリアに隣接して横方向に担持された工具マガジンにより、工作機械の構造はより一層コンパクトな状態にすることもでき、その結果工具交換時間をかなり削減することができる。
【0015】
さらに、よりコンパクトな構造のおかげで、本発明による工作機械は、同じ又はより少ない鋳込み質量でより高い剛性を有し、結果として熱的安定性に関する追加のかつ有益な効果、及びより高い幾何学的精度をもたらす。機械動特性もそれによって有益に影響され得る。
【0016】
工作機械の有利な発展は、工作機械の作業空間が、工作台、第1のカバー及び第2のカバーによって実質的に画定されることである。
【0017】
ここで、ワークピースを機械加工するために利用可能な作業空間は、作業空間と工作機械のトラベリングコラムとの間の仕切りとして移動可能な第1のカバー及び第2のカバーに関する原理によって拡張することができる。
【0018】
さらに、有利な発展は、露出されたアクセス表面が、第2のカバーに対して実質的に垂直に延びることである。
【0019】
加えて、本発明による工作機械は、有利には、露出されたアクセス表面が、工作台に対して実質的に垂直に延びるように更に発展させることができる。
【0020】
両方の場合において、工具交換装置のためのアクセス表面を、第1のカバーの移動と同時に露出することが可能である。既述したように、これにより相当の量の工具交換時間が節約され、その結果ワークピースを異なる工具を用いてより速く機械加工することができる。
【0021】
さらに、ワークピースの機械加工中に、アクセス表面が第1のカバー及び第2のカバーによって工作機械の作業空間から分離され、ワークピースが機械加工されている間に、第1のカバーと第2のカバーとは、互いに実質的に同一平面に配置されるとともに、工具交換領域を作業空間から分離するという特に有利な方法において、本発明による工作機械を更に発展させることが可能である。
【0022】
ワークピースが機械加工されている間に、工具交換領域及び工具スピンドルの給送機構を作業空間から分離することには、工作機械の信頼性に関する有益な効果があり、その理由は、いずれの材料チップ又は冷却潤滑剤も、工具交換領域又は給送機構内に入ることができず、それらを汚染し及び/又は破損する可能性もないためである。
【0023】
本発明による工作機械の特に有利な発展は、少なくとも第1のカバーが、工作機械の作業空間を工具交換領域によって拡張するために、作業空間から出るように1つの方向において移動されることである。
【0024】
これにより作業空間を工具交換領域によって直接拡張することができ、これにより工具交換を、結果として工具交換装置とワークピース及び/又はワークピースのクランプ手段との衝突をもたらす可能性がある、工作機械の作業空間内で行なう必要がなくなる。
【0025】
さらに、本発明による工作機械は、少なくとも第1のカバーが、ワークスピンドルを移動させる駆動装置と無関係に、別個の駆動装置によって移動されるように有利に発展させることができる。
【0026】
これは、第1のカバーがワークスピンドルの移動と無関係に移動できるとき特に有利であり、その理由は、これが、例えば、キャリアに蓄積された材料チップ及び冷却潤滑剤をスクレーパーが高い信頼性で除去するただ一つの手法であるためである。
【0027】
さらに、本発明による工作機械は、ワークスピンドルが、第1のカバー内の開口部を通って長手方向において移動する、移動可能なキャリアの端部セクション上に配置されるように有利に更に発展させることができる。
【0028】
第1のカバー内の開口部により、キャリア及びひいてはワークスピンドルを第1のカバーと無関係に移動することが可能になる。
【0029】
本発明によれば、工作機械は、工作台のクランプ表面がx-y平面に広がり、第1のカバーがx-z平面に実質的に広がるように更に発展させることができる。
【0030】
これにより、工作台のクランプ表面と第1のカバー(及び第2のカバーも)とが、互いに実質的に垂直に配置されることが明らかになる。
【0031】
本発明による工作機械の有利な更なる発展は、ワークスピンドルをy軸の方向において位置決めするために、キャリアをその長手方向に沿って移動させることによって、ワークスピンドルが工具交換領域内に位置決めされることである。
【0032】
さらに、本発明による工作機械は、工具交換装置が、x方向においてキャリアに隣接して離間された工具マガジン上に配置されるように更に特に有利に発展させることができる。
【0033】
工具マガジンに、キャリアの近傍及びひいてはワークスピンドルの近傍において工具交
換装置を設けることによって、必要な工具を、ワークスピンドルに短時間で供給することができ、したがって複数の工具を用いたワークピースの処理時間を著しく削減することができる。
【0034】
本発明による工作機械は、工具マガジンが、ワークピースが機械加工されているとき、第1のカバー及び第2のカバーによって工作機械の作業空間から分離され、第1のカバーと第2のカバーとが、ワークピースが機械加工されているとき、互いに実質的に同一平面に配置されるように更に特に有利に発展させることができる。
【0035】
ワークピースが機械加工されている間に、工具マガジンを作業空間から分離することには、工作機械の信頼性に関する有益な効果があり、その理由は、いずれの材料チップ又は冷却潤滑剤も、工具マガジン、リニア軸又は工具交換装置内に入ることもできず、それらを汚染し及び/又は破損する可能性もないためである。
【0036】
本発明による工作機械の有利な更なる発展は、キャリアがx方向において移動されている間に、工具マガジン及び工具交換装置がキャリアと平行に移動されることである。
【0037】
特に有利な更なる発展は、工具マガジンが、キャリア(及びワークスピンドル)の移動につれてx方向に沿って運搬され得ることである。その結果、工具交換は、x軸に沿ってワークスピンドル上のどのような位置でも実施することができ、したがってワークスピンドルの追加の給送移動を回避し、ひいては工具交換時間及びワークピースの処理時間を削減する。
【0038】
本発明による工作機械は、工具マガジンが、工具交換装置を、アクセス表面を通して工具交換領域へ移動させるリニア軸を備え、工作機械の作業空間が工具交換領域によって拡張されているように有利に更に発展させることができる。
【0039】
工具交換装置を工具交換領域へ移動させるために、有利には、リニア軸を設けることができ、その結果、工具交換装置は、作業空間から分離された第1のカバー及び第2のカバーの背後にあるその位置から工具交換領域へ移動して、工具交換領域にあるワークスピンドル上で工具交換を実施することができる。
【0040】
さらに、本発明による工作機械は、工具交換装置が二重グリッパーとして構成されるよう有利に更に発展させることができる。
【0041】
しかしながら、本発明による工作機械において、工具交換装置の他の任意の構成を設けることもできる。
【0042】
さらに、本発明による工作機械は、キャリアが通って延びる第1のカバー内の開口部が、少なくとも1つのスクレーパーを備え、スクレーパーが、ワークスピンドルが第1のカバーの方向において移動されるとき、キャリア上に存在する材料チップ及び/又は冷却潤滑剤をキャリアから除去するように有利に更に発展させることができる。
【0043】
少なくとも1つのスクレーパーにより、キャリアは、付着する材料チップ及び冷却潤滑剤が有利に除去され/掃除されることが可能になる。
【0044】
さらに、工作機械が、第1のカバーの下方に排水プレートを更に備え、この排水プレートは、工具交換中に第1のカバーから流れ去る冷却潤滑剤及び材料チップを捕らえ、それらを収集領域へ進路を変えるように、本発明による工作機械を有利に更に発展させることができる。
【0045】
スクレーパーが材料チップ及び冷却潤滑剤をキャリアからこすり落とした後、材料チップ及び冷却潤滑剤は、第1のカバーを流れ落ち、処理部へ指図された手法で有利に供給される。これは排水プレートによって可能になり、その理由は排水プレートが滴る冷却潤滑剤及び材料チップを、例えば工作台の下方の収集領域へ給送し、収集領域から冷却潤滑剤が通過し、工作機械の内側又は外側で再処理され得るためである。
【0046】
本発明による、ワークピースを工作機械上においてNCプログラムに従って機械加工する方法であって、工作機械は、ワークピースをクランプする工作台と、ワークピースを機械加工するための工具を収納するワークスピンドルと、工作台及び少なくとも1つの第1のカバーによって実質的に画定される作業空間と、作業空間の外側に配置され、かつワークスピンドル内に収納された工具を交換するように構成された工具交換装置とを備え、この方法は、ワークピースを工作機械の工作台上でクランプするステップと、ワークピースを機械加工するための工具をワークスピンドル内に収納するステップと、ワークピースをNCプログラムに従って機械加工するステップとを含み、工具交換中に、第1のカバーを移動させ、その結果、工作機械の作業空間が工具交換領域によって拡張されるとともに、工具交換装置が通って工具交換領域へ移動可能であるアクセス表面が露出されるステップと、工具交換装置を、露出したアクセス表面を通して工具交換領域へ移動させるステップと、ワークスピンドルを工具交換領域内に位置決めし、これにより工具交換装置がワークスピンドルによって収納された工具を工具交換領域内で交換することができるステップとが更に実施される、方法。
【0047】
特にその目的のために異なる工具を使用する必要があり、したがって工具交換を頻繁に実施する必要があるとき、本発明による方法により今やワークピースをより速く処理することが可能になる。
【0048】
さらに、方法には、本発明による説明された工作機械の利点、特に工具交換を工作機械の作業空間の外側で行なうことができ、その結果、工具交換装置とワークピース又はワークピースのクランプ手段との間の衝突の危険を著しく減らすことが可能になるという利点がある。
【0049】
本発明による方法は、工具交換装置が、ワークスピンドルを工具交換領域内に位置決めするステップと無関係に、露出したアクセス表面を通して工具交換領域へ移動されるように有利に更に発展させることができる。
【0050】
さらに、本発明による方法は、ワークスピンドルが、作業空間を工具交換領域によって拡張する第1のカバーの移動と無関係に、第1のカバーの方向において移動されるように有利に更に発展させることができる。
【0051】
工作機械の作業空間が工具交換領域によって拡張された後に、ワークスピンドルが初めに工具交換領域に位置決めされるかどうか、若しくは工具交換装置が初めにリニア軸によって工具交換領域へ移動されるかどうか、又は両方が同時に行われるかどうかは全く無関係である。方法ステップの種々のシーケンスが可能であり、前述の例によって完全には包含されない。
【0052】
本発明による工作機械により、一方で、工具交換が作業空間の外側で行なわれるため、工具交換装置が作業空間内で他の要素と衝突する危険を著しく減らすことが可能になった。さらに、本発明による工作機械により、工作機械のよりコンパクトな構造を得ることが可能になり、結果として機械動特性及び剛性の向上、及びしたがって機械加工中の精密性の向上がもたらされる。結果として機械構造の熱的安定性も改善され得る。
【0053】
更なる態様及びその利点、並びに上述した態様及び特徴についての利点及びより具体的な実施上の選択肢が、以下の記載及び添付の図面に関連する説明に記載され、それらは、決して限定的であると解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明による工作機械を、工具交換を行うことができない閉じ状態で示す概略図である。
図2】本発明による工作機械を、工具交換装置が工具交換領域へ移動した工具交換状態で概略的に示す詳細図である。
図3】本発明による工作機械を、閉じ状態で示す概略図であり、x-y平面が工作台によって広げられている。
図4】本発明による工作機械を、工具交換状態で示す概略図であり、x-y平面が工作台によって広げられている。
図5】本発明による工作機械を、作業空間及び工具交換領域の仕切りとともに概略的に示す断面図である。
図6】本発明による工作機械における工具交換のシーケンスを示す概略図である。
図7】第1のカバーと無関係に移動するワークスピンドルを示す概略図であり、第1のカバーは、冷却潤滑剤及び材料チップをこすり落とすスクレーパーも備える。
図8】本発明による工作機械を、工具交換装置のために横方向に取り付けられた工具マガジン及びリニア軸とともに示す概略図である。
図9】従来技術で公知の工作機械を示す概略図であり、この工作機械において工具交換は作業空間の領域で行なわれる。
図10】本発明によるワークピースを機械加工する方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下において、本発明の例及び例示的な実施形態が、添付の図面を参照して詳細に説明される。図面中の同一又は類似の要素は、同じ参照符号で指し示されるが、時には異なる参照符号で指し示されることもある。
【0056】
しかしながら、本発明は、以下に説明される例示的な実施形態及びその実施上の特徴に制限又は限定されず、むしろ、例示的な実施形態の変更、特に説明される例の特徴の変更によって、又は説明される例の特徴のうちの1つ以上の組み合わせによって、独立請求項の保護の範囲内に含まれる変更を更に含むことが強調されるべきである。
【0057】
図1は、本発明による工作機械100を、工具交換を行うことができない閉じ状態で概略的に示す。
【0058】
ここで、キャリア22上に配置されたワークスピンドル20及び工作台10に加えて、工作機械100は、第1のカバー30及び第2のカバー40を備える。
【0059】
具体的には、図1は、第1のカバー30が第2のカバー40に対して実質的に同一平面に配置される工作機械100の状態を示す。これは、例えば、工作台10上にクランプされたワークピースが、工具を用いてワークスピンドル20によって機械加工される場合に常に当てはまる。
【0060】
この目的のために、多種多様の工具、特にワークピースを機械加工するための工具をワークスピンドル20内に収納することができ、ワークスピンドル20は、例えば、中空のシャンクテーパー又は急なテーパー等の標準化されたレセプタクルを備える。しかしなが
ら、工具の製造者に特有な他の工具レセプタクルも、ワークスピンドル20によって収納することができる。対応して装備されたワークスピンドル20は、もちろんこのための必須条件である。
【0061】
工作台10にワークピースをクランプするために、クランプ爪、機械的な又は流体圧式のワークピースクランプ、多種多様なジョーチャック等の、多種多様なクランプ手段を使用することができる。
【0062】
言及した例は、限定的であると解釈すべきでなく、工具を収納し及び/又はワークピースをクランプする更なる選択肢を含むことができる。
【0063】
図2は、工具交換装置50が工具交換領域80へ移動した工具交換状態で本発明による工作機械100の詳細図を概略的に示す。
【0064】
詳細には、図2は、第1のカバー30が第2のカバー40に対して後退されたことを示す。この後退は、工具交換が差し迫っているとき、第1のカバー30上の駆動装置35(図2に図示せず、図5を参照)によって実施される。
【0065】
具体的には、第1のカバー30は、駆動装置35によって第2のカバー40に対して後退され、第1のカバー30及び/又は第2のカバー40及び工作台10によって画定される工作機械100の作業空間70(図2に図示せず、図5を参照)が、工具交換領域80(図2に図示せず、図5を参照)によって拡張される。
【0066】
これにより、差し迫った工具交換を作業空間70の領域で行う必要がないことが特に有利な程度まで可能になる。作業空間70の領域で工具交換を行う場合、工具を交換するとき又は工具交換装置50が作業空間70へ移動する際に、ワークピース及び/又は他の要素(例えば工作台、ワークピース用の取り付けられたクランプ装置等)と衝突する危険をはらむ。
【0067】
したがって、これを防止しかつ工具交換プロセスをより安全にするために、工具交換を作業空間70の外側で実施することが望ましい。
【0068】
さらに、図2は、本発明による工作機械100の特に有利な実施形態を示し、図2において、工具交換装置50(ここでは二重グリッパーとして構成される)が通って工具交換領域80へ移動可能なアクセス表面42が、第1のカバー30を第2のカバー40に対して後退させることによって同時に露出される。
【0069】
これは非常に有利であり、その理由は、第1のカバー30の移動によりアクセス表面42が同時に露出され、その結果、アクセス表面を露出するための追加の駆動装置及び/又はガイドを省略することが可能なためである。さらに、全体的な工具交換時間及び機械加工から機械加工までの時間が短く保たれ、これにより工作機械はより有効に動作することが可能になる。
【0070】
これは、アクセス表面42が第1のカバー30に対して実質的に垂直に(したがって第2のカバー40とも実質的に垂直に)延びるために可能になる。第1のカバー30が、作業空間から外へ延びる方向に移動するとき、第1のカバー30及び第2のカバー40に対して実質的に垂直に配置された表面が、第1のカバー30と第2のカバー40との間に形成される。この表面がここで工具交換装置50を工具交換領域80へ移動させるために使用される場合、第1のカバー30の単に1つの移動により、工具交換領域80を形成すること、及び同時に、工具交換装置50用の表面(アクセス表面42)におけるアクセスを
露出させることの両方ができる。
【0071】
さらに、第1のカバー30及び第2のカバー40のそのような構成により、工作機械100の工具交換に必要な装置の領域内の構造をコンパクトに保つという利点が得られる。
【0072】
さらに、本発明による工作機械100のこの特に有利な実施形態において、工具交換装置50及び工具マガジン60(図2に図示せず、図8を参照)は、第1のカバー30及び/又は第2のカバー40によって作業空間70から分離される。
【0073】
これは有利であり、その理由は、ワークピースの機械加工中に供給される冷却潤滑剤及びワークピースから除去された材料チップが作業空間70内に広がり、これによりそれらは、もちろん工具交換装置50及び/又は工具マガジン60も汚染し、その結果それらを損傷する可能性さえあるからである。したがって、これらの装置を、冷却潤滑剤から及び材料チップから保護することは、適切であり、本発明による工作機械100の信頼性を向上させる。
【0074】
図3は、本発明による工作機械100を、閉じ状態で概略的に示しており、x-y平面が工作台10によって広げられている。
【0075】
ここで、本発明による工作機械100は、第1のカバー30及び第2のカバー40が互いに実質的に同一平面に配置されるとき、工作機械100の閉じ状態を再び強調するために、第1のカバー30及び第2のカバー40並びに工作台10及びワークスピンドル20の要素に減らされる。
【0076】
ここで、第2のカバー40は、入れ子にし得る幾つかの個別のセグメントからなることができ、これにより第1のカバー30は、y方向(作業空間70から外へ延びる方向に対応する)のみならずx軸に沿っても移動することができない。さらに、第2のカバー40は、蛇腹のように一緒に折り重ね/入れ子にし得るセグメントから構築することもできる。
【0077】
第1のカバー30も、幾つかの異なるセクションから構築することができる。例えば、ワークスピンドル20のキャリア22の下方及び/又は上方に、第2のカバー40と同様に、入れ子にし得る複数の個別のセグメントを第1のカバー30に設けることができ、それによりキャリア22及びしたがってワークスピンドル20がz方向において移動することが可能になり、したがってワークスピンドルを3つの軸(x軸、y軸及びz軸)に沿って給送することが可能になる。
【0078】
図4は、本発明による工作機械100を、工具交換状態で概略的に示しており、x-y平面が工作台10によって広げられている。
【0079】
図4は、図2に説明された例示的な実施形態において工具交換装置50用のアクセス表面42がどこに配置されるかを再び示す。図2に既に図示されかつ説明されたように、第1のカバー30の、作業空間から出るすなわち作業空間から遠ざかる方向における単一の移動により、工具交換領域80が形成されると同時にアクセス表面42が露出され、これにより工具交換装置50(ここでは二重グリッパーとして具体化される)が工具交換領域80へ移動することができる。有利なことに、したがって作業空間70の外側で工具交換を行うことが可能である。
【0080】
図4は第1のカバー30の下方に排水プレート90も示し、排水プレート90は、工具交換中に第1のカバー30から滴る冷却潤滑剤及び/又はワークピースから除去される材
料チップを捕らえ、これらを例えば工作台10の下方に位置し得る収集領域へ向ける。この収集領域から、材料チップ及び冷却潤滑剤は、工作機械100の内側又は外側の再処理工程に供給することができる。
【0081】
上記の例は、限定的であると解釈すべきでない。例えば、工具交換装置50はあらゆるタイプとして構成することができ、二重グリッパーの例示的な実施形態に制限されない。
【0082】
図5は、作業空間70及び工具交換領域80の仕切りとともに本発明による工作機械100の断面図を概略的に示す。
【0083】
図5は、工具交換領域80の位置(ここでは点線によって図示される)を示し、第1のカバー30が作業空間70に対して移動するとき、工具交換領域80によって作業空間70(ここでは破線によって図示される)が拡張される。作業空間70は、第1のカバー30が第2のカバー40に対して実質的に同一平面にあるように配置されるとき、工作台10(又はそのクランプ表面12)によって、並びに第1のカバー30及び/又は第2のカバー40によって、実質的に境界を定められかつ画定される。
【0084】
図5に示されるように、第1のカバー30は、ここで作業空間70のすぐ近傍に又はこれに直接隣接して工具交換領域80が形成されるように移動されている。工具交換領域80において、工具交換装置50は、ここで第1のカバー30の移動によって露出されたアクセス表面42を通って工具交換領域80へ移動することができる。ワークスピンドル20もここで工具交換領域80内に位置決めされれば、ワークスピンドル20によって収納された工具は、工具交換装置50によって交換することができる。
【0085】
ここでは、工具交換領域80が形成された後、工具交換装置50が最初に工具交換領域80へ移動されるか、又はワークスピンドル20が最初に工具交換領域80内に位置決めされるかどうかは、無関係であることに注目されたい。
【0086】
本発明による工作機械100の断面図には、キャリア22及びしたがってワークスピンドル20は、別個の駆動装置35によって達成される第1のカバー30の移動と無関係に、対応する駆動装置25によってy方向において移動可能であることが更に示される。
【0087】
さらに、図5には、排水プレート90が、工具交換中に第1のカバー30から滴り/落下する可能性がある冷却潤滑剤及び材料チップを捕らえるとともにそれらを収集領域(例えば、工作台10の下方)へ向け、その結果材料チップ及び使用済みの冷却潤滑剤は、もはやワークピースの機械加工プロセスに影響を及ぼし得ないことが示される。
【0088】
図6は、本発明による工作機械100における工具交換のシーケンスを概略的に示す。
【0089】
初めに、図a)において、工作機械100は、第1のカバー30と第2のカバー40とが互いに実質的に同一平面に配置される閉じ状態で示される。
【0090】
図b)は、ここで、第1のカバー30が移動し、それにより作業空間70のすぐ近傍に又はこれに隣接して、工具交換領域80(第1のカバー30と工作台10との間の領域)が形成されたとともに工具交換領域へのアクセス表面42が露出されたことを示す。
【0091】
図c)は、ここで、ワークスピンドル20が工具交換領域80内にどのように位置決めされ、工具交換装置50がアクセス表面42を通してどのように工具交換領域80へ移動され、その結果ワークスピンドル20によって収納された工具が、工具交換装置50によって交換/取り換え可能であるかを示す。
【0092】
一旦工具が交換され/取り換えられれば(図d)を参照)、工具交換装置50は、アクセス表面42を通って工具交換領域80から後退し、それによって第1のカバー30がアクセス表面42及び工具交換領域80を閉じるために移動することを可能にする。
【0093】
図e)は、本発明による工作機械100を再び閉じ状態で示し、閉じ状態では第1のカバー30及び第2のカバー40は、再び互いに実質的に同一平面に配置される。
【0094】
図7は、第1のカバー30と無関係に移動するワークスピンドル20の移動を概略的に示し、図7において、第1のカバー30は、冷却潤滑剤及び材料チップをこすり落とすスクレーパー33も備える。
【0095】
図7は、本質的に第1のカバー30及び第2のカバー40並びに工作台10及びワークスピンドル20の要素に減らされた、本発明による工作機械100を再び示す。
【0096】
しかしながら、第1のカバー30は、キャリア22が通って延びる開口部32も有し、キャリア22の端部にワークスピンドル20が配置される。これにより、キャリア22が、ワークスピンドル20を、第1のカバー30の位置又は移動と無関係にy方向に移動させる/変位させることが可能になる。
【0097】
さらに、第1のカバー30が、開口部32の領域(又は開口部32それ自体)に、少なくとも1つのスクレーパー33を備えることが有利であり、スクレーパー33は、ワークピースを機械加工する間に蓄積しキャリア22上に堆積し得る冷却潤滑剤及び材料チップを、キャリア22からこすり落とす。
【0098】
これは、できるだけ多数の材料チップ又はできるだけ大量の冷却潤滑剤をキャリアからこすり落とすことができるように、ワークスピンドル20が、工具交換の前に又はワークピースを機械加工した長期間の後に、第1のカバー30に非常に接近して位置決めされるとき、特に有利であることができる。キャリア22から剥ぎ取られた材料チップを含む冷却潤滑剤は、したがって再処理工程に供給することができ、長期間にわたってキャリア22上に蓄積しない。
【0099】
図a)は、ここで、ワークスピンドル20が実質的に最も遠くに延びたとき(y方向におけるワークスピンドル20の最大給送通路)の、キャリア22の位置をワークスピンドル20とともに示す。そして、図b)は、ワークスピンドル20が実質的に第1のカバー30まで移動又は位置決めされ、結果として冷却潤滑剤及び材料チップがキャリア22からこすり落とされたときのワークスピンドル20を示す。
【0100】
図8は、本発明による工作機械100を、工具交換装置50のために横方向に取り付けられた工具マガジン60及びリニア軸62とともに概略的に示す。
【0101】
工具マガジン60及びリニア軸をより認識できるように、本発明による工作機械100は、図8において第1のカバー30及び第2のカバー40の構成要素が更に減らされている。
【0102】
図示されるように、工具マガジン60は、移動可能なコラム上でキャリア22に隣接してx方向において横方向に配置されるとともに、リニア軸62を更に備え、リニア軸62によって工具交換装置50は、アクセス表面42(ここには図示せず)を通って、ワークスピンドル20上において工具交換を実施するために形成された工具交換領域80へ移動することができる。
【0103】
この構成の明らかな利点は、工具マガジン60が、x方向においてワークスピンドル20又はキャリア22の移動と平行に移動することである。これは、工具交換が、ワークスピンドル20をx軸に沿って特定の「工具交換位置」へ更に給送する必要なしに、x軸に沿ったワークスピンドル20の実質的にどのような所望位置でも行なわれ得ることを意味する。
【0104】
そのような構成により、ワークスピンドル20を給送するスライドがy方向に対称的に構築されかつ構造的に閉じられることも可能になる。これにより、スライドのための駆動装置を中心に配置することも可能になり、キャリア22上のワークスピンドル20を旋回ヘッドとして使用するとき、周りに旋回ヘッドが回転可能なB軸と、工具を収納するスピンドルノーズとの間の距離を短くすることが可能になり、結果として機械動特性及び剛性における利点をもたらす。
【0105】
さらに、工具マガジン60は、チェーンマガジン又はホイールマガジンとして、しかし棚マガジンとしても構成することができる。さらに、追加の給送ユニットを設けて工具を対応するマガジンから取り出し、工具交換装置50が工具をワークスピンドル20に挿入する前に、工具を工具交換装置50に給送することもできる。ここで説明された例は、やはり非限定的であると解釈されるべきであり、更なる例示的な実施形態を含み得る。
【0106】
図9は、従来技術で公知の工作機械を概略的に示し、この工作機械において、工具交換は作業空間の領域で行われる。
【0107】
ここで、従来技術と同様に、工具交換装置50が、工具を交換するために通常又は非常に頻繁にワークスピンドル20まで移動することは明白である。しかしながら、この目的のために、工作機械の作業空間は制限される(工具が工具交換装置50によって交換され/取り換えられる間、ワークスピンドル20は工作台10の上方にある)。しかしながら、これは、工具交換装置50がワークピース及び/又は例えばワークピースのクランプ手段と衝突する可能性がある危険をはらむ。
【0108】
その結果、公知のトラベリングカラム機械における対応する不利益を回避して、より速く、より信頼性が高く、より正確な工作機械を提供するように、本発明による工作機械に係るトラベリングカラム形式の工作機械を開発することが有利である。
【0109】
図10は、本発明による、ワークピースを機械加工する方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。
【0110】
初めに、ステップS200にて、ワークピースは、本発明による工作機械100の工作台10上にクランプされる。これは、クランプ爪、機械的な又は液圧式のワークピースクランプ、多種多様なジョーチャック等の、多種多様なクランプ手段を用いて行うことができる。
【0111】
次のステップS300にて、ワークピースを機械加工するために使う工具が、ワークスピンドル20内に収納される。この目的のために、多種多様の工具、特にワークピースを機械加工するための工具をワークスピンドル20内に収納することができ、ワークスピンドル20は、例えば、中空のシャンクテーパー又は急なテーパー等の標準化されたレセプタクルを有する。しかしながら、工具の製造者に特有な他の工具レセプタクルも、ワークスピンドル20によって収納することができる。しかしながら、対応して装備されたワークスピンドル20は、この目的のための必須条件である。
【0112】
ワークピースの機械加工、特に削る機械加工は、ここでワークスピンドル20によって収納された工具によって行なうことができる(ステップS400)。工具は、NCプログラムに従い、ワークスピンドル20により、x軸、y軸及びz軸に沿ったワークスピンドルの給送移動により、ワークピースに沿って又はワークピース内へ案内される。
【0113】
しかしながら、追加の給送移動を、B軸の周りで(例えば、ワークスピンドル20が旋回ヘッドとして構成される場合)、又はC軸の周りで(例えば、旋回する工作台10等によって)行うこともできる。
【0114】
ワークスピンドル20内に収容された工具を用いたワークピースの機械加工が完了したとき又は一時中断されたとき、工具交換を、後続のステップS500にて行なうことができる。
【0115】
この目的のために、初めに、ステップS510にて第1のカバー30が移動され、その結果、工作機械100の作業空間70が工具交換領域80によって拡張される。この目的のために、第1のカバー30は、作業空間70から出る方向へ移動される。
【0116】
加えて、第1のカバー30の移動により、工具交換装置50が通って工具交換領域80へ移動可能なアクセス表面42が露出される。
【0117】
これに応じて、次のステップS520にて、工具交換装置50は、工具マガジン60のリニア軸62によって、露出したアクセス表面42を通って工具交換領域80へ移動される。
【0118】
続いて、ワークスピンドル20は工具交換領域80内に位置決めされ、その結果、工具交換装置50は、ワークスピンドル20によって収納された工具を工具交換領域80内で交換し/取り換えることができる(ステップS530)。
【0119】
その後、ワークピースの機械加工を継続することができる。
【0120】
上記において、本発明の例又は例示的な実施形態及びそれらの利点が、添付図を参照して詳細に説明された。
【0121】
しかしながら、本発明は、上述された例示的な実施形態及びそれらの実施上の特徴に限定又は制限されず、むしろ例示的な実施形態の変更、特に説明された例の特徴の変更によって、又は説明された例の特徴のうちの1つ以上の組み合わせによって、独立請求項の保護の範囲内に含まれる変更を更に含むことが、再び強調されるべきである。
【符号の説明】
【0122】
10 工作台
12 工作台のクランプ表面
20 ワークスピンドル
22 キャリア
25 キャリアの駆動装置
30 第1のカバー
32 第1のカバー内の開口部
33 スクレーパー
35 第1のカバーの駆動装置
40 第2のカバー
42 アクセス表面
50 工具交換装置
60 工具マガジン
62 工具交換装置のリニア軸
70 工作機械の作業空間
80 工具交換領域
90 冷却剤及び材料チップを排水するプレート
100 工作機械
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10