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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20231116BHJP
   B61F 5/24 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F16F9/32 S
F16F9/32 N
B61F5/24 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022150766
(22)【出願日】2022-09-21
【審査請求日】2023-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-074172(JP,A)
【文献】実開平05-022887(JP,U)
【文献】実開平02-143537(JP,U)
【文献】特開平08-240240(JP,A)
【文献】特開平07-259919(JP,A)
【文献】特開2020-142553(JP,A)
【文献】特開2013-071522(JP,A)
【文献】特開2019-188960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00-9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のアウターシェルと、アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有する伸縮ユニットと、
前記ロッドの先端に設けられるブラケットと、
前記ロッドの前記ブラケットよりもアウターシェル側に設けられて外周に前記ロッドを覆う筒状のダストブーツが装着される円盤状のブーツ保持部と、
前記ブーツ保持部と前記ブラケットとを接続する接続軸と、
前記ロッドに対して、前記ロッドの軸方向で前記ブラケットと前記ブーツ保持部との間であって、前記ロッドの径方向で少なくとも一部が前記ブーツ保持部の外周よりも内側に配置されて取り付けられるセンサとを備え、
前記接続軸は、側部に前記センサの一部が埋め込まれる切欠を有する
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記ロッドに取り付けられて前記センサの信号線を保持し、前記ロッドから離間する方向へ突出するステーを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記ブーツ保持部は、反アウターシェル側端に外周から径方向へ向けて前記接続軸まで形成される溝を有し、
前記切欠は、前記接続の側部に周方向で前記溝と連なる位置に設けられており、
前記溝と前記切欠によって前記センサの一部が埋め込まれる凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ装置は、たとえば、アウターシェルとアウターシェル内に軸方向へ移動可能なロッドとを備えて設置対象に利用され、設置対象の振動を抑制したり、設置対象を駆動したりするものがある。たとえば、シリンダ装置が鉄道車両の車体と台車との間に介装されて車体および台車の振動を抑制する用途で使用される場合では、伸縮時に発生する減衰力或いは推力の制御に必要な車体或いは台車の振動状況を把握するため、ロッドに加速度センサを取り付ける場合がある。
【0003】
このようなシリンダ装置では、ロッドに取り付けられた加速度センサでロッドに連結された車体或いは台車の加速度を検知し、信号線を通じてシリンダ装置を制御するコントローラへ検知した加速度を入力する。コントローラは、加速度を取り込んで、シリンダ装置の減衰力或いは推力が車体および台車の振動の抑制に適切となるように制御する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-188960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリンダ装置では、屋外で利用される場合、ロッドを保護するためにロッドの外周を覆うダストブーツが取り付けられることがある。ダストブーツを備えるシリンダ装置は、ダストブーツの取り付けを可能とするためにロッドの先端側に設けられた円盤状のブーツ保持部材を備えており、ダストブーツのロッド側端はブーツ保持部材の外周に緊縛されて定着される。
【0006】
そして、このようなダストブーツを備えたシリンダ装置では、加速度センサがダストブーツの邪魔にならないようにブーツ保持部材の外周に設置されている。ところが、加速度センサがブーツ保持部材の外周に設置されると、加速度センサがシリンダ装置の径方向へ突出する関係で、鉄道車両の車体と台車との間といった狭小箇所にシリンダ装置を設置しなくてはならない場合、加速度センサが設置対象への取り付けの邪魔になったり設置対象の部品等と干渉したりする場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、センサを備えていても設置対象への搭載性の向上が可能なシリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の本発明のシリンダ装置は、筒状のアウターシェルと、アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとを有する伸縮ユニットと、ロッドの先端に設けられるブラケットと、ロッドのブラケットよりもアウターシェル側に設けられて外周にロッドを覆う筒状のダストブーツが装着される円盤状のブーツ保持部と、ブーツ保持部とブラケットとを接続する接続軸と、ロッドに対してロッドの軸方向でブラケットとブーツ保持部との間であって、ロッドの径方向で少なくとも一部がブーツ保持部の外周よりも内側に配置されて取り付けられるセンサとを備え、接続軸は側部にセンサの一部が埋め込まれる切欠を備えている。
【0009】
このように構成されたシリンダ装置によれば、センサのブーツ保持部の外周から径方向へ突出する突出量が小さくなるので、設置対象におけるシリンダ装置の設置箇所が狭小であってもセンサがシリンダ装置の設置の際に邪魔にならず、設置対象の部品等との干渉も防止できる。
【0010】
また、シリンダ装置では、ロッドに取り付けられてセンサの信号線を保持し、ロッドから離間する方向へ突出するステーを備えていてもよい。このように構成されたシリンダ装置では、センサの信号線がロッドから離間する方向へ突出するステーによってロッドから離間した位置で保持される。これにより、信号線の噛み込みが防止されるので、センサの信号線の劣化が防止される。
【0011】
さらに、シリンダ装置では、ブーツ保持部は、反アウターシェル側端に外周から径方向へ向けて接続軸まで形成される溝を有し、切欠は、接続の側部に周方向で溝と連なる位置に設けられており、溝と切欠によってセンサの一部が埋め込まれる凹部が形成されてもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、凹部にセンサの一部が埋め込まれた状態でロッドに設置されるので、センサが大型であっても軸方向から見て全体がロッドの径方向でブーツ保持部の外周よりも内側に配置できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリンダ装置によれば、センサを備えていても設置対象への搭載性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施の形態におけるシリンダ装置を搭載した鉄道車両の断面図である。
図2】一実施の形態におけるシリンダ装置の側面図である。
図3】一実施の形態におけるシリンダ装置のブラケットおよびブーツ保持部の斜視図である。
図4】一実施の形態のシリンダ装置におけるステーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態のシリンダ装置Cは、図1に示すように、設置対象としての鉄道車両の車体Bの制振装置として使用され、図2に示すように、筒状のアウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド4とを有する伸縮ユニット1と、伸縮ユニット1におけるロッド4の先端に設けられるブラケット17と、ロッド4に設けられる円盤状のブーツ保持部18と、ロッド4に取り付けられるセンサとしてのロッド側加速度センサ30とを備えている。
【0015】
伸縮ユニット1は、図1および図2に示すように、アウターシェル2に対してロッド4が軸方向に相対移動して伸縮でき、アウターシェル2がアウターシェル2の端部を閉塞するボトムキャップ14に設けられたブラケット14aを介して車体Bの下方に垂下される中心ピンPに連結されるとともにロッド4がブラケット17を介して台車Tに連結されて車体Bと台車Tとの間に介装される。なお、アウターシェル2は、中心ピンPに対して上下方向への回転が許容されるとともに、中心ピンPに対して若干の軸方向周りの捩りと若干の車両前後方向への抉りも許容されている。ロッド4も同様に台車Tに設けた取り付け部Taに対して上下方向への回転が許容されるとともに、取り付け部Taに対して若干の軸方向周りの捩りと若干の車両前後方向への抉りも許容されている。台車Tは、車輪Wを回転自在に保持しており、車体Bと台車Tとの間には、枕ばねと称される懸架ばねSが介装され、車体Bが弾性支持されることにより、台車Tに対する車体Bの横方向への移動が許容されている。
【0016】
以下、シリンダ装置Cの各部の具体的な構成について説明する。伸縮ユニット1は、詳しくは図示しないが、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、シリンダ内に挿入されてピストンとに連結されるロッド4と、シリンダの外周に設けられてシリンダとの間に作動液体を貯留するタンクを形成する筒部材としてのアウターシェル2と、シリンダ装置Cの伸縮の切換と減衰力または推力を制御する液圧回路とを備えており、片ロッド型のシリンダ装置として構成されている。アウターシェル2およびシリンダの図2中左端は、内周にロッド4が摺動自在に挿通されるロッドガイドによって閉塞され、アウターシェル2およびシリンダの図2中右端は、ボトムキャップによって閉塞されている。
【0017】
また、前記ロッド側室とピストン側室には、本例では、作動液体として作動油が充填されるとともに、タンクには、作動油の他に気体が充填されている。なお、タンク内は、特に、気体を圧縮して充填して加圧状態とする必要は無い。また、作動液体は、作動油以外にも他の液体を利用してもよい。
【0018】
液圧回路は、図示はしないが、たとえば、ピストン側室からロッド側室へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路と、タンクからピストン側室へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路と、ロッド側室とタンクとを接続する排出通路に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁とを備えている。
【0019】
この伸縮ユニット1は、伸縮時にシリンダからタンクへ向かう液体の流れに対して可変リリーフ弁によって抵抗を与えて、伸縮を妨げる減衰力を発生可能であるとともに、可変リリーフ弁の開弁圧の調整で減衰力を高低調整可能となっている。なお、伸縮ユニット1の内部構造および液圧回路の構成は、一例であって、適宜設計変更可能である。
【0020】
つづいて、伸縮ユニット1におけるロッド4は、図2に示すように、アウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにピストン3に連結されるロッド本体15と、ロッド本体15の先端となる図2中左端に連結されたロッドエンド16とを備えている。ロッドエンド16は、図2中左端に設けられるブラケット17と、円盤状のブーツ保持部18と、ブラケット17とブーツ保持部18とを接続する接続軸19とを備えている。
【0021】
ブラケット17は、台車Tの取り付け部Taに図外のボルトとナットによって締結される連結バー17a、球面軸受を介して連結バー17aの中央を保持して連結バー17aの軸回りの回転と連結バー17aの中央を支点とした首振り動作を許容する保持環17bとを備えている。ブラケット17は、台車Tの取り付け部Taに取り付けられると、ロッド4の取り付け部Taに対する上下方向への回転が許容されるとともに、取り付け部Taに対する若干の軸方向周りの捩りと若干の車両前後方向への抉りを許容する。なお、ブラケット17は、設置対象を鉄道車両の車体と台車としているので前述の構成を採用しているが、これに限られず設置対象への設置に適した構成となっていればよい。
【0022】
ブーツ保持部18は、円盤状とされており、ブーツ保持部18の図2中左端の中央からブラケット17の保持環17bの図2中右端に接続される接続軸19が突出している。また、ブーツ保持部18の図2中左端となる反アウターシェル側端には、外周から径方向へ向けて接続軸19まで形成される溝18aが設けられており、接続軸19の側部を切り落としてできる形状の切欠19aを備えている。溝18aおよび切欠19aは、図2および図3に示すように、ロッドエンド16の周方向で連なる位置に設けられており、互いに連通されてブーツ保持部18の反アウターシェル側の端部から接続軸19の側部にかけてロッドエンド16に凹部Rを形成している。
【0023】
アウターシェル2の図2中右端は、ボトムキャップ14に設けられたブラケット14aによって車体Bに設けられた中心ピンPに連結されている。ブラケット14aは、詳しくは説明しないが、ブラケット17と同様の構成を備えており、車体Bの中心ピンPに取り付けられると、アウターシェル2の中心ピンPに対する上下方向への回転が許容されるとともに、中心ピンPに対する若干の軸方向周りの捩りと若干の車両前後方向への抉りを許容する。なお、ブラケット14aは、設置対象を鉄道車両の車体と台車としているので前述の構成を採用しているが、これに限られず設置対象への設置に適した構成となっていればよい。
【0024】
また、アウターシェル2の図2中左端の外周とブーツ保持部18の外周とに筒状のダストブーツ20が架け渡されている。ダストブーツ20は、筒状であって途中に蛇腹部分を有しており、一端がロッド4におけるブーツ保持部18の外周にバンド21によって緊縛されて取り付けられ、他端がアウターシェル2の外周にバンド22によって緊縛されて取り付けられており、ロッド4の外周を覆ってロッド4への水や埃等の付着を防止してロッド4の外周の摺動面を保護している。
【0025】
そして、センサとしてのロッド側加速度センサ30は、凹部Rに一部が埋め込まれるようにしてロッド4におけるブーツ保持部18の反アウターシェル側端に取付けられている。より詳細には、ロッド側加速度センサ30は、図3に示すように、ブーツ保持部18の溝18a内に設けられた螺子孔18cに取り付けられる図外の螺子によって一部が凹部R内に収容された状態でブーツ保持部18に取り付けられる。
【0026】
このようにロッド側加速度センサ30がロッド4に対して設置されると、ロッド側加速度センサ30は、ロッド4の軸方向ではブラケット17とブーツ保持部18との間に配置されるとともに、ロッド4の径方向では少なくとも一部がブーツ保持部18の外周の内側に配置されて、ロッド4に対して取り付けられる。ロッド側加速度センサ30は、ロッド4の軸方向でロッド4のブラケット17とブーツ保持部18との間に設置されるので、ダストブーツ20の取り付けに障害とならない。
【0027】
なお、本実施の形態では、ロッド側加速度センサ30は、軸方向から見ると、全体がロッド4の径方向でブーツ保持部18の外周よりも内側に配置されている。ロッド側加速度センサ30の全体の半分以上をロッド4の径方向でブーツ保持部18の外周よりも内側に配置すれば、ロッド側加速度センサ30のブーツ保持部18よりも径方向へ突出する突出量が少なくなるので好ましい。
【0028】
また、本実施の形態では、ブーツ保持部18の反アウターシェル側端には、ロッド4から離間する方向へ突出するステー40が取り付けられている。ステー40は、具体的には、ロッド側加速度センサ30の周方向の両端面と軸方向の端面とに対向する3つの壁を有してロッド側加速度センサ30を取り囲んで保護する保護カバー40aと、保護カバー40aのロッド側加速度センサ30図2中左端に対向する壁から図2中上方へ延びて途中でロッド4側へ折れ曲がってロッド4に対して傾斜する腕40bとを備えており、ロッド4からロッド4の径方向へ遠ざかるように突出している。
【0029】
保護カバー40aは、図4に示すように、ブーツ保持部18に平行して対向する壁40a1と、当該壁40a1の図4中で左右方向の両端からそれぞれブーツ保持部18側へ平行して延びて互いに対向する一対の壁40a2とを備えて箱型に形成されるとともに、壁40a2のブーツ保持部側の端部にそれぞれ設けられてブーツ保持部18の反アウターシェル側面に当接する当接片40a3とを備えている。そして、保護カバー40aは、当接片40a3を貫いてブーツ保持部18に設けられた螺子孔18b,18bに螺子締結される図外の螺子によってブーツ保持部18に固定されている。このようにブーツ保持部18に保護カバー40aが固定されると、ロッド側加速度センサ30の図3中左端に壁40a1を対向させるとともに、図3中紙面を貫く方向を前後方向とすると図3中前後方向で対向する一対の壁40a2がロッド側加速度センサ30を前後方向で挟むように配置される。よって、保護カバー40aは、ロッド側加速度センサ30の図3中の左端面、前後それぞれの端面の3方を取り囲んでロッド側加速度センサ30を保護できる。
【0030】
ロッド側加速度センサ30は、アウターシェル2の外周に固定されたコントローラ100に信号線L1を介して接続されている。ロッド側加速度センサ30は、ロッド4が鉄道車両の台車Tに連結されるので、台車Tの左右方向の加速度を検知でき、信号線L1を介して検知した台車Tの加速度の情報をコントローラ100に入力する。また、コントローラ100は、コントローラ100を覆ってコントローラ100を保護するカバー101とともにアウターシェル2外周に取り付けられている。カバー101は、アウターシェル2の外周の接線方向に向けて延びるステー101aを備えている。
【0031】
ロッド側加速度センサ30の信号線L1は、ロッド側加速度センサ30から延びてステー40の腕40bに結束バンド41によって結束されてステー40に保持されるとともに、カバー101のステー101aに結束バンド42によって結束されてステー101aに保持され、コントローラ100の図外の入力端子に接続されている。また、信号線L1のステー40の腕40bによって保持される部分からステー101aによって保持される部分までの長さは、伸縮ユニット1のフルストロークを許容できる長さ以上に設定されており、信号線L1が伸縮ユニット1の伸縮を妨げないように配慮されている。
【0032】
信号線L1のロッド側の一端は、ロッド4から離間する方向へ突出するステー40によってロッド4から離間した位置で保持されるので、伸縮ユニット1が伸縮してもダストブーツ20に干渉することが無く、伸縮ユニット1の最収縮時にブーツ保持部18とアウターシェル2との間で噛み込まれてしまうこともない。このように、ロッド側加速度センサ30の信号線L1がステー40に保持されており、伸縮ユニット1が伸縮しても信号線L1がロッド側加速度センサ30への付根での折れ曲がりが防止されるとともに信号線L1の振れが抑制されるので、信号線L1の劣化が抑制される。
【0033】
また、信号線L1のアウターシェル側の他端は、前述したように、カバー101におけるアウターシェル2の外周の接線方向に向けて延びるステー101aに結束される。よって、信号線L1のステー40によって保持された部分から先のアウターシェル側の部分は、ロッド4の真上に配置されずにロッド4の真上を斜めに避けて位置決めされるので、伸縮ユニット1の最収縮時にブーツ保持部18とアウターシェル2との間での信号線L1の噛み込みがより一層効果的に回避される。
【0034】
なお、ステー40は、曲げ加工が可能であって信号線L1を保持可能な材料によって形成されればよく、たとえば、ステンレス、鉄、アルミニウム等によって形成されればよい。また、アーム40bにおける垂直片40b1と傾斜片40b2とでなす角度θは、信号線L1を保持した状態で信号線L1がロッド4と干渉しない限りにおいて90度以上180度以下の範囲で任意に設定できる。さらに、シリンダ装置Cの収縮時にアウターシェル2とブーツ保持部18との間による信号線L1の噛み込み防止の観点から、傾斜片40b2がシリンダ装置Cを軸方向から見てアウターシェル2と重ならない位置に配置されるように垂直片40b1の長さを設定するとよい。
【0035】
つづいて、アウターシェル2には、図2に示すように、アウターシェル側加速度センサ31が取り付けてある。アウターシェル側加速度センサ31とコントローラ100とは信号線L2によって接続されている。アウターシェル側加速度センサ31は、アウターシェル2が車体Bに連結されているので、車体Bの左右方向の加速度を検知でき、信号線L2を介して検知した車体Bの加速度の情報をコントローラ100に入力する。なお、アウターシェル側加速度センサ31は、ボトムキャップ14を介してアウターシェル2に取り付けられてもよい。
【0036】
また、アウターシェル側加速度センサ31の信号線L2は、アウターシェル側加速度センサ31から延びてカバー101のステー101aに信号線L1とともに結束バンド42によって結束されてコントローラ100の図外の入力端子に接続されている。このように、アウターシェル側加速度センサ31の信号線L2がステー101aに保持されて、シリンダ装置Cへの振動入力時における信号線L2の振れが抑制されるので、信号線L2の劣化が抑制される。
【0037】
そして、コントローラ100は、ロッド側加速度センサ30が検知する台車Tの車両進行方向に対して左右方向の加速度とアウターシェル側加速度センサ31が検知する車体Bの車両進行方向に対して左右方向の加速度に基づいて、シリンダ装置Cが発生すべき目標力を求め、シリンダ装置Cに目標力通りの力を発生させる指令を与える。このようにして、シリンダ装置Cは、コントローラ100から入力される指令に従って車体Bの前記横方向の振動を抑制する力を発生する。
【0038】
より詳細には、コントローラ100は、本実施の形態では、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を実行する。コントローラ100は、まず、ロッド側加速度センサ30が検知した台車Tの左右方向の加速度から台車Tの速度を求め、アウターシェル側加速度センサ31が検知した車体Bの左右方向の加速度から車体Bの速度を求める。また、コントローラ100は、台車Tの速度と車体Bの速度とからシリンダ装置Cの伸縮速度を求める。
【0039】
このシリンダ装置Cの伸縮速度と車体Bの速度を乗じた値が正である場合には、シリンダ装置Cは車体Bの振動を抑制する方向の力を発揮できる状態である。よって、この場合、コントローラ100は、車体Bの速度にスカイフックゲインを乗じてシリンダ装置Cを制振するための目標力を求める。そして、コントローラ100は、求めた目標力を発揮させるべく、シリンダ装置Cに目標力通りの力を発揮させるように可変リリーフ弁12の開弁圧を調節する。
【0040】
他方、シリンダ装置Cの伸縮速度と車体Bの速度を乗じた値が負である場合には、シリンダ装置Cは車体Bの振動を抑制する方向の力を発揮できない状態である。よって、コントローラ100は、可変リリーフ弁の開弁圧を最小としてシリンダ装置Cが発揮する力を最小にする。このようにして、コントローラ100に制御されるとシリンダ装置Cは、スカイフックダンパとして機能して、車体Bの振動を抑制できる。なお、前述したコントローラ100によるシリンダ装置Cの制御手法は一例であり、これに限定されるものではない。また、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、コントローラ100がアウターシェル2に取り付けられているが、車体Bに取り付けられてもよい。その場合、信号線L1の中間部分をアウターシェル2に保持させて信号線L2とともに車体Bのコントローラ100へ接続させるようにするとよく、信号線L1のロッド側加速度センサ30とアウターシェル2に保持される部分の長さを伸縮ユニット1のフルストロークを許容できる長さ以上に設定すればよい。
【0041】
以上、説明したように、本発明のシリンダ装置Cは、筒状のアウターシェル2と、アウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド4とを有する伸縮ユニット1と、ロッド4の先端に設けられるブラケット17と、ロッド4のブラケット17よりもアウターシェル側に設けられて外周にロッド4を覆う筒状のダストブーツ20が装着される円盤状のブーツ保持部18と、ロッド4に対してロッド4の軸方向でブラケット17とブーツ保持部18との間であって、ロッド4の径方向で少なくとも一部がブーツ保持部18の外周よりも内側に配置されて取り付けられるロッド側加速度センサ(センサ)30とを備えている。
【0042】
このように構成されたシリンダ装置Cによれば、ロッド側加速度センサ(センサ)30のブーツ保持部18の外周から径方向へ突出する突出量が小さくなるので、設置対象におけるシリンダ装置Cの設置箇所が狭小であってもロッド側加速度センサ(センサ)30がシリンダ装置Cの設置の際に邪魔にならず、設置対象の部品等との干渉も防止できる。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cによれば、ロッド4にロッド側加速度センサ(センサ)30を備えていても設置対象への搭載性の向上が可能となる。
【0043】
なお、本実施の形態では、ブーツ保持部18とブラケット17とを接続する接続軸19を備え、ブーツ保持部18は、反アウターシェル側端に外周から径方向へ向けて接続軸19まで形成される溝18aを有し、接続軸19は、側部に周方向で溝18aと連なる位置に設けられる切欠19aを有し、溝18aと切欠19aによってロッド側加速度センサ(センサ)30の一部が埋め込まれる凹部Rが形成されている。このように、本実施の形態のシリンダ装置Cによれば、ロッドエンド16のブーツ保持部18に設けた溝18aと接続軸19に設けた切欠19aとで形成された凹部Rにロッド側加速度センサ(センサ)30が挿入されており、ロッド側加速度センサ(センサ)30の一部がロッドエンド16に埋め込まれた状態でロッド4に設置されるので、ロッド側加速度センサ(センサ)30が大型であっても軸方向から見て全体がロッド4の径方向でブーツ保持部18の外周よりも内側に配置できる。
【0044】
このように、ロッド側加速度センサ(センサ)30の全体がロッド4の径方向でブーツ保持部18の外周よりも内側に配置されると、ロッド側加速度センサ(センサ)30がブーツ保持部18の外周よりも径方向に突出しないので、シリンダ装置Cの設置対象への搭載性を効果的に向上できる。なお、ロッド側加速度センサ(センサ)30の全体の半分以上をロッド4の径方向でブーツ保持部18の外周よりも内側に配置すると、ロッド側加速度センサ30のブーツ保持部18よりも径方向へ突出する突出量が少なくなるので好ましいが、ロッド側加速度センサ(センサ)30の一部のみがロッド4の径方向でブーツ保持部18の外周よりも内側に配置されても、従来のシリンダ装置と比較してシリンダ装置Cの設置対象への搭載性を向上できる。
【0045】
また、前述したところでは、シリンダ装置Cの制御に台車Tの加速度を利用しているため、センサをロッド側加速度センサ30としているが、センサは、シリンダ装置Cの制御に要求される情報を入手できるセンサであってもよく、また、シリンダ装置Cの制御には使用されないが設置対象でモニタする必要がある情報を検知するセンサであってもよい。したがって、たとえば、シリンダ装置Cの制御でシリンダ装置Cが発生する力を検知したい場合、センサをロードセル等の荷重を検知可能なセンサとしてもよいし、ロッド4の変位を検知する変位センサ等とされてもよい。
【0046】
なお、ロッド側加速度センサ(センサ)30は、ロッド4の一部を構成してブラケット17とブーツ保持部18とを備えたロッドエンド16に設置されているが、ロッド側加速度センサ(センサ)30は、ロッド4におけるブラケット17とブーツ保持部18との間に設置されればよいので、ブラケット17とブーツ保持部18とが別個独立にロッド本体15に設けられている場合、ロッド本体15に直接に設置されてもよい。
【0047】
また、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、ロッド4に取り付けられてロッド側加速度センサ(センサ)30の信号線L1を保持し、ロッド4から離間する方向へ突出するステー40を備えている。このように構成されたシリンダ装置Cでは、ロッド側加速度センサ(センサ)30の信号線L1がロッド4から離間する方向へ突出するステー40によってロッド4から離間した位置で保持される。これにより、シリンダ装置Cでは、信号線L1の噛み込みが防止されるので、ロッド側加速度センサ(センサ)30の信号線L1の劣化が防止される。
【0048】
なお、ステー40は、ロッド側加速度センサ(センサ)30を覆う保護カバー40aと、保護カバー40aから延びる腕40bとを備えているが、保護カバー40aを備えずに信号線L1をロッド4およびダストブーツ20から離間した位置で保持してもよい。また、信号線L1をロッド4およびダストブーツ20から離間した位置で保持して、伸縮ユニット1の最収縮時に信号線L1が最接近するアウターシェル2とブーツ保持部18との間で噛み込まれるのを防止できる限りにおいて、ステー40の形状は、任意に設計変更できる。
【0049】
なお、シリンダ装置Cの構成は、一例であって、シリンダ装置Cは、伸長時のみ力を発揮するモードと収縮時のみ力を発揮するモードと伸縮両方で力を発揮するモードを選択可能なダンパであってもよいし、アクチュエータとして機能できるものでもよい。
【0050】
また、コントローラ100は、前述したところでは、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を実行しているが、台車Tの横方向の加速度と車体Bの横方向の加速度を利用する他の制御を実行してもよい。さらに、コントローラ100は、台車Tの横方向の加速度を必要としない制御を実行してもよく、台車Tの横方向の加速度をシリンダ装置Cや台車Tその他の設置対象の異常検知や、データ取得のために利用するような態様も可能である。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・伸縮ユニット、2・・・アウターシェル、4・・・ロッド、17・・・ブラケット、18・・・ブーツ保持部、20・・・ダストブーツ、30・・・ロッド側加速度センサ(センサ)、40・・・ステー、C・・・シリンダ装置、L1・・・信号線
【要約】
【課題】センサを備えていても設置対象への搭載性の向上が可能なシリンダ装置を提供する。
【解決手段】本発明のシリンダ装置Cは、筒状のアウターシェル2と、アウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド4とを有する伸縮ユニット1と、ロッド4の先端に設けられるブラケット17と、ロッド4のブラケット17よりもアウターシェル側に設けられて外周にロッド4を覆う筒状のダストブーツ20が装着される円盤状のブーツ保持部18と、ロッド4に対してロッド4の軸方向でブラケット17とブーツ保持部18との間であって、ロッド4の径方向で少なくとも一部がブーツ保持部18の外周よりも内側に配置されて取り付けられるセンサ30とを備えている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4